SGRAかわらばん

  • SGRAレポート「日本とイスラーム」再録出版

    SGRAレポート#10「日本とイスラーム~文明間の対話のために~」が下記に再録出版されましたのでお知らせいたします。      板垣雄三(いたがき・ゆうぞう)    「イスラーム誤認」     岩波書店 2003年9月25日発行   湾岸戦争を契機として、アメリカの超大国化が冷戦後の世界に亀裂を走らせ、イスラームに独善的・排他的なイメージを押し付けて、敵意と衝突を加速化させている。いまこそ憎悪と報復のサイクルを脱するためにイスラーム本来の文明観を理解し、文明間の対話を積極的に行っていかねばならない。第一部で、イスラームへの偏見によって歪められた世界認識をただし、文明間対話を通して公正と平和を回復すべきことを主張し、第二部で、日本とイスラーム圏との長い交流の歴史を踏まえ、日本に対する親愛と信頼という国際的資産を活かす提言を行う。湾岸戦争、パレスチナ紛争、9・11同時多発テロ、アフガン戦争、イラク戦争など、世界の変動に触れて発表された著者の持論の精華を集成。  
  • 今西淳子「延辺訪問記」

    SGRA研究員の李鋼哲さんと金香海さんのお誘いを受けて、中国吉林省延辺朝鮮族自治区の延吉に行った。人口200万人というこの自治区の約40%が朝鮮族だが、延吉市内では50%を超えるという。自治区内では中国語と朝鮮語を併記することが義務づけられているというが、市内ではむしろハングル文字の方が多く、また韓国資本の会社が多く進出していて、韓国人観光客も多かった。   このような小さな地域にもかかわらず、日本にいる留学生の中には中国朝鮮族が非常に多く、渥美財団でも既に数名支援しており、また、多くの人が中国語と朝鮮語と日本語を話すということで、以前から注目していた。教育熱心で高学歴者が多いのが朝鮮族の特徴というが、延辺自治区では人口の約10%が海外や地域外に流出しており、人材不足が問題ということだった。いわば、高学歴の人材が出稼ぎにでている状況で、延辺に大きな産業がないのに購買力が増加しており、韓国の商品がたくさん輸入され、日本の商品の輸入まで始まりそうだということだった。   このような状況下、日本で博士号を取得して延辺大学に戻った金香海さんは、大学から大歓迎を受けているようだった。延辺大学では、国際交流センター長や教務処長が日本留学経験者で、日本で留学生支援をしている者としては嬉しく思った。このように日本留学組が大学の主要ポストについている大学は他にないのではないか。金さんが、主に日本語を勉強している政治学部の学生20名くらいと懇談する機会を作ってくださった。皆さん日本留学に関心があり、入学方法、奨学金、アルバイトなどに関する質問が多かった。日本語は、中学1年生から、既に7年間勉強しているという。中国語と朝鮮語を子供のころから使い、中学から日本語を勉強し、三ヶ国語をマスターするのは、今後北東アジアが発展するにつれて非常に大きな可能性を含むのではないかと思う。この比較優位性を活かして、同時通訳まで視野にいれた通訳と翻訳家の養成プログラムを作るべきだと提案した。しかしながら、近年は日本語ではなく英語を選ぶ学生が多いとのこと。英語が必要なことは充分わかるが、日本語ではなく英語ということになってしまうのは、今まで日本語教育が蓄積されてきた土地柄だけに、日本人としてはとても寂しい。中国語、韓国語、日本語、英語の4ヶ国語を操れる人材育成をめざしてもらいと思った。中国では大学卒業後も就職が大変難しいと聞く。延辺に限ったことではないが、欧米の学校のように、子供たちに早いうちから自分の生き方を考え(情報を充分に与え)、何に向いているかを認識させ、どのように自分を磨いていくべきか検討する機会を与えサポートしていくシステムが必要なのではないかと思う。   延辺訪問のもうひとつの興味は北朝鮮だった。李鋼哲さんが研究している開発計画の舞台である中国とロシアと北朝鮮が国境を接する豆満江デルタ地帯に案内していただいた。豆満では、小さな川を挟んで北朝鮮と中国の町が隣接し、70年前に日本が建設したという小さな橋で繋がっていて、その真ん中が国境だった。橋のこちら側では人民解放軍の若い兵隊さんが3人くらい警備していたが、銃をもっているのは一人だけで、ロックミュージックが流れ、リラックスした雰囲気だった。兵隊さんのひとりに入場料を払って、別の兵隊さんに付き添われてぶらぶら橋の真ん中まで歩いて行った。橋の上のコンクリートの上に国境線がペンキで書いてあったが、1mほど北朝鮮にはいって記念撮影。付き添いの兵隊さんにお願いしてシャッターを押してもらった。時々、北朝鮮からトラックが通ったり、歩いて橋を渡る人がいたりした。いわゆる脱北者はこのあたりから上流にかけて出没するそうだが、「脱北者」の中には、中国側で買物をして北朝鮮に戻る人も多いそうで正確な人数の把握は難しいという。北朝鮮と中国の国境は、きわめてのどかだった。北朝鮮には香港資本のカジノがあり、中国人観光客が行くという。延辺大学は、金日成大学と協定があり、現在でも数人が博士号取得のために留学しているという。このような「交流」はむしろ予想通りだった。   ところが、北朝鮮から延辺大学への留学生はいない。北京大学には来ていたが、最近は引き上げてしまったとのこと。延吉でも脱北者と接触するのは許されず、北朝鮮の人たちと交流はない。延辺の方が、北朝鮮の体制がいかにおかしいか、行ってみたらどんなに貧しかったか話してくださったし、脱北者の調査をしている延辺大学の教授でさえ、「北朝鮮はわからない」とおっしゃった。国境地帯でも、以前は北朝鮮側で行われていたフリーマーケットが中止になったというし、北朝鮮から中国へ来ることは「資本主義」に毒されるので以前より厳しく禁止されているとのこと。「北朝鮮人を『見に』行きましょう」と誘われて、延吉市内の北朝鮮人経営のレストランでご馳走になった(在日朝鮮人の資本という)。金日成バッヂをつけ少々表情が硬いが綺麗にお化粧をした女性が給仕してくれるので、観光スポットになっているようだった。ユニバーシアードの美女軍団は俄か作りでないことがよくわかった。彼女たちは2年くらいのシフトで勤務するらしいが、延辺の方が彼女らを食事に誘ったけど決して応じなかったとのこと。「彼女たち」のショーもあった。ショーといっても、ひとりかふたりがカラオケにあわせて歌うというものだった。レストランには韓国の団体旅行客が多かったが、すぐに男性が花束を渡してデュエットを始め、祖国統一歌になった時は、レストラン中が大いに盛り上がった。韓国人観光客の勢いに圧倒されると同時に、何か不思議な光景を見ているような気がした。   (2003年9月7日北京にて)
  • マキト「マニラ・レポート(2003年夏)」

    SGRA「グローバル化のなかの日本の独自性」研究チーム チーフ F・マキト   夏休みを利用して、一時帰国した。 帰国早々、7月27日に、マニラのビジスネス街マカティで軍兵士の反乱事件が起きた。幸いなことに、反乱兵士たちの思惑ははずれ、一般市民の支持を全く得ることができず、一日のうちに無血で事件は終了した。反乱兵士たちは、フィリピン軍内の汚職を訴えようとしたが、彼らに武器の使用権を認めた国民の信頼を裏切った結果になったと私は思う。正当な主張があるのならば、とりわけ自分の命を掛けるぐらいならば、平和的ルートを通して訴えを表明する方法は他にいくらでもある。国家を危機に晒し、一般市民に武器を向けずに済むはずだ。今回の反乱事件の計画者を厳しく裁いてもらいたい。この事件による経済影響を心配したが、フィリピンのアジア太平洋大学(UAP)の発表によれば、フィリピンが様々な危機から受ける打撃は毎回減ってきているようである。フィリピン国民が、だんだん危機への対応に慣れてきたと考えられている。   今回のマニラ訪問の後半には、SGRA研究チームの顧問をお引き受けいただいている名古屋大学の平川均教授が同行してくださり、充実した調査ができた。反乱事件が起きたので心配したが、先生は予定通り来比してくださった。日本貿易振興会(JETRO)を通じて、次の4社を訪問した。JETROマニラの白石薫さん(Director)が4社の訪問に同行してくださったが、「フィリピンの将来がなければ、私の将来もない」という彼の言葉がとても印象的だった。(このような日本人がもうちょっと増えてほしいですね)   4社で、暖かく受け入れてくれたのは次の方々である。この場を借りて、改めて感謝の意を述べたい(訪問順)。今回の調査は、平川先生の特別依頼もあって、工場を見学してきた。現場の貴重な意見を詳しく聞かせていただき、大変勉強になった。   小藤田 洋成 ASAHI GLASS PHILIPPINES、EXECUTIVE VICE PRES. 石井 明 SANYO PLASTIC PHILIPPINES、INC.、PRES. SAKAMOTO HITOSHI、ENOMOTO PHIL. MFG.、SENIOR VICE PRES. YAMAJI TADASHI、 P.IMES CORPORATION, PRES. WAKABAYASHI SHUJI、 P.IMES CORPORATION、DIRECTOR CESAR A. MORAÑA、P.IMES CORPORATION、MANAGER   4社訪問以外に、今年5月に調査したトヨタ・フィリピンの田畑社長と、ホンダのALFREDO MAGPAYO、AVPと、アジア太平洋大学(UAP)のEXECUTIVE LOUNGEでそれぞれ朝食とランチの会議を行った。田畑社長は、その場で携帯電話から、フィリピンにあるトヨタの部品下請け会社であるTOYOTA AUTO PARTSの社長とアポイントをとってくださった。そのおかげで次の方々にもお会いしたので、お礼を申し上げたい。   三宅 譲治 TOYOTA AUTOPARTS PHIL.、INC. PRES. 矢澤 文希 TOYOTA AUTOPARTS PHIL., INC. DIRECTOR 木村 和彦 TOYOTA AUTOPARTS PHIL., INC. DIRECTOR   以上の会議は、フィリピンのアジア太平洋大学(UAP)のPETER U先生が手伝ってくださった。今後も、引き続き、この方々と連絡して、調査を進める予定である。   平川先生の特別依頼で、日本大使館のSAKUMA HIROMICHIさん(FINANCIAL ATTACHÉ ATTY.)と意見交換した。先生も私もSGRAのことをPRし、去年の軽井沢フォーラムのレポート(英語と日本語版)を大使館においていただくようお願いした。   今回の調査はフィリピン開発研究所の助成金によって行われた。調査の最終目的はフィリピンの工業製品の対日輸出戦略を立案することである。調査の過程は次のようになっている。第1段階は、中長期的に日本へ輸出可能な製品、いわゆる生産計画の特定。第2段階は、その生産計画の構造的関係の根拠の分析。第3段階はその生産計画の構造的根拠のインセンティブ構造の分析。今年の12月ごろに最終提案書を提出する予定である。   今回の訪問で、大・中企業の生産計画の大枠を把握できたが、やはり、小企業のほうは、大企業に頼る部分が大きく、生産計画を自ら作成しないというのが基本方針のようである。ただ、小企業といっても、高い技術でバリバリ輸出しており、ここからも輸出戦略を立てるための貴重な情報が得られないわけはないので、引き続き調査の対象としたい。   8月19日に成田に戻り、翌日の始発の新幹線で名古屋に向かった。これから3ヶ月半、平川先生のご指導のもと、SGRA研究チームの仲間の李鋼哲さんと一緒に、客員研究員としてお世話になる。名古屋に近づくと、新幹線の窓から工場団地がよく見かけられた。平川先生によれば、名古屋大学は、東アジアの発展の原動力とも言える「雁行形態開発」という発想の発祥地ということだ。ASEANと日本の協力関係の更なる進展という私の期待への可能性を探るために、日本の「ものづくり」の心臓部への旅がはじまった。   (2003年8月28日)
  • 今西淳子「地球市民とは」

    8月21日午後7時より、SGRA会員の山下英明さんの主宰されるセンチュリーフォーラムで、SGRAの活動を基にして「地球市民とは」というお話をさせていただきました。まず、地球市民に不可欠な要素として「行動」がありますから、私の活動を紹介しました。ひとつは渥美財団と関口グローバル研究会(SGRA)で、もうひとつは、CISV(Children’s International Summer Villages)という世界60カ国の子供たちに短期合宿生活させて異文化理解を推進するグローバルな平和教育運動ですが、どちらも「地球市民の育成」を目標にしています。これらは財団法人と社団法人ですが、このような民間による(NGO/NPO)公益活動自体が「地球市民」の重要な要素のひとつと考えます。   次に、この言葉がどれくらい使われているか、インターネットの検索エンジン(google)で調べてみたところ、「地球市民」が336,000件、「global citizen」が929,000件、「earth citizen」が634,000件ありました。たとえば「地球市民財団」は地球市民を「異なる文化や歴史を、一人の人として互いに尊重し、理解しあい、認め合う意識を持った人々」と定義し、地球上に住むすべての人が幸せに暮らせるよう、途上国を支援するNPOを助成しています。広島県の国際化推進プランでは、「地球市民意識の醸成」のために「国際理解・多文化理解の促進」と「平和・人権意識の高揚」をあげています。また、高崎市の「地球市民宣言」では、「歯磨きや洗顔のときは、水をこまめに止める」「買い物には買い物袋を持参する」など環境に配慮した日常生活上10項目の注意点をあげています。このようにみてみると、「地球市民」という言葉は既にかなり広く使われ、充分に「市民権」を得ているといえると思います。   さて、朝日新聞社「知恵蔵」に、「地球市民」の項では「1970年代から、地球的視点で行動する主体として『地球市民』が登場する。その意味で『地球市民』とは、昔からあった抽象的・理念的な『世界』『人類』とは違い、物質的条件に迫られ、生存をかけた意識である。」と定義されています。さらに、SGRA「地球市民」研究チームでは、「地球に住む人類として、全く新しいアイデンティティーとして芽生えて」きた意識であり、その特徴は「近代社会の基本理念である自由と平等を継承すること、地球規模の『公共圏』において、かつての国家権力に頼る征服や同化ではなく、お互いに意を尊重し合い、共に生きる、つまり『共生』を求める自立的な市民であるべきという認識」であるとしたことを紹介しました。(SGRAレポート#1「地球市民のみなさんへ」p.27) SGRAの定義の特徴は、自由・平等・民主主義といった近代社会の普遍的価値と公共性(公益性)を強調したことです。   しかし「知恵蔵」は、「それはまだ意識のレベルであって、行動はローカルに根を持ち、国境を超えるトランスナショナルではあっても一挙にグローバルではない」と指摘します。山下氏より「地球市民の生命と財産は誰が守るのか」という質問をいただきましたが、まだ制度的な検討はほとんど始まっていないと言わざるをえないでしょう。しかしながら、この点を検討するための参考として、本年5月のSGRAフォーラムでは、EU日本事務局の高橋甫氏から「EUと市民」というお話を伺いました。高橋氏は、欧州統合のキーワードとして①戦争を二度と起こさないという理想に根差したビジョン②強力な政治的な意志③現実的な漸進主義④制度的な裏付け(理事会と委員会と議会と裁判所)⑤文化的な多様性の確保、を指摘された後、「市民に近いEU」と呼ばれ、既に1979年から、加盟国の議会の代表者ではなく、直接選挙によって議員が選ばれていること、これによって、欧州市民というレベルでEUの政治に参加していることを紹介してくださいました。これが、欧州市民権や欧州基本権憲章の制定に発展したということです。(高橋甫「市民とEU」SGRAレポート#18「地球市民研究:国境を越える取り組み」9月発行予定)   最後に、「地球市民」意識の啓蒙活動の意義について述べました。本年2月お台場のSGRAフォーラムで、京都大学の白石隆教授は、アメリカの圧倒的な影響の下、アジア各国に、大きなマスとして中産階級が台頭してきていることを指摘されました。白石教授は、過去30年ぐらいのスパンで見ると、アジア各国はかつてよりはるかに多くのものを共有するようになっているということ、このとうとうとしたアメリカ化の中で、私たちは規範についても相当いろいろなものを共有するようになってきていること、そして、その上にこそ、いずれマーケットの地域統合の上に、制度として地域というものを作っていくということも構想できるようになるのではないか、と結論されました。(白石隆「日本とアジア」SGRAレポート#17「21世紀の世界安全保障と東アジア」p.12)   さらに、昨年7月軽井沢のSGRAフォーラムで、宮澤喜一元総理大臣は「何か共通のものを頼って、何かができるというような動き方には急にはなっていきません。しかし、オーディオ・ビジュアルな時代ですから、過去において何世紀もかかったことが、これからも何世紀かかるということもない」と仰いました。(SGRAレポート#14「グローバル化の中の新しい東アジア」p.8)ドッグイヤーの時代ですから、アメリカ化という共通基盤のもと、アジア地域の共通規範の確立もそれほど遠いことではないかもしれません。   以上のことから、アジアにおける「地球市民」意識啓蒙には、次のような意義があると考えます。①アジア各国における中産階級の台頭により拡大する共通基盤作りの促進②多様なアジアにおける「自由」や「平等」という普遍的価値の普及③欧米化ではなく文化の多様性の尊重を基本とする意識の普及④共通基盤に基づく連帯意識の醸成と、地域統合への方向づけ⑤地球規模の問題解決への取り組みを推進(アジアは最大の人口を有し、経済発展が著しい)⑥社会の激しい変化に対応。   SGRAでは、今後も「地球市民」について考えていきたいと思っています。 
  • おめでとう フィリピン・プロジェクト

    SGRA「グローバル化のなかの日本の独自性」研究チームが、フィリピンのアジア太平洋大学と共同で進めている在比日系企業調査のプロジェクトに対して、フィリピン開発研究所からの助成が決定したとのお知らせをいただきました。おめでとうございます。以下は研究チーフのマキトさんからのメールです。   -------------------------------   先日「マニラ・レポート」で報告したように、フィリピンのアジア太平洋大学のピーター・ウー博士と在比日系企業の準備調査を始めた。帰国後間もなく、ウー氏から、フィリピンの開発研究所のもとで管理されているPhilippine APEC Study Center Networkが日比間の自由貿易協定に関する研究提案を募集中なので、共同調査をベースにして応募してみないかと誘われた。幸いに、その研究提案が採択されたそうである。SGRA研究員という肩書きで初めて認定されたものだけで嬉しさもひとしおである。   研究提案は「Formulating a Medium- to Long-Term Strategy for Exports of Manufactured Goods from the Philippines to Japan under a FTA with Japan: A Survey of Japanese Corporations in the Philippines 日比間の自由貿易協定において、フィリピンによる対日本製造品輸出をめぐる中長的戦略の立案:在比の日系企業の調査」というもので、日本企業と協力していかにフィリピンの経済発展と日比関係を進めるかということが、このプロジェクトの基本目的である。日本が世界に向けて可能であると示した「共有された成長」についてのさらなる解明もめざしている。   これと関連して、当研究チームの顧問で名古屋大学の平川均教授が8月にマニラを訪れ、準備調査を一緒に進めてくださることになった。先生のご指導のもとで調査が本格化しつつあるという気がして、わくわくしている。今回は、大手企業ではなく、中小の日系企業に焦点をおく。このようにして小さくても、在比日系企業の企業集団のサンプルが出来上がれば、これからの研究に何か貴重なヒントを与えてくれるものと期待している。   SGRA会員の皆様で、在比日系中小企業をご存知の方がいらっしゃいましたら、是非ご紹介ください。   M.マキト  
  • AAN朴栄濬「「核」と鎖国は破滅への道 」

    月曜日の朝日新聞に、SGRA「東アジアの安全保障と世界平和」研究グループ、サブチーフ朴栄濬さんのコラムが掲載されましたので、お知らせします。 -  ----------------------------   「核」と鎖国は破滅への道   朴栄濬 (韓国国防大学校安全保障大学院助教授)   平壌を訪れた米代表に北朝鮮が核兵器開発を明言してから8カ月余、恫喝戦術か、真相の告白か、多くの議論が展開されてきたが、少なくとも北朝鮮が核開発をテコに対外政策を有利に進めようとしていることが明らかになってきた。4月北京で行われた米中朝3者会談でも北朝鮮代表が同様の発言を繰り返し、今月には朝鮮中央通信が「核抑止力を備えなければならない」と明言した。その実態や実用性は別にしても、既に朝鮮半島は北朝鮮の核脅威にさらされているのである。   北朝鮮が核兵器開発にこだわるのには、理解できる面もある。元々「遊撃隊国家」が起源で、軍事力強化は国是である。伝統的な友邦であったソ連が崩れ、中国が改革・開放へ転換してからは、孤立した社会主義体制の生き残りのためには、絶対兵器の誘惑に逆らうのはむずかしかっただろう。   しかし、生き残りの戦略として選択した核開発がはたして自国の安全確保に貢献しているか、北朝鮮は見極めなければならない。   (全文は、以下のURLをご覧ください)   http://www.asahi.com/international/aan/column/030616.html 
  • 朱庭耀研究員トリプル受賞

    会員の朱庭耀さんより、嬉しいニュースをいただきました。トリプル受賞おめでとうございます。   ---------------------------------   お蔭様で、この度、日本造船学会第106期年度通常総会(5月14日)において、私が書いた以下の三編の論文   1)「タンカーの主要構造部材に対する設計荷重の実用的設定法に関する研究 第1報 設計海象」、日本造船学会論文集, 第191号, pp. 195-207, 2002.   2)「タンカーの主要構造部材に対する設計荷重の実用的設定法に関する研究 第2報 設計規則波及び設計荷重」、日本造船学会論文集, 第191号, pp. 209-220, 2002.   3)「バルクキャリアの主要構造部材に対する設計荷重の実用的設定法に関する研究」、日本造船学会論文集, 第192号, pp. 723- 733, 2002.   は、最優秀論文として、   日本造船学会賞(The Prize of the Society of Naval Architects of Japan)、 日本造船工業会賞(The Prize of the Shipbuilding's Association of Japan)、 日本財団会長賞(The Prize of the Chairperson of the Nippon Foundation)   それぞれ授賞いたしました。それを今西様にご報告致します。これからも頑張って研究を続けって行きたいと思います。これからも宜しくお願い致します。   朱@日本海事協会  
  • 李鋼哲「地域協力の中心、狙う韓国」

    昨日朝日新聞に掲載された李鋼哲研究員のコラムです。   -----------------------------   地域協力の中心、狙う韓国   李 鋼哲(リ・ガンゼ) 新世紀アジア人開発研究センター理事長(中国)   イラク戦争が現実となり、日々戦火のニュースがメディアを埋め尽くす。北朝鮮の核開発をめぐる緊張を抱える朝鮮半島にどんな影響が出るのか。日本を含む北東アジアの平和と安定が大きく揺らぎかねない。   韓国は米韓同盟の立場からイラクでの対米支援を決断、反戦の声が高まる中、国会が派兵を認めたが、他方で対北平和解決の道を全力で模索している。   http://www.asahi.com/international/aan/column/030407.html  
  • マキト「マニラ・レポート」

    SGRA「グローバル化と日本の独自性」研究チームチーフ フェルディナンド・マキト   4月14日から一ヶ月、マニラに帰省した。その間、フィリピンで活躍している日系企業と国際組織を尋ねて、今後の研究のための資料やデータを収集した。秋にSGRAの顧問である平川均名古屋大学教授に研究客員として招聘していただいたので、今回のマニラの調査も参考にして研究を纏める予定にしている。   訪問したのは、富士通、ホンダ、トヨタのフィリピンにある子会社と、日本にその経営が任されたアジア開発銀行(ADB)の本部である。現地の協力者は、以前私が勤めたアジア太平洋大学(University of Asia and the Pacific、UAP)で、元同僚であったピター・ユー博士(Dr. Peter U)が担当してくれた。ユー博士は、多忙中にもかかわらず私の調査依頼を受けいれて、日系企業にアポイントを取ってくれた。企業訪問の目的は、フィリピンにある日系企業が、「共有された成長」という日本が体験した開発方法を、いかにフィリピンで実現しているかを調査するためである。全体的に印象的だったのは、訪問先の皆さんが大変協力的だったことだ。日本人役員の方々が会ってくださるか心配したが、結局、会長・社長クラスの方々が貴重な時間を割いてくださった。追加的なデータも後で送ってくださる。   アジア開発銀行では、いつも私の日本のODA研究に関してアドバイスしてくれる、フィリピンの友人に連絡したところ時間をかけて応対してくれた。ADB本部は私がUAP(当時まだ大学でなく研究所だった)に勤めたときには、マニラ湾に面しているところにあったが、今回はUAPの近くに移転したのでずいぶん便利になった。UAPのときの同僚とも偶然出会って協力してくれたのでラッキーだった。二回の訪問で、参考になることを色々と教えてくれた。この調査目的は、「自助努力を支援する」という理念を掲げている、ADBによる対フィリピンの日本ODAの経済学的評価である。   さらに、今回のマニラ滞在中、今年の秋に実施する予定のUAPと名古屋大学とのオンライン授業についてもあらためて確認した。テーマは「グローバル化のなかの日本」に決定した。   以上のプロジェクトは、名古屋大学の平川教授のご支援のもと実施するが、同時にフィリピンでのSGRAの存在感を強化することにも役立つと思っている。訪問先では必ずSGRAレポートを配って、私はSGRAの研究員として臨んだ。フィリピンのような発展途上国で活躍している日本の企業や組織が(他の国のやり方とは違う)日本独自の強いところをフィリピンでもちゃんと生かすことができているかを検証することと、日本に対する正しい理解を深め発信していくことが国際的なNGOとしてのSGRAの役割だと思っている。日本での「失われた10年間」は、海外で日本の強さが見失われた時期でもあったと考えれば、この役割の重要さが明らかであろう。 この場を借りて、滞在期間で協力していただいた下記の方々に改めて感謝の意を述べたい。 Shigeo Tsubotani Fujitsu Philippines, Inc. Chairman & CEO 高野 光成 Honda Cars Philippines, Inc. 取締役 社長 田畑 延明 Toyota Motor Philippines Corporation 社長 永峰 正昭 Fujitsu Computer Products Corporation of the Philippines 社長
  • 李鋼哲「イラク戦争を止めろ!!! 民主主義を救え!!!」

    SGRA研究員・李鋼哲   2003.3.18朝10時ブッシュの演説を聞きながら   アメリカ軍のイラク攻撃は秒読みの段階に入っている。今更戦争を止めろ、といっても止めそうでもない。だからといって、我々は「対岸の火事」を見ているだけでよろしいでしょうか。   国連の決議なしに単独主義行動で、アメリカなどがイラク攻撃を踏み込んだ場合、世界は第二次世界大戦後の最も深刻な危機に陥ることは間違いないと私は見ている。国際関係を見ると、「9.11」を契機に、世界はポスト冷戦時代の米国中心の「一超多強」世界秩序から、ポスト・ポスト冷戦時代に突入した。一時的な混乱を経て、世界はアメリカ「帝国」の衰退を迎え多極化時代に入るだろう。この転換期に国際社会が直面した危機は深刻である。   まずは、国際秩序の破壊危機である。戦後国際社会は資本主義勢力と共産主義勢力との対立が険しいなかでも、米ソ両超大国を中心とする均衡の取れた世界秩序を創った。もちろん、軍備競争や局部戦争は起こっていても、世界は第三次大戦にはならなかった。冷戦崩壊を迎えて、共産主義陣営は崩れ去り、アメリカ超大国が主導するグローバリズムの世界に入った。この秩序において、1991年に起こった湾岸戦争、昨年に起こったアフガニスタン戦争などは何れも国連決議に基づいて行っており、国連の結束と権威が一応保てられていた。しかし、今度のアメリカの軍事行動は、国連の賛成を得られないまま独走し、国際社会の秩序が破壊されてしまう危険性が非常に高い。そうなると、世界は冷静な価値判断基準が乱れることになり、正義と非正義が混沌してしまう。フセイン大統領は「世界各地が戦場になる」と宣言し、アラブ世界とアメリカなどとの対立が深まり、「9.11テロ」現象がアメリカを始め世界各地で起こっても不思議ではなくなるだろう。世界世論を背ける今度の戦争で、アメリカはイラクとともに敗者になるに違いない。   次は、国際的、国内的民主主義の危機である。国際社会において国連中心の体制においては一応の民主主義が貫徹されてきたが、アメリカ単独主義行動の独走に対して国際社会は歯止めをかける力を完全に失ってしまったのを見て、世界の人々は国連に対する強い不信感を抱くことになろう。一方国内では、とりわけイラク攻撃に参加する、またはこの戦争を支持する国々では、民主主義の深刻な危機を迎えざるを得ないだろう。ブッシュ政権、ブレア政権、小泉政権はいずれもが国民多数の反対を無視しており、民主主義を踏みにじっている。これらの政権はイラク戦争によりいずれも交替せざるを得ない運命になっていると私は見ている。   最後は、世界経済が深刻な危機に陥る。国際秩序の破壊、民主主義の危機は直接国際社会に対する経済界の不信感を強め、株価暴落を始め世界経済は大きな危機を迎えつつある。世界の3大経済大国アメリカ、日本、イギリスが国内市場の最大危機を迎えており、それが国際経済に与える影響は甚大である。世界同時不況はさらに深刻になるだろう。   このような国際社会が直面した危険、世界経済の危機を無視してまで行うイラク攻撃戦争に対して、地球市民としいてのSGRAは何を考え、何を発信すべきか。我々の発信が世界にとっては「茫々大海に投じた一石」に過ぎず、何にも役に立たないかも知れない。しかし、世界には我々と同じように、または我々よりもっと積極的に、ドラスティックに発信し、行動する市民やNGOが千万と数え切れないほど存在している。最近、世界各国で起こっている反戦デモを見てもこれは明らかであり、強まる市民社会の力を示している。   世界が直面した深刻な危機を転換させるために、我々は自分の声を世界に発信し、我々は自ずと行動を示さなければならない。戦争を止めるために、民主主義を救うために!!!   今、ブッシュの演説を聞いているが、全く説得力と論理性が見えない。頭が狂っている。