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2024.11.13
SGRAレポート第108号(日韓合冊)
第22 回 日韓アジア未来フォーラム
「ジェットコースターの日韓関係―何が正常で何が蜃気楼なのか」
2024年11月14日発行
<フォーラムの趣旨>
21 世紀の新しい日韓パートナーシップ共同宣言後、雪解け期を迎えた日韓関係は、その後浮き沈みを繰り返しながら最悪の日韓関係と言われる「失われた10 年」を経験した。徴用工問題に対する第三者支援解決法を契機に、2023 年の7回にわたる首脳会談を経て日韓関係は一挙に正常化軌道に乗った。一体、日韓関係において何が正常で、何が蜃気楼なのか? 徴用工問題解決の1年後の成果と課題、そして日韓協力の望ましい方向について考える。
<もくじ>
開会の辞
李 鎮奎(未来人力研究院)
南 基正(ソウル大学日本研究所)
【 第1部 報告と指定討論】日韓関係の復元、その一年の評価と課題
はじめに 座長:李 元徳(国民大学)
[報告1]
日韓関係の復元、その一年の評価と課題 政治・安保
西野純也(慶應義塾大学)
[報告2]
日韓関係の復元、その一年の評価と課題 経済・通商
李 昌玟(韓国外国語大学)
[報告3]
日韓関係の復元、その一年の評価と課題 社会・文化
小針 進(静岡県立大学)
[討論1] 西野純也先生の報告を受けて
金 崇培(釜慶大学)
[討論2] 李昌玟先生の報告を受けて
安倍 誠(アジア経済研究所)
[討論3] 小針進先生の報告を受けて
鄭 美愛(ソウル大学日本研究所)
[質疑応答]
【 第2部 パネル討論】 日韓協力の未来ビジョンと協力方向
座 長: 南 基正(ソウル大学日本研究所)
パネリスト: 西野純也(慶應義塾大学)
小針 進(静岡県立大学)
安倍 誠(アジア経済研究所)
崔 喜植(国民大学)
李 政桓(ソウル大学)
鄭 知喜(ソウル大学日本研究所)
趙 胤修(東北アジア歴史財団)
開会の辞
今西淳子(渥美国際交流財団・SGRA)
金 雄煕(現代日本学会)
講師略歴
あとがきにかえて
※所属は本フォーラム開催時のもの。
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2024.05.30
木々の青葉が美しく、吹く風も爽やかな2024年5月18日(土)の午後、ソウル大学国際大学院の会議室に日韓両国の研究者50名以上が集い、オンラインも組み合わせた第22回日韓アジア未来フォーラム「ジェットコースターの日韓関係-何が正常で何が蜃気楼なのか」が開催された。
2023年3月の徴用工問題の第三者支援解決法を契機に、7回にわたる首脳会談を経て日韓関係は一挙に正常化軌道に乗った。この1年間の成果と課題、日韓協力の望ましい方向について、政治・安保、経済・通商、社会・文化の3分野から検討した。
最初に未来人力研究院(未来財団)の李鎮奎(イ・ジンギュ)理事長から「渥美財団と未来財団は日韓両国がジェットコースターのようなアップ・ダウンの関係にある時も、ずっと友好関係を深めており、平坦な道を走るローラースケートのようである。両財団が30周年を迎えるが、この先40周年、50周年と手を携えて共同事業を続けて行けることを祈っている」とあいさつした。
ソウル大学日本研究所の南基正(ナム・キジョン)所長は「長崎県・対馬に行く船に乗った時に『日韓関係』を感じた。外の景色を見たくて窓際に座ったら波が荒くてひどく船酔いをしたが、真ん中で均衡を取りながら座った人は平気な顔をしていた。もうろうとする中で陸地に見えた蜃気楼は高い波だった。その時、早く陸に上がりたいなどと考えず、諦めも大事だと感じた。和解は単独で存在するものではない。日韓関係は複雑で難しく『あなたが思っていることが全てではない』ことを考える機会にしたい」と話した。
第1部「日韓関係の復元、その一年の評価と課題」では、まず、西野純也・慶應義塾大学教授が政治・安保分野の成果として、尹大統領と岸田首相による両国が協力パートナーであることの再確認、指導者間の信頼関係の構築、政府間の対話・協議チャンネルの復元と新設、政治家同士のネットワーク活性化などを挙げ、課題として、協力パートナーとしての国民的理解やコンセンサスの醸成、それに資する制度的措置の実施として欧州連合(EU)の歴史経験、国内政治からの悪影響の管理・低減、相互の政策・戦略への理解などを挙げ、残りの任期3年に尹政権が国民の支持をどう得ることができるかが重要であると述べた。
次に李昌ミン(イ・チャンミン)韓国外国語大学教授が、日本が方針表明後4カ月という短期間で韓国を安全保障上問題がない国として輸出手続きを簡略化する「グループA(旧ホワイト国)」へ再指定したことは、これまでの日本の行政手続きではなかったことと評価。2023年を起点に日韓関係は新たなステージに入った。経済安保は「大きな政府の時代」の到来を意味するが、日韓ともに企業のモチベーションやインセンティブを考慮しないと政策的連帯が滞る可能性があり、総選挙後の韓国の「与小野大」の状況、日本のリーダーシップの状況、米大統領選でのトランプ氏の帰還の可能性などを総合的に考慮した協力のシナリオが必要と展望した。
最後に小針進・静岡県立大学教授が、この5年間の音楽動向をまとめた「オリコンランキング」で韓国のBTSが日本で一番売れたこと、日本の輸入化粧品第1位は韓国であり、日本の女性がファッションの参考にしている国も韓国が1位であると指摘した上で、社会・文化の全ての動向がこの1年間で「復元」した訳ではないが、政治・外交関係の「復元」が日韓間の人の往来を増幅し、人的交流や文化交流にプラスに作用したことは間違いないと評価。良好な関係維持に新しい日韓共同宣言は必要なのか、新しいビジョン(ジェンダー、少子高齢化、環境、災害、国際協力、対北朝鮮・・・)とは何か、そもそも宣言を発出できる政治環境なのかと問いかけた。
3人の発表に対して3人の討論者からのコメントがあった。金崇培(キム・スンべ)釜慶大学准教授は、西野教授の報告(関係修復に向けた動き、1年の成果、課題)に対してひとつひとつ丁寧に論評した。安倍誠・アジア経済研究所上席主任調査研究員は、李教授の「2023年に日韓関係が新たなステージに入る中で、新たに協力と競争の重層的関係を構築する空間が広がるだろうが、日韓協力のあり方を議論する際には政治状況を考慮する必要がある」という主張に同意し、補足的なコメントを行った。鄭美愛(ジョン・ミエ)ソウル大学日本研究所客員研究員は、小針教授の観点については全面的に共感するが、討論を引き受けた立場でと前置きした上、「宣言を発出できる政治環境」について質問した。
休憩の後の第2部「日韓協力の未来ビジョンと協力方向」ではパネル討論が行われた。国民大学の崔喜植(チェ・ヒシク)先生、ソウル大学の李政桓(イ・ジョンファン)先生、ソウル大学日本研究所の鄭知喜(チョン・チヒ)先生、東北アジア歴史財団の趙胤修(チョ・ユンス)先生、西野教授、小針教授、安倍研究員の7名が順次発言した。小針教授の「日韓それぞれが相手国をどう見ているのかという面で不安になった。今後、政権が変わったらどうなるのか?2019年当時、韓国に対する日本の見方は慰安婦、徴用工などを蒸し返す国という認識があった。一方、韓国側の持っている不安も理解できる。日本に対する不満もあると思う。不安と不満はあっても不信を招かないようにするにはどうするかが大事である。メディアには正確な報道をお願いしたい。糾弾する報道は『不信』を招く」とのコメントが印象的だった。
閉会にあたり、渥美国際交流財団の今西淳子常務理事が「今回のフォーラムは未来人力研究院だけでなく、韓国の現代日本学会、ソウル大学日本研究所との共同主催ということで、韓国で開催した日韓アジア未来フォーラムでは最大規模となった。渥美財団は日本の大学院で博士論文を執筆中の若手研究者を支援する奨学財団で、現代日本学会の金雄熙会長、ソウル大学日本研究所の南基正所長は1996年度に支援させていただいたご縁で、その後30年間途切れることなく交流を続けている。こういうことは滅多になく、本日は本当に奨学財団冥利に尽きると感じている」と感謝を述べた。
最後に日韓アジア未来フォーラム存続の立役者の金雄熙仁荷大学教授が「日韓関係は激しく上へ行ったり下へ行ったりジェットコースターのようだ。一定の動力があればジェットコースターは軌道から脱線しない。日韓関係にはその動力が働くだけに『山あり谷あり』を楽しめるようになりたい」と挨拶した。
フォーラム終了後、参加者はソウル大学の近くの学生街でサムギョプサルと「爆弾酒」を楽しんだ。
当日の写真
<原田健(はらだ・けん)HARADA Ken>
渥美国際交流財団事務局長。鹿島建設(株)、(一社)日本建設業連合会を経て、2023年より渥美財団で勤務。
2024年6月30日配信
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2024.04.16
下記の通り第22回日韓アジア未来フォーラムをソウル大学国際大学院会議室とZoomのハイブリッド形式で開催しますので奮ってご参加ください。
テーマ:「ジェットコースターの日韓関係-何が正常で何が蜃気楼なのか」
日 時:2024年5月18日(土)14:00~17:40
共同主催:(財)未来人力研究院(韓国)、ソウル大学日本研究所、(社)韓国現代日本学会、(公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)
方 法:ソウル大学国際大学院140-2棟4階国際会議室およびZoom
言 語:日本語・韓国語(同時通訳)
参加費:無料
お問い合わせ:SGRA事務局(
[email protected] +81-(0)3-3943-7612)
参加方法:
◇会場参加ご希望の方は、直接会場へお越しください。
◇オンライン参加ご希望の方は、下記リンクより聴講していただけます。
-ZOOM ID: 891 2903 1030
-ZOOMリンク: https://snu-ac-kr.zoom.us/j/89129031030
※以前掲載していたものとZoom ID、リンクが変更になりましたのでご注意ください。
◆フォーラムの趣旨
21世紀の新しい日韓パートナーシップ共同宣言後、雪解け期を迎えた日韓関係は、その後浮き沈みを繰り返しながら最悪の日韓関係と言われる「失われた10年」を経験した。徴用工問題に対する第三者支援解決法を契機に、2023年の7回にわたる首脳会談を経て日韓関係は一挙に正常化軌道に乗った。一体、日韓関係において何が正常で、何が蜃気楼なのか?徴用工問題解決の1年後の成果と課題、そして日韓協力の望ましい方向について考える。日韓同時通訳付き
◆プログラム
《開会》午後2時
司会:嚴泰奉(オム・テボン:現代日本学会総務理事)
【開会の辞】
李鎮奎(イ・ジンギュ:未来人力研究院理事長)
南基正(ナム・キジョン:ソウル大学日本研究所長)
◇第1部 報告と指定討論:日韓関係の復元、その一年の評価と課題 (100分)
司会:李元徳(イ・ウォンドク:国民大学教授)
【報告1】西野純也(にしの・じゅんや:慶応大学教授)
「日韓関係の復元、その一年の評価と課題:政治安保」15分
【報告2】李昌玟(イ・チャンミン:韓国外国語大学教授)
「日韓関係の復元、その一年の評価と課題:経済通商」15分
【報告3】小針進(こはり・すすむ:静岡県立大学教授)
「日韓関係の復元、その一年の評価と課題:社会文化」15分
【討論1】金崇培(キム・スンベ:釜慶大学日語日文学部准教授)7分
【討論2】安部誠(あべ・まこと:アジア経済研究所上席主任調査研究員)7分
【討論3】鄭美愛(ジョン・ミエ:ソウル大学日本研究所客員研究員)7分
◇第2部 パネル討論:日韓協力の未来ビジョンと協力方向 (80分)
司会:南基正(ナム・キジョン:ソウル大学日本研究所長)
【パネリスト】
西野純也(にしの・じゅんや:慶応大学)
小針進(こはり・すすむ:静岡県立大学)
安部誠(あべ・まこと:アジア経済研究所)
崔喜植(チェ・ヒシク:国民大学)
李政桓(イ・ジョンファン:ソウル大学)
鄭知喜(チョン・チヒ:ソウル大学日本研究所)
趙胤修(チョ・ユンス:東北アジア歴史財団)
【閉会の辞】
今西淳子(いまにし・じゅんこ:渥美国際交流財団常務理事・SGRA代表)
金雄煕(キム・ウンヒ:韓国現代日本学会長)
《閉会》午後5時40分
詳細はプログラムをご覧ください。
プログラム(日本語)
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2023.11.07
SGRAレポート第104号(日韓合冊)
第21回 日韓アジア未来フォーラム
「新たな脅威(エマージングリスク)・新たな安全保障(エマージングセキュリティ) ――これからの政策への挑戦」
2023年11月15日発行
<フォーラムの趣旨>
冷戦後の国際関係において非軍事的要素の重要性を背景にグローバルな経済対立、貧富格差の拡大、そして気候変動、先端技術の侵害、サイバー攻撃、パンデミックなどが新しい安全保障の範疇に含まれるようになってきた。伝統的な安全保障問題が地理的に近接した国家間で発生する事案抑止を前提とするのに対して、新たな安全保障上のリスクは突発的に発生し、急速に拡大し、さらにグローバルネットワークを通じて国境を超える。 多岐にわたり複雑に絡み合う新しい安全保障のパラダイムを的確に捉えるためには、より精緻で包括的な分析やアプローチが必要なのではないだろうか。
本フォーラムでは、韓国における「エマージングセキュリティ(新たな安全保障)」研究と日本における「経済安全保障」研究を事例として取り上げ、今日の安全保障論と政策開発の新たな争点と課題について考察した。
<もくじ>
【第1セッション】
[基調講演1]エマージングセキュリティ、新しい安全保障パラダイムの浮上
金 湘培(ソウル大学政治外交学部教授)
[基調講演2]経済安全保障・技術安全保障の現在
鈴木一人(東京大学公共政策大学院教授)
【第2セッション】
[コメント1]基調講演を受けて
李 元徳(国民大学校社会科学大学教授)
[コメント2]複合地政学への対応としての日韓協力
西野純也(慶應義塾大学法学部政治学科教授)
[コメント3]韓国と日本の共通の挑戦
林 恩廷(国立公州大学国際学部副教授)
[コメント4]安保、国家、リベラリズム
金 崇培(国立釜慶大学日本学専攻助教授)
【第3セッション】 自由討論/質疑応答
司 会: 金 雄熙(仁荷大学国際通商学部教授)
討論者:
金 湘培(ソウル大学政治外交学部教授)
鈴木一人(東京大学公共政策大学院教授)
李 元徳(国民大学校社会科学大学教授)
西野純也(慶應義塾大学法学部政治学科教授)
林 恩廷(国立公州大学国際学部副教授)
金 崇培(国立釜慶大学日本学専攻助教授)
総括・閉会挨拶
平川 均( 名古屋大学名誉教授/渥美国際交流財団理事、第21 回日韓アジア未来フォーラム実行委員長)
講師略歴
あとがきにかえて
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2023.05.25
長く続いたコロナ禍もようやく落ち着きはじめた2023年4月22日(土)、第21回日韓アジア未来フォーラムが渥美財団ホールにてハイブリッド・ウェビナー方式で開催された。2019年3月23日にソウルで第18回フォーラムが開催されて以来2回続けてオンライン開催だったが、今回は4年ぶりに日韓両国の研究者が顔を向き合わせて開催できるようになり、感無量の思いだ。
今回のテーマは「新たな脅威(エマージングリスク)・新たな安全保障(エマージングセキュリティ)―これからの政策への挑戦―」。多岐にわたり複雑に絡み合う新しい安全保障のパラダイムを的確に捉えるためには、より精緻で包括的な分析やアプローチが必要であるという問題意識から、韓国における「エマージングセキュリティ「新興安全保障」」研究と日本における「経済安全保障」研究を事例として取り上げ、今日の安全保障論と政策開発の新たな争点と課題について考察した。
テーマ設定に際して以下のいきさつがある。渥美国際交流財団・SGRAはアジアの主要都市を巡回してアジア未来会議を開催しており、昨年は第6回を台湾で開催した。そこでコロナパンデミックに代表される安全保障への新しい脅威と新たな国際協力について、ソウル大学の金湘培(キム・サンベ)教授(韓国国際政治学会会長=当時)が非常に挑戦的で印象的な講演を行った。それが契機となり、さらに議論を深めるために今回のフォーラムを開催する運びとなった。
「エマージングセキュリティ」は新たな安全保障及びその創発メカニズムを指す新しい概念であり、韓国の学界や政界の一部では「新興安全保障」と呼んでいる。一般に新しい概念は受容と変形、または外部の衝撃とそれに伴う内部の対応から生まれるものだろうが、それにはさらに複雑な事情が介入してくる。新しい概念は、切迫した必要性がない限り導入されない。こうしたためか今回のテーマ名を決める際にも「新興安全保障」概念をめぐって相当の議論を重ね、最終的には「エマージングセキュリティ」にした。
フォーラムでは、韓国未来人力研究院の徐載鎭(ソ・ジェジン)院長による開会の挨拶に続き、韓国と日本から2名の専門家による基調講演が行われた。金湘培教授は「エマージングセキュリティ」創発の条件、そのメカニズムとプロセス、そして複合地政学との連携性、エマージング平和構想の必要性についての問題提起を中心に基調報告を行った。東京大学の鈴木一人教授は新たな安全保障の最前線に位置する経済安保について、地経学的観点から昨今の経済安保脅威の本質と日本の先導的対応について講演した。お二人の講演は問題認識が非常に似ていながらも、一方は理論的アプローチ、もう一方は具体的かつ政策的議論という違いがあったが、韓国と日本のそれぞれの現実に立脚した興味深い議論を展開した。
基調講演に続き、4人の討論者からコメントがあった。まず「エマージングセキュリティ」論や経済安保論の観点から見て、韓日関係の現在をどう評価できるのか、また韓日関係の未来ビジョンはどのように設計すべきかについて国民大学の李元徳(イ・ウォンドク)教授のコメントがあった。次に複合地政学への対応としての日韓協力とその可能性について慶應義塾大学の西野純也教授がオンラインでコメントした。公州大学の林恩廷(イム・ウンジョン)副教授は、韓国と日本の共通した挑戦とエマージング平和に向けた日韓協力の可能性の観点から興味深い議論を展開した。最後に釜慶大学の金崇培(キム・スンベ)助教授は複雑化する「安保」概念について、国内および国際関係におけるリベラリズム的思考と実践が持つ意味、そして韓日が協力可能な「安保」とは何かについて問題提起を行った。
振り返ってみると、鈴木一人教授を基調講演者として招待し、日本の経済安全保障に向けた政策的対応について具体的な話を聞くことができたことは、フォーラムをより豊かで有意義にする決め手の一つだった。鈴木教授を招待するのにご尽力くださった渥美財団の渥美直紀理事長、船橋洋一評議員に深く感謝したい。そして当日に台湾から会場に直行する厳しい日程を快く受諾し、万が一に備えてオンライン講演のための30分の録画まで準備してくださった鈴木教授にも感謝の言葉を申し上げざるを得ない。
素晴らしい総括を務めてくださった平川均先生、会議のために苦労を惜しまなかった渥美国際交流財団スタッフの皆さん、同時通訳のイ・ヘリさん、アン・ヨンヒさん、発表資料の翻訳を担当してくださった尹在彦(ユン・ジェオン)さん、Q&Aを翻訳してくださったノ・ジュウンさん、そして最後にコロナ禍の中でもフォーラムが持続できるように後援を惜しまなかった今西淳子常務理事と李鎮奎(リ・ジンギュ)教授に心より感謝申し上げたい。
忘れてはいけないことがもう一つ。帰国日の日曜朝、一人のパスポートがないことに気づき、大騒ぎとなった。フォーラム終了後に銀座の飲食店で落としたのではないかと思われるが、探す時間も方法もなく、韓国大使館領事部に緊急連絡し、臨時パスポートを作っていただき、予定通りの帰国便に乗ることができた。一時はパニックになったが、スリル満点だった。遺失物届け出で日本の交番にも大変お世話になった。この場を借りて感謝申し上げたい。
写真アルバム
アンケート集計結果
<金雄熙(キム・ウンヒ)KIM_Woonghee>
仁荷大学国際通商学部教授、副学長。ソウル大学外交学科卒業。筑波大学大学院国際政治経済学研究科修士、博士号取得。仁荷大学国際通商学部専任講師、副教授、教授を経て2022年9月より副学長。最近は国際開発協力、地域貿易協定に興味をもっており、東アジアにおける地域協力と統合をめぐる日・米と中国の競争と協力について研究を進めている。1996年度渥美国際交流財団奨学生。
2023年5月25日配信
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2023.03.15
下記の通り第21回日韓アジア未来フォーラム「新たな脅威(エマージングリスク)・新たな安全保障(エマージングセキュリティ)-これからの政策への挑戦-」をオンラインで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。一般聴講者はカメラもマイクもオフのウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。
テーマ:「新たな脅威(エマージングリスク)・新たな安全保障(エマージングセキュリティ)-これからの政策への挑戦-」
日 時: 2023年4月22日(土)14:00~17:00
方 法: 渥美財団ホールおよびZoomウェビナー
言 語: 日本語・韓国語(同時通訳)
主 催:第21回日韓アジア未来フォーラム実行委員会
共 催:公益財団法人渥美国際交流財団関口グローバル研究会/財団法人未来人力研究院(韓国)
参加費:無料
申 込: こちらよりお申し込みください
お問い合わせ:SGRA事務局(
[email protected] +81-(0)3-3943-7612)
■フォーラムの趣旨
冷戦後の国際関係において非軍事的要素の重要性を背景にグローバルな経済対立、貧富格差の拡大、そして気候変動、先端技術の侵害、サイバー攻撃、パンデミックなどが新しい安全保障の範疇に含まれるようになってきた。伝統的な安全保障問題が地理的に近接した国家間で発生する事案抑止を前提とするのに対して、新たな安全保障上のリスクは突発的に発生し、急速に拡大し、さらにグローバルネットワークを通じて国境を超える。多岐にわたり複雑に絡み合う新しい安全保障のパラダイムを的確に捉えるためには、より精緻で包括的な分析やアプローチが必要なのではないだろうか。
フォーラムでは、韓国における「エマージング・セキュリティー(新たな安全保障)」研究と日本における「経済安全保障」研究を事例として取り上げ、今日の安全保障論と政策開発の新たな争点と課題について考察する。
■プログラム
総合司会 金雄熙(韓国仁荷大学教授)
第1セッション(14:00 - 15:05)
開会挨拶 徐 載鎭(財団法人未来人力研究院院長)
基調講演1 金 湘培(ソウル大学政治外交学部教授) 30分
「エマージング・セキュリティー、新たな安全保障パラダイムの浮上」
現代ではパンデミック、気候変動、大規模自然災害、サイバーセキュリティー、新技術、人口・移民・難民の危機などのこれまでとは質的に異なるグローバルな課題が安全保障上の脅威として拡大している。本講演では、こうした脅威に対応する方策としての「エマージング・セキュリティー(emerging security、新たな安全保障)」をテーマとする。これまでも脱冷戦(Post-Cold War)を背景に新しい安全保障のパラダイムを理論化しようとする試みがなかったわけではない。9・11 同時多発テロ以降の脱近代(post-modern)安保秩序への変換と、2020 年代の人間中心の安保秩序からコンピューターが人類の知性を超えるポスト・ヒューマン(post-human)秩序への変換を視野に入れてきたが、現代の安全保障問題を扱うには不十分な点が多い。パンデミックやサイバー攻撃のような脅威が突発的に発生し、急速に拡大してマクロリスクとして現れ、そして、グローバル化・ネットワーク化を通じて国境を超えるのがエマージング・セキュリティーの特徴である。こうしたエマージング・セキュリティー研究は、既存の「非伝統的安全保障(non-traditional security)」または「新安全保障(new security)」などの概念を超えるより積極的で新しい安全保障パラダイムの浮上として捉えることができ、国家単位で政治・軍事的安全保障を強調した従来の伝統的安全保障パラダイムを越えようとする概念的な試みなのである。
基調講演2 鈴木 一人 (東京大学公共政策大学院教授)30分
「日本における経済安全保障をめぐる議論」
第二次大戦後の世界秩序の基本には、政治と経済が分離し、政治は経済に介入しないという自由市場経済、自由貿易があった。こうした自由貿易の原則は資源の乏しい日本においてその経済成長を可能にする重要な役割を果たしたが、近年はその状況が変わっている。米中対立による政治的目的の手段としての経済、武器としての相互依存が一般化する中で、経済を使った国家間対立と、経済的強制が新たな脅威となっている。こうした脅威を管理するために、国際競争力、経済的・技術的優位性の確保が最優先課題となり、一方では研究開発を促進し、他方では技術管理、輸出管理の強化が進んでいる。日本におけるその現状を報告する。
(休 憩 10分)
第2セッション(15:15 - 15:55)各10分
コメント 李 元徳(国民大学校社会科学大学教授)
コメント 西野純也 (慶應義塾大学法学部政治学科教授・オンライン)
コメント 林 恩廷 (公州大学国際学部副教授)
コメント 金 崇培 (国立釜慶大学人文社会科学部助教授)
第3セッション(15:55 - 16:45)
自由討論/質疑応答(モデレータ: 金雄熙)
総括・閉会(16:45~17:00)
平川 均
(名古屋大学名誉教授/渥美国際交流財団 理事/第21回日韓アジア未来フォーラム実行委員長)
[ 同時通訳 ]
日本語⇔韓国語:李 ヘリ(韓国外国語大学)、安 ヨンヒ(韓国外国語大学)
[ プログラムの詳細は、下記リンクをご参照ください ]
プロジェクト概要
韓国語版ウェブサイト
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2022.11.28
SGRAレポート第100号(日韓合冊)
第20 回 日韓アジア未来フォーラム
「進撃のKカルチャー―新韓流現象とその影響力」
2022年11月16日発行
<フォーラムの趣旨>
BTS は国籍や人種を超え、一種の地球市民を一つにしたコンテンツとして、グローバルファンダムを形成し、BTS 現象として世界的な注目を集めている。一体BTS の文化力の源泉をなすものは何か。BTS 現象は日韓関係、地域協力、そしてグローバル化にどのようなインプリケーションをもつものなのか。
本フォーラムでは日韓、アジアの関連専門家を招き、これらの問題について幅広い観点から議論するため、日韓の基調報告をベースに討論と質疑応答を行った。
<もくじ>
【開会の辞】
今西淳子(渥美国際交流財団常務理事・SGRA代表)
【第1 部】
[報告1]
文化と政治・外交をめぐるモヤモヤする「眺め」
小針 進(静岡県立大学教授)
[報告2]
BTSのグローバルな魅力―外的、環境条件と内的、力量の要因―
韓 準(延世大学教授)
【第2 部】
[ミニ報告]
ベトナムにおけるKポップ・Jポップ
チュ・スワン・ザオ(ベトナム社会科学院文化研究所上席研究員)
[講演者と討論者の自由討論]
討論者: 金 賢旭(国民大学教授)
平田由紀江(日本女子大学教授)
【第3 部】
[質疑応答]
進 行:
金 崇培(釜慶大学日語日文学部准教授)
金 銀恵(釜山大学社会学科准教授)
回答者:
小針 進(静岡県立大学教授)
韓 準(延世大学教授)
平田由紀江(日本女子大学教授)
【閉会の辞】 徐 載鎭(ソ・ゼジン:未来人力研究院院長)
講師略歴
あとがきにかえて
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2022.06.06
2022年5月14日(土)、新型コロナウイルスが「終盤」の猛威を振るう中、第20回日韓アジア未来フォーラムが前回同様Zoomウェビナー方式で開催された。これまで2回続けて日韓関係の「暗い」部分を扱ってきたが、今回は今西さんのご提案で「明るい」部分について議論することにし、「防弾少年団(BTS)」の文化力に焦点を当て「進撃のKカルチャー:新韓流現象とその影響力」について議論を交わした。日韓、そしてベトナムから専門家を招き、BTSの文化力の源泉をなすものは何か、BTS現象は日韓関係、地域協力、そしてグローバル化にどのようなインプリケーションをもつものなのかなどについて幅広い観点から検討した。
フォーラムでは、渥美国際交流財団SGRAの今西淳子(いまにし・じゅんこ)代表による開会の挨拶に続き、日本と韓国から2名の専門家による基調報告が行われた。まず、小針進(こはり・すすむ)静岡県立大学教授は「文化と政治・外交をめぐるモヤモヤする『眺め』」という題で、政治と文化を切り離せない葛藤、政治ニュースの韓国とInstagramの韓国のギャップへの葛藤、文化消費と政治的価値観・世代間の差への葛藤、魅了する文化と不安定な大統領の国に対する葛藤、反日・親日騒動と嫌韓助長への葛藤、政治的表明とその反発への葛藤、政治の文化への介入と「推し」の反日疑惑への葛藤、熱心なファン集団「ファンダム」のSNS投稿を素直に楽しめない葛藤、アーティスト批判の嫌韓論への葛藤、以前は日本が韓国の手本だったことに対する葛藤など、日本の大学生が経験している文化と政治をめぐる葛藤とモヤモヤする「眺め」の実体を様々な側面から生々しく描いた。
韓準(ハン・ジュン)延世大学教授は、「BTSのグローバルな魅力」について、外的環境的な要因と内的力量的な要因に分けて考察した研究結果を報告した。まず、外的、環境的な要因として、グローバル文化における中心―周辺関係の弱化又は解体、文化的趣向におけるヒエラルキーの弱化とオムニボア(雑食性)の登場、文化的価値としてのハイブリッドと真正性の結合、個人化したデジタル媒体によるマスメディアの代替を挙げた。そして内的、力量的な要因として音楽スタイルやパフォーマンス能力の卓越性、真正性とアイデンティティの結合を通じた共感の拡大、グローバルファンダムである「アーミー(BTS公式ファンクラブ)」の強力なサポートを指摘した。
第2部に入り、ミニ報告では、チュ・スワン・ザオ(Chu Xuan Giao)ベトナム社会科学院文化研究所上席研究員が、ベトナムにおけるKポップ・Jポップ、ベトナムからのKポップ・Jポップの現状を紹介し、文化資源としてのVポップの可能性について若干の考察を加えた。自由討論では、金賢旭(キム・ヒョンウク)国民大学教授が日本の伝統芸能の一分野である能との比較から、平田由紀江(ひらた・ゆきえ)日本女子大学教授がメディア・文化研究の観点からそれぞれコメントした。
第3部では、金崇培(キム・スンベ)国立釜慶大学准教授と金銀恵(キム・ウンヘ)釜山大学准教授のアシストでウェビナー画面の「Q&A 機能」を使って一般参加者との質疑応答が行われた。最後は、徐載鎭(ソ・ゼジン)未来人力研究院院長により、日韓アジア未来フォーラムの経緯や役割についての熱いコメントと閉会の辞で締めくくられた。今回は250を超える一般からの参加申し込みがあり、最多時の参加者が170人を上回った。静岡県立大学、仁荷大学から若い学生の参加も多かった。十分な質疑応答が行われたとは言い切れない部分もあるが、アンケートを通じて多くの参加者からフォーラムの感想などが寄せられた。「フォーラムは期待通りであった」(「大いに期待通り」56.6%、「だいたい期待通り」38.4%)と答えた人の割合が95%を占めており、「新韓流現象やモヤモヤの正体が分かった」との感想もあった。
今回は第20回という節目だったにもかかわらず、惜しくもコロナ禍で記念行事や日韓アジア未来フォーラムならではの「番外」はなかった。次回は20年を振り返りつつ、ぜひ「春鹿」と「爆弾酒」を飲みながらの会にしたいと思う。最後に第20回目のフォーラムが成功裏に終わるよう支援を惜しまなかった今西SGRA代表と李鎮奎未来人力研究院前理事長(咸鏡道知事)、そして前回同様ウェビナーの準備に万全を期し、完璧なフォーラムに仕上げてくれたスタッフの皆さんのご尽力に感謝の意を表したい。
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<金雄煕(キム・ウンヒ)KIM Woonghee>
89年ソウル大学外交学科卒業。94年筑波大学大学院国際政治経済学研究科修士、98年博士。博士論文「同意調達の浸透性ネットワークとしての政府諮問機関に関する研究」。99年より韓国電子通信研究員専任研究員。00年より韓国仁荷大学国際通商学部専任講師、06年より副教授、11年より教授。SGRA研究員。代表著作に、「日韓基本条約の意義と限界」『日本研究論叢』第43号、2016年;日本の自由で開かれたインド太平洋構想と包摂的競争のジレンマ」『日本研究論叢』第54号、2021年;『現代日本政治の理解』共著、韓国放送通信大学出版部、2022年。最近は国際開発協力、地域貿易協定に興味をもっており、東アジアにおける地域協力と統合をめぐる日・米と中国の競争と協力について研究を進めている。
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2022.04.08
下記の通り日韓アジア未来フォーラムをオンラインにて開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。聴講者はカメラもマイクもオフのZoomウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。
テーマ:「進撃のKカルチャー:新韓流現象とその影響力」
日 時: 2022年5月14日(土)15:00~17:00
方 法: Zoomウェビナー による
言 語: 日本語・韓国語(同時通訳付き)
主 催: (公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会 [SGRA] (日本)
共 催: (財)未来人力研究院(韓国)
申 込: こちらよりお申し込みください
お問い合わせ:SGRA事務局(
[email protected] +81-(0)3-3943-7612)
■ フォーラムの趣旨
BTSは国籍や人種を超え、一種の地球市民を一つにしたコンテンツとして、グローバルファンダムを形成し、BTS現象として世界的な注目を集めている。一体BTSの文化力の源泉をなすものは何か。BTS現象は日韓関係、地域協力、そしてグローバル化にどのようなインプリケーションをもつものなのか。本フォーラムでは日韓、アジアの関連専門家を招き、これらの問題について幅広い観点から議論してみたい。日韓の基調報告をベースに討論と質疑応答を行う。
日韓同時通訳付き
■ プログラム
《開会》
司会:金雄煕(キム・ウンヒ、仁荷大学教授)
【開会の辞】:今西淳子(いまにし・じゅんこ:渥美国際交流財団常務理事・SGRA代表)
第1部 講演
【講 演 1】「文化と政治・外交をめぐるモヤモヤする「眺め」」
小針進(こはり・すすむ:静岡県立大学教授)
【講 演 2】「BTSのグローバルな魅力」
韓準(ハン・ジュン:延世大学教授)
【休 憩】
第2部 討論
【ミニ報告】「ベトナムにおけるKポップ・Jポップ」
チュ・スワン・ザオ(Chu Xuan Giao:ベトナム社会科学院文化研究所上席研究員)
【講演者と討論者の自由討論】
金賢旭(キム・ヒョンウク:国民大学教授)、
平田由紀江(ひらた・ゆきえ:日本女子大学教授)、
第3部 質疑応答
【質疑応答】
アシスタント:金崇培(キム・スンベ:釜慶大学日語日文学部准教授)
金銀恵(キム・ウンヘ:釜山大学社会学科准教授)
Zoom ウェビナーのQ&A機能を使い質問やコメントを視聴者より受け付ける
【閉会の辞】:徐載鎭(ソ・ゼジン:未来人力研究院院長)
《閉会》
韓国語版サイト
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2021.11.09
SGRAレポート第95号(日韓合冊)
第19回日韓アジア未来フォーラム
「岐路に立つ日韓関係: これからどうすればいいか」
2021年11月17日発行
<フォーラムの趣旨>
歴史、経済、安保がリンケージされた複合方程式をうまく解かなければ、日韓関係は破局を免れないかもしれないといわれて久しい。日韓相互のファティーグ(疲れ)は限界に達し、日韓関係における復元力の低下、日米韓の三角関係の亀裂を憂慮する雰囲気は改善の兆しを見せていない。尖鋭な対立が続いている強制徴用(徴用工)及び慰安婦問題に関連し、韓国政府は日本とともに解決策を模索する方針であるが、日本政府は日本側に受け入れられる解決策をまず韓国が提示すべきであるという立場である。なかなか接点を見つけることが難しい現状である。
これからどうすればいいか。果たして現状を打開するためには何をすべきなのか。日韓両国政府は何をすべきで、日韓関係の研究者には何ができるか。本フォーラムでは日韓関係の専門家を日韓それぞれ4名ずつ招き、これらの問題について胸襟を開いて議論してみたいと考え、日韓の基調報告をベースに討論と質疑応答を行った。
<もくじ>
第1部 講演および指定討論
【講演1】 岐路に立つ日韓関係:これからどうすればいいか----日本の立場から
小此木 政夫(慶應義塾大学名誉教授)
【指定討論1】 小此木先生の講演を受けて
沈 揆先(ソウル大学日本研究所客員研究員)
【講演2】 岐路に立つ日韓関係:これからどうすればいいか---- 韓国の立場から
李 元徳(国民大学教授)
【指定討論2】 李元徳先生の講演を受けて
伊集院 敦(日本経済研究センター首席研究員)
第2部自由討論
討論者
金 志英(漢陽大学副教授) 西野純也(慶應義塾大学教授)
小針 進(静岡県立大学教授) 朴 栄濬(国防大学教授)
第3部 質疑応答
司会アシスタント 金 崇培(忠南大学招聘教授)
あとがきにかえて
金 雄煕(仁荷大学教授)
講師略歴