SGRAメールマガジン バックナンバー
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GU Jiachen “Becoming a Scholar of the Displaced: ‘Searching for Pokémon’ as Methodology”
2025年4月24日 13:24:25
********************************************** SGRAかわらばん1060号(2025年4月24日) 【1】SGRAエッセイ:顧嘉晨「目指せ 遺民博士―方法としての『ポケモン探し』―」 【2】寄贈本紹介:武内今日子『非二元的な性を生きる』 【3】第76回SGRAフォーラムへのお誘い(5月2日、トルコ・チャナッカレ+オンライン) 「中近東・東南アジアからみる日本と暮らす日本:それぞれの視点で考える」(再送) *********************************************** 【1】SGRAエッセイ#789 ◆顧嘉晨「目指せ 遺民博士―方法としての『ポケモン探し』―」 「テレビで映画をやってる!男の子が4人、線路の上を歩いている……僕ももう行かなくちゃ!」。 いつからだろうか、私の目標は子供の頃に憧れていた「ポケモンマスター(携帯獣達人)」から、「イミンドクター(遺民博士)」へと変わっていった。国が滅び、遺された民、縮めて「遺民」、この世の不思議な集団、「江南」に「中州」に「日ノ本」に、その数は100、200、300……いや、それ以上かもしれない。 私の研究対象はこの「遺民」と呼ばれている人たちだ。「遺民」とは何だろうか?簡単に言えば、「遺民」とは、旧王朝が滅びた後も生き残り、あるいは義を守り、新王朝に仕えることを拒んだ人々を指す。日本人になじみのある概念では、主家を失った「浪人」(例えば『忠臣蔵』)が最も近い存在だろう。中でも私は、漢人政権の明から満洲政権の清へという王朝交代を生き抜いた遺民、さらには中国大陸から逃れ日本へ渡った遺民たちを主な研究対象としている。 研究方法は主に文献学の手法を用いながら、フィールドワークも行う。歴史学者として遺民を追う作業は、私にとって「ポケモン探し」にとてもよく似ている。「遺民博士」の仕事とは、歴史の闇に埋もれてしまった未知の遺民を発掘し、図鑑を完成させることに他ならない。まず、膨大な古書の中から「野生」の遺民を探し出す。だが、注意を怠ると、彼らは逃げて行ってしまう。そして、古書だけではなく、山中の寺院、大名の屋敷、果ては墓地に至るまで、冒険の旅が必要になる。特に寺院においては、秘蔵の史料が外部に公開されることが少ない。まず「ミッション」をクリアしないと隠し場所に入ることすら許されない場合もある。 調査の途中では、遺民にゆかりのある庭園や橋、書道作品、石碑などに出会うこともしばしば。そうした瞬間、時を超え、昔の遺民たちと交錯する感覚に陥る。まるで彼らと「対話」をしているような不思議なひとときである。遺民を「捕まえる」ことに成功した後は、彼らを「遺民図鑑(遺民録)」に登録。その上で、分析と研究を重ね、論文として発表することで図鑑の説明文を埋めていく。最終的には、パートナーである遺民と学術成果を携えて学会に発表――ポケモンゲームのように「バトル」を行い、トレーナーやジムリーダー、さらには四天王に挑むことになる。ただし、ゲームと同様に、その遊び方や楽しみ方は人それぞれ。私の夢は「チャンピオン」になることではなく、図鑑を完成させ、本物の「遺民博士」となることだ。 私の研究の旅は、修士課程で明の遺民・王夫之という人物を選んだことから始まった。王夫之は顧炎武、黄宗羲とともに「明末清初の三大師(三大儒)」と称され、遺民の中でも最も著名な三人のうちの一人。私は彼らを明遺民の「御三家」と呼びたい(王夫之は当時あまり知られておらず、清末になって同郷の曾国藩によって発掘された人物)。この「御三家」を初期パートナーとして修士論文を完成させたことで、本格的に「遺民博士」への旅路を歩み始めた。博士課程に進学する前、指導教官の小島毅博士から「顧君も曾国藩のように、将来は王夫之に匹敵する遺民を発掘してほしい」と言われた。その言葉を胸に、博士課程では、さらに知られざる遺民たちを探し求めた。広く知られる南方の遺民だけではなく、北方の李楷や日本に逃れた戴曼公、張斐といった人物も対象とした。 遺民を発掘する際、よく使うのは「芋づる式」という「遺民捕獲」のコツだ。東洋文化研究所の大木康博士から学んだ方法で、遺民の友人たちもまた多くが遺民であることから、一人を見つけると、繋がりを辿って次々と新たな遺民を発見できるというものだ。この連鎖が続くと、時には非常にレアな「伝説遺民」に巡り会う。特に未知の遺民や未発掘の史料を第一発見者として見つける瞬間は、新種のポケモンを発見した時のような感動がある。最近、約400年前に明の遺民が記した『宋遺民広録』という失われた書物を再発見した。この発掘過程は、まるで「古びた海図」を手に「最果ての孤島」へ向かい、ミュウと出会う旅のようだった。遺民を探し出す過程は「ポケモン探し」のようなもので、その過程には驚きと発見が詰まっており、楽しさに満ちている。 幾多の試練を乗り越え、遺民研究学界の「マスター」になるために、そして最高の「ドクター」になるために、新たな出会いを繰り返しながら、遺民仲間たちとの旅は今日も続く。続くったら続く…… <顧嘉晨(こ・かしん)GU Jiachen> 2024年度渥美国際交流財団奨学生。東京大学大学院人文社会系研究科(アジア文化研究専攻東アジア思想文化専門分野)博士課程。日本学術振興会特別研究員DC1、国際日本文化研究センター特別共同利用研究員を経て、現在桜美林大学リベラルアーツ学群非常勤講師。専攻は遺民思想史。日本儒教学会賞受賞。 ------------------------------------------ 【2】寄贈本紹介 SGRA会員で東京大学特任助教の武内今日子さんからご著書をご寄贈いただきましたので紹介します。 ◆武内今日子『非二元的な性を生きる』 「Xジェンダー」「ノンバイナリー」「オーバージェンダー」「インタージェンダー」……「男」「女」に当てはまらない性のカテゴリーは、どのようにして用いられてきたのか? 30人ほどへのインタビューやミニコミ誌・インターネット上のテクストをもとに、1990年代から2010年代の日本におけるXジェンダーやノンバイナリーなど「男」「女」に当てはまらない非二元的な性概念が用いられてきた歴史をたどる。第五回東京大学而立賞受賞。 発行:明石書房 判型・ページ数:A5・360ページ 出版年月日:2025/03/20 ISBN:9784750359120 詳細は下記リンクをご覧ください。 https://www.akashi.co.jp/book/b659860.html ------------------------------------------ 【3】第76回SGRAフォーラム「中近東・東南アジアからみる日本と暮らす日本」へのお誘い(再送) 下記の通り第76回SGRAフォーラム「中近東・東南アジアからみる日本と暮らす日本:それぞれの視点で考える」を対面とオンラインのハイブリットで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。 テーマ:「中近東・東南アジアからみる日本と暮らす日本:それぞれの視点で考える」 日 時:2025年5月2日(金)10:00~15:00(トルコ時間)/16:00~21:00(日本時間) 方 法:会場参加とオンライン参加(Zoomウェビナーによる)のハイブリット開催 会 場:チャナッカレ・オンセキ・マルト大学(COMU)アナファルタラル・キャンパス 教育学部4階セミナーホール 言 語:日本語 ※オンライン参加の方は下記より直接おはいりください。 https://us02web.zoom.us/j/85115416326 お問い合わせ:SGRA事務局([email protected]) ◆フォーラムの趣旨 中近東や東南アジアでアニメ・マンガなど日本のポップカルチャーへの関心が急上昇している。日本語学習のきっかけとなることも多い。トルコ語に翻訳された日本のアニメや漫画が飛躍的に増えているように、日本ポップカルチャーはブームだ。日本研究においても、これらの地域でなぜ日本文化の受容が広がっているのか、なぜ若者が日本語に特別な関心を持つようになったのかをもっと議論すべきであろう。 一方、日本には中近東や東南アジアの国々から来た多くのイスラム教の移住者がいるが、日本語や文化、教育の環境に順応しようとしながら生活する中で、さまざまな困難に直面している。まずは言語の壁や文化的な違いによる摩擦が大きな課題だ。また、日本で生まれ育った子どもたちにとっては、自らのルーツに基づくアイデンティティーや宗教教育に関する問題も浮上している。 フォーラムでは、こうした課題に焦点を当て、第1部では中近東の日本語教育と日本研究を考える。第2部では、日本文化の受容と日本語教育を内側から議論をするために日本社会と共生する外国人コミュニティー、特に、イスラム文化圏から来た移民が直面する問題を深く掘り下げ、具体的な努力や解決策を模索する場としたい。 中近東や東南アジア地域における日本文化の需要を外側と内側からとらえることにより、今日の世界における日本のソフトパワーの位置づけが可能になるだろう。 ◆プログラム 【第1部】中近東の若者にとっての日本語学習と日本文化 ◇「トルコに於ける日本語教育と学習者の最初の混乱:カタカナ」 Levent_TOKSOZ(Tekirdag_Namik_Kemal_University・NKU) ◇「トルコの若者のアニメとマンガ関心:現実逃避、別世界とアイデンティティー」 Melek_CELIK(COMU) ◇「イランの若者と日本語・日本文化:メディア、教育、就職、そして未来展望」 Ayat_HOSSEINI(テヘラン大学) ◇討論「中近東の日本語・日本文化イメージを再考察する」 Jianjun_SUN(北京大学)、Miyuki_ICHIMURA(COMU)、Shorina_DARIYAGUL(筑波大学) 【第2部】日本におけるイスラムコミュニティーの日本文化受容と日本語教育 ◇「在日の中東出身者における日本語習得過程の変容と影響要因に関する考察」 Akbari_HOURIEH(神田外国語大学) ◇「在日インドネシアコミュニティーと多文化共生:イスラム教育を中心に」 Mya_Dwi_ROSTIKA(大東文化大学) ◇【討論】「日本の国際化の中の外国人コミュニティーを再考察する」 Zeynep_GEN?ER_BALO?LU(Pamukkale_University・PAU)、Murat_?AKIR(関西外国語大学) 詳細は下記リンクをご参照ください。 ※プログラム https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2025/04/forum76program.pdf ※ポスター https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2025/04/76_SGRA_ForumV8-scaled.jpg 皆さまのご参加をお待ちしております。 ***************************************** ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
SATO Yuna “Dialogue Across Categories”
2025年4月17日 14:49:04
********************************************** SGRAかわらばん1059号(2025年4月17日) 【1】SGRAエッセイ:佐藤祐菜「カテゴリーを超えた対話を―『国際交流』を再考する」 【2】寄贈本紹介:賈海涛『流動と混在の上海文学』 【3】第76回SGRAフォーラムへのお誘い(5月2日、トルコ・チャナッカレ+オンライン) 「中近東・東南アジアからみる日本と暮らす日本:それぞれの視点で考える」(再送) *********************************************** 【1】SGRAエッセイ#788 ◆佐藤祐菜「カテゴリーを超えた対話を―『国際交流』を再考する」 2023年の夏、留学中だったオーストラリア・アデレードで、渥美国際交流財団の奨学金申請書類に取り組んでいた。「国際交流への関心」という課題を見て、「これは私にぴったりのテーマだ」と思った。私自身や家族は多文化の背景を持ち、高校生の頃から自治体や学校の国際交流や留学プログラムに積極的に参加してきた。だからこそ、私はこの財団が求める人材に違いないと、根拠のない自信すら抱いた。しかし、審査を意識するあまり、実際に書いた内容は「国際交流とはかくあるべきだ」という一般的な枠組みに沿うものだった。あの時は書ききれなかった本音を、奨学期間が終わる今、改めて率直に綴ってみたい。 国際交流の場では、しばしば「○○人」と「××人」といった対比がなされる。あたかも、明確に定義された2つの文化が交わるかのように。例えば、過去に私が参加したプログラムでは、「日本人として恥ずかしくない行動を!」、「日本人としての誇りをもって」、「日本文化を外国人に伝えよう!」といった言葉が飛び交っていた。これらの言説には暗黙の前提が含まれている。1つ、画一的で普遍的な「日本文化」が存在すること。2つ、「日本人」であれば、それを知っていて当然であること。3つ、その場にいる参加者全員が「日本人」であること。これらの前提は本当に正しいのだろうか。 例えば、プログラムに参加していた人々が同じ文化的背景を持っていたかというと、そうではない。沖縄出身の友人は「お節料理を食べたことがない」と言い、広島出身の友人は「3.11を経験していないことに負い目を感じる」と語った。その場には在日コリアンの友人や、ミックスルーツの人もいた。それでも「日本人としての文化的統一性」が求められる場面では、こうした個々の違いは無いものとして扱われたり、「例外」として扱われたりする。私自身、日韓の背景を持つが、国際交流の活動におけるそのような言説に対し、違和感を覚えることがある。それは、アイデンティティを「勝手に決めないでほしい」という思いと、狭い「日本人らしさ」に押し込められる息苦しさがあるからだ。 私は研究を通じて、「日本人らしさ」がどのように定義され、それと「ハーフ」というカテゴリーがどのように関係しているのかを社会学的に分析してきた。「ハーフ」はしばしば画一的な「日本人」イメージを広げる存在として語られる。だが、実際には見た目や振る舞いといった「日本人らしさ」からの部分的な逸脱を説明するための「ラベル」として機能している。「この人は日本人っぽくない」と感じたとき、「ハーフなのでは?」と推測することで、その違和感を説明しようとする。私の調査では、外国にルーツがないにもかかわらず「ハーフ」と誤認される人々も含まれていた。つまり、マジョリティ・「日本人」とされる人々の間にも見た目や振る舞い方や文化といった多様性はあるはずなのに、そうした多様性はしばしば無視され、「ハーフ」といった単純化されたカテゴリーに押し込められてしまうのだ。 こうしたカテゴリーの枠を外して考えると気づくことがある。「○○人」や「ハーフ」といった言葉では捉えきれない多様性が存在することに。世界は単純な二分法では説明できず、三分法や四分法でも十分に捉えきれない。「画一的な国・人と、画一的な国・人同士の交流」という、一般的な国際交流の捉え方には限界がある。国際交流とは、異なる2つの文化の間に橋をかけることだけではない。むしろ、個々の背景や経験を尊重し、固定化されたカテゴリーを超えて対話することではないだろうか。 <佐藤祐菜(さとう・ゆな)SATO Yuna> 神奈川県平塚市出身。2024年度渥美国際交流財団奨学生。専門は国際社会学および人種・エスニシティ研究。2025年4月より特任研究員(日本学術振興会特別研究員PD)として東京大学社会科学研究所に所属。慶應義塾大学社会学研究科後期博士課程在学中に南オーストラリア大学とのダブルディグリー制度に参加し、2023年3月から一年間、オーストラリア・アデレードに留学。2025年3月に慶應義塾大学で博士号(社会学)を取得し、2025年5月に南オーストラリア大学からも博士号を取得予定。 ------------------------------------------ 【2】寄贈本紹介 SGRA会員で神奈川大学特任助教の賈海涛さんからご著書をご寄贈いただきましたので紹介します。 ◆賈海涛『流動と混在の上海文学』 中国で最大の経済力を誇りつつも、反都市イデオロギーや標準語の普及によって地域文化と方言が危機に瀕する上海。この都市出身の作家や知識人は、どのようにこの現状と向き合っているのか?旧租界へのノスタルジア、移住者集団への注目、上海語での創作の試み、これらは文学にどのように映し出されるのか。本書では、方言、文化、移住者といった視点から、上海文学における流動的で混在する「地域性」を探求する。 発行:ひつじ書房 A5判上製カバー装 定価:6200円+税 ISBN:978-4-8234-1285-1 装丁:坂野公一(welle_design) 詳細は下記リンクをご覧ください。 https://www.hituzi.co.jp/hituzibooks/ISBN978-4-8234-1285-1.htm ------------------------------------------ 【3】第76回SGRAフォーラム「中近東・東南アジアからみる日本と暮らす日本」へのお誘い(再送) 下記の通り第76回SGRAフォーラム「中近東・東南アジアからみる日本と暮らす日本:それぞれの視点で考える」を対面とオンラインのハイブリットで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。 テーマ:「中近東・東南アジアからみる日本と暮らす日本:それぞれの視点で考える」 日 時:2025年5月2日(金)10:00~15:00(トルコ時間)/16:00~21:00(日本時間) 方 法:会場参加とオンライン参加(Zoomウェビナーによる)のハイブリット開催 会 場:チャナッカレ・オンセキ・マルト大学(COMU)アナファルタラル・キャンパス 教育学部4階セミナーホール 言 語:日本語 申 込:参加申込(参加には事前登録が必要です) https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_riLvAnD5RwKdQVoGTNrPNA#/registration お問い合わせ:SGRA事務局([email protected]) ◆フォーラムの趣旨 中近東や東南アジアでアニメ・マンガなど日本のポップカルチャーへの関心が急上昇している。日本語学習のきっかけとなることも多い。トルコ語に翻訳された日本のアニメや漫画が飛躍的に増えているように、日本ポップカルチャーはブームだ。日本研究においても、これらの地域でなぜ日本文化の受容が広がっているのか、なぜ若者が日本語に特別な関心を持つようになったのかをもっと議論すべきであろう。 一方、日本には中近東や東南アジアの国々から来た多くのイスラム教の移住者がいるが、日本語や文化、教育の環境に順応しようとしながら生活する中で、さまざまな困難に直面している。まずは言語の壁や文化的な違いによる摩擦が大きな課題だ。また、日本で生まれ育った子どもたちにとっては、自らのルーツに基づくアイデンティティーや宗教教育に関する問題も浮上している。 フォーラムでは、こうした課題に焦点を当て、第1部では中近東の日本語教育と日本研究を考える。第2部では、日本文化の受容と日本語教育を内側から議論をするために日本社会と共生する外国人コミュニティー、特に、イスラム文化圏から来た移民が直面する問題を深く掘り下げ、具体的な努力や解決策を模索する場としたい。 中近東や東南アジア地域における日本文化の需要を外側と内側からとらえることにより、今日の世界における日本のソフトパワーの位置づけが可能になるだろう。 ◆プログラム 【第1部】中近東の若者にとっての日本語学習と日本文化 ◇「トルコに於ける日本語教育と学習者の最初の混乱:カタカナ」 Levent_TOKSOZ(Tekirdag_Namik_Kemal_University・NKU) ◇「トルコの若者のアニメとマンガ関心:現実逃避、別世界とアイデンティティー」 Melek_CELIK(COMU) ◇「イランの若者と日本語・日本文化:メディア、教育、就職、そして未来展望」 Ayat_HOSSEINI(テヘラン大学) ◇討論「中近東の日本語・日本文化イメージを再考察する」 Jianjun_SUN(北京大学)、Miyuki_ICHIMURA(COMU)、Shorina_DARIYAGUL(筑波大学) 【第2部】日本におけるイスラムコミュニティーの日本文化受容と日本語教育 ◇「在日の中東出身者における日本語習得過程の変容と影響要因に関する考察」 Akbari_HOURIEH(神田外国語大学) ◇「在日インドネシアコミュニティーと多文化共生:イスラム教育を中心に」 Mya_Dwi_ROSTIKA(大東文化大学) ◇【討論】「日本の国際化の中の外国人コミュニティーを再考察する」 Zeynep_GEN?ER_BALO?LU(Pamukkale_University・PAU)、Murat_?AKIR(関西外国語大学) 詳細は下記リンクをご参照ください。 ※プログラム https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2025/04/forum76program.pdf ※ポスター https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2025/04/76_SGRA_ForumV8-scaled.jpg 皆さまのご参加をお待ちしております。 ***************************************** ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
Khin Maung Htwe “Myanmar Earthquake Experience”
2025年4月10日 13:58:20
********************************************** SGRAかわらばん1058号(2025年4月10日) 【1】SGRAエッセイとご支援のお願い:キン・マウン・トウエ「ミャンマー大地震の経験」 【2】第75回SGRAフォーラム・第45回持続的な共有型成長セミナーへのお誘い(4月12日、東京+オンライン)(最終案内) 「東アジア地域市民の対話:国境を超える地方自治体・地域コミュニティ連携構想(LLABS)の可能性を探る」 【3】第76回SGRAフォーラムへのお誘い(5月2日、トルコ・チャナッカレ+オンライン)(再送) 「中近東・東南アジアからみる日本と暮らす日本:それぞれの視点で考える」 *********************************************** 【1】SGRAエッセイ#787とご支援のお願い ※「ミャンマー大地震復興支援活動のための募金」を応援していただける方は、下記リンクのフォームにご記入の上指定口座にお振込みください。ご寄付の全額をキンさんにお届けします。 https://forms.gle/qdqAzYyxgjdkZEYv5 ◆キン・マウン・トウエ「ミャンマー大地震の経験」 2025年3月28日午後12時50分(日本時間:15時20分)、ミャンマーの中心部にあるマンダレー市の近くサガイーを震源にマグニチュード7.7の大地震が発生した。地震の経験が少ないミャンマーの人々にとっては、瞬時に自分が生き残れるかが決まる一生忘れられない出来事だった。予測もしていなかったし経験もないから、地震直後は困難なことがたくさんあった。 「サガイー断層(Sagaing_Fault)」と呼ばれる1200キロ以上もある長い断層がミャンマーを南北に縦断していることは、1930年ごろから専門家によって指摘されていた。今回の大地震を引き起こした動きは「ストライクスリップ」であり、2つのブロックがお互いに水平に動いた。実は、サガイー断層プレートを中心とした大地震が100年後(現在)に起きるとも予測されていた。 ミャンマーの首都ネピィドー管区、マンダレー管区、サガイー管区、南シャン州に大きな被害が起きて多くの建物が潰れた。4月1日に死亡者2719人、負傷者4521人、行方不明441人と発表があり、その後も増加し続けている。 多くの高層ビル(例えば11階建て1000室以上のスカイヴィラ高級マンション)が潰れ、たくさんの命が失われた。地震の後、マンダレーの街に出てみると、家を失ってホームレス生活をしている人々がたくさん居た。命が残されても食料や水、寝る場所、仕事場がなくなり、夢を失い、心の傷を負っている。階段を見るだけで怖い、家は残ったが戻るのが怖い。一瞬のうちにホームレス生活になった友人たちを見て、支える言葉も出ない。40度以上の暑さは被災者の健康をむしばむ。5月になれば雨季に入り、テント生活もできなくなる。被災者のために心が痛む。 自分に命が残されたのは幸せなことだった。地震が起きた時、マンダレー市にある市民病院に2カ月半前から入院している91歳の父親のところに居た。父を背負って4階から階段で運び出した。父はこの混乱によるショックで危機的な状態に陥ったが、病院スタッフのみなさんのおかげで助かった。 地震が発生した時、家族はばらばらだった。幸いにも病院のインターネットがまだ使える状態だったので、バンコク留学中の娘から連絡があり、お互いの無事を確認した。マンダレーの学校に通っている次女は潰れた校舎から抜け出し、先生たちと避難したとの連絡があり安堵した。6階の自宅に居た妻と息子に連絡が取れなくて心配したが、2時間後に私が経営する居酒屋のスタッフと避難したとの連絡を受け、やっと全員の無事が確認できた。「イビススタイルホテル」内にある「居酒屋秋籾(AKIMOMI)」は大きな被害を受け、日本から苦労して輸入した大事な食器や飾り物が壊れてしまった。ただ、マンダレーから車で1時間ほど離れた避暑地ピンウーリンで経営する「ホテル秋籾」は、日本人の設計と監督によって建設されたこともあってか、大地震の影響はほぼない。 今回の大地震によって、家族とスタッフ全員の命に影響が無かったのは幸せだった。そこで、被災者のために私ができることをしようと考えて支援活動を始めた。まず、「ホテル秋籾」に滞在しているマンダレーからの被災者(多くは、年配の方たちと子供たち)に心の傷を短時間でも忘れてもらうために、特別な夕食を無料で提供して皆さんに美味しく、楽しく過ごしていただいた。部屋代の割引やできる限りのサービスを行った。ホテルに滞在している100人ぐらいの被災者しか支援できないので、お弁当も作って病院に差し入れた。 今、私の力ではお弁当や飲み水を配布することしかできない。これから必要になる医薬品やドライフード、ソーラー電気関係やテント、寝具など被災者支援のための募金を始めた。このエッセイを読まれる皆様にも「ミャンマー大地震復興支援活動のための募金」にご協力を願いしたい。 ※地震被害の状況や支援活動の写真を下記リンクよりご覧いただけます。 https://www.aisf.or.jp/sgra/plan/photo-gallery/2025/20232/ <キン・マウン・トウエ Khin Maung Htwe> ミャンマーで「小さな日本人村」と評価されている「ホテル秋籾(AKIMOMI)」の創設者、オーナー。マンダレー大学理学部応用物理学科を卒業後、1988年に日本へ留学、千葉大学工学部画像工学科研究生終了、東京工芸大学大学院工学研究科画像工学専攻修士、早稲田大学大学院理工学研究科物理学および応用物理学専攻博士、順天堂大学医学部眼科学科研究生終了、早稲田大学理工学部物理学および応用物理学科助手、Ocean_Resources_Production社長を経て「ホテル秋籾」を創設。SGRA会員。 ------------------------------------------ 【2】第75回SGRAフォーラム・第45回持続的な共有型成長セミナーへのお誘い(最終案内) 下記の通り第75回SGRAフォーラム・第45回持続的な共有型成長セミナー「東アジア地域市民の対話」を対面とオンラインのハイブリットで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。 テーマ:「東アジア地域市民の対話 国境を超える地方自治体・地域コミュニティ連携構想(LLABS)の可能性を探る」 日 時:2025年4月12 日(土)午後2時~午後5時(日本時間) 方 法:会場参加とオンライン参加(Zoomウェビナーによる)のハイブリット開催 会 場:桜美林大学新宿キャンパス創新館(南館)JS302号室 https://www.obirin.ac.jp/access/shinjuku/ 言 語:日本語・英語(同時通訳) 申 込:参加申込(参加には事前登録が必要です) https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_6rSMRrVaRw-wmMhl6Cc3RQ#/registration お問い合わせ:SGRA事務局([email protected]) ◆フォーラムの趣旨 地理学的にいえば、「東アジア」は、北東アジア(日本、中国、韓国)と東南アジア(ASEAN加盟国)の双方から構成され、「多様性の中の調和」原則の現出ともいえる「東アジア統合」というASEAN+3(日中韓)のビジョンを共有している。東アジアはこのビジョンに向けて大きな前進を遂げたが、近年中国が関わる出来事がビジョンに向けた地域の進歩を頓挫させていることも否定できない。 国境を超える地方自治体・地域コミュニティ連携構想(Local-to-Local-Across-Border-Schemes、以下LLABS)は、渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)とフィリピン大学ロスバニョス校(UPLB)経営開発学部(CPAf)のさまざまなコラボレーションとして、フェルディナンド・C・マキト博士が主導する「持続可能な共有成長セミナー」を通じて生まれた。UPLBチームは、フィリピン内務省の地方政府アカデミーと地方自治省のためにLLABS研究プロジェクトを実施した。 本フォーラムでは、桜美林大学グローバル・コミュニケーション学群とSGRAの協力によって、これまで主にフィリピンで検討されてきたLLABS構想について、北東アジアの研究者と一緒に議論し、実現の可能性について探る。 会場とオンラインのハイブリッド形式で開催し、共催のフィリピン大学オープンユニバーシティ(UPOU)を通じて広くオンライン参加者を募る。 ◆プログラム ◇基調講演 「国境を超える地方自治体・地域コミュニティ連携構想(LLABS)の概要と意義」 フェルディナンド・マキト(フィリピン大学オープンユニバーシティ(UPOU)講師) ◇討論1<ASEAN+3と日本。LLABSの可能性> 「コミュニティ連携:成長のトライアングル、中華街、「カレー移民」に見る教訓」 佐藤考一(桜美林大学リベラルアーツ学群教授) ◇討論2<ASEAN+3と中国。LLABSの可能性> 「中国および東北アジア地域における越境開発協力と地方自治体国際協力の枠組み」 李鋼哲(INAF研究所代表理事・所長) ◇討論3<ASEAN+3と韓国。LLABSの可能性> 「韓国地方政府の国際レジーム形成の取り組み:日中韓地方政府交流会議を事例として」 南基正(ソウル大学日本研究所所長) ◇討論4<ASEAN+3と台湾。LLABSの可能性> 「政治的制約を超える台湾と東南アジアの「非政府間」の強い結びつき」 林泉忠(東京大学東洋文化研究所特任研究員) ◇自由討論 フィリピン市民の意見 … ジョアン・セラノ(フィリピン大学オープンユニバーシティ教授) インドネシア市民の意見 … ジャクファル・イドルス(国士舘大学21世紀学部専任講師) タイ市民の意見 … モトキ・ラクスミワタナ(早稲田大学アジア太平洋研究科) ◇総括 平川均(名古屋大学名誉教授) 詳細は下記リンクをご覧ください。 ※プログラム https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2025/01/SGRAForum75Program.pdf ※英語版プログラム https://www.aisf.or.jp/sgra/english/2025/02/06/forum75kkk45/ ------------------------------------------ 【3】第76回SGRAフォーラム「中近東・東南アジアからみる日本と暮らす日本」へのお誘い(再送) 下記の通り第76回SGRAフォーラム「中近東・東南アジアからみる日本と暮らす日本:それぞれの視点で考える」を対面とオンラインのハイブリットで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。 テーマ:「中近東・東南アジアからみる日本と暮らす日本:それぞれの視点で考える」 日 時:2025年5月2日(金)10:00~15:00(トルコ時間)/16:00~21:00(日本時間) 方 法:会場参加とオンライン参加(Zoomウェビナーによる)のハイブリット開催 会 場:チャナッカレ・オンセキ・マルト大学(COMU)アナファルタラル・キャンパス 教育学部4階セミナーホール 言 語:日本語 申 込:参加申込(参加には事前登録が必要です) https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_riLvAnD5RwKdQVoGTNrPNA#/registration お問い合わせ:SGRA事務局([email protected]) ◆フォーラムの趣旨 中近東や東南アジアでアニメ・マンガなど日本のポップカルチャーへの関心が急上昇している。日本語学習のきっかけとなることも多い。トルコ語に翻訳された日本のアニメや漫画が飛躍的に増えているように、日本ポップカルチャーはブームだ。日本研究においても、これらの地域でなぜ日本文化の受容が広がっているのか、なぜ若者が日本語に特別な関心を持つようになったのかをもっと議論すべきであろう。 一方、日本には中近東や東南アジアの国々から来た多くのイスラム教の移住者がいるが、日本語や文化、教育の環境に順応しようとしながら生活する中で、さまざまな困難に直面している。まずは言語の壁や文化的な違いによる摩擦が大きな課題だ。また、日本で生まれ育った子どもたちにとっては、自らのルーツに基づくアイデンティティーや宗教教育に関する問題も浮上している。 フォーラムでは、こうした課題に焦点を当て、第1部では中近東の日本語教育と日本研究を考える。第2部では、日本文化の受容と日本語教育を内側から議論をするために日本社会と共生する外国人コミュニティー、特に、イスラム文化圏から来た移民が直面する問題を深く掘り下げ、具体的な努力や解決策を模索する場としたい。 中近東や東南アジア地域における日本文化の需要を外側と内側からとらえることにより、今日の世界における日本のソフトパワーの位置づけが可能になるだろう。 ◆プログラム 【第1部】中近東の若者にとっての日本語学習と日本文化 ◇「トルコに於ける日本語教育と学習者の最初の混乱:カタカナ」 Levent_TOKSOZ(Tekirdag_Namik_Kemal_University・NKU) ◇「トルコの若者のアニメとマンガ関心:現実逃避、別世界とアイデンティティー」 Melek_CELIK(COMU) ◇「イランの若者と日本語・日本文化:メディア、教育、就職、そして未来展望」 Ayat_HOSSEINI(テヘラン大学) ◇討論「中近東の日本語・日本文化イメージを再考察する」 Jianjun_SUN(北京大学)、Miyuki_ICHIMURA(COMU)、Shorina_DARIYAGUL(筑波大学) 【第2部】日本におけるイスラムコミュニティーの日本文化受容と日本語教育 ◇「在日の中東出身者における日本語習得過程の変容と影響要因に関する考察」 Akbari_HOURIEH(神田外国語大学) ◇「在日インドネシアコミュニティーと多文化共生:イスラム教育を中心に」 Mya_Dwi_ROSTIKA(大東文化大学) ◇【討論】「日本の国際化の中の外国人コミュニティーを再考察する」 Zeynep_GENCER_BALOGLU(Pamukkale_University・PAU)、Murat_CAKIR(関西外国語大学) 詳細は下記リンクをご参照ください。 ※プログラム https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2025/04/forum76program.pdf ※ポスター https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2025/04/76_SGRA_ForumV8-scaled.jpg 皆さまのご参加をお待ちしております。 ***************************************** ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ************************************** -
Invitation to the 76th SGRA Forum in Çanakkale, Turkey
2025年4月3日 20:02:08
********************************************** SGRAかわらばん1057号(2025年4月3日) 【1】第76回SGRAフォーラムへのお誘い(5月2日、トルコ・チャナッカレ+オンライン) 「中近東・東南アジアからみる日本と暮らす日本」 【2】第75回SGRAフォーラム・第45回持続的な共有型成長セミナーへのお誘い(4月12日、東京+オンライン)(再送) 「東アジア地域市民の対話:国境を超える地方自治体・地域コミュニティ連携構想(LLABS)の可能性を探る」 *********************************************** 【1】第76回SGRAフォーラム「中近東・東南アジアからみる日本と暮らす日本」へのお誘い 下記の通り第76回SGRAフォーラム「中近東・東南アジアからみる日本と暮らす日本:それぞれの視点で考える」を対面とオンラインのハイブリットで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。 テーマ:「中近東・東南アジアからみる日本と暮らす日本:それぞれの視点で考える」 日 時:2025年5月2日(金)10:00~15:00(トルコ時間)/16:00~21:00(日本時間) 方 法:会場参加とオンライン参加(Zoomウェビナーによる)のハイブリット開催 会 場:チャナッカレ・オンセキ・マルト大学(COMU)アナファルタラル・キャンパス 教育学部4階セミナーホール 言 語:日本語 申 込:参加申込(参加には事前登録が必要です) お問い合わせ:SGRA事務局([email protected]) ■フォーラムの趣旨 中近東や東南アジアでアニメ・マンガなど日本のポップカルチャーへの関心が急上昇している。日本語学習のきっかけとなることも多い。トルコ語に翻訳された日本のアニメや漫画が飛躍的に増えているように、日本ポップカルチャーはブームだ。日本研究においても、これらの地域でなぜ日本文化の受容が広がっているのか、なぜ若者が日本語に特別な関心を持つようになったのかをもっと議論すべきであろう。 一方、日本には中近東や東南アジアの国々から来た多くのイスラム教の移住者がいるが、日本語や文化、教育の環境に順応しようとしながら生活する中で、さまざまな困難に直面している。まずは言語の壁や文化的な違いによる摩擦が大きな課題だ。また、日本で生まれ育った子どもたちにとっては、自らのルーツに基づくアイデンティティーや宗教教育に関する問題も浮上している。 フォーラムでは、こうした課題に焦点を当て、第1部では中近東の日本語教育と日本研究を考える。第2部では、日本文化の受容と日本語教育を内側から議論をするために日本社会と共生する外国人コミュニティー、特に、イスラム文化圏から来た移民が直面する問題を深く掘り下げ、具体的な努力や解決策を模索する場としたい。 中近東や東南アジア地域における日本文化の需要を外側と内側からとらえることにより、今日の世界における日本のソフトパワーの位置づけが可能になるだろう。 ■プログラム 総合司会:Irmak_Kilkesen(COMU)・Arif_Celebi_Metin(COMU) 10:00-10:10 開会挨拶 Eiichi_TSUNODA(渥美国際交流財団) Tolga_OZSEN(COMU) 10:10-11:30 第1部:中近東の若者にとっての日本語学習と日本文化 司会:Kazuma_IWATA(東京外国語大学) オンラインQ&A:Aqil CHEDDADI(慶應義塾大学) 10:10-10:30「トルコに於ける日本語教育と学習者の最初の混乱:カタカナ」 Levent_TOKSOZ(Tekirdag_Namik_Kemal_University・NKU) 10:30-10:50「トルコの若者のアニメとマンガ関心:現実逃避、別世界とアイデンティティー」 Melek_CELIK(COMU) 10:50-11:10「イランの若者と日本語・日本文化:メディア、教育、就職、そして未来展望」 Ayat_HOSSEINI(テヘラン大学) 11:10-11:30【討論】「中近東の日本語・日本文化イメージを再考察する」 Jianjun_SUN(北京大学) Miyuki_ICHIMURA(COMU) Shorina_DARIYAGUL(筑波大学) 11:30-13:30 休憩・ランチ 13:30-15:00 第2部:日本におけるイスラムコミュニティーの日本文化受容と日本語教育 司会:Aqil_CHEDDADI(慶應義塾大学) オンラインQ&A:Kazuma_IWATA(東京外国語大学) 13:30-13:50「在日の中東出身者における日本語習得過程の変容と影響要因に関する考察」 Akbari_HOURIEH(神田外国語大学) 13:50-14:10「在日インドネシアコミュニティーと多文化共生:イスラム教育を中心に」 Mya_Dwi_ROSTIKA(大東文化大学) 14:10-14:40 【討論】「日本の国際化の中の外国人コミュニティーを再考察する」 Zeynep_GENCER_BALOGLU(Pamukkale_University・PAU) Murat_CAKIR(関西外国語大学) 14:40-14:50 総括 詳細は、下記リンクをご参照ください。 ※プログラム https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2025/04/forum76program.pdf ※ポスター https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2025/04/76_SGRA_ForumV8-scaled.jpg 皆さまのご参加をお待ちしております。 ------------------------------------------ 【2】第75回SGRAフォーラム・第45回持続的な共有型成長セミナーへのお誘い(再送) 下記の通り第75回SGRAフォーラム・第45回持続的な共有型成長セミナー「東アジア地域市民の対話」を対面とオンラインのハイブリットで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。 テーマ:「東アジア地域市民の対話 国境を超える地方自治体・地域コミュニティ連携構想(LLABS)の可能性を探る」 日 時:2025年4月12 日(土)午後2時~午後5時(日本時間) 方 法:会場参加とオンライン参加(Zoomウェビナーによる)のハイブリット開催 会 場:桜美林大学新宿キャンパス創新館(南館)JS302号室 https://www.obirin.ac.jp/access/shinjuku/ 言 語:日本語・英語(同時通訳) 申 込:参加申込(参加には事前登録が必要です) https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_6rSMRrVaRw-wmMhl6Cc3RQ#/registration お問い合わせ:SGRA事務局([email protected]) ◆フォーラムの趣旨 地理学的にいえば、「東アジア」は、北東アジア(日本、中国、韓国)と東南アジア(ASEAN加盟国)の双方から構成され、「多様性の中の調和」原則の現出ともいえる「東アジア統合」というASEAN+3(日中韓)のビジョンを共有している。東アジアはこのビジョンに向けて大きな前進を遂げたが、近年中国が関わる出来事がビジョンに向けた地域の進歩を頓挫させていることも否定できない。 国境を超える地方自治体・地域コミュニティ連携構想(Local-to-Local-Across-Border-Schemes、以下LLABS)は、渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)とフィリピン大学ロスバニョス校(UPLB)経営開発学部(CPAf)のさまざまなコラボレーションとして、フェルディナンド・C・マキト博士が主導する「持続可能な共有成長セミナー」を通じて生まれた。UPLBチームは、フィリピン内務省の地方政府アカデミーと地方自治省のためにLLABS研究プロジェクトを実施した。 本フォーラムでは、桜美林大学グローバル・コミュニケーション学群とSGRAの協力によって、これまで主にフィリピンで検討されてきたLLABS構想について、北東アジアの研究者と一緒に議論し、実現の可能性について探る。 会場とオンラインのハイブリッド形式で開催し、共催のフィリピン大学オープンユニバーシティ(UPOU)を通じて広くオンライン参加者を募る。 ◆プログラム ◇基調講演 「国境を超える地方自治体・地域コミュニティ連携構想(LLABS)の概要と意義」 フェルディナンド・マキト(フィリピン大学オープンユニバーシティ(UPOU)講師) ◇討論1<ASEAN+3と日本。LLABSの可能性> 「コミュニティ連携:成長のトライアングル、中華街、「カレー移民」に見る教訓」 佐藤考一(桜美林大学リベラルアーツ学群教授) ◇討論2<ASEAN+3と中国。LLABSの可能性> 「中国および東北アジア地域における越境開発協力と地方自治体国際協力の枠組み」 李鋼哲(INAF研究所代表理事・所長) ◇討論3<ASEAN+3と韓国。LLABSの可能性> 「韓国地方政府の国際レジーム形成の取り組み:日中韓地方政府交流会議を事例として」 南基正(ソウル大学日本研究所所長) ◇討論4<ASEAN+3と台湾。LLABSの可能性> 「政治的制約を超える台湾と東南アジアの「非政府間」の強い結びつき」 林泉忠(東京大学東洋文化研究所特任研究員) ◇自由討論 フィリピン市民の意見 … ジョアン・セラノ(フィリピン大学オープンユニバーシティ教授) インドネシア市民の意見 … ジャクファル・イドルス(国士舘大学21世紀学部専任講師) タイ市民の意見 … モトキ・ラクスミワタナ(早稲田大学アジア太平洋研究科) ◇総括 平川均(名古屋大学名誉教授) プログラム https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2025/01/SGRAForum75Program.pdf 英語版プログラム https://www.aisf.or.jp/sgra/english/2025/02/06/forum75kkk45/ ***************************************** ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
KUSUDA Yuki “What is Napoleon’s Real Image?”
2025年3月27日 23:41:14
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ナポレオンは1769年に生まれ、35歳の若さで皇帝になり51歳で死んだが、フェニックスは映画公開時点で49歳だった。映画冒頭のマリ=アントワネットの処刑やトゥロンの戦い(1793年)のシーンでは、まったく若作りせずに演じていたが、当時ナポレオンは20代前半の青年だったはずで、とても奇妙に感じられた。また、ナポレオンより6歳年上の妻ジョゼフィーヌ役はフェニックスより14歳年下のヴァネッサ・カービーが演じ、ナポレオンの上官に相当する14歳年上のポール・バラスもフェニックスより7歳年下のタアール・ライムが演じている。中年の男性と若い妻、年下の上官と初老の部下のように見えて、どうしても違和感が拭えない。しかも当初、ジョゼフィーヌ役はもっと若い女優、1993年3月生まれの30歳のジョディ・カマーが演じる予定だったが、パンデミックの影響で撮影延期となり都合がつかなくなったという経緯があるそうだ。本来であれば、もっと年齢差を感じる配役となっていたかもしれない。 英『タイムズ』紙のインタビューを受けたスコットは、史実との整合性について次のように答えている。「ナポレオンが死んで10年が経ち、誰かが本を書く。そしてある者がその本を手に取り、新しい本を書く。こうして400年(*原文ママ)が経ち、[歴史書には]多くの想像が含まれている。歴史家たちと揉めるとき、私は次のように問う。『すみません、あなたはそこにいたのですか?ノーですって?おやおや、それなら黙っとけ』と」。もちろん、映画監督と歴史家の仕事は違うし、観客を魅了させるための創作・演出は許されて然るべきだが、スコットは歴史家の仕事を分かっていない。二次資料(研究文献)にのみ依拠した研究はアカデミックな歴史学研究とは認められない。私たちは常に一次資料(原典史料)にまで降り立って調べるのだ。ちなみに、ナポレオンとジョゼフィーヌとの年齢差についても、スコットは「重要ではない」と一蹴しているが、せめて若作りさせてほしかった。 だが、スコットの「言い訳」はある意味で正しい。あまりに多くのことが語られたために、ナポレオンのイメージは想像に満ちている。ナポレオンに関する言説の信憑性を考察したリチャード・ホエートリーは、「語られたことすべてを信じようとすれば、一人ではなく、二、三人のボナパルトが存在したと考えなくてはならない。もし十分に裏づけのとれたものだけを認めるならば、一人も存在しないのではないかと疑わざるを得ないだろう」と述べている。唯一キャスティングの点でスコットを擁護できるとすれば、フェニックスの顔は、いくつかのナポレオンの肖像にどことなく似ている気がする。 だが、絵画も政治的意図を持って脚色されたものばかりで、あまり信用すべきではない。おそらく、多くの日本人が思い浮かべるナポレオンのイメージは、画家ダヴィドが描いたアルプスの山を白馬で颯爽とかけ登る姿だろうが、実際には、半世紀後にポール・ドラロシュが描いたようにラバで苦労したとされる。ダヴィドの弟子にあたるグロやジェラールら新古典主義の画家たちも、戦争を指揮する勇姿や現人神のごとく着飾った皇帝の姿を描いているが、等身大のナポレオンを描いたとは考え難い。ナポレオン自身が印象操作に心血を注いでいたからである。 私はナポレオン没後200周年であった2021年に、ナポレオンの人生と遺産を振り返りつつ、人々がナポレオンを映画、小説などで取り上げてやまないことこそ、彼が遺した最大の遺産だという趣旨のエッセイを執筆したことがある(『人文会ニュース』第137号)。シャトブリアンは、「ナポレオンは、生きているときには、世界を獲得し損ねた。死んでから世界を手にした」と述べたが、ナポレオンの最大の功績は、数々の戦勝でも民法典でもなく、彼の人生が映画などで取り上げられ、人々を惹きつけてやまない点にあるのではないだろうか。 <楠田悠貴(くすだ・ゆうき)KUSUDA Yuki> 大阪公立大学都市文化研究センター研究員、および立正大学・岡山大学非常勤講師。2015年に東京大学大学院博士課程に進学した後、フランス社会科学高等研究院修士課程、パリ第一大学(パンテオン=ソルボンヌ)大学院博士課程に留学し、現在博士論文を執筆中。専門はフランス革命期・ナポレオン統治期の政治史、政治文化史。主な論文に「ルイ16世裁判再考」(山﨑耕一・松浦義弘編『東アジアから見たフランス革命』風間書房、2021年所収)、単訳書にマイク・ラポート『ナポレオン戦争』(白水社、2020年)がある。 ------------------------------------------ 【2】寄贈本紹介 SGRAメール会員で早稲田大学非常勤講師の花井みわさんからご著書をご寄贈いただきましたので紹介します。 ◆花井みわ『「辺境」の文化複合とその変容-東アジア文化圏を生きる中国朝鮮族』 満洲は、移民の地であり複数の民族の生活空間があった。満洲に夢を託して多くの朝鮮人が満洲に渡った。移住先の満洲では中国人、日本人とどう向き合いながら生きてきたか。それは、中国現代史を見る上でも重要である。地政学的に満洲は東アジアが交錯した地域である。今日、日本と中国の歴史認識をめぐる対立の多くは満洲から始まった。200万人の中国朝鮮族の歴史から学ぶ。 出版社:御茶の水書房 定価:12,100 円 (本体11,000 円+税) ISBN:978-4-275-02126-7 発売日:2021/02 詳細は下記リンクをご覧ください。 http://rr2.ochanomizushobo.co.jp/products/978-4-275-02126-7 ------------------------------------------ 【3】第75回SGRAフォーラム・第45回持続的な共有型成長セミナーへのお誘い(再送) 下記の通り第75回SGRAフォーラム・第45回持続的な共有型成長セミナー「東アジア地域市民の対話」を対面とオンラインのハイブリットで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。 テーマ:「東アジア地域市民の対話 国境を超える地方自治体・地域コミュニティ連携構想(LLABS)の可能性を探る」 日 時:2025年4月12 日(土)午後2時~午後5時(日本時間) 方 法:会場参加とオンライン参加(Zoomウェビナーによる)のハイブリット開催 会 場:桜美林大学新宿キャンパス創新館(南館)JS302号室 https://www.obirin.ac.jp/access/shinjuku/ 言 語:日本語・英語(同時通訳) 申 込:参加申込(参加には事前登録が必要です) https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_6rSMRrVaRw-wmMhl6Cc3RQ#/registration お問い合わせ:SGRA事務局([email protected]) ◆フォーラムの趣旨 地理学的にいえば、「東アジア」は、北東アジア(日本、中国、韓国)と東南アジア(ASEAN加盟国)の双方から構成され、「多様性の中の調和」原則の現出ともいえる「東アジア統合」というASEAN+3(日中韓)のビジョンを共有している。東アジアはこのビジョンに向けて大きな前進を遂げたが、近年中国が関わる出来事がビジョンに向けた地域の進歩を頓挫させていることも否定できない。 国境を超える地方自治体・地域コミュニティ連携構想(Local-to-Local-Across-Border-Schemes、以下LLABS)は、渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)とフィリピン大学ロスバニョス校(UPLB)経営開発学部(CPAf)のさまざまなコラボレーションとして、フェルディナンド・C・マキト博士が主導する「持続可能な共有成長セミナー」を通じて生まれた。UPLBチームは、フィリピン内務省の地方政府アカデミーと地方自治省のためにLLABS研究プロジェクトを実施した。 本フォーラムでは、桜美林大学グローバル・コミュニケーション学群とSGRAの協力によって、これまで主にフィリピンで検討されてきたLLABS構想について、北東アジアの研究者と一緒に議論し、実現の可能性について探る。 会場とオンラインのハイブリッド形式で開催し、共催のフィリピン大学オープンユニバーシティ(UPOU)を通じて広くオンライン参加者を募る。 ◆プログラム ◇基調講演 「国境を超える地方自治体・地域コミュニティ連携構想(LLABS)の概要と意義」 フェルディナンド・マキト(フィリピン大学オープンユニバーシティ(UPOU)講師) ◇討論1<ASEAN+3と日本。LLABSの可能性> 「コミュニティ連携:成長のトライアングル、中華街、「カレー移民」に見る教訓」 佐藤考一(桜美林大学リベラルアーツ学群教授) ◇討論2<ASEAN+3と中国。LLABSの可能性> 「中国および東北アジア地域における越境開発協力と地方自治体国際協力の枠組み」 李鋼哲(INAF研究所代表理事・所長) ◇討論3<ASEAN+3と韓国。LLABSの可能性> 「韓国地方政府の国際レジーム形成の取り組み:日中韓地方政府交流会議を事例として」 南基正(ソウル大学日本研究所所長) ◇討論4<ASEAN+3と台湾。LLABSの可能性> 「政治的制約を超える台湾と東南アジアの「非政府間」の強い結びつき」 林泉忠(東京大学東洋文化研究所特任研究員) ◇自由討論 フィリピン市民の意見 … ジョアン・セラノ(フィリピン大学オープンユニバーシティ教授) インドネシア市民の意見 … ジャクファル・イドルス(国士舘大学21世紀学部専任講師) タイ市民の意見 … モトキ・ラクスミワタナ(早稲田大学アジア太平洋研究科) ◇総括 平川均(名古屋大学名誉教授) プログラム https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2025/01/SGRAForum75Program.pdf 英語版プログラム https://www.aisf.or.jp/sgra/english/2025/02/06/forum75kkk45/ ***************************************** ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ****************************** -
Makoto SHIRAKAWA “Pretend to be Unconcerned”
2025年3月20日 12:26:31
********************************************** SGRAかわらばん1055号(2025年3月20日) 【1】SGRAエッセイ#785:白川誠「春に嘯く」 【2】寄贈本紹介:ザヘラ・モハッラミプール『「東洋」の変貌:近代日本の美術史像とペルシア』 【3】第75回SGRAフォーラム・第45回持続的な共有型成長セミナーへのお誘い(4月12日、東京)(再送) 「東アジア地域市民の対話:国境を超える地方自治体・地域コミュニティ連携構想(LLABS)の可能性を探る」 *********************************************** 【1】SGRAエッセイ#785 ◆白川誠「春に嘯く」 3月も啓蟄を過ぎ、暖かくなる日が増えてきました。春の到来を感じさせる晴れの日にこれまでの研究生活をのんびりと振り返りながら、この原稿を書いています。 嘘である。今日は朝から寒いうえに雨が降っている。学会発表や報告書作成、査読依頼の対応に残りの実験と標本の整理、研究室の片付けなどにかまけているうちに締め切りも残り3日を切ってしまった。良い文章を書くには適度に追い込まれることが必要だと聞いたことがあるが、私の場合、悲しいことに追い込まれる状況にあっても一向に筆は進まず、心身が疲弊していくばかりである。このくらいの文字数なら2時間もあれば余裕で書けると嘯(うそぶ)いた2時間前の自分に悪態をつきながら未だ机に向かっている。 博士課程での研究は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の影響をもろに受ける形で始まった。2020年の4月2日に資料を受け取りに大学に行った後、6月末まで研究室に入れなかったことをよく覚えている。その後も研究室での滞在時間の短縮や、演習林での野外調査の延期などの制限を受け、当初の研究計画も一部変更を余儀なくされることになった。 このように、目に見えないものに振り回された4年間であったが、その一方で様々なご縁にも恵まれた。特に、2023年度は渥美国際交流財団の奨学生として貴重な経験をさせていただいた。財団ならびに元奨学生(ラクーン)の皆様が企画してくださった交流会では、人文・社会科学のほか、自然科学でも工学や医学など、普段自分が接する機会のない研究領域(と私も思われていたのは想像に難くない)を扱う同期の方々と交流することができた。各々のバックボーンや研究分野、研究アプローチが大きく異なることから、最初は不安もあった。しかし、韮崎でのワークショップをはじめ、研究報告会や新年会での餃子作りなどを通して相互にやり取りを重ねる中で、それらが違えども、苦労する点は意外と似ていたりすることなどを知るとともに、日々研究に取り組む同世代の人がこんなにたくさんいるのだと嬉しくなった。「龍吟じ虎嘯く」とはこのような時に使うのだろうか。 「相互のやり取り」という語に関連して、自分の研究についても少し触れたい。私は、マツ科やブナ科などの樹木、それらと地下部で共生関係を結ぶ外生菌根菌と呼ばれる真菌、根のまわりに生息する根圏細菌の三者を主な対象として、それらの相互作用に関する研究を行っている。これらの共生微生物は、宿主樹木から光合成産物の供給を受ける代わりに、宿主の成長促進や、植物病原菌に対する抵抗性の向上などに寄与することが明らかになっている。一般的に微生物といえば、カビやバイ菌などといったネガティブな印象を持たれがちだが、これらのように、植物の生育に不可欠なものも数多く存在することを知ってもらえると幸いである。 こうした森林生態系における微生物に関する研究を志したきっかけは定かではないが、研究を続けると決心した一端には、『蟲師』という漫画の影響があったような気がする。この作品では、「蟲」と呼ばれる、生命の根源に近いとされる架空の存在が引き起こす現象と人間とのやり取りが描かれている。研究を始めた当初、私は周囲と比べて研究対象の生物に対する偏愛が欠けているのではないかと後ろめたさのようなものを勝手に感じていた。しかし、医師や研究者を兼ねる主人公の、蟲に対して「奇妙な隣人である」と明確に線引きをしたうえで関わっていくスタンスに、それぐらいの距離感で向き合う研究者がいても良いのだと思い直した覚えがある(当該の描写は『春と嘯く』というエピソードで確認することができる)。なんだか話が上手くまとまり過ぎている気がするので、都合の良い記憶の後付けかもしれない。いずれにせよ、今後も地面の下(しばしば地表)にいる奇妙で興味深い隣人たちの研究を続けていければと考えている。 多くの方々の助けを借りて博士号を取得するところまで来ることができた。この場を借りて厚く御礼を申し上げる。来年度からは、相変わらず先行きが見えない研究生活が続くが、新たな環境や研究テーマにワクワクもしている。「どうにかなるさ」、と嘯いていきたいものである。 <白川誠(しらかわ・まこと) Makoto SHIRAKAWA> 埼玉県出身。2023年度渥美国際交流財団奨学生。東京大学大学院農学生命科学研究科附属アジア生物資源環境研究センター特任研究員。2018年に東京農業大学で修士号(林学)、2024年に東京大学で博士号(農学)を取得。森林圏に生息する微生物の分類と保全、利用に関する研究を行っている。2025年4月より千葉県内の私立大学に助教として着任予定。 編注:このエッセイは2024年春に書いていただいたものです。 ------------------------------------------ 【2】寄贈本紹介 SGRA会員で国際日本文化研究センター特任助教のザヘラ・モハッラミプールさんから新刊書をご寄贈いただきましたのでご紹介します。 ◆ザヘラ・モハッラミプール『「東洋」の変貌:近代日本の美術史像とペルシア』 〈東洋芸術〉とは何か―。近代日本において歴史像が刷新されるなかで、「東洋」は拡大・変容していった。ペルシア芸術を焦点として、伊東忠太・黒板勝美ら学術界、美術商や展覧会、メディア・思想などのグローバルな動向を結びつけ、今日の美術史が確立されていく過程を丹念に掘り起こした挑戦作。 出版社:名古屋大学出版会 価格:税込7,480円/本体6,800円 判型:A5判・上製 ページ数:430頁 発行年月日:2025年3月10日 ISBNコード:978-4-8158-1182-2 Cコード C3071 詳細は下記リンクよりご覧ください。 https://www.unp.or.jp/ISBN/ISBN978-4-8158-1182-2.html ------------------------------------------ 【3】第75回SGRAフォーラム・第45回持続的な共有型成長セミナーへのお誘い(再送) 下記の通り第75回SGRAフォーラム・第45回持続的な共有型成長セミナー「東アジア地域市民の対話」を対面とオンラインのハイブリットで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。 テーマ:「東アジア地域市民の対話 国境を超える地方自治体・地域コミュニティ連携構想(LLABS)の可能性を探る」 日 時:2025年4月12 日(土)午後2時~午後5時(日本時間) 方 法:会場参加とオンライン参加(Zoomウェビナーによる)のハイブリット開催 会 場:桜美林大学新宿キャンパス創新館(南館)JS302号室 https://www.obirin.ac.jp/access/shinjuku/ 言 語:日本語・英語(同時通訳) 申 込:参加申込(参加には事前登録が必要です) https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_6rSMRrVaRw-wmMhl6Cc3RQ#/registration お問い合わせ:SGRA事務局([email protected]) ◆フォーラムの趣旨 地理学的にいえば、「東アジア」は、北東アジア(日本、中国、韓国)と東南アジア(ASEAN加盟国)の双方から構成され、「多様性の中の調和」原則の現出ともいえる「東アジア統合」というASEAN+3(日中韓)のビジョンを共有している。東アジアはこのビジョンに向けて大きな前進を遂げたが、近年中国が関わる出来事がビジョンに向けた地域の進歩を頓挫させていることも否定できない。 国境を超える地方自治体・地域コミュニティ連携構想(Local-to-Local-Across-Border-Schemes、以下LLABS)は、渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)とフィリピン大学ロスバニョス校(UPLB)経営開発学部(CPAf)のさまざまなコラボレーションとして、フェルディナンド・C・マキト博士が主導する「持続可能な共有成長セミナー」を通じて生まれた。UPLBチームは、フィリピン内務省の地方政府アカデミーと地方自治省のためにLLABS研究プロジェクトを実施した。 本フォーラムでは、桜美林大学グローバル・コミュニケーション学群とSGRAの協力によって、これまで主にフィリピンで検討されてきたLLABS構想について、北東アジアの研究者と一緒に議論し、実現の可能性について探る。 会場とオンラインのハイブリッド形式で開催し、共催のフィリピン大学オープンユニバーシティ(UPOU)を通じて広くオンライン参加者を募る。 ◆プログラム ◇基調講演 「国境を超える地方自治体・地域コミュニティ連携構想(LLABS)の概要と意義」 フェルディナンド・マキト(フィリピン大学オープンユニバーシティ(UPOU)講師) ◇討論1<ASEAN+3と日本。LLABSの可能性> 「コミュニティ連携:成長のトライアングル、中華街、「カレー移民」に見る教訓」 佐藤考一(桜美林大学リベラルアーツ学群教授) ◇討論2<ASEAN+3と中国。LLABSの可能性> 「中国および東北アジア地域における越境開発協力と地方自治体国際協力の枠組み」 李鋼哲(INAF研究所代表理事・所長) ◇討論3<ASEAN+3と韓国。LLABSの可能性> 「韓国地方政府の国際レジーム形成の取り組み:日中韓地方政府交流会議を事例として」 南基正(ソウル大学日本研究所所長) ◇討論4<ASEAN+3と台湾。LLABSの可能性> 「政治的制約を超える台湾と東南アジアの「非政府間」の強い結びつき」 林泉忠(東京大学東洋文化研究所特任研究員) ◇自由討論 フィリピン市民の意見 … ジョアン・セラノ(フィリピン大学オープンユニバーシティ教授) インドネシア市民の意見 … ジャクファル・イドルス(国士舘大学21世紀学部専任講師) タイ市民の意見 … モトキ・ラクスミワタナ(早稲田大学アジア太平洋研究科) ◇総括 平川均(名古屋大学名誉教授) プログラム https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2025/01/SGRAForum75Program.pdf 英語版プログラム https://www.aisf.or.jp/sgra/english/2025/02/06/forum75kkk45/ ***************************************** ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
IWATA Kazuma “The 23rd SGRA Cafe ‘Syria at the Crossroads’ Report”
2025年3月13日 17:08:41
********************************************** SGRAかわらばん1054号(2025年3月13日) 【1】岩田和馬「第23回SGRAカフェ『岐路に立つシリア』報告」 【2】第75回SGRAフォーラム・第45回持続的な共有型成長セミナーへのお誘い(4月12日、東京)(再送) 「東アジア地域市民の対話:国境を超える地方自治体・地域コミュニティ連携構想(LLABS)の可能性を探る」 *********************************************** 【1】岩田和馬「第23回SGRAカフェ『岐路に立つシリア:抑圧から希望へ、不確実な未来への歩み』報告」 2025年2月8日、第23回SGRAカフェ「岐路に立つシリア:抑圧から希望へ、不確実な未来への歩み」が渥美財団ホールとZoomによるハイブリット形式で開催されました。講師はジェトロ・アジア経済研究所地域研究センター研究員のダルウィッシュ・ホサム氏、討論はモハメド・オマル・アブディン氏、司会はシェッダーディ・アキル氏が担い、対面とオンライン共に数多くの聴衆が集まりました。 24年12月8日にアサド政権が突如崩壊し、反体制勢力による新体制が確立したシリアについて、ホサム氏は、故ハーフィズとバッシャール親子によるアサド政権の現実や、11年の反体制デモに端を発する内戦、そしてポスト・アサド時代の不確実な未来への展望について語りました。自身の経験を踏まえたシリアの生活、日本留学後もしばしばアサド政権下の日々を悪夢に見たというエピソード、非人道的な政治体制によって国民に植え付けられたトラウマとその長期的な影響、そして体制を支えた政治構造や、国民に対する弾圧の実態に言及しました。 続いてスーダン出身のアブディン氏は、紛争国や内戦を逃れて海外で生活をする厳しさや、中東・北アフリカ地域において紛争が続くシリア、スーダン、パレスチナといった地域における米国やロシアなど大国の思惑等、多様な論点からコメントしました。 聴衆からの質問は、今後のシリアがどのような未来を歩むかという点に集中しました。内戦中に離合集散を繰り返した反体制勢力同士の不安定な関係に加え、国内に残る政権派やイスラーム国残党の扱い、北部のクルド勢力との関係などは、今後の新生シリアの未来を占う上で重要な要因となることが確認されました。シリア北部においてはクルド勢力の影響が非常に大きく、ホサム氏、アブディン氏とも最終的に情勢を決定するのは新政権を支援するトルコと、クルド勢力を支援する米国の思惑次第ではないかと見ていました。 オスマン帝国史を専攻する私は、アラブ地域は専門外であるものの、トルコを介してシリアとも縁のある学生生活を送りました。アラブの春に続いて、なし崩し的にシリアでの内戦が始まった11年に東京外国語大学に入学、13-14年にトルコへ留学し、語学学校でシリアから逃れてきた学生たちと話をした時に初めて内戦のリアリティを目の当たりにしました。日本でもシリア出身の留学生と仲良くなる機会はありましたが、クラスの3割がシリア人で占められていた語学学校の様子は内戦の影響を「mass」の形で見せつけられているようで、強い印象を受けました。その後、旅行や調査でトルコを訪れるたびにシリア人難民を街で見かけることが増え、難民の定着過程とトルコ人との衝突を目の当たりにしました。 近年ではトルコ社会に定着するシリア人難民も増え、トルコ語を操りトルコ人と同じ学校を卒業し、トルコ人と同じ会社で働くシリア人も増えましたが、15年前後はトルコ語も話せず生活基盤もないシリア人がイスタンブル各地で物乞いをしている姿をよく見かけました。旅行でたまたまバスが通過した国境地帯の難民収容施設で見かけた所在なさげにタバコをふかしたり、施設の周辺で座り込んだりする人たちの姿を今でも覚えています。トルコ人からの冷たい目線や心無い言葉を見聞きすることも多く、難民の強制送還や難民に対する襲撃が度々トルコの政治マターとしてニュースに現れるのを見てやるせない思いに駆られました。 このような体験を通して今回の講演を振り返ると、ホサム氏とアブディン氏からの「ニュースでは紛争における死傷者や難民の数が語られるが、数字に含まれる人々には個別の人生があり、内戦によって引き起こされた個別の苦しみがある」という指摘は非常に重要です。 2度のトルコ留学を通じて、私はトルコへ逃れたシリア人をはじめとしてパレスチナ人、ウイグル人、イエメン人、アフガン人などの難民や学生と知り合い、それぞれの体験を耳にするたびに戦争や政治弾圧が個人の人生に対してもたらすものを考えざるを得ませんでした。「統計的な数字の裏には無数の人間の人生が存在している」ということは、少し考えれば当たり前の話ですが、私たちはしばしばこんな簡単なことも忘れてしまいます。今回のイベントを通して、私が出会ったこれらの人々やニュースで見る戦災被害者全てにそれぞれ戦争に狂わされてしまった人生があることを決して忘れてはいけないと改めて認識しました。カフェに参加したすべての人が、直接的・間接的に紛争の影響を受けた人を見たことがあると思います。このようなある種当たり前のことを思い出すためにも今回のカフェが行われた意義がありました。 ホサム氏とアブディン氏が指摘したように、講演、討論、質問において度々議題に上がった新生シリアの今後については不確定要素が多数存在しており、予断を許さない状況が続いています。先進国の多くはアサド政権下のシリアに対して経済制裁を行っており、新生シリアに対してもリーダーが宗教保守派であることを理由に様子見を続けています。こうした先進国の姿勢はシリアの情勢の改善を促すことにはならないので、日本をはじめとした各国はなるべく早く支援する必要があります。女性の地位を巡る課題や世俗的な生活様式がどれほど容認されるのかといった懸念が特に西側各国から投げかけられています。しかし、「戦闘が終わり、体制が安定しなければこのような議論も行うことができないので、いち早い対策が必要だ」というアブディン氏の指摘は非常に重要です。 内戦が終了したとはいえ、いまだに多数の不確定要素が存在し、無数の村落や都市が荒廃したシリアの再建は容易な事業ではないということを、今回のイベントを通して今一度再確認しました。アサド政権下で行われた非人道的な弾圧や有象無象の武装勢力が割拠したこの10年の歳月がシリア社会に大きな傷跡や憎悪、分断を残したことは明らかであり、爆撃で更地になった国土の復興と並行して、社会や人間性そのものの復興が急務であるという思いを改めて強くしました。一方で、世界各国へ散らばり様々な分野の知識や技術を身につけたシリアの人々が祖国の復興に参画したいと考えていることも確かです。こうした人々の善意と国際社会の適切な援助が新生シリアの社会を健全なものに再建することを期待して止みません。新体制のシリアでは各派閥の対立や憎しみを超えて、可能な限り早い復興が行われることを願います。 当日の写真は下記リンクよりご覧いただけます。 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2025/03/cafe23photos2-small.pdf <岩田和馬(いわた・かずま)IWATA Kazuma> 東京外国語大学大学院総合国際学研究科世界言語社会専攻博士課程在籍。2020-2023年ボアジチ大学客員研究員。研究論文に「18世紀イスタンブルの荷役組合:内部構造に関する考察」『オリエント』vol.63-2,189-204(2020)。2024年度渥美国際交流財団奨学生。 ------------------------------------------ 【2】第75回SGRAフォーラム・第45回持続的な共有型成長セミナーへのお誘い(再送) 下記の通り第75回SGRAフォーラム・第45回持続的な共有型成長セミナー「東アジア地域市民の対話」を対面とオンラインのハイブリットで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。 テーマ:「東アジア地域市民の対話 国境を超える地方自治体・地域コミュニティ連携構想(LLABS)の可能性を探る」 日 時:2025年4月12 日(土)午後2時~午後5時(日本時間) 方 法:会場参加とオンライン参加(Zoomウェビナーによる)のハイブリット開催 会 場:桜美林大学新宿キャンパス創新館(南館)JS302号室 https://www.obirin.ac.jp/access/shinjuku/ 言 語:日本語・英語(同時通訳) 申 込:参加申込(参加には事前登録が必要です) https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_6rSMRrVaRw-wmMhl6Cc3RQ#/registration お問い合わせ:SGRA事務局([email protected]) ■フォーラムの趣旨 地理学的にいえば、「東アジア」は、北東アジア(日本、中国、韓国)と東南アジア(ASEAN加盟国)の双方から構成され、「多様性の中の調和」原則の現出ともいえる「東アジア統合」というASEAN+3(日中韓)のビジョンを共有している。東アジアはこのビジョンに向けて大きな前進を遂げたが、近年中国が関わる出来事がビジョンに向けた地域の進歩を頓挫させていることも否定できない。 国境を超える地方自治体・地域コミュニティ連携構想(Local-to-Local-Across-Border-Schemes、以下LLABS)は、渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)とフィリピン大学ロスバニョス校(UPLB)経営開発学部(CPAf)のさまざまなコラボレーションとして、フェルディナンド・C・マキト博士が主導する「持続可能な共有成長セミナー」を通じて生まれた。UPLBチームは、フィリピン内務省の地方政府アカデミーと地方自治省のためにLLABS研究プロジェクトを実施した。 本フォーラムでは、桜美林大学グローバル・コミュニケーション学群とSGRAの協力によって、これまで主にフィリピンで検討されてきたLLABS構想について、北東アジアの研究者と一緒に議論し、実現の可能性について探る。 会場とオンラインのハイブリッド形式で開催し、共催のフィリピン大学オープンユニバーシティ(UPOU)を通じて広くオンライン参加者を募る。 ◆プログラム ◇基調講演 「国境を超える地方自治体・地域コミュニティ連携構想(LLABS)の概要と意義」 フェルディナンド・マキト(フィリピン大学オープンユニバーシティ(UPOU)講師) ◇討論1<ASEAN+3と日本。LLABSの可能性> 「コミュニティ連携:成長のトライアングル、中華街、「カレー移民」に見る教訓」 佐藤考一(桜美林大学リベラルアーツ学群教授) ◇討論2<ASEAN+3と中国。LLABSの可能性> 「中国および東北アジア地域における越境開発協力と地方自治体国際協力の枠組み」 李鋼哲(INAF研究所代表理事・所長) ◇討論3<ASEAN+3と韓国。LLABSの可能性> 「韓国地方政府の国際レジーム形成の取り組み:日中韓地方政府交流会議を事例として」 南基正(ソウル大学日本研究所所長) ◇討論4<ASEAN+3と台湾。LLABSの可能性> 「政治的制約を超える台湾と東南アジアの「非政府間」の強い結びつき」 林泉忠(東京大学東洋文化研究所特任研究員) ◇自由討論 フィリピン市民の意見 … ジョアン・セラノ(フィリピン大学オープンユニバーシティ教授) インドネシア市民の意見 … ジャクファル・イドルス(国士舘大学21世紀学部専任講師) タイ市民の意見 … モトキ・ラクスミワタナ(早稲田大学アジア太平洋研究科) ◇総括 平川均(名古屋大学名誉教授) プログラム https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2025/01/SGRAForum75Program.pdf 英語版プログラム https://www.aisf.or.jp/sgra/english/2025/02/06/forum75kkk45/ ***************************************** ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
Invitation to the 75th SGRA Forum/45th Sustainable Shared Growth Seminar “East Asia Citizens Dialogue”
2025年3月6日 17:06:05
********************************************** SGRAかわらばん1053号(2025年3月6日) 【1】第75回SGRAフォーラム・第45回持続的な共有型成長セミナーへのお誘い 「東アジア地域市民の対話:国境を超える地方自治体・地域コミュニティ連携構想(LLABS)の可能性を探る」 【2】催事紹介:INAF第30回研究会(政策セミナー)のご案内 「日朝国交正常化に向けた戦略および政策提言」 *********************************************** 【1】第75回SGRAフォーラム・第45回持続的な共有型成長セミナーへのお誘い 下記の通り第75回SGRAフォーラム・第45回持続的な共有型成長セミナー「東アジア地域市民の対話」を対面とオンラインのハイブリットで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。 テーマ:「東アジア地域市民の対話 国境を超える地方自治体・地域コミュニティ連携構想(LLABS)の可能性を探る」 日 時:2025年4月12 日(土)午後2時~午後5時(日本時間) 方 法:会場参加とオンライン参加(Zoomウェビナーによる)のハイブリット開催 会 場:桜美林大学新宿キャンパス創新館(南館)JS302号室 https://www.obirin.ac.jp/access/shinjuku/ 言 語:日本語・英語(同時通訳) 申 込:参加申込(参加には事前登録が必要です) https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_6rSMRrVaRw-wmMhl6Cc3RQ#/registration お問い合わせ:SGRA事務局([email protected]) ■フォーラムの趣旨 地理学的にいえば、「東アジア」は、北東アジア(日本、中国、韓国)と東南アジア(ASEAN加盟国)の双方から構成され、「多様性の中の調和」原則の現出ともいえる「東アジア統合」というASEAN+3(日中韓)のビジョンを共有している。東アジアはこのビジョンに向けて大きな前進を遂げたが、近年中国が関わる出来事がビジョンに向けた地域の進歩を頓挫させていることも否定できない。 国境を超える地方自治体・地域コミュニティ連携構想(Local-to-Local-Across-Border-Schemes、以下LLABS)は、渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)とフィリピン大学ロスバニョス校(UPLB)経営開発学部(CPAf)のさまざまなコラボレーションとして、フェルディナンド・C・マキト博士が主導する「持続可能な共有成長セミナー」を通じて生まれた。UPLBチームは、フィリピン内務省の地方政府アカデミーと地方自治省のために LLABS研究プロジェクトを実施した。 本フォーラムでは、桜美林大学グローバル・コミュニケーション学群とSGRAの協力によって、これまで主にフィリピンで検討されてきたLLABS構想について、北東アジアの研究者と一緒に議論し、実現の可能性について探る。 会場とオンラインのハイブリッド形式で開催し、共催のフィリピン大学オープンユニバーシティ(UPOU)を通じて広くオンライン参加者を募る。 ◆プログラム ◇基調講演 「国境を超える地方自治体・地域コミュニティ連携構想(LLABS)の概要と意義」 フェルディナンド・マキト(フィリピン大学オープンユニバーシティ(UPOU)講師) LLABS構想の背景には、東アジア全体に広がる2大潮流がある。一つは東南アジア諸国連合(ASEAN)+3(日中韓)に代表される”地域統合”の思想で、もう一つは政治的および財政的決定権を地方政府に委ねる”地方分権”の思想である。果たしてこれらの潮流は互いに代替し合うか、あるいは補完し合うかという疑問が本フォーラムの出発点である。 地域統合の戦略が状況次第で機能しないことは、西フィリピン海や南シナ海で紛争が続いていることなどからみても明らかだ。しかしながら、行き詰まりの状況を打開する策をLLABS構想が提供できると期待されている。またその他のケースでも、LLABS構想がこの2大潮流を前進させる補助的メカニズムとして機能し、地域統合と地方分権が補完的な関係になる可能性が示唆されている。事例研究として、フィリピン大学オープンユニバーシティ(UPOU)が神奈川県相模原市藤野とフィリピンのラグナ州バニョスで進めている2つの取り組みを紹介しながらLLABS構想の意義を考察する。 ◇討論1<ASEAN+3と日本。LLABSの可能性> 「コミュニティ連携:成長のトライアングル、中華街、「カレー移民」に見る教訓」 佐藤考一(桜美林大学リベラルアーツ学群教授) 国境を超える地方自治体・地域コミュニティの連携構想(LLABS)というのは、夢のある話であるが、難しい話でもある。ASEANの成長のトライアングル構想については、成功の条件として、新興工業国・地域(NIES)のような先進地域と発展途上地域の垂直分業関係、良港の存在、近接性、インフラ整備の度合いと資金源、治安問題がないことなどが必要で、さらに世界的な供給連鎖管理(SCM)の流れに乗れることも必要である。現在までのところ、3つのトライアングルのうち、成功したとはっきり言えるのは南のトライアングルだけである。日本国内の小さなコミュニティ連携について言えば、中華街、「カレー移民」について成功例と失敗例がある。 外国人労働者が言語や宗教、文化の問題を乗り超えて日本社会に溶け込めるか、日本側が彼らの受け入れにどれだけ努力しているか、移民の子供の教育機会が充実しているかなどが問題になる。互いに歩み寄りながら、相互理解と共益を目指す事が必要である。なお、日本の中華街には、中国文化を売り込んで観光名所として成功するしたたかさもある。 ◇討論2<ASEAN+3と中国。LLABSの可能性> 「中国および東北アジア地域における越境開発協力と地方自治体国際協力の枠組み」 李鋼哲(INAF研究所代表理事・所長) 東北アジアにおける地域主義は1990年代前後から冷戦崩壊の頃、国境を超える地域開発の活性化とともに台頭する。様々な越境的地域開発のプロジェクトが立ち上がり、極地経済圏(サブ・リージョン・エコノミック・ゾーン)形成の動きが出現し、それがこの地域の経済成長の大きな原動力となった。 (1)環日本海国際経済圏構想(1980~90年代) (2)図們江地域開発構想と計画(TRADP)(1991~) (3)環黄海・渤海経済圏構想(1990年代~) (4)両岸四地経済圏構想:中国の広東省・福建省と台湾、香港、マカオ(1990年代~) (5)メコン川流域経済圏構想GMS(1991年~、中国広西チワン族自治区と東南アジア5ヵ国) そのような流れの中で「北東アジア地域自治体連合」(国際機構)が1996年に成立、その他にも様々な地方間国際交流の枠組みが形成された。中国の地方政府(自治体)が国境を越えた地方間の経済・文化交流のプラットフォームの活性化により、地域経済成長と中国の高度経済成長を支えてきた軌跡を考察する。 ◇討論3<ASEAN+3と韓国。LLABSの可能性> 「韓国地方政府の国際レジーム形成の取り組み:日中韓地方政府交流会議を事例として」 南基正(ソウル大学日本研究所所長) 韓日中地方政府交流会議(以下、日本語での報告であることを考慮し「韓日中」は「日中韓」と表記)は韓国、日本、中国の地方政府が実質的な交流を進めることを目標に、大韓民国市道知事協議会、日本自治体国際化協会、中国人民対外友好協会など3つの機関が共同で開催する地方政府間協力の枠組みである。1999年にソウルで最初の会議が開催され、以来2024年に25回目の会議が韓国光州で開催されるまで、輪番制で毎年開催されている。ただ一度、20年に新型コロナウイルス感染症の影響で延期になったが、これも非政治的な理由での「延期」であり、中断したことはなかった。25年は中国・江蘇省塩城市での開催が決まっている。 報告では、日中韓地方政府交流会議に対する大韓民国市道知事協議会の取り組みを事例に、北東アジアにおいて地方政府が主導する国際レジームの特徴と意味を確認する。具体的には次の2点である。第1はASEAN+3との相関性の究明。日中韓地方政府交流会議が始まったのはASEAN+3発足2年後の1999年で、韓国がASEANとの連携を大きく意識し始めた時であった。そして金大中政権になりASEANへの接近も見られた。韓国の地方政府が地方外交を開始し、ASEAN方式に注目したのがこの頃であった。それが継続の力になっていたと考えられる。そこで、第2に試みるのは日中韓首脳会談との比較である。日中韓首脳会談は2008年の初開催以来、24年に9回目の会談が開催されたが、13年と14年、16年と17年、20年から23年まで、3度の中断があった。それぞれ政治的な状況が大きな影響を与えていた。一方で、日中韓地方政府交流会議はこの時期も継続され、背景にどのような努力があったのかを確認することは、この地域の平和共存のための知恵を与えてくれるだろう。 ◇討論4<ASEAN+3と台湾。LLABSの可能性> 「政治的制約を超える台湾と東南アジアの「非政府間」の強い結びつき」 林泉忠(東京大学東洋文化研究所特任研究員) 台湾とASEAN10カ国とは、正式の外交関係を有しておらず、また「ASEAN+3」にも入っていないが、両者の関係は実に微妙で密接な状況にある。戦後の台湾は、かつて東南アジア8カ国とそれぞれ国交を樹立したが、1970年代における両岸(中台)の国際地位の逆転で次々と断交していく。だが、やがて台湾は韓国、香港、シンガポールと共に「アジアNIES」の一員として経済発展を遂げ、東南アジアへの経済進出も目立つようになった。 2016年、蔡英文民進党政権は中国への経済依存を減らし、「新南向政策」を打ち出した。それによって、台湾と東南アジアの結びつきはさらに深まり、人的・経済的な国境を超えたつながりが強化されている。今後、特にデジタル経済・医療・教育・労働者受け入れの分野での協力が引き続き重要視されるだろう。他方、「星光計画」としてシンガポール軍が台湾で軍事訓練を実施したり、台湾が南沙諸島にある自然形成された陸地面積が最大の太平島を実効支配したりしている。 全体として、台湾とASEANの関係は、中国の圧力や自由貿易協定(FTA)の未締結といった課題もあるが、政治的な制約を超えて実質的な相互依存関係を深めており、今後も国境を超えた交流が広がっていくと思われる。 ◇自由討論 フィリピン市民の意見 … ジョアン・セラノ(フィリピン大学オープンユニバーシティ教授) インドネシア市民の意見 … ジャクファル・イドルス(国士舘大学21世紀学部専任講師) タイ市民の意見 … モトキ・ラクスミワタナ(早稲田大学アジア太平洋研究科) ◇総括 平川均(名古屋大学名誉教授) プログラム https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2025/01/SGRAForum75Program.pdf 英語版プログラム https://www.aisf.or.jp/sgra/english/2025/02/06/forum75kkk45/ ------------------------------------------ 【2】催事紹介:INAF第30回研究会(政策セミナー)のご案内 SGRA会員で一般社団法人東北亞未来構想研究所(INAF)所長の李鋼哲さんから研究会のお知らせをいただきましたのでご紹介します。興味のある方は直接お申込みください。 <李さんからのメッセージ> 私が創設し所長を務める東北亜未来構想研究所INAFの第30回研究会のご案内です。ご興味をお持ちの方は奮ってご参加ください。オンラインご参加を希望する方、現地参加をご希望の方は、いずれもINAF事務局にメールでご連絡ください。オンライン参加のご連絡をいただいた方にはZoomのURLをお送りします。 ◆INAF第30回研究会(政策セミナー) [テーマ] 日朝国交正常化に向けた戦略および政策提言 [日 時] 2025年3月21日(金)14:00~16:30 [会 場] アルカディア市ヶ谷私学会館4F鳳凰会議室 [趣 旨] アメリカでは大統領選挙で勝利したドナルド・トランプ氏が今年1月20日に大統領就任したが、第1期には米朝首脳会談を3回も行って世界を震撼させた。それを踏まえて、トランプ2.0では米朝関係正常化に邁進することが予測されよう。2002年9月に小泉純一郎首相が平壌を訪問して「日朝平壌宣言」を発表し、国交正常化交渉を開始していたが頓挫し、その後20年以上両国関係は断絶し懸案となっている。昨年石破茂政権が誕生し、日朝国交正常化交渉への意欲を示している。朝鮮半島課題の解決に向けての潮時、歴史的な転機が訪れることも予測されよう。 そこで、本セミナーでは日朝関係の実務家、専門家たちが集まり、両国関係の根本的な改善や国交正常化に向けた戦略および政策提言に向けて、ハイレベルの議論を展開し、政府への働きかけを試みることを目指す。 [プログラム] ファシリテーター:李鋼哲(INAF所長) 基調講演:美根慶樹(平和外交研究所所長・元日朝国交正常化交渉日本政府代表・INAF最高顧問) パネリスト: 和田春樹(東京大学名誉教授・元日朝国交正常化国民協議会事務局長) 三村光弘(INAF常任任理事・新潟県立大学北東アジア研究所教授) 河信基(INAF顧問・河信基グローバル平和戦略研究所(IGPS)所長) 川口智彦(INAF常任理事・日本大学国際関係学部准教授) エマンニュエル・パストリッチ(アジアインスティチュート理事長) 矢嶌浩紀(INAF理事・元NHK国際部副部長) 参加費:INAF会員1,000円、一般参加3,000円(会場の受付にて徴収、先着順50名) INAFのHP:http://inaf.or.jp/にて関連情報の詳細が確認できます。 INAFメンバー以外の方は、3日前までに参加申し込み(名前、所属、連絡先メルアド)を送ること 事務局E-mail:[email protected] ***************************************** ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
HUANG Jo Hsiang “What Studying in Japan Taught Me”
2025年2月27日 12:43:21
********************************************** SGRAかわらばん1052号(2025年2月27日) 【1】SGRAエッセイ:黄若翔「日本留学が教えてくれたこと~比較法の重要性と人との出会い~」 【2】国史対話エッセイ紹介:金賢善「歴史と私」 *********************************************** 【1】SGRAエッセイ#784 ◆黄若翔「日本留学が教えてくれたこと~比較法の重要性と人との出会い~」 2016年4月、私は東京大学大学院法学政治学研究科修士課程に入学し、労働法を専攻することになりました。それまで台湾の大学で法学を学んできましたが、日本の大学院で学ぶことは私にとって大きなチャレンジでした。 東京大学の労働法の指導教員や先輩たちは、私を暖かく迎え入れてくれました。ゼミでは活発な議論が行われ、教授からは丁寧な指導を受けることができました。当時労働法専攻の大学院生は私1人だけで、寂しさを感じることもありました。日本語での議論についていくのは容易ではなく、日本の社会や文化になじむのにも時間がかかりました。 そんな中、私は渥美国際交流財団に出会いました。財団の奨学金を受け、イベントに参加したりする中で、同じように日本で学ぶ留学生たちと交流を深めることができました。来日6年目にして、初めて日本で帰属意識を感じる場所が見つかりました。母国を離れ、異国の地で学ぶ私たちにとって、渥美財団は心の支えとなりました。財団を通して出会った友人たちは、今でも大切な存在です。 振り返ってみると、「留学」を通じて初めて比較法の重要性と価値を理解することができました。どの国でも、市場の背景や社会状況は異なりますが、共通の問題点が存在することに気づきました。この共通認識を踏まえた上で、各国の市場背景の違いなどに基づいて法政策を分析することが可能になるのです。 例えば、学部時代に台湾大学法学部で日本の労働法に関する論文を読む機会がありました。東亜ペイント事件の判決で示された転勤命令について、業務上の必要性がない場合や不当な動機・目的がある場合や、労働者に「通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合」等、特段の事情がない限り権利の濫用に当たらないとされた点が当時は理解できませんでした。日本の判例法理はなぜ使用者の配転命令をそこまで認めるのだろうと疑問に思っていました(東大法学政治学研究科への入学にあたり、この問題意識とワークライフバランスをテーマに研究計画書を提出しました)。 その後、東大で本格的に労働法を学ぶ中で、日本の労働市場が長期雇用慣行・終身雇用制を採用し、厳しい解雇規制によってこの制度が支えられていることを理解しました。特に能力不足の労働者に対する解雇制限が極めて厳しい状況で、使用者に広範な配転命令権を認めることで、不適任の労働者を他の部門に配置換えできるようにし、長期雇用慣行と厳しい解雇規制を成り立たせていることが初めて分かりました。 逆に、台湾の労働市場は雇用の流動性が高く、能力不足の労働者に対する解雇に関する規制が相対的に緩やかであり、これが台湾及び日本の法政策の違いを浮き彫りにしています。日本へ留学しなかったら、他者の目となって自国や他国の法制度を分析する機会は得られず、比較法という学問の真髄を体験することは難しかったかもしれません。 大学院での研究は決して楽なものではありませんでしたが、指導教員や先輩、そして渥美財団の支援があったからこそ、乗り越えることができました。日本での経験は、私の人生を大きく変えてくれました。日本の社会や文化に触れ、多様な価値観に出会ったことで、視野が広がりました。 渥美財団で出会った仲間たちとは今でも交流を続けており、互いに刺激し合いながらそれぞれの道を歩んでいます。日本留学は、私にとってかけがえのない経験となりました。東京大学の恩師や先輩方、渥美財団の皆様には心から感謝しています。これからも日本と台湾の架け橋となるべく、研究と教育に励んでいきたいと思います。 <黄若翔 HUANG_Jo-Hsiang> 台湾の新竹県で生まれ育つ。中学校卒業後台北に進学し、国立台湾大学法学部を卒業(2016)。同年、思鴻教育財団の奨学金を得て、日本の東京大学大学院法学政治学研究科へ留学し、修士号(2019)および博士号(2024)を取得。在学期間中、東京大学先端ビジネスロー国際卓越大学院奨学生、渥美財団奨学生および日本学術振興会特別研究員(DC2)に選出される。博士号取得後、日本独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)にて研究助手を務めた。現在は台湾の国立清華大学科技法律研究所に助理教授として勤めている。 ------------------------------------------ 【2】国史対話エッセイ紹介 昨年12月18日に配信した国史対話メールマガジン第63号のエッセイをご紹介します。 ◆金賢善「歴史と私」 私は、他の先生方のように渦巻く歴史のど真ん中に立たされたわけでもなかったし、だからといって強い使命感で歴史の勉強を始めたわけでもない。そのため、先生方の前で自分を「歴史家」と名乗ることすら気恥ずかしく感じる。この文章では、壮大な物語でも優れているわけでもいない自分の研究について、ただ単に若い歴史家の旅程とその悩みを率直に述べたい。 学生時代、私は特別な才能もなく、また世界を眺める視野も非常に狭かった。教科の中で最も好きな科目が国史(訳注:韓国史)であり、単純に教員採用試験を受けて先生になろうという思いで史学科に入学した。大学3年生の時、偶然学校の支援を受けてスペインのバレンシアへボランティア活動に行くことになった。当時、旅行者があまり多くはなかったスペインの小さな田舎町でも、さりげなくある中国系の商店と飲食店を見かけた。この経験は私の中国に対する好奇心を刺激した。ボランティア活動を終え、フランスとベルギー、イタリアを一人で旅行しながら、地理的に近い中国と韓国が欧州連合のように統合し共存できない理由について考えた。スペインでのボランティア活動とヨーロッパ旅行を通じて私は漠然と中国について勉強する夢を見始めた。 旅を終えた後、中国へ行くことを決意した。アルバイトをし、中国のハルビンで語学研修を始めた。新しい言語と文化を学ぶことはとても楽しかったし、中国で生活する間、中国についてもっと勉強したいという思いがより切実になった。しかし、私の切実さとは裏腹に、周辺の人々は「歴史学を勉強してまともに生計を立てることができるか」と心配し、私を慰留した。その上、私には大学院の学費と生活費を賄える力さえなかった。強がりだったかもしれないが、引き止める友人に対して私は、お金を稼げなくても「一生ブランド物のカバンを持てなくても後悔しなさそう」と言った。その後、借金をして大学院に入学した。 全文は下記リンクよりお読みください。 https://www.aisf.or.jp/sgra/kokushi/J_Kokushi2024KimHyunsunEssay.pdf ※SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。国史メルマガは毎月1回配信しています。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方はSGRA事務局にご連絡ください。3言語対応ですので、中国語、韓国語の方々にもご宣伝いただけますと幸いです。 ◇国史メルマガのバックナンバー https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ◇購読登録ご希望の方はSGRA事務局へご連絡ください。 [email protected] ***************************************** ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
CHANG Jun-shi “At the Crossroads of the Paths of Academia Researchers and Working Professionals”
2025年2月20日 14:22:44
********************************************** SGRAかわらばん1051号(2024年2月20日) 【1】SGRAエッセイ:チャン・ジュンシ「アカデミア研究者と社会人の道の岐路で」 【2】寄贈本と記念イベント紹介:『青山学院で学んだ韓国朝鮮の文学者たち』 【3】催事紹介:NHKスペシャル『トランプ流“ディール”戦争と平和の行方は』 *********************************************** 【1】SGRAエッセイ#783 ◆チャン・ジュンシ「アカデミア研究者と社会人の道の岐路で」 2024年9月に博士号を取得する際、アカデミア研究者としてのキャリアを追求するか、あるいは企業の世界へ移行するか、という選択を迫られました。日本での留学経験を振り返ると、すべては9年前に名古屋大学の学部プログラムに入学したときから始まります。この経験が学問的に豊かになるだけでなく、個人的な成長や文化への没頭の貴重な機会を与えてくれたからです。 学部時代に私が参加したグローバル30というプログラムは、様々な国や背景からの学生を受け入れていました。多様なバックグラウンドを持つクラスメートとの交流は新しい文化や視点を学ぶ機会となり、ハイキングやジャズ音楽など多くの新しい興味を見出すこともできました。その後は東京大学大学院に進学し、修士課程を修了、博士課程に進みました。博士課程は私の人生において最も挑戦的で、かつ充実した経験の一つでした。 まず、博士課程は非常に時間とエネルギーを要するものであることを強く実感しました。研究や論文執筆に集中するためには、日々の時間管理と自己犠牲が欠かせませんが、このプロセスを通じて、自己管理能力や粘り強さを向上させることができました。また、数々の試練や挫折に直面しながらも、それらを乗り越える戦略を身につけることができました。「擬似天然チオペプチド創薬プラットフォームの開発」という研究テーマが異なる学問領域や専門知識の統合を必要とする複雑な問題に関連するため、様々な学際的なアプローチが求められました。さらに、博士課程は独自の研究を行い、その過程で自己表現と創造性を発揮する場でもあります。自分自身のアイデアや仮説を探求し、それらを実証するための研究を進めることは非常に豊かな体験でした。新しい知識や発見を生み出す喜びは、私の努力への報酬であり、研究への情熱をさらに燃やしました。 これらの9年間を通じて自分の強みや弱みを理解し、克服する方法を見つけたことは、私のキャリアと人生の中で非常に重要なスキルになると感じています。多様な学術的追求に参加し、最先端の研究に没頭し、同僚や指導者と意義深いつながりを築いてきたことで、学生として、そして学術研究者としての生活は充実していました。時折疲れることもありましたが、そのような困難にも関わらず、興味を追求し、情熱を存分に追求する自由を大切にしてきました。 いざ卒業、となった時に根本的な問いに直面しました。基礎研究や教育を通じて知識とイノベーションを推進するために学術の道を進むべきか、それとも企業や産業の環境で専門知識を活かすべきか。産業界でのキャリアはより快適で安定した生活を約束するかもしれませんが、個人的な興味に没頭する自由を手放すことが心に重くのしかかります。 自分の旅を振り返ると、私は常に社会に意味のある貢献をし、影響力のある発見をすることを志してきました。この志が学術的努力を通じて研究の機会を追求し、直面する課題に立ち向かうよう私を導き、実験室、教室、文化的浸透のいずれの経験でも私の視野を広げる原動力となっています。 私は幸運に恵まれ、博士課程で行った研究を続けることができるスタートアップに参加することになりました。ここで世界に意味のある貢献をし、イノベーションを起こし、積極的な変化をもたらすという強い使命感に駆られています。 <チャン・ジュンシ CHANG Jun-shi> クアラルンプール出身。2015-2019:名古屋大学理学部化学科学士(阿部研究室)、2019-2021:東京大学大学院理学系研究科化学専攻修士課程 (菅研究室)、2021-2024:同博?課程。現在はDayra_Therapeutics社勤務。 ------------------------------------------ 【2】寄贈本と記念イベント紹介『青山学院で学んだ韓国朝鮮の文学者たち』 SGRA会員で青山大学教授の韓京子さんより新刊書と出版記念イベントのお知らせをいただきましたのでご紹介します。 ◆『青山学院で学んだ韓国朝鮮の文学者たち』 本書は、青学15周年記念企画で大学の予算で非売品として出版したものです。表紙の詩人は白石という有名な詩人で北朝鮮に渡り亡くなっています。北朝鮮に渡ったということで、私が学生の頃はあまり知られておりませんでした。この人の写真が唯一学院の学生調書に残っていたので表紙に使われています。(装幀も青学出身者が関わっています)企画を立てた小松先生が、韓国の詩にご興味がある方です。朝鮮における西洋童話の翻訳に青学出身者が関わっていたことを、たまたま知り、小松先生にお話したところ、青学出身の文学者はどれくらいいたんだ?という疑問から調べて本にしようということになりました。 詳細は下記リンクをご覧ください。 https://www.aoyama.ac.jp/faculty113/2024/news_20241127_01 ◆出版記念イベント「青山学院出身近代韓国文学者たちの生の軌跡と文学」 日時:2025年3月15日(土)14:00~16:30(13:30~受付) 場所:青山キャンパス11号館1134教室 ※どなたでもご参加いただけます。事前申込不要。 プログラム: ■第1部:学生による詩の朗読「日本語・韓国語で読む青山学院で学んだ韓国朝鮮の文学者たちの詩」 解説:小松靖彦教授(青山学院大学文学部日本文学科) 朗読:青山学院大学文学部日本文学科3年生、2年生 ■第2部:トークショー「日韓文学史と青山学院で学んだ韓国朝鮮の文学者たち」 登壇:熊木勉教授(天理大学国際学部韓国・朝鮮語学科)、韓京子教授(青山学院大学文学部日本文学科) 司会:小松靖彦教授 ■第3部:ミニコンサート「青山学院で学んだ韓国朝鮮の文学者たちを想う」 ピアノ弾き語り:沢知恵氏が金東鳴の詩《こころ》(金素雲訳)をうたう 詳細は下記リンクをご覧ください。 https://www.aoyama.ac.jp/post02/2024/event_20250218_01 ------------------------------------------ 【3】催事紹介 SGRA会員でオックスフォード大学日本研究所研究員のオリガ・ホメンコさんから、ウクライナに関して取材協力したNHK番組のお知らせをいただきましたのでご紹介します。 ◆NHKスペシャル『トランプ流“ディール”戦争と平和の行方は』 本放送/2月22日(土)22:00~22:50 再放送/2月26日(水)0:35~1:26 “ディール”で世界を衝撃の渦に巻き込むトランプ大統領。プーチン大統領と電話会談し、戦闘の終結に向け交渉が動き始めた。一方、ロシアが容易には妥協しない状況も。欧米から“史上最大”の制裁を科される中でも、経済が“好調”を維持、軍事への巨額投資が社会を潤す“死の繁栄”の実態が見えてきた。一方日本近海では、ロシアの核兵器をめぐる不穏な動きも。トランプ流“ディール”で戦争は終わるのか。日本に迫るリスクとは。 詳細は下記リンクからご覧ください。 https://www.nhk.jp/p/special/ts/2NY2QQLPM3/episode/te/L1PXQZVLXP/ ***************************************** ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************