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  • [Resend] Mohammed Aqil CHEDDADI “SGRA Cafe #20 Report ‘Let’s learn about Palestine'”

    大変申し訳ありませんが、短縮URLが上手く機能しなかったため再送させていただきます。 ********************************************** SGRAかわらばん1007号(2024年3月14日) 【1】シェッダーディ・アキル「第20回SGRAカフェ『パレスチナについて知ろう』報告」 【2】催事紹介:NPO暖流主催講演会「歴史の流れの中の韓国の宗教~傍観者の立場から~」 ********************************************** 【1】シェッダーディ・アキル「第20回SGRAカフェ『パレスチナについて知ろう』報告」 2024年2月3日、第20回SGRAカフェ「パレスチナについて知ろう―歴史、メディア、現在の問題を理解するために」が渥美財団ホールおよびZoomによるハイブリッド形式で開催されました。 今回は明治大学の特任講師であり、東京ジャーミイ文書館(テュルク文化・イスラム文化研究施設)理事でもあるハディ・ハーニ先生が講師を務め、パレスチナの歴史やメディアの扱い、そして現在進行形の問題について詳細に解説しました。長年にわたるイスラエル・パレスチナ紛争の根本原因と、現在におけるその影響について深い洞察を提供。さらに同紛争に関する包括的な分析を行い、その歴史的背景や主要な出来事、現在の状況を説明。特に紛争の起源やイスラエルの設立、その後の戦争と平和努力について言及し、パレスチナ人の追放や占領地の状況など、人道的問題を強調しました。さらに2023年10月のハマスによるイスラエル領土への攻撃とイスラエルの対応を例に挙げ、双方の行動が国際法を違反していることを指摘。パレスチナ人の権利と自己決定権の重要性を強調し、平和と共存を望むすべての人々を支持する意志を表明しました。 さらに、イスラエル・パレスチナ問題の簡略化に反対し、少なくとも4つの主要な行為者を2つの異なるレベルで見ることを提案。パレスチナはガザにおいて妥協を許さない強硬な立場を採るハマスと、西岸を統治するより和平と妥協に開かれたファタハ政府に分かれ、同様にシオニスト陣営も紛争への異なるアプローチを反映した右派と左派に分かれています。この枠組みは、直接的な軍事衝突とその結果に焦点を当てる「表層-戦術」レベルと、関与する行為者のより深い、根本的な目標と政策を探求する「構造-戦略」レベルに分類できます。両陣営内の微妙なダイナミクスと内部の多様性を認識する必要があり、紛争を形作る戦略的および戦術的な次元を理解するために単純な物語を超えて進むことの重要性を示しています。 ハディ先生はこのように、イスラエル・パレスチナ紛争における「両側主義」の概念を批判し、それが不当に抑圧者に正当性を与え、最終的には植民地主義的占領構造の「目に見えないテロ」を維持すると主張。「正義の側」に立つことは、パレスチナ人の行動を無条件で擁護することでも、イスラエル人の行動を全面的に非難することでもありません。紛争における両側を同等に扱うことは、非対称な実体を対称的と見なすことであり、これは中立的でも公正でもなく、実際には抑圧者に味方することになります。真に正義と公平を支持するためには、イスラエルの占領政策、それらを可能にする排他的で暴力的なイデオロギー、そしてそれらを支持する政治構造、特に米国の外交政策に挑戦する必要があるとみています。 紛争の解決に向けて市民社会の役割も強調されました。正義の実現には、ハマスとイスラエルの両方からテロリズムの問題を認識し、特に右翼シオニスト派におけるイスラエルの不釣り合いな責任を認め、半世紀にわたるイスラエルの一方的な構造的テロリズムが重大な問題であることを理解するという「3つの命題」の同時実現が必要であると提案。市民に対しては、問題についての意識を高め、声を上げ、これらの懸念を政治行動に反映させ、外交圧力を形成することを目指すよう呼びかけています。 司会・討論者を務める私、シェッダーディ・アキルはガザの現在の人道状況について報告。2024年2月3日時点でガザでの死亡者数が2万7000人を超え、その70%が女性と子どもであることを強調し、紛争の深刻な影響と緊急の国際的対応を呼びかけました。また、国連国際司法裁判所が1月26日にイスラエルに対してガザでのジェノサイドを防ぐための仮命令を下したことは、世界政治と平和努力にとって画期的な瞬間であると強調し、国際法と人権保護の重要性を訴えました。米国、日本、欧州連合などの主要な国際プレーヤーによる国連救済復興事業機関(UNRWA)への支援の停止は、世界的な人道支援に関する重要な疑問を提起し、外交と人道支援という課題に対する日本の対応が、国際社会内での連帯と責任ある行動の必要性を示しているとも指摘しました。 質疑応答セッションは、東京大学博士課程の徳永佳晃氏がアシストしてくださり、会場参加とオンライン参加の両方から多岐にわたる質問が寄せられ、長年にわたる紛争が世界平和、正義、そして人類にとって何を意味するのかについて議論しました。「外交の失敗がイスラエルの植民地化政策の継続を可能にしているのか」、「今後の見通しと解決策は何か」、そして「私たちが世界市民として平和にどのように貢献できるか」についての質問とコメントがありました。 初めてのパレスチナ問題に係るSGRAカフェでは、政治的、歴史的、人道的要因の間のバランスを取りながら、紛争の異なるレベルを分析する枠組みを用いて説明しました。また、パレスチナ問題に対する私たちのアプローチを集団的に再評価する緊急性があることを明確にしました。 当日の写真は下記リンクよりご覧いただけます。 http://bit.ly/3TzjugR <シェッダーディ・アキル Mohammed_Aqil_CHEDDADI> モロッコ出身。モロッコ国立建築学校卒業。慶應義塾大学政策・メディア研究科環境デザイン・ガバナンス専攻修士号取得・博士課程在学。同大学総合政策学部訪問講師。2022年渥美奨学生。 ---------------------------------------------------------------- 【2】催事紹介:NPO暖流主催講演会「歴史の流れの中の韓国の宗教~傍観者の立場から~」 SGRA会員の羅仁淑です。有志の皆さんと日韓親善活動をしております。 今回の講演会では、外務省入省後、通算19年間在韓国日本大使館、在釜山日本総領事館および在済州日本総領事館にて外交官として勤務していた鈴木光男さんをお招きし、韓国人はどのような宗教を受け入れ生み出し、変化してきたかについてお話しいただくことになりました。ぜひご来場いただき応援いただけましたら幸甚です。 ◆題名:「歴史の流れの中の韓国の宗教~傍観者の立場から~」 ◆日時:2024年3月30日(土)、14時~ ◆場所:うめとぴあ 研修室C-1(世田谷区立保健医療福祉総合プラザ)小田急線「梅丘」徒歩5分 ◆お申込:下記リンクをクリックしてください。 https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSefHO1NMAccVtO8mIY_qbfinoPkiecghcViEWpDEZ8nc9TG-A/viewform?usp=send_form ◆チラシ:下記リンクをクリックしてください。 https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:AP:0d70c53f-3821-4a78-bdcc-d8ed8ae11e3f ◆お問合せ:[email protected] (090-6568-7652) ◆主催:NPO法人日韓親善交流協会暖流 ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************    
  • Mohammed Aqil CHEDDADI “SGRA Cafe #20 Report ‘Let’s learn about Palestine'”

    ********************************************** SGRAかわらばん1007号(2024年3月14日) 【1】シェッダーディ・アキル「第20回SGRAカフェ『パレスチナについて知ろう』報告」 【2】催事紹介:NPO暖流主催講演会「歴史の流れの中の韓国の宗教~傍観者の立場から~」 ********************************************** 【1】シェッダーディ・アキル「第20回SGRAカフェ『パレスチナについて知ろう』報告」 2024年2月3日、第20回SGRAカフェ「パレスチナについて知ろう―歴史、メディア、現在の問題を理解するために」が渥美財団ホールおよびZoomによるハイブリッド形式で開催されました。 今回は明治大学の特任講師であり、東京ジャーミイ文書館(テュルク文化・イスラム文化研究施設)理事でもあるハディ・ハーニ先生が講師を務め、パレスチナの歴史やメディアの扱い、そして現在進行形の問題について詳細に解説しました。長年にわたるイスラエル・パレスチナ紛争の根本原因と、現在におけるその影響について深い洞察を提供。さらに同紛争に関する包括的な分析を行い、その歴史的背景や主要な出来事、現在の状況を説明。特に紛争の起源やイスラエルの設立、その後の戦争と平和努力について言及し、パレスチナ人の追放や占領地の状況など、人道的問題を強調しました。さらに2023年10月のハマスによるイスラエル領土への攻撃とイスラエルの対応を例に挙げ、双方の行動が国際法を違反していることを指摘。パレスチナ人の権利と自己決定権の重要性を強調し、平和と共存を望むすべての人々を支持する意志を表明しました。 さらに、イスラエル・パレスチナ問題の簡略化に反対し、少なくとも4つの主要な行為者を2つの異なるレベルで見ることを提案。パレスチナはガザにおいて妥協を許さない強硬な立場を採るハマスと、西岸を統治するより和平と妥協に開かれたファタハ政府に分かれ、同様にシオニスト陣営も紛争への異なるアプローチを反映した右派と左派に分かれています。この枠組みは、直接的な軍事衝突とその結果に焦点を当てる「表層-戦術」レベルと、関与する行為者のより深い、根本的な目標と政策を探求する「構造-戦略」レベルに分類できます。両陣営内の微妙なダイナミクスと内部の多様性を認識する必要があり、紛争を形作る戦略的および戦術的な次元を理解するために単純な物語を超えて進むことの重要性を示しています。 ハディ先生はこのように、イスラエル・パレスチナ紛争における「両側主義」の概念を批判し、それが不当に抑圧者に正当性を与え、最終的には植民地主義的占領構造の「目に見えないテロ」を維持すると主張。「正義の側」に立つことは、パレスチナ人の行動を無条件で擁護することでも、イスラエル人の行動を全面的に非難することでもありません。紛争における両側を同等に扱うことは、非対称な実体を対称的と見なすことであり、これは中立的でも公正でもなく、実際には抑圧者に味方することになります。真に正義と公平を支持するためには、イスラエルの占領政策、それらを可能にする排他的で暴力的なイデオロギー、そしてそれらを支持する政治構造、特に米国の外交政策に挑戦する必要があるとみています。 紛争の解決に向けて市民社会の役割も強調されました。正義の実現には、ハマスとイスラエルの両方からテロリズムの問題を認識し、特に右翼シオニスト派におけるイスラエルの不釣り合いな責任を認め、半世紀にわたるイスラエルの一方的な構造的テロリズムが重大な問題であることを理解するという「3つの命題」の同時実現が必要であると提案。市民に対しては、問題についての意識を高め、声を上げ、これらの懸念を政治行動に反映させ、外交圧力を形成することを目指すよう呼びかけています。 司会・討論者を務める私、シェッダーディ・アキルはガザの現在の人道状況について報告。2024年2月3日時点でガザでの死亡者数が2万7000人を超え、その70%が女性と子どもであることを強調し、紛争の深刻な影響と緊急の国際的対応を呼びかけました。また、国連国際司法裁判所が1月26日にイスラエルに対してガザでのジェノサイドを防ぐための仮命令を下したことは、世界政治と平和努力にとって画期的な瞬間であると強調し、国際法と人権保護の重要性を訴えました。米国、日本、欧州連合などの主要な国際プレーヤーによる国連救済復興事業機関(UNRWA)への支援の停止は、世界的な人道支援に関する重要な疑問を提起し、外交と人道支援という課題に対する日本の対応が、国際社会内での連帯と責任ある行動の必要性を示しているとも指摘しました。 質疑応答セッションは、東京大学博士課程の徳永佳晃氏がアシストしてくださり、会場参加とオンライン参加の両方から多岐にわたる質問が寄せられ、長年にわたる紛争が世界平和、正義、そして人類にとって何を意味するのかについて議論しました。「外交の失敗がイスラエルの植民地化政策の継続を可能にしているのか」、「今後の見通しと解決策は何か」、そして「私たちが世界市民として平和にどのように貢献できるか」についての質問とコメントがありました。 初めてのパレスチナ問題に係るSGRAカフェでは、政治的、歴史的、人道的要因の間のバランスを取りながら、紛争の異なるレベルを分析する枠組みを用いて説明しました。また、パレスチナ問題に対する私たちのアプローチを集団的に再評価する緊急性があることを明確にしました。 当日の写真は下記リンクよりご覧いただけます。 http://bit.ly/3TzjugR <シェッダーディ・アキル Mohammed_Aqil_CHEDDADI> モロッコ出身。モロッコ国立建築学校卒業。慶應義塾大学政策・メディア研究科環境デザイン・ガバナンス専攻修士号取得・博士課程在学。同大学総合政策学部訪問講師。2022年渥美奨学生。 ---------------------------------------------------------------- 【2】催事紹介:NPO暖流主催講演会「歴史の流れの中の韓国の宗教~傍観者の立場から~」 SGRA会員の羅仁淑です。有志の皆さんと日韓親善活動をしております。 今回の講演会では、外務省入省後、通算19年間在韓国日本大使館、在釜山日本総領事館および在済州日本総領事館にて外交官として勤務していた鈴木光男さんをお招きし、韓国人はどのような宗教を受け入れ生み出し、変化してきたかについてお話しいただくことになりました。ぜひご来場いただき応援いただけましたら幸甚です。 ◆題名:「歴史の流れの中の韓国の宗教~傍観者の立場から~」 ◆日時:2024年3月30日(土)、14時~ ◆場所:うめとぴあ 研修室C-1(世田谷区立保健医療福祉総合プラザ)小田急線「梅丘」徒歩5分 ◆お申込:下記リンクをクリックしてください。 https://00m.in/fXKLG ◆チラシ:下記リンクをクリックしてください。 https://00m.in/iQZNc ◆お問合せ:[email protected] (090-6568-7652) ◆主催:NPO法人日韓親善交流協会暖流 ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************  
  • XIE Zhihai “Politics and Entertainment in the U.S. Presidential Election”

    ********************************************** SGRAかわらばん1006号(2024年3月7日) 【1】エッセイ:謝志海「米大統領選で見る政治とエンターテインメント」 【2】国史対話エッセイ紹介:江沛「歴史研究と私の学術の歩」 ********************************************** 【1】SGRAエッセイ#759 ◆謝志海「米大統領選で見る政治とエンターテインメント」 米国では今年の11月に大統領選挙が行われる。4年に一度のこの時期が近づくと、米国にはまだ自由が残っているなと思う。国内だけを見ても、人種問題、移民問題、度々起こる銃乱射事件、物価上昇に伴う経済格差が引き起こす強盗など実に様々な問題を抱えているようにしか見えないが、なにが自由かというと、まず一つはやはり国民が直接、大統領候補に投票できること。同じく民主主義の日本でも、国民が総理大臣を選ぶということがない。大統領制と議院内閣制の根本的な違いだ。もう一つは、俳優などの著名人が公に民主、共和どちらの党を支持するか、はたまた候補者の誰を支持するのか自由に発言できる環境があることだ。 国民と政治、広い意味でエンターテインメント業界と政治の近さには、中国と日本でしか暮らしたことのない私は驚いてしまう。「国のトップを決める選挙に国民が口を挟めるとは!」という感じだ。 最近では世界ツアーで来日し、4日間東京ドームを満席にした歌手、テイラー・スウィフトに、来たる大統領選を巡る「陰謀論」まで勃発、その火はまだ消えていない(陰謀論についての説明はここでは割愛させていただきたい)。あのような華やかな歌姫と政治?なにが接点?と思うが、米国では真剣に信じている人々がたくさんいるのだから不思議だ。なぜこの様な若い歌手に陰謀論がつきまとうのかといえば、やはり米大統領選は国民が参加できるからではないか。 実のところ、バイデン大統領よりもトランプ前大統領よりもテイラー・スウィフトの方が幅広い世代の支持者(ファン)を集めている。彼女の「つぶやき」が民主党を応援するものとなると、「スウィフティーズ(ファンはこう呼ばれている)」に少なからず影響を及ぼす。前回の大統領選では、テイラーはバイデン氏支持を公言した。そして大統領選の前は「みんな(選挙のための)登録に行こう!」とツイッター(現X)で呼びかけた。彼女が政治に関心を持っているのは明白だ。ゆえにテイラーをアンチ・ヒーローとする人々が彼女を危険視して、とんでもない陰謀論をでっち上げてしまうのも無理はない。 日本で言うところの都市伝説レベルの陰謀論がテレビニュースで論じられてしまうのもまた、皮肉の意味を込めて言う自由だ。歌手や俳優も自由に自分がどの党を支持するのか発言でき、ファンに「投票に行こうよ!」と呼びかける。これはテイラーに始まったことではない。これまでも多くの有名人がしていることだ。そしてそれらの意見に影響されようがされまいが国民は自分の権利を行使すべく、投票所に行く。若者の投票率も高い。 今回の大統領選に関して、テイラーはまだ何も発言していない。今は世界ツアーの真っ最中で、春には新しいアルバムがリリースされることも発表され、今は自身の評判(Reputation)を上げることに忙しいことだろう。政治的発言だけでなく、彼女の一挙手一投足に世界中が目を離せない状況はしばらく続く。一人の歌手がこれほど政治に影響を及ぼすとは!一方で民主党、共和党には厳しい夏(Cruel_Summer)が待ち構えている。 <謝志海(しゃ・しかい)XIE Zhihai> 共愛学園前橋国際大学教授。北京大学と早稲田大学のダブル・ディグリープログラムで2007年10月来日。2010年9月に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期課程単位取得退学、2011年7月に北京大学の博士号(国際関係論)取得。日本国際交流基金研究フェロー、アジア開発銀行研究所リサーチ・アソシエイト、共愛学園前橋国際大学専任講師、准教授を経て、2023年4月より現職。ジャパンタイムズ、朝日新聞AJWフォーラムにも論説が掲載されている。 ---------------------------------------------------------------- 【2】国史対話エッセイ紹介 2月28日に配信した国史対話メールマガジン第54号のエッセイをご紹介します。 ◆江沛「歴史研究と私の学術の歩」 このタイトルで学術経歴をまとめるのが適切でしょう。 私が生まれたのは中国の河南省開封市で、宋の時代には東京と呼ばれ、現在の日本の東京と同じ名前でした。開封市は唐の時代に繁栄しはじめ、宋の時代に頂点に達し、明と清の時代に衰退して、現在は河南省の省都である鄭州市の裏庭と位置付けられるようになっています。このように時代によって開封市は大きく変化してきましたが、その長い歴史的伝統と深い文化は廃れることなく伝わってきました。この都市で育ち、幼い頃から『水滸伝』を熟読した私は、小説で描かれた東京城に生活しているような感覚を持ち、騒々しい屋台料理の売り声と地元のたけだけしい気風を浴びて、天然の歴史的感覚が思わず知らずに身につきました。 文化大革命が家庭にもたらした災難や改革開放後の自由な雰囲気を経験したことで、1980年代に南開大学で勉強した私は中国以前の発展の道筋を振り返って考え直し、その制度的な原因を突き止めようという思いをずっと持ち続けました。この執着が、私が文革史という分野を選んだ最初の原動力となり、中国初の紅衛兵運動史の専門書である『紅衛兵狂飆』を執筆しました。しかし、中国における経済と政治の双方の変動が原因で、文革史研究の勢いは弱まってしまいました。 中国社会の特性は政治社会であることを有名な歴史学者である劉沢華先生から教わりました。文革史は現代史にあたりますが、その動力を解明するにはより前の時代に遡り、広い視野と長期的な視点を持たなければなりません。そのため、私は国民党史と中国共産党史の比較研究に着手しました。 全文は下記リンクよりお読みください。 https://www.aisf.or.jp/sgra/kokushi/J_Kokushi2024JiangPeiEssay.pdf ※SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。国史メルマガは毎月1回配信しています。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方はSGRA事務局にご連絡ください。3言語対応ですので、中国語、韓国語の方々にもご宣伝いただけますと幸いです。 ◇国史メルマガのバックナンバー https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ◇購読登録ご希望の方はSGRA事務局へご連絡ください。 [email protected] ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************  
  • Nahed ALMEREE “Syrians’ Weight and Health Attitudes”

    ********************************************** SGRAかわらばん1005号(2024年2月29日) 【1】エッセイ:ナーヘド・アルメリ「シリア人の体重と健康への意識」 【2】寄贈書紹介:三谷博『民主化への道はどう開かれたか―近代日本の場合―』 【3】寄贈書紹介:長沢栄治監修、嶺崎寛子編著『日本に暮らすムスリム』 ********************************************** 【1】SGRAエッセイ#758 ◆ナーヘド・アルメリ「シリア人の体重と健康への意識」 健康に対する意識は近年、世界中で高まっている。科学や技術の進歩が健康の維持と意識の向上に大きな役割を果たしていることは言うまでもない。ただ、健康を巡る社会状況や意識は国によって異なる。健康と密接に関連する重要な要素「体重」の問題に対するシリア人、いや、アラブ諸国の人々の意識は低く、肥満でも体重には悩まないし、数値にもこだわらない。 家に体重計がない。人が行き来する大学の門の前や商店街などで、体重計を前に置いて椅子に座っているおじさんにお金を払い、洋服と靴のまま乗って自分の体重を知る。体重が50キロだろうが、60キロだろうが、80キロだろうが深く考えず悩まない。若い女子学生たちのグループが遊び感覚で大学前のおじさんの体重計を囲み順番に乗って、友達の体重の指数を見て、自分のを忘れたので確認しようとまた乗って、という楽しそうな体重比べの場面を見かけることもある。自分の体重を知らない人が多く、体重の話も別にタブーでもなく、わざわざ話題にするほどでもない。アラブの国に足を運べば、アラブの人は体重だけでなく、いかに自分の身体をデフォルトでネガティブに見ないかがよく分かる。しかし、残念ながらそういった体重への意識や無関心が、社会問題となっている過体重と肥満の因子、糖尿病など多くの非感染性疾患の有病率の増加に大きな役割を果たしている。 アラブ諸国では肥満率の増加が指摘されており、世界肥満観測所のデータによると、アラビア半島の国々を始め、ヨルダン、イラク、エジプトでの肥満率はほぼ3割で、これらの国々は糖尿病の人も多く、人口あたりの糖尿病罹患率が世界15位以内にランキングされている。シリアでの肥満率は上記の近隣諸国の肥満率には及ばないものの、2割5分を超える。実感として40~50代以降になると男女を問わずお腹が出ている人の割合が大きい。特に民族衣装を着ている人は身体全体がすっぽり覆われるため、シルエット的に目立ちにくいが、それでも時々、男性でも妊婦かと思うほどお腹がぽっこり出ている。シリアでは「お腹が出ていない男は家具のない家のようなものだ」という有名なことわざがあるくらいだ。 アラブ社会における肥満まん延の最大の原因が、カロリーが高いものの消費だ。シリアの食事には野菜や穀物が多く使われているが、調理過程で脂質や炭水化物が高いものに仕上げてしまう。昼食後に砂糖がたっぷりの紅茶を飲み、夕方になると糖質と脂質が高いデザートを食べたりする。オリーブオイルはコーランや聖書の中で祝福されたものとされているため、アラブ諸国の人は料理にたっぷりオリーブオイルをかけることが身体に良いことで、ごちそうだと考えている。自宅に食事に招待した時には、普段よりもたくさんオリーブオイルを加える。料理オイル、または野菜や牛のギー(バターオイル)より脂質が高い羊のギーを使ったデザートを用意する。 砂糖が入っていないお茶やジュースを出すことはあり得ない。1リットルのお湯に100グラムの砂糖を溶かし、お茶を入れる。5年前から続いている経済封鎖下のシリアの現状では砂糖の価格が徐々に上がり、今1キロが1万5千シリアポンドで、平均給与15万~20万シリアポンドの公務員にとって高価なので、食生活から徐々に砂糖の摂取量が減らされるのかと思ったが、逆に他の食料品を減らしたり、省いたりしても砂糖はやめられない。お酒を飲まない、経済封鎖でデザートやお菓子が高価すぎてなかなか買えないシリア人にとって、砂糖で飲み物を甘くすることがそれに代わる嗜好品なのかもしれない。 また、アラブ社会における運動不足は―いや、運動文化の欠如と言っても過言ではない―食生活に次ぐ肥満まん延の大きな原因だ。20年前からシリア、特に首都のダマスカスと近郊ではジム施設が増えた。施設は地下1階にあり、外が見えない、窓は地上の地面からはみ出している天井の高さに合うように壁の上部に設置されている。女性向けの1時間のエアロビクスクラスが1日に1回か2回あり、時間をずらした男性クラスのために種類も数も少ない筋トレマシンが置いてある。 ジム流行と並行して、テレビやインターネットの普及により、一般の人もスクリーン上で美しい女優やアーティストを見て、体重の問題に気づくようになった。さらに、ビデオクリップが広まり始めた時、夫は美しいスリムなレバノン人歌手を見て妻が太っていることに初めて気づき離婚したという事件もあった。スリムで美しい俳優や女優ばかりが出演するトルコのドラマが、アラビア語吹き替えでシリアでも流行し、ドラマの出演者に憧れ、体重を減らしたいと思うようになった若い女性や主婦が次々と現れた。だが、多くの女性には体重を減らすことについての知識が少なく、ジムに通えば1~2カ月でなりたい身体になれると思っており、その効果が得られないためにジムをやめてしまう。そこで、不健康な方法で食事をやめたり、空腹に耐えたり、専門家でない利益ばかりを目的とする販売業者からほとんど効果がない減量薬を無作為に選んで購入したりする。妥当な体重と健康状態は関連するものだと考えずに、ただ痩せて外見を変えたい。 3年余り前に帰国した後、数カ月ごとにジムを変えて通ってみたが、登録するたびに「細いからわざわざ時間かけて運動する必要はないよ」とどこのコーチにも言われた。一般の人だけでなく、ジムのコーチでも、運動は健康維持のためのものだというより、過剰な体重を落とす手段として考えている。月会費が高くなったので退会し、外で走りはじめたら、道を通る車の助手席やトラックの荷台に乗っている人に、笑われながら見えなくなるまで「1、2」とよく号令をかけられたりする。意地悪なことに慣れるまでは不愉快に思ったが、そのうち仕方がないことだと受け入れ無視できるようになった。 そもそもアラブ諸国では肥満が多くの病気の発症に関係しているという認識もあまりなく、肥満が外見問題に過ぎないと思われている。また、深刻な問題として考えられておらず、むしろ、年を取れば身体も衰え、肉体も横に成長し、病気する、それが当たり前のことだと思われている。 肥満で糖尿病になった40代の叔父や心血管疾患に苦しんでいる50代の旦那の友人に健康維持の話をすると、「我々にふりかかって来るものは、すべてアラー(イスラム教で万物を支配する唯一の神)が特に定め給うたものばかり。アラーこそ我々の守護者。アラーにこそ一切をお任せ申すべきだ」や「以前からある記録(アラーが定めたもの)に沿わない限り誰も長く生き続けないし、誰の命も短く切られることはない」などとコーランの教えが返ってきた。 そして、この二人だけでなく、病気している他のシリア人も薬を飲むのは基本的に辛くなるときに限ってだ。40歳を越えた女性は「もう年なので」と自分の身体のことを諦めている人が多い。妥当な体重または健康な状態を維持するために、好きな食事を制限したり筋肉を痛めて運動したりするのはばかばかしいことだ。どんなに努力しても、アラーが定めた日以外には死なない。むしろ、無理に努力しないで身体を巡ることに悩まないで、定められた人生のすべてをそのまま受け入れて生きるのが良くて幸せで元気という考えだ。 第三者の神アラーへの完全な依頼心が強く、主体性を持とうとしない。身体に関してコンプレックスを抱き悩む必要はなく、神にすべてを任せることが元気なのだ。それが精神的な健康の在り方の一つでもあると考えても良いかもしれない。長い時間をかけて内在化した考えからは簡単に抜け出せるものではなく、場所も生活スタイルも違えば価値観も違う。良い悪いも単純に判断できるものではない。しかし、「体重は単なる外見の問題だけではない。未病で健康な身体を守ろうと努力し様々な制限を設けることにも人生のまた別の幸せと楽しみ方がある」という考えがアラブ一般の人に広まっていく時が早く訪れてほしいと思う。 <ナーヘド・アルメリ Nahed_ALMEREE> 渥美国際交流財団2019年度奨学生。シリア出身。ダマスカス大学日本語学科卒業。2011年9月日本に留学。2013年4月筑波大学人文社会科学研究科に入学。2020年3月博士号取得。博士論文「大正期の童謡研究――金子みすゞの位置づけ」は優秀博士論文賞を受賞。2020年11月『金子みすゞの童謡を読む――西條八十と北原白秋の受容と展開』港の人から出版。2021年、第45回日本児童文学学会奨励賞受賞。現在、ダマスカス大学文学部日本語学科教員。 ---------------------------------------------------------------- 【2】寄贈本紹介 SGRA会員で東京大学名誉教授の三谷博先生より新刊書をご寄贈いただきましたのでご紹介します。 ◆三谷博『民主化への道はどう開かれたか―近代日本の場合―』 いま私たち日本人は選挙権を持っています。政府への要望や不満を目にしたり、語ったりします。 でもこれは当然のことではありません。世界にはそうできない国が沢山あります。 江戸時代の日本もそんな国の一つでした。 この本では、日本がどのようにして自由のある国に変わったのか、明治維新から立憲政治の始まった時代までを取り上げて考えた一冊です。 発行所 清水書院 判型 A5 ページ数 108ページ 定価(税込)1,100円 ISBNコード 978-4-389-50146-4 発行年月日 2024/01/06 詳細は下記リンクよりご覧ください。 https://www.shimizushoin.co.jp/books/view/845 ---------------------------------------------------------------- 【3】寄贈本紹介 SGRA会員で早稲田大学助教の沈雨香さんより共著書をご寄贈いただきましたのでご紹介します。 ◆長沢栄治監修、嶺崎寛子編著『日本に暮らすムスリム』 日本には国籍や母語、敬虔さなどからみて、多様で多彩なムスリム(イスラーム教徒)が暮らす。彼ら/彼女らの個々に異なる経験を鮮やかに描き出し、日本のムスリムを取り巻く歴史的・社会的状況を詳らかにした上で、受け入れや共生への課題や方向性を示す。 発行所 明石書店 ISBN 9784750357164 判型・ページ数 4-6・292ページ 出版年月日 2024/02/29 詳細は下記リンクよりご覧ください。 https://www.akashi.co.jp/book/b641683.html ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************  
  • PARK Joon-hee “New Research & Challenges”

    ********************************************** SGRAかわらばん1004号(2024年2月23日) 【1】エッセイ:朴峻喜「新しい研究と挑戦」 【2】国史対話エッセイ紹介:彭浩「『バター臭い』と『ぬかみそ臭い』:異文化の接触と対話に絡む連想」 【3】催事紹介:第21回INAF研究会「新しい時代の日韓関係のあり方と展望」(2月26日、オンライン) ********************************************** 【1】SGRAエッセイ#757 ◆朴峻喜「新しい研究と挑戦」 日本に留学するとは夢にも思っていなかった。釜山国立大学博士課程の学生で、2018年春に埼玉大学に交換留学に来たことがきっかけとなった。 日本に来てからは、自分の世界がひどく狭かったことに気づいて衝撃を受け、心身ともに不調な日が続き、腸炎にも苦しめられ、痩せてしまった。当初私の日本語は初歩的な水準で、解釈するのが毎日大変だった。日本で生活するのがとてもストレスだった。 幸いだったのは、留学先である埼玉大学が私にはとてもよい環境だったことだ。日本語が得意でなくても配慮してくれる研究会の雰囲気があり、私の専攻である労使関係で、日本国内で一番の専門家の先生方や多様な分野で活動している大学院生の同僚たちが私を支えてくれた。日本語ができないことが苦しかったりもしたが、一方では温かい雰囲気で研究でき、新しい未来も夢見ることができた。当時の夢は日本語が少しでもうまくできるようになること、労働と関連した博士論文を完成させること、その過程で査読付き論文を3本書くこと、そして、できれば就職もしてみることだった。 まだ信じられないが、この4年間は本当に耐えながら博士論文を書いた。大変だったが、3本の査読論文も掲載できた。運良くアカデミアに就職することもできた。努力した以上の良い結果が出て過分な状態で、これ以上望むことはないと思ったし、こうなればもう大変なことはないだろうと思っていた。 ところが博士論文を書き終えた後、目の前が閉ざされたように感じた。これから何を研究すればいいのか、どんな先生になればいいのか、元々のテーマを発展させていくべきなのか、それとも全く新しいテーマを探すべきなのか、学生たちと楽しく交流する先生になるべきなのか、それとも自分の研究に集中して著名な研究を行う先生になるべきなのか、悩ましい問題が出てきた。日本語は以前よりも上手になったとはいえ、相変らず満足できない。ミスをするとさらに恥ずかしく感じられた。 いつか人生で悩みがなくなる時があると思ったが、それは幻想だったようだ。仕方なくもう一度夢を考えざるを得なくなった。今は博士課程のような5~7年間やりたい研究ではなく、人生全体にわたる研究について考える時であると思った。どんな研究者になりたいのか、どんな人間になりたいのか、どんな言葉をどんな言い方で話す人になりたいのか、そしてそのためにはどのような計画と努力が必要なのか、長期的に考える必要性を感じるようになった。 今はまだ、何か社会に役立つ研究をしたい、そして労働研究において不平等問題を解決できる何らかの研究をしたい、という漠然とした考えしかない。もう一度、このような漠然とした考えを基に、博士課程の時のように研究体系全体を具体的に描いていかなければならないだろう。こういうことをやり直さなければならないと思うと、時に力が抜ける時もあるが、それでもやり遂げた時間を振り返ってみれば良い結論にたどり着くはずだと、少しの希望を持っている。そして、いつかこのような悩みを、同期奨学生だったラクーン同志たちと共に分かち合いたいと思っている。 <朴峻喜(パク・ジュンヒ)PARK Joon-hee> 2022年度渥美奨学生。2023年3月埼玉大学人文社会科学研究科で経済学博士号取得。現在、立教大学経済学部助教。労働経済や労使関係を研究。 ---------------------------------------------------------------- 【2】国史対話エッセイのご紹介 1月31日に配信した国史対話メールマガジン第53号のエッセイをご紹介します。 ◆彭浩「『バター臭い』と『ぬかみそ臭い』:異文化の接触と対話に絡む連想」 日本に来てから何度も転居し、数年前大阪に引っ越してきた。家の近くには有名な四天王寺があり、近所の読書愛好家が楽しむ一大イベントである古本市が毎年春と秋に開催される。小生も常連客の一人で、昨秋もよき出会いがあった。さっそく読み始めたのは、『東京に暮す1928~1936』という題名の岩波文庫本。昭和初期に英国外交官の妻として来日したキャサリン・サンソムが著した日本印象記のようなものである。対象となった時代を考えると、明治の「文明開化」から半世紀以上も経ち、洋服が普通に着られ、洋食屋もあちこち見られる都市の光景ではなかろうか。しかし、サンソム夫人の体験には、文化の違いによる戸惑いがやはり少なくなかった。 (中略) そこまで連想を広げると、昨夏の「国史たちの対話」の様子が頭に浮かんできた。渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)が主催したこの円卓会議は昨年で8回目を迎え、今回のテーマは「20世紀の戦争・植民地支配と和解はどのように語られてきたのか」だった。小生は実行委員の一人としてテーマの設定などに関わったが、当初は三カ国間の長きにわたる歴史認識の問題や政治文化の違いに加えてロシアのウクライナ侵攻をめぐる立場の相違もあるため、言い争いになるのではないかとやや懸念した。しかし、実際の「対話」は驚くほど相互の議論が噛み合っていた。一般的に考えると敏感な話題なのに、なぜ参加者の認識に懸隔がなく、平和的な「対話」が可能になったのだろうか。様々な要因が考えられるが、もしかしたらこうした国際的感覚もある程度働いたのかもしれない。 全文は下記リンクよりお読みください。 https://www.aisf.or.jp/sgra/kokushi/J_Kokushi2024PengHao2Essay.pdf ※SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。国史メルマガは毎月1回配信しています。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方はSGRA事務局にご連絡ください。3言語対応ですので、中国語、韓国語の方々にもご宣伝いただけますと幸いです。 ◇国史メルマガのバックナンバー https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ◇購読登録ご希望の方はSGRA事務局へご連絡ください。 [email protected] ---------------------------------------------------------------- 【3】催事紹介 SGRA会員で北陸大学教授の李鋼哲さんより、自ら創設された(一社)東北亜未来構想研究所(INAF)の研究会のお知らせをいただきましたのでご紹介します。参加ご希望の方は直接お申し込みください。 ◆第21回INAF研究会「新しい時代の日韓関係のあり方と展望」 日時:2024年2月26月18:00~21:00(オンライン、Zoom) ファシリテーター:佐渡友哲 INAF常任理事 問題提起:三村光弘 INAF常任理事・新潟県立大学北東アジア研究所 パネリスト: 鄭美愛(ジョン・ミエ)INAF理事、韓国世宗研究所 川口智彦 INAF常任理事、日本大学国際関係学部 高永喆(コ・ヨンチョル)INAF理事、元韓国国防省分析官、拓殖大学 河信基(ハ・シンギ)INAF顧問、作家・評論家 菊池嘉晃 金沢星稜大学人文学部 E.パストリッチ INAF理事、アジア・インスティチュート理事長 堤一直 INAF理事、慶熙大学校アジア太平洋研究センター日本学研究所 プログラムの詳細、参加申し込みについては下記リンクをご覧ください。 https://inaf.or.jp/ ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************  
  • TAN Tianyang “Dreams Realized Through Study Abroad”

    ********************************************** SGRAかわらばん1003号(2024年2月15日) 【1】エッセイ:譚天陽「留学を通じて実現した夢」 【2】第21回SGRAカフェ「日本社会における二重国籍の実態」へのお誘い(2月17日、東京+オンライン)最終案内 ********************************************** 【1】SGRAエッセイ#756 ◆譚天陽「留学を通じて実現した夢」 初めて日本に来たのは大学3年生の時です。大学の派遣留学プログラムを通し、鹿児島大学に留学することができました。 鹿児島大学では半年くらいの生活しか送りませんでしたが、とても印象深く、今でも忘れてはいません。その頃、初めての留学生のほとんどは日本語授業を中心に勉強していましたが、私は法学部の授業を積極的に取りました。そのおかげで、日本の法律はどのようなものなのかということに触れることができました。特に中国の法学部にはないゼミナールという授業形式に参加することで、グループワークや議論の大切さを初めて認識。そして、レポートの提出を重ねることによって、先生たちとの関係も深まりました。 帰国後、大学4年生になり卒業論文の執筆を始めました。日本と中国の法律の比較研究に先立ち、日本語論文の文献調査が必要でしたが、鹿児島大学でお世話になった先生から、貴重な情報を提供していただき先行文献を手に入れ、卒業論文を無事に完成することができました。母国では、一人の先生が担当する学生が多いため、丁寧な個人指導やゼミで議論してくれたり、帰国後もメールで親切に対応し調べてくれたりする先生はなかなかいません。 卒業論文を経験することで、さらに研究しようという意欲が生まれ、卒業後、日本へ再び留学することを決めました。研究生の半年間と修士課程の2年間を終え、修士論文が完成。日本文化をさらに理解し、研究を深めることができた2年半でした。学校でティーチングアシスタントなどを担当し、学会へ参加し、数々の学者の先生方と交流することで、日本の文化だけでなく、自分が目指すべき方向を見つけることができました。さらに奨学金を通じて財団の関係者及び先生、他大学の優秀な研究者と交流し、国際交流の大切さを認識することができました。感動と感謝の気持ちでいっぱいです。 留学生にとって、日本人と同様に学会へ参加し、懇親会などで先生たちと交流したり、ゼミで外国人でありながら後輩をサポートしたり、そして学校及び財団から経済的な支援を受けたりできたことはとても貴重でした。昨今、日本はたくさんの海外留学生を受け入れ、どの分野においても優秀な研究者が存在しています。自分も日本だけでなく各国から来日した優秀な研究者たちと深く交流することで、国際的な水準に達する研究を目指していきたいと思って、さらに博士後期課程に進学しました。 修士課程では、母国の中国と日本の比較研究だけだったのに対し、博士論文では世界の複数の国・地域での関連法制度を検討の材料にすることができました。さらに、海外の学会に参加して現地の学者と交流したり、学会のみならず、実務家の方とのつながりを深めたりすることで、博士論文だけでなく、人生の見方にも深く影響を与えてくれました。 修了後、私は日本の大学で研究を続ける予定です。この数年間を振り返ってみると、夢が次から次へと実現できました。学部時代は海外で学位を取得すること、修士課程の頃は研究者になることが夢で、博士後期課程では、これらの夢を実現することができました。今の夢といえば、自分の研究が世界に影響を与えることで、夢がかなうよう頑張っていきたい。 <譚天陽(たん・てんよう)TAN_Tianyang> 早稲田大学比較法研究所助教。2022年度渥美国際交流財団奨学生。2023年3月一橋大学大学院法学研究科博士号(法学)取得。知的財産法(特に著作権法)の研究をしている。 ---------------------------------------------------------------- 【2】第21回SGRAカフェ「日本社会における二重国籍の実態」へのお誘い(最終案内) 下記の通り第21回SGRAカフェを会場及びオンラインのハイブリット方式開催いたします。参加をご希望の方は、会場、オンラインの参加方法に関わらず事前に参加登録をお願いします。 テーマ:「日本社会における二重国籍の実態 複数国籍保持者に対するスティグマ付与と当事者らの実践」 日 時: 2024年2月17日(土)14:00~16:30 方 法: 会場及びZoomミーティング 言 語: 日本語 申 込: 下記リンクからお申し込みください http://bit.ly/48hqt2o お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■ フォーラムの趣旨 政治家やスポーツ選手等の「二重国籍問題」が炎上しやすい日本社会。日本国籍だけを保有する人々だけが「国民」なのだろうか。「外国人」と「国民」の境界線に居ながら日本社会で生きている多くの人たちは、どのような葛藤を抱え「二重国籍」と向き合っているのか。今回のSGRAカフェでは、このような問いをみんなで考えていきたい。 日本の国籍法は、国籍唯一の原則を取り入れているが、それは複数国籍保持の禁止又は違法性を意味するのだろうか。国籍法をめぐる様々な誤解を解いた上で、国籍唯一の原則が導入された背景を考察する。また、国際的動向に逆らって、日本では複数国籍容認への動きが全く見られないだけではなく、むしろ過去15年間、行政による複数国籍防止対策が以前より徹底されているようにさえ窺える。この動きの背景は何か。 最後に、複数国籍保持者の当事者らはどのような問題に直面し、どのような実践を繰り広げているのか。国際結婚によって生まれた人たち、帰化を経て日本国籍を取得した人たち、外国籍を取得した海外居住中の元日本国籍保持者の事例から、国籍選択制度や国籍喪失/はく奪条項等をめぐる各個人の実践と、近年の動きを検討していく。 ■ プログラム 14:00 イントロダクション:「多くの誤解を生んでいる日本の国籍法」 コーベル・アメリ(獨協大学特任講師) 14:10 基調講演:「日本社会における複数国籍の実態―放置主義から摘発強化への政策転換」 武田里子(大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター客員研究員) 14:55 話題提供1「日本における国籍と社会福祉及びソーシャルワーク」 ヴィラーグ・ヴィクトル(日本社会事業大学准教授) 15:05 話題提供2「国際-国家、そして家族史における国籍」 金崇培(国立釜慶大学助教授) 15:15 話題提供3「日本と中国の間で起きている国籍問題」 高偉俊(北九州市立大学国際環境工学部教授) 15:35グループディスカッション 16:05ディスカッション結果の共有 司会/モデレーター: コーベル・アメリ 16:30 閉会 プログラムの詳細 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/01/SGRACafe21Program.pdf ポスター https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/01/SGRAcafe21v2-1.jpg ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************  
  • KONDO Shinji, “Life’s Choice of Becoming an Academia Researcher”

    ********************************************** SGRAかわらばん1002号(2024年2月8日) 【1】エッセイ:近藤慎司「アカデミア研究者になるという人生の選択」 【2】催事紹介:NPO暖流主催「韓国と日本の歌を歌いましょう!」 【3】第21回SGRAカフェ「日本社会における二重国籍の実態」へのお誘い(2月17日、東京+オンライン)再送 ********************************************** 【1】SGRAエッセイ#755 ◆近藤慎司「アカデミア研究者になるという人生の選択」 2023年3月、無事に博士の学位を取得し、アカデミア研究者としてのキャリアをスタートする事が出来た。 少なくとも大学に入学した10年前の私は、こんな人生を歩むとは全く思っていなかった。振り返ると昔から明確な夢はなく、小学生の卒業文集に載せる将来の夢には「サラリーマン」と書いたほどである。大学の進路では、数学が好きだったために理系と決めたものの、興味のある専門はなく、周りの友人に化学科志望が多かったために「流されて」出願した記憶がある。 明確にやりたい事が見つからず、漠然とした将来を描いていた私にとって、人生で初めてのめり込んだのが大学での基礎研究だった。思い返すと、当時の先輩や指導教官のモチベーションの上げ方が非常に上手だったおかげかもしれない。いざ研究に没頭するとあっという間に時は過ぎるもので、修士2年になった。ここで博士課程への進学か就職かの選択に迫られるわけだが、周囲に流されてきた私にとって、いくら研究が好きとはいえ、博士課程の厳しさ・経済的不安を知っていたため決心がつかず、就職を選んだ。人生、所々に岐路があるわけだが、ここで就職を選んだことが結果的にアカデミック研究者という道に進む大きな分岐点になった。 企業での仕事は充実しており、電気自動車の制御部品の一部であるコンデンサーの材料開発だけでなく、量産化に向けた技術課題の解決や、品質管理部門との折衝など実用化に向けたプロセスを任せてもらっていた。製品として社会を豊かにするモノづくりの一端を経験させてもらう中で、将来どのように社会に貢献していきたいか改めて考えるようになった。そこで心残りであった博士課程に初めは社会人枠として入学し、企業の業務と大学の研究活動の両立に努めてきた。当時は自宅の大阪、時には出張先の佐賀から横浜の大学に土日だけの研究活動のために往復3~4万円の交通費を払って通った。 今考えると非効率的であり、根気があったなと思う。しかし、両方の活動をしてきたからこそ、長年の基礎研究の成果が既存技術の限界をブレークスルーし、革新的な製品を生み出すことに大きな魅力を感じ、アカデミック研究者になりたいと決意できた。当時25歳にして初めて人生の夢ができたわけである。決意したからには企業を退職、博士課程1本に絞り研究に没頭してきたおかげで今日を迎える事が出来ている。 こうした人生の選択は、もちろん自分だけでなく会社の上司や大学の指導教官、友人などの周囲の支えやアドバイスがあったおかげであることは間違いない。特に博士課程に進んでからは、国際学会で出会った人や渥美財団の奨学生たちとの交流を通して、自分の価値観や選択肢が大きく広がった。4月からオーストラリアの大学で研究を行えることになったのも間違いなく昔の私なら考えられない事である。今後も様々な人生の岐路があると思うが、どの選択をしても後になって悔いが残らないよう常に自分を見つめ直し、努力していきたい。 <近藤慎司(こんどう・しんじ)KONDO_Shinji> 2022年度渥美国際交流財団奨学生。2023年3月、横浜国立大学大学院理工学府博士号(工学)取得。現在はオーストラリアのDeakin大学JSPS海外特別研究員として、次世代リチウムイオン電池に向けた材料研究を行っている。 ---------------------------------------------------------------- 【2】催事紹介 SGRA会員でNPO「暖流」代表の羅仁淑さんから催事のご案内をいただきましたのでご紹介します。 ・・・・・・・・・ 第5期渥美奨学生の羅仁淑です。本業の傍らNPO法人を設立し細々とではありますが、有志の皆さんと日韓親善活動をしております。 この度、「韓国と日本の歌を歌いましょう!」という催しを企画しました。ぜひご来場いただき応援いただけましたら幸甚です。 ◆日時:2024年2月18日(日)、13時~(12:30開場) ◆場所:国士館大学多目的ホール(中央図書館地下)小田急線「梅が丘」徒歩12分、世田谷線「松陰神社前」徒歩8分 ◆お申込:下記リンクをクリックしてください。 http://bit.ly/3w7ruwz ◆お問合せ:[email protected] (090-6568-7652) ◆主催:NPO法人日韓親善交流協会暖流 ◆プログラム: 第一部(90分)「李京順ピアノ弾き語り」、「ユキエ&マリコのトークショー」 第二部(30分)「日韓親善歌の共演」 ---------------------------------------------------------------- 【3】第21回SGRAカフェ「日本社会における二重国籍の実態」へのお誘い(再送) 下記の通り第21回SGRAカフェを会場及びオンラインのハイブリット方式開催いたします。参加をご希望の方は、会場、オンラインの参加方法に関わらず事前に参加登録をお願いします。 テーマ:「日本社会における二重国籍の実態 複数国籍保持者に対するスティグマ付与と当事者らの実践」 日 時: 2024年2月17日(土)14:00~16:30 方 法: 会場及びZoomミーティング 言 語: 日本語 申 込: 下記リンクからお申し込みください http://bit.ly/48hqt2o お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■ フォーラムの趣旨 政治家やスポーツ選手等の「二重国籍問題」が炎上しやすい日本社会。日本国籍だけを保有する人々だけが「国民」なのだろうか。「外国人」と「国民」の境界線に居ながら日本社会で生きている多くの人たちは、どのような葛藤を抱え「二重国籍」と向き合っているのか。今回のSGRAカフェでは、このような問いをみんなで考えていきたい。 日本の国籍法は、国籍唯一の原則を取り入れているが、それは複数国籍保持の禁止又は違法性を意味するのだろうか。国籍法をめぐる様々な誤解を解いた上で、国籍唯一の原則が導入された背景を考察する。また、国際的動向に逆らって、日本では複数国籍容認への動きが全く見られないだけではなく、むしろ過去15年間、行政による複数国籍防止対策が以前より徹底されているようにさえ窺える。この動きの背景は何か。 最後に、複数国籍保持者の当事者らはどのような問題に直面し、どのような実践を繰り広げているのか。国際結婚によって生まれた人たち、帰化を経て日本国籍を取得した人たち、外国籍を取得した海外居住中の元日本国籍保持者の事例から、国籍選択制度や国籍喪失/はく奪条項等をめぐる各個人の実践と、近年の動きを検討していく。 ■ プログラム 14:00 イントロダクション:「多くの誤解を生んでいる日本の国籍法」 コーベル・アメリ(獨協大学特任講師) 14:10 基調講演:「日本社会における複数国籍の実態―放置主義から摘発強化への政策転換」 武田里子(大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター客員研究員) 14:55 話題提供1「日本における国籍と社会福祉及びソーシャルワーク」 ヴィラーグ・ヴィクトル(日本社会事業大学准教授) 15:05 話題提供2「国際-国家、そして家族史における国籍」 金崇培(国立釜慶大学助教授) 15:15 話題提供3「日本と中国の間で起きている国籍問題」 高偉俊(北九州市立大学国際環境工学部教授) 15:35グループディスカッション 16:05ディスカッション結果の共有 司会/モデレーター: コーベル・アメリ 16:30 閉会 プログラムの詳細 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/01/SGRACafe21Program.pdf ポスター https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/01/SGRAcafe21v2-1.jpg ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************  
  • YUN Jae-un “Reread the Novel 1984”

    ********************************************** SGRAかわらばん1001号(2024年2月1日) 【1】エッセイ:尹在彦「小説『1984』を読み直す」 【2】第20回SGRAカフェ「パレスチナについて知ろう」へのお誘い(2月3日、東京+オンライン)最終案内 【3】第21回SGRAカフェ「日本社会における二重国籍の実態」へのお誘い(2月17日、東京+オンライン)再送 ********************************************** 【1】SGRAエッセイ#754 ◆尹在彦「小説『1984』を読み直す」 ジョージ・オーウェルの小説『1984』は近未来の監視社会を背景としている。作中のロンドン近郊は、至る所に「テレスクリーン」が設置され、暮らしている人々は常に「見えざる目」に監視されている。これは現在においては技術的に無理のない設定なのだが、小説が発表された1949年には想像もつかないことだった。英国の未来の帝国として想定される「オセアニア」は監視により人間の自由が極限まで限られている空間として描かれる。 『1984』に登場する監視社会の支配者が「ビック・ブラザー」だ。作中でビック・ブラザーが実在するか否かは明示されない。主人公のウィンストン・スミスは、仕事や健康体操の手を抜くたびに厳しい声でテレスクリーンのビック・ブラザーに叱られる。このような設定から『1984』は現代のデジタル監視社会を予言した小説として高く評価されている。現時点で小説のオセアニアを彷彿とさせる国々も実際に少なくない。小説が必ずしも預言書になる必要はないのだが、『1984』はその点で示唆に富む作品でもある。 私は『1984』を契機にオーウェルの有名な作品を読み漁った。『動物農場』や『カタロニア賛歌』、『ウィガン埠頭への道』等がそれで、どの作品を読んでも刺激を受けることができた。全体主義を批判的に描いた『動物農場』、スペイン内戦への従軍経験を基にした『カタロニア賛歌』、英国の炭鉱労働者の過酷な労働環境を生々しく表現した『ウィガン埠頭への道』は非常に印象的だった。彼が小説家でありながら、ジャーナリストとしても活躍していたことを知らされた。批判力だけでなく「人間愛」も感じられた。ジャーナリストを志した時期に、オーウェルの一生はモデルにも映った。 それでも誰かに「ジョージ・オーウェルを代表する一冊を選べ」と言われたら、私はためらいなく『1984』を選ぶ。ただし、その理由は前述した監視社会への洞察力とは異なる。個人的にオーウェルが『1984』から訴えたいと思ったのは「監視社会の恐怖」だけでない気がしたからだ。私は「人間個々人の政治体制に包摂されない自主性」を『1984』に隠されたテーマとして捉えている。 『1984』の主人公は体制側の人間だ。オセアニアでは誰かが反体制派として粛清対象になると、その人物に関する記録は全て抹消される。その記録を営々と機械的に焼却するのが主人公の仕事だ。検閲官ともいえる。オセアニアの国是は「過去を支配する者は未来を支配する。現在を支配する者は過去を支配する」で、まさに過去の記録の抹消と現体制の統治手法が結びついている。そこから「言語的矛盾」を内包した訓示、「戦争は平和なり、自由は隷従なり、無知は力なり」が個々人に疑われることなく刷り込まれる。北朝鮮では未だにこのような「記録抹消刑」が行われているというから、相当現代的設定ともいえるだろう。 小説の展開のポイントは、主人公と監視社会の関係に亀裂が生じてから見られる。主人公は監視体制の隙を突き多くの「反逆行為」を敢行する。監視の目を何度もくぐり抜け、スラム街で密会を楽しみ、許可のない遠出の旅行も辞さない。その相手は偶然出会った自分と同様「体制側の人間」とみられた人物だった。 密会は結局摘発されてしまう。二人を待っていたのは数々の拷問や洗脳教育だった。「体制を愛する」までその教育は施される。それを担当する役所が「愛情省」というのも納得のいく設定だ。最後の場面で小説は、二人の自主性が必ずしも完全には抹消されていないことも暗示しながら終わる。 ここまで小説『1984』のことを延々と書き連ねたのは、2023年12月に伝えられたカナダからのニュースに驚いたからだ。香港で社会運動の急先鋒だった周庭(アグネス・チョウ)が突然亡命を申請したというニュースだった。刑務所から出所して以降、目立った活動もなかったため、個人的には静かに生活していると思っていた。報道によると出所後、愛国教育等を受けたという。 学部時代、「社会構造と行為」という授業で聞いた教授の話を思い出す。教授は社会構造が個々人に対し圧力をかけても、人間の自主性の可能性を忘れてはならないと強調した。教授は1987年に着任し、当時の学生らに同様の説明をしたが、授業中に強烈な反論に会ったという。当時は学生運動の最盛期で、社会構造(=独裁体制)の変革こそが至上課題であり、個々人の自主性を強調すると、学生運動の動力がそがれる可能性が懸念されていた。それでも時代は変わり、むしろ個々人の行為が社会変革の発端となるといわれている。 私は香港問題の両側(中国/民主派・欧米)の考えをそれなりに理解しているつもりだ。英国の帝国主義の矛盾や、中国社会の香港への厳しい目線を否定するわけにはいかない。それでもカナダからのニュースは、近年の香港問題が簡単には終わらないということを教えてくれた。 <尹在彦(ユン・ジェオン)YUN_Jae-un> 立教大学平和・コミュニティ研究機構特別任用研究員、東洋大学非常勤講師。2020年度渥美財団奨学生。新聞記者(韓国)を経て、2021年一橋大学法学研究科で博士号(法学)を取得。国際関係論及びメディア・ジャーナリズム研究を専門とし、最近は韓国のファクトチェック報道(NEWSTOF)にも携わっている。 ---------------------------------------------------------------- 【2】第20回SGRAカフェ「パレスチナについて知ろう」へのお誘い(最終案内) 下記の通り第20回SGRAカフェを会場及びオンラインのハイブリット方式開催いたします。参加をご希望の方は、会場、オンラインの参加方法に関わらず事前に参加登録をお願いします。 テーマ:「パレスチナについて知ろう―歴史、メディア、現在の問題を理解するために」 日 時: 2024年2月3日(土)14:00~15:30 方 法: 会場及びZoomウェビナー 言 語: 日本語 申 込: 下記リンクよりお申し込みください https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_Ft1VNayvQEecu55Hhkp8Tw#/registration お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■ フォーラムの趣旨 パレスチナの歴史、メディアの役割と影響、現在の政治的・社会的・人道的な問題についてのイベントです。パレスチナは中東の重要な地域であり、イスラエルとの紛争や国際社会との関係が注目されています。しかし、多くの人はパレスチナの実情や人々の声を知らないまま、偏った情報や先入観に基づいて判断してしまうことがあります。本イベントでは、パレスチナの歴史的背景やメディアの表現方法を分析し、現在の問題に対する多様な視点や意見を紹介します。パレスチナについて知ることで、平和的な解決に向けた理解と共感を深めることを目的としています。大切なのは、同じ地球市民の一員として、この問題がこのままでいいのか、どうあるべきなのかを考えること、そしてそれに基づいて、何ができるか考え、実際に行動することではないでしょうか。今回はその出発点となるように、パレスチナ問題の歴史や現状、メディアとの向き合い方などについて、皆さんと一緒に考えたいと思います。 ■登壇者紹介 講師:ハディ ハーニ Hani_Abdelhadi 1992年埼玉県生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。同大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程修了。博士(政策・メディア)。2023年より明治大学特任講師。東京ジャーミイ文書館理事等を兼務。主な論文に「パレスチナ問題における解決案の行き詰まり」「イスラーム法からみるパレスチナ問題」などがある。 討論者・司会:シェッダーディ アキル Cheddadi,_Mohammed_Aqil モロッコ出身。モロッコ国立建築学校卒業。慶應義塾大学政策・メディア研究科環境デザイン・ガバナンス専攻修士号取得・博士課程在学。同大学総合政策学部訪問講師。2022年度渥美奨学生。本カフェでは日本在住のアラブ人という視点からパレスチナ問題の現状や解決の可能性について考える。 ■ プログラム 14:00 開会挨拶 14:05 ハディ先生による発表 14:50 質疑応答・ディスカッション 15:25 閉会挨拶 15:30 閉会 プログラムの詳細 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/01/SGRACafe20Program.pdf ポスター https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/01/cafe20poster-scaled.jpg ---------------------------------------------------------------- 【3】第21回SGRAカフェ「日本社会における二重国籍の実態」へのお誘い 下記の通り第21回SGRAカフェを会場及びオンラインのハイブリット方式開催いたします。参加をご希望の方は、会場、オンラインの参加方法に関わらず事前に参加登録をお願いします。 テーマ:「日本社会における二重国籍の実態 複数国籍保持者に対するスティグマ付与と当事者らの実践」 日 時: 2024年2月17日(土)14:00~16:30 方 法: 会場及びZoomミーティング 言 語: 日本語 申 込: 下記リンクからお申し込みください https://us02web.zoom.us/meeting/register/tZcufu2gqTsqE93jRsQ1hhjlAyKO5tO4IJqh#/registration お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■ フォーラムの趣旨 政治家やスポーツ選手等の「二重国籍問題」が炎上しやすい日本社会。日本国籍だけを保有する人々だけが「国民」なのだろうか。「外国人」と「国民」の境界線に居ながら日本社会で生きている多くの人たちは、どのような葛藤を抱え「二重国籍」と向き合っているのか。今回のSGRAカフェでは、このような問いをみんなで考えていきたい。 日本の国籍法は、国籍唯一の原則を取り入れているが、それは複数国籍保持の禁止又は違法性を意味するのだろうか。国籍法をめぐる様々な誤解を解いた上で、国籍唯一の原則が導入された背景を考察する。また、国際的動向に逆らって、日本では複数国籍容認への動きが全く見られないだけではなく、むしろ過去15年間、行政による複数国籍防止対策が以前より徹底されているようにさえ窺える。この動きの背景は何か。 最後に、複数国籍保持者の当事者らはどのような問題に直面し、どのような実践を繰り広げているのか。国際結婚によって生まれた人たち、帰化を経て日本国籍を取得した人たち、外国籍を取得した海外居住中の元日本国籍保持者の事例から、国籍選択制度や国籍喪失/はく奪条項等をめぐる各個人の実践と、近年の動きを検討していく。 ■ プログラム 14:00 イントロダクション:「多くの誤解を生んでいる日本の国籍法」 コーベル・アメリ(獨協大学特任講師) 14:10 基調講演:「日本社会における複数国籍の実態―放置主義から摘発強化への政策転換」 武田里子(大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター客員研究員) 14:55 話題提供1「日本における国籍と社会福祉及びソーシャルワーク」 ヴィラーグ・ヴィクトル(日本社会事業大学准教授) 15:05 話題提供2「国際-国家、そして家族史における国籍」 金崇培(国立釜慶大学助教授) 15:15 話題提供3「日本と中国の間で起きている国籍問題」 高偉俊(北九州市立大学国際環境工学部教授) 15:35グループディスカッション 16:05ディスカッション結果の共有 司会/モデレーター: コーベル・アメリ 16:30 閉会 プログラムの詳細 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/01/SGRACafe21Program.pdf ポスター https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/01/SGRAcafe21v2-1.jpg ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************  
  • Invitation to the 21st SGRA Café “The Reality of Dual Nationality in Japanese Society”

    ********************************************** SGRAかわらばん1000号(2024年1月25日) 【1】第21回SGRAカフェ「日本社会における二重国籍の実態」へのお誘い(2月17日、東京+オンライン) 【2】第20回SGRAカフェ「パレスチナについて知ろう」へのお誘い(2月3日、東京+オンライン)再送 ◆◇◆◇◆ 2006年8月30日に新SGRAかわらばん第1号をオンラインで配信し始めてから、おかげさまで1000号になりました!当初はエッセイを週2回配信していましたが、SGRAイベントのご案内も始め、2009年夏からは毎週1回お送りしています。長期にわたるご購読に感謝申し上げ、引き続きお読みいただきますようお願い申し上げます。 SGRAエッセイのバックナンバーは下記よりご覧いただけます。 https://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ********************************************** 【1】第21回SGRAカフェ「日本社会における二重国籍の実態」へのお誘い 下記の通り第21回SGRAカフェを会場及びオンラインのハイブリット方式開催いたします。参加をご希望の方は、会場、オンラインの参加方法に関わらず事前に参加登録をお願いします。 テーマ:「日本社会における二重国籍の実態 複数国籍保持者に対するスティグマ付与と当事者らの実践」 日 時: 2024年2月17日(土)14:00~16:30 方 法: 会場及びZoomミーティング 言 語: 日本語 申 込: 下記リンクからお申し込みください https://us02web.zoom.us/meeting/register/tZcufu2gqTsqE93jRsQ1hhjlAyKO5tO4IJqh#/registration お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■ フォーラムの趣旨 政治家やスポーツ選手等の「二重国籍問題」が炎上しやすい日本社会。日本国籍だけを保有する人々だけが「国民」なのだろうか。「外国人」と「国民」の境界線に居ながら日本社会で生きている多くの人たちは、どのような葛藤を抱え「二重国籍」と向き合っているのか。今回のSGRAカフェでは、このような問いをみんなで考えていきたい。 日本の国籍法は、国籍唯一の原則を取り入れているが、それは複数国籍保持の禁止又は違法性を意味するのだろうか。国籍法をめぐる様々な誤解を解いた上で、国籍唯一の原則が導入された背景を考察する。また、国際的動向に逆らって、日本では複数国籍容認への動きが全く見られないだけではなく、むしろ過去15年間、行政による複数国籍防止対策が以前より徹底されているようにさえ窺える。この動きの背景は何か。 最後に、複数国籍保持者の当事者らはどのような問題に直面し、どのような実践を繰り広げているのか。国際結婚によって生まれた人たち、帰化を経て日本国籍を取得した人たち、外国籍を取得した海外居住中の元日本国籍保持者の事例から、国籍選択制度や国籍喪失/はく奪条項等をめぐる各個人の実践と、近年の動きを検討していく。 ■ プログラム 14:00 イントロダクション 「多くの誤解を生んでいる日本の国籍法」 コーベル・アメリ(獨協大学特任講師) 日本政府は二重国籍の防止・解消に本当に積極的と言えるのか。その議論の前提として二重国籍が発生する主なケースを紹介しながら、その解消を目指す諸制度と限界を解説する。 14:10 基調講演 「日本社会における複数国籍の実態―放置主義から摘発強化への政策転換」 武田里子(大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター客員研究員) 国連加盟国中、複数国籍非寛容国は23%(2020年)にとどまり、日本はこのグループに区分されている。一方で日本における複数国籍者はすでに100万人を超えた。日本政府は2000年代に入り、なぜ、重国籍放置主義から摘発強化に政策転換したのか。本報告では、はじめに国籍法の変遷を整理し、次に調査から得られた当事者が抱える国籍問題と、国籍法11条1項*違憲訴訟における被告(国)の主張、”国籍唯一の原則と重国籍削減の合理性”を重ね合わせることで、実態と国籍法制の矛盾を浮かび上がらせる。結論として、国籍問題も「失われた30年」の要因のひとつになっていることを示し、後半の議論につなぎたい。 *「日本国民は、自己の志望によって外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う」 14:45 <休憩10分> 14:55 話題提供1 「日本における国籍と社会福祉及びソーシャルワーク」 ヴィラーグ・ヴィクトル(日本社会事業大学准教授) 国籍は様々な社会サービスの受給資格を通して日々の生活に影響を及ぼしている。前半は日本の公的な福祉制度と国籍の関係について整理する。後半はソーシャルワーク専門職の視点から国籍唯一の原則や複数国籍防止対策について考察し、問題提起する。 15:05 話題提供2 「国際-国家、そして家族史における国籍」 金崇培(国立釜慶大学助教授) 依然として国際関係や国家が持つ権力の構造は「個人」に影響を及ぼしている。本発表は発表者の家族史やパーソナル・ヒストリーによって国籍問題の一側面を紹介しようとする試みである。 15:15 話題提供3 「日本と中国の間で起きている国籍問題」 高偉俊(北九州市立大学国際環境工学部教授) グローバルな移動に便利な日本のパスポートか、家族が同じ国籍(中国籍)であるというアイデンティティか。日本に帰化する中国人も多い中、その狭間で考えた日本と中国の国籍問題について自身を含む様々な事例を紹介する。 15:25 <休憩10分> 15:35 グループディスカッション 16:05 ディスカッション結果の共有 司会/モデレーター: コーベル・アメリ 16:25 閉会挨拶 16:30 閉会 ※プログラムの詳細 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/01/SGRACafe21Program.pdf ※ポスター https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/01/SGRAcafe21v2-1.jpg ---------------------------------------------------------------- ◆第20回SGRAカフェ「パレスチナについて知ろう」へのお誘い(再送) 下記の通り第20回SGRAカフェを会場及びオンラインのハイブリット方式開催いたします。参加をご希望の方は、会場、オンラインの参加方法に関わらず事前に参加登録をお願いします。 テーマ:「パレスチナについて知ろう―歴史、メディア、現在の問題を理解するために」 日 時: 2024年2月3日(土)14:00~15:30 方 法: 会場及びZoomウェビナー 言 語: 日本語 申 込: 下記リンクよりお申し込みください https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_Ft1VNayvQEecu55Hhkp8Tw#/registration お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■ フォーラムの趣旨 パレスチナの歴史、メディアの役割と影響、現在の政治的・社会的・人道的な問題についてのイベントです。パレスチナは中東の重要な地域であり、イスラエルとの紛争や国際社会との関係が注目されています。しかし、多くの人はパレスチナの実情や人々の声を知らないまま、偏った情報や先入観に基づいて判断してしまうことがあります。本イベントでは、パレスチナの歴史的背景やメディアの表現方法を分析し、現在の問題に対する多様な視点や意見を紹介します。パレスチナについて知ることで、平和的な解決に向けた理解と共感を深めることを目的としています。大切なのは、同じ地球市民の一員として、この問題がこのままでいいのか、どうあるべきなのかを考えること、そしてそれに基づいて、何ができるか考え、実際に行動することではないでしょうか。今回はその出発点となるように、パレスチナ問題の歴史や現状、メディアとの向き合い方などについて、皆さんと一緒に考えたいと思います。 ■登壇者紹介 講師:ハディ ハーニ Hani_Abdelhadi 1992年埼玉県生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。同大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程修了。博士(政策・メディア)。2023年より明治大学特任講師。東京ジャーミイ文書館理事等を兼務。主な論文に「パレスチナ問題における解決案の行き詰まり」「イスラーム法からみるパレスチナ問題」などがある。 討論者・司会:シェッダーディ アキル Cheddadi,_Mohammed_Aqil モロッコ出身。モロッコ国立建築学校卒業。慶應義塾大学政策・メディア研究科環境デザイン・ガバナンス専攻修士号取得・博士課程在学。同大学総合政策学部訪問講師。2022年度渥美奨学生。本カフェでは日本在住のアラブ人という視点からパレスチナ問題の現状や解決の可能性について考える。 ■ プログラム 14:00 開会挨拶 14:05 ハディ先生による発表 14:50 質疑応答・ディスカッション 15:25 閉会挨拶 15:30 閉会 ※プログラムの詳細 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/01/SGRACafe20Program.pdf ※ポスター https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/01/cafe20poster-scaled.jpg ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************  
  • Nahed ALMEREE “My Husband who Changed”

    ********************************************** SGRAかわらばん999号(2024年1月18日) 【1】エッセイ:ナーヘド・アルメリ「変わってくれた夫」 【2】第20回SGRAカフェ「パレスチナについて知ろう」へのお誘い(2月3日、東京+オンライン)再送 ********************************************** 【1】SGRAエッセイ#753 ◆ナーヘド・アルメリ「変わってくれた夫」 「不思議だね。私と同じように大きな大人で、手も2本あって、しかも55年間の人生を生きているのに、こんな簡単なこともできないなんて本当にかわいそう」、「コーラン(イスラム教の聖書)のどこかの章に家事は女性の義務だと書かれてあったかしら」、「私は人生がまだ33年しか過ぎていないのに、仕事も家事もちゃんとできて。世話してくれる妻や母がいなくて一人になったら、男は子どもみたいになって、生活能力がなくてかわいそう。だから男性の方がぼけやすいんだ!」等々、皿洗いや掃除をしながら、夫に聞こえる声で、独り言のように、心配しているかのような優しい口調で文句を言う。 3年あまり前に日本で博士号を取得して帰国し、留学する前から付き合っていた人とすぐに結婚した。大学での仕事も始まり、通勤は往復で5時間もかかり、時間にほとんど余裕がない。夫は勤続年数が満了したため、私が帰国する1年前に退職した。シリアでは、特に都市に住んでいると、仕事以外にも男がしなければならないこと多い。例えば、パンや食糧の購入、給水タンクの水位の確認、電話代や電気代などの支払い。だが、私の勤務時間と通勤時間を比べれば、それほど長い時間がかからない。 帰宅すると、夫はだいたいリビングでごろごろしていて、私がご飯を作るのを待っている。食べ終わったら、夫は食卓に座ったままで、私が皿洗いを終えるまで待っていることが多い。皿洗いを終えたらお茶を2人で飲んでから、私がまだ終わっていない家事や仕事を続ける。そのように半年くらい経つと、もともと出ていた夫のお腹(おなか)も少し大きくなり、物忘れもするようになった。「大変ですね、おばさん。妊娠何カ月ですか?」などとおなかをなでながら冗談のように意地悪いことを言う。そして、子どもがほしいと頻繁に頼む彼に、「もう既に大きな子どもが一人いますよ!」とまた優しい口調で意地悪い返事をしたりする。 夫はもともと公安部隊ダマスカス(シリアの首都)支部の人。黒帯5段の空手家なので、支部全体のトレーニング担当が主務だった。師範として人気もあって他の地区の警察トレーニングのために地方に派遣されることもよくあった。だが、退職して、トレーニングどころか、身体を動かすことすら少なくなった。 このままでは夫は年を取っていくだけだと最初から目に見えていた。しかし、結婚したばかりのころは、退職後の不安や寂しさも溜まっているだろうと思い、大好きで尊敬している夫に何も言えなかった。夫に聞こえるように意地悪い独り言や返事ができるようになるまで1年あまりかかった。 大学時代からジムに行くことを日常生活の基本の一つにしている私にとって、帰国して、段々と高くなる月々のジム代が1年後に払えない金額になり、ジムをやめて、家の周辺を散歩し、簡単なトレーニングをすることにした。家から1キロくらい離れたところに車や人の行き来も少ない通りを発見し、ジョギングに使うことにした。特に夏は朝の爽やかな風が気持ちよいので、週末や学校の仕事が休みの日に、朝早い時間に起きてジョギングしている。「行ってきます!」と一人で出ていたが、そのうち夫を一緒に出させるようにした。 少し早歩きして屈伸をして、身体が温まったら走り始める。すると、夫が息苦しくなり足も痛くなるので、ジョギングをさぼる。さぼっている夫の姿が面白くて可愛いと思ったが、「誰が長い間空手師範をしていたのかしら?」などと冗談風に言いながら、夫の速さに合わせて走って3分ごとに呼吸を整えるため1分間休むように工夫した。何十キロも続く県道を公安部隊のメンバーと走っていた30~40代の時の夫には全くかなわないと十分に分かっている私にとって、退職後の夫の男女役割分担に加えて自らの生き方についての認識に変化を起こしたかった。 結婚1年半後に夫は皿洗いをしたり、家具の表面にたまったほこりを拭いたり、私の帰りが遅い時や仕事が忙しい時にご飯を作ったりするようになった。最初はあまり上手ではなかったが段々とできるようになった。そして、現役の時のボスに連絡して、公安部隊でバイト契約ができた。物忘れも少なくなり、腹筋も出た。 最初は、「若い娘と結婚したからしょうがない」、「困った娘と結婚してしまった」などの文句を素直に受けたが、夫は本当にそう思っていたのかもしれない。しかし、日常生活では、仕事やトレーニングだけでなく、家庭のことから始めて責任感を持ち、受け身から能動的な存在に変わってほしいと思っていた。夫はきっとその成果が身に沁みたので、変わり続けてくれた。だが、何よりそれを可能にしてくれたのは、夫婦としての愛情と信頼感なのだと思う。 思い出すのは、母の家事に対する自分の子どもの性差意識と教養のことだ。保守的で伝統的な家庭に育った両親は2人とも「男は外で働き、女は家事や育児」という意識が強い。女3人の次に男3人を生んだ母は、長女の私と妹2人ばかりに家事を手伝わせた。弟たちは成長しても遊んでいるばかりで家事に手を借りてはいけなかった。私と妹が大学に入り家から離れると、母の負担は大きくなった。祝日で帰省したある日、家事で大変そうだった母に、弟たちに家事を教えて手伝わせるよう提案をした。「でも、男だから」と違和感を表す母に、「このままでは、弟たちはわがままばかりでお母さんはどんどん辛くなるだけよ。男も女と同じ人間だから、家事をさせていけないことはないよ。教えてあげれば息子も娘と同じことができる。将来一人暮らしになった場合の息子のためでもあるから。お母さんに頼まれたらきっと素直にやってくれる」と説得した。弟たちは最初嫌がっていたが、母から頼まれているのでだんだんと家事を手伝わなければという意識が生まれた。 2番目の弟は結婚してダマスカスに住んでいて、2歳の娘がいる。休みの日には娘のおむつ替えまで手伝っている。家族で集まる時には、夫と弟も当たり前のように自発的に私たちと一緒に行動する。だが、家族でない人がいると夫や弟に家事を頼めない。残念ながらシリアはまだまだ男優位の社会で、男が家事に手を貸すなんてとんでもないと思われているからだ。 恥ずかしいけど、身内の「男女の役割分担」をめぐる意識について日々の生活断片を明かした。ここで男女平等の必要性を唱えているわけではない。男女平等の課題は時代遅れだと思っている。21世紀の進展とともに女性の社会進出が進んでいるものの、男女の役割分担についての社会通念・習慣・しきたりなどが世界的に見ても残念ながらまだまだ根強いのが現実なのだ。自分には性別による役割分担の意識が無くても、親や周囲から固定観念を押し付けられることで制限を受け、能動的に生きることを阻害されてしまう。むしろ、男性の生きる能力を妨げている男性優位の既存の区分を超えて「個人」としての意識を発展させることが、各家族を始め社会全体としての家庭問題の解決や個人の前向きな生き方へとつながり、よりポジティブな社会の在り方が芽生えてくるだろう。そして、それは社会の責任であるが、母親たちの役割も大きいと思う。 <ナーヘド・アルメリ Nahed_ALMEREE> 渥美国際交流財団2019年度奨学生。シリア出身。ダマスカス大学日本語学科卒業。2011年9月日本に留学。2013年4月筑波大学人文社会科学研究科に入学。2020年3月博士号取得。博士論文「大正期の童謡研究――金子みすゞの位置づけ」は優秀博士論文賞を受賞。2020年11月『金子みすゞの童謡を読む――西條八十と北原白秋の受容と展開』港の人から出版。2021年、第45回日本児童文学学会奨励賞受賞。現在、ダマスカス大学文学部日本語学科教員。 ---------------------------------------------------------------- ◆第20回SGRAカフェ「パレスチナについて知ろう」へのお誘い(再送) 下記の通り第20回SGRAカフェを会場及びオンラインのハイブリット方式開催いたします。参加をご希望の方は、会場、オンラインの参加方法に関わらず事前に参加登録をお願いします。 テーマ:「パレスチナについて知ろう―歴史、メディア、現在の問題を理解するために」 日 時: 2024年2月3日(土)14:00~15:30 方 法: 会場及びZoomウェビナー 言 語: 日本語 申 込: 下記リンクよりお申し込みください https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_Ft1VNayvQEecu55Hhkp8Tw#/registration お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■ フォーラムの趣旨 パレスチナの歴史、メディアの役割と影響、現在の政治的・社会的・人道的な問題についてのイベントです。パレスチナは中東の重要な地域であり、イスラエルとの紛争や国際社会との関係が注目されています。しかし、多くの人はパレスチナの実情や人々の声を知らないまま、偏った情報や先入観に基づいて判断してしまうことがあります。本イベントでは、パレスチナの歴史的背景やメディアの表現方法を分析し、現在の問題に対する多様な視点や意見を紹介します。パレスチナについて知ることで、平和的な解決に向けた理解と共感を深めることを目的としています。大切なのは、同じ地球市民の一員として、この問題がこのままでいいのか、どうあるべきなのかを考えること、そしてそれに基づいて、何ができるか考え、実際に行動することではないでしょうか。今回はその出発点となるように、パレスチナ問題の歴史や現状、メディアとの向き合い方などについて、皆さんと一緒に考えたいと思います。 ■登壇者紹介 講師:ハディ ハーニ Hani_Abdelhadi 1992年埼玉県生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。同大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程修了。博士(政策・メディア)。2023年より明治大学特任講師。東京ジャーミイ文書館理事等を兼務。主な論文に「パレスチナ問題における解決案の行き詰まり」「イスラーム法からみるパレスチナ問題」などがある。 討論者・司会:シェッダーディ アキル Cheddadi,_Mohammed_Aqil モロッコ出身。モロッコ国立建築学校卒業。慶應義塾大学政策・メディア研究科環境デザイン・ガバナンス専攻修士号取得・博士課程在学。同大学総合政策学部訪問講師。2022年度渥美奨学生。本カフェでは日本在住のアラブ人という視点からパレスチナ問題の現状や解決の可能性について考える。 ■ プログラム 14:00 開会挨拶 14:05 ハディ先生による発表 14:50 質疑応答・ディスカッション 15:25 閉会挨拶 15:30 閉会 プログラムの詳細 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/01/SGRACafe20Program.pdf ポスター https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/01/cafe20poster-scaled.jpg ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************