SGRAメールマガジン バックナンバー

  • TAN Tianyang “Dreams Realized Through Study Abroad”

    ********************************************** SGRAかわらばん1003号(2024年2月15日) 【1】エッセイ:譚天陽「留学を通じて実現した夢」 【2】第21回SGRAカフェ「日本社会における二重国籍の実態」へのお誘い(2月17日、東京+オンライン)最終案内 ********************************************** 【1】SGRAエッセイ#756 ◆譚天陽「留学を通じて実現した夢」 初めて日本に来たのは大学3年生の時です。大学の派遣留学プログラムを通し、鹿児島大学に留学することができました。 鹿児島大学では半年くらいの生活しか送りませんでしたが、とても印象深く、今でも忘れてはいません。その頃、初めての留学生のほとんどは日本語授業を中心に勉強していましたが、私は法学部の授業を積極的に取りました。そのおかげで、日本の法律はどのようなものなのかということに触れることができました。特に中国の法学部にはないゼミナールという授業形式に参加することで、グループワークや議論の大切さを初めて認識。そして、レポートの提出を重ねることによって、先生たちとの関係も深まりました。 帰国後、大学4年生になり卒業論文の執筆を始めました。日本と中国の法律の比較研究に先立ち、日本語論文の文献調査が必要でしたが、鹿児島大学でお世話になった先生から、貴重な情報を提供していただき先行文献を手に入れ、卒業論文を無事に完成することができました。母国では、一人の先生が担当する学生が多いため、丁寧な個人指導やゼミで議論してくれたり、帰国後もメールで親切に対応し調べてくれたりする先生はなかなかいません。 卒業論文を経験することで、さらに研究しようという意欲が生まれ、卒業後、日本へ再び留学することを決めました。研究生の半年間と修士課程の2年間を終え、修士論文が完成。日本文化をさらに理解し、研究を深めることができた2年半でした。学校でティーチングアシスタントなどを担当し、学会へ参加し、数々の学者の先生方と交流することで、日本の文化だけでなく、自分が目指すべき方向を見つけることができました。さらに奨学金を通じて財団の関係者及び先生、他大学の優秀な研究者と交流し、国際交流の大切さを認識することができました。感動と感謝の気持ちでいっぱいです。 留学生にとって、日本人と同様に学会へ参加し、懇親会などで先生たちと交流したり、ゼミで外国人でありながら後輩をサポートしたり、そして学校及び財団から経済的な支援を受けたりできたことはとても貴重でした。昨今、日本はたくさんの海外留学生を受け入れ、どの分野においても優秀な研究者が存在しています。自分も日本だけでなく各国から来日した優秀な研究者たちと深く交流することで、国際的な水準に達する研究を目指していきたいと思って、さらに博士後期課程に進学しました。 修士課程では、母国の中国と日本の比較研究だけだったのに対し、博士論文では世界の複数の国・地域での関連法制度を検討の材料にすることができました。さらに、海外の学会に参加して現地の学者と交流したり、学会のみならず、実務家の方とのつながりを深めたりすることで、博士論文だけでなく、人生の見方にも深く影響を与えてくれました。 修了後、私は日本の大学で研究を続ける予定です。この数年間を振り返ってみると、夢が次から次へと実現できました。学部時代は海外で学位を取得すること、修士課程の頃は研究者になることが夢で、博士後期課程では、これらの夢を実現することができました。今の夢といえば、自分の研究が世界に影響を与えることで、夢がかなうよう頑張っていきたい。 <譚天陽(たん・てんよう)TAN_Tianyang> 早稲田大学比較法研究所助教。2022年度渥美国際交流財団奨学生。2023年3月一橋大学大学院法学研究科博士号(法学)取得。知的財産法(特に著作権法)の研究をしている。 ---------------------------------------------------------------- 【2】第21回SGRAカフェ「日本社会における二重国籍の実態」へのお誘い(最終案内) 下記の通り第21回SGRAカフェを会場及びオンラインのハイブリット方式開催いたします。参加をご希望の方は、会場、オンラインの参加方法に関わらず事前に参加登録をお願いします。 テーマ:「日本社会における二重国籍の実態 複数国籍保持者に対するスティグマ付与と当事者らの実践」 日 時: 2024年2月17日(土)14:00~16:30 方 法: 会場及びZoomミーティング 言 語: 日本語 申 込: 下記リンクからお申し込みください http://bit.ly/48hqt2o お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■ フォーラムの趣旨 政治家やスポーツ選手等の「二重国籍問題」が炎上しやすい日本社会。日本国籍だけを保有する人々だけが「国民」なのだろうか。「外国人」と「国民」の境界線に居ながら日本社会で生きている多くの人たちは、どのような葛藤を抱え「二重国籍」と向き合っているのか。今回のSGRAカフェでは、このような問いをみんなで考えていきたい。 日本の国籍法は、国籍唯一の原則を取り入れているが、それは複数国籍保持の禁止又は違法性を意味するのだろうか。国籍法をめぐる様々な誤解を解いた上で、国籍唯一の原則が導入された背景を考察する。また、国際的動向に逆らって、日本では複数国籍容認への動きが全く見られないだけではなく、むしろ過去15年間、行政による複数国籍防止対策が以前より徹底されているようにさえ窺える。この動きの背景は何か。 最後に、複数国籍保持者の当事者らはどのような問題に直面し、どのような実践を繰り広げているのか。国際結婚によって生まれた人たち、帰化を経て日本国籍を取得した人たち、外国籍を取得した海外居住中の元日本国籍保持者の事例から、国籍選択制度や国籍喪失/はく奪条項等をめぐる各個人の実践と、近年の動きを検討していく。 ■ プログラム 14:00 イントロダクション:「多くの誤解を生んでいる日本の国籍法」 コーベル・アメリ(獨協大学特任講師) 14:10 基調講演:「日本社会における複数国籍の実態―放置主義から摘発強化への政策転換」 武田里子(大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター客員研究員) 14:55 話題提供1「日本における国籍と社会福祉及びソーシャルワーク」 ヴィラーグ・ヴィクトル(日本社会事業大学准教授) 15:05 話題提供2「国際-国家、そして家族史における国籍」 金崇培(国立釜慶大学助教授) 15:15 話題提供3「日本と中国の間で起きている国籍問題」 高偉俊(北九州市立大学国際環境工学部教授) 15:35グループディスカッション 16:05ディスカッション結果の共有 司会/モデレーター: コーベル・アメリ 16:30 閉会 プログラムの詳細 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/01/SGRACafe21Program.pdf ポスター https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/01/SGRAcafe21v2-1.jpg ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************  
  • KONDO Shinji, “Life’s Choice of Becoming an Academia Researcher”

    ********************************************** SGRAかわらばん1002号(2024年2月8日) 【1】エッセイ:近藤慎司「アカデミア研究者になるという人生の選択」 【2】催事紹介:NPO暖流主催「韓国と日本の歌を歌いましょう!」 【3】第21回SGRAカフェ「日本社会における二重国籍の実態」へのお誘い(2月17日、東京+オンライン)再送 ********************************************** 【1】SGRAエッセイ#755 ◆近藤慎司「アカデミア研究者になるという人生の選択」 2023年3月、無事に博士の学位を取得し、アカデミア研究者としてのキャリアをスタートする事が出来た。 少なくとも大学に入学した10年前の私は、こんな人生を歩むとは全く思っていなかった。振り返ると昔から明確な夢はなく、小学生の卒業文集に載せる将来の夢には「サラリーマン」と書いたほどである。大学の進路では、数学が好きだったために理系と決めたものの、興味のある専門はなく、周りの友人に化学科志望が多かったために「流されて」出願した記憶がある。 明確にやりたい事が見つからず、漠然とした将来を描いていた私にとって、人生で初めてのめり込んだのが大学での基礎研究だった。思い返すと、当時の先輩や指導教官のモチベーションの上げ方が非常に上手だったおかげかもしれない。いざ研究に没頭するとあっという間に時は過ぎるもので、修士2年になった。ここで博士課程への進学か就職かの選択に迫られるわけだが、周囲に流されてきた私にとって、いくら研究が好きとはいえ、博士課程の厳しさ・経済的不安を知っていたため決心がつかず、就職を選んだ。人生、所々に岐路があるわけだが、ここで就職を選んだことが結果的にアカデミック研究者という道に進む大きな分岐点になった。 企業での仕事は充実しており、電気自動車の制御部品の一部であるコンデンサーの材料開発だけでなく、量産化に向けた技術課題の解決や、品質管理部門との折衝など実用化に向けたプロセスを任せてもらっていた。製品として社会を豊かにするモノづくりの一端を経験させてもらう中で、将来どのように社会に貢献していきたいか改めて考えるようになった。そこで心残りであった博士課程に初めは社会人枠として入学し、企業の業務と大学の研究活動の両立に努めてきた。当時は自宅の大阪、時には出張先の佐賀から横浜の大学に土日だけの研究活動のために往復3~4万円の交通費を払って通った。 今考えると非効率的であり、根気があったなと思う。しかし、両方の活動をしてきたからこそ、長年の基礎研究の成果が既存技術の限界をブレークスルーし、革新的な製品を生み出すことに大きな魅力を感じ、アカデミック研究者になりたいと決意できた。当時25歳にして初めて人生の夢ができたわけである。決意したからには企業を退職、博士課程1本に絞り研究に没頭してきたおかげで今日を迎える事が出来ている。 こうした人生の選択は、もちろん自分だけでなく会社の上司や大学の指導教官、友人などの周囲の支えやアドバイスがあったおかげであることは間違いない。特に博士課程に進んでからは、国際学会で出会った人や渥美財団の奨学生たちとの交流を通して、自分の価値観や選択肢が大きく広がった。4月からオーストラリアの大学で研究を行えることになったのも間違いなく昔の私なら考えられない事である。今後も様々な人生の岐路があると思うが、どの選択をしても後になって悔いが残らないよう常に自分を見つめ直し、努力していきたい。 <近藤慎司(こんどう・しんじ)KONDO_Shinji> 2022年度渥美国際交流財団奨学生。2023年3月、横浜国立大学大学院理工学府博士号(工学)取得。現在はオーストラリアのDeakin大学JSPS海外特別研究員として、次世代リチウムイオン電池に向けた材料研究を行っている。 ---------------------------------------------------------------- 【2】催事紹介 SGRA会員でNPO「暖流」代表の羅仁淑さんから催事のご案内をいただきましたのでご紹介します。 ・・・・・・・・・ 第5期渥美奨学生の羅仁淑です。本業の傍らNPO法人を設立し細々とではありますが、有志の皆さんと日韓親善活動をしております。 この度、「韓国と日本の歌を歌いましょう!」という催しを企画しました。ぜひご来場いただき応援いただけましたら幸甚です。 ◆日時:2024年2月18日(日)、13時~(12:30開場) ◆場所:国士館大学多目的ホール(中央図書館地下)小田急線「梅が丘」徒歩12分、世田谷線「松陰神社前」徒歩8分 ◆お申込:下記リンクをクリックしてください。 http://bit.ly/3w7ruwz ◆お問合せ:[email protected] (090-6568-7652) ◆主催:NPO法人日韓親善交流協会暖流 ◆プログラム: 第一部(90分)「李京順ピアノ弾き語り」、「ユキエ&マリコのトークショー」 第二部(30分)「日韓親善歌の共演」 ---------------------------------------------------------------- 【3】第21回SGRAカフェ「日本社会における二重国籍の実態」へのお誘い(再送) 下記の通り第21回SGRAカフェを会場及びオンラインのハイブリット方式開催いたします。参加をご希望の方は、会場、オンラインの参加方法に関わらず事前に参加登録をお願いします。 テーマ:「日本社会における二重国籍の実態 複数国籍保持者に対するスティグマ付与と当事者らの実践」 日 時: 2024年2月17日(土)14:00~16:30 方 法: 会場及びZoomミーティング 言 語: 日本語 申 込: 下記リンクからお申し込みください http://bit.ly/48hqt2o お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■ フォーラムの趣旨 政治家やスポーツ選手等の「二重国籍問題」が炎上しやすい日本社会。日本国籍だけを保有する人々だけが「国民」なのだろうか。「外国人」と「国民」の境界線に居ながら日本社会で生きている多くの人たちは、どのような葛藤を抱え「二重国籍」と向き合っているのか。今回のSGRAカフェでは、このような問いをみんなで考えていきたい。 日本の国籍法は、国籍唯一の原則を取り入れているが、それは複数国籍保持の禁止又は違法性を意味するのだろうか。国籍法をめぐる様々な誤解を解いた上で、国籍唯一の原則が導入された背景を考察する。また、国際的動向に逆らって、日本では複数国籍容認への動きが全く見られないだけではなく、むしろ過去15年間、行政による複数国籍防止対策が以前より徹底されているようにさえ窺える。この動きの背景は何か。 最後に、複数国籍保持者の当事者らはどのような問題に直面し、どのような実践を繰り広げているのか。国際結婚によって生まれた人たち、帰化を経て日本国籍を取得した人たち、外国籍を取得した海外居住中の元日本国籍保持者の事例から、国籍選択制度や国籍喪失/はく奪条項等をめぐる各個人の実践と、近年の動きを検討していく。 ■ プログラム 14:00 イントロダクション:「多くの誤解を生んでいる日本の国籍法」 コーベル・アメリ(獨協大学特任講師) 14:10 基調講演:「日本社会における複数国籍の実態―放置主義から摘発強化への政策転換」 武田里子(大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター客員研究員) 14:55 話題提供1「日本における国籍と社会福祉及びソーシャルワーク」 ヴィラーグ・ヴィクトル(日本社会事業大学准教授) 15:05 話題提供2「国際-国家、そして家族史における国籍」 金崇培(国立釜慶大学助教授) 15:15 話題提供3「日本と中国の間で起きている国籍問題」 高偉俊(北九州市立大学国際環境工学部教授) 15:35グループディスカッション 16:05ディスカッション結果の共有 司会/モデレーター: コーベル・アメリ 16:30 閉会 プログラムの詳細 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/01/SGRACafe21Program.pdf ポスター https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/01/SGRAcafe21v2-1.jpg ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************  
  • YUN Jae-un “Reread the Novel 1984”

    ********************************************** SGRAかわらばん1001号(2024年2月1日) 【1】エッセイ:尹在彦「小説『1984』を読み直す」 【2】第20回SGRAカフェ「パレスチナについて知ろう」へのお誘い(2月3日、東京+オンライン)最終案内 【3】第21回SGRAカフェ「日本社会における二重国籍の実態」へのお誘い(2月17日、東京+オンライン)再送 ********************************************** 【1】SGRAエッセイ#754 ◆尹在彦「小説『1984』を読み直す」 ジョージ・オーウェルの小説『1984』は近未来の監視社会を背景としている。作中のロンドン近郊は、至る所に「テレスクリーン」が設置され、暮らしている人々は常に「見えざる目」に監視されている。これは現在においては技術的に無理のない設定なのだが、小説が発表された1949年には想像もつかないことだった。英国の未来の帝国として想定される「オセアニア」は監視により人間の自由が極限まで限られている空間として描かれる。 『1984』に登場する監視社会の支配者が「ビック・ブラザー」だ。作中でビック・ブラザーが実在するか否かは明示されない。主人公のウィンストン・スミスは、仕事や健康体操の手を抜くたびに厳しい声でテレスクリーンのビック・ブラザーに叱られる。このような設定から『1984』は現代のデジタル監視社会を予言した小説として高く評価されている。現時点で小説のオセアニアを彷彿とさせる国々も実際に少なくない。小説が必ずしも預言書になる必要はないのだが、『1984』はその点で示唆に富む作品でもある。 私は『1984』を契機にオーウェルの有名な作品を読み漁った。『動物農場』や『カタロニア賛歌』、『ウィガン埠頭への道』等がそれで、どの作品を読んでも刺激を受けることができた。全体主義を批判的に描いた『動物農場』、スペイン内戦への従軍経験を基にした『カタロニア賛歌』、英国の炭鉱労働者の過酷な労働環境を生々しく表現した『ウィガン埠頭への道』は非常に印象的だった。彼が小説家でありながら、ジャーナリストとしても活躍していたことを知らされた。批判力だけでなく「人間愛」も感じられた。ジャーナリストを志した時期に、オーウェルの一生はモデルにも映った。 それでも誰かに「ジョージ・オーウェルを代表する一冊を選べ」と言われたら、私はためらいなく『1984』を選ぶ。ただし、その理由は前述した監視社会への洞察力とは異なる。個人的にオーウェルが『1984』から訴えたいと思ったのは「監視社会の恐怖」だけでない気がしたからだ。私は「人間個々人の政治体制に包摂されない自主性」を『1984』に隠されたテーマとして捉えている。 『1984』の主人公は体制側の人間だ。オセアニアでは誰かが反体制派として粛清対象になると、その人物に関する記録は全て抹消される。その記録を営々と機械的に焼却するのが主人公の仕事だ。検閲官ともいえる。オセアニアの国是は「過去を支配する者は未来を支配する。現在を支配する者は過去を支配する」で、まさに過去の記録の抹消と現体制の統治手法が結びついている。そこから「言語的矛盾」を内包した訓示、「戦争は平和なり、自由は隷従なり、無知は力なり」が個々人に疑われることなく刷り込まれる。北朝鮮では未だにこのような「記録抹消刑」が行われているというから、相当現代的設定ともいえるだろう。 小説の展開のポイントは、主人公と監視社会の関係に亀裂が生じてから見られる。主人公は監視体制の隙を突き多くの「反逆行為」を敢行する。監視の目を何度もくぐり抜け、スラム街で密会を楽しみ、許可のない遠出の旅行も辞さない。その相手は偶然出会った自分と同様「体制側の人間」とみられた人物だった。 密会は結局摘発されてしまう。二人を待っていたのは数々の拷問や洗脳教育だった。「体制を愛する」までその教育は施される。それを担当する役所が「愛情省」というのも納得のいく設定だ。最後の場面で小説は、二人の自主性が必ずしも完全には抹消されていないことも暗示しながら終わる。 ここまで小説『1984』のことを延々と書き連ねたのは、2023年12月に伝えられたカナダからのニュースに驚いたからだ。香港で社会運動の急先鋒だった周庭(アグネス・チョウ)が突然亡命を申請したというニュースだった。刑務所から出所して以降、目立った活動もなかったため、個人的には静かに生活していると思っていた。報道によると出所後、愛国教育等を受けたという。 学部時代、「社会構造と行為」という授業で聞いた教授の話を思い出す。教授は社会構造が個々人に対し圧力をかけても、人間の自主性の可能性を忘れてはならないと強調した。教授は1987年に着任し、当時の学生らに同様の説明をしたが、授業中に強烈な反論に会ったという。当時は学生運動の最盛期で、社会構造(=独裁体制)の変革こそが至上課題であり、個々人の自主性を強調すると、学生運動の動力がそがれる可能性が懸念されていた。それでも時代は変わり、むしろ個々人の行為が社会変革の発端となるといわれている。 私は香港問題の両側(中国/民主派・欧米)の考えをそれなりに理解しているつもりだ。英国の帝国主義の矛盾や、中国社会の香港への厳しい目線を否定するわけにはいかない。それでもカナダからのニュースは、近年の香港問題が簡単には終わらないということを教えてくれた。 <尹在彦(ユン・ジェオン)YUN_Jae-un> 立教大学平和・コミュニティ研究機構特別任用研究員、東洋大学非常勤講師。2020年度渥美財団奨学生。新聞記者(韓国)を経て、2021年一橋大学法学研究科で博士号(法学)を取得。国際関係論及びメディア・ジャーナリズム研究を専門とし、最近は韓国のファクトチェック報道(NEWSTOF)にも携わっている。 ---------------------------------------------------------------- 【2】第20回SGRAカフェ「パレスチナについて知ろう」へのお誘い(最終案内) 下記の通り第20回SGRAカフェを会場及びオンラインのハイブリット方式開催いたします。参加をご希望の方は、会場、オンラインの参加方法に関わらず事前に参加登録をお願いします。 テーマ:「パレスチナについて知ろう―歴史、メディア、現在の問題を理解するために」 日 時: 2024年2月3日(土)14:00~15:30 方 法: 会場及びZoomウェビナー 言 語: 日本語 申 込: 下記リンクよりお申し込みください https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_Ft1VNayvQEecu55Hhkp8Tw#/registration お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■ フォーラムの趣旨 パレスチナの歴史、メディアの役割と影響、現在の政治的・社会的・人道的な問題についてのイベントです。パレスチナは中東の重要な地域であり、イスラエルとの紛争や国際社会との関係が注目されています。しかし、多くの人はパレスチナの実情や人々の声を知らないまま、偏った情報や先入観に基づいて判断してしまうことがあります。本イベントでは、パレスチナの歴史的背景やメディアの表現方法を分析し、現在の問題に対する多様な視点や意見を紹介します。パレスチナについて知ることで、平和的な解決に向けた理解と共感を深めることを目的としています。大切なのは、同じ地球市民の一員として、この問題がこのままでいいのか、どうあるべきなのかを考えること、そしてそれに基づいて、何ができるか考え、実際に行動することではないでしょうか。今回はその出発点となるように、パレスチナ問題の歴史や現状、メディアとの向き合い方などについて、皆さんと一緒に考えたいと思います。 ■登壇者紹介 講師:ハディ ハーニ Hani_Abdelhadi 1992年埼玉県生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。同大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程修了。博士(政策・メディア)。2023年より明治大学特任講師。東京ジャーミイ文書館理事等を兼務。主な論文に「パレスチナ問題における解決案の行き詰まり」「イスラーム法からみるパレスチナ問題」などがある。 討論者・司会:シェッダーディ アキル Cheddadi,_Mohammed_Aqil モロッコ出身。モロッコ国立建築学校卒業。慶應義塾大学政策・メディア研究科環境デザイン・ガバナンス専攻修士号取得・博士課程在学。同大学総合政策学部訪問講師。2022年度渥美奨学生。本カフェでは日本在住のアラブ人という視点からパレスチナ問題の現状や解決の可能性について考える。 ■ プログラム 14:00 開会挨拶 14:05 ハディ先生による発表 14:50 質疑応答・ディスカッション 15:25 閉会挨拶 15:30 閉会 プログラムの詳細 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/01/SGRACafe20Program.pdf ポスター https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/01/cafe20poster-scaled.jpg ---------------------------------------------------------------- 【3】第21回SGRAカフェ「日本社会における二重国籍の実態」へのお誘い 下記の通り第21回SGRAカフェを会場及びオンラインのハイブリット方式開催いたします。参加をご希望の方は、会場、オンラインの参加方法に関わらず事前に参加登録をお願いします。 テーマ:「日本社会における二重国籍の実態 複数国籍保持者に対するスティグマ付与と当事者らの実践」 日 時: 2024年2月17日(土)14:00~16:30 方 法: 会場及びZoomミーティング 言 語: 日本語 申 込: 下記リンクからお申し込みください https://us02web.zoom.us/meeting/register/tZcufu2gqTsqE93jRsQ1hhjlAyKO5tO4IJqh#/registration お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■ フォーラムの趣旨 政治家やスポーツ選手等の「二重国籍問題」が炎上しやすい日本社会。日本国籍だけを保有する人々だけが「国民」なのだろうか。「外国人」と「国民」の境界線に居ながら日本社会で生きている多くの人たちは、どのような葛藤を抱え「二重国籍」と向き合っているのか。今回のSGRAカフェでは、このような問いをみんなで考えていきたい。 日本の国籍法は、国籍唯一の原則を取り入れているが、それは複数国籍保持の禁止又は違法性を意味するのだろうか。国籍法をめぐる様々な誤解を解いた上で、国籍唯一の原則が導入された背景を考察する。また、国際的動向に逆らって、日本では複数国籍容認への動きが全く見られないだけではなく、むしろ過去15年間、行政による複数国籍防止対策が以前より徹底されているようにさえ窺える。この動きの背景は何か。 最後に、複数国籍保持者の当事者らはどのような問題に直面し、どのような実践を繰り広げているのか。国際結婚によって生まれた人たち、帰化を経て日本国籍を取得した人たち、外国籍を取得した海外居住中の元日本国籍保持者の事例から、国籍選択制度や国籍喪失/はく奪条項等をめぐる各個人の実践と、近年の動きを検討していく。 ■ プログラム 14:00 イントロダクション:「多くの誤解を生んでいる日本の国籍法」 コーベル・アメリ(獨協大学特任講師) 14:10 基調講演:「日本社会における複数国籍の実態―放置主義から摘発強化への政策転換」 武田里子(大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター客員研究員) 14:55 話題提供1「日本における国籍と社会福祉及びソーシャルワーク」 ヴィラーグ・ヴィクトル(日本社会事業大学准教授) 15:05 話題提供2「国際-国家、そして家族史における国籍」 金崇培(国立釜慶大学助教授) 15:15 話題提供3「日本と中国の間で起きている国籍問題」 高偉俊(北九州市立大学国際環境工学部教授) 15:35グループディスカッション 16:05ディスカッション結果の共有 司会/モデレーター: コーベル・アメリ 16:30 閉会 プログラムの詳細 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/01/SGRACafe21Program.pdf ポスター https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/01/SGRAcafe21v2-1.jpg ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************  
  • Invitation to the 21st SGRA Café “The Reality of Dual Nationality in Japanese Society”

    ********************************************** SGRAかわらばん1000号(2024年1月25日) 【1】第21回SGRAカフェ「日本社会における二重国籍の実態」へのお誘い(2月17日、東京+オンライン) 【2】第20回SGRAカフェ「パレスチナについて知ろう」へのお誘い(2月3日、東京+オンライン)再送 ◆◇◆◇◆ 2006年8月30日に新SGRAかわらばん第1号をオンラインで配信し始めてから、おかげさまで1000号になりました!当初はエッセイを週2回配信していましたが、SGRAイベントのご案内も始め、2009年夏からは毎週1回お送りしています。長期にわたるご購読に感謝申し上げ、引き続きお読みいただきますようお願い申し上げます。 SGRAエッセイのバックナンバーは下記よりご覧いただけます。 https://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ********************************************** 【1】第21回SGRAカフェ「日本社会における二重国籍の実態」へのお誘い 下記の通り第21回SGRAカフェを会場及びオンラインのハイブリット方式開催いたします。参加をご希望の方は、会場、オンラインの参加方法に関わらず事前に参加登録をお願いします。 テーマ:「日本社会における二重国籍の実態 複数国籍保持者に対するスティグマ付与と当事者らの実践」 日 時: 2024年2月17日(土)14:00~16:30 方 法: 会場及びZoomミーティング 言 語: 日本語 申 込: 下記リンクからお申し込みください https://us02web.zoom.us/meeting/register/tZcufu2gqTsqE93jRsQ1hhjlAyKO5tO4IJqh#/registration お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■ フォーラムの趣旨 政治家やスポーツ選手等の「二重国籍問題」が炎上しやすい日本社会。日本国籍だけを保有する人々だけが「国民」なのだろうか。「外国人」と「国民」の境界線に居ながら日本社会で生きている多くの人たちは、どのような葛藤を抱え「二重国籍」と向き合っているのか。今回のSGRAカフェでは、このような問いをみんなで考えていきたい。 日本の国籍法は、国籍唯一の原則を取り入れているが、それは複数国籍保持の禁止又は違法性を意味するのだろうか。国籍法をめぐる様々な誤解を解いた上で、国籍唯一の原則が導入された背景を考察する。また、国際的動向に逆らって、日本では複数国籍容認への動きが全く見られないだけではなく、むしろ過去15年間、行政による複数国籍防止対策が以前より徹底されているようにさえ窺える。この動きの背景は何か。 最後に、複数国籍保持者の当事者らはどのような問題に直面し、どのような実践を繰り広げているのか。国際結婚によって生まれた人たち、帰化を経て日本国籍を取得した人たち、外国籍を取得した海外居住中の元日本国籍保持者の事例から、国籍選択制度や国籍喪失/はく奪条項等をめぐる各個人の実践と、近年の動きを検討していく。 ■ プログラム 14:00 イントロダクション 「多くの誤解を生んでいる日本の国籍法」 コーベル・アメリ(獨協大学特任講師) 日本政府は二重国籍の防止・解消に本当に積極的と言えるのか。その議論の前提として二重国籍が発生する主なケースを紹介しながら、その解消を目指す諸制度と限界を解説する。 14:10 基調講演 「日本社会における複数国籍の実態―放置主義から摘発強化への政策転換」 武田里子(大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター客員研究員) 国連加盟国中、複数国籍非寛容国は23%(2020年)にとどまり、日本はこのグループに区分されている。一方で日本における複数国籍者はすでに100万人を超えた。日本政府は2000年代に入り、なぜ、重国籍放置主義から摘発強化に政策転換したのか。本報告では、はじめに国籍法の変遷を整理し、次に調査から得られた当事者が抱える国籍問題と、国籍法11条1項*違憲訴訟における被告(国)の主張、”国籍唯一の原則と重国籍削減の合理性”を重ね合わせることで、実態と国籍法制の矛盾を浮かび上がらせる。結論として、国籍問題も「失われた30年」の要因のひとつになっていることを示し、後半の議論につなぎたい。 *「日本国民は、自己の志望によって外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う」 14:45 <休憩10分> 14:55 話題提供1 「日本における国籍と社会福祉及びソーシャルワーク」 ヴィラーグ・ヴィクトル(日本社会事業大学准教授) 国籍は様々な社会サービスの受給資格を通して日々の生活に影響を及ぼしている。前半は日本の公的な福祉制度と国籍の関係について整理する。後半はソーシャルワーク専門職の視点から国籍唯一の原則や複数国籍防止対策について考察し、問題提起する。 15:05 話題提供2 「国際-国家、そして家族史における国籍」 金崇培(国立釜慶大学助教授) 依然として国際関係や国家が持つ権力の構造は「個人」に影響を及ぼしている。本発表は発表者の家族史やパーソナル・ヒストリーによって国籍問題の一側面を紹介しようとする試みである。 15:15 話題提供3 「日本と中国の間で起きている国籍問題」 高偉俊(北九州市立大学国際環境工学部教授) グローバルな移動に便利な日本のパスポートか、家族が同じ国籍(中国籍)であるというアイデンティティか。日本に帰化する中国人も多い中、その狭間で考えた日本と中国の国籍問題について自身を含む様々な事例を紹介する。 15:25 <休憩10分> 15:35 グループディスカッション 16:05 ディスカッション結果の共有 司会/モデレーター: コーベル・アメリ 16:25 閉会挨拶 16:30 閉会 ※プログラムの詳細 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/01/SGRACafe21Program.pdf ※ポスター https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/01/SGRAcafe21v2-1.jpg ---------------------------------------------------------------- ◆第20回SGRAカフェ「パレスチナについて知ろう」へのお誘い(再送) 下記の通り第20回SGRAカフェを会場及びオンラインのハイブリット方式開催いたします。参加をご希望の方は、会場、オンラインの参加方法に関わらず事前に参加登録をお願いします。 テーマ:「パレスチナについて知ろう―歴史、メディア、現在の問題を理解するために」 日 時: 2024年2月3日(土)14:00~15:30 方 法: 会場及びZoomウェビナー 言 語: 日本語 申 込: 下記リンクよりお申し込みください https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_Ft1VNayvQEecu55Hhkp8Tw#/registration お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■ フォーラムの趣旨 パレスチナの歴史、メディアの役割と影響、現在の政治的・社会的・人道的な問題についてのイベントです。パレスチナは中東の重要な地域であり、イスラエルとの紛争や国際社会との関係が注目されています。しかし、多くの人はパレスチナの実情や人々の声を知らないまま、偏った情報や先入観に基づいて判断してしまうことがあります。本イベントでは、パレスチナの歴史的背景やメディアの表現方法を分析し、現在の問題に対する多様な視点や意見を紹介します。パレスチナについて知ることで、平和的な解決に向けた理解と共感を深めることを目的としています。大切なのは、同じ地球市民の一員として、この問題がこのままでいいのか、どうあるべきなのかを考えること、そしてそれに基づいて、何ができるか考え、実際に行動することではないでしょうか。今回はその出発点となるように、パレスチナ問題の歴史や現状、メディアとの向き合い方などについて、皆さんと一緒に考えたいと思います。 ■登壇者紹介 講師:ハディ ハーニ Hani_Abdelhadi 1992年埼玉県生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。同大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程修了。博士(政策・メディア)。2023年より明治大学特任講師。東京ジャーミイ文書館理事等を兼務。主な論文に「パレスチナ問題における解決案の行き詰まり」「イスラーム法からみるパレスチナ問題」などがある。 討論者・司会:シェッダーディ アキル Cheddadi,_Mohammed_Aqil モロッコ出身。モロッコ国立建築学校卒業。慶應義塾大学政策・メディア研究科環境デザイン・ガバナンス専攻修士号取得・博士課程在学。同大学総合政策学部訪問講師。2022年度渥美奨学生。本カフェでは日本在住のアラブ人という視点からパレスチナ問題の現状や解決の可能性について考える。 ■ プログラム 14:00 開会挨拶 14:05 ハディ先生による発表 14:50 質疑応答・ディスカッション 15:25 閉会挨拶 15:30 閉会 ※プログラムの詳細 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/01/SGRACafe20Program.pdf ※ポスター https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/01/cafe20poster-scaled.jpg ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************  
  • Nahed ALMEREE “My Husband who Changed”

    ********************************************** SGRAかわらばん999号(2024年1月18日) 【1】エッセイ:ナーヘド・アルメリ「変わってくれた夫」 【2】第20回SGRAカフェ「パレスチナについて知ろう」へのお誘い(2月3日、東京+オンライン)再送 ********************************************** 【1】SGRAエッセイ#753 ◆ナーヘド・アルメリ「変わってくれた夫」 「不思議だね。私と同じように大きな大人で、手も2本あって、しかも55年間の人生を生きているのに、こんな簡単なこともできないなんて本当にかわいそう」、「コーラン(イスラム教の聖書)のどこかの章に家事は女性の義務だと書かれてあったかしら」、「私は人生がまだ33年しか過ぎていないのに、仕事も家事もちゃんとできて。世話してくれる妻や母がいなくて一人になったら、男は子どもみたいになって、生活能力がなくてかわいそう。だから男性の方がぼけやすいんだ!」等々、皿洗いや掃除をしながら、夫に聞こえる声で、独り言のように、心配しているかのような優しい口調で文句を言う。 3年あまり前に日本で博士号を取得して帰国し、留学する前から付き合っていた人とすぐに結婚した。大学での仕事も始まり、通勤は往復で5時間もかかり、時間にほとんど余裕がない。夫は勤続年数が満了したため、私が帰国する1年前に退職した。シリアでは、特に都市に住んでいると、仕事以外にも男がしなければならないこと多い。例えば、パンや食糧の購入、給水タンクの水位の確認、電話代や電気代などの支払い。だが、私の勤務時間と通勤時間を比べれば、それほど長い時間がかからない。 帰宅すると、夫はだいたいリビングでごろごろしていて、私がご飯を作るのを待っている。食べ終わったら、夫は食卓に座ったままで、私が皿洗いを終えるまで待っていることが多い。皿洗いを終えたらお茶を2人で飲んでから、私がまだ終わっていない家事や仕事を続ける。そのように半年くらい経つと、もともと出ていた夫のお腹(おなか)も少し大きくなり、物忘れもするようになった。「大変ですね、おばさん。妊娠何カ月ですか?」などとおなかをなでながら冗談のように意地悪いことを言う。そして、子どもがほしいと頻繁に頼む彼に、「もう既に大きな子どもが一人いますよ!」とまた優しい口調で意地悪い返事をしたりする。 夫はもともと公安部隊ダマスカス(シリアの首都)支部の人。黒帯5段の空手家なので、支部全体のトレーニング担当が主務だった。師範として人気もあって他の地区の警察トレーニングのために地方に派遣されることもよくあった。だが、退職して、トレーニングどころか、身体を動かすことすら少なくなった。 このままでは夫は年を取っていくだけだと最初から目に見えていた。しかし、結婚したばかりのころは、退職後の不安や寂しさも溜まっているだろうと思い、大好きで尊敬している夫に何も言えなかった。夫に聞こえるように意地悪い独り言や返事ができるようになるまで1年あまりかかった。 大学時代からジムに行くことを日常生活の基本の一つにしている私にとって、帰国して、段々と高くなる月々のジム代が1年後に払えない金額になり、ジムをやめて、家の周辺を散歩し、簡単なトレーニングをすることにした。家から1キロくらい離れたところに車や人の行き来も少ない通りを発見し、ジョギングに使うことにした。特に夏は朝の爽やかな風が気持ちよいので、週末や学校の仕事が休みの日に、朝早い時間に起きてジョギングしている。「行ってきます!」と一人で出ていたが、そのうち夫を一緒に出させるようにした。 少し早歩きして屈伸をして、身体が温まったら走り始める。すると、夫が息苦しくなり足も痛くなるので、ジョギングをさぼる。さぼっている夫の姿が面白くて可愛いと思ったが、「誰が長い間空手師範をしていたのかしら?」などと冗談風に言いながら、夫の速さに合わせて走って3分ごとに呼吸を整えるため1分間休むように工夫した。何十キロも続く県道を公安部隊のメンバーと走っていた30~40代の時の夫には全くかなわないと十分に分かっている私にとって、退職後の夫の男女役割分担に加えて自らの生き方についての認識に変化を起こしたかった。 結婚1年半後に夫は皿洗いをしたり、家具の表面にたまったほこりを拭いたり、私の帰りが遅い時や仕事が忙しい時にご飯を作ったりするようになった。最初はあまり上手ではなかったが段々とできるようになった。そして、現役の時のボスに連絡して、公安部隊でバイト契約ができた。物忘れも少なくなり、腹筋も出た。 最初は、「若い娘と結婚したからしょうがない」、「困った娘と結婚してしまった」などの文句を素直に受けたが、夫は本当にそう思っていたのかもしれない。しかし、日常生活では、仕事やトレーニングだけでなく、家庭のことから始めて責任感を持ち、受け身から能動的な存在に変わってほしいと思っていた。夫はきっとその成果が身に沁みたので、変わり続けてくれた。だが、何よりそれを可能にしてくれたのは、夫婦としての愛情と信頼感なのだと思う。 思い出すのは、母の家事に対する自分の子どもの性差意識と教養のことだ。保守的で伝統的な家庭に育った両親は2人とも「男は外で働き、女は家事や育児」という意識が強い。女3人の次に男3人を生んだ母は、長女の私と妹2人ばかりに家事を手伝わせた。弟たちは成長しても遊んでいるばかりで家事に手を借りてはいけなかった。私と妹が大学に入り家から離れると、母の負担は大きくなった。祝日で帰省したある日、家事で大変そうだった母に、弟たちに家事を教えて手伝わせるよう提案をした。「でも、男だから」と違和感を表す母に、「このままでは、弟たちはわがままばかりでお母さんはどんどん辛くなるだけよ。男も女と同じ人間だから、家事をさせていけないことはないよ。教えてあげれば息子も娘と同じことができる。将来一人暮らしになった場合の息子のためでもあるから。お母さんに頼まれたらきっと素直にやってくれる」と説得した。弟たちは最初嫌がっていたが、母から頼まれているのでだんだんと家事を手伝わなければという意識が生まれた。 2番目の弟は結婚してダマスカスに住んでいて、2歳の娘がいる。休みの日には娘のおむつ替えまで手伝っている。家族で集まる時には、夫と弟も当たり前のように自発的に私たちと一緒に行動する。だが、家族でない人がいると夫や弟に家事を頼めない。残念ながらシリアはまだまだ男優位の社会で、男が家事に手を貸すなんてとんでもないと思われているからだ。 恥ずかしいけど、身内の「男女の役割分担」をめぐる意識について日々の生活断片を明かした。ここで男女平等の必要性を唱えているわけではない。男女平等の課題は時代遅れだと思っている。21世紀の進展とともに女性の社会進出が進んでいるものの、男女の役割分担についての社会通念・習慣・しきたりなどが世界的に見ても残念ながらまだまだ根強いのが現実なのだ。自分には性別による役割分担の意識が無くても、親や周囲から固定観念を押し付けられることで制限を受け、能動的に生きることを阻害されてしまう。むしろ、男性の生きる能力を妨げている男性優位の既存の区分を超えて「個人」としての意識を発展させることが、各家族を始め社会全体としての家庭問題の解決や個人の前向きな生き方へとつながり、よりポジティブな社会の在り方が芽生えてくるだろう。そして、それは社会の責任であるが、母親たちの役割も大きいと思う。 <ナーヘド・アルメリ Nahed_ALMEREE> 渥美国際交流財団2019年度奨学生。シリア出身。ダマスカス大学日本語学科卒業。2011年9月日本に留学。2013年4月筑波大学人文社会科学研究科に入学。2020年3月博士号取得。博士論文「大正期の童謡研究――金子みすゞの位置づけ」は優秀博士論文賞を受賞。2020年11月『金子みすゞの童謡を読む――西條八十と北原白秋の受容と展開』港の人から出版。2021年、第45回日本児童文学学会奨励賞受賞。現在、ダマスカス大学文学部日本語学科教員。 ---------------------------------------------------------------- ◆第20回SGRAカフェ「パレスチナについて知ろう」へのお誘い(再送) 下記の通り第20回SGRAカフェを会場及びオンラインのハイブリット方式開催いたします。参加をご希望の方は、会場、オンラインの参加方法に関わらず事前に参加登録をお願いします。 テーマ:「パレスチナについて知ろう―歴史、メディア、現在の問題を理解するために」 日 時: 2024年2月3日(土)14:00~15:30 方 法: 会場及びZoomウェビナー 言 語: 日本語 申 込: 下記リンクよりお申し込みください https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_Ft1VNayvQEecu55Hhkp8Tw#/registration お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■ フォーラムの趣旨 パレスチナの歴史、メディアの役割と影響、現在の政治的・社会的・人道的な問題についてのイベントです。パレスチナは中東の重要な地域であり、イスラエルとの紛争や国際社会との関係が注目されています。しかし、多くの人はパレスチナの実情や人々の声を知らないまま、偏った情報や先入観に基づいて判断してしまうことがあります。本イベントでは、パレスチナの歴史的背景やメディアの表現方法を分析し、現在の問題に対する多様な視点や意見を紹介します。パレスチナについて知ることで、平和的な解決に向けた理解と共感を深めることを目的としています。大切なのは、同じ地球市民の一員として、この問題がこのままでいいのか、どうあるべきなのかを考えること、そしてそれに基づいて、何ができるか考え、実際に行動することではないでしょうか。今回はその出発点となるように、パレスチナ問題の歴史や現状、メディアとの向き合い方などについて、皆さんと一緒に考えたいと思います。 ■登壇者紹介 講師:ハディ ハーニ Hani_Abdelhadi 1992年埼玉県生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。同大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程修了。博士(政策・メディア)。2023年より明治大学特任講師。東京ジャーミイ文書館理事等を兼務。主な論文に「パレスチナ問題における解決案の行き詰まり」「イスラーム法からみるパレスチナ問題」などがある。 討論者・司会:シェッダーディ アキル Cheddadi,_Mohammed_Aqil モロッコ出身。モロッコ国立建築学校卒業。慶應義塾大学政策・メディア研究科環境デザイン・ガバナンス専攻修士号取得・博士課程在学。同大学総合政策学部訪問講師。2022年度渥美奨学生。本カフェでは日本在住のアラブ人という視点からパレスチナ問題の現状や解決の可能性について考える。 ■ プログラム 14:00 開会挨拶 14:05 ハディ先生による発表 14:50 質疑応答・ディスカッション 15:25 閉会挨拶 15:30 閉会 プログラムの詳細 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/01/SGRACafe20Program.pdf ポスター https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/01/cafe20poster-scaled.jpg ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************  
  • Invitation to the 20th SGRA Cafe “Let’s learn about Palestine”

    ********************************************** SGRAかわらばん998号(2024年1月11日) あけましておめでとうございます 今年もよろしくお願いします ********************************************** ◆第20回SGRAカフェ「パレスチナについて知ろう」へのお誘い 下記の通り第20回SGRAカフェを会場及びオンラインのハイブリット方式開催いたします。参加をご希望の方は、会場、オンラインの参加方法に関わらず事前に参加登録をお願いします。 テーマ:「パレスチナについて知ろう―歴史、メディア、現在の問題を理解するために」 日 時: 2024年2月3日(土)14:00~15:30 方 法: 会場及びZoomウェビナー 言 語: 日本語 申 込: 下記リンクよりお申し込みください https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_Ft1VNayvQEecu55Hhkp8Tw#/registration お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■ フォーラムの趣旨 パレスチナの歴史、メディアの役割と影響、現在の政治的・社会的・人道的な問題についてのイベントです。パレスチナは中東の重要な地域であり、イスラエルとの紛争や国際社会との関係が注目されています。しかし、多くの人はパレスチナの実情や人々の声を知らないまま、偏った情報や先入観に基づいて判断してしまうことがあります。本イベントでは、パレスチナの歴史的背景やメディアの表現方法を分析し、現在の問題に対する多様な視点や意見を紹介します。パレスチナについて知ることで、平和的な解決に向けた理解と共感を深めることを目的としています。大切なのは、同じ地球市民の一員として、この問題がこのままでいいのか、どうあるべきなのかを考えること、そしてそれに基づいて、何ができるか考え、実際に行動することではないでしょうか。今回はその出発点となるように、パレスチナ問題の歴史や現状、メディアとの向き合い方などについて、皆さんと一緒に考えたいと思います。 ■登壇者紹介 講師:ハディ ハーニ Hani_Abdelhadi 1992年埼玉県生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。同大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程修了。博士(政策・メディア)。2023年より明治大学特任講師。東京ジャーミイ文書館理事等を兼務。主な論文に「パレスチナ問題における解決案の行き詰まり」「イスラーム法からみるパレスチナ問題」などがある。 討論者・司会:シェッダーディ アキル Cheddadi,_Mohammed_Aqil モロッコ出身。モロッコ国立建築学校卒業。慶應義塾大学政策・メディア研究科環境デザイン・ガバナンス専攻修士号取得・博士課程在学。同大学総合政策学部訪問講師。2022年度渥美奨学生。本カフェでは日本在住のアラブ人という視点からパレスチナ問題の現状や解決の可能性について考える。 ■ プログラム 14:00 開会挨拶 14:05 ハディ先生による発表 14:50 質疑応答・ディスカッション 15:25 閉会挨拶 15:30 閉会 プログラムの詳細 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/01/SGRACafe20Program.pdf ポスター https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/01/cafe20poster-scaled.jpg ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************  
  • CHEN Yijie: EACJS Session Report “Distribution and Acceptance of Different CulturesーFocus on Japan”

    ********************************************** SGRAかわらばん997号(2023年12月28日) 【1】陳イジェ:第7回東アジア日本研究者協議会パネル報告「異文化の流通や受容:日本を中心に」 【2】催事紹介:第20回INAF研究会(2024年1月13日、オンライン) ◆◇◆◇◆ 今年もSGRAかわらばんをお読みいただき、ありがとうございました。 新年は1月11日から始めます。 皆さまにとって、世界にとって、少しでも平和な年になりますように。 ********************************************** 【1】陳藝?:第7回東アジア日本研究者協議会パネル報告「異文化の流通や受容:日本を中心に」 2023年11月3日から5日まで、東アジア日本研究者協議会第7回国際学術大会が東京外国語大学で開催された。私が企画したパネルセッション「異文化の流通や受容:日本を中心に』は司会1名、討論者1名、発表者4名で構成され、SGRAの派遣チームとして参加した。 日本は古くから積極的に海外と接触し、多文化交流の重要な交差点といえる。異文化を受容することを通じて「日本文化」が築かれた。本パネルは美術を切り口として、6世紀から20世紀にいたる時代の中で日本と中国、朝鮮の交流の様相を検討する試みである。 発表は研究テーマの時代順に行われた。最初は馬歌陽氏(早稲田大学博士課程)の「飛鳥・白鳳時代の仏教美術における宝塔の造形化―東アジア的視点を中心に」。仏塔、あるいは宝塔は釈迦の象徴物として古くから造形化され、信仰されてきた。仏教が日本へ公伝すると、図様としての宝塔もしばしばみられるようになることが飛鳥・白鳳時代の仏教造形作品に確認できる。この時代の宝塔には三つの特徴がみられる。1)塔身の屋頂に覆鉢とよばれる半球形の膨らみがない、2)相輪が5本立つ、3)塔身部に円拱龕を表す。この特徴をもつ宝塔は日本のみならず、中国六朝時代の都であった建康(現在南京市)や西の四川地域、そして朝鮮半島の作例に見出せる。馬氏は飛鳥・白鳳時代の宝塔を手掛かりとして、古代東アジア仏教美術の受容と展開の一端を論じた。 2番目は孫愛琪氏(日本学術振興会外国人特別研究員)の「福建甫田画家趙珣と江戸画壇への影響」。明末の福建画家趙珣は現在の中国ではほとんど無名だが、彼の作品は江戸時代の日本に数多くもたらされ、異国で新しい命を獲得した。趙珣の作品は長崎~京都の黄檗僧と教団に関係する文人たちの絵画学習の手本となった。江戸後期の儒学者・頼山陽や、文人画家・田能村竹田らは趙珣を高く評価し、コレクターであり書家の市河米庵は作品を積極的に収集し、江戸の南画家・谷文晁一門は趙珣作品の模倣作を残している。孫氏の発表は趙珣を一つの切り口として17、18世紀の福建絵画及び黄檗絵画と江戸絵画との間に様式的展開と変容を観察しようとする。 3番目は王紫沁氏(総合研究大学院大学博士課程)の「池大雅における伊孚九の学習を再考する」。江戸時代の画家池大雅が学んだとされる明清画家の中で、伊孚九は沈南蘋と同じほどの名声を持ち、とりわけ山水画に長じたことで知られる。しかし、実際に大雅が伊孚九の絵をどのように、どれくらい学んだかについて詳しく研究されていなかった。王氏の研究は来舶清人画家の受容の一例、伊孚九の画風を整理し、当時の上方文人圏における伊孚九作品の鑑賞・学習を考察した上で、池大雅における伊孚九の学習を考え直そうとする。 最後は私の「高島北海の皴法認識――日本留学した中国人画家傅抱石の理解を参照に――」。日本留学をした中国人画家傅抱石(1904年~1965年)の理解を参照しながら、画家・地質学者高島北海(1850年~1931年)の皴法に対する認識を分析するものである。皴法とは毛筆の特性を生かして山、石、樹などの景物の立体感や質感を写実的に表現する伝統的な中国絵画技法である。高島北海は画論『写山要訣』(1903年)の中で、皴法を山水写生の具体的な技法として紹介。しかし、傅抱石も当時の日本画壇の評論家も疑問を唱えているので、文字や絵画を通じて検証した。近代中国を代表する名画家の傅は日本で注目されず、高島も1930年代から日本美術史から消えているが、東アジア美術史において両名の史的な価値を再検討した。この発表内容は『鹿島美術研究』(年報第40号別冊)に掲載された。 4人の発表の後、王楽氏(東北大学特任助教)が討論者としてそれぞれにコメントした上で、質問した。発表者は一人ずつ質問に答え、相互に議論を行った。時間が限られていたため、会場参加者たちとの交流はパネル終了後になった。 今回はSGRA派遣チームとして、本学会に参加できた。貴重なコメントを頂き、多くの研究者と意見交換ができたことを大変嬉しく思う。企画者として、あらためて渥美財団の皆さまに御礼を申し上げたい。 <陳藝ジェ(チン・イジェ)CHEN_Yijie> 2022年度渥美奨学生。中国浙江省出身。2023年、総合研究大学院大学国際日本研究博士号取得。現在は中国上海大学上海美術学院助教授。研究分野は日中絵画の交流や受容。論文には「高島北海『写山要訣』の中国受容:傅抱石の翻訳・紹介を中心に」(『日本研究』64集,2022年3月)、「記美術史家鈴木敬」(『美術観察』2018年 5月号)など、著作は『黄秋庭 巨擘伝世・近現代中国画大家』(中国北京高等教育出版社、 2018 年)などがある。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】催事紹介 SGRA会員で一般社団法人東北亜未来構想研究所(INAF)所長の李鋼哲さんより研究会のお知らせをいただきましたのでご紹介します。参加ご希望の方は直接申込をお願いします。 ◆第20 回INAFセミナー 日時:2023年12月6日(水)18:00~21:00 (オンライン) プログラム: 司会:李鋼哲 INAF所長 報告1:韓承軒(韓国ソウル大学国際大学院修士課程 「米国の新冷戦ナラティブと中国の対応」 討論者:羽場久美子(INAF副理事長・青山学院大学名誉教授) 報告2:安家宇(早稲田大学院アジア太平洋研究科博士課程)(予定) 「中国の対外広報の役割と手法―外交部報道官システムとメディアの協業を中心に-」 討論者:兪敏浩(INAF理事・名古屋商科大学国際学部教授) 参加申込:INAFメンバー以外の方は、1日前までに参加申し込み(名前、所属、連絡先メルアド)を下記へ送ってください。なお、参加された方はINAFフレンドとしてMLに登録し、今後の研究会の情報発信をさせていただきます。情報発信不要の方はその旨をお伝えください。 Email: [email protected] 詳細は下記をご覧ください。 https://inaf.or.jp/ ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************  
  • Melek KABA: EACJS Session Report “Japanese Studies and Japanese Language Education in the Middle East”

    ********************************************** SGRAかわらばん996号(2023年12月22日) ********************************************** ◆カバ・メレキ:第7回東アジア日本研究者協議会パネル発表報告 「中東における日本研究と日本語教育-マンガ・アニメの受容と若者の日本語への関心」 2023年11月4日(土)11:00-12:30に東京外国語大学研究講義棟102号室にてパネルセッション「中東における日本研究と日本語教育-マンガ・アニメの受容と若者の日本語への関心」を開催した。5名のパネリストがそれぞれの出身国における日本研究及び日本語教育と若者の日本語への関心について説明した。プレゼンテーションの後、質疑応答で討論が進んだ。 発表テーマとパネリストは次の通り。 1)「トルコにおけるマンガの歴史と教育」チャクル・ムラット(CAKIR,_Murat)関西外国語大学 2)「トルコにおける日本語教育とマンガの役割」カバ・メレキ(KABA,_Melek)チャナッカレ・オンセキキズ・マルト大学 3)「シリアにおける日本語教育の歴史と現状」アルメリ・ナヘード(ALMEREE,_Nahed)ダマスカス大学 4)「イランにおける日本語教育の歴史と現状」アキバリ・フーリエ(AKBARI,_Hourieh)白百合女子大学 5)「モロッコにおける日本語教育の歴史と現状」チェッダディ・モハンマド・アキ―ル(CHEDDADI,_Mohammed_Aqil)慶應義塾大学 最初にチャクルさんが「マンガ・漫画」という言葉の歴史と日本・トルコ両国におけるマンガの歴史の概略を説明し、特にトルコではマンガの歴史がオスマントルコ時代に遡ることを強調した。その後、マンガ熱が高まった1908年代に登場した主なキャラクターを紹介しながら、トルコの教育現場におけるマンガ使用事例を説明し、これからもマンガが日本語教育のみならず、教育のさまざまな場で活用できることを指摘した。 次は私でトルコの若者の間で日本のポップカルチャー熱が上がっていることを指摘し、日本のポップカルチャーの中でも特に注目を集めているマンガと日本語教育の関連性を考察した。事例として、私たちの学科で実践した「マンガ坊ちゃん」を教材とするオンライン日本語教育講座の研究を取り上げた。マンガ教材を利用することで、トルコ人の日本語学習者がより積極的に学習に臨んだことや、マンガ教材の面白さを知り日本文学に興味を持つようになり、日本文学を読むようになったことが分かった。 ナヘードさんはシリアにおける日本語教育の現状を紹介した。1979年に在シリア日本大使館で日本語講座が開講され、およそ20年間続いた。1995年にアレッポ大学学術交流日本センター、1999年にはダマスカス大学付属言語研究所に日本研究センターが開設され、2002年にはダマスカス大学人文学部に日本語・日本文学科が開設された。2010年にはアレッポ大学に日本研究専攻の修士課程が設置された。しかしながら、現在戦時下のシリアでは日本語教育は停滞しており、日本語教育機関では学習者がゼロとなっている。国際情勢が教育、特に日本語教育に与えるダメージが大きいことを実感した。 フーリエさんの発表はイランの日本語教育をまとめるものだった。日本語教育の始まりは1989年にテヘラン大学外国語学部内に必修選択第二外国語科目として日本語コースが開設されたことにさかのぼる。その後1994年に同学部に日本語・日本文学科が設置された。2013年にはテヘラン大学世界研究部日本研究コース(修士課程)が開講した。 以上から、シリアとイランとトルコでは1990年代に日本語教育に力を入れ始めたことが判明した。 最後のアキルさんの発表では、モロッコにおける日本語教育の現状が扱われた。1982年にモハメッド五世大学(ラバト)において、モロッコの公的機関における日本語教育が開始した。2002年以降は順次5つの大学で日本語講座が行われるようになった。マンガ・アニメへの関心は高く、これからも日本語教育に力を入れるべき状況である。 今回のパネルディスカッションで、中東における日本語教育はまだ力を入れつつある現状であることが分かった。地政学的な特徴が日本語教育に歯止めをかけていることも判明した。中東の5つの国の日本語教育状況を比較的に考察することができたが、日本のポップカルチャー、特にマンガ教材の開発はまだ十分に行われていないようだ。 パネリストは全員が渥美奨学生であり、今後も共同で研究集会や勉強会や交流を重ねて中東における日本語教育に力を入れることを目指すことで合意した。 当日の写真は以下のURLからご覧いただけます。 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2023/12/EACJS7Photo_Team_Melek.pdf <カバ・メレキ KABA_Melek> 2009年度渥美奨学生。トルコ共和国チャナッカレ・オンセキズ・マルト大学日本語教育学部助教授。2011年11月筑波大学人文社会研究科文芸言語専攻の博士号(文学)取得。白百合女子大学、獨協大学、文京学院大学、早稲田大学非常勤講師、トルコ大使館文化部/ユヌス・エムレ・インスティトゥート講師、トルコ共和国ネヴシェル・ハジュ・ベクタシュ・ヴェリ大学東洋言語東洋文学部助教授を経て2018年10月より現職。 ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************  
  • Max Maquito: EACJS Session Report “Community Currency Learning from Japan”

    ********************************************** SGRAかわらばん995号(2023年12月14日) 【1】マックス・マキト:第7回東アジア日本研究者協議会「日本から学ぶ地域通貨」パネル発表報告 【2】寄贈本紹介:南基正著、市村繁和訳『基地国家の誕生:朝鮮戦争と日本・アメリカ』 ********************************************** 【1】マックス・マキト:第7回東アジア日本研究者協議会「日本から学ぶ地域通貨」パネル発表報告 2023年11月4日(土)11:00-12:30、東京外国語大学研究講義棟102号室にてパネルセッション「日本から学ぶ地域通貨」が開催され、3つの発表と2つの討論の後、質疑応答が行われた。 内容は以下の通り。 発表1:「フィリピン・ラグナ州のコミュニティにおける地域通貨の可能性:日本を参考に」 ジョアン・セラノ、ジャネル・エボロン(フィリピン大学オープン大学) 発表2:「フィリピン・ラグナ州における地域交換取引制度(LETS)の可能性:日本を参考に」 セザー・ルナ、ジャネル・べレガル(フィリピン大学オープン大学) 発表3:「フィリピン・ラグナ州における電子地域通貨の可能性:日本を参考に」 フェルディナンド・マキト(フィリピン大学ロスバニョス校) ノリン・アラザダ(フィリピン大学オープン大学) 討論1:ジャクファー・イドルス(国士舘大学) 討論2:栗田健一(東京経済大学) 3本の発表は、フィリピン大学オープン大学(UPOU)で実験中の「アリタップタップ(蛍)」と呼ばれる地域通貨をめぐるものであった。「アリタップタップ」という名前は、フィリピン大学オープン大学のキャンパスで、コロナ禍後に蛍が再出現したことにちなんでつけられた。キャンパスの隣にある稲と米の実験場からの化学肥料の流出が中止になって蛍が復活したと考えられている。 最初の発表は、地域通貨を作るための「コミュニティ」概念の取り組みについて。ラグナ州の学術的なコミュニティにおける地域通貨の可能性に焦点を当て、フィリピンが直面している「持続可能な開発」という課題に適用される地域通貨の可能性について深く掘り下げた。「アリタップタップ」はオープン大学の教職員の間で物やサービスの取引を促進する媒体として役割を果たしている。日本、特に神奈川県藤野町の「よろづ屋」の経験を参考に、フィリピンにおける地域通貨の可能性を検討した結果、まずは学術界主導の地域通貨設立の可能性を探ることにした。 これは学術的な環境におけるコミュニティ形成を促進する地域通貨の先駆的なモデルともいえるだろう。他の地域通貨と比較して、地理的な境界に制限されず、大学の教職員、研究者、スタッフ間の取引ネットワークが強固に存在することが特徴である。警備員やグランドスタッフも含まれるため、地域通貨取引によって生じるコミュニティの絆の強化も確認できる。人々がこの新しいシステムに興味を持ち、実際に試してもらうことで地域通貨の良さを理解してもらえる。地域通貨モデルのプロトタイプを作り、メンバーの動機や課題を把握することができる。 2番目の発表では、地域交換取引システム(Local_Exchange_Trading_System:LETS)について、歴史、地域への導入実績、衰退、日本における復活について紹介した。LETSは、組織化されたコミュニティやグループ内で地域通貨を使って商品やサービスを交換するもの、と定義されている。1983年にマイケル・リントンがカナダのブリティッシュ・コロンビア州でコモックス・バレーLETSを始め、1990年代に欧米諸国で最盛期を迎えた。最もよく知られた第一世代の地域通貨システムとして知られ、日本の地域通貨の拡大に大きな影響を与えた。 金融不安を伴う地域的または国家的危機への対応として始まることが多いが、会員の減少、経済効果がほとんど見られないことや管理コストなどの要因のために、維持することができなかった例も多い。一方、日本では地域通貨を長期管理する仕組みとしてLETSモデルが登場した。通帳型のモデルを導入するケースが多く、地域通貨「萬(よろず)」を使う藤野町でも、地域の絆を強め、レジリエンスを高めると言われている。このようにして相互信頼を植え付け、地域コミュニティを巻き込み、利用可能なスキルや資源を最大限に活用し、コミュニティ内で価値と効用を生み出すというメリットを享受しようと努力している。 3番目の発表は、通帳型地域通貨に焦点が当てられた。通帳には「よろず屋」の会員2名(売り手と買い手)の取引の詳細が記録され、地域通貨「萬」で評価される。取引の検証は、取引当事者が署名するという手法で分散化されている。通帳は会員の「ギブミー(ほしい)」・「ギブユー(あげる)」リストへのアクセスを提供するメーリングリストによって補完される。しかし、このリストは石に刻まれたものではない。緊急に必要なものは、メーリングリストを通じて会員が投稿することができる。 日本の通帳システムは、管理コストが最小限に抑えられ、比較的インフォーマルであるため、欧米の通帳システムより持続可能である。日本で通帳制度が長続きしている背景には、他にも3つの理由がある。互恵と義務の日本文化との相性の良さ、地方開発の促進、そして設立した社会起業家のさまざまな好みに対応できる高い柔軟性である。「アリタップタップ」も日本の経験に基づき、デジタル版に移行する前に、まずアナログ版の通帳で試してみることになった。通帳はオープン大学経営開発研究学部(FMDS)で印刷し無料で提供されている。この通帳は「よろず屋」の形式を踏襲しており、地域通貨が開始される以前から取引が行われていたかどうかを示す欄が追加されている。 私たちのチームが最初に発見したのは、会員数は多いものの商品やサービスの交換に積極的に参加している会員は全体の25%に過ぎないということであった。次に同地域通貨を実施するための実験として、オープン大学経営開発研究学部の「レジリエンス、開発、起業家精神、栄養に対する評価」部門の取引が増加した。さらに、入会希望者は事前にプラス残高を要求し、マイナス残高には難色を示した。研究者は残高がマイナスであることは悪いことではないことを会員に説明し、プラス残高を得るために「レジリエンス、開発、起業家精神、栄養に対する評価」部門で行うサービスや提供する商品を会員に提案することに努めている。 続いて2名の討論者からコメントがあった。 ジャクファー先生は、インドネシア国内のローカル・コミュニティや先住民コミュニティに現在14の地域通貨が存在していることを紹介した。これらのコミュニティ通貨システムでは木製のお金が使用されていることも興味深い。 最後に地域通貨研究の第一人者である栗田先生が「『萬社会』は会員の借金を認めているから全員が多くの商品やサービスを手に入れようとするのではないだろうか?しかし、そのようなことは決して起こらない。すべての会員は、借金を減らすことでコミュニティへのコミットメントを示す。残高がマイナスになったメンバーは、どうすれば『萬社会』に貢献できるかを考える。その結果、会員は自分自身の可能性を再発見する」と強調された。 EACJS学会の後に、栗田先生の手配で研究チームは「よろず屋」の故郷である佐川原市の藤野へ見学に行った。藤野電力とパーマカルチャー・センター・ジャパンの担当者らのお話を伺い、サイトを案内していただいて皆が楽しい半日を過ごした。 言葉の限界があったものの、この大会に参加できて大変勉強になった。 当日の写真は下記リンクからご覧ください。 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2023/11/EACJS7Photo_Team-Maquito.pdf <フェルディナンド・マキト Ferdinand_C._MAQUITO> SGRAフィリピン代表。SGRA日比共有型成長セミナー担当研究員。フィリピン大学ロスバニョス校准教授。フィリピン大学機械工学部学士、Center_for_Research_and_Communication(CRC:現アジア太平洋大学)産業経済学修士、東京大学経済学研究科博士、テンプル大学ジャパン講師、アジア太平洋大学CRC研究顧問を経て現職。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】寄贈本紹介 SGRA会員でソウル大学教授の南基正さんより新著をご寄贈いただきましたので紹介いたします。 ◆南基正著、市村繁和訳『基地国家の誕生:朝鮮戦争と日本・アメリカ』 1953年(昭和28)1月31日当時、日本国内733ヵ所に米軍基地が展開していた。 朝鮮戦争の「前線基地」であり「中継基地」「生産基地」「後方基地」としても戦争に参画した日本。日本政府、旧軍人、右翼、日本共産党、在日朝鮮人、在日韓国人、学者、ジャーナリスト、マスコミ、そして国民は、米軍基地とどう向き合ったのか? 2017年の韓国語優秀学術図書(国際アジア研究者会議)、大韓民国学術院優秀図書受賞作品 発行:東京堂出版 ISBN:9784490210903 出版年月:2023年10月10日 判型・製本:A5・528ページ 定価:4,950円 詳細は下記リンクをご覧ください。 https://www.tokyodoshuppan.com/book/b10033829.html 【書評】 読売新聞 https://www.yomiuri.co.jp/culture/book/reviews/20231127-OYT8T50014/ 朝日新聞(好書好日) https://book.asahi.com/article/15078776 日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO76379220U3A121C2MY6000/ 毎日新聞 https://mainichi.jp/articles/20231209/ddm/015/070/018000c ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************  
  • CHAN Ya-hsun: EACJS Session Report “Crossing Borders, Solidarity, and Resistance in the Discursive Space of Empire”

    ********************************************** SGRAかわらばん994号(2023年12月08日) 【1】詹亜訓「第7回東アジア日本研究者協議会パネル報告」 『帝国という言説空間の越境・連帯・抵抗―アナーキズムと現代詩、フリージャズ』 【2】催事紹介:国際シンポジウム「匈奴とモンゴル帝国の都市と建築文化」(12月9日、東京) 【3】寄贈本紹介:瀧本弘之・戦暁梅編『近代中国美術の辺界:越境する作品、交錯する藝術家』 ********************************************** 【1】詹亜訓「第7回東アジア日本研究者協議会パネル『帝国という言説空間の越境・連帯・抵抗―アナーキズムと現代詩、フリージャズ』報告」 2023年11月の「東アジア日本研究者協議会 第7回国際学術大会」(会場は東京外国語大学)に向け、6月には私を含む台湾と韓国、日本出身の7名の若手研究者がパネル企画の検討を開始した。 同協議会が提示したテーマを基に私たちは「帝国という言説空間の越境・連帯・抵抗―アナーキズムと現代詩、フリージャズ」を提案した。パネリストの専門分野は多岐にわたっているが、東アジアの歴史認識と政治的イデオロギーの齟齬、トランスナショナルな連帯の問題について関心を共有している。共通課題は帝国と社会の周縁を生きてきた運動家、文学者、音楽家の立場から越境する連帯と抵抗のダイナミズムを描き出すことが挙げられる。東アジアの内部でありながら互いの外部にもなる台韓日の間に生まれてくる議論の底力を、パネルの形で発信することが本企画の特徴と考えた。 大会の3日間は、初日から晴れていて暖かかった。私達のパネルは最終日朝のセッションで、寺岡知紀氏(中京大学)のオープニングから始まり、「帝国に抗するアナーキズムを再考する―大杉栄の所有と連帯の論理を手がかりに」(詹亜訓:放送大学)、「戦中・戦後の台湾における石川啄木の受容―文学サークル銀鈴会メンバーを中心に」(劉怡臻:慶應SFC中高部)、「谷川雁の〈工作者〉における力学とフリージャズ」(羅皓名:台湾中央研究院)の3つの報告と、それに対する蔭木達也氏(慶應義塾大学)、閔東曄氏(東北学院大学)、趙沼振氏(淑明女子大学)のコメントを経て、フロアからの質問と総合討議が行われた。 私の報告は1920年に自由連合の主張にたどり着いた大杉栄思想を、第一次世界大戦後の社会問題熱にともなう帝国問題に対する省察と捉えた。そのなかで、自由連合の構想を支えた「労働者の自己獲得」と「蓋然的ソリダリテ」の論理は、脱植民地化への共鳴としての主体の創出と、ポスト大逆事件の社会状況の両方への応答として検討された。この二つの論理は、経済決定の克服を試みた草の根の民衆的創造であり、脱植民地化の広がりを意識してその内面化を試みた越境する連帯のきっかけともいえようと結論付けた。 劉氏は、戦前から戦後まで文芸活動を続けた銀鈴会の朱実と錦連の詩作における啄木文学の受容について発表した。そのなかで、第二次世界大戦中の台湾における伝統的な詩の形式から距離を置いた啄木調の再生産と、戦時中の心理の屈折を意識して正直に記録するという啄木の短歌観への共鳴が示唆された。戦後の2・28事件及び白色テロによる弾圧を受けつつも、啄木文学を自らの抵抗と結びつけた面は、戦後の権威主義体制へのポストコロニアルな応答として捉えた。そして、銀鈴会の「民衆の中へ」のスタンスは、左翼文学史の文脈にとどまらず、台湾の郷土文学との継承関係を示したと論じられた。 羅氏は1960年代の平岡正明と相倉久人の「ジャズ革命論」を取り上げた。谷川の「工作者」の論理が媒介した60年安保の革命思想と前衛芸術、下層労働者のあいだに生まれた「反定型」と相互破壊的な関係性、辺境的マイノリティといった概念をジャズ演奏の歴史映像を通じて説明した。具体的には、異質な他者の間の破壊的な弁証と、自己消滅により継起するノートを呼び起こすという永久革命の企てを持つジャズの結合を論じた。その上で「ジャズ革命論」の意義に関しては、美学と政治の批判的実践のみならず、第三世界論と新左翼運動のパラダイム転換、マイノリティへの眼差しから解釈した。 3つの報告について、3名の討論者が各自の専門から出発し、東アジアの歴史を振り返りつつコメントし、パネル全体との接点を作って質問した。(1)蔭木氏からは、煩悶青年の文脈および自己と国家、社会の関係性から生まれた大杉の「社会的所有」の意味合いと「蓋然的ソリダリテ」の発想に及ぼす根拠、(2)閔氏からは、戦時期植民地知識人の抵抗と戦争擁護の絡み合いから啄木文学の受容の再検討と、戦中から戦後への啄木調の植民地的展開の再認識、(3)趙氏からは、ジャズの即興演奏を他者との出会いとして捉える理解とその妥当性、マイノリティや下層民衆の枠に収まらない社会的矛盾と植民地支配の位置づけ、といった質問があった。 参加者からは文脈の補足や議論のさらなる展開を求められたが、90分の時間はあっという間に過ぎ去ってしまった。総合討議では抵抗の日常性と民衆性につながった「社会」と連帯の構想を接点に、帝国と植民地、支配と抵抗の間の思想的連続と緊張関係が、同時に思想と文学、芸術に反映されたと語られた。同時に、異質なるものが構造的支配に回収され、暴力の装置に右旋回してしまうおそれへの問題関心は、東アジアの歴史認識と政治的イデオロギーのあつれきに関係し、看過できない課題だと、パネリスト同士で共感した。時間内に収まらない議論は、昼食後の雑談まで続いたが、帰らないといけない時間になった。台湾と韓国、日本の各地から集まってきた私たちは、今回のパネルの成果を養分として蓄え、次回の企画に力を注いで行きたい。 当日の写真を下記リンクよりご覧いただけます。 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2023/11/EACJS7Photo_Team-Chan-Ya-hsun.pdf <詹亜訓(せん・あくん)CHAN Ya-hsun> 台湾国立交通大学社会と文化研究科修士。東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻修士、博士。現在日本学術振興会外国人特別研究員として早稲田大学政治学研究科に在籍している。専門は、東アジア政治・社会思想史。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】催事紹介 SGRA会員で昭和女子大学教授のボルジギン・フスレ先生から公開シンポジウムのご案内をいただきましたので紹介します。参加ご希望の方は直接申込をお願いします。 ◆国際シンポジウム「匈奴とモンゴル帝国の都市と建築文化」 主催:昭和女子大学国際文化研究所 日時:2023年12月9日(土)13:00-18:10 場所:昭和女子大学3号館4階4S04 詳細は下記リンクをご覧ください。 https://ja-ms.org/img/The_Cities_and_Architectural_Culture-20231209.pdf -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【3】寄贈本紹介 国際日本文化研究センターの戦暁海教授より編著書をご寄贈いただきましたので紹介いたします。 ◆瀧本弘之・戦暁梅編『近代中国美術の辺界:越境する作品、交錯する藝術家』 発行:勉誠社 ISBN:978-4-585-32515-4 刊行年月:2022年5月 判型・製本:A5判・並製372 頁 定価:3,850円 1911年の清朝崩壊からの約半世紀、中国大陸は中心のない空白時期で政治・経済・文化ともに無秩序の混乱が続いた。そうした中でも、美術家や団体は、海外や美術界の「外」との交流や接触により、新しい藝術思潮や動向に強い関心を寄せて美術活動を展開した。そこには多様で豊かな美術・文化が息づいていた。とりわけ辺境的な位置にあった日本との交流は、近代中国美術史の展開に多大な影響を与えている。 中国の画家は日本の美術界とどのように関わり、独自の作品世界を形成していったのか。 中国美術史の記述は日本からどのような影響を受けたのか。また、美術品はどこでどのように収蔵されてきたのか。美術作品をめぐる人的ネットワーク、海を越えて伝えられたコレクションの変遷にも着目し、多角的な視点から近代中国美術の実像に迫る。 詳細は下記リンクをご覧ください。 https://bensei.jp/index.php?main_page=product_book_info&products_id=101292 ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************