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2021.07.22
第6回アジア未来会議プレカンファランスへのお誘い
「ポストコロナ時代における国際関係―台湾から見るアジア」
新型コロナウイルスのパンデミックにより、第6回アジア未来会議(AFC#6)は延期され、2022年8月に台北市で開催することになりました。今年は下記の通りプレカンファランスをオンラインで開催します。日本語への同時通訳があり、一般視聴者はカメラもマイクもオフのZoomウェビナー形式ですので、どなたでもお気軽にご参加ください。
日時:2021年8月26日(木)
※下記は日本時間です
11:00~11:10:開会式
11:10~12:00:基調講演
12:00~13:00:シンポジウム
14:00~17:20:AFC優秀論文・台湾特別優秀論文の授与式と発表
17:20~17:30:閉会式
開催方式:オンライン(Zoomウェビナー)
使用言語:中国語・英語(基調講演とシンポジウムは中⇒英、中⇒日の同時通訳あり)
◇参加申込:
基調講演とシンポジウムに参加ご希望の方は、参加登録をお願いします。
午後の優秀論文発表は事前の参加登録不要です。
◇プログラム
【開会式】(日本時間11:00~11:10)
開会挨拶:明石康(アジア未来会議大会会長)
司会:林孟蓉(第6回アジア未来会議台湾実行委員長)
【第1部:基調講演】(日本時間11:10~12:00)
「アジアはどこに向かうのか?:疾病管理が政治に巻き込まれた時」
講師:呉玉山 中央研究院院士(国際関係、政治学)
[発表要旨]
COVID-19は、20世紀初頭のスペイン風邪以来、世界が遭遇した最も深刻な流行性疾病である。これを管理することは、あらゆる国家の利益であり、間違いなく「すべての者が安全になるまで誰も安全ではない」ということで、国際的な協力行動を刺激するはずだったと思われる。しかし、2020年初頭のパンデミック以来、我々は疾病の起源を巡る責任のなすり合いに加え、「ワクチン・ナショナリズム」や「ワクチン外交」などの一連の国際紛争を経験した。紛争によって協力関係が抑制される現象は、パンデミック前から存在した国際システムの中の新冷戦と関係している。新冷戦は国際間における大国の権力の移り変わりと経済危機に起因する右派ポピュリズムの台頭に根源がある。新冷戦の勢いは既に根深く、COVID-19のような共通の危機があっても、意見の相違を解決して協力をもたらすことができずに、紛争の渦に吸収されてしまっている。このような状況で、アジアがどこに向かうのか、ということを考えなければならないだろう。
【第2部:シンポジウム】(日本時間12:00~13:00)
「ポストコロナ時代における国際関係―台湾から見るアジア」
モデレーター:徐興慶(中国文化大学学長)
パネリスト:
松田康博(東京大学東洋文化研究所教授)
李明(政治大学国際事務学院兼任教授)
Kevin_Villanueva(フィリピン大学准教授/中興大学特任副研究員)
徐遵慈(中華経済研究院台湾東南アジア国家協会研究センター主任)
呉玉山(中央研究院院士)
【第3部:優秀論文発表】(日本時間14:00~17:20)
優秀論文賞授与式と論文発表(Zoom分科会形式)
AFC#6A優秀論文(20編)
台湾特別優秀論文(5編)
【閉会式】
閉会挨拶:今西淳子(アジア未来会議実行委員長)
第6回アジア未来会議(2022年8月、台北)へのお誘い
※第3部と閉会式は事前の参加登録不要です。
当日13:30(日本時間)以後、ここから直接ご参加ください。
中国語版はこちら
英語版はこちら
◇お問合せ:AFC事務局 afc@aisf.or.jp
テクニカルサポートが必要な場合にもご連絡ください。
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2019.07.04
2019年5月31日、国立台湾大学国際会議ホールで、第9回日台アジア未来フォーラム「帝国日本の知識とその植民地:台湾と朝鮮」が開催された。今回のフォーラムの趣旨は、漢文など東アジア諸国共有の伝統知識を踏まえながら、グローバルな視野で、台湾と朝鮮をめぐって、思想、歴史、文学の視角から、近代日本帝国における知識の在り方と台湾、朝鮮との関連、また日本帝国の諸植民地における人間の移動と交流を探究することであった。 (1)帝国日本の知識と台湾(一):思想史、(2)帝国日本の知識と台湾(二):歴史と文学、(3)帝国日本の知識と朝鮮、という3つのセッションに分けて帝国日本の知識とその植民地に関わる諸問題に焦点を当てて、9本の論文が発表された。
今回のフォーラムへの参加申込は約200名であったが、会議当日、200席の会場はほぼ満席状態が続いていた。1つのセッションだけに参加した人もいたので、延べ参加者数は250名を越えたであろう。この点でも今回のフォーラムは大成功で、参加者から好評を得、台湾の新聞に報道された。
まず開幕式では、中央研究院人文社会科学研究センターの蕭高彦主任、渥美国際交流財団関口グローバル研究会の今西淳子代表、交通大学社会文化研究所の劉紀蕙教授(藍弘岳代読)より共催者として挨拶があった。
次に、京都大学名誉教授の山室信一先生が「日本の帝国形成における学知と心性」というテーマで基調講演を行った。講演では、まず、アカデミックな学術と、統治を正当化・合法化するための学術知と、統治にかかわる実践のための技法知(techne)から成るものとして、「学知」という概念が紹介された。そして、口承文芸や祭祀・伝説などに現れる「心理的慣習」や真偽に拘わらず社会的に流布した「集合的心理」を示す表現という意味で「心性」という概念も提起された。これらの概念定義を踏まえ、山室教授はこうした意味の「学知」と日本帝国の形成と管理運営との関係について、統治技法の遷移と統治人材の周流など、諸事例を挙げながら、説明された。また、朝鮮については神功皇后、台湾については鄭成功や呉鳳の例を挙げながら、帝国形成の対象となる地域についての空間心性がいかに歴史的に蓄積されてきたかを述べられた。
山室先生の博学でスケールが大きな講演の内容に導かれて、論文発表と討論が3つのセッションに分けて展開された。
第1セッションでは、まず、交通大学社会文化研究所の藍弘岳教授が、「明治日本の自由主義と台湾統治論――福沢諭吉から竹越与三郎まで」というテーマで発表した。日欧比較と世代差異の観点から、福沢諭吉と竹越与三郎をめぐって、明治日本のリベラリストの台湾統治論について考察した。そして、大日本帝国の時間的な後進性と空間的なアジア性によって、明治リベラリストが提示した台湾統治政策は、意識的に大英帝国のやり方を模倣しながら、より防衛的で日本的な特色を持つ政策になっていたと論じた。特に、福沢と竹越には台湾という植民地に対する知識の差異が見られるが、2人ともヨーロッパの帝国主義国家のリベラストが持つ内外で違う基準で物を見る方法を学んだことを指摘した。
次に、首都大学東京の法学政治学研究科の河野有理教授が「田口卯吉の台湾論大和魂」というテーマで発表した。内田魯庵の小説『社会百面相』の台湾論を紹介しながら、魯庵の冷たい視線と同様に冷ややかな眼差しを注いでいた人物として、田口卯吉の台湾論を検討した。そして、台湾統治に対する田口の「消極主義」は、経済的な自由主義と「市場」メカニズムへの信頼に支えられたものだと論じ、植民地へのインフラ投資の拡大が政治権力の巨大化と腐敗につながっていくことに田口が鋭敏に反応したことを指摘した。
最後に、台湾大学歴史学科博士課程の陳偉智が「観察、風俗の測量と比較の政治――坪井正五郎、田代安定と伊能嘉矩の風俗測量学」というテーマの論文を発表した。陳氏は坪井正五郎が東京の町で使った風俗を観察する測量の技法がどのように田代安定と伊能嘉矩に継承され、台湾台北などの町で再利用されていたかを報告した。
第2セッションでは、まず京都大学大学院文学研究科の塩出浩之准教授が「近代初期の東アジアにおける新聞ネットワークと国際紛争」というテーマで発表した。西洋人の新聞発行活動に触発され、1870年前後には中国人と日本人もそれぞれ中国語・日本語による新聞の発行を始めたことを論じた。さらに、台湾出兵などの事件を通して、英語新聞・中国語新聞・日本語新聞の間で言語を越えた言論の流通が起こり、東アジア地域の言論空間が形成されたことによって、東アジアにおける近代が始まったことを詳細に検討した。
次に、台湾大学日本語学科の田世民准教授が「近代日本における葬式儀礼の変化と植民地台湾との交渉」というテーマで発表した。日本近世思想史が専門の田氏は、日本では古来仏教が日本人の葬儀と密接な関係にあることを説明した上で、漢学が19世紀に隆盛したことを背景に、近世以降儒教や神道がいかに仏葬を排除して儒葬や神葬を行ったのかを考察した。近代日本において神葬祭を実施するために火葬が禁止されたが、様々な理由で禁令が解除され、火葬が日本の基本的な葬法となった過程を検討した。さらに、台湾総督府の政策と台湾の葬祭儀礼との交渉、特に官吏たちが純粋な儒教儀礼ではない葬送習俗をどのように捉え、改善しようとしたかを考察した。
最後に、清華大学台湾文学研究所の柳書琴教授は「左翼文化の廊下における『台湾のバイロン』――上海時期の王白淵を論じて」というテーマで発表を行った。柳教授は上海における王白淵という植民地台湾の左翼知識人の宣伝工作をめぐって、台湾の左翼知識人はどのように東アジアにおいて日本語を通して台湾の植民地経験を宣伝しながら、中国、日本、朝鮮の知識人たちと連携して植民地統治に抵抗していたかを検討した。
第3セッションでは、まず東京大学大学院総合文化研究科の月脚達彦教授が「朝鮮の民族主義の形成と日本」というテーマで発表した。朴殷植という植民地朝鮮の知識人が韓国併合(1910年)の後に民族史学を打ち立てるに際し、どのようにして日本による朝鮮植民地支配を批判する論理を獲得したかを第一次世界大戦終結後の時代状況の中で検討した。また、朴殷植とともに民族史学の代表的人物と評価される申采浩が、「武」について朴殷植とは異なる態度を取っていたことを明らかにすることにより、日清・日露戦争後の帝国日本に対する朝鮮の民族主義の対応を多面的に検討した。
次に、ソウル大学日本研究所の趙寛子準教授が「東アジア体制変革において日清・日露戦争をどう見るか――『思想課題』としての歴史認識」というテーマで発表した。日清・日露戦争に対する同時代人のスタンスが朝鮮・清国・ロシアの古い秩序を改革するための権力闘争と関わっていたことに注目。これらの権力闘争の検討を通じて、朝鮮と日本の民族的対立、民権と国権の政治的対立、近代化における新旧対立、左翼と右翼の理念対立といった、かつての認識の枠組みを超えて、同時代の歴史的変化における相互の分裂と連鎖の様相を探り、さらに今日の歴史認識の衝突を超えられる新たな「思想課題」を探るべきだという提案をした。
最後に、文化大学韓国語学科の許怡齡准教授が「近代知識人朴殷植の儒教改革論と日本陽明学」というテーマで発表した。植民地朝鮮の知識人としての朴殷植をめぐって、朴殷植の経歴、儒教改革論と高瀨武次郎『王陽明詳伝』といった日本の陽明学著作との関連などを検討した。
閉幕式では、台湾大学日本研究センターの林立萍教授から閉会挨拶があり、その後に山室教授が発表された論文ひとつひとつにコメントをしてくださった。素晴らしい総括のおかげで、多くの参加者が最後まで残っていた。今回の日台アジア未来フォーラムは大成功であったと、多くの方々から高い評価をいただいた。
当日の写真
<藍弘岳(らん・こうがく)Lan_HongYueh>
台湾国立交通大学社会文化研究所教授。
近著に:『漢文圏における荻生徂徠――医学・兵学・儒学』(東京大学出版会、2017)、「會澤正志齋的歴史敘述及其思想」(『中央研究院歴史語言研究所集刊』第89本第1分、2018)など。
2019年7月4日配信
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2019.05.30
下記の通り第9回日台アジア未来フォーラムを台北市で開催します。参加ご希望の方は、下記よりご登録ください。
テーマ:「帝国日本の知識とその植民地:台湾と朝鮮」
日時:2019年5月31日(金)8:50~17:10
会場:国立台湾大学凝態センター国際会議ホール
参加申し込み:会議ホームページより直接登録してください。
詳細は会議ホームページをご覧ください。
〇フォーラムの趣旨
台湾と朝鮮はともに漢文圏に属し、日本帝国の植民地を経験した。こうした過去の歴史は現在の台湾と朝鮮半島の政治と文学に重要な影響を与えている。周知のように、近代日本は漢文など東アジア諸国共有の伝統知識を踏まえながら、西洋文明を吸収して、日清・日露戦争を経て、台湾と朝鮮などの植民地を保有する帝国主義国家を築いた。帝国日本はどのように近代西洋の知識を吸収したのか。帝国日本の政治と知識の欲望において、台湾と朝鮮はいかに認識されていたのか。帝国日本における知識の在り方はどのように植民地における知識の形成と連結していたのか。そして、日本帝国と諸植民地の間にはどのような人間的な交流があったのか。本フォーラムでは、こうした問題意識に基づき、グローバルな視野で、台湾と朝鮮をめぐって、思想史と文学史の視点から、近代日本帝国における知識の在り方と台湾、朝鮮との関連、また日本帝国の諸植民地における人間の移動と交流を探究する。
次のようなテーマを検討する。(1)帝国日本の知識と台湾A:思想史。(2)帝国日本の知識と台湾B:歴史と文学。(3)帝国日本の知識と朝鮮。
〇プログラム
【基調講演】
山室信一(京都大学名誉教授)
「日本の帝国形成における学知と心性」
【第1セッション】
藍弘岳(国立交通大学教授)
「明治日本の自由主義と台湾統治論:福沢諭吉から竹越与三郎まで」
河野有理(首都大学東京教授)
「田口卯吉と植民地」
陳偉智(国立台湾大学博士課程)
「観察、風俗の測量と比較の政治:坪井正五郎、田代安定と伊能嘉矩の風俗測量学」
【第2セッション】
塩出浩之(京都大学准教授)
「近代初期の東アジアにおける新聞ネットワークと国際紛争」
田世民(国立台湾大学准教授)
「近代日本における葬式儀礼の変化と植民地台湾との交渉」
柳書琴(国立清華大学教授)
「祖国に留学する:左翼文化廊下における台湾の文学青年(1920-1937)」
【第3セッション】
月脚達彦(東京大学教授)
「朝鮮の民族主義の形成と日本」
趙寛子(ソウル大学准教授)
「東アジア体制変革において日清・日露戦争をどう見るか:「思想課題」としての歴史認識」
許怡齡(文化大学准教授)
「近代知識人朴殷植の儒教改革論と日本陽明学」
【総括】
林立萍(台湾大学日本研究センター主任)
山室信一(京都大学名誉教授)
〇日台アジア未来フォーラムとは
日台アジア未来フォーラムは、台湾在住のSGRAメンバーが中心となって企画し、2011年より毎年1回台湾の大学と共同で実施している。過去のフォーラムは下記の通り。
第1回「国際日本学研究の最前線に向けて:流行・ことば・物語の力」
2011年5月27日 於:国立台湾大学文学部講堂
第2回「東アジア企業法制の現状とグローバル化の影響」
2012年5月19日 於:国立台湾大学法律学院霖澤館
第3回「近代日本政治思想の展開と東アジアのナショナリズム」
2013年5月31日 於:国立台湾大学法律学院霖澤館
第4回「東アジアにおけるトランスナショナルな文化の伝播・交流―文学・思想・言語」
2014年6月13日~14日 於:国立台湾大学文学部講堂および元智大学
第5回「日本研究から見た日台交流120 年」
2015年5月8日 於:国立台湾大学文学部講堂
第6回「東アジアにおける知の交流―越境、記憶、共生―」
2016年5月21日 於:文藻外語大学至善楼
第7回「台・日・韓における重要法制度の比較─憲法と民法を中心として」
2017年5月20日 於:国立台北大学台北キャンパス
第8回「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性
―コミュニケーションツール として共有・共感する映像文化論から
学際的なメディアコンテンツ学の構築に向けてー」
2018年5月26日~27日 於:東呉大学外双渓キャンパス
第9回「帝国日本の知識とその植民地―台湾と朝鮮」
2019年5月31日 於:国立台湾大学凝態センター国際会議ホール
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2018.08.16
今回の「台日動漫畫文化国際学術研討会」はとても新鮮な体験でした。「動漫畫」とは、「動画」(アニメーション)と「漫画」(マンガ)の総称です。日本では、アニメーションとマンガの「合併」した名詞がないように、アニメーションとマンガは学問の世界でもそれぞれのシステムがあって、独自の学会があります。従って、今回の台湾で開催された「動漫畫文化国際学術研討会」のような両方とも取り扱うイベントは、日本では存在していないのです。また、初日に漫画家の弘兼憲史先生が基調講演をされ、シンポジウムには台湾でアニメーションを実際に制作している黄瀛洲先生も列席されました。これも日本では珍しい「局面」と言えます。日本の研究会では、原作者とクリエイターを学会に誘うことはほとんどなく、研究をする際にも、「作者と距離を置かなければ客観的な結論を出しにくい」という考え方が根強いです。確かに、小説、美術などの伝統文化の研究領域においては、分野の分類が細かく、年代が離れているから作者と接触できない場合が多いのです。
しかし、アニメーション研究は果して伝統文化と同様に研究すべきでしょうか。マンガは美術研究のシステムが活用できますが、アニメーションは映画に近いです。劇場版アニメーションと芸術性の高い短編アニメーションは映画理論の適用性が高いと言えますが、「アニメ」という言葉が成り立つ原因である日本独特のテレビシリーズはまた別格です。「製作委員会」制度を中心に行われた「工業生産」の流れの中、マンガ原作と原作を運営する伝統出版社の力が極めて強いため、アニメーション研究を語る際には(特に「アニメ」が対象になるとき)、マンガと繋いでみるべきだと容易に考えられます。とはいえ、日本ではマンガとアニメの境界がはっきりして、アニメーション学会とマンガ学会のメンバーが大分重なっているにもかかわらず、別々のシステムで議論を展開しています。無論、深くディスカッションをするため、各自のシステムが必要ですが、こういう「動漫」を一緒に考える場も必要ではないかと考えます。
「現場」の方を誘うもう一つの利点は、業界の「イマ(現状)」を把握できることです。研究者だけだと、アニメやマンガを語る時、具体的な作品、或いは、ある歴史段階のトレンドに注目する場合が多いです。映画学か映像学の視点から出発した作品論、美学の視点から出発した考察など興味深いですが、現場の方から見ると、必要とする研究方向はまだまだ「物足りない」状態です。今回実際に台湾アニメーションと一緒に成長してきた黄瀛洲先生のご発表によれば、台湾アニメーションの現状はとても深刻になっています。資金の面でも、クリエイターの育成の面でも、さらにその前に、台湾人自身のアニメーションに対する認識が「アニメーションは日本とアメリカのもので、なぜわざわざ台湾自身のアニメーションを作る必要があるのか」という考え方であり、台湾アニメーションを発展させようとする努力家が、(逆に)一般観客からもっと応援を得たい状態であるということは初耳でした。
これは一般的学会では接触できない現場の人しか感じない現実であり、研究するモチベーションが左右されるぐらい衝撃的でした。一方、大陸のほうは全く逆の状況で産業振興政策が多く出されており、アニメーション制作によって起業したスタートアップ会社も新作を絶えず世に送りだしています。なぜ上記のような考え方が台湾にあるのか、台湾アニメーションの発展史はあまり注目されないが、本当に1960年代までは空白だったのか、このままでは台湾アニメーションの未来はどうなるのか等々、この現実から様々な研究方向が考えられます。現場の方との接触は、研究者にとって貴重で重要なことだと深く感じました。
日本のアニメーションとマンガはこの10年「Cool_Japan」文化政策の要として重視されてきましたが、すでにその前から日本のアニメーションとマンガは一緒に中国大陸と台湾地域に輸出されていました。実際、中国大陸と台湾地域では、「アニメーション」と「マンガ」が一体視される場合がほとんどです。このような背景のもとで今回の「異色」な学会が開催されたのですが、今後もまたこのような場ができたら嬉しいです。
<陳龑(ちん・えん)Chen Yan>
北京生まれ。2010年北京大学ジャーナリズムとコミュニケーション学部卒業。大学1年生からブログで大学生活を描いたイラストエッセイを連載後、単著として出版し、人気を博して受賞多数。在学中、イラストレーター、モデル、ライター、コスプレイヤーとして活動し、卒業後の2010年に来日。2013年東京大学大学院総合文化研究科にて修士号取得、現在同博士課程に在籍中。前日本学術振興会特別研究員(DC2)。研究の傍ら、2012~2014年の3年間、朝日新聞社国際本部中国語チームでコラムを執筆し、中国語圏向けに日本アニメ・マンガ文化に関する情報を発信。また、日中アニメーション交流史をテーマとしたドキュメンタリーシリーズを中国天津テレビ局とコラボして制作。現在、アニメ史研究者・マルチクリエーターとして各種中国メディアで活動しながら、日中合作コンテンツを求めている中国企業の顧問を務めている。
2018年8月16日配信
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2018.08.16
張桂娥「第8回日台アジア未来フォーラム報告<その1>」
張桂娥「第8回日台アジア未来フォーラム報告<その2>」
5月26日早朝から幕を開けた第8回日台アジア未来フォーラムは、5本の特別講演会及び1本のパネルディスカッションという企画プログラムに続き、2度目のティータイムを挟んで、午後2時20分からいよいよ最終選考に合格した応募論文の発表セッションに移った。16本の応募論文に加えて、台湾、ノルウェー出身の学者による招待発表論文2本も含み、2つのセッションをそれぞれ3会場で構成し、多角的な視点から深い議論が展開された。
日本語セッションのA1会場では、静宜大学日本語文学科副教授兼学科李偉煌主任の司会・進行のもとで、翻訳と異文化コミュニケーション能力を活かす言語学・表現論からACG文化の伝播にみる変容・変化にアプローチした。台湾大学言語学大学院呂佳蓉助理教授による「ACG文化による言語の伝播と受容」では、事例研究を踏まえて、サブカルチャーからの借用語を通して日本語から中国語への影響の一端を明らかにした。「文字の違いに見るマンガ翻訳の不可能性」という題で発表された京都精華大学専任講師住田哲郎先生は、起点言語である日本語と目標言語との文字の違いに着目し、翻訳の不可能性について考察を行うとともに、日本語教育分野への応用についても論じた。一橋大学社会学研究科所属のソンヤ・デール(Sonja_DALE)先生は、制作手法に焦点を当て、「2Dのような3D―日本のアニメ業界におけるCG業界へのシフト―」について考察した上、アニメーターの働き方とアニメーションの制作へのシフトの兆しがみられると結論付けた。
後続の日本語セッションのA2会場では、招待発表者の大役を果たしたソンヤ・デール先生の司会・進行のもとで、台湾の若者世代に絶大な人気を誇るマンガ・アニメ作品の魅力をマンガ・アニメのメディアミックス化・マルチユース化の視点からアプローチした3本の論文発表が順調に進められた。文藻外語大学日本語文系小高裕次先生は、「ライトノベルのアニメ化に際する諸要素の増減について―『涼宮ハルヒの憂鬱』を例に―」という論題で、ライトノベルの線状性とアニメの多重性および音声の有標性がアニメ化の際の諸要素の増減に大きくかかわっているという結論を得たという。
「漫画『ONEPIECE』の組織論 海賊団「麦わらの一味」の性格」について論じた政治大学日本語文学科永井隆之助理教授は、相互の信頼関係に基づく対等かつフラットな組織と位置づけられている「麦わらの一味」の組織の在り方は、対等な人格に基づく友情を結合の紐帯とする、理想の君臣関係と想定できると指摘した。本セッションを締めくくる最後の論文発表「日本のマンガにみるプロフェッショナルの態度と行動特性-料理マンガを中心に-」では、東呉大学日本語文学科林蔚榕助理教授が、料理マンガのストーリーを3つの類型に分類し、ストーリーの展開パターンによって引き出されるプロフェッショナルの特質について論究した。
B1会場では、輔仁大学日本語文学科楊錦昌教授の司会・進行のもとで、主に中華文化圏で注目されてきたマンガ・アニメ文化の特殊な事情・背景及び展開について議論した。まずは、高雄科技大学文化創意産業学科徐錦成副教授による「野球とマンガの親和性―中華職業棒球大聯盟の二度にわたる野球マンガへの干渉を中心に―」であったが、台湾における野球漫画のブームは、プロ野球の最盛期でもある1990-1996にピークを迎え、それ以降下火になり、2014-2015年に少し回復の兆しが見えながらも一瞬で消えてしまう現状を振り返った。
「国境を超える連携―中国初期アニメーション史からみたイマドキのアニメーション生産トレンド」について考察した東京大学大学院総合文化研究科博士課程在学の陳龑氏は、中国初期アニメーションの生産が辿ってきた道を振り返り、現在のアニメーション界の現状を深く理解することで、アニメーション発展の突破口を探る必要があると主張した。一方、京都精華大学マンガ研究科博士課程在学の李岩楓氏は、「オノマトペ─日本マンガにおける図面表現及び中国マンガへの応用の可能性」というテーマで、描き文字・図面記号・図面表現・音喩などのキーワードを中心に、中国マンガにおけるオノマトペの応用現状・問題点を分析し、様々な可能性について言及した。
後続のB2会場では、台湾大学日本研究センター林立萍主任の司会・進行のもとで、マンガ・アニメと物語論、マンガ・アニメ文化と社会学の牽連性や日本語教育への活用など、マンガ・アニメ研究分野の幅広さによってさらなる可能性を示した。まずは、中国文化大学日本語学科沈美雪副教授による「日本のマンガ・アニメにおける「時間遡行」作品の構造分析―死と再生、ループ、選択を手掛かりに―」であるが、様々なアニメ作品を視野に入れ、時間遡行ものの構造や表象、メッセージ性を考察した。
続く世新大学日本語学科林曉淳助理教授は、「『高橋留美子劇場』から見る日本の家族像」を論題に据え、マンガという親しみやすい素材を通しての日本理解のひとつの試みとして、『高橋留美子劇場』に見る夫婦、父親、母親などの家族像を探った。最後の招待発表者である静宜大学日本語文学科李偉煌主任は、日本語教育者として長年にわたって日本のアニメを導入した授業活動の記録と照合した上、「日本のアニメを取り入れたランゲージエクスチェンジ授業の試み」について省察を加えた。年々変化する学生のモチベーションに合わせて新しい教授法を積極的に実施した成果を公開した。
新進気鋭の若手研究者が熱く語り合うC1会場では、台東大学大学院児童文学研究科游珮芸学科長を座長に迎え、マンガ・リテラシー形成の理論と実践、マンガ・アニメ作品にみる視覚芸術論・哲学論など、専門性の高い難しい内容の発表が行なわれた。識御者知識行銷創立者黄璽宇氏による「個人の存在と集団の存在―トマス・アクイナス思想から映画『聲の形』における生きづらさを論じる―」は、個人と集団の立場から「いじめる側」と「いじめられる側」の論理・心理の深層に迫り、哲学思想からのアプローチを試みた。
「デバイス変奏曲:縦スクロール漫画の原理と趨勢」について分析した中原大学教養教育センター周文鵬助理教授は、縦スクロール漫画の原理を生かし爆発的に普及した「韓国の漫画文化」に注目し、世界的に展開する可能性や直面する問題点などを指摘した上、慎重な意見を求めるよう呼びかけた。東呉大学中国語学科博士課程在学の田昊氏は、「浦沢直樹漫画芸術におけるフィルムセンスの創造力について」論証した。撮影術の視覚効果を模倣し、フィルムセンスのマンガ作りの極意を探ってきた浦沢直樹の作品を通じ、マンガという叙事芸術の潜在力や将来像を展望した。
同じく新進気鋭の若手研究者でにぎわうC2会場では、台大智活センター余曜成専門研究員を座長に迎え、多面的な切り口から、マンガ・アニメ作品に見られるコンテクスト・キャラクター設定の特徴などを紐解いた研究発表が展開された。まずは、華梵大学哲学学科所属の周惠玲助理教授は、「ストーリーマンガと児童文学の競合関係―『不思議の国のアリス』を元にしたマンガを例に―」において、マルチメディアの視点から異なるメディアの競合関係と競合の相互依存的関係を分析した上、「読書離れ」「活字離れ」で危ぶまれる児童文学の寿命が少しでも延ばされる可能性があると解明した。
東京大学東洋文化大学院客員研究員呉昀融氏は、「『NARUTO-ナルト-』から核武装論を再検討する」において、潜在的な核兵器能力を保持することや、核武装を行うかどうか意思決定権の行使について十分な議論を行うべきだと提言した。本セッション最後の発表者である政治大学中国語学科博士課程在学の詹宜穎様は、「混血の葛藤、その狂気と輝き―『東京喰種トーキョーグール』から見た混血種のアイデンティティーにおける調和と超越―」では、主人公である金木研の混血種というアイデンティティーの問題を鋭く問い直し、主人公が混血の葛藤と狂気を乗り越えて大きく成長したプロセスを明らかにした。
以上、第8回日台アジア未来フォーラム後半に組み込まれた、自由論題研究論文発表の各セッションのテーマとして、マンガの収集・保存と利用、翻訳と異文化コミュニケーション、マンガ・リテラシー形成の理論と実践、マンガ・アニメと物語論、視覚芸術論、映像論、マンガ・アニメのメディアミックス化・マルチユース化、マンガ・アニメ文化と経済学・社会学・心理学・哲学など、幅広いテーマ・議題の展開を魅せられた開催成果であった。
盛りだくさんのプログラムにもかかわらず、各会場の司会・進行役の適確な時間管理のもとで、予定通りに盛大な閉会式を迎えることができた。登壇した東呉大学図書館林聰敏館長より、参加されたすべての専門家・学者・研究者・協力者・スタッフに対して謝辞が述べられ、参加者全員が今回のフォーラムに参加したことで、東アジア諸国におけるマンガ・アニメ研究の現状と今後の発展についての理解を深めることができたことを今後のマンガ・アニメ研究に活かしたいとし、フォーラムは無事に閉会した。
【総括】
第8回日台アジア未来フォーラムでは、グローバル化したマンガ・アニメ研究のダイナミズムを、研究者・参加者たちの多様な立場と学際的なアプローチによって読み解いた上、新たな可能性を見いだすという目標を達成した。何より、将来有望な若い研究者たちに研究成果を発表する場を提供することにより、日台関係・日台交流、また東アジア地域内の相互交流のさらなる深まりへの理解促進に貢献したと考える。学生や一般参加者たちにも東アジアにおけるサブカルチャー文化の受容現状を理解してもらい、また異文化を越えた視野を抱き、国際交流のネットワークを築きあげてもらえるように、確固たるモチベーションを与えたと確信している。
さらに進んで、よりグローバル的視野から見ても、東アジア研究の広がりの一助となる「日台アジア未来フォーラム」により、歴史紛争・地域紛争が東アジアで激化するなか、異文化間の交流・対話による相互理解・文化の共感・共有を目指す国際日本学研究の最前線へ向けて、世界一日本が好きな国だといわれる台湾から発信(あるいは発進)するという重要な意義も持つと大いに期待できよう。
【懇親会】
同日夜、東呉大学市内キャンパスの近くにある台北ガーデンホテルの宴会会場にて懇親会が開催された。参加者60名を超える大盛況で、終始リラックスしたモードで中華グルメを堪能しながら歓談した。懇親会の冒頭に、弘兼憲史先生台湾特別ご講演の実現をかなえてくださった上、海外からわざわざ台湾まで足を運ばれ応援に駆けつけてくださったスペシャル・ゲスト大石修一様から、乾杯の音頭を頂戴した。司会を務めた陳姿菁先生(開南大学副教授)は、見事なトークで堂々と司会をこなした上、参加者たちの笑いを誘う抜群のユーモアのセンスで会場の雰囲気を一段と盛り上げた。
宴もたけなわ、中締めのご挨拶に、海外から駆けつけてくださったスペシャル・ゲスト曽我隆一郎様、小林栄様、石田さやか様一同より、励ましのお言葉を受け賜った。その後、第1回日台アジア未来フォーラムから応援し続けてくださる中鹿営造(股)の小野寺董事長さまより、心温まるお言葉を頂戴し、実に感無量であった。なかでも特記すべきなのは、懇親会場に駆けつけてくれた世界のラクーンメンバーは、なんと総勢11名の大所帯であったこと!!
最後に、フォーラムの企画者である私が皆様に感謝の言葉を申し上げ、来年の開催責任を藍弘岳先生にバトンタッチした後、2日間のプログラムは円満に終了した。最後に、ケミカルグラウト株式会社(日商良基注入営造)粟根総経理様による恒例の3本締めが行なわれ、盛会の内に懇親会は幕を閉じた。
<張 桂娥(ちょう・けいが)Chang_Kuei-E>
台湾花蓮出身、台北在住。2008年に東京学芸大学連合学校教育学研究科より博士号(教育学)取得。専門分野は児童文学、日本語教育、翻訳論。現在、東呉大学日本語学科副教授。授業と研究の傍ら、日本児童文学作品の翻訳出版にも取り組んでいる。SGRA会員。
2018年8月16日配信
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2018.08.09
前日(5月25日)400名を越える観客でにぎわったフォーラム前夜祭【神級名師 弘兼憲史先生 特別講演会】の余韻に浸る間もなく、26日早朝8時半、第8回日台アジア未来フォーラムの開会式は東呉大学普仁堂大講堂で執り行われた。東呉大学董保城副学長と渥美国際交流財団今西淳子常務理事に続き、日本台湾交流協会台北事務所広報文化室の浅田雅子主任、台湾日本人会日台交流部会の高橋伸一部会長から開会のご挨拶をいただいた。
【午前の部】では、日本・韓国・中国から招致した研究者による3つの基調講演会に続き、フォーラムの主題である「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性―コミュニケーションツールとして共有・共感する映像文化論から学際的なメディアコンテンツ学の構築に向けて―」をテーマに、6名のパネリストによるパネルディスカッションが約1時間にわたって開催された。昼食を挟んで1時半から開始した【午後の部】においては、台湾を代表するマンガ研究者2名による講演会がパラレルに進行した後、3会場に分かれて合計6セッションで18本の研究発表が行なわれた。総勢200名近くの方々に参加していただく盛会であった。
最初の基調講演は、北九州市漫画ミュージアム専門研究員の表智之先生が、日本における「研究者のネットワーク化とマンガ研究の進展-学会・地域・ミュージアム-」というテーマでお話しくださった。2001年に「日本マンガ学会」、2006年に「京都国際マンガミュージアム」、そして2012年に「北九州市漫画ミュージアム」が設立されたことに触れ、「マンガ学会は、多種多様な学術分野が合流する刺激的な場となった。また、マンガ研究に欠くべからざる基礎資料である雑誌や単行本をミュージアムという場に集積し、展覧会や講演会などの場でその学術的意義を広めてきた結果、マンガ資料を一種の文化財として保存する意義が社会に共有された。
現在では政府機関である文化庁をはじめ、福岡県北九州市や秋田県横手市などいくつかの地方自治体がマンガ資料の恒久的な保存活動を進めている」という現状を指摘した上、ここ20年ほどの間に日本で起きたマンガ研究環境の変化や、研究者と研究資料のネットワーク構築及び研究方法の進展について整理してくださった。その結果として得られた新たなマンガ研究の視座に基づき、地域の視点でマンガを考える意味について分析した上、膨大なマンガの「1次資料」を連携・分担して収集し保存するマンガミュージアムの役割及び資料ネットワークの構築、そして、日本を含む世界各国の評論家たちの研究成果の継承の重要性を強調した。
次の基調講演は、韓国で出版企画会社コミックポップ・エンターテインメント代表を務める傍ら、『韓国声優の初期歴史』など、韓国・日本でもマンガ関連研究の書籍・コラムの執筆、翻訳活動など精力的に携わっておられる宣政佑氏が「韓国ではアジア漫画をどう見てきたか(Asian_comics_in_Korea)」をテーマに、韓国におけるアジア漫画の受け入れの歴史を振り返ってくださった。
氏は、「アメリカンコミックス(スーパーヒーロー物・グラフィックノベル)、日本漫画(少年漫画・少女漫画・青年漫画)、BD(バンド・デシネ/bande_dessinee:主にフランス語で発表される、フランスとベルギー中心のヨーロッパ漫画)は勿論として、台湾・香港など中国系の漫画も多数翻訳出版」されている事実を踏まえた上、台湾文化の韓国への輸入の背景、特に人気のある台湾出身の漫画家蔡志忠、林政德、游素蘭、高永、周顕宗、陳某らの作品を詳しく紹介してくださった。さらに、ウェブトゥーン・電子書籍時代以後、韓国におけるアジア漫画受容の変化、特に増えつつある中国漫画の存在感についても興味深く語ってくださった。
3本目の基調講演は、日本近現代文学、日本大衆文化、東アジアマンガ・アニメーション史など、様々な分野において、膨大な研究業績を挙げられた中国北京外国語大学北京日本学研究センターの秦剛教授による「『白蛇伝』における『中国』表象と『東洋』幻想」であった。1958年10月に公開された東映動画制作の『白蛇伝』が戦後日本の最初の長編アニメーションであるが、なぜ中国の民間伝説を題材に選んだのか、またその歴史的なアニメーション作品において、どのような中国のイメージを表象しえたのかについて、細かい画面構成に注目しながら制作者側の真意を紐解いた秦剛教授は、『白蛇伝』のビジュアル的イメージの歴史的な連続性、および映画のナラティブに反映された植民地主義的意識の残影を浮き彫りにした。
「敗戦によって終焉した旧植民地支配時代へのノスタルジーを匂わせながら、植民地主義的な他者支配の再演という欲望が輸出商品としての『白蛇伝』制作の商業的な企図にも内在していた」と結んだ秦剛教授の結論に、かつて植民地支配の被害、搾取に虐げられていた台湾出身者として、「たしかにその通り」と頷かずにいられない共感を得た。
続くパネルディスカッションでは、渥美国際交流財団の今西淳子常務理事を司会に迎え、本フォーラムの主眼に据えている「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性」というテーマをめぐって、台湾、日本、中国、そして韓国という多文化的視点から議論を掘り下げていった。
マンガ学会・マンガミュージアムの設立に積極的に関与・貢献してきた表智之先生は、(1)日本のマンガ研究は日本以外の研究成果に関心を持っているか、(2)日本以外の地域からの日本マンガ研究者の受け入れ態勢、(3)グローバルな視点からのマンガ研究の可能性について、グローバル化された日本マンガ学の視点から論じた上、「表現論をしっかりと踏まえてのグローバルな対話が、これからは求められていく」と力強く締めくくった。
宣政佑氏は、漫画・アニメの記事やコラムなどを書いてきたライターとして、また主に漫画・アニメ関連の日本の批評書や研究書を翻訳してきた翻訳家として、そして書籍などの国際契約の仲介や展示・各種事業の企画を行ってきた身として、その立場から「漫画・アニメ研究」というもの、グローバルな観点を持つ漫画・アニメ研究の必要性について論じ、たとえ限界はあるにしても、国際的な交流やシンポジウムには意味があるという考え方を示した。
鋭い批判精神で東アジアにおけるマンガ・アニメーション史を凝視してきた秦剛教授は、西遊記でもっとも話題性に富んだキャラクター鉄扇公主を主人公に仕上げた、中国初の長編アニメーション映画「西遊記 鉄扇公主の巻(原題:鉄扇公主)」の越境史に注目しながら、マンガ・アニメ研究の新地平への展望よりも、歴史あるアニメーションの芸術性とその文化的価値を回顧・再考することの重要性を力説した。記憶に葬られそうな過去の漫画・動画を今一度見直すことこそ、グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性を切り拓く決め手ではないかと訴えた。
台湾U-ACG発起人、旭メディアテクノロジー会社創立者としてマンガ・アニメの普及・発展の最前線をけん引する傍ら、清華大学でも非常勤講師として「御宅学」講座の開設に尽力してきた梁世佑先生は、台灣におけるACG(アニメ・コミック・ゲーム)の概念の移り変わりを振り返った上、グローバルなマンガ・アニメマーケティングの戦略的コンセプトが確立された時代において、台湾オリジナルマンガ・アニメ作品にどんな特色を持たせるべきか、どういった位置づけを狙うべきかについて論じた。パラダイス鎖国化・ガラパゴス化されていく傾向の強い日本業界と手を組んで需要が高まる中国市場に挑むべきだと提言した。
一方、台湾で初めてのアニメーション評論団体「Shuffle_Alliance」発起人で、東海大学に続き国立交通大学でも「御宅学」講座を創設して開講以来圧倒的人気を誇る講師であるJOJO先生こと黄瀛洲先生は、マンガ・アニメ研究者からマンガ・アニメ作品制作会社「石破天驚行銷(股)」CEOに転身した実体験に基づき、台湾におけるマンガ・アニメ関連イベントの企画開催の現状及び困難点について言及した上、台湾オリジナルマンガ・アニメ・ゲーム作品制作現場が直面する課題を展望した。
最後に登壇したパネリスト住田哲郎先生は、韓・台・日の3か国で日本語教育に携ってきた経験を活かし、言語研究者・日本語教師として、マンガ・アニメ研究の可能性について貴重な意見を述べられた。特に、「マンガ・アニメがいかに社会貢献を果たせるか(いかに有効活用できるのか)」という切実な課題に、日本語教育への活用、情報メディアとしての活用、マンガ学・アニメ学の確立と学校教育への活用といった3つの示唆に富んだ解決策を提示された。
パネリスト6名の発言がそれぞれ時間内におさまるよう、スムーズな進行を心がけられた司会者今西淳子常務理事の適宜な時間管理の下で、2本目の特別講演会の司会者邱若山教授の感想・問題提起を筆頭に活発な議論が交わされた。本フォーラムのメインテーマ「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性」をめぐって、東アジア諸国の有識者を招いた約1時間にわたるパネルディスカッションは滞りなく終了した。
台湾グルメの名物弁当が振る舞われたランチタイムを挟んで、午後1時半からは、台湾の大学に大フィーバーを巻き起こした「御宅学」講座開設のパイオニア、梁世佑先生と黄瀛洲先生の両氏による特別講演会であった。プログラム時間の制限でパラレル進行形式を余儀なくされるため、台湾「オタク学・オタク研究」史上最高のゴージャスな競演といわれるほど、本フォーラムでも注目度の高い目玉企画であった。
「日本のアニメから見る国家と社会の構造―人型ロボット兵器を例に―」という題目で講演された梁世佑先生は、台湾のマンガ・アニメファンの目線から、『鉄腕アトム』『鉄人28号』『マジンガーZ』など、人型ロボットを兵器に見立てた日本で有名なアニメ作品を例に、日本の映像文化やエンターテインメント作品にみられる日本人のアイデンティティーやセルフイメージの形成のプロセスに迫ろうと試みた。さらに、芸術家岡本太郎が手がけた「太陽の塔」の無機質な顔に表象された日本の美意識に着眼し、日本のアニメや特撮映画の技術を最大限に盛り込んだアメリカ発エンターテインメント映画『パシフィック・リム』(Pacific_Rim)や、『機動戦士ガンダム』『宇宙戦艦ヤマト』『沈黙の艦隊』などロボット兵器や巨大な武器を主役に据えたアニメ作品を取り上げ、「大和文化」の本質を再発見・再認識しようとした日本アニメから見る国家と社会の構造を解き明かそうとした。
一方、自ら手掛けたアニメ映画の実体験を踏まえて、「未来を見据えた台湾アニメの発展―アニメ映画『重甲機神BARYON』を例に」というテーマで講演された黄瀛洲先生は、1950年代に欧米や日本のプロダクションの下請けからスタートした台湾のアニメ産業の歴史を振り返った上、台湾アニメ産業が直面した問題点を、国際・政治・経済・社会・教育など各方面から鋭く分析した上、様々な課題を指摘した。ただ決して悲観的に捉える必要はなく、常に第一線で活躍するパイオニアならではの洞察力を発揮して、21世紀を迎えた台湾アニメ産業が挑戦すべき分野、目指すべき方向及び未来を切り拓く新たな可能性について、広範多岐にわたる活路を見いだした。現在、山積する課題の解決に向けて、気鋭の若手たちを率いて制作している台湾初のオリジナルアニメ映画『重甲機神BARYON』の取り組みを手掛かりに、発展的・創造的な活動を積極的に展開していこうと、並々ならぬ意欲を示した姿勢が印象深いものであった。
台湾におけるマンガ・アニメ文化の進化やオタク文化の深化、オタク学の研究に人生をかけてきたお二人の真剣な眼差しと未来に対する意欲に満ちる講演は今後への期待感が溢れ、大変説得力があった。日本から受け継いで台湾でさらなる大きなソフトパワーに成長していくマンガ・アニメの価値と意義が改めて認識された、非常に充実した講演内容であった。
午後2時20分からの論文発表シンポジウムでは、3会場でそれぞれ2つのセッションを構成して、台湾、日本、中国、ノルウェー出身の学者たちを招き、多角的な視点から深い議論が展開された。合計18本の論文発表が行われたが、詳細は引き続き報告する。(つづく)
当日の写真
<張 桂娥(ちょう・けいが)Chang_Kuei-E>
台湾花蓮出身、台北在住。2008年に東京学芸大学連合学校教育学研究科より博士号(教育学)取得。専門分野は児童文学、日本語教育、翻訳論。現在、東呉大学日本語学科副教授。授業と研究の傍ら、日本児童文学作品の翻訳出版にも取り組んでいる。SGRA会員。
2018年8月9日配信
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2018.08.02
2011年5月から8年連続の開催となる「日台アジア未来フォーラム」とは、「渥美国際交流財団関口グローバル研究会」(SGRA)主催の国際研究交流会議であり、台湾ラクーン(渥美財団の支援を受けた元奨学生)が中心となって活動している知日派外国人研究者の研究ネットワークである。本フォーラムでは、主にアジアにおける言語、文化、文学、教育、法律、歴史、社会、地域交流などの議題を取り上げ、若手研究者の育成を通じて、日台の学術交流を促進し、日本研究の深化を目的とすると同時に、若者が夢と希望を持てるアジアの未来を考えることを、その設立の趣旨としている。
グローバル化したマンガ・アニメ文化は、視覚芸術を極めた魅惑的なワールドを築き、世界中の若者を虜にした。非日常な世界に魅了された視聴者にとって、マンガ・アニメは、まさに自己と他者ないし世界を理解するための媒介である。サブカルチャーだったマンガ・アニメ文化は、一国の経済成長に大きな影響を与えるメインカルチャーに転換していき、我々現代人のライフスタイルをダイナミックに変えるソフトパワーの源でもある。
台湾では近年、マンガを通して各国の文化・社会への理解を深める教養講座が相次いで開設されている。東呉大学日本語学科は、コミックス蔵書を楽しむ「マンガ読書エリア」を開設した東呉大学図書館と協力して、マンガ・アニメ文化の可能性を探究する学術シンポジウムを開催してきた。他大学に先駆けて、マンガ・アニメ文化研究の最前線に立って、アカデミックな研究の未来を見据え、その可能性をさらに切り拓こうとしている。
第8回日台アジア未来フォーラム「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性」は、世界の若者を魅了したマンガ・アニメのソフトパワーの真骨頂を解明しようとする台湾東呉大学日本語学科と同大学図書館との共同主催のもとで、2018年5月25日(特別講演会)、26日(国際シンポジウム)の2日間にわたって、台北市の東呉大学で開催された。
本フォーラムでは、世界規模・地球規模に広がったマンガ・アニメ文化の魅力に着目し、「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性―コミュニケーションツールとして共有・共感する映像文化論から学際的なメディアコンテンツ学の構築に向けて―」というテーマを中心に議論を展開した。25日午後の特別講演会を前夜祭に、26日の国際シンポジウム【午前の部】招待講演会×3講演、パネルディスカッション×1会場、【午後の部】招待講演会×2講演、3会場×2セッション(招待研究発表×2本+公募研究発表×16本)など、多様なプログラムを通して、情報の共有及び知的交流の推進を目的とした。
また、文化を発信するコミュニケーションツールとして共感・同調・共有されてきたマンガ・アニメが、いかに次世代の地球市民の手によって共創するコンテンツ産業へ進化していくかのプロセスや、それを実現させるあらゆる創発の原理を創造的に思考する場を提供し、あらゆる参加者による活発な議論・討議・ディスカッション・意見交換が繰り広げられるという、市民向けフォーラム的効果も期待している。
今回は、共同主催する3機関団体の他に、中華民国(台湾)教育部、科技部、外交部、中華民国三三企業交流会、台日商務交流協進会をはじめ、日本の(独)国際交流基金、(公財)日本台湾交流協会など、台湾と日本の公的機関から甚大なる支援をいただいた。また、第1回フォーラムから主要賛助企業である中鹿営造(股)を筆頭に、台湾日本人会の呼びかけを通して、ケミカルグラウト(株)(日商良基注入営造)、日商全日本空輸(股)台北支店、台灣住友商事(股)、台灣本田汽車(股)、台灣三菱電機(股)、みずほ銀行台北支店より貴重な協賛を頂いたお蔭で盛大に開催ができた。この場をお借りして改めて深謝の辞を記させていただく。
1日目の5月25日午後は、シンポジウムの前夜祭として設けた漫画家特別講演会であるが、一年間にわたる関係者の努力が実り、また幸運にも講談社より全面的なバックアップを受けたお蔭で、『島耕作』シリーズが代表作である漫画家――当代日本マンガ界きっての「神級名師」である弘兼憲史先生をお招きすることが実現できた。40年以上に渡って日本企業文化の神髄やサラリーマンの心得を伝授してこられる弘兼憲史先生には、「漫画から学んだこと」をテーマに、漫画の創作や企業の取材を通して身につけたことを伝授していただくことにした。
台湾でも圧倒的な人気を誇る弘兼憲史先生のご著書を網羅的に所蔵している東呉大学図書館は、アカデミックな特別講演会をさらに盛り上げようと、学内外のコミックファンを対象に、4月から先駆けて「弘兼憲史先生全作品を読破する」という読書感想コンクール・「弘兼憲史先生/島耕作会長に聞きたい!」という質問大募集キャンペーン、弘兼憲史先生全作品特別展示ブックフェアなど、総力を挙げて盛りだくさんのイベントを開催する運びとなり、大学史上最高の盛り上がりを見せた。その成果か、講演会に出席したいと事前に申し込んだ人数は、想像を遥かに超えて、500名に迫る勢いなのを受け、定員340人の会場に収容できない来場者を受け入れるため、急遽隣接する戴氏基金会ホールに生放送する機材を運びこみ、臨時会場を特設することにした。
25日午後2時ごろ、講演会開始の前に、東呉大学図書館特設会場にて、弘兼憲史先生ご来学記念ボードのサインセレモニーが行われた。その後、講演会場に隣接する生放送する予定の講堂ホールに移動され、記者会見に臨んでいただいた。約30社のマスメディア関係者による囲み取材を受けた弘兼憲史先生は、地元記者からの矢継ぎ早で途切れぬ鋭い質問に、40分ほどよどみなく答え続けてくださった。日中台関係をめぐる政治がらみの敏感な質問にも決して嫌な顔をなさらずに、どんな細かい質問にも真面目に誠実に答えてくださった先生の謙虚で真摯な姿が、連日、台湾のテレビニュース番組の動画や各社メディアの新聞記事に報道された。「島耕作シリーズ」の高い知名度とともに、台湾の良き理解者として、リアルな弘兼憲史先生の人間性がさらに広く認識されるという印象深いエピソードである。
25日午後3時半、東呉大学の大学生・院生のみならず、台湾全土の大学関係者や社会人、約30社のマスメディア関係者や日系企業の台湾駐在員などで超満員の東呉大学普仁堂で、特別講演会の開幕式が行われた。入場できずに戴氏基金会ホールで生放送のモニターに釘付けの参加者たちにも見守られるなか、東呉大学董保城副学長、渥美国際交流財団今西淳子常務理事、日本台湾交流協会台北事務所広報文化部松原一樹部長のご挨拶があり、弘兼憲史先生特別講演会が始まった。
今回の特別講演会は、フロアとの交流、話しやすさにこだわる弘兼先生のご要望もあり、同時通訳ではなく、逐次通訳を壇上に同席させた上、取材メディアから寄せられた質問や視聴者から事前に集まった代表的な質問から司会者の朱廣興教授が選んだものに、先生に答えていただく【Q&A形式】で進行することになった。最初の10分間は、先生自らの生い立ちの紹介からスタートし、漫画家になるまでに経験したサラリーマン時代を振り返り、そして、約45年間にわたって無我夢中に打ち込んできた漫画家としての歩み並びに、膨大な漫画創作の業績及び多種多面な分野で活躍された成果などを振り返っていただいた。
その後、パートⅡ【Q&A】のコーナーに入り、(1)漫画創作にまつわる物語の背景・舞台設定、作業場の裏話・苦労話(2)漫画作品の世界や作中人物にまつわるエピソード・逸話(3)世界情勢・アジアの若者事情・仕事観・キャリア形成、といった3つのカテゴリーから、司会者が選んだ10の質問にお答えいただくコーナーにうつった。
まず、「激しい世界情勢や社会現状を背景にした作品作りに取り組んでいるが、リアリティーを持たせるための工夫や、想像力のトレーニング、そしてアイデアを枯渇させないコツは?」という創作手法をめぐる質問に、弘兼先生は、ラジオのニュース番組の視聴や映画予告編の鑑賞、取材を通して入手した材料、蓄積した人脈を活用したりして、日々の生活のどんなシーンでも周りの出来事に目を光らせている等、アイデアを保つヒントを隠さずに教えてくださった。
また、IOTによる産業革命に生き残るために企業へのアドバイスを求められると、多国籍企業文化の普及化に伴うモノづくりの多様化に柔軟に対応していきながらも、グローバル化した世界・社会に貢献できる人間の本質の生活に欠かせない不変なものの価値を見いだしてほしい。これから、もっと高度に進化し多様化していく人間社会にも通用できる、シンプルな喜びをもたらすモノづくりシステムの構築にたどり着くのではないか、という、遥か人間の未来社会を見据えた哲学者っぽいウィットな解答もあった。
そして、未来世界の国や会社を導く真のリーダー像とは?の問いに、弘兼先生は、山本五十六の人材育成に関する非常に有名な言葉――「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば、人は動かじ。話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。」を引き合いに、リーダーとしてこれからの世界を担う若者の人材育成・人材づくりに携わる際に最も大事な留意点(キーポイント)をかみ砕いて、丁寧に説明してくださった。
最後に、ご自身の経験を例に、台湾・アジアを歴訪した会長島耕作的目線を光らせ、「アジア均一化時代」に生きる台湾・アジアの若者の試練や未来につなぐためにしておくことも含めて、将来、新社会人として勤務する際の心得や取るべき行動などについて、時間をかけてじっくり語っていただいた。会場を埋めつくした参加者一同、瞬きもせず聞き入っていた光景が印象的で感銘深い特別講演会であった。
読書感想文の優勝者・最優秀質問の当選者の表彰式及び感想文朗読プレゼンの後、フロアからの質問を受けるコーナーも予定していたが、夢心地のような短い2時間の講演会は、余韻に浸る間もなく、あっという間に終わりました。第8回日台アジア未来フォーラムの初日を飾った弘兼憲史先生特別講演会は、東呉大学日本語文学科蘇克保主任の閉会式のご挨拶で、大盛況のうちに幕を閉じた。
同日夜、東呉大学の近くにある故宮博物院の敷地内に位置する「故宮晶華」という、現代テイストの中華料理と藝術的な創作メニューが魅力なレストランで歓迎パーティーが開催された。総勢40名の出席者でにぎわう会場で、気さくで話し上手な弘兼憲史先生を囲んで、美食・美禄を堪能しながら、歓談した。
実は、8年ぶりに公開された訪台活動である今回の特別講演会を機に、取材活動にも精力的に取り組まれた先生は、過密なスケジュールの合間を縫って、早朝から深夜まで台湾各地を歩き回られ、現地取材をこなしたと話された。そして、今回の取材で入手された迫真で斬新な材料を、今年8月(今月)発売の最新連載号「会長 島耕作」の<台湾編>に仕上げるという、会場一同を驚かせたサプライズなニュースをリークしてくださった。第8回日台アジア未来フォーラムにおける特別講演会のイベントが、何らかのシーンで紹介されるとすごいねと、関係者全員密かに期待しながら、愉快なエピソードをつまみに、とっても充実した長丁場の一日の幕下ろしを円満に迎えて、帰路についた。
以上、本フォーラム発足して以来もっとも記念すべき特別講演会の報告であった。引き続き2日目の国際シンポジウムの詳細を報告する。(つづく)
当日の写真
◇記者会見・講演会の動画:
日本「島耕作」漫畫家來台 取材台灣政治 20180525 公視晚間新聞-YouTube
島耕作漫畫作者來台 取景台灣立法院 – YouTube
◇記者会見・講演会の関連記事:
「島耕作」の新作は「台湾篇」 弘兼憲史さん訪台、大学で講演も|社会|中央社フォーカス台湾
《島耕作》作者東吳演講 想忠實呈現台灣政治|芋傳媒TaroNews
◇雑誌週刊誌:話題人物特集(報道)編/大学キャンパス通信
新世代職場求生 島耕作之父傳授三大祕技―今周刊
『東呉大学キャンパス通信』311号p.2.pdf
<張 桂娥(ちょう・けいが)Chang_Kuei-E>
台湾花蓮出身、台北在住。2008年に東京学芸大学連合学校教育学研究科より博士号(教育学)取得。専門分野は児童文学、日本語教育、翻訳論。現在、東呉大学日本語学科副教授。授業と研究の傍ら、日本児童文学作品の翻訳出版にも取り組んでいる。SGRA会員。
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2018.04.20
下記の通り第8回日台アジア未来フォーラム 並びに 東呉大学マンガ・アニメ文化国際シンポジウムを台北市で開催します。参加ご希望の方はSGRA事務局へご連絡ください。
テーマ:「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性:コミュニケーションツールとして共有・共感する映像文化論から学際的なメディアコンテンツ学の構築に向けて」
開催日:2018年5月25日(金)午後3時~26日(土)終日
会場:東呉大学外双渓キャンパス第一教学研究棟普仁堂(大講堂)
主催:東呉大学日本語学科、東呉大学図書館、(公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)
共催:東呉大学英文学科、東呉大学教養教育センター
後援助成者:中華民国教育部、(公財)国際交流基金、(公財)日本台湾交流協会、中鹿營造股份有限公司、中華民国三三企業交流會、台日商務交流協進會、台灣住友商事股份有限公司、全日本空輸股份有限公司台北支店、ケミカルグラウト株式会社、みずほ銀行 台北支店、Kajima Overseas Asia Pte. Ltd.
名義賛助者:台湾日本人会、台北市日本工商会
講演会ご案内HP
イベントご案内HP
●日本語申込み
●問い合わせ
※日本:SGRA事務局 sgra-office@aisf.or.jp
※台湾:東呉大学日文系 hua666@scu.edu.tw
●プログラム
2018年5月25日(金) 第一部 (15:00~受付開始)
【特別講演】 15:30~17:20
✽弘兼憲史先生(漫画家、『島耕作』シリーズ作者)
テーマ:「漫画から学んできたこと」
2018年5月26日(土) 第二部(8:00~受付開始)
◆招請講演 午前の部 8:40~10:55
【招請講演 1 】8:40~9:25
✽表智之 (日本北九州市漫画ミュージアム専門研究員)
テーマ:「研究者のネットワーク化とマンガ研究の進展-学会・地域・ミュージアム-」
【招請講演 2 】9:25~10:10
✽宣政佑 (韓国 Comicpop Entertainment President)
テーマ:「韓国ではアジア漫画をどう見てきたか 」
【招請講演 3 】10:10~10:55
✽秦 剛 (北京外国語大学北京日本学研究センター教授)
テーマ:「戦後日本最初の長編アニメーション『白蛇伝』における「中国」表象と「東洋」幻想」
【パネル ディスカッション】 11:10~12:10
テーマ:「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性」
司会者:今西淳子 (渥美国際交流財団常務理事)
パネリスト1:表智之 (北九州市漫画ミュージアム専門研究員)
パネリスト2:宣政佑 (Comicpop Entertainment President)
パネリスト3:秦 剛 (北京外国語大学北京日本学研究センター教授)
パネリスト4:梁世佑 (U-ACG/旭傳媒科技股份有限公司創立者)
パネリスト5:黃瀛洲 (台灣動漫畫評論團體傻呼嚕同盟召集人)
パネリスト6:住田哲郎 (京都精華大学専任講師)
◆招請講演 午後の部 13:20~14:05
【招請講演 4 】 A会場
✽梁世佑(台湾U-ACG/旭傳媒科技股份有限公司創辦人)
テーマ:「台湾のオタクにみる日本アニメの受容と変化:作品の鑑賞、収集と行動」
【招請講演 5 】 B会場
✽黄瀛洲(台灣動漫畫評論團體「傻呼嚕同盟」召集人)
テーマ:「未来を見据えた台湾アニメの発展」
◆論文発表 14:10~17:10 各会場にて3本ずつ計18本論文発表を予定
【第1セクション】14:10~15:30 A1/B1/C1 会場にて論文発表
【第2セクション】15:50~17:10 A2/B2/C2 会場にて論文発表
【第1セクション】14:10~15:30
A-1会場
1. 発表者:呂佳蓉(台灣大學語言學研究所専任助理教授)
テーマ:「ACG文化による言語の伝播と受容」(日本語発表)
2. 発表者:住田哲郎(京都精華大学専任講師)
テーマ:「文字の違いに見るマンガ翻訳の不可能性」(日本語発表)
3. 発表者:林蔚榕(東吳大学日本語文学科専任助理教授)
テーマ:「日本のマンガにみるプロフェッショナルの態度と行動特性-料理マンガを中心に-」(日本語発表)
B-1会場
1. 発表者:沈美雪(中國文化大學日本語文學系専任副教授)
テーマ:「日本のマンガ・アニメにおける「時間遡行」作品の構造分析―死亡、再生、ループを手掛かりにー」(中国語発表)
2. 発表者:周文鵬(月鳥齋圖文創意工作室責任者、淡江大學中文系兼任助理教授、中原大學通識中心兼任助理教授)
テーマ:「デバイス変奏曲:縦スクロール漫画の原理と趨勢」(中国語発表)
3. 発表者:田昊(東呉大学中国語科博士後期課程在学)
テーマ:「浦沢直樹漫画芸術におけるフィルムセンスの創造力について」(中国語発表)
C-1会場
1. 発表者:林曉淳(世新大学日本語文学科専任助理教授)
テーマ:「『高橋留美子劇場』から見る日本の家族像」(中国語発表)
2. 招待発表者:DALE, Sonja(一橋大学社会学部特任講師)
テーマ:「2Dのような3D―日本のアニメ業界におけるCG業界へのシフト―」(日本語発表)
3. 発表者:黄璽宇(識御者知識行銷創辦人)
テーマ:「個人の存在と集団の存在―トマス・アクイナス思想から『聲の形』における生きづらさを論じる―」(中国語発表)
【第2セクション】15:50~17:10
A-2会場
1. 発表者:小高裕次(文藻外国語大学日本語学科専任助理教授)
テーマ:「ライトノベルのアニメ化に際する諸要素の増減について-『涼宮ハルヒの憂鬱』を例に」(日本語発表)
2. 発表者:永井隆之(国立政治大学日本語文学科専任助理教授)
テーマ:「漫画『ONEPIECE』の組織論 海賊団「麦わらの一味」の性格」(日本語発表)
3. 招待発表者:李偉煌(靜宜大學日本語文學系副教授兼学科主任)
テーマ:「日本のアニメを取り入れたランゲージェクスチェンジ授業の試み」(日本語発表)
B-2会場
1.発表者:李岩楓(京都精華大学博士後期課程マンガ研究科理論 在学)
テーマ:「オノマトペ─日本マンガにおける図面表現及び中国マンガへの応用の可能性」(中国語発表)
2.発表者:陳 龑(東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学表象文化論コース博士課程)
テーマ:「国境を超える連携―中国初期アニメーション史からみたイマドキのアニメ—ション生産トレンド」(中国語発表)
3.発表者:徐錦成(国立高雄応用科技大学文化創意産業科准教授)
テーマ:「野球とマンガの親和性―中華職業棒球大聯盟の二度にわたる野球マンガへの干渉を中心に―」(中国語発表)
C-2会場
1. 発表者:周惠玲(華梵大學哲學系傳播學程兼任助理教授)
テーマ:「ストーリーマンガと児童文学の競合関係―『不思議の国のアリス』を元にしたマンガを例に―」(中国語発表)
2. 発表者:呉昀融(東京大學東洋文化研究所客座研究員/國立台灣大學政治學研究所博士生)
テーマ:「『NARUTO -ナルト-』から核武装論を再検討する」(中国語発表)
3. 発表者:詹宜穎(政治大學中國文學系博士生兼任講師)
テーマ:「混血の葛藤、その狂気と輝き―『東京喰種トーキョーグール』から見た混血種のアイデンティティにおける調和と超越―」(中国語発表)
●フォーラムの趣旨:
第8回日台アジア未来フォーラムでは、全世界規模に広がったマンガ・アニメ文化の魅力に着目し、「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性―コミュニケーションツールとして共有・共感する映像文化論から学際的なメディアコンテンツ学の構築に向けて―」について議論する。また、各セッションで取り上げるテーマとして、マンガの収集・保存と利用、マンガ・アニメの翻訳と異文化コミュニケーション、マンガ・リテラシー形成の理論と実践、マンガ・アニメと物語論、視覚芸術論、映像論、マンガ・アニメのメディアミックス化・マルチユース化、マンガ・アニメの文化的経済学、マンガ・アニメ文化と社会学などが予定されている。
今回のフォーラムでは、グローバル化したマンガ・アニメ研究のダイナミズムを、研究者・参加者たちの多様な立場と学際的なアプローチによって読み解いた上、新たな可能性を見いだすことを目指している。何より、将来有望な若い研究者たちに研究成果を発表する場を提供することにより、日台関係・日台交流、また東アジア地域内の相互交流のさらなる深まりへの理解促進に貢献するものと考えられる。学生や一般参加者たちにも東アジアにおけるサブカルチャー文化の受容現状を理解してもらい、また異文化を越えた視野を抱き、国際交流のネットワークを築きあげてもらいたいと考える。
●日台アジア未来フォーラムとは
日台アジア未来フォーラムは、台湾在住のSGRAメンバーが中心となって企画し、2011年より毎年1回台湾の大学と共同で実施している。過去のフォーラムは下記の通り。
第1回「国際日本学研究の最前線に向けて:流行・ことば・物語の力」
2011年5月27日 於:国立台湾大学文学部講堂
第2回「東アジア企業法制の現状とグローバル化の影響」
2012年5月19日 於:国立台湾大学法律学院霖澤館
第3回「近代日本政治思想の展開と東アジアのナショナリズム」
2013年5月31日 於:国立台湾大学法律学院霖澤館
第4回「東アジアにおけるトランスナショナルな文化の伝播・交流―文学・思想・言語」
2014年6月13日~14日 於:国立台湾大学文学部講堂および元智大学
第5回「日本研究から見た日台交流120 年」
2015年5月8日 於:国立台湾大学文学部講堂
第6回「東アジアにおける知の交流―越境、記憶、共生―」
2016年5月21日 於:文藻外語大学至善楼
第7回「台・日・韓における重要法制度の比較─憲法と民法を中心として」
2017年5月20日 於:国立台北大学台北キャンパス
第8回「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性」
2018年5月25日~26日 於:東呉大学外双渓キャンパス
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2017.08.17
日本では誰もが知っている漫画の神様・手塚治虫は、「絵を文字にするのが小説。絵を絵にするのがイラスト。文字を絵にするのが漫画。文字を文字にするのが評論」だと述べ、「漫画は映像文化と文字文化の間のもの、いわば第三の文化である」と考えていたという。
一方、芸術作品の独創性に独特の美意識、鋭敏な鑑識眼を光らせて来たフランスでは、漫画は「9番目の芸術」と位置づけられ、近年では評論や研究の対象となっている上、世界最高峰の美術の殿堂「ルーヴル美術館」が21世紀、視覚芸術の映像美、言語表現の様式美を兼ねそろえた漫画に、ついにその扉を開いたというほど、熱い注目を浴びている。
かつて俗悪な読み物、低俗な娯楽、ビジネス先行のサブカル産業として貶められてきたマンガは、創造性と革新性を追求したクリエイティブな作家たちの努力によって、深層文化を表象する芸術の宝庫や、社会思想や世界と人生に関する深い哲理ないし世界観を広く発信する文化的産物として、全世界の人類に共有されつつある現状である。そのため、近年日本、フランスをはじめとする世界各国では、図書館・ミュージアムにおけるマンガコレクションを充実させるブームが巻き起こされたわけである。
また、デジタル映像の生成・加工技術の飛躍的進化により、マンガのアニメ化とともに実写映画化も劇的に進み、あっという間に世界を席巻する爆発的な流行文化に発展した。グローバル化したマンガ・アニメ文化は、視覚芸術を極めた魅惑的なコスモスのような不思議なワールドを築き、世界中の若者を虜にした。非日常な世界に誘われ、魅了された視聴者にとって、マンガ・アニメは、まさに自己と他者ないし世界を理解するための媒介である。
紙媒体のコミック・コミックスをはじめ、アニメ、キャラクター周辺グッズ、コスプレなど、サブカルチャーだったマンガ・アニメ文化は、世界市場規模のコンテンツ産業を誕生させ、一国の経済成長に大きな影響を与えるメインカルチャーに転換していき、我々現代人の消費行為(価値観)、ライフスタイルをダイナミックに変えるソフトパワーの源でもある。
2001年に「日本マンガ学会」が設立され、アカデミック的な見地から、奥深いマンガの世界に学際的・国際的アプローチの可能性が広がった。また、マンガを教育研究する日本初の大学マンガ学部が創設された2006年には、世界初の「博物館的機能と図書館的機能を併せ持った、新しい文化施設」京都国際マンガミュージアムも同時期に設立され、生涯に一度必ず訪れるという熱狂的なマンガファンが世界中から殺到し、コンテンツツーリズムの観光聖地として世界から注目されている。
一方、台湾の大学でも近年、マンガを通して各国の文化・社会への理解を深める教養講座が相次いで開設されている。2014年コミックス蔵書を充実させた東呉大学図書館は、マンガコレクションを楽しむ「マンガ読書エリア」を開設し、日本語学科と協力した上、マンガ・アニメ文化の可能性を探究する学術シンポジウムを開催している。他大学に先駆けて、グローバル的に浸透し定着していくマンガ・アニメ文化研究の最前線に立って、アカデミックな研究の未来を見据え、その可能性をさらに切り拓こうとしている。
2018年5月に台北市で、日本公益財団法人渥美国際交流財団と台湾東呉大学が共同主催で行う予定の、第8回日台アジア未来フォーラム※では、全世界規模に広がったマンガ・アニメ文化の魅力に着目し、「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性―コミュニケーションツールとして共有・共感する映像文化論から学際的なメディアコンテンツ学の構築に向けて―」について議論する。つまり、文化を発信するコミュニケーションツールとして共感・同調・共有されてきたマンガ・アニメが、いかに次世代の地球市民の手によって共創するコンテンツ産業へ進化していくかのプロセスや、それを実現させるあらゆる創発の原理を創造的に思考する場を設けたいと考えている。
各セッションで取り上げるテーマとして、マンガの収集・保存と利用、マンガ・アニメの翻訳と異文化コミュニケーション、マンガ・リテラシー形成の理論と実践、マンガ・アニメと物語論、視覚芸術論、映像論、マンガ・アニメのメディアミックス化・マルチユース化、マンガ・アニメの文化的経済学、マンガ・アニメ文化と社会学などが予定されている。
本フォーラムでは、グローバル化したマンガ・アニメ研究のダイナミズムを、研究者・参加者たちの多様な立場と学際的なアプローチによって読み解いた上、新たな可能性を見いだすことを目指している。これにより、日台関係・日台交流、また東アジア地域内の相互交流のさらなる深まりへの理解促進に貢献するものと考えられる。
※「日台アジア未来フォーラム」とは、日本公益財団法人渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)の主催のもとで、台湾在住の元奨学生(台湾ラクーンメンバー)を中心とした実行委員会によって企画提案・実施運営される国際会議である。SGRAは日台の学術交流を促進し、日本研究の深化を目的とすると同時にアジアの未来を考えることをその設立の趣旨としている。思想信条の自由や言論の自由などを尊重するリベラルな台湾を発信基地として展開する本フォーラムでは、主にアジアにおける言語、文化、文学、教育、法律、歴史、社会、地域交流などの議題を幅広く取り上げている。8回目の開催となる2018年は、東呉大学日本語学科と図書館との共同主催のもとで、マンガ・アニメ文化国際シンポジウムを行う予定である。
英訳版はこちら
<張 桂娥(ちょう・けいが)Chang_Kuei-E>
台湾花蓮出身、台北在住。2008年に東京学芸大学連合学校教育学研究科より博士号(教育学)取得。専門分野は児童文学、日本語教育、翻訳論。現在、東呉大学日本語学科副教授。授業と研究の傍ら日本児童文学作品の翻訳出版にも取り組んでいる。SGRA会員。
2017年8月17日配信
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2017.08.14
SGRAでは、来年5月26日に台北市の東呉大学で共催するシンポジウムで発表する論文を下記の通り募集します。皆さん奮って応募ください。また興味のある方にお知らせください。
第8回日台アジア未来フォーラム並びに台湾東呉大学マンガ・アニメ文化国際シンポジウム
◆「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性」
――コミュニケーションツールとして共有・共感する映像文化論から学際的なメディアコンテンツ学の構築に向けて――
主 催:日本公益財団法人渥美国際交流財団、台湾東呉大学日本語学科、東呉大学図書館
共 催:東呉大学英文学科、東呉大学教養教育センター
会 場:東呉大学外双渓キャンパス第一教学研究棟普仁堂(大講堂)
開催日:2018年5月26日(土)
◇シンポジウムの趣旨:
第8回日台アジア未来フォーラムでは、世界な規模に広がったマンガ・アニメ文化の魅力に着目し、「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性―コミュニケーションツールとして共有・共感する映像文化論から学際的なメディアコンテンツ学の構築に向けて―」について議論します。各セッションで取り上げるテーマとして、マンガの収集・保存と利用、マンガ・アニメの翻訳と異文化コミュニケーション、マンガ・リテラシー形成の理論と実践、マンガ・アニメと物語論、視覚芸術論、映像論、マンガ・アニメのメディアミックス化・マルチユース化、マンガ・アニメの文化的経済学、マンガ・アニメ文化と社会学などが予定されています。
本シンポジウムでは、グローバル化したマンガ・アニメ研究のダイナミズムを、研究者・参加者たちの多様な立場と学際的なアプローチによって読み解いた上、新たな可能性を見いだすことを目指している。これにより、日台関係・日台交流、また東アジア地域内の相互交流のさらなる深まりへの理解促進に貢献するものと考えられます。
◇研究発表関連分野・ジャンル・課題
1.マンガの収集・保存と利用(公共・大学図書館におけるマンガの所蔵状況、学術的マンガ研究、マンガと読書、マンガ読書の効果等)
2.マンガ・アニメの翻訳と異文化コミュニケーション、プロ翻訳者の養成と外国語教育、翻訳技術の開発等
3.マンガ(テキストとしてのマンガの本文)を読み解く技法の理論と実践、マンガ読解力/マンガ・リテラシーの形成等
4.マンガ・アニメと物語論(ナラトロジー、記号論、言語学、ディスクール、表現論、文化的要素、視点の分析等)
5.マンガ・アニメと視覚文化論、映像論、視覚芸術論、映像美学、表象等
6.マンガ・アニメのメディアミックス化・マルチユース化、マルチメディア展開(創意工夫、映像デザイン、クリエイティブスキル、映像制作実務と関連技術の応用等)
7.マンガ・アニメと文化的経済学(マンガ・アニメフェアビジネス、マンガ・アニメの市場経済と商品化、コンテンツ産業の現状と課題、今後の発展の方向性等)
8.マンガ・アニメ文化と社会学(政治、歴史、人類学、ジェンダ学、心理学、科学、哲学、生態学、表象等)
◇発表形式:
・使用言語:日本語、中国語、英語、その他
・発表時間:発表20分・質疑応答10分
◇申込方法:
2017年9月04日(月)までに「研究論文発表申込書」(発表要旨【中国語+外国語(日or英)】要提出)を下記までメール添付で送って下さい。
※発表申込の締切は10月10日(火)までに延期されました。
詳細は下記リンクをご参照ください。
発表論文募集要項
申込書
開催の趣旨