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2010.07.06
1990年代以来、民主化にともなって、モンゴル国は二つの超大隣国との関係を維持しつつ、日本・欧米の諸先進国、およびアジア・太平洋諸国との関係を重視し、推進してきました。そのなかで、モンゴル国と日本が構築してきた「総合的パートナーシップ」は特に注目されています。このようなパートナー関係の形成は、北東アジア地域、ひいては世界平和秩序の構築において、きわめて重要な戦略的意義を持っています。実際、モンゴル国と日本は、政治・経済・文化などの分野での協力・交流において、目覚しい発展と深化をなしとげています。これは、双方の歴史認識問題にとっては、対話可能な環境がつくられたと思われます。
20世紀のモンゴルと日本は、緊密で、複雑な関係を持っていました。イデオロギーによる制約のため、これまで、両国は歴史問題について客観的な対話をすることができませんでした。例えば、ノモンハン事件(ハルハ河戦争)、1945年8月のモンゴル・ソ連連合軍の対日宣戦、日本人捕虜問題などはその典型的な例になります。しかし、20世紀の両国の関係はこれらに限られません。冷戦時代の1972年、日本とモンゴルがさまざまな困難を克服して、国交関係を締結できたことは一つの例証になります。近年、モンゴルと日本の研究者が、これらの歴史問題をめぐって、率直に話し合い、具体的な成果が得られたことを無視することはできません。
本シンポジウムは、北東アジア社会の複雑な歴史状況を視野に入れながら、新たに発見されたアーカイブズや、記録されたオーラル・ヒストリー資料などに基づいて、20世紀、とりわけノモンハン事件からモ・日国交締結までの両国の歴史を直視し、今後の両国、ひいては北東アジア社会の発展を展望し、特色ある議論を展開することを目的とします。このような討議を通して、モンゴル国と日本の歴史研究を深め、両国の友好関係を強化していくことだけではなく、関係諸国の歴史認識問題においても、一種のモデルを提供できればと願っています。
皆さまのご参加を、心からお待ちしております。
実行委員会委員長
今西淳子(関口グローバル研究会代表)
D. ショルフー(モンゴル科学アカデミー国際研究所副所長、博士)
D. ナランツェツェグ(モンゴル国立教育大学歴史と社会科学学部長、博士)
日程:2010年9月9日(木)~10日(金)、11日(土)草原への旅行
会場:モンゴル・日本人材開発センター 多目的室、セミナー室(モンゴル国ウランバートル市)
関連資料は下記からダウンロードしていただけます。
日本語案内状
英語案内状
Program
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2010.06.24
今西淳子、ボルジギン・フスレ(呼斯勒)編
2009年、ウランバートル市で行われた国際シンポジウムの報告書。いまだ謎の多い事件を、ようやくイデオロギーや国家意識を乗り越えて論議した、画期的内容を紹介。日・英・蒙の多言語論集。
B5判・並製カバー・本体12000円
2010年3月20日発行
ISBN978-4-89489-602-4
風響社
℡ 03-3828-9249
もくじ
ちらし
関連のエッセイは下記よりお読みいただけます。
国際シンポジウム『世界史のなかのノモンハン事件(ハルハ河会戦)』報告
田中克彦「2009年ウランバートル・シンポジウムを終えて
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2010.05.26
下記の通り第38回SGRAフォーラム in 蓼科を開催します。参加ご希望の方は、SGRA事務局宛ご連絡ください。
日時:2010年7月3日(土)10:00~18:00(昼食12:30~13:30、休憩15:30~16:00)
会場:東京商工会議所蓼科フォーラム
主催:北九州市立大学
共催:渥美国際交流奨学財団関口グローバル研究会(SGRA)
協力:日本学術振興会若手研究者交流支援事業
協力:東京商工会議所
プログラムを下記よりダウンロードしていただけます。
日本語プログラム
英語プログラム
【フォーラムの趣旨】
SGRA「環境とエネルギー」研究チームが担当し、蓼科で初めて開催するフォーラム。
東アジア各国では、経済発展や生活の向上により、都市建築の快適性が求められており、今後空調エネルギー消費を代表に建築分野のエネルギー消費の急増が予想される。また、人口密度の高い国や地域では、自動車の増加とともに、都市交通の混乱等が予想され、急激なGHG排出増加の可能性がある。
一方、アジアの都市では、エネルギー消費はまだ非効率なとことも多く、省エネルギーの余地が大きい。日本とアジア各国における省エネルギー事業の開発状況を把握することは、各国の省エネルギー政策を検討する上で重要であるとともに、省エネ関連企業にとっても有益な情報を提供するものと考えられる。
国境という枠組みを前提としない地球環境問題の発生や社会経済的なグローバリゼーションの進展とともに、エネルギー環境問題をはじめとする様々な諸問題に対して、当該分野における若手研究者の交流を通して、国際的な協力体制が要請されてきている。
【プログラム】
総合司会: 全振煥(鹿島建設)
10:00-10:10 開会の辞:今西淳子(SGRA)
挨 拶:黒木荘一郎(北九州市立大学)
10:10-10:30【問題提起】高偉俊(北九州市立大学)
10:30-11:00【基調講演】木村建一(国際人間環境研究所)
11:00-11:30【発表1】(インドネシア)Mochamad Donny Koerniawan(バンドン大学)
11:30-11:50【発表2】(フィリピン)Max Maquito(フィリピン・アジア太平洋大学)
11:50-12:20【発表3】(ベトナム)Pham Van Quan(ハノイ建築大学)
(昼食)
14:00-14:30【発表3】(台湾)葉文昌(島根大学)
14:30-14:50【発表4】(タイ)Supreedee Rittironk(タマサート大学)
14:50-15:10【発表5】(韓国)郭栄珠(土木研究所)
15:10-15:30【発表6】(中国)王剣宏(日本工営中央研究所)
(休憩)
16:00-17:50【パネルディスカッション】
進行:高偉俊(北九州市立大学)
パネリストは上記講演者
17:50-18:00 閉会の辞:嶋津忠廣(SGRA)
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2010.05.10
SGRAレポート54号本文
表紙
第37回SGRAフォーラム講演録
「エリート教育は国に『希望』をもたらすか:東アジアのエリート教育の現状と課題」
2010年5月10日発行
<もくじ>
【発表1】日本とシンガポールにおけるエリート教育の現状と課題
シム チュンキャット(東京大学教育学研究科研究員・日本学術振興会外国人特別研究員・SGRA研究員)
【発表2】韓国のエリート高校教育の現場を行く:グローバル時代のエリート教育を考える
金 範洙(東京学芸大学特任教授・韓国国立公州大学校客員教授・SGRA研究員)
【発表3】市場化のなかの中国のエリート教育
張 建(東京大学大学院教育学研究科博士課程・SGRA研究員)
【パネルディスカッション】エリート教育は国に「希望」をもたらすか
進行:羅 仁淑(国士舘大学政経学部非常勤講師、SGRA会員)
ゲスト:玄田有史(東京大学社会科学研究所教授)
パネリスト:上記講師
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2010.05.05
みなさま、SGRA研究員として書いた日本の経済学についての私の論文が選ばれ、下記の通り、立教大学のシンポジウムで発表いたしますので、お時間があればどうぞご参加ください。2010年5月21日から22日まで開催されますが、私の発表は22日になります。
マックス マキト
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立教大学国際経営学シンポジウム
テーマ:「ビジネスのグローバル化の次のチャプター:その課題と機会」
Next Chapter of the Globalization of Business: Challenges and Opportunities
詳細は下記のリンクをご参照ください。
http://cob.rikkyo.ac.jp/en/news/1369.html
■マックス マキト「変らないために変える:日本の企業・銀行関係のレビュー」
<概要>
本稿は、現代のグローバル化の背景にある、ある一定の距離を置いた(arm's length)国際金融構造と代替的な日本型の企業・銀行関係のレビューを行う。とりわけ、本稿は伝統的な日本メインバンク制度に対する二つの批判に焦点を当てる。すなわち、メインバンクの顧客企業の利益の低さと、倒産に迫られる企業に対する融資(ever greeningいわゆる常緑樹化)。企業に十分に配慮した戦略的な決定ができるために、これらの批判に対するカウンター・アーギュメント(反対の議論)、すなわち非最大化の目的と景気循環と反対の融資を強調する。日本型の企業・銀行関係の一般的なレビューに加えて、本稿は三菱自動車工業(株)とそのメインバンクをケース・スタディーとして取り上げる。三菱自動車の長年に渡るフィリピンへの進出歴を考えれば、このケース・スタディーは二つの批判の象徴的な事例として考えられる。
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2010年5月5日配信
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2010.04.30
SGRAレポート第53号本文
表紙
第4回 SGRAチャイナ・フォーラム講演録
*日本語版と中国語版を1冊にまとめてあります。
近藤正晃ジェームス
「世界的課題に向けていま若者ができること~Table For Two~」
第四届SGRA中国論壇「面対世界性課題、当代青年的可能性(中文版)」
2010年4月30日発行
【要旨】
世界には60億人以上の人々が暮らしていますが、10億人が飢餓、10億人が肥満などの生活習慣病で苦しんでいます。世界の死亡と病気の原因は、1 位が肥満、2位が飢餓です。戦争、事故、感染症を大きく上回る人類の課題です。この飢餓と肥満の同時解消に取り組もうと立ち上がったのがTABLE FOR TWO(TFT) です。TFT に参加する企業食堂、レストラン、ホテルなどで健康的な食事をとると、開発途上国で飢餓に苦しむ子供に学校給食が1食寄付されます。1人で食べていても、世界の誰かと2人で食べている。それでTFT という名前をつけました。日常の中で、世界とのつながりを感じられる。小さな一歩で、お互いに救われる。そんな運動です。
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2010.04.21
下記の通り、フィリピンマニラのアジア太平洋大学で、第12回マニラ共有型成長セミナーを開催します。参加ご希望の方は、事前にお名前・ご所属・緊急連絡先を下記へご連絡ください。当日参加も受付けますが、準備の都合上、できるだけ事前にお知らせくださいますようお願いします。SGRAフォーラムはどなたにも参加いただけますので、ご関心をお持ちの皆様にご宣伝いただきますようお願い申し上げます。
日時:2010年4月28日 (水) 1:30 ー 5:30 ,
会場:アジア太平洋大学APEC Communicationsビル301号室
概要:本セミナーでは、フィリピン都市交通を事例として、共有型成長と環境との
関係に注目する。共有型成長を達成するためには、効率性と平等性のバランスが必要
であるが、その間にはトレードオフが存在しうる。本セミナーではその補完的な関係
に焦点を当てる。フィリピンの大都市における自動車・バスなどの地上交通は、地理
的な空間と同時に現地企業の間を結ぶことに貢献している。しかし、石化エネルギー
の利用により、環境に影響を与えている。環境に優しい共有型成長に貢献する都市交
通政策提言をまとめるために、本セミナーは、多分野の専門家が集まり、幅広いス
テークホルダーと議論できる場を提供する。
プログラム
司会:ピター・リー・ユ(アジア太平洋大学経済学部長)
開会挨拶:バーニー・ヴィリエガス(アジア太平洋大学理事)
基調講演:「環境的に持続可能な交通」
ホセ・レギン・レギドル(フィリピン大学国立交通研究センターディレクター)
講演1:「環境に優しいエネルギー:自然ガスの提案」
エドウィン・キロス(フィリピン大学交通機械検査研究所担当教授)
講演2:「フィリピン自動車生産者:持続可能な都市交通への挑戦」
ベン・セビリャ(フィリピン自動車競争力委員会ディレクター)
講演3:「共有型成長への結びつけ」
マックス・マキト(SGRA 研究員)
コメント
産業関係者:ビンボ・ミルス(フィリピナス・ヒノ社長)
政府関係者:アネリ・ロントク(交通・通信省大臣)(予定)
参加申込み・問い合わせ:
レニー・ミロ:
[email protected]
プログラムは下記URLからダウンロードできます。
日本語版
英語版
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2010.03.30
SGRAレポート第52号本文
表紙
SGRAレポート第52号本文(中文版)
中文版表紙
(2014年3月26日発行)
第36回SGRAフォーラムin軽井沢講演録
「東アジアの市民社会と21世紀の課題」
2010年3月25日発行
<もくじ>
【基調講演】市民社会を求めての半世紀ヨーロッパの軌跡とアジア
宮島 喬(法政大学大学院社会学研究科教授)
【発表1】日本の市民社会と21世紀の課題
「市民社会」から「市民政治」へ
都築 勉(信州大学経済学部教授)
【発表2】韓国の市民社会と21世紀の課題
「民衆」から「市民」へ~植民地・分断と戦争・開発独裁と近代化・民主化~
高 煕卓(延世大学政治外交学科研究教授、SGRA研究員)
【発表3】フィリピンの市民社会と21世紀の課題
フィリピンの「市民社会」と「悪しきサマリア人」
中西 徹(東京大学大学院総合文化研究科教授)
【発表4】台湾・香港の市民社会と21世紀の課題
「国家」に翻弄される「辺境東アジア」の「市民」
~脱植民地化・脱「辺境」化の葛藤とアイデンティティの模索~
林 泉忠(ハーバード大学客員研究員、琉球大学准教授、SGRA研究員)
【発表5】ベトナムの市民社会と21世紀の課
変わるベトナム、変わる「市民社会」の姿
ブ・ティ・ミン・チィ(ベトナム社会科学院人間科学研究所研究員、SGRA会員)
【発表6】中国の市民社会と21世紀の課題
模索する「中国的市民社会」
劉 傑(早稲田大学社会科学総合学術院教授)
【パネルディスカッション】東アジアの市民社会と21世紀の課題
進行: 孫 軍悦(明治大学政治経済学部非常勤講師、SGRA研究員)
パネリスト:上記講師
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2010.03.17
~おかげさまでSGRAは10周年を迎えました~
2010年2月26日(金)小雨模様の東京の赤坂の鹿島KIビルで、渥美国際交流奨学財団創立15周年・SGRA(関口グローバル研究会)創立10周年の記念祝賀会が開催された。5年前の祝賀会と比べて一層盛大な会であったが、多くの「狸」の渥美財団(渥美理事長や今西常務理事)に対する感謝の気持ちを十分に実現できたと思う。
狸とは渥美財団の奨学生のことで、財団設立者渥美健夫氏が生前よく狸を描いていたことに因んでラクーン会という同窓会が組織されたため、その構成員は狸(あるいはRaccoon)と呼ばれている。ラクーン会のメンバー全員はSGRAの会員であるが、SGRAは開かれたネットワークであるから、そのメンバーは狸に限らない。尚、以下の狸年齢とは、渥美奨学生になった時から現在までの年数であるが、それは同時にSGRA会員歴を意味している。
祝賀会のプログラムは以下の通り。
◎第一部(司会:于暁飛)
開会挨拶 渥美伊都子理事長
来賓祝辞 畑村洋太郎選考委員長、明石康評議員
渥美財団15年・SGRA10年の歩みと展望 今西淳子常務理事(SGRA代表)
元奨学生の近況紹介(台北・ボストン・ソウルとのインターネットライブ中継)
和太鼓演奏
◎第二部 懇親会(司会:江蘇蘇、シム・チュンキャット)
今西代表が一年前の渥美財団理事会に提出した企画書がきっかけとなり、「AISF15★SGRA10」と名づけたプロジェクトが立ち上げられた。昨年夏のSGRA軽井沢フォーラムの時に、実行委員会の結成が提案され、秋になって正式に立ちあがった。6tanuki3というメーリング・リストが作られ、オンラインで頻繁に(多い時には1日20件くらい)、オフラインでも数回、実行委員会が開催された。「6」というのは実行委員の人数である(第二部の司会者たちの言葉で、狸年齢も加えると)エリック・シッケタンツ(1歳)、王剣宏(3歳)、シム・チュンキャット(4歳)、江蘇蘇(5歳)、全振煥(9歳)、そして僕マックス・マキト(15歳)。「3」というのは実行委員会を支えてくれたSGRAの石井慶子運営委員、嶋津忠廣運営委員長、今西代表である。
さて、実行委員のエリックは末っ子にもかかわらず、欧州梟の手配から当日のお手伝い人員募集やBGMまでたくさんの仕事をやりこなした。狸がまだ健在である筑波付近に住んでいる王は関口で行われた委員会までの長い道のりを何回も足を運んだ。バリトンの声とユーモアに溢れているシムは、委員会の財布を管理した唯一雌狸の蘇蘇と組んで、第二部の司会を務めた。財団やSGRAの良き支援者である鹿島の恩恵を受けている実行委員長の全は、今西代表と連携しながら、会場の設営準備、第一部のインターネットのライブ中継、第二部の鏡開き、ケーキやプレセントなど祝賀会の楽しいプログラムを仕切った。老狸の僕は皆に詳細な準備を任せながら、アンケート中間報告を中心に、パワーポイントの担当者として、これからの渥美財団とSGRAの将来を考える貴重な機会となる発表を準備した。
その他に、実行委員会と今西代表の呼びかけに応じてくれた狸もたくさんいて心強かった。当日の受付や会場案内にはベック(1歳)、ホサム(1歳)孫貞阿(1歳)、金英順(1歳)、梁明玉(6歳)、張桂娥(7歳)、マリア エレナ・ティシ(7歳)、インターネットライブには葉文昌(11歳)、ナリン・ウィーラシンハ(4歳)、撮影には郭栄珠(1歳)、馮凱(2歳)、陸載和(2歳)、看板や鏡開きには李済宇(6歳)、演台設営にはリンチン(1歳)、イェ・チョウ・トウ(1歳)、ルィン・ユ・テイ(9歳)が参加した。皆、研究や仕事で忙しい中、早くから駆けつけてお手伝いいただき、大きな力になった。この人たちを含め、51人もの狸が、祝賀会に駆けつけた。さらに、世界中の狸からこの祝賀会のために支援金が寄せられたことにも心から感謝したい。その他、SGRA賛助会員・特別会員、留学生支援団体、鹿島をはじめとする賛助企業などに参加していただき、また、たくさんの方々にご支援・ご協力いただきましたが、全ての方に御礼を述べきれなくてすみません。
「狸からの感謝」というテーマに加えて、この祝賀会で実感できたもう一つのテーマは「世界の狸」の存在だと思う。5年前には不可能だったインターネットライブを通して、台北の陳姿菁(8歳)と詹彩鳳(3歳)(+後ろで手を振っていたシステム担当の院生)、ボストンから眠そうな林泉忠(10歳)とケビン・ウォン(5歳)(ボストンは午前3時半だった)、「15」という字の飾りのついたチョコレートケーキを用意してくれたソウルの南基正(14歳)、韓京子(5歳)、李垠庚(3歳)からの挨拶があり、地球がいかに小さくなったかを感じさせた。さらには、梟(飾り物)が、(嶋津運営委員長に言わせれば)イタリア、ドイツ、中国、台湾、韓国、スリランカから飛んできた。そして、世界の狸を対象にしたアンケートにより、SGRAの7つの研究チームや4つの海外拠点活動にすでに時間とエネルギーを貸してくれているSGRA研究員に加えて、98狸が何らかの形でSGRAの活動に参加したい、23の新しい研究テーマで、新しく19カ国・地域でもSGRAの活動を展開させたいという世界中の狸からのラブコールが寄せられた。
第一部の締めくくりは、ミラ・ゾンターク(6歳)とお嬢さんのゆきこちゃん、studio邦楽アカデミー和太鼓大元組の皆さんの演奏だった。司会の于暁飛(8歳)が言ったように、太鼓の音が心の響きのようにカッコイイー演奏だった。
明石康先生はご祝辞の中で、「国際交流は『相手と同じである』というよりも『相手と違う』という前提に立ったほうがいい。『やっぱり同じだな』という発見は『やっぱり違う』よりも嬉しく感じる。違いがあってもそれを尊重することが重要だ」とおっしゃったが、さすが、国連の「一国一票」という原理の良き理解者である。
僕は、今回の発表でも使った10年前にSGRAを立ち上げた時の次のような言葉を思い出した。「日出ずる国の道を学ぶため、私達は世界のあらゆる地域から江戸川のほとり大名の領地が残る関口の森にやってきました。この地より私達は世界に向かって発信します。多様性の中の調和を求めて。」
畑村洋太郎選考委員長は、「選考委員を始めたのは今西さんと子どもの幼稚園が一緒という縁だった。途中で一時疲れて辞めようと思ったこともあったが、学問の最高府の研究に接する機会を逃すことになると気付き、また、やっているうちに面白さを感じ、お邪魔でなければずっと続けたい」とご挨拶されたが、世界の狸が同感できる言葉である。
今西代表も発表の中で、「今後、さらにメンバーを増やし、新しいテーマや新しい海外拠点へ輪を広げていきたい。周辺にあるものこそ、コミュニティーの資源ですから」と訴えかけた。
上述のように、今回の記念事業の一環として行ったアンケートにより、世界各地の狸たちが、SGRAの活動に関心を持っており、協力する意思があることが確認できた。この狸たちを含めたSGRA地球市民のひとりひとりが、それぞれの置かれているところでイニシアティブをとれば、自ずとSGRAのグローバルコミュニティーへの道が切り開けていくであろう。そのようなイニシアティブをサポートするために、近いうちにアンケート調査の第二弾を実施する予定である。SGRAの皆さんと一緒に、次への一歩を踏み出したいと思う。
渥美財団やSGRAの未来に関してなんだかワクワクする気持ちが湧いてくる。
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<マックス・マキト ☆ Max Maquito>
SGRA運営委員、SGRA「グローバル化と日本の独自性」研究チームチーフ。フィリピン大学機械工学部学士、Center for Research and Communication(現アジア太平洋大学)産業経済学修士、東京大学経済学研究科博士、テンプル大学ジャパン講師。
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・実行委員(撮影班)が撮影した当日の写真は下記URLからご覧いただけます。
祝賀会アルバム1
祝賀会アルバム2
・トーマスさんが撮影した当日の写真はここからご覧いただけます。
ID:
[email protected]
PW: Lovely tanuki
2010年3月17日配信
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2010.03.10
2010年2月9日(火)、韓国の古都慶州(キョンジュ)で「東アジアにおける芸能の発生と現在」をテーマに第9回日韓アジア未来フォーラムが開催された。日韓アジア未来フォーラムにおいて、芸能、特に伝統芸能がテーマとしてとりあげられたのは初めてであった。伝統芸能は、過去に留まっているものではなく、歴史を貫いて今でも生きているものが多い。例えば、日本の能や歌舞伎や浄瑠璃、韓国の仮面劇やパンソリなどがそうである。今回は、このように時代を越えて今に伝わる東アジア芸能を中心に、それらの普遍性と独自性を探り、その展開と現在的意義について考察することにした。さらに、「東アジア地域協力の歴史性や方向性について考える時、伝統文化の視点から提示できるものは何であろうか」という問いについて考えてみる機会を設けたのであった。
フォーラムでは今西淳子(いまにし・じゅんこ)SGRA代表と韓国未来人力研究院の宋復(ソン・ボク)理事長の挨拶に続き、4人のスピーカーによる基調講演と研究発表が行われた。まず、韓国ソウル大学の全京秀(ジョン・ギョンス)氏が「文化論の不変と特殊」と題した基調講演で、東アジアという地域の概念について説いた後、伝統と近代、東アジアの世界化などについて幅広い見識を述べた。次に韓国高麗大学の全耕旭(ジョン・ギョンウク)氏は、「東アジア公演文化の普遍性と各国の独自性」と題した発表で、東アジア共通の文化遺産である仏教・儒学・漢字などは、韓日中の各国においてそれぞれの国の風土と習合しながら独特の文化として形成されたことを指摘し、それは伝統芸能の世界でも同じであることを説いた。特に、シルクロードを経由して中国・韓国・日本に伝わった散楽が東アジアの仮面劇のルーツであることを、古墳壁画や多様な文献資料をあげながら追求した。
つづいて、京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センターの藤田隆則(ふじた・たかのり)氏は、「音楽と芸能における『伝統』『古典』観:伝統楽器の練習方法の日韓比較から」と題し、音楽と芸能における「伝統」や「古典」観について伝統楽器の練習方法の韓日比較という視点から発表した。氏は、アジアの音楽や芸能には、親や師に似ていることを個性よりも大切にする考え方が強かったが、日本では近代に入って、家元制度を通じて、そこに突出した高い価値が与えられてきたことを指摘した。さらに、能管の実演を入れて日本の伝統楽器の練習方法を紹介し、韓国における音楽・芸能の「伝統」「古典」観との違いを明らかにするための素材提供を試みた。最後に、跡見学園女子大学の横山太郎氏は、「芸能が劇場に収まるとき」と題した発表で、東アジアにおける非劇場型の芸能の多くが、近代化(西洋化)のプロセスを経て劇場で上演されるようになったことを指摘した上、この劇場への適合のあり方に、共通の構造があるのではないかということを説いた。特に、日本を代表する伝統芸能である能の事例分析を通じて東アジア芸能の近代化を考える共通の視点を提示した。
パネル討論には、全北大学の林慶澤(イム・ギョンテク)、檀国大学の韓京子(ハン・ギョンジャ)両氏が加わり、質疑応答の形で行われた。発表の時には時間の制約で触れられなかった事項を質問の形でうまく引き出してくれたので、より詳しい説明が聞けた。フロアーから寄せられた意見や質問に対して、タイムリミットで十分な意見交換ができなかったのはとても残念だった。
今回のフォーラムは、研究発表だけでなく、慶州の旅行も兼ねて行われた。SGRA研究員であり仏教美術専門家である陸載和氏に頼りながらたくさんの勉強ができ、有意義な時間が過ごせた。
慶州旅行については、張桂娥さんの報告をご参照ください。フォーラムの写真もそこからご覧になれます。
張 桂娥 「新羅千年の都~雨の慶州を巡る冬の旅~(その1)」
張 桂娥 「新羅千年の都~雨の慶州を巡る冬の旅~(その2)」
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<金賢旭(キム・ヒョンウク) ☆ Kim Hyeonwook>
韓国檀国大学日語日文科卒業。東京大学大学院総合文科研究科(表彰文化論コース)より修士・博士。専門は能楽・韓日比較文化。著書に『翁の生成―中世の神々と渡来文化』(思文閣出版、2008)。仁荷大学非常勤講師。
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2010年3月10日配信