SGRAイベントの報告

第5回SGRAチャイナ・フォーラムinフフホト「中国の環境問題と日中民間協力―地下資源開発を中心に」報告

第5回SGRAチャイナ・フォーラムinフフホト「パネルディスカッション:中国の環境問題と日中民間協力―地下資源開発を中心に」は、2010年9月13日(月)に、中国・内モンゴル大学で開催されました。緑の地球ネットワーク(GEN)と内モンゴル大学モンゴル学研究センターが協力し、国際交流基金北京日本文化センターが協賛した同フォーラムには、内モンゴル大学、内モンゴル農業大学、内モンゴル師範大学、内モンゴル財経学院、フフホト民族学院などの教師や生徒と、内モンゴル自治区農牧庁、内モンゴル図書館、NGO内モンゴル草原環境保護促進会などからの関係者約150人が参加しました。SGRA研究員のネメフジャルガルが司会を務め、内モンゴル大学副学長・モンゴル学研究センター主任のチメドドルジ教授が開会の挨拶をしました。チメドドルジ教授は、チャイナ・フォーラムを内モンゴル大学で開催したSGRAに謝意を表した後、内モンゴルの草原地帯における地下資源開発による環境破壊の実態および内モンゴルでの調査研究の進捗状況を紹介し、環境保護分野における海外の学者や民間人との協力の重要性を訴えました。

パネルディスカッションでは3人の報告が行われました。まず、緑の地球ネットワークの高見邦雄事務局長が『「得ること」と「失うこと」』というテーマで報告を行いました。高見さんは、1992年から山西省大同市の農村で緑化活動を実施してきた経験に基づき、山西省を中心に中国が直面している環境問題、特に土壌侵食、水資源の枯渇と汚染、地下資源の乱開発による環境破壊などを紹介し、「生産はすなわち消費です。得ることは失うことです。人は新たに手に入れたもの、快適なもの、便利なものは、すぐ認識します。その反面、その背後で失われているもの、なくなっているものを認識することはありません。」と指摘し、環境破壊の代価を負う「下流の人、未来の人」のために環境保護に力を入れなければならないと強調しました。

次に、内モンゴル大学民族学と社会学学院のオンドロナ副教授が『地下資源開発と内モンゴルの草原環境問題の現状分析』という報告をしました。オンドロナ先生は、地下資源開発の政策的背景を紹介した後、内モンゴル草原地帯における豊富な調査に基づき、写真やビデオを利用して、草原地帯における地下資源開発による環境破壊の現状を紹介しました。そして、政府と企業側が環境への配慮と現地住民の利益保護のために責任を負うべきであると指摘しました。

最後の報告者は滋賀県立大学のボルジギン・ブレンサイン准教授でした。ブレンサイン先生は、『黄金の仔馬がどこに消えたのか―資源開発と少数民族の存在』というテーマで、モンゴル各地で伝承されている黄金の仔馬の伝説を紹介して、開発に対するモンゴル人の伝統認識を分析し、モンゴル人の観念の中では、生態資源と地下資源は同一視された有機システムになっていると指摘しました。そして、開発利用という「正義」の裏に隠れている「遊牧時代遅れ論」や国営という「正義」の裏の社会的弱者の利益無視を批判しました。

報告後、三人の報告者と参加者による討論が行われました。パネル報告をめぐって学者、大学生、NGO関係者などからいろいろな質問や指摘があり、参加者たちが皆、地下資源開発と環境問題、日中民間協力問題に対して高い関心を持っているのが明らかになりました。また、高見さんの長年にわたる緑化活動への努力は学生諸君に大きな感動をもたらしたようでした。最後に今西淳子SGRA代表が閉会の挨拶をしました。今西代表はSGRAの趣旨や活動などを紹介し、今回のフォーラムが大成功を収めたことに対して、関係者各位に謝意を表しました。フォーラム終了後、懇親会の会場に移動し、皆杯を交えながら熱烈な討論を続けました。

フフホトの写真(撮影:中村まり子、石井慶子)

内モンゴル大学モンゴル学研究センターホームページのSGRAフォーラム報告(中文)

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<ネメフジャルガル☆ Nemekhjargal >
経済学専攻。中国内モンゴル自治区出身。1995年黒竜江大学卒業、フフホト市役所勤務を経て2002年日本留学。2009年3月亜細亜大学より経済学博士号を取得。同年より内モンゴル大学モンゴル学研究センター社会経済研究室講師。
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2010年10月20日配信