SGRAかわらばん

  • 2003.08.21

    今西淳子「地球市民とは」

    8月21日午後7時より、SGRA会員の山下英明さんの主宰されるセンチュリーフォーラムで、SGRAの活動を基にして「地球市民とは」というお話をさせていただきました。まず、地球市民に不可欠な要素として「行動」がありますから、私の活動を紹介しました。ひとつは渥美財団と関口グローバル研究会(SGRA)で、もうひとつは、CISV(Children’s International Summer Villages)という世界60カ国の子供たちに短期合宿生活させて異文化理解を推進するグローバルな平和教育運動ですが、どちらも「地球市民の育成」を目標にしています。これらは財団法人と社団法人ですが、このような民間による(NGO/NPO)公益活動自体が「地球市民」の重要な要素のひとつと考えます。   次に、この言葉がどれくらい使われているか、インターネットの検索エンジン(google)で調べてみたところ、「地球市民」が336,000件、「global citizen」が929,000件、「earth citizen」が634,000件ありました。たとえば「地球市民財団」は地球市民を「異なる文化や歴史を、一人の人として互いに尊重し、理解しあい、認め合う意識を持った人々」と定義し、地球上に住むすべての人が幸せに暮らせるよう、途上国を支援するNPOを助成しています。広島県の国際化推進プランでは、「地球市民意識の醸成」のために「国際理解・多文化理解の促進」と「平和・人権意識の高揚」をあげています。また、高崎市の「地球市民宣言」では、「歯磨きや洗顔のときは、水をこまめに止める」「買い物には買い物袋を持参する」など環境に配慮した日常生活上10項目の注意点をあげています。このようにみてみると、「地球市民」という言葉は既にかなり広く使われ、充分に「市民権」を得ているといえると思います。   さて、朝日新聞社「知恵蔵」に、「地球市民」の項では「1970年代から、地球的視点で行動する主体として『地球市民』が登場する。その意味で『地球市民』とは、昔からあった抽象的・理念的な『世界』『人類』とは違い、物質的条件に迫られ、生存をかけた意識である。」と定義されています。さらに、SGRA「地球市民」研究チームでは、「地球に住む人類として、全く新しいアイデンティティーとして芽生えて」きた意識であり、その特徴は「近代社会の基本理念である自由と平等を継承すること、地球規模の『公共圏』において、かつての国家権力に頼る征服や同化ではなく、お互いに意を尊重し合い、共に生きる、つまり『共生』を求める自立的な市民であるべきという認識」であるとしたことを紹介しました。(SGRAレポート#1「地球市民のみなさんへ」p.27) SGRAの定義の特徴は、自由・平等・民主主義といった近代社会の普遍的価値と公共性(公益性)を強調したことです。   しかし「知恵蔵」は、「それはまだ意識のレベルであって、行動はローカルに根を持ち、国境を超えるトランスナショナルではあっても一挙にグローバルではない」と指摘します。山下氏より「地球市民の生命と財産は誰が守るのか」という質問をいただきましたが、まだ制度的な検討はほとんど始まっていないと言わざるをえないでしょう。しかしながら、この点を検討するための参考として、本年5月のSGRAフォーラムでは、EU日本事務局の高橋甫氏から「EUと市民」というお話を伺いました。高橋氏は、欧州統合のキーワードとして①戦争を二度と起こさないという理想に根差したビジョン②強力な政治的な意志③現実的な漸進主義④制度的な裏付け(理事会と委員会と議会と裁判所)⑤文化的な多様性の確保、を指摘された後、「市民に近いEU」と呼ばれ、既に1979年から、加盟国の議会の代表者ではなく、直接選挙によって議員が選ばれていること、これによって、欧州市民というレベルでEUの政治に参加していることを紹介してくださいました。これが、欧州市民権や欧州基本権憲章の制定に発展したということです。(高橋甫「市民とEU」SGRAレポート#18「地球市民研究:国境を越える取り組み」9月発行予定)   最後に、「地球市民」意識の啓蒙活動の意義について述べました。本年2月お台場のSGRAフォーラムで、京都大学の白石隆教授は、アメリカの圧倒的な影響の下、アジア各国に、大きなマスとして中産階級が台頭してきていることを指摘されました。白石教授は、過去30年ぐらいのスパンで見ると、アジア各国はかつてよりはるかに多くのものを共有するようになっているということ、このとうとうとしたアメリカ化の中で、私たちは規範についても相当いろいろなものを共有するようになってきていること、そして、その上にこそ、いずれマーケットの地域統合の上に、制度として地域というものを作っていくということも構想できるようになるのではないか、と結論されました。(白石隆「日本とアジア」SGRAレポート#17「21世紀の世界安全保障と東アジア」p.12)   さらに、昨年7月軽井沢のSGRAフォーラムで、宮澤喜一元総理大臣は「何か共通のものを頼って、何かができるというような動き方には急にはなっていきません。しかし、オーディオ・ビジュアルな時代ですから、過去において何世紀もかかったことが、これからも何世紀かかるということもない」と仰いました。(SGRAレポート#14「グローバル化の中の新しい東アジア」p.8)ドッグイヤーの時代ですから、アメリカ化という共通基盤のもと、アジア地域の共通規範の確立もそれほど遠いことではないかもしれません。   以上のことから、アジアにおける「地球市民」意識啓蒙には、次のような意義があると考えます。①アジア各国における中産階級の台頭により拡大する共通基盤作りの促進②多様なアジアにおける「自由」や「平等」という普遍的価値の普及③欧米化ではなく文化の多様性の尊重を基本とする意識の普及④共通基盤に基づく連帯意識の醸成と、地域統合への方向づけ⑤地球規模の問題解決への取り組みを推進(アジアは最大の人口を有し、経済発展が著しい)⑥社会の激しい変化に対応。   SGRAでは、今後も「地球市民」について考えていきたいと思っています。 
  • 2003.06.25

    おめでとう フィリピン・プロジェクト

    SGRA「グローバル化のなかの日本の独自性」研究チームが、フィリピンのアジア太平洋大学と共同で進めている在比日系企業調査のプロジェクトに対して、フィリピン開発研究所からの助成が決定したとのお知らせをいただきました。おめでとうございます。以下は研究チーフのマキトさんからのメールです。   -------------------------------   先日「マニラ・レポート」で報告したように、フィリピンのアジア太平洋大学のピーター・ウー博士と在比日系企業の準備調査を始めた。帰国後間もなく、ウー氏から、フィリピンの開発研究所のもとで管理されているPhilippine APEC Study Center Networkが日比間の自由貿易協定に関する研究提案を募集中なので、共同調査をベースにして応募してみないかと誘われた。幸いに、その研究提案が採択されたそうである。SGRA研究員という肩書きで初めて認定されたものだけで嬉しさもひとしおである。   研究提案は「Formulating a Medium- to Long-Term Strategy for Exports of Manufactured Goods from the Philippines to Japan under a FTA with Japan: A Survey of Japanese Corporations in the Philippines 日比間の自由貿易協定において、フィリピンによる対日本製造品輸出をめぐる中長的戦略の立案:在比の日系企業の調査」というもので、日本企業と協力していかにフィリピンの経済発展と日比関係を進めるかということが、このプロジェクトの基本目的である。日本が世界に向けて可能であると示した「共有された成長」についてのさらなる解明もめざしている。   これと関連して、当研究チームの顧問で名古屋大学の平川均教授が8月にマニラを訪れ、準備調査を一緒に進めてくださることになった。先生のご指導のもとで調査が本格化しつつあるという気がして、わくわくしている。今回は、大手企業ではなく、中小の日系企業に焦点をおく。このようにして小さくても、在比日系企業の企業集団のサンプルが出来上がれば、これからの研究に何か貴重なヒントを与えてくれるものと期待している。   SGRA会員の皆様で、在比日系中小企業をご存知の方がいらっしゃいましたら、是非ご紹介ください。   M.マキト  
  • 2003.06.16

    AAN朴栄濬「「核」と鎖国は破滅への道 」

    月曜日の朝日新聞に、SGRA「東アジアの安全保障と世界平和」研究グループ、サブチーフ朴栄濬さんのコラムが掲載されましたので、お知らせします。 -  ----------------------------   「核」と鎖国は破滅への道   朴栄濬 (韓国国防大学校安全保障大学院助教授)   平壌を訪れた米代表に北朝鮮が核兵器開発を明言してから8カ月余、恫喝戦術か、真相の告白か、多くの議論が展開されてきたが、少なくとも北朝鮮が核開発をテコに対外政策を有利に進めようとしていることが明らかになってきた。4月北京で行われた米中朝3者会談でも北朝鮮代表が同様の発言を繰り返し、今月には朝鮮中央通信が「核抑止力を備えなければならない」と明言した。その実態や実用性は別にしても、既に朝鮮半島は北朝鮮の核脅威にさらされているのである。   北朝鮮が核兵器開発にこだわるのには、理解できる面もある。元々「遊撃隊国家」が起源で、軍事力強化は国是である。伝統的な友邦であったソ連が崩れ、中国が改革・開放へ転換してからは、孤立した社会主義体制の生き残りのためには、絶対兵器の誘惑に逆らうのはむずかしかっただろう。   しかし、生き残りの戦略として選択した核開発がはたして自国の安全確保に貢献しているか、北朝鮮は見極めなければならない。   (全文は、以下のURLをご覧ください)   http://www.asahi.com/international/aan/column/030616.html 
  • 2003.05.19

    朱庭耀研究員トリプル受賞

    会員の朱庭耀さんより、嬉しいニュースをいただきました。トリプル受賞おめでとうございます。   ---------------------------------   お蔭様で、この度、日本造船学会第106期年度通常総会(5月14日)において、私が書いた以下の三編の論文   1)「タンカーの主要構造部材に対する設計荷重の実用的設定法に関する研究 第1報 設計海象」、日本造船学会論文集, 第191号, pp. 195-207, 2002.   2)「タンカーの主要構造部材に対する設計荷重の実用的設定法に関する研究 第2報 設計規則波及び設計荷重」、日本造船学会論文集, 第191号, pp. 209-220, 2002.   3)「バルクキャリアの主要構造部材に対する設計荷重の実用的設定法に関する研究」、日本造船学会論文集, 第192号, pp. 723- 733, 2002.   は、最優秀論文として、   日本造船学会賞(The Prize of the Society of Naval Architects of Japan)、 日本造船工業会賞(The Prize of the Shipbuilding's Association of Japan)、 日本財団会長賞(The Prize of the Chairperson of the Nippon Foundation)   それぞれ授賞いたしました。それを今西様にご報告致します。これからも頑張って研究を続けって行きたいと思います。これからも宜しくお願い致します。   朱@日本海事協会  
  • 2003.04.07

    李鋼哲「地域協力の中心、狙う韓国」

    昨日朝日新聞に掲載された李鋼哲研究員のコラムです。   -----------------------------   地域協力の中心、狙う韓国   李 鋼哲(リ・ガンゼ) 新世紀アジア人開発研究センター理事長(中国)   イラク戦争が現実となり、日々戦火のニュースがメディアを埋め尽くす。北朝鮮の核開発をめぐる緊張を抱える朝鮮半島にどんな影響が出るのか。日本を含む北東アジアの平和と安定が大きく揺らぎかねない。   韓国は米韓同盟の立場からイラクでの対米支援を決断、反戦の声が高まる中、国会が派兵を認めたが、他方で対北平和解決の道を全力で模索している。   http://www.asahi.com/international/aan/column/030407.html  
  • 2003.03.21

    マキト「マニラ・レポート」

    SGRA「グローバル化と日本の独自性」研究チームチーフ フェルディナンド・マキト   4月14日から一ヶ月、マニラに帰省した。その間、フィリピンで活躍している日系企業と国際組織を尋ねて、今後の研究のための資料やデータを収集した。秋にSGRAの顧問である平川均名古屋大学教授に研究客員として招聘していただいたので、今回のマニラの調査も参考にして研究を纏める予定にしている。   訪問したのは、富士通、ホンダ、トヨタのフィリピンにある子会社と、日本にその経営が任されたアジア開発銀行(ADB)の本部である。現地の協力者は、以前私が勤めたアジア太平洋大学(University of Asia and the Pacific、UAP)で、元同僚であったピター・ユー博士(Dr. Peter U)が担当してくれた。ユー博士は、多忙中にもかかわらず私の調査依頼を受けいれて、日系企業にアポイントを取ってくれた。企業訪問の目的は、フィリピンにある日系企業が、「共有された成長」という日本が体験した開発方法を、いかにフィリピンで実現しているかを調査するためである。全体的に印象的だったのは、訪問先の皆さんが大変協力的だったことだ。日本人役員の方々が会ってくださるか心配したが、結局、会長・社長クラスの方々が貴重な時間を割いてくださった。追加的なデータも後で送ってくださる。   アジア開発銀行では、いつも私の日本のODA研究に関してアドバイスしてくれる、フィリピンの友人に連絡したところ時間をかけて応対してくれた。ADB本部は私がUAP(当時まだ大学でなく研究所だった)に勤めたときには、マニラ湾に面しているところにあったが、今回はUAPの近くに移転したのでずいぶん便利になった。UAPのときの同僚とも偶然出会って協力してくれたのでラッキーだった。二回の訪問で、参考になることを色々と教えてくれた。この調査目的は、「自助努力を支援する」という理念を掲げている、ADBによる対フィリピンの日本ODAの経済学的評価である。   さらに、今回のマニラ滞在中、今年の秋に実施する予定のUAPと名古屋大学とのオンライン授業についてもあらためて確認した。テーマは「グローバル化のなかの日本」に決定した。   以上のプロジェクトは、名古屋大学の平川教授のご支援のもと実施するが、同時にフィリピンでのSGRAの存在感を強化することにも役立つと思っている。訪問先では必ずSGRAレポートを配って、私はSGRAの研究員として臨んだ。フィリピンのような発展途上国で活躍している日本の企業や組織が(他の国のやり方とは違う)日本独自の強いところをフィリピンでもちゃんと生かすことができているかを検証することと、日本に対する正しい理解を深め発信していくことが国際的なNGOとしてのSGRAの役割だと思っている。日本での「失われた10年間」は、海外で日本の強さが見失われた時期でもあったと考えれば、この役割の重要さが明らかであろう。 この場を借りて、滞在期間で協力していただいた下記の方々に改めて感謝の意を述べたい。 Shigeo Tsubotani Fujitsu Philippines, Inc. Chairman & CEO 高野 光成 Honda Cars Philippines, Inc. 取締役 社長 田畑 延明 Toyota Motor Philippines Corporation 社長 永峰 正昭 Fujitsu Computer Products Corporation of the Philippines 社長
  • 2003.03.18

    李鋼哲「イラク戦争を止めろ!!! 民主主義を救え!!!」

    SGRA研究員・李鋼哲   2003.3.18朝10時ブッシュの演説を聞きながら   アメリカ軍のイラク攻撃は秒読みの段階に入っている。今更戦争を止めろ、といっても止めそうでもない。だからといって、我々は「対岸の火事」を見ているだけでよろしいでしょうか。   国連の決議なしに単独主義行動で、アメリカなどがイラク攻撃を踏み込んだ場合、世界は第二次世界大戦後の最も深刻な危機に陥ることは間違いないと私は見ている。国際関係を見ると、「9.11」を契機に、世界はポスト冷戦時代の米国中心の「一超多強」世界秩序から、ポスト・ポスト冷戦時代に突入した。一時的な混乱を経て、世界はアメリカ「帝国」の衰退を迎え多極化時代に入るだろう。この転換期に国際社会が直面した危機は深刻である。   まずは、国際秩序の破壊危機である。戦後国際社会は資本主義勢力と共産主義勢力との対立が険しいなかでも、米ソ両超大国を中心とする均衡の取れた世界秩序を創った。もちろん、軍備競争や局部戦争は起こっていても、世界は第三次大戦にはならなかった。冷戦崩壊を迎えて、共産主義陣営は崩れ去り、アメリカ超大国が主導するグローバリズムの世界に入った。この秩序において、1991年に起こった湾岸戦争、昨年に起こったアフガニスタン戦争などは何れも国連決議に基づいて行っており、国連の結束と権威が一応保てられていた。しかし、今度のアメリカの軍事行動は、国連の賛成を得られないまま独走し、国際社会の秩序が破壊されてしまう危険性が非常に高い。そうなると、世界は冷静な価値判断基準が乱れることになり、正義と非正義が混沌してしまう。フセイン大統領は「世界各地が戦場になる」と宣言し、アラブ世界とアメリカなどとの対立が深まり、「9.11テロ」現象がアメリカを始め世界各地で起こっても不思議ではなくなるだろう。世界世論を背ける今度の戦争で、アメリカはイラクとともに敗者になるに違いない。   次は、国際的、国内的民主主義の危機である。国際社会において国連中心の体制においては一応の民主主義が貫徹されてきたが、アメリカ単独主義行動の独走に対して国際社会は歯止めをかける力を完全に失ってしまったのを見て、世界の人々は国連に対する強い不信感を抱くことになろう。一方国内では、とりわけイラク攻撃に参加する、またはこの戦争を支持する国々では、民主主義の深刻な危機を迎えざるを得ないだろう。ブッシュ政権、ブレア政権、小泉政権はいずれもが国民多数の反対を無視しており、民主主義を踏みにじっている。これらの政権はイラク戦争によりいずれも交替せざるを得ない運命になっていると私は見ている。   最後は、世界経済が深刻な危機に陥る。国際秩序の破壊、民主主義の危機は直接国際社会に対する経済界の不信感を強め、株価暴落を始め世界経済は大きな危機を迎えつつある。世界の3大経済大国アメリカ、日本、イギリスが国内市場の最大危機を迎えており、それが国際経済に与える影響は甚大である。世界同時不況はさらに深刻になるだろう。   このような国際社会が直面した危険、世界経済の危機を無視してまで行うイラク攻撃戦争に対して、地球市民としいてのSGRAは何を考え、何を発信すべきか。我々の発信が世界にとっては「茫々大海に投じた一石」に過ぎず、何にも役に立たないかも知れない。しかし、世界には我々と同じように、または我々よりもっと積極的に、ドラスティックに発信し、行動する市民やNGOが千万と数え切れないほど存在している。最近、世界各国で起こっている反戦デモを見てもこれは明らかであり、強まる市民社会の力を示している。   世界が直面した深刻な危機を転換させるために、我々は自分の声を世界に発信し、我々は自ずと行動を示さなければならない。戦争を止めるために、民主主義を救うために!!!   今、ブッシュの演説を聞いているが、全く説得力と論理性が見えない。頭が狂っている。  
  • 2003.03.14

    ANN朴栄濬「急増する日本人留学生」

    本日朝日新聞に掲載された朴栄濬研究員のソウルレポートです。   -----------------------------   「急増する日本人留学生」   韓国の大学で外国人留学生が増えている。特に日本人留学生の増加が目立つ。昨年日本から帰国し講師をつとめていた大学でも、岩手県の高校を卒業して韓国語を勉強するために来た女学生、早稲田大学を出て韓国の政治経済を研究している大学院生などが私のクラスに参加した。   http://www.asahi.com/international/aan/column/030314.html  
  • 2003.03.11

    禹守根「頑張ろうよ、日本!」 

    SGRA会員ではないのですが、日本留学後、現在アメリカの大学院で研究している韓国の方から、下記の文章が送られてきたのでご紹介します。彼は、日韓の学生が共同でカンボジアに小学校を作るNPOの創始者でもあります。   ------------------------   「頑張ろうよ、日本!」 禹守根   1970~80年代の国際社会を驚かした”従属理論(dependency theory)”の創始者であるアンドレ・フランク(Andre Frank)は最近、”リオリエン(Reorient)”という名の本を出版した。この本から、著者の問題意識はタイトルの通り”Reorient”であることが伺える。”新たな方向を提示する”というこの言葉は、同時に”東洋の復興”という意味を含んでいるのだ。   「グローバルな経済体制は、はるか昔から形成されていた。その中で優位な立場にあったのはヨーロッパではなく、アジアであった。」そんな彼の主張の背後にあるメッセージは明らかである。「世界の歴史を創り上げた中心はヨーロッパではない。そして、アジアが後れを取り始めたのは近来のことであり、昨今のアジアの再浮上は、世界の中心がこの地域に再び移ってきている」ということの表れである。   これまでアジアからみてきた日本。そして、今、アメリカで見られる日本。なんと、大きな格差があることだろう。複雑な気持ちは交差するものの、連帯感と同質感の強いアジアの中の日本は、ここアメリカにおいては、何も言わなくても自らアメリカの下にくっついてくれるアメリカの言いなりの存在にしか映し出されないようである。嗚呼、無念・・・。   だから今、Yale大学の歴史学者のポールケネディカネが、ある雑誌に”小さくなる一方の日本”というコラムを書けたのであろう。そこで彼は改めて強い懸念を抱いていた。「いつも西欧の目を気にし、堂々たる姿勢を見せない日本の政治家たち。そんな彼らに主体的な青写真を期待する日本の国民はいない。こんな日本において最も深刻なのは、深まるばかりの自信の喪失なのである」   自信感の喪失。   そんな政治家がいることは事実だが、”人を責める”前に冷静に考えてはいかがだろう。この悪循環の原因、その改善のために、はたして我々は何をしてきたのかということを。   NGOの大父と呼ばれるゼレミリフキン(Jeremy Rifkin)博士。「他人の役に立てられるということで、自分にも自信が沸いてくる。」そんな言葉を残した。そして、先のアンドレ・フランク。「アジアは、ヨーロッパや西欧のモデルばかり追従する必要もなく、そうしてもならない」と話している。   アジアには我々の助けを必要とする人々が少なくない。彼らには、“こんな私に・・・”と思えるかもしれない、市民一人でも出来ることがたくさんあるのだ。 失った自信の回復、そしてリオリエントのためにも、いま、我々に求められているのは自らの一行。もはや「百聞は一見に如かず」ではなく、「百見は一行に如かず」。   さあ、気を取り直して頑張ろうよ、日本のみなさん! まだ遅くありません。ずっと応援していますよ!!   We Love Asia, Asia Loves Japan!!  
  • 2003.03.10

    マキト「京都議定書批准時の外交努力を思い出そう」

    SGRA「グローバル化と日本の独自性」研究チームチーフ フェルディナンド・マキト   緊迫した最近の政治情勢のなかで、父親のブッシュ政権における湾岸戦争と、その時の日本の悔しい思いがよく取り上げられる。しかし、私はむしろ京都議定書の批准と、その時の感動的な日本の外交努力を今こそ思い出したい。   当時の様相はこうだった。米国が京都議定書に批准しないことを決めて、国際社会の合意にストップをかけようとしていた。日本は議定書の運命に対して決定的な票を握っていた。日本は、議事国らしく見事にその困難な問題を解決した。世界環境だけでなく、世界の秩序そのものに最も影響力のある米国に、できるだけ批准するように働きかけた。米国が決意を変えようとしなくても、日本は米国に束縛されず、京都議定書に批准し、国際社会の決定を維持した。内容をみると、エネルギー資源に乏しい日本は、聖域であった原子発電所においては譲ったが、森林が豊富な日本は、森林の重要さを議定書に盛り込むことに成功した。   今の様相はこうみえる。米国は国連の決議に従わないという強い信号を発信している。単独の軍事介入によってでも、イラクの武装解除を実施しようと宣言している。投票権がなくても日本はこの中で、事実上国連の運命に対して決定的な決断に迫られている。果たして、日本は、平和憲法を持つ唯一の先進国らしく、見事にこの困難な問題を解決できるだろうか。   どのような外交が水面下で行われるかは、そのうち歴史が語り裁くが、普通に考えれば、京都議定書が試したいくつかの要素があれば、悪くない結果を生み出すであろう。まず、従おうとはしない米国に対してできるだけ働きかける。しかし、米国が決断を変えようとしなければ、日本が国際社会の決定を支持するのは当然であろう。日本が譲れるところは色々と考えられるが、この地域の平和に重要であるものの行き詰まった平壌宣言にヒントがあるであろう。活かすべきことは、日本が豊富に持っている平和理念にほかならない。   あくまでもこれは私の期待だったが、京都議定書批准において活躍した川口大臣が、今回も活躍しているのはわずかな希望を抱いた。しかし、日本は、国連で否決されても米国を支持すると腹を決めた。   今年の日本の建国記念日に、小泉総理大臣が鋭く指摘したように、最近日本では悲観的な見方が支配的であるが、本当に強いところはまだまだたくさんある。その強さを見失った世論が間違っているといえようが、国民の反対の声に聞く耳を持たないわけにはならないであろう。根っから親米の小泉総理やその周辺の政治家は、本来日本にある強さ、そして米国が掲げている、本来、社会の合意を徹底的に維持する真摯かつ偉大なる民主主義を国際舞台で生かすことはもはやできないのか。   あの感動的な外交努力を、もう一度、平和を愛する日本の国民、いや平和を愛する地球市民に示してほしかった。   追記:アメリカの大学に勤める者として、少しでも生徒と教員の安全に貢献したいと思い、この文章を投稿します。