SGRAエッセイ

  • 2004.08.30

    AAN「漂流する対米同盟 浮上する『対テロ戦略』」

    7月24日に開催した第16回SGRAフォーラム in 軽井沢「東アジア軍事同盟の過去・現在・未来」の報告が、朝日新聞アジアネットワーク(AAN)のウェブサイトに掲載されましたのでお知らせします。   -------------------------------   漂流する対米同盟 浮上する「対テロ戦略」 --日本、韓国、フィリピン、台湾の同盟関係の現状を見る   都丸 修一 「アジア型共同体への道」研究チーム主査   「地球化(グローバリゼーション)」という現象は、国際・国内経済ばかりか、国家のありよう、地域社会の姿からテロリズムにまで、従来の物差しでは測れない変化を日々私たちに見せつけている。人、モノ、金の自由な動きと情報革命。グローバリゼーションは間違いなく人間社会の発明なのだが、グローバル化という「発明品」は、人間が追いつけないほど強大、かつ複雑な妖怪に育って、どう処していいのか分からないほどである。将来の予測がこれほど難しい時代はないかもしれない。   グローバル化の深化にあらがうように、欧州や米州で新時代の羅針盤として「地域主義」が台頭している。アジアでも同様である。ただし、アジアの動きは欧米に比べて遅い。しかも、南北が分断されたまま、核戦争の脅威まででている朝鮮半島を抱え、冷戦構造を残したグローバル化時代を生きるという宿命を負わされている。   アジアの安全保障の将来像は、どうあるべきか。7月24日、軽井沢で開かれた第16回関口グローバル研修会(フォーラム)は「東アジア軍事同盟過去・現在・未来」と題して、日米同盟、韓米同盟、台米同盟、米比同盟の専門家が語り合った(朝日新聞アジアネットワーク後援)。新たなトランスフォーメーション(軍の世界的再編)に動き出す米国。この超大国を軸とするアジア諸国の同盟を読み比べると、あらためてアジアの多様性に気がつく。「東アジア共同体」といった構想はずいぶん出てきたが、あるべき将来像を描く道のりは険しい。それでも、地球化のうねりを乗り切るには、やはりアジアの新しい羅針盤が必要とされる。   全文はasahi.comをご覧ください。  
  • 2004.06.28

    新刊紹介:範建亭著「中国の産業発展と国際分業:対中投資と技術移転の検証」

    新刊紹介   SGRA「人的資源・技術移転」研究チームのサブチーフの範建亭さんより、下記のご本とその紹介文お送りいただきましたのでご紹介します。   ------------------------------------------------------ 範建亭著「中国の産業発展と国際分業:対中投資と技術移転の検証」 風行社 A5判 約250頁 定価3675円(本体3500円) ------------------------------------------------------   ■出版に寄せて 上海財経大学 範 建亭   このたび、拙作の『中国の産業発展と国際分業―対中投資と技術移転の検証』が出版されました。本書は、一橋大学経済学研究科に提出した博士学位論文を基礎に、国際分業の視点から中国の発展要因を明らかにしようとするものであり、特に日本企業の対中直接投資や技術移転を通じた日中間の分業関係に着目しています。   1970年代末に改革・開放を実施した中国は、驚異的な経済成長と産業発展を遂げつつありますが、中国経済における際立った変化の一つは、海外から大量の直接投資と技術が導入されたことであります。日本を含む世界各国の対中投資は、資金の導入や輸出入の拡大などへの貢献に限らず、様々な製造技術や製品技術、および生産管理の手法などが合弁パートナー企業や現地企業に移転、波及し、中国の産業発展に寄与していることは明らかであります。そして、外資系企業の現地生産活動を通じて、中国企業との間に緊密かつ多様な分業・協力関係が築かれつつあります。しかしながら、中国経済論の文献は多数刊行されているにもかかわらず、国際分業との関連から中国の発展要因を研究したものは必ずしも多くないです。   そこで、本書は国際分業を後発国の発展要因として捉え、貿易や直接投資などの展開が中国の産業発展にいかなる影響を及ぼしたのかということを考察しています。研究対象の一つは、日本企業の対中直接投資を通じた技術移転の効果であり、第Ⅱ部では、機械工業企業を対象に行った独自のアンケート調査に基づき、日系企業内外の技術移転構造とその決定要因についての検証が展開されています。もう一つの研究対象は中国の産業発展と国際分業との関わりであり、第Ⅲ部は中国の家電産業を取り上げ、その追いつき発展の特徴と諸要因を輸入代替化のプロセス、日本家電産業の技術供与や現地生産との関連から検証しています。   私は日本語学校から学部を経て大学院の博士課程を修了するまで、合計12年の留学生活を送りました。以前、私は建築関係の仕事に従事しており、経済学とは全く無縁でした。もし日本に留学していなかったら、新しい学問に挑戦する機会もなかったでしょう。長年の留学生活を恵まれた研究環境のなかで送ることができ、そして著作としてまとめることができたのは、渥美財団をはじめ、大勢の方々からのご指導とご援助のおかげであり、ここに改めて御礼申し上げます。   私は昨年の夏に帰国し、大学の先生として久しぶりの現地生活をスタートしました。故郷の上海は十数年の間にとてつもない変貌を遂げており、激動の中国経済を象徴するような大都市となっています。近年、海外から戻った研究者は増えつつありますが、経済学に関しては日本留学組はまだ少数派であります。今後、教育と研究の両面において日本で学んだ知識を生かし、日中間の経済関係と分業体制のあり方を幅広く考えていきたいです。   ■目次 序 章:研究課題と方法 第I部:理論的アプローチと現状分析  第1章:理論と先行研究の検討  第2章:中国の外資導入と日本企業の進出 第II部:対中直接投資を通じた技術移転  第3章:日系現地企業の技術移転構造  第4章:技術移転の決定要因分析 第III部:中国家電産業の発展と国際分業  第5章:家電産業の輸入代替メカニズム  第6章:家電産業の発展における日中間分業関係 終 章:総括と展望  
  • 2004.04.16

    なのはなコンペ最優秀賞

    千葉大学電子光情報基盤技術研究センター(ベンチャービジネスラボラトリー http://www.vbl.chiba-u.jp)では、(財)双葉電子記念財団と(株)千葉銀行の後援のもと、千葉大学教職員を対象に、恒例の「なのはなベンチャーコンペ2004(教員版)」を実施致しました。本コンペは、ベンチャー企業に通じる研究成果・アイデア、先端的な研究、将来性のある研究計画に助成することを目的とします。本コンペでは、審査委員会において推挙された優秀な研究成果・アイデア及び研究計画を表彰し、その実現促進のための研究経費を助成します。   本年度のなのはなベンチャーコンペには、SGRAの研究員であるJosaphat Tetuko Sri Sumantyo (千葉大学電子光情報基盤技術研究センター講師(中核的研究機関研究員 http://www.pandhitopanji-f.org/jtetukoss/index.html)の研究である「ベンチャー発移動体衛星通信用パッチアレーアンテナ」が最優秀賞を受賞しました。本研究の概要として下記をご参考下さい。表彰式の日程と場所は下記の通りです。ただし、表彰式が14:00~14:40で、14:40以後は前年度の受賞者の研究成果報告を行う予定です。表彰式後、記者会見や研究室訪問を行う予定です。参加ご希望の方は、Josaphatさんまでご連絡ください。よろしくお願い致します。   日時:平成16年4月19日(月)14:00~16:30 場所:千葉大学自然科学研究科大会議室    (西千葉キャンパスhttp://www.chiba-u.jp/general/about/map/route.html)   研究要旨 平成16年と17年にそれぞれ宇宙航空研究開発機構(JAXA)と順天頂衛星(QZS)より打ち上げ予定の技術試験衛星Ⅷ型(ETS-Ⅷ)で、移動体衛星通信の高度化が進むと考えられている。この衛星を用いるSバンドの周波数を使用した国内における移動体衛星通信サービスが予定されている。自動車,船舶,電車,航空機等の移動体において音声,画像等のマルチメディアデータ通信を可能にするためには,方向が変わった場合でも絶えず所望の衛星を追尾することができる小型,安価,インテリジェントなアンテナが必要である。本研究では、車載、船体を対象とした移動体衛星通信用アンテナとして、簡易な給電回路で構成可能な衛星追尾型アンテナの開発を行っている。本アンテナは2周波共用円偏波パッチアレーアンテナを使用し、移相器を必要としない簡単なON・OFFの給電制御によってビームを常に静止衛星の方に向けるように切り替える衛星追尾型アンテナである。各ビームは垂直面内に幅が広いため、ビーム切り替 えのみで,静止衛星を用いた移動体衛星通信の用途に対応可能である。本アンテナは,平成18年に衛星通信産業における移動体マルチメディアデータ通信市場に進出準備のため,国内特許(移動体通信用アンテナ,2003-014301)と国際特許(移動体通信用アンテナ,PCT/JP03/05162)を出願した。   連絡先(日本語 OK) Josaphat Tetuko Sri Sumantyo, Ph.D. Lecturer - Post Doctoral Fellowship Researcher Center for Frontier Electronics and Photonics, Chiba University 1-33 Yayoi, Inage, Chiba 263-8522 Japan Phone +81 43 290 3934 Fax +81 43 290 3933 http://www.vbl.chiba-u.jp/PD/tetuko.htm     インドネシアに設立したJosaphatさんの研究所(英語とインドネシア語版) リモートセンシング研究所 http://rsrc.pandhitopanji-f.org 美術研究所 http://arc.pandhitopanji-f.org 教育研究所 http://erc.pandhitopanji-f.org  
  • 2004.01.24

    マキト「マニラ・レポート(2003年冬)」

    今回は、フィリピンのアジア太平洋大学(UAP)とSGRAとの共同研究を中心とした滞在でした。   まず、UAPのPETER LEE U助教授と一緒に、ホンダフィリピンの下請け会社を調査して、今年から始まるフィリピンと日本とのFTA(自由貿易)交渉のための準備調査報告を執筆しました。   次に、フィリピン経済特区当局と交渉した結果、準備調査の補足的なデータとして、特区に入っている日系企業のデータへアクセスすることができました。企業の名前を公表せず、収集したデータのファイルのコピーを当局にも渡すという条件で許可されました。ほこりをかぶって忘れられ、最後には処分されたデータが救われたということです。SGRA実行委員会にご承認いただき、その研究費を使って、200日を越す計画で、データ保存作業が現在でも続いています。NHKの世界遺産をDIGITALで保存するプロジェクトのように、当局のデータをSCANしてDIGITAL化するこの作業によって、さらなる分析が進み、日比両側のためにお役にたてればと思っています。経済特区に入っている日系企業の本社は、日本の「共有された成長」に大きく貢献しました。この日系企業の特徴的な機能が、今後のフィリピンに発揮されるように努力していきたいと思っています。   第3に、UAPとSGRAの初めての一般公開プロジェクトとして、3月に、 「JAPANESE COMPANIES IN THE SPECIAL ECONOMIC ZONES: ENHANCING EFFICIENCY AND EQUITY(経済特区における日系企業:効率と所得分配の改善)」というようなテーマのWORKSHOPを企画しています。WORKSHOPでは、部分的に日本語の発表もいれるようにしようかと考えています。   フェルディナンド・マキト SGRA「日本の独自性」研究チーフ フィリピンアジア太平洋大学研究助教授 2004年1月24日投稿