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2007.09.22
講演:高見邦雄(緑の地球ネットワーク)
「黄土高原緑化協力の15年:無理解と失敗から相互理解と信頼へ」
中国における第2回SGRAフォーラムは、2007年9月14日(金)に北京大学生命科学学院報告庁にて、9月17日(月)に新彊大学図書館二楼報告庁にて開催されました。昨年10月、「若者の未来と日本語」というフォーラムを、中国で初めて、北京大学の同じ会場で開催しましたが、今回からは、NPOやNGO等の市民活動を紹介するフォーラムを中国で開催することにしました。今年は、まず、中国で緑化協力の活動をしている日本のNPO法人「緑の地球ネットワーク」事務局長の高見邦雄さんに講演をお願いしました。朝日新聞で見つけた高見さんの文章がとても面白かったので、是非お話を伺いたいと思ったのがきっかけですが、その後、SGRA会員の中村まり子さんにご紹介いただき、このように北京とウルムチで実現できたのは、大変嬉しく思います。また、日本語学習者ではない中国の学生さんたちにも聞いていただくために、北京大学日本言語文化学部を通じて最高水準の同時通訳をお願いしました。
緑の地球ネットワーク(GEN)は1992年以来、山西省大同市の農村で緑化協力を継続しています。大同市は北京の西300kmほどのところにあり、北京の水源、風砂の吹き出し口でもあります。そこでは深刻な沙漠化と水危機が進行しています。高見さんはパワーポイントで写真をたくさん見せながら1)沙漠化防止のための植林、2)小学校での果樹園作り、3)自然林の保護という大同で展開する事業を紹介してくださいました。また、非常に厳しい自然条件の上、歴史問題をかかえた大同で活動することの難しさを話してくださいました。初期は失敗つづきでしたが、その後、日本側の専門家や中国のベテラン技術者の参加をえて、だんだんと軌道に乗ってきたということです。また、日本側も中国側も失敗と苦労を通じ、お互いを理解し、信頼しあうようになり、いまでは「国際協力の貴重な成功例」とまで評価されるようになっています。高見さんのお話は、参加者を引き込み「3時間があっという間にたってしまった」というコメントをいただいたほどでした。
その他にも、「黄土高原の厳しさを再認識、日本を再認識できた」「民間協力の実態を知った。一般の日本人の友好的な心がわかった。緑化に関する国際協力の大切さを知った」「高原の水不足の実態を知った。水を節約しなかったことを恥ずかしく思う。今までそのような土地があることすら知らなかった。今後何かしてあげたい」「環境問題はどんどん深刻化している。フォーラムを通じてハイレベルの教育者たちが努力されていることを知り、希望が見えた」などの感想が寄せられており、参加した北京大学と新彊大学の学生さんに対して、大きなインパクトを与えたと思います。
北京では、珍しい大雨にもかかわらず、協賛をいただきました国際交流基金北京事務所の小島寛之副所長はじめ、中国で植林活動をされているJICAのみなさん、GEN大同事務所所長、渥美財団理事長、そして北京大学の学生さん等、100名を越える参加者が集まりました。また、ウルムチでは、新彊大学化学学院長をはじめ、教員の皆さん、そして大勢の学生さんが集まり、300用意した同時通訳用のヘッドセットが足りなくなりました。ふたつのフォーラムを実現してくださったお二人のSGRA会員、北京大学の孫建軍さんと、新彊大学のアブリズさんに感謝いたします。(今西淳子)
○「土地の行政を超えた協力はあり得ない」と講師の高見さんは言いました。せっかくはるばる外国から協力に来たのに、現地の人々の心だけでなく、行政の「心」も捕まえなければならないという心労は並大抵のものではなかったでしょう。村民と寝食をともにし、心と心のふれ合いができても、いわゆる政府の幹部の妨害に会っては、堪らないものです。初期の失敗はこのような「無理解」から来たものが多かったかもしれません。行政との付き合いは、中国人ですら難しいのに、外国人の高見さんの努力に頭が下がります。
「賢い順に消えていく」日本のパートナー。事の始まりは簡単なものだったようですが、持続の難しさを語る高見さんは、実は持続の大切さを教えてくださいました。事を成功させるには、困難に向かって、一歩一歩、続けなければなりません。言葉の勉強はさることながら、人生そのものに生かしたいものです。北京会場には、多くの日本語学科の学生が来ていました。日本語そのもの、或いは小説、ドラマ、アニメ、ゲームのような日本文化にしか触れていない学生にとって、高見さんの講演、高見さんの行動は異様なものだったかもしれません。日ごろほとんど接する機会がないからです。でも、質疑応答の時に出た質問から見れば、彼らの心に相当な衝撃を与えたように思えます。「大同から脱出した人をどうすれば大同に呼び戻せるのか」という質問は、実は自分に言い聞かしているように思えました。少し離れたところから見ることによって、改めて自己を認識できるという意識の芽生えにつながるといいと思います。(孫 建軍)
○今回のフォーラムを通して感じたことは多いですが、それを読み易い文章にすることは理科系の研究ばかりやっている私にとって難しすぎます。3日間同行させて頂き、講師の高見さんは、植物を研究する大学教授のように思えました。緑化は自然環境を取り戻すための唯一の手段です。高見さんが15年間続けて来た緑化運動の貴重な経験は元々乾燥地域で、砂漠化が段々酷くなっている新疆ウイグル自冶区に取っても宝ものであると強く感じました。
フォーラムが開くまでは、会場がいっぱいになるか、最後までどのぐらい人が残るかなど色々心配していました。今日、院生から受け取った参加者名簿を見てびっくりしました。なんと391名のサイン!そのなかには新疆大学化学学院、資源環境学院、人文学院、新聞学院、生命学院、物理学院などの教官と学生、日本人留学生、新疆教育学院で研修している高校の先生などがいました。この講演を通して、若い学生が中日両国の民間人の相互理解、国際交流と国際協力に深い関心を持っていることがわかりました。
高見さんの講演は、新疆大学の学生にとって、非常に強い印象を与えたと感じました。フォーラムの後で学生や教官たちが講演内容も通訳も素晴らしかったと私に語ってくれました。今回のフォーラムは新疆大学の歴史では初めて同時通訳で行われたフォーラムとなりました。またSGRAフォーラムでも参加者が一番多いフォーラムになりました。またこの交流活動を続けていくことを願っています(疲れますが)。(アブリズ)
ふたつのフォーラムの写真はここからご覧ください
新彊日報の記事はここからご覧ください
「黄土高原だより」に掲載された高見さんのトルファン旅行記はここからご覧ください
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2007.08.31
SGRAレポート第38号
第6回日韓アジア未来フォーラム in 葉山講演録
「親日・反日・克日:多様化する韓国の対日観」
2007年8月31日発行
総合司会: 金 雄熙(仁荷大学副教授、SGRA研究員)
【開会の辞】今西淳子(SGRA代表、渥美国際交流奨学財団常務理事)
【挨拶】李 鎮奎(未来人力研究院院長、高麗大学経営学部教授)
【発表1】金 範洙 キン・ボンス(東京学芸大学講師、SGRA研究員)
「近代における韓国人の日本留学と人的ネットワークの形成」
【発表2】趙 寛子 チョウ・クァンジャ(中部大学人文学部助教授)
「北朝鮮の戦時体制と韓国の歴史認識/論争」
【発表3】玄 大松 ヒョン・デソン(東京大学東洋文化研究所助教授)
「独島/竹島と反日」
【発表4】小針 進 こはり・すすむ(静岡県立大学国際関係学部助教授)
「韓流と日韓関係」
【フリーディスカッション】
進行:南 基正(国民大学助教授、SGRA研究員)
フォーラム参加者全員(未来財団日本研究チーム、SGRA研究員、ゲスト等、約25名)
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2007.08.08
日 時: 2007年11月18日(日)
午後2時30~5時30分 その後懇親会
会 場: 東京国際フォーラム ガラス棟会議室 G510号室
主 催: 関口グローバル研究会 (SGRA:セグラ)
協 賛: (財)渥美国際交流奨学財団
■フォーラムの趣旨:
SGRA「人的資源・技術移転」研究チームの担当する4回めのフォーラム。広告は社会を写す鏡なのか。どのように写しだすのか。大量消費文化を反映するものなのか、それとも何がしかのプロパガンダが含まれているのか。単に物を売るためだけでなく、新しい思想、新しいライフスタイルを啓蒙するものなのか。広告は国や文化によって違った特徴をもっているのか。中国やウクライナの事例を紹介しながら、広告と社会の複雑な関係を考えます。
■プログラム:
詳細は下記URLをご覧ください。
http://www.aisf.or.jp/sgra/schedule/forum29program.doc
【基調講演】関沢英彦
東京経済大学コミュニケーション学部教授
【報 告 1】徐 向東
(株)中国市場戦略研究所、SGRA研究チーフ
【報 告 2】オリガ・ホメンコ
早稲田大学国際教養学部訪問学者、学術振興会外国人特別研究員、SGRA研究員
(休憩10分)
【パネルディスカッション】
上記講演者
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2007.08.01
2007年7月21日(土)、第28回SGRAフォーラム in軽井沢が、鹿島建設軽井沢研修センター会議室で開催された。今回は、SGRA「宗教と現代社会」研究チームが担当する第2回目のフォーラムで、テーマは「いのちの尊厳と宗教の役割」であった。
まず、東京大学文学部宗教学宗教史学科教授の島薗進先生が「いのちの尊厳と日本の宗教文化」というテーマの基調講演を行った。医療技術の発展によって安楽死、臓器売買、代理出産などが可能になり、人の生命が道具のように扱われている。一方、自殺者数は減らず、教育の現場では、子供たちが自分より弱いものをみつけていじめる、さらには「社会を掃除するために」ホームレスを虐待するという社会問題がおこる。これらの現象は根元で繋がっているのではないか。「生命の尊厳」の問題に対して欧米では様々な議論がなされており、カトリック教会などははっきりした立場を示している。しかし、日本の宗教やアジアの宗教文化の立場からの対応はまだ欠如している。アジアの宗教文化の観点から生命倫理を考える必要があるのではないかという問題提起がなされた。
島薗先生の発表に対して兵庫県立大学看護学部心理学系准教授・韓国出身の金外淑さんの質問は、いのちの尊厳をどのように教えることが出来るのかということであった。島薗先生は、いのちの大切さは様々な分野で教えられているが、いのちを尊重する文化を育むことが必要であり、そこで宗教の役割が重要になると回答した。
富山大学経営法学科教授の秋葉悦子先生は「カトリック<人格主義>生命倫理学の日本における受容可能性」について発表を行った。秋葉先生は、中絶問題や生命の誕生(初期胚)や臓器移植について、受精卵を新たな人の命としてみなすカトリック教会のいわゆる人格主義的生命倫理について、ヴァチカンの公式見解を説明した。そして、このような生命倫理的価値観は、生物学の科学的な研究と第二次世界大戦後の国際法の精神に基づく合理的な結論であり、日本での受容の可能性は高いと語った。
秋葉先生に対する東京医科大学大学院博士課程在学生・中国ウィグル出身のアブドジュクル・メジテさんの質問は、ES細胞から人工的に器官を作ることは可能で、それによって様々な病気を直すための実験を行うことができるが、受精卵を新たな人の生命としてみなすというカトリック教会の立場はこの分野の研究を妨げているのではないかということであった。秋葉先生の回答は次の通りであった。ナチス時代には人体が医学実験のために使われていた。カトリック教会が示す生命倫理は科学や技術的発展のために人間の命や人権が奪われないように守ろうとしている。カトリック教会は死後の臓器移植を認めている。
コーヒー休憩の後、高野山大学文学部スピリチュアルケア学科准教授の井上ウィマラ先生による「悲しむ力と育む力:本当の自分に出会える環境づくり」というテーマの発表で、人間は悲しいことをどのように育む力に変えることが出来るのかという内容のものであった。フロイトの対象喪失理論やボウルビィの愛着理論などを紹介し、悲しみを充分に体験しながら人は許しや思いやりなどを獲得し、いのちを育む力を培ってゆくと論じた。井上先生によれば母子関係には人間を育む力があり、それを証するように中島みゆきの「誕生」という曲を聞かせた。
日本社会事業大学大学院博士課程在学生・中国出身の権明愛さんからは、子供ころの精神障害やトラウマは大人になっても残る可能性があるが、それを解決するためにもどのように自分の体験に向かい合うことが出来るのかという問いだった。井上先生は子供への様々な方法でのスピリチュアルケアの必要性を強調した。
最後の発表者は立命館大学産業社会学部教授の大谷いづみ先生だった。「『尊厳ある死』という思想の生成と『いのちの教育』」という題名の発表で、まず尊厳死と安楽死の相違について説明した。そして、様々な事例を通じて欧米や日本社会における「尊厳死」と「安楽死」の受けとめ方について述べた。尊厳死は当事者の自己決定によるものであるとされている。しかし、その自己決定には様々な問題があり、それは「いのちの教育」において課題とされるものであると論じた。
大谷先生の発表に対して東京大学大学院博士課程在学生・韓国出身の李垠庚さんは、韓国では「消極的安楽死」という言葉が使われることを紹介し、尊厳死が安楽死と区別され肯定的に取られてしまう可能性があるのではないかと問いかけた。大谷先生の答えは、死に関する自己決定は「科学的ヒューマニズム」とされており、日本でも道徳的行為とみなされていることに問題を感じると再度強調した。
当フォーラムの前半はこのように4人の講演者による発表と約定質問者による質疑であった。後半(夕食休憩の後)には、フロアからの質問を踏まえながら、「いのちの尊厳と宗教の役割」というテーマのパネルディスカッションが行われた。4人の講演者がパネリストとなり、名古屋市立大学准教授のランジャナ・ムコパディヤーヤが進行を務めた。フロアから様々な質問があった。いのちに関する教育は可能か、そのような教育をどのように行うべきか、文化によって死生観や「いのち」に対する考え方が異なるのに共通な生命倫理は可能か、個人主義を重視するキリスト教的・西洋的な「いのち」観は「無我」を説く仏教的考え方やアジアの文脈において適用しうるのか、宗教的文化的特徴を尊重しながら「いのち」の尊厳を訴えることは出来るのかというような質問があった。パネリストらによる回答がパネルディスカッションをさらに盛り上げ、フォーラムは大盛況であった。
フォーラムの写真は以下のURLをご覧ください。
http://www.aisf.or.jp/sgra/photos/
(文責:ランジャナ・ムコパディヤーヤ)
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2007.07.21
第28回SGRAフォーラム in 軽井沢
「命の尊厳と宗教の役割」
日時:2007年7月21日(土)14時~18時、19時半~21時
会場:鹿島建設軽井沢研修センター会議室
主催:関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)
協賛:(財)鹿島学術振興財団(財)渥美国際交流奨学財団
■フォーラムの趣旨:
先端生命科学にともない命にかかわる様々な技術が出現しているが、それがこれからの人間の生活にどのような影響を与えるか未だ不明です。このような状況において、宗教はどのような役割を果たせるでしょうか。宗教は生命倫理的な規範を築くための理念を提供することができるでしょうか。このフォーラムでは、世界各国の様々な事例を通じてこの問題を考えてみたいと思います。
■プログラム:
詳細は:プログラム をご覧ください。
【基調講演】島薗 進(東京大学文学部宗教学宗教史学科教授)
【講 演1】秋葉 悦子(富山大学経営法学科教授)
【講 演2】井上ウィマラ
(高野山大学文学部スピリチュアルケア学科助教授)
【講 演3】大谷いづみ
(立命館大学産業社会学部教授)
【パネルディスカッション】
進行:ランジャナ・ムコパディヤーヤ
(名古屋市立大学大学院人間文化研究科助教授、SGRA研究員)
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2007.07.07
第2回SGRAチャイナ・フォーラムへのお誘い
講演:高見邦雄(緑の地球ネットワーク事務局長)
「黄土高原緑化協力の15年:無理解と失敗から相互理解と信頼へ」
下記の通り第2回SGRAチャイナ・フォーラムを北京とウルムチにて開催いたします。
参加ご希望の方は、ファックス(03-3943-1512)または電子メール(
[email protected])でSGRA事務局宛ご連絡ください。当日参加も受付けます。SGRAフォーラムはどなたにも参加いただけます。日中同時通訳がつきますので、北京・ウルムチ在住の皆様にご宣伝いただきますようお願い申し上げます。
■フォーラム案内
<北京大学フォーラム>
日 時: 2007年9月14日(金)午後2時~5時
会 場: 北京大学生命科学学院
現地申込み・問合せ:孫 建軍
[email protected]
<新彊大学フォーラム>
日 時: 2007年9月17日(月)午後2時~5時
会 場: 新彊大学大学院報告庁
現地問合せ:Abliz Yimit
[email protected] (事前申込み不要)
参加費:無 料
申込み・問合せ:SGRA事務局
Email:
[email protected]
TEL: 03-3943-7612
FAX: 03-3943-1512
■フォーラムの趣旨
2006年10月に北京大学で開催したパネルディスカッション「若者の未来と日本語」に引き続き、中国で開催する2回めのSGRAフォーラム。今回は、既に15年間、中国山西省大同市の黄土高原で緑化運動を続けている日本の認定NPO法人「緑の地球ネットワーク」事務局長の高見邦雄様にご講演いただきます。日中同時通訳付き。SGRAでは、中国各地で活動を続ける民間人による公益活動を、北京大学をはじめとする中国各地の大学で紹介するフォーラムを開催していきたいと思っています。
■講演要旨
緑の地球ネットワークは1992年以来、山西省大同市の農村で緑化協力を継続している。大同市は北京の西300kmほどのところにあり、北京の水源、風砂の吹き出し口でもある。そこで深刻な沙漠化と水危機が進行している。「ゼロからの出発」とよくいうが、歴史問題をかかえた大同ではマイナスからのスタートだった。初期は失敗つづきだったが、その後、日本側の専門家や中国のベテラン技術者の参加をえて、だんだんと軌道に乗ってきた。協力の双方も失敗と苦労を通じ、お互いを理解し、信頼しあうようになってきた。いまでは「国際協力の貴重な成功例」とまで評価されるようになっている。その経験と教訓を話したい。
■講師略歴
1948年鳥取県の農家に生まれる。東京大学中退。日中民間交流に従事したあと、1992年緑の地球ネットワークの設立に参加し、大同プロジェクトを担当。1994年から事務局長。毎年100~120日、大同に滞在している。友誼奨(2001年、中国政府)、大同市栄誉市民(2006年、大同市政府)など受賞。中文の著書に『雁棲塞北~来自黄土高原的報告』(李建華・王黎傑訳、国際文化出版公司、2005年)がある。
緑の地球ネットワーク
http://homepage3.nifty.com/gentree/
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2007.06.10
SGRAレポート第37号
SGRAフォーラム in 北京 パネルディスカッション講演録
「若者の未来と日本語」
2007年6月10日発行
総合司会:孫 建 軍(北京大学日本言語文化学部助教授、SGRA研究員)
【パネルディスカッション】
進行:朴 貞 姫(北京語言大学 助教授、SGRA研究員)
■「ビジネス日本語とは」
池崎美代子(JRP専務理事、SGRA会員)
■「グローバル企業が求める人材」
武田春仁(富士通(中国)有限公司副董事長(兼)総経理)
■「日本文化と通訳の仕事」
張 潤北(三井化学北京事務所所長代理)
■「『日本語』の壁を超える」
徐 向東(キャストコンサルティング代表取締役、SGRA研究チーフ)
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2007.05.27
2007年5月27日(日)、秋葉原UDX南6階カンファランスにて、第27回SGRAフォーラム「アジアの外来種問題―ひとの生活との関わりを考えるー」が開催された。同会場でのSGRAフォーラム開催は初めてであり、生物学の分野での開催も初めてと、初めてづくしの記念すべき開催であった。また、ブラックバス問題に代表されるように、現在、熱く議論されている問題をテーマとして、今をときめく電脳空間アキバでフォーラムを行うという、その画期的な試みに、気分は否が応にも盛り上がった。
開演時間の午後2時半が近くなるにつれ、用意されていた椅子も徐々に人で埋められていき、会場はほぼ満席となった。
フォーラムは、多紀保彦教授(自然環境研究センター理事長、東京水産大学[現東京海洋大学]名誉教授)の講演「外来生物とどう付き合うか:アジアの淡水魚を中心に」で始まった。多紀教授はご自身がなじみの深い東南アジアの自然環境、魚、養殖、人々のくらしについて、個人的な体験も盛りこみ、ユーモアをまじえながら話してくださった。60年代から今日にかけて、東南アジアをときにきびしく、ときに暖かい目で見続けてきた多紀教授の見解は多くの示唆に富んでおり、魚を専門とされていながら、常に“初めに人間ありき”の視点で世界を見てきた教授ならではのものである。
次に講演を行ったのは加納光樹氏(自然環境研究センター研究員)である。氏は、「外来生物問題への取り組み:いま日本の水辺で起きていること」と題して、外来種をとりまく日本の現状についていくつかの例を用いてわかりやすく説明してくださった。外来種はけっして生物学だけの問題ではなく、文化や経済や政治的な利害も含めた、正に “社会”問題であることが氏の講演からひしひしと伝わってきた。氏のわかりやすい洗練されたプレゼンテーションによって外来種問題の深刻さ、一筋縄ではいかない難しさをはじめて理解した人も多かったのではないだろうか。氏は、「アジアの外来種問題」をテーマとしたフォーラムは初めての試みであり、今後このような場を増やすことが必要と強調された。
最後の講演者はSGRA研究員でもある私、プラチヤー・ムシカシントーン(タイ国立カセサート大学水産学部講師)の「インドシナの外来種問題:魚類を中心として、フィールドからの報告」であった。私は恩師の多紀教授が見守るなかでの講演であったこともあり、緊張しつつ、主に私自らの観察によるインドシナ地域での外来魚問題の現状について話した。講演の後半は最近調査を行ったミャンマーのインレ湖に関してのもので、インドシナの貴重な数少ない古代湖の一つであるインレ湖に現在多くの外来魚が定着しているという現状の報告であった。
コーヒーブレイクをはさみ、フォーラムの後半は講演者全員がパネリストとなり、今西淳子氏(SGRA代表、渥美国際交流奨学財団常務理事)を司会にむかえ、パネルディスカッションを行った。今西氏がパネルディスカッションの進行役を勤めるのも初めての試みであったが、客席との活発なやり取りが行われた。経済を専門にする参加者からの意見もあれば、工学専門の研究者からの意見もあった。いろいろな分野の方々の間での意見交換が行われたことも今回のフォーラムのよかった点ではないだろうか。本フォーラムが、参加者全員にとって、アジアの外来種問題を考えるきっかけになったとしたら、本フォーラムの目的は達せられたのではないかと思う。
(文責:P.ムシカシントーン)
当日、運営委員の足立憲彦さんとF.マキトさんが写した写真は、アルバムよりご覧いただけます。
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2007.04.25
2007年4月16日(月)午後2時から5時まで、フィリピンのアジア太平洋大学(UA&P)にてUA&P・SGRA日本研究ネットワークが主催する共有型成長セミナーが開催された。今年が5回めとなるこのセミナーの主な目的は、今回のテーマである「フィリピンにおけるマイクロクレジット(小額融資)と観光産業クラスター」に関する研究をスタートさせることであった。主催者は、このセミナーにおける議論を土台にして研究計画をまとめ、日本やその他の財団に研究助成を申請する予定である。
SGRAの今西代表が開会の挨拶をしてから、SGRA研究員のマキトは以上のようなセミナーの目的を説明して、UA&P・SGRAの共同研究として行った製造業経済特区の研究成果を、今度はマイクロクレジットと観光産業クラスターにどのように適応できるかという研究枠組みを提案した。この後、この特区研究のパートナーであるピーター・リー・ユ博士(UA&P経済学部長)はフィリピンの観光産業についてマクロレベルの概説をした。その次に、UA&Pの観光産業アナリストのスタン・パドヒノッグ教授が、観光産業をよりミクロのレベルで語った。フィリピンの海外からの観光者数は、タイなど他の東南アジア諸国に比べればまだ少ないが、出稼ぎフィリピン人が休暇に一時帰国するのを含めて、フィリピンの観光客は毎年増えている状況だと二人とも強調した。実はこの増加率が現地の開発業者では追いつけないほどであり、大手企業が海外のディベロッパーと手を組むケースも増えているようである。休憩を挟んでUA&Pのマイクロクレジットのアナリスト、ビエン・ニト教授が、フィリピンにおけるマイクロクレジットの現状について最近の研究報告を踏まえて説明した。地方の町づくりにも観光産業への繋がりが伺える。
このセミナーには、フィリピンの地方でマイクロクレジットを行うNPOの役員たちが参加しており、フリーディスカッションでは期待通りの活発な議論が行われた。早速、地方でも同様のセミナーを開催して、地方政府に働きかけをしたいという要望もあった。もう一つ印象的だったのは、研究者からもNPO役員からも、このマイクロクレジットと観光産業クラスターを結びつけた研究が、新しく、大変面白い発想だと評価されたことである。皆さんから、積極的にこの共同研究に参加協力する意思を表明していただいた。
セミナーの後、発表者は今西代表を囲んで、これからのこの共同研究を具体的にどのように行うか話合った。とりあえず、マキト研究員が、研究提案書のたたき台を作成して、UA&Pの研究者と共同で編集していくことで合意した。また、次回は同様のセミナーを観光地として開発が進む地方で開催するという暫定的な計画が立てられた。楽しみにしている。
マックス・マキト
(SGRA「グローバル化と日本の独自性」研究チームチーフ)
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2007.04.20
SGRAレポート第36号
第25回SGRAフォーラム講演録
「ITが教育を強化できるのか」
2007年4月20日発行
-----------もくじ------------
【基調講演】 「途上国へのE-learning技術支援とオープンソースソフトウェア教育強化~南太平洋大学におけるJICAプロジェクト活動を中心に~」
高橋 冨士信(横浜国立大学大学院工学研究院教授)
【研究発表1】 「伝え合うことで学ぶ『交流学習』と支援のあり方」
藤谷 哲(目白大学経営学部経営学科専任講師)
【研究発表2】 「Mobile-Learningが教育を変える?!」
楊 接期(台湾国立中央大学情報工学部助教授、SGRA研究員)
【パネルディスカッション】
進行:江蘇蘇(東芝セミコンダクター社、SGRA研究員)
パネリスト:上記講演者