SGRAプロジェクト

  • 金雄熙「第17回日韓アジア未来フォーラム『北朝鮮開発協力:各アクターから現状と今後を聞く』報告」

    2018年3月16日(金)、The-Kホテルソウルで第17回日韓アジア未来フォーラムが開催された。今回のフォーラムのテーマは、2016年2月に東京で開催された第15回日韓アジア未来フォーラム「これからの日韓の国際開発協力:共進化アーキテクチャの模索」、2016年10月1日に北九州で開催された第3回アジア未来会議の自主セッション「アジア型開発協力の在り方を探る」、そして2016年12月に仁川松島で開催された第16回日韓アジア未来フォーラム「日中韓の国際開発協力:新たなアジア型モデルの模索」における各議論を受け、「北朝鮮開発協力:各アクターから現状と今後を聞く」となった。今年の8月24日から同じ場所で開催する第4回アジア未来会議のプレ・カンファランスでもあった。   今後、北朝鮮の非核化問題がいかなる方式で解決されようとも、北朝鮮に対する開発支援はこれからの交渉プロセスや問題の解決以降において、韓国や日本を含め、国際社会が避けては通れない重要な課題である。今回のフォーラムでは、北朝鮮への開発協力に対する体系的な理解を深めるとともに、主なアクターたちの対北朝鮮支援のアプローチとその現状について議論し、新たな開発協力モデルの可能性を探った。   フォーラムでは、渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)の今西淳子(いまにし・じゅんこ)代表による開会の挨拶に続き、3名の専門家による報告が行われた。まず、孫赫相(ソン・ヒョクサン)慶熙大学公共大学院院長が「北朝鮮開発協力の包括的理解と多様なアプローチ」というタイトルで、北朝鮮開発協力をめぐる争点(食糧援助は必要か、援助の目的は何か、援助物資の引き渡し過程は透明か、援助活動におけるNGOの役割は何かなど)、北朝鮮開発協力の歴史と現状、そして市民社会(NGO)、国際機構、人道的支援、体制転換国の開発モデル、技術協力など多様なアプローチについて紹介した。   朱建栄(しゅ・けんえい)東洋学園大学人文学部教授は、「中国と北朝鮮の関係につむじ風――その変化に注目せよ」という題で、第二次大戦後の長きにわたって、北朝鮮を事実上、自国の安全保障の緩衝地帯と見做し、ピョンヤンに対して惜しまない経済支援を行ってきた中国が、北朝鮮の核開発に危機感を高めた2年前から「優先目標の非核化に経済関係を服従させる」政策を取り始め、2017年12月、空前に厳しい国連安保理の制裁決議にも同調したことに注目した。そしてピョンチャン冬五輪後、習近平政権は北朝鮮、及びTHAAD問題を抱える韓国との関係をどのように進めるかについて報告した。   文炅錬(ムン・キョンヨン)全北大学国際人文社会学部教授は、韓国と国際社会の北朝鮮開発協力について、その現状と評価について最新の状況を踏まえながら報告を行った。北朝鮮に対する支援は、他の開発途上国に対する支援とは異なり、支援の主体である韓国および国際社会にとってジレンマを抱える問題であるとした。また国際社会の対北朝鮮支援は人道的レベルの最小限の支援にとどまっており、対北朝鮮支援が始まって20年になる現在でも北朝鮮は依然として救護的性格の緊急支援が必要な状態であると強調した。さらに北朝鮮の非核化問題が進んだ場合、対北朝鮮支援の方向性として、人道的支援から開発協力への転換を模索する必要があると主張した。   コーヒーブレイクを挟んだ討論は、時間の制約でフロアーにオープンすることはできなかったが、それぞれの立場や専門領域を踏まえた内容の濃い議論が展開された。最後に、李鎮奎(リ・ジンギュ)未来人力研究院理事長により、タイムリーなテーマの選定に触れるコメントと閉会の辞で締めくくられた。今回のフォーラムは、最初「北朝鮮開発協力の理解-開発協力のフロンティア」というタイトルがついていたが、参加予定であった日本大使館の方が「開発協力のフロンティア」というサブ・タイトルでは参加しにくいということで変更した経緯がある。今西さんが開会の挨拶で述べられたように、日韓、そして日韓中のプロジェクトは、「なんだか面倒なこと」がとても多いが、それぞれの立場や利害を配慮しながら、目先の変化に惑わされず、地道に進めていくことが大事なのではないかと思う。   これからも、ポスト成長時代における日韓の課題と東アジアの協力について、実りのある日韓アジア未来フォーラムを進めていくためには、具体的な共通の課題について掘り下げた検討を重ねていかなければならない。目下北朝鮮の非核化局面でジャパンパッシング(日本排除)が言われたりするが、いうまでもなく、日本は朝鮮半島の非核化、平和体制の構築、北朝鮮開発協力において欠かせない存在である。今回のフォーラムでは、韓国や中国に比べ、日本の影が薄かったようにも思われる。次回のフォーラムでは、北朝鮮問題を含めて開発協力における日本のプレゼンスに注目しつつ、ここ3か年の成果をまとめあげるといいのではないかと思っている。   最後に17回目のフォーラムが成功裏に開催できるようご支援を惜しまなかった今西代表と李先生、そして8月24日からの第4回アジア未来会議の段取りと予行演習で韓国を訪ねた渥美財団スタッフの皆さんに感謝の意を表したい。     当日の写真   <金雄煕(キム・ウンヒ)Kim_Woonghee> 89年ソウル大学外交学科卒業。94年筑波大学大学院国際政治経済学研究科修士、98年博士。博士論文「同意調達の浸透性ネットワークとしての政府諮問機関に関する研究」。99年より韓国電子通信研究員専任研究員。00年より韓国仁荷大学国際通商学部専任講師、06年より副教授、11年より教授。SGRA研究員。代表著作に、『東アジアにおける政策の移転と拡散』共著、社会評論、2012年;『現代日本政治の理解』共著、韓国放送通信大学出版部、2013年;「新しい東アジア物流ルート開発のための日本の国家戦略」『日本研究論叢』第34号、2011年。最近は国際開発協力に興味をもっており、東アジアにおいて日韓が協力していかに国際公共財を提供するかについて研究を進めている。     2018年4月26日配信
  • 第8回日台アジア未来フォーラム・東呉大学マンガ・アニメ文化国際シンポジウム「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性」へのお誘い

    下記の通り第8回日台アジア未来フォーラム 並びに 東呉大学マンガ・アニメ文化国際シンポジウムを台北市で開催します。参加ご希望の方はSGRA事務局へご連絡ください。 テーマ:「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性:コミュニケーションツールとして共有・共感する映像文化論から学際的なメディアコンテンツ学の構築に向けて」   開催日:2018年5月25日(金)午後3時~26日(土)終日 会場:東呉大学外双渓キャンパス第一教学研究棟普仁堂(大講堂)   主催:東呉大学日本語学科、東呉大学図書館、(公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA) 共催:東呉大学英文学科、東呉大学教養教育センター 後援助成者:中華民国教育部、(公財)国際交流基金、(公財)日本台湾交流協会、中鹿營造股份有限公司、中華民国三三企業交流會、台日商務交流協進會、台灣住友商事股份有限公司、全日本空輸股份有限公司台北支店、ケミカルグラウト株式会社、みずほ銀行 台北支店、Kajima Overseas Asia Pte. Ltd. 名義賛助者:台湾日本人会、台北市日本工商会   講演会ご案内HP イベントご案内HP   ●日本語申込み   ●問い合わせ ※日本:SGRA事務局 sgra-office@aisf.or.jp ※台湾:東呉大学日文系 hua666@scu.edu.tw     ●プログラム   2018年5月25日(金) 第一部 (15:00~受付開始) 【特別講演】 15:30~17:20 ✽弘兼憲史先生(漫画家、『島耕作』シリーズ作者) テーマ:「漫画から学んできたこと」   2018年5月26日(土) 第二部(8:00~受付開始) ◆招請講演 午前の部 8:40~10:55   【招請講演 1 】8:40~9:25 ✽表智之 (日本北九州市漫画ミュージアム専門研究員) テーマ:「研究者のネットワーク化とマンガ研究の進展-学会・地域・ミュージアム-」   【招請講演 2 】9:25~10:10 ✽宣政佑 (韓国 Comicpop Entertainment President) テーマ:「韓国ではアジア漫画をどう見てきたか 」   【招請講演 3 】10:10~10:55 ✽秦 剛 (北京外国語大学北京日本学研究センター教授) テーマ:「戦後日本最初の長編アニメーション『白蛇伝』における「中国」表象と「東洋」幻想」   【パネル ディスカッション】 11:10~12:10 テーマ:「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性」 司会者:今西淳子 (渥美国際交流財団常務理事) パネリスト1:表智之 (北九州市漫画ミュージアム専門研究員) パネリスト2:宣政佑 (Comicpop Entertainment President) パネリスト3:秦 剛 (北京外国語大学北京日本学研究センター教授) パネリスト4:梁世佑 (U-ACG/旭傳媒科技股份有限公司創立者) パネリスト5:黃瀛洲 (台灣動漫畫評論團體傻呼嚕同盟召集人) パネリスト6:住田哲郎 (京都精華大学専任講師)   ◆招請講演 午後の部 13:20~14:05   【招請講演 4 】 A会場 ✽梁世佑(台湾U-ACG/旭傳媒科技股份有限公司創辦人) テーマ:「台湾のオタクにみる日本アニメの受容と変化:作品の鑑賞、収集と行動」   【招請講演 5 】 B会場 ✽黄瀛洲(台灣動漫畫評論團體「傻呼嚕同盟」召集人) テーマ:「未来を見据えた台湾アニメの発展」   ◆論文発表 14:10~17:10 各会場にて3本ずつ計18本論文発表を予定 【第1セクション】14:10~15:30  A1/B1/C1 会場にて論文発表 【第2セクション】15:50~17:10  A2/B2/C2 会場にて論文発表   【第1セクション】14:10~15:30   A-1会場 1. 発表者:呂佳蓉(台灣大學語言學研究所専任助理教授) テーマ:「ACG文化による言語の伝播と受容」(日本語発表) 2. 発表者:住田哲郎(京都精華大学専任講師) テーマ:「文字の違いに見るマンガ翻訳の不可能性」(日本語発表) 3. 発表者:林蔚榕(東吳大学日本語文学科専任助理教授) テーマ:「日本のマンガにみるプロフェッショナルの態度と行動特性-料理マンガを中心に-」(日本語発表)   B-1会場 1. 発表者:沈美雪(中國文化大學日本語文學系専任副教授) テーマ:「日本のマンガ・アニメにおける「時間遡行」作品の構造分析―死亡、再生、ループを手掛かりにー」(中国語発表) 2. 発表者:周文鵬(月鳥齋圖文創意工作室責任者、淡江大學中文系兼任助理教授、中原大學通識中心兼任助理教授) テーマ:「デバイス変奏曲:縦スクロール漫画の原理と趨勢」(中国語発表) 3. 発表者:田昊(東呉大学中国語科博士後期課程在学) テーマ:「浦沢直樹漫画芸術におけるフィルムセンスの創造力について」(中国語発表)   C-1会場 1. 発表者:林曉淳(世新大学日本語文学科専任助理教授) テーマ:「『高橋留美子劇場』から見る日本の家族像」(中国語発表) 2. 招待発表者:DALE, Sonja(一橋大学社会学部特任講師) テーマ:「2Dのような3D―日本のアニメ業界におけるCG業界へのシフト―」(日本語発表) 3. 発表者:黄璽宇(識御者知識行銷創辦人) テーマ:「個人の存在と集団の存在―トマス・アクイナス思想から『聲の形』における生きづらさを論じる―」(中国語発表)   【第2セクション】15:50~17:10   A-2会場 1. 発表者:小高裕次(文藻外国語大学日本語学科専任助理教授) テーマ:「ライトノベルのアニメ化に際する諸要素の増減について-『涼宮ハルヒの憂鬱』を例に」(日本語発表) 2. 発表者:永井隆之(国立政治大学日本語文学科専任助理教授) テーマ:「漫画『ONEPIECE』の組織論 海賊団「麦わらの一味」の性格」(日本語発表) 3. 招待発表者:李偉煌(靜宜大學日本語文學系副教授兼学科主任) テーマ:「日本のアニメを取り入れたランゲージェクスチェンジ授業の試み」(日本語発表)   B-2会場 1.発表者:李岩楓(京都精華大学博士後期課程マンガ研究科理論 在学) テーマ:「オノマトペ─日本マンガにおける図面表現及び中国マンガへの応用の可能性」(中国語発表) 2.発表者:陳 龑(東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学表象文化論コース博士課程) テーマ:「国境を超える連携―中国初期アニメーション史からみたイマドキのアニメ—ション生産トレンド」(中国語発表) 3.発表者:徐錦成(国立高雄応用科技大学文化創意産業科准教授) テーマ:「野球とマンガの親和性―中華職業棒球大聯盟の二度にわたる野球マンガへの干渉を中心に―」(中国語発表)   C-2会場 1. 発表者:周惠玲(華梵大學哲學系傳播學程兼任助理教授) テーマ:「ストーリーマンガと児童文学の競合関係―『不思議の国のアリス』を元にしたマンガを例に―」(中国語発表) 2. 発表者:呉昀融(東京大學東洋文化研究所客座研究員/國立台灣大學政治學研究所博士生) テーマ:「『NARUTO -ナルト-』から核武装論を再検討する」(中国語発表) 3. 発表者:詹宜穎(政治大學中國文學系博士生兼任講師) テーマ:「混血の葛藤、その狂気と輝き―『東京喰種トーキョーグール』から見た混血種のアイデンティティにおける調和と超越―」(中国語発表)   ●フォーラムの趣旨:   第8回日台アジア未来フォーラムでは、全世界規模に広がったマンガ・アニメ文化の魅力に着目し、「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性―コミュニケーションツールとして共有・共感する映像文化論から学際的なメディアコンテンツ学の構築に向けて―」について議論する。また、各セッションで取り上げるテーマとして、マンガの収集・保存と利用、マンガ・アニメの翻訳と異文化コミュニケーション、マンガ・リテラシー形成の理論と実践、マンガ・アニメと物語論、視覚芸術論、映像論、マンガ・アニメのメディアミックス化・マルチユース化、マンガ・アニメの文化的経済学、マンガ・アニメ文化と社会学などが予定されている。   今回のフォーラムでは、グローバル化したマンガ・アニメ研究のダイナミズムを、研究者・参加者たちの多様な立場と学際的なアプローチによって読み解いた上、新たな可能性を見いだすことを目指している。何より、将来有望な若い研究者たちに研究成果を発表する場を提供することにより、日台関係・日台交流、また東アジア地域内の相互交流のさらなる深まりへの理解促進に貢献するものと考えられる。学生や一般参加者たちにも東アジアにおけるサブカルチャー文化の受容現状を理解してもらい、また異文化を越えた視野を抱き、国際交流のネットワークを築きあげてもらいたいと考える。   ●日台アジア未来フォーラムとは   日台アジア未来フォーラムは、台湾在住のSGRAメンバーが中心となって企画し、2011年より毎年1回台湾の大学と共同で実施している。過去のフォーラムは下記の通り。   第1回「国際日本学研究の最前線に向けて:流行・ことば・物語の力」 2011年5月27日 於:国立台湾大学文学部講堂   第2回「東アジア企業法制の現状とグローバル化の影響」 2012年5月19日 於:国立台湾大学法律学院霖澤館   第3回「近代日本政治思想の展開と東アジアのナショナリズム」 2013年5月31日 於:国立台湾大学法律学院霖澤館   第4回「東アジアにおけるトランスナショナルな文化の伝播・交流―文学・思想・言語」 2014年6月13日~14日 於:国立台湾大学文学部講堂および元智大学   第5回「日本研究から見た日台交流120 年」 2015年5月8日 於:国立台湾大学文学部講堂   第6回「東アジアにおける知の交流―越境、記憶、共生―」 2016年5月21日 於:文藻外語大学至善楼   第7回「台・日・韓における重要法制度の比較─憲法と民法を中心として」 2017年5月20日 於:国立台北大学台北キャンパス   第8回「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性」 2018年5月25日~26日 於:東呉大学外双渓キャンパス  
  • 第7回ふくしまスタディツアーへのお誘い

    関口グローバル研究会(SGRA)では昨年に引き続き、福島県飯舘(いいたて)村スタディツアーを下記の通り行います。 参加ご希望の方は、SGRA事務局へご連絡ください。   SGRAでは2012年から毎年、福島第一原発事故の被災地である福島県飯舘村でのスタディツアーを行ってきました。   そのスタディツアーでの体験や考察をもとにしてSGRAワークショップ、SGRAフォーラム、SGRAカフェなど、さまざまな催しを展開してきました。今年も第7回目の「SGRAふくしまスタディツアー」を行います。ぜひ、ご参加ください。   日 程:          2018年5月25日(金)、26日(土)、27日(日) 人 数:           10~15人程度 宿 泊:           「ふくしま再生の会-霊山(りょうぜん)センター」 参加費:           一般参加者は新幹線往復費用+12,000円 (ラクーン会会員には補助が出ます) 申込み締切:       5月10日(木) 申込み・問合せ: SGRA事務局 角田 E-mail:  tsunodaaisf@gmail.com  Tel:  03-3943-7612   プログラム・詳細   今までのふくしまスタディツアーの報告や感想文    
  • 第3回アジア未来会議、日本政府観光局の開催貢献賞を受賞!

    第3回アジア未来会議が、日本政府観光局(JNTO)の平成29年度国際会議開催貢献賞をいただきました。開催にあたり会議運営、地域貢献などにおいて、今後の模範となる実績を上げた国際会議6件が表彰されました。ご支援ご協力いただいた皆さんに、心からお礼を申し上げます。   授賞式の写真   国際会議開催貢献賞の詳細    
  • 第17回日韓アジア未来フォーラム「北朝鮮開発協力:各アクターから現状と今後を聞く」へのお誘い

    下記の通り日韓アジア未来フォーラムをソウルにて開催いたします。参加ご希望の方は、事前にお名前・ご所属・緊急連絡先をSGRA事務局宛ご連絡ください。   テーマ: 「北朝鮮開発協力:各アクターから現状と今後を聞く」 日 時: 2018年3月16日(金)午後2時~5時 会 場: 韓国ソウルThe-K Hotel http://www.thek-hotel.co.kr/main_sh.asp コンベンションセンター2Fオークルーム(Oak Room) 参加費: 無料 お問い合わせ・参加申込み: SGRA事務局(sgra-office@aisf.or.jp, 03-3943-7612)   主 催:  (財)未来人力研究院(韓国) 共 催:  (公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)   ◇フォーラムの趣旨   北朝鮮問題がいかなる方式で解決されようとも、北朝鮮に対する開発支援は今後の交渉過程や問題の解決以降においても、韓国や日本を含め、国際社会が避けては通れない重要な課題である。 本フォーラムでは、北朝鮮開発協力に対する体系的な理解を深めるとともに、北朝鮮開発協力における主なアクターたちの対北朝鮮支援のアプローチとその現状について議論し、新たな開発協力モデルの可能性を探ってみたい。今回は、2016年2月に東京で開催した第15回日韓アジア未来フォーラム「これからの日韓の国際開発協力:共進化アーキテクチャの模索」、2016年10月1日に北九州で開催した第3回アジア未来会議の自主セッション「アジア型開発協力の在り方を探る」、2016年12月仁川松島で開催した第16回日韓アジアイ未来フォーラム「日中韓の国際開発協力:新たなアジア型モデルの模索」における議論を受け、北朝鮮開発援助のあり方について考える。 【日韓同時通訳付き】   ◇プログラム   【報告1】 「北朝鮮開発協力の包括的理解と多様なアプローチ」 孫赫相(ソン・ヒョクサン:慶熙大学公共大学院院長)   【報告2】 「中国と北朝鮮の関係につむじ風――その変化を注目せよ」 朱建栄(しゅ・けんえい:東洋学園大学人文学部教授)   【報告3】 「韓国、国連の北朝鮮開発協力:現状と評価」 文炅鍊(ムン・キョンヨン:全北大学国際学部准教授)   【フリーディスカッション】 -報告者を交えたディスカッションとフロアとの質疑応答-   ◇モデレーター 金雄煕(キム・ウンヒ:仁荷大学国際通商学科教授)   ◇討論者 李恩民(リ・エンミン:桜美林大学教授) 李鋼哲(り・こうてつ:北陸大学教授) 李元徳(リ・ウォンドク:国民大学教授) 朴栄濬(パク・ヨンジュン:国防大学教授) 他    
  • 林泉忠「戦争・架け橋・アイデンティティ~近代日本と東アジアの文化越境物語~:東アジア日本研究者会議パネル報告(3)」

      去る2017年10月28日から29日にかけて、風薫る爽やかな深秋の季節の中、「第2回東アジア日本研究者協議会国際学術大会」が、中国天津にある象賽ホテルにおいて開催された。今回は私が企画したセッションで渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)の派遣チームの1つとして参加した。   セッションのテーマは「戦争・架け橋・アイデンティティ~近代日本と東アジアの文化越境物語~」で、企画の背景に、戦前の日本と東アジアとの関係が、しばしば戦争や植民地支配に集約される単純さに違和感を持ったことが挙げられる。そのため、戦前における日本と東アジアとの民間レベルの社会・文化交流の架け橋を担っていた人々とそのストーリーは軽視されてしまう。本セッションは、あの激動の時代において戦争を超える日本と中国・東アジアの民間レベルの交流物語を取り上げ、国境や戦争を超える東アジアの文化交流の意味を検討した。   当セッションは、孫建軍教授(北京大学)を座長に、2つの報告を中心に行われた。   第1報告は、私(林泉忠・中央研究院)自身が行った「知られざる『旅愁』の越境物語~戦前東アジア文化交流の一断章~」で、百年前から日本でも中華圏でもよく歌われてきた名曲「旅愁」(中国語は「送別」)の伝播の軌跡を探って、戦争を超える近代日本と東アジアの文化交流の一側面を明らかにした。「旅愁」は19世紀の半ば頃にアメリカで生まれたDreaming_of_Home_and_Mother(「家と母を夢見て」、作曲ジョン・P・オードウェイ[John_P._Ordway])に由来し、1907年に日本の作詞家で音楽教育者の犬童球渓によって訳され、「旅愁」として音楽教科書「中等教育唱歌集」で取り上げられた。やがて日本の植民地になった台湾や朝鮮半島にも広がっていった。そして、当時東京留学中の中国若手音楽家・画家の李淑同の手で1915年に「送別」として中国に広く伝えられていったという。   当報告は、1.信じられている自国の文化は必ずしも自国で誕生したものではなく、2.文化は交流によってより高い価値を獲得し、3.人類が共有する宝として再認識する必要がある、と指摘した上、戦争・植民地時代の文化の広がりについて、戦争や植民地支配の正当性は肯定できないが、その時代の民間レベルの文化交流にかかわる人々とその結果や価値についてもう少し丁寧に検討する必要がある、と強調した。   第2報告は、李嘉冬教授(上海・東華大学)の「近代日本の左翼的科学者の中国における活動~上海自然科学研究所所員小宮義孝を例に~」で、小宮義孝という人物の物語を取り上げ、上海自然科学研究所所員時代にスポットライトを当て、氏の上海での生活及び中国人科学者・学者たちとの交流実態を明らかにしようとするものであった。小宮は近代日本の寄生虫学者で、東京帝国大学医学部在学時代から、社会医学を志していたという。のちに、マルクス主義に傾倒し共産主義のシンパとして活動していたため、特高にマークされ監獄に入れられる直前に、恩師の横手千代之助・東京帝大教授の助けで1931年上海に避難し、日本の文化事業の上海自然科学研究所に入所して終戦まで大陸の寄生虫病の研究に従事していた。戦後になって、小宮は中国政府の要請を受け寄生虫撲滅の建議案を提出し、その結果、長年中国の農村部で苦しめられた日本住血吸虫病がほとんど治まることになったという。   2つの報告の後、討論者としてJohan_Nordstrom氏(都留文科大学)と篠原翔吾氏(在中国日本国大使館専門調査員)が加わって2つの報告についてそれぞれ適切なコメントをしてくださった。さらにフロアーから興味深い質問やコメントをいただいて、活発な議論が行われた。   最後に、今回の会議についての感想を述べさせていただきたい。   まず、東アジアにおける国境や地域を越えた日本研究関連の学術・人的交流を目的として発足した東アジア日本研究者協議会が主催する国際学術会議は、今回の天津会議が2回目で、私は1年前の仁川会議に続き、連続参加となった。初回に比べると各国の日本研究者の姿がより多く見られ、同協議会の国際学術大会の知名度や地位はわずか1年で随分上昇し、各国の日本研究機関にかなり重視されていることが分かった。   次に、今回の国際会議は、各国から270名以上の日本研究者が集まったが、共催の天津・南開大学日本研究院によって、周到に準備され、会議は順調に進められた。この点について高く評価したい。一方、セッションのアレンジについてであるが、同じ時間帯にいくつかの同分野のセッションが集中したため、各セッションの参加者が薄く分散してしまう結果になった。来年以降の会議は、その点に関して是非改善していただきたい。   さらに、今回は渥美国際交流財団関口グローバル研究会が3つのチームを派遣し、かなり注目されていた。SGRAが日本研究に力を入れ精力的に支援していることが幅広く知られるようになった。SGRAの知名度アップに貢献するにとどまらず、渥美財団・SGRA=日本研究の重要な存在というイメージの確立に成功したといっていい。是非、次回以降の大会にも引き続きチームを派遣し続けていただきたい。   最後に、次年度の「第3回東アジア日本研究者協議会国際学術大会」の一層の成功と、渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)派遣チームのさらなる活躍を願って、今回のセッション報告を終わらせていただきたい。   <林 泉忠(リン・センチュウ)John_Chuan-Tiong_Lim> 国際政治専攻。2002年東京大学より博士号を取得(法学博士)。同年より琉球大学法文学部准教授。2008年より2年間ハーバード大学客員研究員、2010年夏台湾大学客員研究員。2012年より台湾中央研究院近代史研究所副研究員、2014年より国立台湾大学兼任副教授。       2018年2月2日配信
  • ボルジギン・ブレンサイン「日本の植民地支配下の東アジアにおけるメモリアル遺産:東アジア日本研究者協議会パネル報告(2)」

    2017年10月28日(土)中国の天津において、「第2回東アジア日本研究者会議国際学術大会」が開催され、SGRAから参加した3つのパネルの1つとして「日本植民地支配下の東アジアにおけるメモリアル遺産」と題するパネルを発表した。当パネルは発表者3人、コメンテーター2人で構成され、南開大学日本研究院の方々を中心とする来場者を前に、戦前と戦後の日中関係について幅広い議論が交わされた。   本パネルの趣旨は、東アジアのほとんどの地域が日本の植民地支配を受けていた20世紀前半の特殊な歴史的環境において、人と物の交流がどのように一体化し、またそれが戦後にどのような遺産として残され、戦後の枠組みでどのように扱われてきているのかに関するものである。日本の植民地支配は関係する国と地域にとって不幸な歴史であったことはいうまでもないが、日本の支配が敷かれていたこれらの地域において、日本の近代化の経験による各種の社会整備、調査記録や記念物が形として残された。そして戦後の70年間、東アジアを取り巻く複雑な関係性のなかで、これらのメモリアル遺産の存在が直視され、議論される場は多くなかったように思われる。本パネルでは、戦後の視点に立ってこれらのメモリアル遺産の歴史的広がりやそれがもつ現代的な意味について議論した。   1つ目の発表は、グロリア・ヤン・ユー(コロンビア大学大学院博士後期課程)さんによる「実像か幻想か:満洲の視覚資料の見方や眼差しの再考」である。グロリアさんは長春を事例に、日本支配期以前の満洲におけるロシアの都市建設の遺産とそれに対する日本の姿勢を取り上げた。グロリアさんの発表は、20世紀前半期の中国東北地域(満洲)における政治的対立の枠組みが「日中」で固定化している状況に対して、満洲のメモリアル遺産におけるロシアの本来の役割を位置づけ、満洲の都市建設は「日中露」3者の舞台であったと提示したところが重要である。   2つ目の発表は、鈴木恵可(東京大学大学院博士後期課程)さんの「再展示される歴史と銅像―台湾社会と植民地期の日本人像」である。鈴木さんの発表では、日本統治期の台湾(1895~1945)の公園、広場、博物館といった公共空間に立てられていた多くの日本人高官の銅像とそれらの銅像の戦後の行方を丁寧に追った。これらの銅像は、日本統治期に入って初めて台湾に出現したモノであり、最も早期に人々の眼に触れやすい場所に展示された西洋式彫刻作品であったが、銅像の大きな特徴は、それが近代彫刻という美術のカテゴリーに入りつつも、それを設置する行為・モノ・空間のそれぞれが強い社会的、政治的な意味を帯びている点にある。1940年代以降の金属回収と日本の敗戦によって、こうした銅像は台湾社会から姿を消したが、2000年以降になって、わずかに残されていた植民地期の銅像が再発見され、展示され始めるという現象が起こっているという。鈴木さんの発表では、植民地期の銅像設置の過程とともに、この複雑な歴史遺産を現代の台湾社会がどう取り扱っているのかについて取り上げた。   3つ目の発表は、ブレンサイン(滋賀県立大学)の「満鉄と満洲国による農村社会調査について」である。ブレンサインの発表は、第二次世界大戦終戦までの満洲―中国東北三省や内モンゴル地域が日本によるアジア植民地の一部であった歴史的前提に立って、この時期における多民族空間に着目した。つまり、モンゴル系やツングス系のような牧畜、狩猟民族も多く居住するこれらの地域では、日本主導の近代的な手法による社会調査が多く行われ、これら多民族雑居地域における最初の本格的な社会調査の貴重な記録メモリとして残された点を取り上げた。これらの調査を主導したのは満鉄や満洲国政府の関連機関であったが、多民族雑居地域の基層社会の詳細なデータが記録されたのはほかのアジア植民地社会調査と異なる点であり、被調査社会のみならず、調査者にとっても貴重な近代的社会調査の経験であったと指摘している。ブレンサインの報告は、満鉄と満洲国関連機関が行った多民族農村社会の実態調査を系統的に紹介すると同時に、戦後の視点から日本と東アジア関係史上特殊なこの時期に残された記録遺産との向き合い方についても考え方を提示した。   1人目のコメンテーターである張思(南開大学歴史学院教授)先生は、日本植民地時代のメモリアル遺産を過去の政治やイデオロギーの束縛から脱出して、21世紀の視点から直視すべきと指摘した。張先生はさらに、これらの遺産をソ連時代のレーニン、スターリン像などと比較しながら、過去の時代のメモリアル遺産をどのように受け入れていくかは世界的な問題でもある。日本の植民地時代と向き合う姿勢については、植民地時代は全員「共犯」だというサイードの言葉を引用しながら、関係者全員による反省が大事であるとコメントした。   2人目のコメンテーターであるマグダレナ・コウオジェイ(デューク大学博士後期課程)さんは、本パネルで報告した上記3名の研究内容はそれぞれの分野で今まで見落とされてきたものの重要な部分であるという共通点があり、分野を超えて議論することの重要性を強調した。マグダレナさんは特に、地図や銅像といった視聴覚を直接刺激する歴史的素材をもって論じることの特異な効果を強調し、これらの研究は日本植民地支配期を「統治―被統治」の枠組みで単純化する傾向に対して多様な視点を提供するものであるとコメントした。   発表者はコメンテーターの意見に対してそれぞれ簡潔なコメントを述べたあと、会場からの質問にも答え、満洲国の在り方、日中関係など幅広い課題について議論が交わされた。   本パネルの司会は南開大学が母校である桜美林大学の李恩民先生がつとめた。本パネルの成果は天津や南開大学に土地勘の強い李恩民先生の司会進行に帰するところが大きいことを記しておきたい。報告者、コメンテーターや司会の先生方に改めて感謝を申し上げたい。   <ボルジギン・ブレンサイン Borjigin_Burensain> 渥美国際交流財団2001年度奨学生。1984年に内モンゴル大学を卒業後内モンゴル自治区ラジオ放送局に勤務。1992年に来日し、2001年に早稲田大学で博士学位取得。現在は滋賀県立大学人間文化学部准教授。     2018年1月25日配信
  • モリソン&ブリティカ・アルサテ「おぞましき女性の行方:東アジア日本研究者協議会パネル報告(1)」

    2017年10月28日(土)中国天津において、第2回東アジア日本研究者協議会が開催され、私たちはSGRAから参加したパネルの1つ、「おぞましき女性の行方──フェミニズム批評から読む日本神話および昔話」というパネル発表をしました。当日は5人のパネルメンバーを含め、約20人の参加者を迎えてややこじんまりした会となりましたが、熱心な議論が交わされ、実り多い時間を過ごすことができました。   本パネルは日本神話と昔話の原文および現代作家によって語り直された作品をフェミニズムの観点から考察し、家父長的な要素を脱構築することを目的としました。パネルの流れとして、最初に司会者の張桂娥さん(台湾東呉大学副教授)がパネルの目的およびメンバーの紹介を行い、次に2つの発表をした後、討論者がコメントをし、最後に参加者の質疑応答の時間を設けました。以下、各発表の要旨と討論者によるコメントを簡単にまとめます。   一つ目の発表はリンジ―・モリソン(武蔵大学人文学部助教)による「暗い女の極み──日本昔話の『蛇女房』におけるおぞましき女性像をめぐって」でした。モリソンは「蛇女房」という日本の昔話をフェミニズム批評の観点から考察しました。人間と動物が結婚する、いわゆる異類婚姻譚は世界中に見られる昔話のモチーフのひとつです。日本にも異類婚姻譚が数多く伝承されていますが、「蛇女房」の場合、蛇女房は本性を夫に覗かれた後、自分の子供を人間の世界に置いて動物の世界に戻ります。先行研究では、このような異類女房が人間の世界から悲しく去ってしまう姿を日本昔話の「美しさ」と称賛され、そこに「日本らしさ」も見出されています。そのような見解に対し、本発表はジュリア・クリステヴァのアブジェクション(棄却、おぞましきもの)という概念を用いて、異類女房の「消滅」を男性による女性への「欲望」や「支配欲」として批判的に読み直しました。   二つ目の発表はフリアナ・ブリティカ・アルサテ(国際基督教大学ジェンダー研究センター研究所助手)による「神話の復習と女性の復讐──桐野夏生の『女神記』をフェミニズムから読む」でした。この発表では、桐野夏生の小説『女神記』においてイザナミとイザナキの神話がどのように語り直されているかを説明し、またフェミニストの観点から女性の復讐の描写に焦点を当てました。イザナミとイザナキの神話は、日本の男性中心主義的な文化の構築において重要な役割を果たしています。その文化では、男女は最初から不平等で、女性は穢れや黄泉国と関連付けられています。桐野の『女神記』は、女性の肉体と欲望、さらに妊娠や出産、母親になることなどと関連したものに直接的に結びついた女性の抑圧の心理的かつ文化的な側面を理解する試みだと言えます。桐野はこの小説を通して、女性を裏切られた犠牲者として描写するのではなく、彼女らに声を与えているのだというのが本発表の結論でした。   討論者のレティツィア・グアリーニ(お茶の水女子大学大学院博士後期課程)のコメントでは、神話、昔話、童話など、古くから語り継がれる物語において作り上げられた女性像・男性像が型となり、我々の意識に根付いてしまっていることについて触れました。家父長制による性の抑圧が反映されているそれらの物語が自明のプロットになり、永遠不変な原型となってしまうものの、その物語によって支えられている支配的言説は、歴史的ないし社会的な慣例にすぎない。この結論に至るためには、本パネルの発表のように、神話や昔話をジェンダーの視点から再考し、それらの物語を読み直す、そして書き直す必要があるのだともコメントしました。   2人目の討論者のシュテファン・ヴューラー(東京大学大学院博士後期課程)のコメントでは、ジュディス・バトラーのアブジェクション論の読み方を紹介し、主体と客体の境界線の脆さや瞬間性を指摘しました。つまり、主体と「おぞましきもの」とされる客体の境界線は静的、自然な、普遍的なものではなく、常に繰り返し引き直さなければならないと話しました。さらに、ヴューラーは『女神記』の問題点に触れ、結局この小説は登場する女性を「嫌な女」として描き、これまでの権力構造をただ逆転して男女の二分法的な関係および思考パターンを再生産してしまっているだけなのではないかと反論しました。   発表者がそれぞれの討論者のコメントおよび反論に回答した後、参加者からの質問を受けました。フェミニズムとナショナリズム、日本人と外国人の解釈の違い、日本の理想的な母子像、異類婿の話など、多岐に渡る質問で場が盛り上がりました。   今回は(公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)のパネルの発表者およびリーダーとして参加でき、とても嬉しく思っています。発表やさまざまな研究者との意見交換によって、自分たちの研究を発展させ、ネットワークを広げることができました。素晴らしい機会を与えていただき、誠にありがとうございました。 (文中敬称略)   第2回東アジア日本研究者協議会国際学術大会の写真   <フリアナ・ブリティカ・アルサテ Juliana Buriticá Alzate> 渥美国際交流財団2015年度奨学生。2010年4月に来日。国際基督教大学大学院アーツ・サイエンス研究科比較文化専攻で修士号を取得。2017年に同研究科博士後期課程を修了。現在は国際基督教大学のジェンダー研究センターの研究助手や神奈川大学の非常勤講師。専門は比較文学およびジェンダー研究。   <リンジ―・レイ・モリソン Lindsay Ray Morrison> 2016年度渥美奨学生。2017年に国際基督教大学大学院アーツ・サイエンス研究科博士後期課程を修了し、現在は武蔵大学人文学部助教。専門は日本文化研究。日本人の「ふるさと」意識の系譜について研究している。     2018年1月18日配信
  • 本多康子「第11回SGRAチャイナ・フォーラム『東アジアからみた中国美術史学』@北京報告」

    2017年11月25日、北京師範大学において第11回SGRAチャイナ・フォーラム「東アジアからみた中国美術史学」が開催された。共催の北京師範大学や清華東亜文化講座の告知や広報の成果もあって、当日は会場を埋め尽くすほどの総勢70名以上の聴衆が参集し、本テーマへの関心の高さがうかがえた。   2014年から行ってきた清華東亜文化講座との共催による本フォーラムは、広域的な視点から東アジア文化史再構築の可能性を探ることをテーマの主眼に据えている。   過去3回のフォーラムでは、近代に成立した国民国家のナショナリズムの言説に取り込まれ、東アジア各国において分断された一国文化史観からいまだ脱却しきれない今日の歴史認識や価値観の問題点を浮き彫りにした。さらに、「国境」や「境界」というフレームに捉われない当地域全体の文化的相互影響、相互干渉してきた多様な歴史事象の諸相を明らかにし、交流を結節とした大局的な東アジア文化(受容)史観を構築することの重要性を指摘してきた。   第4回にあたる今回のフォーラムでは、昨年に続き2回目の登壇となる塚本麿充氏(東京大学東洋文化研究所)と新たに呉孟晋氏(京都国立博物館)を講師として迎え、それぞれの講演を通して、前近代から近代にかけての日本における中国美術コレクション形成と中国美術史学確立をめぐる人的・物質的往来とその交流史を照射し、改めて東アジア美術史ないし文化史が内包する越境性や多様性とはなにか、そして越境や交流によって創出された新たな価値観をどのように受容・共有していくか、を提示することとなった。   はじめに、総合司会の孫建軍氏(北京大学)による登壇者紹介と、今西淳子SGRA代表による開会挨拶とフォーラムの開催経緯の説明があった。次いで、前半部の問題提起と2つの講演、休憩をはさんだ後半部の討論(質疑応答)と総括の二部構成で展開した。   林少陽氏の問題提起では、まず過去のチャイナ・フォーラムで提示された、従来の一国美術史観への批判と「国家」に収斂され得ない中間領域に存在する美術作品の再編に関する諸問題を踏まえて、近現代中国美術史学が社会の変革期に直面した文化的アイデンティティーの葛藤を「中間地帯」というキーワードから読み解いた。ここでは、清末から民国期にかけて活躍した高剣父や陳樹人ら嶺南画派による日本画を介した西洋画法受容と失われた伝統的中国画法への回帰を例に挙げ、さらに傳抱石や潘天寿ら同時代画家による言説をとりあげながら、前近代と近代/東洋と西洋のはざまで新たな「中国絵画(国画)」確立を模索する中国美術家たちのジレンマを紹介した。   塚本氏の講演「近代中国学への架け橋―江戸時代の中国絵画コレクション―」では、室町期の足利将軍家による唐物収集と「東山御物」コレクション形成によって威信財としての機能を付与された中国絵画が、応仁の乱による散逸を経て、再び江戸時代において文化的権威として巧みに利用されてきた実相を明らかにした。とりわけ福井藩の牧谿「瀟湘八景図」や「初花茶入」などの具体例にみえる江戸と地方、藩と幕府、各大名家の間での唐物の交換・流通の実態、さらには狩野派による広範な模写制作ネットワークの機能は、作品本体を幾重にも覆う入れ子細工のような「価値」となっていった。しかしながら、近代中国学と近代美術史学の成立の過程において、このような前近代の「箱」の歴史と価値体系が黙殺されてしまった実情に先立ち、今日改めてこれらの価値体系を再評価することの重要性を強調した。   呉氏の講演「漢学と中国学のはざまで―長尾雨山と近代日本の中国書画コレクション―」では、中国学者で書家でもあった長尾雨山(1864-1942)を取り上げ、それぞれ漢学者、中国学者、在野の書画鑑定家という3つの側面からその足跡をたどった。近世と近代、日本と中国、東京と京都、漢学と中国学、官と民、そのような多様な「はざま」に身を置き、当時の中国文人や清朝遺臣との交流により培われた書画観は、下野してからも書画鑑定に生かされた。また近年京都国立博物館に寄贈された長尾雨山の膨大な関係資料を調査・分析することにより、従来の近代美術史学の間隙を突く、近代日本の学知および中国との文化交流の新たな一端が拓かれることが今後期待できよう。   続いて休憩を挟んでの後半部では、王志松氏(北京師範大学)による進行のもと、過去のチャイナ・フォーラムの報告者とコメンテーターである、趙京華氏(北京第二外国語学院文学院)、王中忱氏(清華大学中国文学科)、劉暁峰氏(清華大学歴史学科)、董炳月氏(中国社会科学院文学研究所)を討論者として迎え、前半の登壇者を交えて活発な議論が交わされた。   趙京華氏は、藝術品だけでなくそのコレクション形成に付随する物語性や政治性を認識する重要性を確認したうえで、今後一国美術史を超越した東アジア美術史を構築するあたり、近代以降の植民地主義に象徴される過去のネガティブな歴史認識や政治的言説をどのように超克していくべきか、そのためにはどのような制度改革が必要なのか、という近代の歴史叙述が直面するジレンマを踏まえ、鋭い質問を投げかけた。   王中忱氏は、中国の近代美術教育の萌芽期と清末文人との交流によって培われた長尾雨山の書画観の同時代性に着目した。さらに1920~1930年代の中国画家が日本に留学し複製された西洋絵画を通してその技法を学んだことから、近代書画の流通・伝来において模写・模本・複製が果たす役割を改めて検証し、それが中国人の視覚にどのような影響を与えたかも今後検討すべきであると提言した。   劉氏は、中間領域における「他者の目」の存在を指摘し、同一のものに対して多種多様な「異なる」見方、価値体系が並立していることを指摘し、それもまた中間領域における多層性や多様性を担っていることを強調した。   続いてフロアとの質疑応答が行われた。紙面の関係上全てを紹介することはできないが、殊に印象的だったのは、日本で展開したいわゆる正統ではない中国美術コレクション収集の背景には不完全なものを好む日本の美意識ないし審美眼が影響を与えているのではないか、というフロアの質問に対して、塚本氏は美術史家である矢代幸雄(1890-1975)の言説を批判的に取り上げ、その「一つの審美的な感覚が一つの固有の民族に普遍的に備わっており、それによりすべての価値判断ができる」姿勢の危うさと虚構性を指摘したことであった。   最後に、董炳月氏による総括があった。今回の二つの講演をうけて、近年の一連のチャイナ・フォーラムの理念の根幹である「東アジアからの視点」は中国美術史学にとってどのような意義を持つのか、改めて問い直すものであった。他方、国や地域で線引きをして「境界」をつくるならば、それに依拠する観察眼もまた異なってくるのか、今後の新たな試みの可能性を提示した。   現役のあるいはかつての博物館学芸員として、多種多様で豊饒な美術作品世界に身を置きながら、社会における「文物」としての価値創造を問い続けるお二人の研究姿勢に基づく講演は、大変説得力があった。従来提唱された近代中国学や近代美術史学の学問体系から取りこぼされてしまった、絵画観や美術史家に焦点をあてて再評価することの意義が改めて認識された。   今回取り上げた題材は、前近代と近代における日本における中国美術と中国美術史学の言説だが、翻ってそれは、「他者」を受け入れた日本の歴史叙述の姿勢を合わせ鏡のように省察することに他ならないのである。   当日の写真   <本多康子(ほんだ・やすこ)Yasuko_Honda> 東京都出身。学習院大学大学院人文科学研究科博士後期課程単位取得退学。2015年度より渥美財団勤務(兼国文学研究資料館共同研究員)。専門分野は日本中世絵画。著作に、「東京国立博物館所蔵「土蜘蛛草紙」の物語フレーム再考」(佐野みどり企画・編集『中世絵画のマトリックスⅡ』青簡舎、2014年)、「京都時衆教団における祖師伝絵巻制作:金蓮寺本を中心に」(鹿島美術財団編『鹿島美術財団年報別冊第33号』2016年)等。       2017年12月28日配信      
  • エッセイ556:マックス・マキト「マニラ・レポート2017年秋:第24回持続可能な共有型成長セミナーinシドニー『人や自然を貧くしない進歩:地価税や経済地代の役割』報告」

      2017年9月23日(月)、SGRAフィリピンが開催する24回目の持続可能な共有型成長セミナーがオーストラリアのシドニー市で開催された。このセミナーの目標が効率・公平・環境なので、ローマ字の頭文字をとってKKKセミナーとも呼ばれている。日本語だけでなく、フィリピン語でも頭文字がKKKとなる。2004年3月にマニラ市で開催した第1回セミナー以来、年2回のペースで実施してきたが、今後は、フィリピン大学ロスバニョス校の協力を得て、より頻繁に開催する予定である。   KKKセミナーの実行委員のひとりで、オーストラリアに本部を置く「良き政府協会」の総書記のジョッフレ・バルセ氏(Joffre_Balce)の提案により、今回の第24回セミナーは初めてフィリピンの外で開催された。テーマはバルセ氏が第20回KKKセミナーで発表した「地価税」であった。本セミナーの共同主催者「良き政府協会」は19世紀米国の政治経済学者のヘンリー・ジョージ(Henry_George)の政治経済政策を提唱している。その重要な議論の1つが地価税である。今回のセミナーの開催地及び日時は、特別の意味があった。9月は1901年に設立された良き政府協会の設立月にあたり、開催地は地価税が課税される国である。   以下はバルセ氏からの報告である。 -------------------   このたび、1901年に設立された良き政府協会(Association_for_Good_Government、略してAFGG)の116周年に当たって「人や自然を貧しくしない進歩」というテーマで第24回SGRA持続可能な共有型成長セミナーを共同主催させて頂いて光栄です。   私どもの協会は様々なイベントを数多く開催してきましたが、このように、太平洋の国々から発表者を招いたセミナーは初めてでした。このセミナーの発表者たちは、今の世界で主流となっている考えを批判する私の同僚の主張に共鳴してくださいました。そして、学術や政治や民間など様々な立場からの参加者と活発な議論を繰り広げ、いくつかの争点は冷静な討論に取り込まれました。   司会を務めた私、ジョッフレ・バルセは、マックス・マキト氏の1980年代のフィリピン太平洋大学の同僚で、最近日本で再会の機会に恵まれました。2015年には東京の渥美国際交流財団を訪問し、その翌年に北九州で開催された第4回アジア未来会議に参加しました。このような交流が実現したのは、へンリー・ジョージ氏の次のような3つの教えが、SGRAフィリピンが掲げている効率・公平・環境と整合性があるからです。3つの教えとは(1)貧困なき経済進歩にとって社会正義が不可欠、(2)個人の自己決定の尊重や権利の平等性からなる民主主義、(3)コモンス(共有資源)の強調、です。AFGGとSGRAの理念に敬意を表して、本セミナーは「人や自然を貧しくしない進歩」というテーマで開催されました。   最初の発表者は、AFGG会長で、25年間事務局長を務めたリチャード・ガイルス氏(Richard_Giles)で、当日の議論の枠組みを設定しました。「ヘンリー・ジョージの社会的哲学」という演題で、個人の権利は大多数の合意に従わせる共同権利ではなく、個人の尊さを支持するものであるという権利平等の原理を丁寧に説明されました。この2つの権利の十字路において、人類の進歩発展が貧富の格差を生み出すか普遍的な繁栄をもたらすかが決まります。社会で共有されるものは2つあります。1つは、無料で誰にも所有されず、生きるために自由に使える自然界から豊富に提供された資源です。もう1つは、社会における協力が生み出す価値であります。そして、それが国の価値の唯一の源で、共有する富で、「単一税」の対象になるのです。   次に、マキト氏に代わって私が「地価税:理論や実証のサーベイ」を発表しました。これはリチャード・F・ダイ(Richard_F.Dye)やリチャード・W・イングランド(Richard_W.England)が編集し、2009年に出版した本のレビューでした。参加者はマキト氏の2つの結論に同感しました。1つは、税収の中立性という概念は、地価税の逆進性が福祉予算を減らすというイングランドの懸念を完全に払拭したこと、もう1つは、ヘンリー・ジョージの単一税という概念はより高度な収入の中立性としても考えられ、他の税金を無くしても政府の予算が足りなくならないことを意味しているということです。参加者は、既得権益が地価税の活発な研究や検討を妨げているという嘆きに同情的でした。   夫のサムエル・サプアイ氏(Sam Sapuay) の手伝いを受けながらグレース・サプアイ氏(EnP.Grace_Sapuay)は「フィリピンにおける地価税の実際の便益」について発表し、ケゾン市やマリキナ市の事例を紹介しながら、フィリピンのマニラ都における地価税の理解と実施の歴史的背景を議論しました。参加者はフィリピン社会の問題に大変同情的でありながら、数多くの税金や地価税に対するフィリピン立法者の誤った理解は社会的格差を生み出す重要な原因と指摘しました。サプアイ氏はその指摘を認め、AFGGの地価税のメカニズムについて、これから夫と共にさらに学びたいと答えました。   ランチを挟んで、私が「なぜ貧困反対が十分ではないのか:ジョージ流の改革の発展途上国との関連性」について発表しました。主な論点は、貧困緩和における政府援助の失敗、新古典派、新ケインズ派、近代金融論の欠点、そして、国民の経済活動と地価から、政府が「当然な分」だと称して獲得していくことの正当性に対する批判でした。ヘンリー・ジョージが提案する改革は、すでに次のような事例があります。ドイツのアドルフ・ダマスクク(Adolf Damaschke)による税制を中心とした土地改革、1930年代の世界大不況からオーストリアを救ったシルビオ・ゲゼル(Silvio Gessel)が提案したシニョリッジ政策(通貨発行益)、そして中国の近代革命を率いた孫文が提案したジョージ流の土地改革です。   最後の発表者はクアラルンプールにあるマレイシア大学法学部のヨギースワラム・スブラマニアム氏(Dr. Yogeeswaram_Subramaniam)でした。「先住の土地権利をジョージ主義に調和させる」と題する発表は法律の分野、特に先住の権利に、ヘンリー・ジョージの教えを適用する先駆的な試みでした。彼は先住民の法律の素晴らしい歴史とアメリカの先住民に対する支援について語りました。参加者はジョージ主義の妥当性とこれからの研究可能性に関する発表の結論を概ね受け入れました。ただ、先住土地権利の扱いにおける権利平等性や共同権利の意味について激した討論もありました。土地の権利は遺伝的ではなく平等であるという歴史的正義についても面白い議論がありました。   今回のセミナーの発表者および参加者は1人残らずセミナーの主催者のAFGGとSGRAに感謝し、今後の協力に期待しています。   当日の写真     <マックス・マキト☆Max_Maquito> SGRAフィリピン代表。SGRA日比共有型成長セミナー担当研究員。フィリピン大学ロスバニョス校准教授。フィリピン大学機械工学部学士、Center_for_Research_and_Communication(CRC:現アジア太平洋大学)産業経済学修士、東京大学経済学研究科博士、テンプル大学ジャパン講師、アジア太平洋大学CRC研究顧問を経て現職。       2017年12月21日配信    
  • 1 / 1512345...10...最後 »