SGRAかわらばん

エッセイ793:キン・マウン・トウエ「ミャンマー大地震被災者支援活動(その2)」

2025年3月28日のミャンマー大地震から2カ月。マンダレーの町は瓦礫もだいぶ撤去され、生活も徐々に日常に戻ってきました。しかしあちこちで重機が作業をしており、交通機関にも影響が残っています。構造まで被害を受けた建物は取り壊して空き地になりますが、放置されている建物もたくさんあります。大半の建物は復旧していませんが、工事中でも開店する店があります。私が経営する居酒屋「秋籾」が入る「イビススタイルホテル」は大きな被害を受けなかったのですが、内装工事に時間がかかっており、来月に営業が再開出来ることを祈っています。

 

毎日余震があるので、建物の2階へ上がるのが怖いと言う人がたくさんいます。ミャンマーの新学年は6月に始まるため、学校の復旧が急がれています。私立の学校や病院はともかく、公立施設は予算的なこともあってか、なかなか工事が進んでいません。被害が大きかった首都ネピィドー管区では、政府が国会議事堂などの復旧に注力しています。

 

これまでに26カ国から災害支援活動の専門家、医療関係者が訪れ、ミャンマー政府を通して寄付金も届きました。非政府組織(NGO)や民間の仲介で外国の支援団体も来て活動しています。私もこの「SGRAかわらばん」を通して支援金を頂戴し、被害者の復興のためのお手伝いをすることができました。

 

前回のエッセイ(SGRAかわらばん1058号、2025年4月10日)で報告したように、地震直後はまず、私が経営するホテルに滞在していた時に自宅が被災した方々に対して一緒に話したり、無料で食事を提供したりしました。次に病院やお寺などで、お弁当と飲料水を配りました。家族を亡くした方々、家を無くした方々、自分の財産が大地震で無くなり、一瞬で生活基盤を失ってしまった方々に対して、お弁当一食だけでも心を休ませる大きな力があることを感じました。実は、お弁当より「応援していますよ!」という笑顔が、皆さんに大きな力を与えることができるのです。「これから、頑張ろう」「立ち直りましょう」と気力が湧いてきたようでした。私たちも「何か力になりたい」という気持ちで一杯になりました。

 

SGRAの皆様のお力をお借りしながら、夜は入院中の父親の世話をしながら、支援する場所や予算内で可能な支援物資を検討しました。その結果、震源地サガイー市の1か所と決めました。支援物資は、地震1ヵ月後に必要な医療品や米、食用油、塩、卵などとソーラーランプ250家族分を調達しました。

 

5月5日、私は家族とボランティアと一緒に、支援物資をお届けするためにサガイー市に向かいました。事前に知り合いのボランティア団体を通じて大きな被害を受けた方々に番号が書かれたクーポン券を配布してもらっており、券を持って来た方たちに直接物資を手渡しました。予算が限られているので、多くの被災者が押し寄せたら対応できないためです。

 

この日はとても暑く、大汗をかきながらも笑顔で対応しました。被災者のみなさんの喜ぶ顔が忘れられません。2007年にミャンマーを襲った「ナルギス大台風」から、私は子どもたちに「必要な時には人々に自分の力を貸す」「自分でできることを支援する」と教えてきたので、今回も家族は喜んで活動を手伝ってくれました。

 

サガイー市は有名な観光地です。多くのお寺や僧院、老人ホームなどがあり、大きな被害を受けました。活動の翌日、ある僧院に「復興のために使ってください」と、残りの支援予算を寄付しました。今回の復興支援活動の募金にご協力してくださった一人一人の皆様への感謝は、言葉で書き尽くせません。「地球の平和を考える地球市民の行動」であると心から敬意を表します。

 

これからは、単なる「復旧」ではなく、災害に強い街づくりを考えた「復興」を重視しなくてはならないでしょう。民間企業は建設基準を守り、政府は監督を厳しくすることが重要になるでしょう。地震に対応できる最新の建設技術や資材なども導入しなければならないでしょう。

 

4カ月間入院し、今回の地震も乗り切った父が5月15日に92歳で亡くなりました。9歳の時から聞かされ続けてきた「努力」「自分に頼らなければならない」「国民に出来ることは精一杯に」という「言葉の宝」を頭と心の中に据えて、ひとりの民間人として微力ながらも、ミャンマーのために出来ることを続けていくつもりです。

 

活動の写真

 

4月10日に配信したキン・マウン・トウエさんのエッセイ

 

<キン・マウン・トウエ Khin Maung Htwe>
ミャンマーで「小さな日本人村」と評価されている「ホテル秋籾(AKIMOMI)」の創設者、オーナー。マンダレー大学理学部応用物理学科を卒業後、1988年に日本へ留学、千葉大学工学部画像工学科研究生終了、東京工芸大学大学院工学研究科画像工学専攻修士、早稲田大学大学院理工学研究科物理学および応用物理学専攻博士、順天堂大学医学部眼科学科研究生終了、早稲田大学理工学部物理学および応用物理学科助手を経て、AKIMOMI_COMPANY_LTD.社長。「ホテル秋籾」「居酒屋秋籾」を経営。SGRA会員。

 

※4月10日にSGRAかわらばん1058号で配信したキン・マウン・トウエさんのエッセイで支援活動募金にご協力をお願いしたところ、16名と1団体より、目標額を超える総計417,000円のご寄付をいただきました。皆さんから寄せられた暖かいメッセージを添えて、バンコクに留学中の長女リサさんを通じて全額をキンさんにお届けしました。ご支援をありがとうございました。 SGRA代表 今西淳子

 

 

 

2025年5月29日配信