SGRAの活動

  • 2022.06.08

    レポート第98号「アジアはいかに作られ、 モダンはいかなる変化を生んだのか? ―空間アジアの形成と生活世界の近代・現代―」

    SGRAレポート第98号(日中合冊)     第15回SGRAチャイナフォーラム 「アジアはいかに作られ、 モダンはいかなる変化を生んだのか? ―空間アジアの形成と生活世界の近代・現代―」 2022年6月9日発行     <フォーラムの趣旨> 山室信一先生(京都大学名誉教授)の『アジアの思想史脈―空間思想学の試み』(人文書院、2017年。徐静波・訳『亚洲的思想史脉——空间思想学的尝试』上海交通大学出版社・近刊予定)と『モダン語の世界へ:流行語で探る近現代』(岩波新書、2021年)などを手がかりとして、「アジアという空間が翻訳・留学などによっていかに作られたのか?」さらに、その時空間において「modernやglobalizationなどがいかなる生活様式・思考様式の変容をもたらしたのか?」を概念語や日常語の視点からいかに捉えるのかを検討するものである。   <もくじ> 【開会挨拶】 はじめに―開会挨拶― 今西淳子(渥美国際交流財団) 野田昭彦(国際交流基金北京日本文化センター)   【講演】 「アジアはいかに作られ、モダンはいかなる変化を生んだのか? ―空間アジアの形成と生活世界の近代・現代―」 山室信一(京都大学名誉教授)   【コメントと回答】 [コメント1] 王 中忱(清華大学中国文学科) [コメント2] 劉 暁峰(清華大学歴史系) [コメント3] 趙 京華(北京第二外国語学院) [コメント4] 林 少陽(香港城市大学中文及歴史学科)   【質疑応答】 質問者:フォーラム参加者/回答者:山室信一   【閉会挨拶】 王 中忱(清華大学中国文学科)   講師略歴   あとがきにかえて 孫 建軍(北京大学日本言語文化学部)
  • 2022.06.06

    金雄煕「第20回日韓アジア未来フォーラム『進撃のKカルチャー:新韓流現象とその影響力』報告」

      2022年5月14日(土)、新型コロナウイルスが「終盤」の猛威を振るう中、第20回日韓アジア未来フォーラムが前回同様Zoomウェビナー方式で開催された。これまで2回続けて日韓関係の「暗い」部分を扱ってきたが、今回は今西さんのご提案で「明るい」部分について議論することにし、「防弾少年団(BTS)」の文化力に焦点を当て「進撃のKカルチャー:新韓流現象とその影響力」について議論を交わした。日韓、そしてベトナムから専門家を招き、BTSの文化力の源泉をなすものは何か、BTS現象は日韓関係、地域協力、そしてグローバル化にどのようなインプリケーションをもつものなのかなどについて幅広い観点から検討した。   フォーラムでは、渥美国際交流財団SGRAの今西淳子(いまにし・じゅんこ)代表による開会の挨拶に続き、日本と韓国から2名の専門家による基調報告が行われた。まず、小針進(こはり・すすむ)静岡県立大学教授は「文化と政治・外交をめぐるモヤモヤする『眺め』」という題で、政治と文化を切り離せない葛藤、政治ニュースの韓国とInstagramの韓国のギャップへの葛藤、文化消費と政治的価値観・世代間の差への葛藤、魅了する文化と不安定な大統領の国に対する葛藤、反日・親日騒動と嫌韓助長への葛藤、政治的表明とその反発への葛藤、政治の文化への介入と「推し」の反日疑惑への葛藤、熱心なファン集団「ファンダム」のSNS投稿を素直に楽しめない葛藤、アーティスト批判の嫌韓論への葛藤、以前は日本が韓国の手本だったことに対する葛藤など、日本の大学生が経験している文化と政治をめぐる葛藤とモヤモヤする「眺め」の実体を様々な側面から生々しく描いた。   韓準(ハン・ジュン)延世大学教授は、「BTSのグローバルな魅力」について、外的環境的な要因と内的力量的な要因に分けて考察した研究結果を報告した。まず、外的、環境的な要因として、グローバル文化における中心―周辺関係の弱化又は解体、文化的趣向におけるヒエラルキーの弱化とオムニボア(雑食性)の登場、文化的価値としてのハイブリッドと真正性の結合、個人化したデジタル媒体によるマスメディアの代替を挙げた。そして内的、力量的な要因として音楽スタイルやパフォーマンス能力の卓越性、真正性とアイデンティティの結合を通じた共感の拡大、グローバルファンダムである「アーミー(BTS公式ファンクラブ)」の強力なサポートを指摘した。   第2部に入り、ミニ報告では、チュ・スワン・ザオ(Chu Xuan Giao)ベトナム社会科学院文化研究所上席研究員が、ベトナムにおけるKポップ・Jポップ、ベトナムからのKポップ・Jポップの現状を紹介し、文化資源としてのVポップの可能性について若干の考察を加えた。自由討論では、金賢旭(キム・ヒョンウク)国民大学教授が日本の伝統芸能の一分野である能との比較から、平田由紀江(ひらた・ゆきえ)日本女子大学教授がメディア・文化研究の観点からそれぞれコメントした。   第3部では、金崇培(キム・スンベ)国立釜慶大学准教授と金銀恵(キム・ウンヘ)釜山大学准教授のアシストでウェビナー画面の「Q&A 機能」を使って一般参加者との質疑応答が行われた。最後は、徐載鎭(ソ・ゼジン)未来人力研究院院長により、日韓アジア未来フォーラムの経緯や役割についての熱いコメントと閉会の辞で締めくくられた。今回は250を超える一般からの参加申し込みがあり、最多時の参加者が170人を上回った。静岡県立大学、仁荷大学から若い学生の参加も多かった。十分な質疑応答が行われたとは言い切れない部分もあるが、アンケートを通じて多くの参加者からフォーラムの感想などが寄せられた。「フォーラムは期待通りであった」(「大いに期待通り」56.6%、「だいたい期待通り」38.4%)と答えた人の割合が95%を占めており、「新韓流現象やモヤモヤの正体が分かった」との感想もあった。   今回は第20回という節目だったにもかかわらず、惜しくもコロナ禍で記念行事や日韓アジア未来フォーラムならではの「番外」はなかった。次回は20年を振り返りつつ、ぜひ「春鹿」と「爆弾酒」を飲みながらの会にしたいと思う。最後に第20回目のフォーラムが成功裏に終わるよう支援を惜しまなかった今西SGRA代表と李鎮奎未来人力研究院前理事長(咸鏡道知事)、そして前回同様ウェビナーの準備に万全を期し、完璧なフォーラムに仕上げてくれたスタッフの皆さんのご尽力に感謝の意を表したい。   当日の写真 アンケート集計 韓国語版はこちら   <金雄煕(キム・ウンヒ)KIM Woonghee> 89年ソウル大学外交学科卒業。94年筑波大学大学院国際政治経済学研究科修士、98年博士。博士論文「同意調達の浸透性ネットワークとしての政府諮問機関に関する研究」。99年より韓国電子通信研究員専任研究員。00年より韓国仁荷大学国際通商学部専任講師、06年より副教授、11年より教授。SGRA研究員。代表著作に、「日韓基本条約の意義と限界」『日本研究論叢』第43号、2016年;日本の自由で開かれたインド太平洋構想と包摂的競争のジレンマ」『日本研究論叢』第54号、2021年;『現代日本政治の理解』共著、韓国放送通信大学出版部、2022年。最近は国際開発協力、地域貿易協定に興味をもっており、東アジアにおける地域協力と統合をめぐる日・米と中国の競争と協力について研究を進めている。
  • 2022.05.17

    第69回SGRAフォーラム 第7回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性 「『歴史大衆化』と東アジアの歴史学」へのお誘い

      下記の通り第7回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性をオンラインで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。一般聴講者はカメラもマイクもオフのウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。   テーマ:「『歴史大衆化』と東アジアの歴史学」 日 時:2022年8月6 日(土)午後2時~午後5時(日本時間) 方 法: オンライン(Zoom ウェビナーによる) 言 語:日中韓3言語同時通訳付き 主 催:渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA) 助 成:(公財)鹿島学術振興財団   ※参加申込(クリックして登録してください) お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612)     ■開催趣旨 新型コロナ感染症蔓延が続くなか、「国史たちの対話」ではオンラインでのシンポジウムを開催し、一定の成功を収めてきたと考える。イベントを開催する環境にはなお大きな改善が期待しづらいことを踏まえ、引き続き従来参加してきた人々のなかでの対話を深めることを重視した企画を立てた。   大きな狙いは、各国の歴史学の現状をめぐって国史研究者たちが抱えている悩みを語り合い、各国の現状についての理解を共有し、今後の対話に活かしてゆきたい、ということである。こうした悩みは多岐にわたる。今回はその中から、各国の社会情勢の変貌、さまざまなメディア、特にインターネットの急速な発達のもとで、新たな需要に応えて歴史に関係する語りが多様な形で増殖しているが、国史の専門家たちの声が歴史に関心を持つ多くの人々に届いておらず、かつ既存の歴史学がそれに対応し切れていない、という危機意識を、具体的な論題として設定したい。   共通の背景はありつつも、各国における社会の変貌のあり方により、具体的な事情は多種多様であると考えられるので、ひとまずこうした現状認識を「歴史大衆化」という言葉でくくってみた上で、各国の現状を報告して頂き、それぞれの研究者が抱えている悩みや打開策を率直に語り合う場としたい。   なお、円滑な対話を進めるため、日本語⇔中国語、日本語⇔韓国語、中国語⇔韓国語の同時通訳をつける。フォーラム終了後は講演録(SGRAレポート)を作成し、参加者によるエッセイ等をメールマガジン等で広く社会に発信する。   ■問題提起 韓 成敏(高麗大学) 「『歴史大衆化』について話しましょう」     ■プログラム 第1セッション(14:00-15:20)  総合司会: 李 恩民(桜美林大学) 【開会の趣旨】彭浩(大阪公立大学) 【問題提起】韓 成敏(高麗大学) 「『歴史大衆化』について話しましょう」 【指定討論】 中国:鄭 潔西(温州大学) 日本:村 和明(東京大学) 韓国:沈 哲基(延世大学)   第2セッション(15:30-16:45) 司会: 南 基正(ソウル大学) 【論点整理】劉 傑(早稲田大学) 【自由討論】パネリスト(国史対話プロジェクト参加者) 平山 昇(神奈川大学)、毛 立坤(南開大学)、金 澔(ソウル大学)、佐藤雄基(立教大学)、宋 志勇(南開大学)、塩出浩之(京都大学)、金キョンテ(全南大学)、鄭 淳一(高麗大学)   第3セッション(16:45-17:00) 総合司会: 李 恩民(桜美林大学) 【総括】三谷 博(東京大学名誉教授) 【閉会挨拶】趙 珖(高麗大学名誉教授)   ※同時通訳 日本語⇔中国語:丁 莉(北京大学)、宋 剛(北京外国語大学) 日本語⇔韓国語:李 ヘリ(韓国外国語大学)、安 ヨンヒ(韓国外国語大学) 中国語⇔韓国語:金 丹実(フリーランス)、朴 賢(京都大学)   ※プログラム・資料の詳細は、下記リンクをご参照ください。 ・プロジェクト概要 ・プロジェクト資料    
  • 2022.04.08

    第20回日韓アジア未来フォーラム「進撃のKカルチャー:新韓流現象とその影響力」

    下記の通り日韓アジア未来フォーラムをオンラインにて開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。聴講者はカメラもマイクもオフのZoomウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。   テーマ:「進撃のKカルチャー:新韓流現象とその影響力」 日 時: 2022年5月14日(土)15:00~17:00 方 法: Zoomウェビナー による 言 語: 日本語・韓国語(同時通訳付き) 主 催: (公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会 [SGRA] (日本) 共 催: (財)未来人力研究院(韓国) 申 込: こちらよりお申し込みください   お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612)     ■ フォーラムの趣旨 BTSは国籍や人種を超え、一種の地球市民を一つにしたコンテンツとして、グローバルファンダムを形成し、BTS現象として世界的な注目を集めている。一体BTSの文化力の源泉をなすものは何か。BTS現象は日韓関係、地域協力、そしてグローバル化にどのようなインプリケーションをもつものなのか。本フォーラムでは日韓、アジアの関連専門家を招き、これらの問題について幅広い観点から議論してみたい。日韓の基調報告をベースに討論と質疑応答を行う。 日韓同時通訳付き     ■  プログラム 《開会》 司会:金雄煕(キム・ウンヒ、仁荷大学教授) 【開会の辞】:今西淳子(いまにし・じゅんこ:渥美国際交流財団常務理事・SGRA代表)   第1部 講演 【講 演 1】「文化と政治・外交をめぐるモヤモヤする「眺め」」 小針進(こはり・すすむ:静岡県立大学教授) 【講 演 2】「BTSのグローバルな魅力」 韓準(ハン・ジュン:延世大学教授)   【休  憩】   第2部 討論 【ミニ報告】「ベトナムにおけるKポップ・Jポップ」 チュ・スワン・ザオ(Chu Xuan Giao:ベトナム社会科学院文化研究所上席研究員) 【講演者と討論者の自由討論】 金賢旭(キム・ヒョンウク:国民大学教授)、 平田由紀江(ひらた・ゆきえ:日本女子大学教授)、   第3部 質疑応答 【質疑応答】 アシスタント:金崇培(キム・スンベ:釜慶大学日語日文学部准教授) 金銀恵(キム・ウンヘ:釜山大学社会学科准教授) Zoom ウェビナーのQ&A機能を使い質問やコメントを視聴者より受け付ける   【閉会の辞】:徐載鎭(ソ・ゼジン:未来人力研究院院長) 《閉会》   韓国語版サイト
  • 2022.04.05

    三宅綾「第17回SGRAカフェ『国境を超えたウクライナ人』報告」

      2022年3月21日20時から1時間半にわたり、第17回SGRAカフェ「国境を超えたウクライナ人」がZoomウェビナーで開催されました。今回のカフェは、奇しくもロシアによるウクライナ侵攻開始と同じ2月に発行されたばかりの『国境を超えたウクライナ人』(2022年、群像社)の著者であり、2004年度渥美奨学生でもあるオリガ・ホメンコさんを講師にお迎えして、著作からウクライナとウクライナ人の歴史、文化的背景まで幅広くお話しいただきました。オリガさんは風邪で体調がすぐれない状態でしたが、最後まで情熱をもってお話しくださいました。当日は以前からオリガさんと親交の深い群像社編集発行人の島田進矢さんにゲスト、中央大学教授の大川真先生にコーディネーターとして参加いただきました。   最初に司会の今西淳子SGRA代表よりオリガさんの渥美奨学生当時の懐かしい写真、最初の著作『ウクライナから愛をこめて』(2014年、群像社)の元となったメールマガジン「SGRAかわらばん」(毎週木曜日に日本語で配信)への長年にわたるウクライナに関する投稿や最新作の内容とともにオリガさんの紹介がありました。続いてオリガさん、島田さんから短いご挨拶をいただいた後、『国境を超えたウクライナ人』執筆の経緯や「国境」、「超える」がキーワードとなった経緯について対談していただきました。   オリガさんからはウクライナの歴史と文化、ウクライナ人の精神的背景について日本との関わりも交えてお話しいただきました。特にウクライナのたどってきた歴史や置かれてきた状況についての話は、日本ではほとんど知られていない事ばかりで、物事や状況を多方面から見て考えることの大切さと、与えられる情報だけではなく、自ら知ろうとする事の大切さを教えられるものでした。これまでの支配のトラウマを乗り越え、今まさに自分たちの事を語り始めようとしているウクライナの方々の気持ちがオリガさんを通じて切々と伝わってきました。   最後に大川先生が参加者からの質問やコメントを紹介し、オリガさん、島田さん、今西さんの4人でお話しいただきました。ウクライナでは自由な自己表現ができなかった時代から詩人と作家がウクライナの主張を伝える上で大きな役割を果たしてきたという説明がありましたが、その作品は必ずしもウクライナ語で表現されるものだけではないという指摘が印象的でした。自分たちの言語はもちろん大切にするべきものだが、それがアイデンティティの全てではなく、大切なのは意識であり、文化であるということ、ウクライナのアイデンティティは歌、刺繍、踊り、生活習慣、生活風土などいろいろなものを含むとても豊かなものであることを理解してもらいたいし、それを通じて自己表現していくことが大切であるというオリガさんの一貫した主張が心に響きました。そういう意味でも、オリガさんの著作はウクライナを理解するうえで素晴らしい案内役ではないでしょうか。そして、ただ心を痛めるだけではなく、自ら知ろうとすること、多面的に考えようとすることの大切さが分かっているようで分かっていなかったことに気づかされました。   カフェの参加者からは、ウェビナーを通じてオリガさんにお話しいただいた事への感謝とオリガさんの気持ちに寄り添おうとする温かい応援がたくさん寄せられました。厳しい状況の中、また体調が万全ではない中で、力強いメッセージを伝えてくださったオリガ・ホメンコさんに改めて感謝いたします。   当日の写真とオリガさん書籍の紹介   アンケート集計結果     <三宅綾(みやけ・あや)MIYAKE Aya> 東京都出身。博物館学修士(ジョージワシントン大学)、哲学修士(美術史系)(学習院大学)。独立行政法人 科学技術振興機構(JST)(現・国立研究開発法人 科学技術振興機構)勤務を経て2020年より渥美国際交流財団に勤務。     2022年4月7日配信  
  • 2022.03.14

    デール・ソンヤ「第68回SGRAフォーラム『夢・希望・嘘―メディアとジェンダー・セクシュアリティの関係を探る』報告」

    2022年2月20日(日)14時~17時、第68回SGRAフォーラムを開催しました。Zoomウェビナーを利用した完全オンライン形式です。コロナ禍の影響で、なかなか実際に会うことができませんが、このような形で皆さんとイベントができることはありがたいです。テーマはデジタルや新メディアの時代にふさわしい「夢・希望・嘘―メディアとジェンダー・セクシュアリティの関係を探る」です。東アジアを中心に、日本、中国、韓国の事情についての発表とディスカッションがあり113名が登録、参加してくださいました。発表者はハンブルトン・アレクサンドラ先生と元渥美奨学生3名―バラニャク平田ズザンナ先生(2019年度)、于寧先生(2020年度)、洪ユン伸先生(2008年度)。Q&A担当は郭立夫さん(2021年度)、モデレーターはデール・ソンヤ(2012年度)です。開会挨拶は、SGRA代表の今西淳子さんがしてくださいました。このイベントに多くの渥美奨学生に関わってもらい、またジェンダー・セクシュアリティを専門とするメンバーが増えていることに、感謝と喜びを感じています。   基調講演は津田塾大学のハンブルトン・アレクサンドラ先生。「今の時代、白馬に乗った王子様って必要?リアリティーテレビの『バチェラージャパン』と『バチェロレッテジャパン』から見たジェンダー表象」というタイトルで、最近流行っている恋愛リアリティ番組から見える社会現象についてです。最初に現代日本の結婚および少子高齢化社会をめぐる言説と婚活事業を紹介してくださいました。結婚や出産に関して政府の視野が狭く、日本に住んでいる人々の現実を十分把握できていないとの指摘です。経済的に苦労している人が多く、与えられた性別によってサバイバルの対策が異なります。日本の「バチェラージャパン」でみられるように、男性と結婚することで経済的な安定を求める女性が多くいます。しかし、同時にこのような恋愛リアリティ番組も固定概念に基づいているラブ・ストーリーしか描こうとしていません。多様性が反映されていないことが問題です。ハンブルトン先生の結論として、白馬に乗った王子様は今の時代に必要です。しかし、その王子様はお金持ちの男性ではありません。必要となっているのは社会福祉の改善と全ての人のための暮らしやすい社会作りです。   講演の後は3名の元渥美奨学生による各20分の発表でした。バラニャク平田ズザンナ先生(お茶の水女子大学)は「日本の宝塚歌劇団とファン文化」、于寧先生(国際基督教大学)は「中国本土のクィア運動とメディア利用」、洪ユン伸先生(一橋大学)は「韓国のフェミニズムと嫌フェミニズム運動」についてです。   バラニャク平田先生は事情によりリアルタイムで参加できず、事前に録画していただいたものを流しました。「夢を売り、夢を描く:ジェンダー視点からみる宝塚歌劇団の経営戦略と関西圏のファン文化」という発表で、宝塚歌劇団の歴史的・社会的な背景を紹介した上でファンからの聞き取り調査から得た情報を共有していただきました。宝塚歌劇団は「夢の世界」として売られているもので、その「夢の世界」を家父長的な経営戦略および都市空間という二つの側面から分析し、女性ファンのエンパワーメントを考察しました。   次は于寧先生による「中国本土のクィア運動におけるメディア利用―北京紀安徳咨詢センターによるメディア・アクティビズムを中心に」という発表です。歴史的な視点から、時代に合わせて活動家が使っているメディア媒体の変化や直面する社会問題などを紹介していただき、中国本土のクィア活動について知る重要な機会となりました。発表で紹介された北京紀安徳咨詢センターの活動は終了したとのことで、マイノリティ団体が活動を長く続けることの難しさを改めて実感しました。しかし、団体そのものがなくなっても成果を残せば、従来から続いている運動に活用できるので、過去にとっても将来にとっても貴重な社会貢献だといえます。   最後の発表は洪ユン伸先生による「MeTooからデンジャンニョ(味噌女)まで:韓国のメディアにおける「フェミ/嫌フェミ」をめぐって」という発表でした。近年、韓国のフェミニズム運動が可視化された一方、フェミニズムバッシングも増えたとのことです。その背景及び現象を紹介し、韓国のMeToo運動が直面する課題などを説明してくださいました。学校などの公的な場所でのMeToo運動がある一方で、バッシングを受ける恐れから実名で自分が受けた経験について語ることができない現状があるそうです。韓国においてフェミニズムはまだ物議を醸す話題です。韓国のMeToo運動に対して、シスジェンダーとヘテロセクシャル、いわばマジョリティの立場にいる女性と男性から視野を広げる必要もあり、これからの課題としてLGBTや障がい者を取り組むことも必要とのことでした。   最後は4名の発表者とのディスカッション・質疑応答です。韓国、中国と日本のメディアとジェンダー・セクシュアリティや社会問題などについて話し合い、時間が足りないほど幅広く様々な話題にふれました。議論された課題の中には検閲の問題、政府の政策と出産・結婚やメディアの関係性、メディアにおける多様性、フェミニズム運動におけるトランスジェンダー女性の位置付けなどがありました。   ジェンダーとセクシュアリティの話になると、現状を把握した結果、絶望的になりやすいですが、最後に皆さんがそれぞれの分野で今期待していることについて話しました。様々な社会問題が残っており、男女平等もまだ果たしていない東アジア(台湾以外)に同性結婚やトランスジェンダーの権利がまだできていないのが現状ですが、少しずつ変化も感じられます。また、皆さまと対談ができることも、とても嬉しいことです。これからも、このような対談が増えていくことを期待しています!   当日の写真   アンケート集計   <デール・ソンヤ DALE Sonja> ウォリック大学哲学部学士、オーフス大学ヨーロッパ・スタディーズ修士を経て上智大学グローバル・スタディーズ研究科にて博士号取得。これまで一橋大学専任講師、上智大学・東海大学等非常勤講師を担当。現在、インディペンデントリサーチャー。ジェンダー・セクシュアリティ、クィア理論、社会的なマイノリティおよび社会的な排除のプロセスなどについて研究。2012 年度渥美国際交流財団奨学生。     2022年3月17日配信      
  • 2022.03.10

    第17回SGRA-Vカフェ「国境を超えたウクライナ人」へのお誘い

    下記の通り第17回SGRA-Vカフェをオンラインで開催いたします。参加ご希望の方は、下記より事前参加登録をお願いします。聴講者はカメラもマイクもオフのZoomウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。SGRAカフェはどなたにも参加していただけますので、関心のある方をお誘いください。   テーマ:「国境を超えたウクライナ人」 講 師:オリガ・ホメンコ(キエフ・モヒーラビジネススクール助教授)   日 時:2022年3 月21日(月・休)午後8時~9時30分 方 法:Zoomウェビナーによる 会 費:無料 言 語:日本語 参加申込:こちらよりお申込みください   お問い合わせ:SGRA事務局 ([email protected] 03-3943-7612)     講師略歴: オリガ・ホメンコ Olga Khomenko キエフ生まれ。キエフ・モヒーラビジネススクール助教授。東京大学大学院の地域文化研究科で博士号取得。フリーのジャーナリスト・作家・通訳として活動中。2004年度渥美奨学生。 著書:藤井悦子と共訳『現代ウクライナ短編集』(2005)、単著『ウクライナから愛をこめて』(2014)、『国境を超えたウクライナ人』(2022)を群像社から刊行。   講師からのメッセージ: 『国境を超えたウクライナ人』・・・今更このタイトルは皮肉に聞こえるかもしれません。ウクライナ史、国境に対するウクライナ人の思いを書きました。歴史的な観点から西と東の国境の存在について、また国境に対するウクライナ人の想いについて、海に囲まれた島国の日本の皆さんに理解を深めていただきたいです。それにしても本の題名がそのまま現実になるとは思いませんでした。正に悪夢です。私は侵略の2日前に今滞在する欧州の都市に着きましたが、私の家族は、空爆が始まった次の日に、苦労の末にキエフを離れることができ、30時間以上ドライブして国境を越えました。まだキエフに居る親戚、友達、教え子、同僚の無事を祈らずにはいられません。   プログラム   主催:(公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA) www.aisf.or.jp/sgra/     2022年3月10日配信
  • 2022.02.01

    レポート第97号「「誰一人取り残さない」 如何にパンデミックを乗り越え SDGs 実現に向かうか ―世界各地からの現状報告―」

    SGRAレポート第97号   第67 回SGRA フォーラム 「誰一人取り残さない」 如何にパンデミックを乗り越えSDGs 実現に向かうか ―世界各地からの現状報告― 2022年2月10日発行   <フォーラムの趣旨> SDGs(Sustainable Development Goals 持続可能な開発目標)は、2015 年9月の国連サミットで、国連加盟193 カ国が採択した、2016 年から30 年までの15 年間で持続可能で、より良い世界を目指すために掲げた目標。国連ではSDGs を通じて、貧困に終止符を打ち、地球を保護してすべての人が平和と豊かさを享受できるようにすることを目指す普遍的な行動を呼びかけている。具体的には、17 のゴール(なりたい姿)・169 のターゲット(具体的な達成基準)から構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leaveno one behind)」ことを誓っている。SDGs に取り組むのは、国連加盟国の各国政府だけではなく、企業、NPO、NGO などの各種団体、地方自治体、教育機関、市民社会、そして個人などすべての主体がそれぞれの立場から取り組んでいくことが求められている。   2020 年はSDGs の5年目になる年であったが、新型コロナウイルスによるパンデミックが世界を席巻し、世界各国の経済や社会生活に多大な打撃を与え、世界大戦に匹敵する死傷者を出す悲惨な状況になってしまった。世界では先進国を中心にワクチン開発・供給などで取り組んで来ているが、多くの発展途上国は、資本主義の生存競争のなかで、パンデミックの対応に困難を極める状況に置かれているのが現状である。   本フォーラムは、SDGs の基本理念と目標について理解するとともに、いくつかの国をケーススタディとしてとりあげ、パンデミックを如何に克服して「誰一人取り残さない」SDGs の実現に対応すべきかについて議論を交わすことを通じて、「地球市民」を目指す市民の意識を高め、一人一人がSDGs に主体的に取り組むアクションを起こすきっかけを提供することを目的とする。     <もくじ> 【第1 部】 基調報告 SDGs時代における私たちの意識改革 佐渡友 哲(日本大学、INAF)   【第2 部】 世界各地からの現状報告 【報告1】 フィリピンにおけるSDGs フェルディナンド・C・マキト(フィリピン大学ロスバニョス校、SGRA) 【報告2】 ハンガリーにおけるSDGs ―水に関するハンガリー・中国の国際関係・協力を事例に― 杜 世鑫(INAF) 【報告3】 「 アラブ持続可能な開発レポート2020」から読み解く 中東・北アフリカ地域のSDGsに向けた課題 ダルウィッシュ ホサム(アジア経済研究所、SGRA) 【報告4】 朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)における SDGsの取り組みと評価 李 鋼哲(北陸大学、SGRA、INAF) 【報告5】 民主化プロセスとパンデミック ―歴史の運命のいたずらに翻弄されるスーダン暫定政府と国民― モハメド・オマル・アブディン(参天製薬(株)、SGRA)   【第3 部】 討論・総括 モデレーター:李 鋼哲(北陸大学、SGRA、INAF) 指定討論者: 羽場 久美子(神奈川大学教授・青山学院大学名誉教授、INAF)、三村 光弘(環日本海経済研究所(ERINA)、INAF) パネリスト:報告者全員 総   括:平川 均(名古屋大学名誉教授、SGRA、INAF)   あとがきにかえて 李 鋼哲(北陸大学、SGRA、INAF)   講師略歴
  • 2022.01.19

    第68回SGRAフォーラム「夢・希望・嘘 -メディアとジェンダー・セクシュアリティの関係性を探る-」へのお誘い

    下記の通りSGRAフォーラムをオンラインで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。聴講者はカメラもマイクもオフのWebinar形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。   テーマ:「夢・希望・嘘 -メディアとジェンダー・セクシュアリティの関係性を探る-」 日時:2022年2月20日(日)午後2時~5時 方法:Zoom Webinarによる 主催:渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)   ※参加申込(下記URLより登録してください) https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_KSs7_UZmR_aDZ3P5lgTUOw お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612)       ■フォーラムの趣旨 現代社会に生きる者がメディアの影響からのがれることは難しい。服から食べ物まで、私たちの日常的なあらゆるものの選択はメディアに左右されている。 同様に、子供のころからジェンダーやセクシュアリティに関わる情報にさらされ、女性は、男性はいかに行動すべきなのか、どのようなジェンダーやセクシュアリティが存在するのか、恋愛とは何なのかというイメージもメディアにより作られている。メディアは意見を作るための貴重なツールであるだけでなく、意見を変えるためのツールでもある。 本フォーラムではメディアはどのように恋愛、ジェンダーやセクシュアリティの理解に影響を与えているのか?視聴者やファンはどのようにメディアと接触しているのか?社会的な変化のために、メディアをどのように利用することができるのか?など、現代におけるメディアとジェンダーおよびセクシュアリティの関係性のさまざまな様相を皆さんと共に掘り下げ、探ってゆきたい。   ■プログラム 【基調講演】 ハンブルトン・アレクサンドラ(津田塾大学) 「今の時代、白馬に乗った王子様って必要? リアリティーテレビの「バチェラージャパン」と「バチェロレッテジャパン」から見たジェンダー表象」   【発表①】 バラニャク平田ズザンナ(お茶の水女子大学) 「夢を売り、夢を描く :ジェンダー視点からみる宝塚歌劇団の経営戦略と関西圏のファン文化」   【発表②】 于寧(国際基督教大学) 「中国本土のクィア運動におけるメディア利用 ―北京紀安徳咨詢センターによるメディア・アクティビズムを中心に―」   【発表③】 洪ユン伸(一橋大学) 「Me tooからデンジャンニョ(味噌女)まで :韓国のメディアにおける「フェミ/嫌フェミ」をめぐって」   司会/モデレーター:デール・ソンヤ(インディペンデントリサーチャー)   ※詳細はプログラムをご覧ください。
  • 2022.01.13

    レポート第96号「第6回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性 ―人の移動と境界・権力・民族」

    SGRAレポート第96号 中国語版 韓国語版   第66回SGRAフォーラム講演録 第6回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性  「人の移動と境界・権力・民族」 2022年6月9日発行   <フォーラムの趣旨> 「国史たちの対話」企画は、自国の歴史を専門とする各国の研究者たちの対話・交流を目的として2016 年に始まり、これまで全5 回を開催した。国境を越えて多くの参加者が集い、各国の国史の現状と課題や、個別の実証研究をめぐって、議論と交流を深めてきた。第5 回 は新型コロナ流行下でも対話を継続すべく、初のオンライン開催を試み、多くの参加者から興味深い発言が得られたが、討論時間が短く、やや消化不良の印象を残した。今回はやや実験的に、自由な討論に十分な時間を割くことを主眼に、思い切った大きなテーマを掲げた。 問題提起と若干のコメントを皮切りに、国や地域、時代を超えて議論を豊かに展開し、これまで広がってきた参加者の輪の連帯を一層深めたい。   <もくじ> 第1セッション [総合司会:李 恩民(桜美林大学)] 【開会趣旨】 はじめに 村 和明(東京大学) 【問題提起】 人の移動からみる近代日本:国境・国籍・民族 塩出浩之(京都大学) 【指定討論1】 13~14世紀のモンゴル帝国期における人の移動 韓国:趙 阮(釜山大学) 【指定討論2】 中国の歴史における大規模な人口移動 中国:張 佳(復旦大学) 【指定討論3】 古代および中世日本の出入国管理 日本:榎本 渉(国際日本文化研究センター)   第2セッション 指定討論 [司会:南 基正(ソウル大学)] 【指定討論4】 近代における韓国人の移動 韓国:韓 成敏(世宗大学) 【指定討論5】 中心から辺地へ―「ゾミア」という概念― 中国:秦 方(首都師範大学) 【指定討論6】 帝国・人権・南洋―政治思想の視座から― 日本:大久保健晴(慶應義塾大学) 指定討論者への応答  塩出浩之(京都大学) 自由討論1 講師と指定討論者   第3セッション 自由討論2 [司会:彭 浩(大阪市立大学)] 論点整理:劉 傑(早稲田大学) パネリスト(国史対話プロジェクト参加者): 市川智生(沖縄国際大学)、大川 真(中央大学)、佐藤雄基(立教大学)、 平山 昇(神奈川大学)、浅野豊美(早稲田大学)、沈 哲基(延世大学)、 南 基玄(韓国独立記念館)、金キョンテ(全南大学)、王 耀振(天津外国語大学)、 孫 継強(蘇州大学)   第4セッション 自由討論3 [司会:鄭 淳一(高麗大学)] パネリスト(国史対話プロジェクト参加者): 市川智生(沖縄国際大学)、大川 真(中央大学)、佐藤雄基(立教大学)、 平山 昇(神奈川大学)、浅野豊美(早稲田大学)、沈 哲基(延世大学)、 南 基玄(韓国独立記念館)、金キョンテ(全南大学)、王 耀振(天津外国語大学)、 孫 継強(蘇州大学)   総括 宋 志勇(南開大学)、三谷 博(東京大学名誉教授) 閉会挨拶 趙 珖(高麗大学名誉教授)   講師略歴   あとがきにかえて 金キョンテ、三谷博   参加者リスト