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2007.02.24
第27回SGRAフォーラム in 秋葉原
「アジアの外来種問題~ひとの生活との関わりを考える~」
日 時:2007年5月27日(日)
14:30~17:30
その後懇親会
会 場:秋葉原UDX南6階コンファランス
*JR秋葉原駅「電気街」改札口をでて右へ。2階デッキを渡って2階入り口から入ってください。
主 催: 関口グローバル研究会 (SGRA:セグラ)
協 賛:(財)損保ジャパン環境財団
(財)渥美国際交流奨学財団
鹿島建設株式会社
協 力:(財)自然環境研究センター
フォーラムの趣旨:
SGRA「環境とエネルギー」研究チームが担当する6回めのフォーラム。
私たちのまわりには、飛行機や船によって持ち込まれたさまざまな生きものが「外来生物」として定着している。ブラックバスをはじめとする外来生物は、そこにもともといた「在来生物」に悪影響を及ぼすものとして大きな問題になっている。しかしながら、ありとあらゆるものが「外」からはいってきて定着し、在来生物を駆逐していくのは、人類の歴史が経験していることである。外来生物の何が問題なのか。グローバル化がますます進む中で、東南アジアや日本の事例をとりあげ、私たちがしなければならないことは何なのか一緒に考えたい。
プログラム:
詳細は:プログラム をご覧ください。
【基調講演】多紀保彦(自然環境研究センター理事長、長尾自然環境財団理事長、東京水産大学名誉教授)
「外来生物とどう付き合うか~ アジアの淡水魚を中心に ~」
【講 演1】加納光樹(自然環境研究センター研究員)
「外来生物問題への取り組み~いま日本の水辺で起きていること~」
【講 演2】プラチヤー(カセサート大学水産学部講師、SGRA研究員)
「インドシナの外来種問題~魚類を中心として、フィールドからの報告~」
【パネルディスカッション】進行:今西淳子(SGRA代表)
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2007.02.10
SGRAレポート第35号
第24回フォーラム講演録
「ごみ処理と国境を越える資源循環:私が分別したゴミはどこへ行くの?」
2007年2月10日発行
------- もくじ ---------------
【講演1】 「廃棄資源の国際間移動の現状と課題:アジアを中心として」
鈴木 進一(㈱エックス都市研究所 取締役)
【講演2】 「EUの再生資源とリサイクル:ドイツを中心として」
間宮 尚(鹿島建設㈱技術研究所上席研究員)
【講演3】 「アジアにおける家電リサイクル活動に関する調査報告」
李 海峰(北九州市立大学、SGRA研究員)
【講演4】 「廃棄物問題と都市の貧困:マニラ貧困層のコミュニティ資源の活用」
中西 徹(東京大学総合文化研究科教授)
【パネルディスカッション】
進行:高偉俊(北九州市立大学助教授、SGRA研究チーフ)
パネリスト: 鈴木 進一(㈱エックス都市研究所 取締役)
間宮 尚(鹿島建設㈱技術研究所上席研究員)
李 海峰(北九州市立大学、SGRA研究員)
中西 徹(東京大学総合文化研究科教授)
外岡 豊(埼玉大学経済学部社会環境設計学科教授)
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2006.12.05
下記の通りSGRAフォーラムを開催しますのでふるってご参加ください。参加ご希望の方は①氏名②所属③連絡先④懇親会の出欠をSGRA事務局
(
[email protected])へご連絡ください。SGRAフォーラムはどなたにも参加していただけますので、ご宣伝いただけますようお願いいたします。
■第26回SGRAフォーラム
「東アジアにおける日本思想史~私たちの出会いと将来~」
○日時:2007年2月17日(土)午後2時30分~5時30分 その後懇親会
○会場:東京国際フォーラム ガラス棟会議室510号室
http://www.t-i-forum.co.jp/function/map/index.html
○会費: フォーラムは無料、懇親会は会員*1000円、非会員3000円
(*年会費を納入していただいている正会員と学生会員)
○フォーラムの趣旨
SGRA「グローバル化と地球市民」研究チームが担当する6回めのフォーラムです。日本(人)思想は、現在、東アジアとの関係において、重要な局面に出会っていると思います。ただ、そのあたりは「表の政治」等では見えません。もっとそれをよく捉えるならば、そこから、21世紀の思想世界が見えるだろうとも思います。それは現在、大きな形で起こっている、思想・宗教の国際化・グローバル化の問題でもあるからです。そこで、この問題を、日本からのみならず、中国と韓国からの視点を加えながら、過去から学び、現在を分析し、将来を考えてみたいと思います。中国・韓国のことを研究しながら日本のことに関心をもつ日本人学生、日本のことを研究しながら自国のことに関心をもつ中・韓の留学生が増えて来ています。そういう人たちから、何かよいものが出て来ることを期待しています。
○プログラム(発表要旨と講師略歴は下記URLからご覧ください)
【基調講演】 黒住 真(東京大学大学院総合文化研究科教授)
「日本思想史の『空白』を越えて」
【発 表1】 高 煕卓(韓国グローカル文化研究所首席研究員、SGRA研究員)
「江戸の思想とその未来的な可能性」
【発 表2】 林 少陽(東京大学大学教養学部特任助教授、SGRA研究員)
「越境の意味:私と日本思想史との出会いを手がかりに」
【パネルディスカッション】
進行:孫 軍悦(東京大学大学院総合文化研究科博士課程、SGRA研究員)
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2006.11.10
SGRAレポート第34号
第23回フォーラム講演録
「日本人と宗教:宗教って何なの?」
2006年11月10日発行
---もくじ-----------------
【基調講演】「日本人にとっての『宗教』と『宗教のようなもの』」
島薗 進(しまぞの・すすむ)東京大学教授(宗教学専攻)
【パネリスト自己紹介】「日本と宗教と私」
○日本と神道
ノルマン・ヘィヴンズ (國學院大學神道文化学部助教授)
○日本人と仏教
ランジャナ・ムコパディヤーヤ (名古屋市立大学大学院人間文化研究科助教授、SGRA研究員)
○日本人とキリスト教
ミラ・ゾンターク (富坂キリスト教センター研究主事、SGRA研究員)
○日本人とイスラーム教
セリム・ユジェル・ギュレチ (イスラム文化センター事務総長)
【パネルディスカッション】「日本人と宗教」
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2006.11.05
秋の3連休、その最終日の11月5日、海のきれいな葉山で「親日・反日・克日:多様化する韓国の対日観」をテーマに、第6回日韓アジア未来フォーラムが開催された。日韓をひんぱんに往来しながら活躍する若手の研究者に、近代における韓国人の日本留学と人的ネットワークの形成、韓国における歴史認識/論争、「独島/竹島」と反日、韓流と日韓関係についての最近の研究成果を発表してもらい、その後、自由に意見交換を行うフォーラムであった。複雑な日韓関係における敏感なテーマだけに、今回のフォーラムは非公開で行われた。
韓国未来人力研究院の李鎮奎(イ・ジンギュ)院長と今西淳子SGRA代表による開会の挨拶に続き、4人の研究者による研究報告が行われた。まずSGRA研究員の金範洙(キン・ボンス)氏の研究発表は、朝鮮留学生運動の再評価の必要性や、これまで研究課題として残されていた朝鮮留学生の実体を解明し、また日本留学を媒介とする人的ネットワークの形成と朝鮮民族運動への関わりをより具体的に明らかにするものであった。中部大学の趙寛子(チョウ・クァンジャ)氏は、最近の韓国における歴史認識をめぐる党派的「思想戦」の淵源を体系的かつ歴史的に説明した。東京大学の玄大松(ヒョン・デソン)氏は、日韓両国において独島/竹島がいかに語られるのかについてつぶさに考察し、日韓の市民社会とマス・メディアが構築した「公共圏」、「言説空間」にみられる偏りを調整する必要性を力説した。最後の発表者として静岡県立大学の小針進氏は、韓流を日韓関係の文脈から捉え、韓流の経済効果ばかり強調したり国威発揚として強調したりすべきではないと指摘した。
2時間に及ぶ発表(お勉強の時間)が終わり、休憩を挟んで、韓国国民大学の南基正(ナム・キジョン)氏の進行でフリーディスカッションが行われた。熱のこもった討論ではあったが、案外研究報告や発言などをめぐる「攻撃的な」(aggressive)コメントや感想は寄せられなかった。日韓においては、対立や葛藤が浮沈するなかでも、草の根のレベルでの価値や認識の共有が着実に深まってきていることが確認できたフォーラムでもあった。
今回のフォーラムのタイトルに「親日・反日」の文字を入れたのは、日本と関わる多くの中国人、韓国人のためにも、この「図式」に正面から取り組むことこそ大事なことだという主催者側の意図があったからである。勿論、向かうべき方向性は「多様化」であると思われるが、日韓関係の専門家ではない大多数の人々にとって、「多様化」だけをだしてもインパクトが足りないように思ったからである。「同時に、この『図式』を一般の日本人も理解すべきです。日米関係では『親日』という言葉が文字通りに使われており、私も留学交流の仕事を始める前には、日中・日韓関係におけるこの言葉の意味を知りませんでした」と今西氏。
フォーラム終了後の懇親会では、すばらしい葉山の海産物やおいしいお酒を思う存分楽しむことができた。案の定、優雅な懇親会はまもなく「狂乱」の飲み会に変わってしまった。消費したアルコールの量に驚いたが、消費量を見込んで十分に用意した主催側の「配慮」には感動を覚えた。その晩の一気飲み、ラブ・シャット、次の日の二日酔いは当分の間忘れられないであろう。
酔いつぶれる前にどこかで次のような提案と合意がなされたような気がする。
「次回の日韓アジア未来フォーラムは延辺でしませんか」
「いいですよ」
(文責:金雄煕)
SGRA運営委員の足立さん、マキトさん、許雷さんが写した当日の写真のアルバムは、下記URLからご覧いただけます。
http://www.aisf.or.jp/sgra/photos/
尚、このフォーラムの講演録は、後日、SGRAレポートとして会員の皆様に送付いたします。
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2006.10.21
去る2006年10月21日(土)、北京大学生命科学学院報告庁にて、「北京大学日本言語文学科設立60周年記念シンポジウム特別企画」として、SGRAフォーラム in 北京『若者の未来と日本語』が盛大な雰囲気の中で開催されました。
中国で初めてのSGRAフォーラムでしたが、参加者は予想外に100名を越え、会場を熱気で包んでくれました。テーマが『若者の未来と日本語』だけあって、参加者のほとんどは、北京大学、北京語言大学、北京外国語大学など、北京市内の大学から来た学生でしたが、中でも北京語言大学の学部生がもっとも多かったのです。これは、たぶん本フォーラムが実用日本語を中心に翻訳通訳者の養成に力を入れている北京語言大学の学生のニーズに合ったからではないかと思われます。
フォーラムは、午後2時から5時までの予定でしたが、4人のパネリストの熱気に溢れるスピーチの後、フロアーの参加者との真摯なディスカッションが続き、時の経つのも忘れ、5時50分になってやっと惜しい気持ちで閉会を告げました。
総合司会の孫建軍先生(北京大学日本言語文化学部助教授、SGRA研究員)の開会の言葉がよいスタートとなり、引き続き、開会の挨拶として、今西淳子代表(SGRA代表、渥美国際交流奨学財団常務理事)が、素晴らしいデザインのパワーポイントでSGRAを紹介して、参加者の人気を集めました。その好調子に乗って、パネリストが登壇し、自己紹介お後、パネルディスカッションのための主題講演が、池崎美代子先生(JRP専務理事、SGRA会員)の「ビジネス日本語とは」から始まり、続いて武田 仁先生(富士通(中国)有限公司副董事長(兼)総経理)の「グローバル企業が求める人材」、張潤北先生(三井化学北京事務所所長代理)の「日本文化と通訳の仕事」、徐向東先生(キャストコンサルティング代表取締役、SGRA研究チーフ)の「『日本語』の壁を超える」といった順で行われました。最後にSGRA運営委員長の嶋津忠廣氏がフォーラムをまとめ、閉会の辞を述べました。
パネリストの主題講演には、それぞれ特徴があって、それに対するコメントとともに、フォーラムに異彩を放ってくれました。というのも、フォーラムのテーマ自体が「若者の未来」と「日本語」という二つの意味を含んでおり、パネリストの主張も主に「ビジネスマナー」としての「美しい日本語」と、「ビジネスセンス」として『日本語』の壁を越えた「中身のある言葉」の二つが議論のテーマになっていました。池崎先生と張先生の講演では、「美しい日本語」、「文化としての日本語」とつながるものが多く覗われ、武田先生と徐先生の講演では、「若者の未来」を提示した「企業が求める人材」についての内容が多く覗われたのです。
池崎先生は「ビジネス日本語」の特徴として「美しい日本語」を強調し、「ビジネスセンス」と「日本語能力」を外国人高度専門人材像の備えるべき大切な資質としてあげました。一方、武田先生は「企業の求める人材」像について「人格(職員の魂)、センス(マナー)、能力(目標評価)、個性(自分だけのもの)」といった総合的立場から概括し、それに続いて徐先生が「ビジネスキャリア、知識(母語のレベルも含めて)、創造性(チャレンジ精神)」を「企業の求める人材」像の条件として付け加えました。張先生は、文化的要素の重要性について生き生きとした翻訳の例を挙げて興味深く説明し、また、コミュニケーションにおける「文化」的要素を「企業の求める人材」の条件の一つとして強調しました。
閉会後、参加者に「どうでしたか」と聞いたら、「とても勉強になりました」「励まされました」「日本語の勉強の目標を見つけました」「日系企業や日本社会の求める人材像が分かりました」などなど、評判の声が多かったです。
残念なのは、参加者の中に北京大と北京語言大以外の学生が少なかったことです。もっと多くの大学に声かけて、日本語を無難に駆使できる大学高学年生や大学院生に来てもらえたらもっとよかったのに・・・。
本フォーラムは、急増している中国での日本語学習者のニーズに合わせて、日本語学習者を対象に、日本語教育の現状や日系企業を含む社会のニーズや先輩の経験談を紹介し、日本語を学ぶことによって広がる未来へのビジョンを提供することで、若者の期待に応えるためにはどのような教育が必要とされているか提案することを目標として開催されましたが、予想通りの成果を上げたと思います。なお、今回のように、SGRAフォーラムを世界中に広げていくことは、われわれのこれからの仕事ではないかとも思います。
文責:朴貞姫(北京語言大学助教授、SGRA研究員)
☆足立憲彦さんと石井慶子さんが撮ってくださった写真は、アルバム1とアルバム2から覧いただけます。
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2006.09.23
2006年9月23日(土)、秋分の日に相応しい天高く馬肥ゆる秋晴れ。運動会に没頭する子どもたちの情熱に負けじと、有楽町の東京国際フォーラムにて第25回SGRAフォーラムが開催された。テーマは「ITは教育を強化できるのか」という奥深さを感じるものだった。
総合司会のSGRA研究員ナポレオン氏(ヤマタケ研究所研究員)が開会を宣言し、SGRA代表の今西淳子氏から開会の挨拶があった。今西氏は、第9回SGRAフォーラムで「デジタルデバイド」について検討した時、IT化により先進国と途上国の格差が広がる懸念があるのではないかという問題意識で企画したが、むしろ後進国が追いつき追い越すのに非常に有効な手段であると感じたと述べた。また、近日下されたオーム真理教教祖麻原被告の死刑判決にヒントを得て、優秀な理系の研究者がどうして才能を誤ったところに使ってしまったのか、これは社会の情報化と関係あるのか、そもそも教育とは何なのか、ITは価値の教育に貢献できるのかという問題を提起した。このフォーラムでは、これらの疑問点を①技術の面、②人的な面の二つの側面から考えた。
フォーラムの前半では3人の講師を迎えご講演いただいた。特に、今回のテーマを考慮に入れ、それぞれの専門分野の中で、どのようにITが教育に生かされているのかについても検討していただいた。後半のパネルディスカッションはSGRA研究員の江蘇蘇氏(株式会社 東芝)の司会の下、3人の講師により熱い討論が行われた。
一人目の講演者である横浜国立大学教授の高橋冨士信氏は、「途上国へのE-learning技術支援とオープンソースソフトウェア教育強化~南太平洋大学におけるJICAプロジェクト活動を中心に」をテーマとして、日本と途上国においてのIT教育への取り組みの違いなどについて講演した。理工系離れが深刻化している日本と対照的に、途上国では理工系への関心が極めて強い。高橋氏はリーダーとして2年間にわたり南太平洋大学(USP)のIT強化プログラムを遂行したが、この間にインド系学生が多いUSPでは情報系学科への志望者数が3倍になった。ハングリー精神をもって最先端の仕事に従事していこうとする途上国の学生と対照的に、ITが空気のようになっている日本においてはかえって学生の学習意欲が低いなど、教育効果に大きな相違が生じていると力説した。最後に、日本では若者を叱るだけではなく、団塊の世代も含めた「大人」がもっと途上国に出かけるべきで、他の文化を理解し分析した上で自国の長所や短所が初めて見えてくるし、そうすることが若者にも良い影響を与えるだろうと主張した。
次に、「伝え合うことで学ぶ『交流学習』と支援のあり方」について目白大学専任講師の藤谷哲氏が講演した。藤谷氏も高橋氏と同様、教師同士のコミュニケーション不足や新しいことへ挑戦する時の壁などの問題点が挙げられ、教師から学生に情報を十分に発信することができないと述べた。そして、「では、どんな学習活動ができたらよいと言えるのか?」という疑問を提起し、その答えを探るべく行ってきた二つの試み、①技術的な面から<ネットワークをツールとした技術者と子供たちの交流活動>と②人的な面から<国際交流・国際理解教育をテーマに教育実践>を紹介した。①では新しい科学技術の紹介ページや質問ページの開設、高校生によるプレゼンテーションなどを通して先端科学技術に関する発展的な学習・関心の深化を目指している。②では主に教師向け研修で国際教育・学校間交流学習の手法紹介、教員の招聘などを通して多国間での情報交換および国際理解教育実践を行っている。このようなプロジェクトにおいてはITを利用したネットワークの役割はますます大きくなっていると指摘した。
最後に、「Mobile-Learningが教育を変える?!」と題して台湾国立中央大学助教授の楊接期氏が講演した。楊氏の研究実例の一つに学生一人ひとりにレスポンスパッドを待たせ先生の質問に対し全員がレスポンスパッドを用いて回答するというものがある。先生はサーバーで管理された一人ひとりの答えを確認し、統計と比較することにより、生徒個々人の学習レベルや学習姿勢、モチベーションなどを把握でき、適切な指導ができるようになるというコンセプトである。また、学生同士でモバイル機器を用いたFace-to-face探求的な学習活動もあり、モバイル機器に搭載されているさまざまな植物や動物のデータベースを用い、自分たちが観察した生物について詳しく理解しレポートにまとめるという、「調べる・書く」練習がある。これらにより、先生が一方的に学生に教えるのではなく、学生自身が自ら学習をコントロールし積極的な姿勢を養うことができる。また、楊氏は「『成績がいい』と『子供が育つ』ということは必ずしも一対一の関係ではない」と唱え、モバイルテクノロジーを用いた英語学習実践例を挙げ、テストの成績はあがらなかったが、子供たちの英語を話す自信が倍増したことを示した。
10分の休憩を挟み、パネルディスカッションでは聴講者からの質問をもとに討論を広げた。
「IT化は子供たちにどういう影響を与えたのか」という問いかけに対して、楊氏は興味深いデータを示した。過去10年のコンピューターによる勉強成果統計によると、PCを持つことによって成績が下がった学生が過半数だという。一方で観察力および情報収集の力は向上した。賛否両論といったところだ。「人と接する機会を多く与えるために、小学校ではむしろパソコンを使わせないほうがよいのでは」という意見に対して、印象深かったのは「人と接する機会を多く与えるという意味では、『幼稚園児にテレビを見させないほうがよい』」に置き換えられるという藤谷氏の意見だ。肝心なのは「本当に必要なことは何か?それらをどのようにして見つけるのか?」ということで、いままでのBlack Box化した学習ではなく、目的は何か、それを達成するためには何が必要なのかという大枠をまず考える必要がある。高橋氏も同意見で、何かを習得するには①思索段階、②必要な材料(情報)を集めるという二段階のプロセスが必要で、思索段階ではIT技術は全く必要なく、想像力や経験などでオリジナリティを出す。それによりできた案に必要な材料をいかに集中力をもって集めるかという段階になるとIT技術は必要不可欠な道具となってくると指摘した。また、冒頭の「優秀な理系の大学院生がどうして才能を誤ったところに使ってしまったのか?」という問題提起に関連するが、米国と日本では理系の研究者に対しての見方に違いがある。米国ではいわゆる「ハッカー」の才能を見込んで、積極的に企業に取り込んでいっているのに対し、日本では「おたく」は暗いイメージを持ち重宝されない。こういった社会背景の中、世界有数のストレス国でもある日本では精神的におかしくなることも不可思議ではないといえるかもしれない。
いずれにせよ、ITは使い方次第で教育に役立つという結論になったのではないかと思う。「では、適切な使い方はどのようなものなのか」という次のステップの問題は、次回のフォーラムに残して、一時間半のパネルディスカッションを終えた。最後にSGRA運営委員長の嶋津忠廣氏がフォーラムをまとめ、閉会の辞を述べた。
(文責 江蘇蘇2006/10/05)
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2006.08.19
2006年9月23日(土)14:30~17:30
東京国際フォーラムG510会議室
趣旨: 第4回「IT教育革命:ITは教育をどう変えるか」、第9回「情報化と教育」、第14回「国境を越えるE-learning」に続く、SGRA「ITと教育」研究チームが担当する4回めのフォーラム。IT技術は教育を強化することができるか。国際教育の現場において、ITが教育を支援している事例を紹介し、ITによる教育強化の可能性について考える。
プログラム
【基調講演】「途上国へのE-learning技術支援とオープンソースソフトウェア教育強化-南太平洋大学におけるJICAプロジェクト活動を中心に-」
講演者:高橋 冨士信(Takahashi Fujinobu)
所属:横浜国立大学工学部教授
【研究発表1】伝え合うことで学ぶ「交流学習」と支援のあり方
講演者:藤谷 哲( Fujitani Satoru)
所属:目白大学経営学部経営学科(専任講師)
【研究発表2】Mobile-Learningが教育を変える?!
講演者:楊 接期(Yang Jie Chi)
所属:台湾国立中央大学情報工学部(助教授)
【パネルディスカッション】
進行:江蘇蘇(Jiang Susu)
所属:(株)東芝セミコンダクター社・SGRA研究員
パネリスト:上記講演者
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2006.07.22
第24回SGRAフォーラムin軽井沢
「ごみ処理と国境を越える資源循環~私が分別したごみはどこへ行くの?~」
時は平成18年7月22日、日本全国で大雨が降り続く中、軽井沢は晴れ!という日に鹿島建設軽井沢研修センター会議室にて、第24回SGRA(関口グローバル研究会)フォーラムが開催された。
総合司会のSGRA研究員全振煥氏(鹿島技術研究所主任研究員)が開会を宣言し、SGRA代表の今西淳子氏から開会の挨拶があり、フォーラム開催の趣旨について説明があった。地球温暖化、異常気象、砂漠化、廃棄物処理等々、環境問題は、人類が地球規模でとりくむべき課題となった。その中で最も身近な問題であるごみ処理は正しく行われているかどうか、また、日本から中国を含むアジア諸国・地域への再生資源(廃棄資源)輸出が拡大しているが、国際間移動の現状はどうなっているのか。各国の法制度や施策の実情はどうなっているのか。何が問題か、今後どうすれば良いか、国際協調は可能か、等々検討するため、このフォーラムを開催することにした。ごみという身近な問題から一緒に考えたい。
フォーラムの前半では4人の講師を迎え、それぞれ専門分野について講演を頂いた。また後半のパネルディスカッションでは、4人の講師を含み、5人の先生により熱い討論が行われた。
最初に、「廃棄資源の国際間移動の現状と今後:アジアを中心として」を題とし、エックス都市研究所取締役鈴木進一氏が、日本の廃棄物資源の循環利用の取り組みを紹介しながら、リサイクル資源の国際間の移動の背景や状況について詳細なデータを用いて紹介した。日本とアジア諸国との国際資源移動のイメージを模索し、さらに具体化的な対策について提案を行った。廃棄物資源の循環利用の取り組みに各国相互の理解や協力が不可欠だと結論づけ、地球市民を目指すSGRA会員にそれらの取り組みへの協力を要請した。
次に、「EUの再生資源とリサイクル:ドイツを中心として」を題とし、鹿島技術研究所上席研究員間宮尚氏から、自身の留学体験から、環境先進国であるドイツの廃棄物処理の政策、法律について紹介し、ごみ処理について日本とドイツの相違点を明らかにした。ドイツでは積極的にリサイクル行為にインセンティブを与えて、廃棄物のマネージメントを最優先に考える。また、廃棄物処理は税金ではなく、手数料を通して解決する手段をとっており、日本にとって、大いに参考になると力説した。
3番目の講演では、「アジアにおける家電リサイクル活動に関する調査報告」を題とし、SGRA研究員の李海峰氏(北九州市立大学)が台湾、韓国、中国を中心としたアジア諸国における家電リサイクルの取り組みを紹介し、各国の家電リサイクル法の相違及び国際資源循環の背景及び問題点を指摘し、豊富な写真から中国における家電製品リサイクルの流れ、問題点を述べた。またアジア、特に中国における家電リサイクルの実践について、回収ネットワークの整備、リサイクル費用の負担及び適正処理技術の開発等に多くの問題が存在していることを明らかにした。
最後に、「廃棄物問題と都市の貧困:マニラ貧困層のコミュニティ資源の活用」を題とし、東京大学総合文化研究科教授の中西徹氏が、「幸せとは何か」の問いから貧困が環境にもたらす問題、また環境が貧困に与える影響を述べ、被害者として環境劣化が貧困を激化させるが、同時に、不法投棄など、環境問題への加害者となっている面もあり、環境保全と貧困緩和の両立を目指すための事例を提案した。また循環システムの構築をするために、コミュニティ資源を活用するのが先決で、コミュニティのネットワークにより、生ごみ回収の効率化や協力体制もできるのではないかと提案された。資源循環社会構築による貧困層の改善に期待したい。
夕食を挟んで、午後7:30時、4人の講師に埼玉大学教授外岡豊氏を交えて、パネルディスカッションが始まった。
まず、司会SGRA研究員の高偉俊氏(北九州市立大学助教授)が、以下のように共通認識をまとめた。①ゴミは資源であると同時に、不純物や有害物等を含む混合物でもある。だから無害化と資源化という矛盾を同時に扱わなければならない。②資源循環が国境を越えていく。有価物、例えば、古紙等がすでに商業ベースに乗って国際間で売買されている。処理費用の削減を求めるために、先進国から途上国に安い処理場や工場を探し、ゴミが国境を越える。また、無責任な処分企業が有害物の最終処分を途上国に転嫁させる例もある。このような問題へは、個人レベル、国レベル、国際レベルで総合的に対処していかなければならない。ゴミ問題の決め手は、基本的にはわれわれ消費者であり、物を長く使っていくことが先決である。国レベルでは法整備を含め、経済性のある資源循環社会の構築に力を入れる必要がある。また、廃棄物資源の循環が国際化している以上、国家間の信頼関係、ビジネスとしてのWin-Win関係、そして先進国からの技術供与や支援が求められる。
パネルディスカッションでは、最初にパネリストで埼玉大学教授の外岡豊氏が4人の講師の講演に対し感想を述べ、その意義を総括した。共通して現場を深く理解し問題の解決に向けた意識を持った研究であり、このような試みが社会の新しい状況に対応した問題解決への基礎になる。地球全体が一つの生命体であるというラブロックのガイア仮説になぞれば、人類社会全体が一つの生命のようなものであり、この国境を越えたリサイクルとゴミ問題に対処するシステムを構築する試みは、社会が柔軟に対応できる能力をそなえ、人類社会に命を吹き込む重要な営みである。アジア各国のさまざまな違いを融合させて国境を越えた新しい解決策を打ち立てるためにSGRAの活動は重要な意義がある。
「自国のゴミは自国で処理すべきと思うか」との問いに対して、参加者の間では賛成40%に対して反対60%との結果が出た。原則としては自分が発生(製造)したものは自分で処理すべきではあるとしても、私にとってはゴミかもしれないが、別の人に対して資源になる場合もあり得るので、グローバルになった今日には国境を越えた廃棄資源移動を止めることができないとパネリストたちは共通的に認識している。しかし「途上国はゴミ箱ではない!」公害輸出等の悪いケースもあり、廃棄物資源の中に有害物も含まれるという現実から、製造者(生産者)責任でそれらの問題を真剣に取り込むべきであり、情報公開や処理技術供与等の基本モラルが必要であると指摘された。国際的な廃棄物資源循環モデルを構築するために、①排出側と受け入れ側での責任体制の確立;②双方のWin-Winとなるビジネスモデルの構築;③情報公開等による事業の透明性の確保;④国民の間の信頼関係の構築;⑤そして双方の協力体制の確立等を早急に取り込むことが必要だとパネルディスカッションは結ばれた。SGRA会員はこのような環境作りに大いに活躍することができるではないかと期待され、1時間半のパネルディスカッションに終止符を打った。最後にSGRA運営委員長の嶋津忠廣氏がフォーラムをまとめ、閉会の辞を述べた。
(文責:高偉俊)
マキト運営委員の写したSGRAフォーラムの写真は、ここをご覧ください。
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2006.07.10
SGRAレポート第33号
第22回フォーラム講演録
「戦後和解プロセスの研究」
2006年7月10日発行
SGRAレポート第33号(中文版)
SGRAレポート第33号(中文版)表紙
S
GRA Report No.0033 (中文版)
「战后和解过程之研究」
2009年2月20日発行
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【講演1】「戦後和解:英国との関係修復を中心に」
小菅信子(こすげ・のぶこ)山梨学院大学法学部教授
【講演2】「花岡和解研究序説」李 恩民(り・えんみん)
桜美林大学国際学部助教授、SGRA研究員
【フロアーとの質疑応答】