SGRAイベントの報告

第6回日韓アジア未来フォーラム in 葉山「親日・反日・克日:多様化する韓国の対日観」報告

秋の3連休、その最終日の11月5日、海のきれいな葉山で「親日・反日・克日:多様化する韓国の対日観」をテーマに、第6回日韓アジア未来フォーラムが開催された。日韓をひんぱんに往来しながら活躍する若手の研究者に、近代における韓国人の日本留学と人的ネットワークの形成、韓国における歴史認識/論争、「独島/竹島」と反日、韓流と日韓関係についての最近の研究成果を発表してもらい、その後、自由に意見交換を行うフォーラムであった。複雑な日韓関係における敏感なテーマだけに、今回のフォーラムは非公開で行われた。

 

韓国未来人力研究院の李鎮奎(イ・ジンギュ)院長と今西淳子SGRA代表による開会の挨拶に続き、4人の研究者による研究報告が行われた。まずSGRA研究員の金範洙(キン・ボンス)氏の研究発表は、朝鮮留学生運動の再評価の必要性や、これまで研究課題として残されていた朝鮮留学生の実体を解明し、また日本留学を媒介とする人的ネットワークの形成と朝鮮民族運動への関わりをより具体的に明らかにするものであった。中部大学の趙寛子(チョウ・クァンジャ)氏は、最近の韓国における歴史認識をめぐる党派的「思想戦」の淵源を体系的かつ歴史的に説明した。東京大学の玄大松(ヒョン・デソン)氏は、日韓両国において独島/竹島がいかに語られるのかについてつぶさに考察し、日韓の市民社会とマス・メディアが構築した「公共圏」、「言説空間」にみられる偏りを調整する必要性を力説した。最後の発表者として静岡県立大学の小針進氏は、韓流を日韓関係の文脈から捉え、韓流の経済効果ばかり強調したり国威発揚として強調したりすべきではないと指摘した。

 

2時間に及ぶ発表(お勉強の時間)が終わり、休憩を挟んで、韓国国民大学の南基正(ナム・キジョン)氏の進行でフリーディスカッションが行われた。熱のこもった討論ではあったが、案外研究報告や発言などをめぐる「攻撃的な」(aggressive)コメントや感想は寄せられなかった。日韓においては、対立や葛藤が浮沈するなかでも、草の根のレベルでの価値や認識の共有が着実に深まってきていることが確認できたフォーラムでもあった。

 

今回のフォーラムのタイトルに「親日・反日」の文字を入れたのは、日本と関わる多くの中国人、韓国人のためにも、この「図式」に正面から取り組むことこそ大事なことだという主催者側の意図があったからである。勿論、向かうべき方向性は「多様化」であると思われるが、日韓関係の専門家ではない大多数の人々にとって、「多様化」だけをだしてもインパクトが足りないように思ったからである。「同時に、この『図式』を一般の日本人も理解すべきです。日米関係では『親日』という言葉が文字通りに使われており、私も留学交流の仕事を始める前には、日中・日韓関係におけるこの言葉の意味を知りませんでした」と今西氏。

 

フォーラム終了後の懇親会では、すばらしい葉山の海産物やおいしいお酒を思う存分楽しむことができた。案の定、優雅な懇親会はまもなく「狂乱」の飲み会に変わってしまった。消費したアルコールの量に驚いたが、消費量を見込んで十分に用意した主催側の「配慮」には感動を覚えた。その晩の一気飲み、ラブ・シャット、次の日の二日酔いは当分の間忘れられないであろう。

 

酔いつぶれる前にどこかで次のような提案と合意がなされたような気がする。
「次回の日韓アジア未来フォーラムは延辺でしませんか」
「いいですよ」

 

(文責:金雄煕)

 

SGRA運営委員の足立さん、マキトさん、許雷さんが写した当日の写真のアルバムは、下記URLからご覧いただけます。
http://www.aisf.or.jp/sgra/photos/

 

尚、このフォーラムの講演録は、後日、SGRAレポートとして会員の皆様に送付いたします。