SGRAイベントの報告

第5回日比共有型成長セミナー「マイクロクレジットと観光産業クラスター」報告

2007年4月16日(月)午後2時から5時まで、フィリピンのアジア太平洋大学(UA&P)にてUA&P・SGRA日本研究ネットワークが主催する共有型成長セミナーが開催された。今年が5回めとなるこのセミナーの主な目的は、今回のテーマである「フィリピンにおけるマイクロクレジット(小額融資)と観光産業クラスター」に関する研究をスタートさせることであった。主催者は、このセミナーにおける議論を土台にして研究計画をまとめ、日本やその他の財団に研究助成を申請する予定である。

 

SGRAの今西代表が開会の挨拶をしてから、SGRA研究員のマキトは以上のようなセミナーの目的を説明して、UA&P・SGRAの共同研究として行った製造業経済特区の研究成果を、今度はマイクロクレジットと観光産業クラスターにどのように適応できるかという研究枠組みを提案した。この後、この特区研究のパートナーであるピーター・リー・ユ博士(UA&P経済学部長)はフィリピンの観光産業についてマクロレベルの概説をした。その次に、UA&Pの観光産業アナリストのスタン・パドヒノッグ教授が、観光産業をよりミクロのレベルで語った。フィリピンの海外からの観光者数は、タイなど他の東南アジア諸国に比べればまだ少ないが、出稼ぎフィリピン人が休暇に一時帰国するのを含めて、フィリピンの観光客は毎年増えている状況だと二人とも強調した。実はこの増加率が現地の開発業者では追いつけないほどであり、大手企業が海外のディベロッパーと手を組むケースも増えているようである。休憩を挟んでUA&Pのマイクロクレジットのアナリスト、ビエン・ニト教授が、フィリピンにおけるマイクロクレジットの現状について最近の研究報告を踏まえて説明した。地方の町づくりにも観光産業への繋がりが伺える。

 

このセミナーには、フィリピンの地方でマイクロクレジットを行うNPOの役員たちが参加しており、フリーディスカッションでは期待通りの活発な議論が行われた。早速、地方でも同様のセミナーを開催して、地方政府に働きかけをしたいという要望もあった。もう一つ印象的だったのは、研究者からもNPO役員からも、このマイクロクレジットと観光産業クラスターを結びつけた研究が、新しく、大変面白い発想だと評価されたことである。皆さんから、積極的にこの共同研究に参加協力する意思を表明していただいた。

 

セミナーの後、発表者は今西代表を囲んで、これからのこの共同研究を具体的にどのように行うか話合った。とりあえず、マキト研究員が、研究提案書のたたき台を作成して、UA&Pの研究者と共同で編集していくことで合意した。また、次回は同様のセミナーを観光地として開発が進む地方で開催するという暫定的な計画が立てられた。楽しみにしている。

 

マックス・マキト
(SGRA「グローバル化と日本の独自性」研究チームチーフ)