SGRAプロジェクト

  • 第14 回日韓アジア未来フォーラム「アジア経済のダイナミズム」へのお誘い

    下記の通り第14回日韓アジア未来フォーラムを開催します。参加ご希望の方は、事前にお名前・ご所属・緊急連絡先をSGRA事務局宛ご連絡ください。   日時:2015年2月7日(土)午後1時30分~午後4時30分   会場:国立オリンピック記念青少年総合センター国際交流棟 国際会議室   申込み・問合せ:SGRA事務局 電話:03-3943-7612 Email:sgra-office@aisf.or.jp   ● フォーラムの趣旨   渥美国際交流財団関口グローバル研究会と未来人力研究院が共同で、2001年より毎年、日韓相互に開催するフォーラム。14回目は第48回SGRAフォーラムも兼ねて東京で開催する。 日本は、交通・物流システム、自然災害への対策、経済発展と省エネルギーの両立、少子高齢化への対処など、多くの分野において経験や技術を蓄積しており、圧縮成長を成し遂げてきた韓国の経験やノウハウと共に、東アジア地域における将来の発展や地域協力の在り方に貴重な手掛かりを提供している。 アジア地域は経済的に実質的な統合に向かっており、インド、中国、ASEAN、そして北東アジアの経済がダイナミックに連動しながら発展を成し遂げている。本フォーラムでは、日韓の交通・物流システムにおける先駆的な経験が、アジアの持続可能な成長と域内協力にどのように貢献するかという問題意識に立ち、アジア地域で物流ネットワークが形成されつつある実態を探り出し、その意味合いを社会的にアピールすることを目的とする。日韓同時通訳付き。   <プログラム>   総合司会: 平川 均(ひらかわ・ひとし:国士舘大学21世紀アジア学部教授、名古屋大学名誉教授) 開会の辞: 李 鎮奎(リ ジンギュ:未来人力研究院 理事長、高麗大学経営学部教授)   【基調講演】「アジア経済のダイナミズム」 榊原英資(さかきばら えいすけ:インド経済研究所理事長・青山学院大学教授)   【報 告 1】「北東アジアの多国間地域開発と物流協力」 安 秉民(アン・ビョンミン:韓国交通研究院北韓・東北亜交通研究室長)   【報 告 2】「GMS(グレーター・メコン・サブリージョン)における物流ネットワークの現状と課題」 ド・マン・ホーン (桜美林大学経済・経営学系准教授)   【休  憩】   【自由討論】 進行及び総括:金雄煕(キム・ウンヒ、仁荷大学国際通商学部教授)   ● ミニ報告:「アジア・ハイウェイの現状と課題について」    李鋼哲(リ・コウテツ、北陸大学未来創造学部教授)   討論者:上記発表者、指定討論者(渥美財団SGRA及び未来人力研究院の関連研究者)、一般参加者   閉会の辞:今西淳子(いまにし じゅんこ:渥美国際交流財団常務理事)   詳細は、下記リンクをご覧ください。 ● ちらし ● プログラム    
  • 第6回SGRAカフェ「アラブ/イスラムをもっと知ろう:シリア、スーダン、そしてイスラム国」へのお誘い

    SGRAでは、良き地球市民の実現をめざす(首都圏在住の)みなさんに気軽にお集まりいただき、講師のお話を伺う<場>として、SGRAカフェを開催しています。今回は、「SGRAメンバーと話して世界をもっと知ろう」という主旨で、シリア出身のダルウィッシュ ホサムさんと、スーダン出身のアブディン モハメド オマルさんを囲んで座談会を開催します。 準備の都合がありますので、参加ご希望の方はSGRA事務局へお名前、ご所属、連絡用メールアドレスをご連絡ください。 宛先: SGRA事務局   -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 日時:2014 年12月20日(土)14時~17時 会場:渥美財団ホール (東京都文京区関口3-5-8) 会費:無料 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 講師からのメッセージ: ダルウィッシュ ホサム Housam Darwisheh 「変貌するシリア危機と翻弄される人々」 シリアは今、未曾有の人道危機に直面しています。3年におよぶ戦闘により、死者は20万人を超え、難民は400万人、国内避難民は1,100万人にのぼり、近隣諸国はシリア難民の受け入れに対応できていません。 アサド体制と反体制派の多様なグループによる戦闘が各地で続き、アメリカを中心とする有志連合がシリア北部で「イスラム国」に対する空爆を行い、シリア危機はますます複雑な様相を見せています。日ごとに悪化する状況から脱する道は見えないままです。 今回のSGRAカフェでは、シリア危機を取り上げ、壊滅的な内戦に陥った背景、内戦の現況と今後の見通しについてお話しします。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------ 1979年、シリア(ダマスカス)生まれ。2002年、ダマスカス大学英文学・言語学部学士。2006年、東京外国語大学大学院地域文化研究科平和構築・紛争予防プログラム修士。2010年同博士。東京外国語大学大学院講師・研究員を経て、2011年よりアジア経済研究所中東研究グループ研究員。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------ アブディンアブディン モハメド オマル Mohamed Omer Abdin 「なぜハルツームに春がこないか?:バシール政権の政治戦略分析を通して」 2011年に中東地域で始まった民主化要求運動(アラブの春)は、長い間続いてきた独裁体制の崩壊、内戦ぼっ発、中央政権の弱体化と様々な結果をもたらした。国によって、同運動がなぜこのように、多彩な結果をもたらしたかは、近年の国際政治研究者の大きな関心事となっている。一方では、アラブの春の影響をほぼ受けなかった地域も存在する。本発表では、中東の周辺地域に位置するスーダン共和国を事例に、現政権が、アラブの同国への波及を防止するのに、どのような戦略をとってきたかを、スーダンを取り巻く内部的、外部的情勢の分析を通して明らかにします。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------ 1978年、スーダン(ハルツーム)生まれ。2007年、東京外国語大学外国語学部日本課程を卒業。2009年に同大学院の平和構築紛争予防修士プログラムを終了。2014年9月に、同大学の大学院総合国際学研究科博士後期課程を終了し、博士号を取得。2014年10月1日より、東京外国語大学で特任助教を務める。特定非営利活動法人スーダン障碍者教育支援の会副代表。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
  • 第8回SGRAチャイナ・フォーラム「近代日本美術史と近代中国」ご案内

    下記の通り、第8回SGRAチャイナ・フォーラムを、11月22日(土)~23日(日)に北京で開催します。参加ご希望の方は、事前にSGRA事務局( sgra-office@aisf.or.jp )にご連絡ください。   SGRAでは、日本の民間人による公益活動を紹介するSGRAチャイナ・フォーラムを、北京をはじめとする中国各地の大学等で毎年開催してきましたが、8回目の今回からは、今までと趣向を変え、「清華東亜文化講座」のご協力をいただき、北京在住の日本の社会や文化の研究者を対象として開催します。   主催: 渥美国際交流奨学財団関口グローバル研究会(SGRA)、中国社会科学院文学研究所、清華東亜文化講座 協力: 中国社会科学院日本研究所 助成: 国際交流基金北京日本文化センター、鹿島美術財団   フォーラムの趣旨:   「美術」とその一部とみなされる「工芸」は、用語の誕生から「制度」としての「美術」「工芸」の成立まで日本の「近代」と深い関係にあり、そして近代中国にも深い影響を与えた。「美術」と「工芸」は、漢字圏文化と西洋文化との関係・葛藤を表していると同時に、日中両国のナショナリズム、国民国家の展開・葛藤とも深い関係にある。一方、「美術」と「工芸」の展開の仕方や意味づけにおける日中の違いも無視できない。この違いはほかならず日中の「近代」の違いでもある。   本フォーラムは、美術史学と文学史・文化史の視点から日中両国の「近代」に焦点を当て、日本からの研究者の講演を中心に、中国の研究者の討論も交え、1日目は中国社会科学院文学研究所、2日目は清華大学で開催し、従来活発であったとはいえない日中近代美術・文化史研究交流のさきがけとなることを目指します。日中同時通訳付き。 プログラム 1日目:2014 年11月22 日(土)14時~17時 於:中国社会科学院文学研究所社科講堂第一会議室 講演1:佐藤道信「近代の超克―東アジア美術史は可能か」 講演2:木田拓也「工芸家が夢みたアジア:<東洋>と<日本>のはざまで」 1日目プログラム   2日目:2014 年11月22 日(土)14時~17時 於:清華大学甲所第3会議室 講演1:佐藤道信「脱亜入欧のハイブリッド:「日本画」「西洋画」、過去・現在」 講演2:木田拓也「近代日本における<工芸>ジャンルの成立:工芸家がめざしたもの」 2日目プログラム
  • 孫 建軍「第2回アジア未来会議円卓会議『これからの日本研究:学術共同体の夢に向かって』実施報告書 」

    本円卓会議は、漢字圏を中心としたアジア各地の日本研究機関に所属する研究者が集まり、グローバル時代における日本研究のあり方について議論する場として、第1回に引き続き、第2回アジア未来会議の二日目に開催された。会議は日本語で行われ、円卓を囲んだ10名の発表者と討論者、および各地から駆けつけた多くのオブザーバーが参加した。   円卓会議は2部からなり、前半は提案の代読及び指定発表者の報告であった。提案者である早稲田大学劉傑教授は都合で来場できなかったが、提案は文章として寄せられ、司会者の桜美林大学李恩民教授によって代読された。内容は主に四つの部分からなり、(1)未来に向けての「東アジア学術共同体」の意味、(2)「東アジア学術共同体」の実験として、「日本研究」を設定することの意味、(3)アジアないし世界が共有できる「日本研究」とはどのようなものなのか、そして(4)東アジアの日本研究の仕組みをどのように構築していくのか、というものだった。   続いて、4人の指定報告者による報告が行なわれ、日本を除く東アジア地域の代表的な日本研究所の歴史や活動などの最新情報が紹介された。ソウル大学日本研究所の南基正副教授は、当研究所で展開中のHK企画研究の紹介を通じた企業との連携の実績や、次世代研究者の養成に力を入れていることを紹介した。復旦大学日本研究所の徐静波教授は、日本の総領事館や企業の支援を受けることは、レベルの高い日本研究を維持していく重要な前提であると語った。中国社会科学院日本研究所の張建立副研究員からは、中国一を誇る研究陣営、政府のシンクタンクの役割を十分果たす国家レベルの研究所の紹介があった。台湾大学の辻本雅史教授は、発足したばかりの台湾大学文学院日本研究センターを紹介し諸機関との連携を呼びかけた。   後半は北京大学准教授で早稲田大学孔子学院長を兼任している私の司会で始まり、6名の指定討論者からコメントがあった。中国社会科学院文学研究所の趙京華研究員は日本研究の厳しい現状を報告した上で、学術共同体という言葉遣いに疑問を投げかけた。学術共同体を目指すのではなく、東アジア各国の間における軽蔑感情を取り除くべく、問題意識の共有を提案した。また、他者を意識させかねないことを防ぐため、他分野の学者も討論に呼ぶべきだと提案した。北京大学外国語学院の王京副教授も、学術共同体は外部が必要なため派閥が生まれやすいと指摘した。また、統合されていない北京大学における日本研究の現状を例に挙げ、情報共有の大切さを訴えた。   韓国国民大学日本研究所の李元徳教授は学術共同体を目指す提案者の意見に賛同する一方、日中韓の間における独自の問題を指摘した。また衰退しつつある韓国の日本研究は、魅力をなくしつつある日本に起因することを慨嘆した。ジャーナリストの川崎剛氏は東アジアの概論の必要性を訴えた。SGRA今西淳子代表は、関口グローバル研究会として組織ではなく人の繋がりを心がけ、小さいながらも大きな組織の間を繋ぐ触媒的な存在でありたいと説明した。「学術共同体」については、中国大陸の学者の反対的意見を尊重し、使用を控えたほうがよいと語った。一方で、提案者劉傑教授の意図は既にある情報インフラをもっと活用できないかという観点からであると補足説明し、相互情報交換に力を入れる意向を明らかにした。また日本は魅力をなくしたとは言い切れないと指摘した。中国社会科学院文学研究所の董炳月研究員は、学術から出発して国家概念を超えた協力関係の構築を提案した。最後に台湾中央研究院の林泉忠副研究員は日本研究の厳しい現状の再確認を促し、一刻も早く苦境の脱出を図らなければならないと指摘した。   円卓会議にはアジアのほかの地域の学者も参加し、タイ、インドなどからの学者の発言もあった。話題は日本研究のみではなく、各大学の教育現場における新しい動向や悩みにまで及び、予定時刻を若干オーバーして有意義な意見交換を行った。今までの2回の議論を踏まえて、多くの参加者は、第3回アジア未来会議の場においても、引き続きこのようなセッションを設けてほしいと望んでいる。   ------------------------------- <孫建軍 Sun Jianjun> 1969年生まれ。1990年北京国際関係学院卒業、1993年北京日本学研究センター修士課程修了、2003年国際基督教大学にてPh.D.取得。北京語言大学講師、国際日本文化研究センター講師を経て、北京大学外国語学院日本言語文化系副教授。現在早稲田大学社会科学学術院客員准教授、早稲田大学孔子学院中国側院長を兼任中。専門は日本語学、近代日中語彙交流史。 -------------------------------   2014年10月15日配信
  • 第3回SGRAふくしまスタディツアー報告

    渥美国際交流財団/SGRAでは2012年から毎年、福島第一原発事故の被災地である福島県飯舘(いいたて)村でのスタディツアーを行ってきました。そのスタディツアーでの体験や考察をもとにしてSGRAワークショップ、SGRAフォーラム、SGRAカフェ、そしてバリ島で開催された「アジア未来会議」でのExhibition & Talk Session“Fukushima and its aftermath-Lesson from Man-made Disaster”などを開催してきました。今年も、10月17日から19日の3日間、SGRAふくしまスタディツアー《飯舘村、あれから3年》を実施しました。このレポートはツアーの記録報告です。 「SGRAふくしまスタディツアー」は、今年で3回目。参加者は渥美財団のラクーンメンバー、呼びかけに応えて参加した留学生、日本人学生、大学教授や社会人など16名。国籍も中国、台湾、グルジア、インドネシア、モンゴル、日本、年齢層も18歳から70歳代まで、まさに多様性を絵にかいたような多彩なメンバーであった。 17日(金)朝8時、メンバーたちのチョットした不安も乗せながら、バスは秋晴れの中を福島に向けて出発した。途中、福島駅で、今回の受入れをお願いしている「ふくしま再生の会」のメンバーと合流。「NPO法人ふくしま再生の会」(理事長田尾陽一さん)は、地元の農民とヴォランティア、科学者により構成されたNPO団体。2011年秋から、飯舘村の再生プロジェクトとして、住民自身による効率的な除染方法の研究開発や飯舘村に伝わる「マデイ(真手)」の考え方をもとにしたサステイナブル/エコロジカルな地域産業とコミュニティーの再生に取り組んでいる。 最初の訪問先は、福島市内の松川仮設住宅。ここでは飯舘村で被災した100名を超えるお年寄りが、未だに避難生活を続けている。入口付近には、簡単なスーパーやラーメン屋、集会所などが設けられ、それなりの生活環境は整えられているが、鋼板一枚の仮説のプレハブ住宅では冬の寒さはお年寄りにとっては厳しかろうと想像される。集会所で、8名の被災者のお話をうかがった。被災当時の状況や家族と離散して暮らさなければならない辛さなどが語られた一方で、被災から3年半を経た今では、この仮設住宅群の中での助け合いの生活は、それなりの心の安定と平和をもたらしてくれている、との話もあった。被災以前は大家族で子や孫に囲まれて暮らしてきたお年寄りが離散生活を強いられることは辛いだろうが、以前から孤立して生活していたお年寄りにとっては、集合住宅での助け合いの生活は、それなりの心の安定と平和をもたらしてくれているのかも知れない。 松川仮設住宅を後にして、バスは阿武隈高原飯舘村に向かった。一年ぶりに訪れた飯舘村は、昨年までとは一変した村になっていた。道路沿いに、農家の庭に、荒れ果てた田畑のあちこちに1トンもある黒いプラスティックの袋が山積みにされている。ああ、これが農家の周辺や田畑の土をはぎ取った「汚染土」の山なのだ。この「汚染土」はいつになったら撤去されるのだろうか。これからも増え続ける大量の「汚染土」の行き場は、まだ決まっていない。村役場や政府からの明確な答えもない。 飯舘村内を見学した後、ふくしま再生の会の活動拠点である霊山センターに到着した。このセンターで農民やヴォランティアの方々との2日間の短い共同生活が始まる。夕食は、私たちと地元の方々、ヴォランティアの方々との協働自炊である。地元の方から「この食材は全部スーパーで買ったもの。以前だったら、この時期は自分の田んぼでできた新米や、山で採れたキノコや栗、そしてイノシシまで使ったふるさとの料理を食べてもらえるのだけど、今は何もおもてなしができない。ごめんね…。」と言われた。返す言葉もない。辛いのは、我々ではなく、地元の方々なのだから。手作りの夕食を食べながら、飲みながらの語らいは、深夜まで続いた。 2日目。この日も、雲一つない快晴だった。黄や紅に色づき始めた山々が美しい。午前中、大久保地区のAさんの畑を訪問した。春に桜が咲き、花々に覆われたならば、まさに桃源郷になるであろう、と思わせるような山間の地だ。再生の会は、ここに住むAさんと共に花を中心とした栽培実験を行っている。「えっ、ここに住む住民?? 人が住んでいるのだろうか?」。Aさんは90歳を超える母親と共に、この大久保地区に住んでいる。以前Aさんは母親と共に、仮設住宅での避難生活をしていた。だが、ある夜、母親が「もうイヤだ。家に帰りたい」と叫び始めたことを切っ掛けにして、家に帰り「今までどおりの生活」に戻ることを決めたそうだ。むろん、帰還は禁じられていることを承知の上で…。これも、一つの選択なのだろう。 午後は、再生の会のさまざまな実験の拠点となっている、飯舘村佐須地区の菅野宗夫さんの田んぼでの、稲刈り作業である。稲刈り作業を始める前に、緊張が走った。あるメンバーから「この稲刈りは安全なのか?」「若者に危険な作業を強いることになるのではないか?」との質問が出されたのだ。田んぼは丁寧に除染され、昨年の収穫米や、今年の隣の田んぼでの収穫米でも、放射線濃度は基準値以下であった。このことから考えても、安全と言えるものの、刈り取りしようとしている稲は、実験段階の稲であることは間違いない。「安全との思い込み」や「安全に対する説明無し」では、他の人々の「安心」は得られない。この質問を受けた菅野宗夫さんの説明に納得したメンバーは穂先だけの稲刈りを行ったのだが、十分な説明をせずに稲刈りを行おうとしたことは、明らかにツアーのオーガナイザーである私たちの落ち度であった。当事者と他の人が感じる「安全」と「安心」の違い、これはこれからも飯舘村の再生の過程につきまとう大きな課題となるのだろう。 夕刻、河北新報の寺島英弥さんをお招きして、多くのスライド写真を見ながら、福島第一原発事故から今日までの被災地全体の状況の説明をうかがった。飯舘村とは異なり、津波と放射能被害のダブル被害を受けた沿岸部の状況、帰還に向けた地域ごと、ジェネレーションごとの「想い」の違い、3年半を経て住民の中に高まる疑心や生活に対する不安などが寺島さんの話から浮き彫りにされていった。 夜、宿舎の霊山センターに戻ると、仲間である大石ユイ子さんと農家の方々から大量のおでんと地元の野菜の差し入れが届いていた。だが、「チョッと待てよ。地元の野菜は大丈夫なの?」かすかな不安が心をよぎる。ちょうど再生の会の夕食の当番の方々が地域の農産品や植物の放射線量測定の専門家チームだったので、「この野菜は大丈夫なの?」と聞いてみた。「大丈夫ですよ。この野菜は飯舘村の野菜ではなく、相馬市の野菜で定期的に放射線量を計り、出荷しているもの。それに地元の人々は、私たち以上に放射能には敏感なので安全でないものは、絶対に食べませんし、持ってもきませんよ。」「でも、地元の人たちは、これからずっと、こうした不安や風評被害と向き合って行かなければならないのよね…。」稲刈りと同じ、「安全」と「安心」の問題には、これからもずっと、この地域が向き合って行かなければならないのだろう。 夕食の後、地元の若者の佐藤健太さんが訪れてくれた。佐藤健太さんは32歳。今は、福島市内に住みながら、飯舘村の若者の声を代弁しようと各地を飛び回っている。故郷への想いをふっきって、都会で生活を始めた20代、30代。いつかは帰りたいとの想いを持ちながら、京都の肉屋で修行を始めた若者、あるいは北海道の奥地で酪農を始めた若者のことなどなど、彼の話は印象的だった。 「当たり前のことだが、生まれ育ったふるさとへの想いは捨てることはできないし、オヤジの世代の苦しみも十分にわかっている。一方で、若者は多かれ少なかれ都会の生活を経験しているので、都会の生活には馴染みやすい」「帰るか、帰らないかを考えるには、自分たちの子供世代の20年先、30年先のことまでを見通さなければならない。そんなことができるだろうか?」「世間もお役所も(帰るか、帰らないかの判断を)急がさないでほしい。自分たちも悩んでいる、苦しんでいる。今は、仮の生活とは言いながらも、新しい生活を営むことに精いっぱいなのだから」。こうした彼との語らいの中で、今まで、私たちが話をうかがってきた50代、60代の方々、お年寄りとは異なる若い世代の苦悩を聞くことができた。 3日目。最終日の朝、私たちは菅野宗夫さんの牛舎の畑で始まった政府の除染作業を見に行った。自分たちでできる除染方法を開発し、昨年までは「除染は自分の手でやりたい」と言っていた宗夫さんは除染作業を見守りながらも、私たちに多くを語ろうとしなかった。宗夫さんの心の中では、言葉にならない想いが去来していたのかもしれない。 このツアーを終えた後、渥美財団とも関係の深い畑村洋太郎先生の「除染のゆくえ-畑村洋太郎と飯舘村の人々-」というドキュメンタリー番組がNHKで放映された。畑村先生と飯舘村の農民による「除染を早く、現実的に進めるための実証実験」を追ったドキュメンタリーである。この番組の中で畑村先生は、3年、30年、100年というタームを語り、3年が「コミュニティーが離散しないで元に戻れる限度」と述べている。 3年の限度が過ぎ、除染が終了し帰還できるまでにはさらに2~3年は必要だろうと言われている今日、「皆で一緒に」という言葉は力を失いつつある。これから先には、年寄りも、若者も、子供も、一人一人が置かれている状況を踏まえながら、現実を「見て」「感じて」「考えて」さらには「一人一人が、自分で判断しなければならない」という道のりが待ち受けている。これからの道のりの中で、被害者の心が萎えないことを祈るだけでなく、私たちが記憶を萎えさせないことこそが求められているのではないだろうか。 ふくしまツアーの写真 (文責:渥美財団理事 角田英一)
  • 第3回ふくしまスタディツアー「飯舘村、あれから3年」参加者募集

    SGRAでは昨年に引き続き、福島県飯舘村スタディツアーを下記の通り行います。 参加ご希望の方は、SGRA事務局へご連絡ください。   日程:2014年10月17日(金)、18日(土)、19日(日)2泊3日 参加メンバー:SGRA/ラクーンメンバー、その他 人数: 10~15人程度 宿泊:「ふくしま再生の会-霊山(りょうぜん)センター」 参加費: 15,000円(ラクーンメンバーには補助金が出ます) 申込み締切: 9月30日(火) 申込み・問合せ: 渥美国際交流財団 角田 tsunoda@aisf.or.jp Tel:03-3943-7612   スタディツアーの趣旨: 渥美国際交流財団/SGRAでは2012年から毎年、福島第一原発事故の被災地である福島県飯舘(いいたて)村でのスタディツアーを行ってきました。 そのスタディツアーでの体験や考察をもとにしてSGRAワークショップ、SGRAフォーラム、SGRAカフェ、そしてバリ島で開催された「アジア未来会議」でのExhibition & Talk Session“Fukushima and its aftermath-Lesson from Man-made Disaster”などを開催してきました。 今年も10月に第3回目の「SGRAふくしまスタディツアー」を行います。お友達を誘って、ご参加ください。   参加者募集チラシ   ヴィラーグ ヴィクトル「第2回SGRAスタディツアー『福島県飯舘村へ行って、知る・感じる・考える』報告」   李鋼哲「第1回SGRAスタディツアー『飯館村へ行ってみよう』報告」
  • 第2回アジア未来会議報告

    2014年8月22日(金)~8月24日(日)、インドネシアのバリ島にて、第2回アジア未来会議が、17か国から380名の登録参加者を得て開催されました。総合テーマは「多様性と調和」。このテーマのもと、自然科学、社会科学、人文科学各分野のフォーラムが開催され、また、多くの研究論文の発表が行われ、国際的かつ学際的な議論が繰り広げられました。   アジア未来会議は、日本留学経験者や日本に関心のある若手・中堅の研究者が一堂に集まり、アジアの未来について語り合う場を提供することを目的としています。   8月22日(金)、バリ島サヌールのイナ・グランド・バリ・ビーチホテルの大会議場の前室には、午後のフォーラムで講演する戸津正勝先生(国士舘大学名誉教授)のコレクションから70点のバティック(インドネシアの伝統的なろうけつ染)、島田文雄先生(東京藝術大学)他による20点の染付陶器、そしてバロン(バリ島獅子舞の獅子)が展示され、会場が彩られました。   午前10時、開会式は4人の女性ダンサーによる華やかなバリの歓迎の踊りで始まり、明石康大会会長の開会宣言の後、バリ州副知事から歓迎の挨拶、鹿取克章在インドネシア日本大使から祝辞をいただきました。   引き続き、午前11時から、シンガポールのビラハリ・コーシカン無任所大使(元シンガポール外務次官)による「多様性と調和:グローバル構造変革期のASEANと東アジア」という基調講演がありました。「世界は大きな転換期を経験している。近代の国際システムは西欧によって形作られたが、この時代は終わろうとしている。誰にも未来は分らないし、何が西欧が支配したシステムに取って代わるのか分からない。」と始まった講演は、ほとんどがアジアの国からの参加者にとって大変示唆に富むものでした。   基調講演の後、奈良県宇陀郡曽爾村から招待した獅子舞の小演目が披露されました。その後、参加者はビーチを見渡すテラスで昼食をとり、午後2時から、招待講師による3つのフォーラムが開催されました。   社会科学フォーラム「中国台頭時代の東アジアの新秩序」では、中国、日本、台湾、韓国、フィリピン、ベトナム、タイ、インドネシアの研究者が、中国の台頭がそれぞれの国にどのように影響を及ぼしているか発表し、活発な議論を呼び起こしました。   人文科学フォーラム「アジアを繋ぐアート」では、日本の獅子舞とバリ島のバロンダンス、日本と中国を中心とした東アジアの陶磁器の技術、そしてインドネシアの服飾(バティック)を題材に、アジアに共通する基層文化とその現代的意義を考察しました。   自然科学フォーラム「環境リモートセンシング」は、第2回リモートセンシング用マイクロ衛星学会(SOMIRES 20)と同時開催で、アメリカ、インドネシア、マレーシア、台湾、韓国、日本からの研究者による報告が行われました。 フォーラムの講演一覧   午後6時からビーチに続くホテルの庭で開催された歓迎パーティーでは、夕食の後、今回の目玉イベントである日本の獅子舞とバリ島のバロンダンスの画期的な競演が実現し、400名の参加者を魅了しました。   8月23日(土)、参加者は全員、ウダヤナ大学に移動し、41の分科会セッションに分かれて178本の論文が発表されました。アジア未来会議は国際的かつ学際的なアプローチを目指しているので、各セッションは、発表者が投稿時に選んだサブテーマに基づいて調整され、必ずしも専門分野の集まりではありません。学術学会とは違った、多角的かつ活発な議論が展開されました。   各セッションでは、2名の座長の推薦により優秀発表賞が選ばれました。 優秀発表賞受賞者リスト   また、11本のポスターが掲示され、AFC学術委員会により3本の優秀ポスター賞が決定しました。 優秀ポスター賞の受賞者リスト   さらに、アジア未来会議では投稿された各分野の学術論文の中から優秀論文を選考して表彰します。優秀論文の審査・選考は会議開催に先立って行われ、2014年2月28日までに投稿された71本のフルペーパーが、延べ42名の審査員によって審査されました。査読者は、(1)論文のテーマが会議のテーマ「多様性と調和」と合っているか、(2)論旨に説得力があるか、(3) 従来の説の受け売りではなく、独自の新しいものがあるか、(4) 学際的かつ国際的なアプローチがあるか、という基準に基づき、9~10本の査読論文から2本を推薦しました。集計の結果、2人以上の審査員から推薦を受けた18本を優秀論文と決定しました。 優秀論文リスト   41分科会セッションと並行して、3つの特別セッションが開催されました。   円卓会議「これからの日本研究:東アジア学術共同体の夢に向かって」は、東京倶楽部の助成を受けて中国を中心に台湾や韓国の日本研究者を招待し、各国における日本研究の現状を確認した後、これから日本研究をどのように進めるべきかを検討しました。   CFHRSセミナー「ダイナミックな東アジアの未来のための韓国の先導的役割」は、韓国未来人力研究院が主催し、講義と学部生による研究発表が行われました。   SGRAカフェ「フクシマとその後:人災からの教訓」では、SGRAスタディツアーの参加者が撮影した写真展示及びドキュメンタリフィルムの上映と、談話セッションを行いました。   午後5時半にセッションが終了すると、参加者は全員バスでレストラン「香港ガーデン」に移動し、フェアウェルパーティーが開催されました。今西淳子AFC実行委員長の会議報告のあと、ケトゥ・スアスティカ ウダヤナ大学長による乾杯、2名の日本人舞踏家によるジャワのダンス、優秀賞の授賞式が行われました。授賞式では、優秀論文の著者18名が壇上に上がり、明石康大会委員長から賞状が授与されました。優秀発表賞41名と、優秀ポスター賞3名には、渥美伊都子渥美財団理事長が賞状を授与しました。最後に、北九州市立大学の漆原朗子副学長より、第3回アジア未来会議の発表がありました。   8月24日(日)参加者は、それぞれ、世界文化遺産ジャティルイの棚田観光、ウブドでの観光と買い物、ウルワツ寺院でのケチャックダンスとシーフードディナー、などを楽しみました。   第2 回アジア未来会議「多様性と調和」は、渥美国際交流財団(関口グローバル研究会(SGRA))主催、ウダヤナ大学(Post Graduate Program)共催で、文部科学省、在インドネシア日本大使館、東アジアASEAN経済研究センター(ERIA)の後援、韓国未来人力研究院、世界平和研究所、JAFSA、Global Voices from Japanの協力、国際交流基金アジアセンター、東芝国際交流財団、東京倶楽部からの助成、ガルーダ・インドネシア航空、東京海上インドネシア、インドネシア三菱商事、Airmas Asri、Hermitage、Taiyo Sinar、ISS、Securindo Packatama、大和証券、中外製薬、コクヨ、伊藤園、鹿島建設からの協賛をいただきました。とりわけ、鹿島現地法人のみなさんからは全面的なサポートをいただき、華やかな会議にすることができました。   運営にあたっては、元渥美奨学生を中心に実行委員会、学術委員会が組織され、SGRA運営委員も加わって、フォーラムの企画から、ホームページの維持管理、優秀賞の選考、当日の受付まであらゆる業務をお手伝いいただきました。また、招待講師を含む延べ82名の方に多様性に富んだセッションの座長をご快諾いただきました。   400名を超える参加者のみなさん、開催のためにご支援くださったみなさん、さまざまな面でボランティアでご協力くださったみなさんのおかげで、第2回アジア未来会議を成功裡に実施することができましたことを、心より感謝申し上げます。   アジア未来会議は2013年から始めた新しいプロジェクトで、10年間で5回の開催をめざしています。第3回アジア未来会議は、2016年9月29日から10月3日まで、北九州市で開催します。   皆様のご支援、ご協力、そして何よりもご参加をお待ちしています。   <関連資料>   第2回アジア未来会議写真   第2回アジア未来会議新聞記事(ジャカルタ新聞)   第2回アジア未来会議和文報告書(写真付き)   Asia Future Conference #2 Report (in English) with photos   第3回アジア未来会議チラシ   (文責:SGRA代表 今西淳子)
  • 第7回ウランバートル国際シンポジウム「総合研究――ハルハ河・ノモンハン戦争」案内

    下記の通りモンゴル国ウランバートル市にてシンポジウムを開催いたしますので、論文、参加者を募集いたします。   【開催趣旨】   謎に満ちたハルハ河・ノモンハン戦争は歴史上あまり知られない局地戦であったにもかかわらず、20世紀における歴史的意義を帯びており、太平洋戦争の序曲であったと評価されています。この戦争の真の国際的シンポジウムは、1989年、ウランバートルでモンゴル、ソ連に加えて日本から研究者をむかえた3者での協同研究から始まりました。そして、1991年、東京におけるシンポジウムによって研究は飛躍的に進み、2009年のウランバートル・シンポジウムではさらに画期的な展開をみせました。しかし、国際的なコンテキストの視点からみると、これまでの研究は、伝統的な公式見解のくりかえしになることが多く、解明されていない問題が未だ多く残されています。   立場や視点が異なるとしても、お互いの間を隔てている壁を乗りこえて、共有しうる史料に基づいて歴史の真相を検証・討論することは、われわれに課せられた使命です。   ハルハ河・ノモンハン戦争後75年を迎え、新しい局面を拓くべく、われわれは、関係諸国の最新の研究成果と動向、および発掘された史料を総括し、国際学術会議ならではのシンポジウム「総合研究――ハルハ河・ノモンハン事件戦争」を開催することにいたしました。   本シンポジウムは、北東アジア地域史という枠組みのなかで、同地域をめぐる諸国の力関係、軍事秩序、地政学的特徴、ハルハ河・ノモンハン戦争の遠因、開戦および停戦にいたるまでのプロセス、その後の関係諸国の戦略などに焦点をあて、ミクロ的に慎重な検討をおこないながら、総合的な透視と把握をすることを目的としています。このシンポジウムを通して、お互いに学ぶことができ、ハルハ河・ノモンハン戦争の一層の究明をすすめたいと願っています。   【日程・会場】 2014 年8月9(土)~10日(日)   参加登録:8月9日(土)9:00~9:30 モンゴル・日本人材開発センター 開会式・基調報告:8月9日(土)9:30~12:00 モンゴル・日本人材開発センター 会議:8月9日(土)13:30~18:00 モンゴル・日本人材開発センター 会議:8月10日(日)9:00~12:00 モンゴル防衛大学会議室 視察:8月10日(木)13:00~10:00 日本人抑留死亡者(ノモンハン戦死者含む)慰霊碑、                        ジューコフ記念館見学、草原への旅行   【プログラム】        詳細は下記案内状をご覧ください。 案内状(日本語) Invitation in English
  • 金 兌希「第3回SGRAワークショップin蓼科『ひとを幸せにする科学技術とは』報告」

    渥美国際交流財団2014年度蓼科旅行・第3回SGRAワークショップin蓼科は、2014年7月4日(金)から6日(日)の週末に行われました。ワークショップでは、「『ひとを幸せにする科学技術』とは」をテーマに、講演やグループディスカッションなどが行われました。   7月4日の早朝、現役・元渥美奨学生らを中心とした約40人の参加者は新宿センタービルに集合し、貸切バスで蓼科高原チェルトの森へ向かいました。旅路の途中、SUWAガラスの里ではガラス工芸品の鑑賞を、諏訪大社上社本宮ではお参りをしました。渋滞に巻き込まれることもなく、予定通り16時過ぎにはチェルトの森にある蓼科フォーラムに到着しました。チェルトの森の自然は素晴らしく、空気がとても澄んでいて、自然に心と体が休まっていくのを感じました。   夕食後、オリエンテーションとアイスブレーキングが行われました。アイスブレーキングでは、それぞれの趣味や家族構成などの簡単な紹介から、自分のこれまでの人生のモチベーショングラフを作成し説明し合うなど、短いながらも密度の濃い交流時間を持ちました。普段の会話では話すことがあまりないような、それぞれの人生や価値観などについても垣間見ることができるような時間でした。   7月5日、朝から本格的なワークショップが開催されました。ワークショップは、大きく分けて、講演とグループディスカッションで構成されました。   最初に、立命館大学名誉教授のモンテ・カセム先生による講演、「次世代のダ・ヴィンチを目指せ―地球規模の諸問題を克服するための科学技術イノベーションに向けて―」が行われました。カセム先生は、専門も多岐に亘るだけでなく、大学や国連など、様々な領域で活躍されてきた経歴をお持ちで、講演内容にも多くのメッセージが含まれていました。その中でも、先生が強調されたのは、学際的なコミュニティーで行われる「共同」作業が生み出すイノベーションが持ち得る大きな可能性でした。先生は、そのような共同作業が生み出す、新たなものを創造していくエネルギーを、ルネサンスを築いたダ・ヴィンチに見たて、現代の諸問題を克服していくために有用に活用すべきだと力説されました。講演の中では、その実例として、カセム先生自身の京都とスリランカのお茶プロジェクトの取り組みについての紹介などがありました。さらに、そのようなイノベーションを達成するには、個々人の専門をしっかりと持つこと、そしてネットワーク、コミュニケーション等が重要であると説明されました。講義の後には、活発な質疑応答も行われ、講演に対する高い関心が窺われました。   午後のワークショップは、参加者を6つのグループに分けて進められました。最初に、いくつかの代表的な科学技術を象徴する製品の落札ゲームが行われました。各グループには、仮想のお金が与えられ、その中で自分たちが欲しいと思う製品に呼び値を付け、落札するというものです。その過程で、なぜその製品(科学技術)が重要であるのか、各グループで議論し考える時間が持てました。   次に行ったのは、グループディスカッションでした。全てのグループに、人が幸せになるためのイノベイティブな科学製品を考案するという課題が出されました。グループごとに人の幸せとは何なのか、その幸せを促進できる科学技術はどのようなものなのか、議論が行われ、模造紙に科学製品を描いてまとめる作業をしました。   7月6日の最終日には、各グループが考案した製品を発表する時間を持ちました。それぞれのチームから、とてもユニークなアイディア製品が紹介されました。具体的には、瞬時に言語に関係なくコミュニケーションを可能にするノートパッド、インターネットを利用した全世界医療ネットワークシステム、人型お助けロボット(オトモ)、健康管理から睡眠時間を効率的に調節できるなどの機能を持った多機能カプセルベッド(ダビンチベッド)、地域コミュニティー再生のための技術などが提案されました。各チームが考案した製品は、医療格差、介護、社会の分断化など、現代社会が直面している諸問題を反映し、それに対するユニークな解決策を提示していました。   各グル―プが発表を行った後は、エコ、利潤性、夢がある、の3つの基準をもとに、参加者全員による評価が行われました。その中で、総合的に最も高い評価を得たものが、コミュニティー再生のための科学技術を提案したグループでした。このグループは、希薄化されている地域コミュニティーの再生こそが人の幸せに繋がると考え、個人の利便性ばかり追求するのではなく、コミュニティーの再生に目を向けるべきだという主張を行いました。科学技術そのものよりも、地域コミュニティーの再生を謳ったグループが最も多くの支持を得たことは、とても興味深い結果でした。参加者の多くが、コミュニティーの喪失を現代における大きな問題点だと認識しているということがわかりました。   最後に、全員が一人ずつ感想を述べる時間を持ちました。参加者からは、多様な専門分野や背景を持った人々との議論が面白く、勉強になったという意見が多く挙がりました。個人が各々の専門をしっかりと持ちながら、学際的なコミュニティーの中で問題の解決に取り組むときこそイノベイティブなことができるという、カセム先生の講演を今一度考えさせられました。   ワークショップを終えた後は、ブッフェ形式の昼食をとり、帰路につきました。帰路の途中に、蓼科自由農園で買い物をし、予定通り19:00頃には新宿駅に着きました。   今回のワークショップは、全ての参加者が積極的に参加できるような細かなプログラムが用意されていたため、短時間で参加者同士の密接なコミュニケーションを図ることができました。また、蓼科チェルトの森の素晴らしい自然も参加者の心をより開放する一助となりました。今回のワークショップでできたコミュニティーやその経験は、今後の学際的な、そしてイノベイティブな活動を行うエネルギーへと繋がっていくことと思います。   ワークショップの写真   ------------------------------------ <金兌希(きむ・てひ)Taehee Kim> 政治過程論、政治意識論専攻。延世大学外交政治学科卒業、慶應義塾大学にて修士号を取得し、同大学後期博士課程在学中。2014年度渥美財団奨学生。政治システムや政治環境などの要因が市民の民主主義に対する意識、政治参加に与える影響について博士論文を執筆中 ------------------------------------     2014年9月24日配信
  • 第3回SGRAワークショップ「人を幸せにする科学とは」へのお誘い

    SGRAでは会員を対象としたワークショップを下記の通り行います。 参加ご希望の方は、SGRA事務局へご連絡ください。   テーマ: 「人を幸せにする科学とは」 日 時: 2014年7月5日(土)~6日(日) 集 合: 7月5日(土)午前9時 東京商工会議所 蓼科フォーラムにて受付   参加費: 5000円(食費、宿泊費(相部屋)を含む)   *ラクーン会員の方には補助がありますので事務局へお問い合わせください 募集人数: 先着20名(渥美奨学生を含む全参加者数は約40名になります) 募集締め切り:2014年6月20日(ただし定員になり次第募集を締め切ります) 申し込み・問い合わせ:SGRA事務局(sgra-office@aisf.or.jp)   ワークショップの趣旨:   SGRAでは、福島原発事故を契機にして飯舘村スタディーツアーやSGRAワークショップ、そして5月31日にはSGRAフォーラム「科学技術とリスク社会」を開催してきました。そこから浮かび上がってきたのが「現代の科学技術は、ひとを幸せにしているのか?」という問いかけでした。今回のSGRAワークショップin蓼科では「ひとを幸せにする科学技術」をテーマとして、科学技術の発展と人の幸せについて、ひとりひとりが自分のこととして考える機会をもちたいと思います。プログラムではモンテ・カセム先生の講演に続き、グループゲームなどを行いながら「楽しく、しかし深く」語り合いたいと思います。   プログラム   7月5 日(土)(於:東商蓼科フォーラム) 9:30~12:00 講演+グループ分け ・講演 「次世代のダ・ヴィンチを目指せ」  -地球規模の諸問題を克服するための科学技術イノベーションに向けてー モンテ・カセム先生(立命館大学名誉教授/立命館国際平和ミュージアム館長) 12:00~13:30 昼食 13:30~15:00 ビデオ+小グループディスカッション 15:00~15:30 休憩 15:30~17:00 小グループディスカッション 7月6日(日) 9:30~12:00 発表・まとめとふりかえり   《講師紹介》 モンテ・カセム先生(環境科学、イノベーション論) スリランカ出身、東京大学工学研究科博士課程修了(建築学/都市計画)、国連地域開発センター等を経て、立命館大学教授、立命館アジア太平洋大学学長、立命館副総長(国際担当)等を歴任   皆様のご参加をお待ちしています。