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2018.10.18
東アジア日本研究者協議会は、東アジアの日本研究関連の学術と人的交流を目的として2016年に発足し、韓国・仁川で第1回国際学術会議が開催されました。2017年の第2回会議(於中国・天津)に続き、本年10月末には第3回会議が日本・京都で開催されることとなりました。
歴史的な壁のため、さらに東アジアでは自国内に日本研究者集団が既に存在することもあり、国境・分野を越えた日本研究者の研究交流が妨げられてきた側面があります。東アジア日本研究者協議会は日本研究の質的な向上、自国中心の日本研究から多様な観点に基づく日本研究への志向、東アジアの安定と平和への寄与の3つを目的としています。SGRAも同協議会の理念に賛同して共同パネルとして参加をいたします。
本年はSGRAから、「現代日本社会の「生殖」における男性の役割――妊娠・出産・ 育児をめぐるナラティブから」、「アジアにおける日本研究者ネットワークの構築――SGRA(渥美国際交流財団)の取り組みを中心に」の2パネルが参加します。
これを機会に皆様のご参加やご関心をお寄せいただければ幸いです。
第3回東アジア日本研究者協議会 国際学術大会
日 時: 2018 年 10 月 26 日(金)~ 28 日(日)
会 場: 国際日本文化研究センター(10月26日) 京都リサーチパーク(10月26日 、27日、28日)
主 催: 東アジア日本研究者協議会、国際日本文化研究センター
共 催: 独立行政法人国際交流基金
助 成: 鹿島学術振興財団、村田学術振興財団
概 要 : 全体プログラム 分科会プログラム
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SGRA参加パネル
「現代日本社会の「生殖」における男性の役割――妊娠・出産・ 育児をめぐるナラティブから」
「アジアにおける日本研究者ネットワークの構築――SGRA(渥美国際交流財団)の取り組みを中心に」
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◆セッションB1:「現代日本社会の「生殖」における男性の役割――妊娠・出産・ 育児をめぐるナラティブから」
分科会1(一般パネル) 10月27日(土)9:30-11:00 於 京都リサーチパーク
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パネル趣旨:
現代日本における最重要の社会的課題として「少子化」は、依然として大いに議論されている。そのなかで、個人の妊娠・出産・育児には、国家や企業、マスメディアからの介入がみられるが、その言説では、若い女性が子供を産み育てるために身体・キャリア・恋愛などの人生のあらゆる側面をプランニングし、管理する必要性が説かれている。そうした「妊活」(妊娠活動)や育児に関わる言説には、今も尚、母性神話が未だ強く根付いている。一方、そこに男性の存在感は稀薄であり、家庭内における「父親の不在」がしばしば指摘されている。たとえ「イクメン」という言葉が流行し、子育てに参加したい気持ちはあっても、長時間労働や日本企業独特の評価制度などに縛られ、それを許されない男性は多い。
上記の背景を踏まえた上で、本パネルでは、社会学と文学のそれぞれの視点から、妊娠・出産・育児における男性の役割がいかにして語られるかを考えていく。
パネリスト:
司会者 コーベル・アメリ(パリ政治学院)
発表者1 ファスベンダー・イサ ベル(東京外国語大学)
発表者2 グアリーニ・レティツィア(国際基督教大学)*
討論者1 デール・ソンヤ(一橋大学)
討論者2 モリソン・リンジー(武蔵大学)
発表要旨:
【発表①】
「妊活」言説における男らしさ―現代日本社会における 「産ませる性」としての男性に関する言説分析 (ファスベンダー・イサ ベル )
「妊娠」すること、「産む」ことは、個人的な領域に属していると思われがちであるが、不断に政治的なものとして公の介入を受けてきた。とりわけ、切実な少子化社会にあることを背景に、「少子化政策の主体たる国家」、「生殖テクノロジーを用いて不妊治療サービスを展開する医療企業」、「世論を左右するマスメディア」の三つの権力主体が相互に絡み合いながら、その言説を形成してきた。つねに問題視されてきたのは「妊孕性」と「年齢」の関係性である。個人に"正しい"「情報・知識」を提供することで、若い女性が子供を産むために身体・キャリア・恋愛などの人生のあらゆる側面をプランニングし、管理する必要性が説かれてきた。
先行研究においては、これまで「妊活」言説の主人公が主に女性に限定されてきたことが批判されている。ただ最近になって、男性の身体、妊孕性をめぐる言説も注目されてきている。生殖テクノロジーの発展に伴う生殖プロセスの、生殖細胞レベルでの可視化が、さらに徹底して利用されていることが背景にある。本発表は、新聞記事、専門家へのインタービュー、男性向けの「妊活」情報、そして男性自身の語る「妊活」体験談などの分析に基づいて、男性の生殖における役割が現在の日本社会においてどのように位置づけられているのかを探ってゆく。それによって、現在進行する「生殖をめぐるポリティクス」、ひいては権力による「性の管理」について、重要な一側面を明るみに出すことを目指す。
【発表②】
妊娠・出産・育児がつくりあげる男性の身体-川端裕人 「ふにゅう」と「デリパニ」を手がかりに-
(グアリーニ・レティツィア)
現代日本における出産・育児の語り方は、常に女性に焦点を当て、母親がいかにして子どもを産み育てるための身体を作るべきか論じられている。一方、そこに男性の存在は稀薄であり、家庭内における「父親の不在」がしばしば指摘されている。たとえ「イクメン」という言葉が流行しているとはいえ、父親が出産・育児において副次的な役割しか担わないことは多い。このような社会事情を反映する現代文学においても出産・育児の体験はしばしば女性を中心に語られており、その体験が母親の身体および精神にいかなる影響を与えるかを探求する作品が多い。それに対して、男性が物語の舞台に登場することは少ない上、育児に「協力する」副次的な人物として描かれることが多い。
本発表では、川端裕人の『おとうさんといっしょ』(2004年)を中心に日本現代文学における父親像の表象について考察を試みる。まずは、川上未映子、角田光代、伊藤比呂美、山崎ナオコーラなど、様々な作家や作品を並べて分析することによって、出産・育児における母親像および父親像を探り、「父親の不在」の表象を明確にする。また、川端裕人の『おとうさんといっしょ』から出産に立ち会う男性を主人公にする「デリパニ」と授乳しようと試みる父親を描く「ふにゅう」、この二つの短編小説を取り上げる。川端裕人の作品分析をもって、男性の身体に焦点を絞りながら父親の表象について論じ、新たな観点から出産・育児の体験を考察する。
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◆セッションB3:「アジアにおける日本研究者ネットワークの構築――SGRA(渥美国際交流財団)の取り組みを中心に」
分科会3(一般パネル) 10月27日(土) 13:45-15:15 於 京都リサーチパーク
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パネル趣旨:
「関口グローバル研究会」(SGRA)は渥美国際交流財団が支援した元奨学生が中心となって活動している研究ネットワークである。21世紀の幕開けに設立されたSGRAは、第1回フォーラム「21世紀の日本とアジア」を皮切りに、多分野多国籍の研究者によって、多面的なアプローチから研究を行っている。その集大成として2013年に第1回アジア未来フォーラム(AFC)が開催され、今夏に第4回AFCは成功裏に幕を閉じた。
2014年第2回AFC@バリ島円卓会議の続編として行なわれた2015年第49回SGRAフォーラム「日本研究の新しいパラダイムを求めて」において、「日本研究」をアジアの「公共知」として育成するために、アジアで共有できるアジア研究を目指すネットワークの構築が喫緊の課題だというコンセンサスが得られた。また、東アジアに創られた「知の共同空間」での「共同体」の構築に欠かせない「方法としての東アジアの日本研究」の意義も再認識された(SGRAレポートNo.74<2016.6発行>より)。
その翌年に第1回東アジア日本研究者協議会(EACJS)がソウルで開催され、2017年第2回@天津に続き、今秋第3回EACJS@京都の開催を迎える運びになった。いわば、SGRAフォーラムで展開された有識者らの論議が起爆剤になり、東アジアの日本研究者を集結する「知の共同空間」を誕生させたのではないかともいえよう。
本パネルでは、アジアにおける日本研究者ネットワークの構築が実現するまでに、2000年発足以来継続してきたSGRAの取り組みを振り返り、今後目指すべき新地平を探る。特に、SGRAフォーラムとシンクロして、アジア各地域で展開される、「日韓アジア未来フォーラム」(2001~)、「日比共有型成長セミナー」(2004~)、「SGRAチャイナフォーラム」(2006~)、「日台アジア未来フォーラム」(2011~)に焦点を当て、地域ごとの活動報告に伴い、より創発的に共有できる「知の共同空間」の構築に解決すべき課題、未来を切り拓く骨太ビジョンの策定等について、活発的な意見交換を行う。
パネリスト:
司会者 劉傑 (早稲田大学)
発表者1 金雄熙(韓国・仁荷大学)
発表者2 マキト、フェルディナンド (フィリピン大学ロスバニョス校)
発表者3 孫建軍(中国・北京大学)
発表者4 張桂娥(台湾・東呉大学)*
討論者1 稲賀繁美(国際日本文化研究センター)
討論者2 徐興慶(台湾:中国文化大学)
発表要旨:
【発表①】
日韓アジア未来フォーラムの経緯、現状と課題:
「ダイナミックで実践的な知のネットワークを目指して」(金雄熙)
「日韓アジア未来フォーラム」(JKAFF)は、日本と韓国、そしてアジアの研究者及び現場の専門家たちが、アジアの未来について幅広く意見を交換する集まりであり、韓国ラクーンも積極的に参加し、知のネットワークを築き上げてきた。2001年韓国未来人力研究院の「21世紀日本研究グループ」と渥美財団SGRAの共同プロジェクトで始まり、主に東アジア共同体の構築に向けた様々な分野における地域協力の動きや可能性を探ってきた。2001年10月に第1回会議がソウルで開かれて以来、2018年3月第17回まで間断なく進められ、さらなる発展を模索している。歴史問題で揺れ動く日韓の間ではあまり類を見ないしっかりした交流プロジェクトであると自負できよう。
これまでのテーマは、「アジア共同体構築に向けての日本および韓国の役割について」、「東アジアにおける韓流と日流:地域協力におけるソフトパワーになりうるか」、「親日・反日・克日:多様化する韓国の対日観」、「日韓の東アジア地域構想と中国観」、「東アジアにおける公演文化(芸能)の発生と現在:その普遍性と独自性」、「1300年前の東アジア地域交流」、「東アジアにおける原子力安全とエネルギー問題」、「アジア太平洋時代における東アジア新秩序の模索」、「ポスト成長時代における日韓の課題と東アジア協力」、「アジア経済のダイナミズム-物流を中心に」、そして最近の日中韓の国際開発協力についての3か年プロジェクトなど、2-3年単位のプロジェクトで東アジア協力課題について議論してきた。
JKAFFは主に主催側の代表や幹事とでテーマを設定し、SGRAメンバーやその分野の専門家に参加を呼び掛けるかたちで専門用語が通じ、顔の見える実践的な知のネットワークの構築を目指してきた。これまでの経験からみると、専門性の追求と緩やかなネットワークの構築には相反する側面もあったと思われる。17年も同じ進め方で運営してきたので、テーマの設定の在り方や次世代を担う若手研究者の育成という面では考え直すところがあるのも事実であろう。今後より多元的で弾力的な推進体系を取り入れ、東アジア地域協力課題により多面的に対応し、ダイナミックで実践的な知のネットワークを作り上げていきたい。
【発表②】
日比共有型成長セミナーの経緯、現状と課題:
「持続的な共有型成長~みんなの故郷(ふるさと)、みんなの幸福(しあわせ)~をめざして」(マキト、フェルディナンド)
マキトがマニラに設立した「SGRAフィリピン」は渥美財団の支援を受けて、2004年から毎年マニラ市を中心にフィリピン各地でセミナーを24回開催してきた。テーマは一貫して「共有型成長(Shared Growth)」。これは、世界銀行が「東アジアの奇跡」と呼んだ、経済成長とともに貧富の格差が縮小した日本をはじめとする東アジア各国の1960~70年代の経験に因む。残念ながらフィリピンはこの「奇跡」の中に入れなかったので、かつての日本の経験をフィリピンに伝えたいという願いがあった。以来15年間に日本の社会経済状況は大きく変わったが、「グローバル化の津波」にいかに対抗するかという本セミナーの問題意識は変わらない。近年は、グローバルに深刻な環境問題も取り入れ、「持続的な共有型成長」というテーマに発展した。持続的な共有型成長セミナーでは、環境保全(持続可能)、公平(共有型)、効率(成長)の実現を目ざすために必要と思われるメカニズムを多角的な視点から考察し、実現のための途を探って行きたい。多くの参加を促す為に、国際的、学際的、分野横断的なアプローチで、専門家だけでなく一般人にもわかるような発表・議論を進めようとしている。
本セミナーは、SGRAでは珍しく英語のみで実施している。これまでのテーマは、「都会・地方の格差と持続可能共有型成長」「人と自然を大切にする製造業」「人間環境学と持続可能共有型成長」「開発研究・指導の進歩と効果を持続させるために」「地方分権と持続可能な共有型成長」「人や自然を貧しくしない進歩:地価税や経済地代の役割」など。
共有型成長セミナーは、当初マニラ市にあるアジア太平洋大学の協力を得て開始したが、2010年と2011年に渥美奨学生同期の高偉俊教授が、フィリピン大学(ディリマン校)工学部建築学科の研究者数名を北九州市立大学に招へいし、日本で2回環境問題をテーマにSGRAフォーラムを開催してから、共有型セミナーにも積極的に関わって学際的な人的ネットワークが発展し、2013年にフィリピン大学で開催した第16回セミナーには220名もの参加者を得た。その後、マニラだけでなくフィリピン各地における円卓会議の開催も試みられたが、2017年にマキトが帰国し、フィリピン大学ロスバニョス校に赴任したため、本セミナーは同校の全面的な支援を受けて、毎年2~3回のペースで開催する予定である。
共有型セミナー通じて形成されたフィリピン国内における研究者ネットワークは、渥美財団が開催するアジア未来会議の実施に貢献している。そして、共有型成長セミナーのネットワークとフィリピン大学ロスバニョス校の全面的な支援を得て、第5回アジア未来会議は、2020年1月にフィリピンで開催される。
【発表③】
SGRAチャイナフォーラムの経緯、現状と課題:
「広域的な視点から東アジア文化史再構築の可能性を探って」(孫建軍)
2006年に発足したSGRAのチャイナフォーラムは早くも12年間活動してきた。他の地域のSGRA活動と較れば、内容に大きな方向転換があったのが主な特徴といえる。活動当初は、中国人若者を対象に、日本の各界で活躍しているNPOの方が講演をする形式だった。テーマとして、日本語教育、黄土高原の緑化協力、在日アジア人留学生の支援、水俣病、アフリカ児童への食事支援、中国の環境問題と日中民間協力、ボランティアなどがあった。会場は大学が殆どだったが、国際交流基金北京日本文化センターで行うこともあった。また、同じ内容の講演を、北京のほかに、もう1箇所の都市で開催することも試みた。フフホトをはじめ、延辺・ウルムチ・上海などにおいて、計6回ほど行われている。また、より多くの中国人若者の参加を得るため、同時通訳付きで行われたこともチャイナフォーラムの特徴の一つだった。毎回のアンケート集計を見れば、講演から様々な知識を得て、視野が広がったといった回答が多く、やりがいのない活動内容ではなかった。
日本と中国は一衣帯水の関係にあると言われているが、この一衣帯水も日中関係を荒らすことがある2012年に起きた周知の出来事の波紋が予想外にもチャイナフォーラムに及び、活動内容の大きな軌道修正を促した。清華大学東亜文化講座の協力を得て、2014年より広域的な視点から東アジア文化史再構築の可能性を探ることをテーマの主眼に据え、日本文学や文化の研究者を対象に、「近代日本美術史と中国」、「日中200年―文化史からの再検討」、「東アジア広域文化史の試み」(アジア未来会議の一部)、「東アジアからみた中国美術史学」と、4回ほど行ってきた。多くの中国人研究者の関心を集め、成功裏に開催できたことを実感した。本発表では方向転換が功を奏した理由を探ってみたい。
【発表④】
日台アジア未来フォーラムの経緯、現状と課題:
「既成概念にとらわれない柔軟なフットワークで、身の丈にあった知的交流活動の展開を」(張桂娥)
「関口グローバル研究会」(SGRA)主催の地域型国際会議として、2011年から毎年開催する「日台アジア未来フォーラム」(JTAFF)は、台湾ラクーン(渥美国際交流財団元奨学生)が中心となって活動している学術交流ネットワークである。JTAFFでは、主にアジアにおける言語、文化、文学、教育、法律、歴史、社会、地域交流などの議題を取り上げ、若手研究者の育成を通じて、日台の学術交流を促進し、日本研究の深化を目的とすると同時に、若者が夢と希望を持てるアジアの未来を考えることを、その設立の趣旨としている。
これまでのテーマは、「国際日本学研究の最前線に向けて」、「東アジア企業法制の現状とグローバル化の影響」、「近代日本政治思想の展開と東アジアのナショナリズム」、「東アジアにおけるトランスナショナルな文化の伝播・交流」、「日本研究から見た日台交流120 年」、「東アジアにおける知の交流」、「台・日・韓における重要法制度の比較」、「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性」など、実に多種多様である。
JTAFF主催責任を担う台湾ラクーンは、バラエティーに富んだ多元的学問領域を視座に、既成概念にとらわれない柔軟なフットワークを展開してきた。いわば「身の丈にあった日台間知的交流活動」をコンセプトに、地道な活動に取り組んきたわけであるが、目標も着地点も定まらない中、危機感を募らせる現状である。
本発表では、JTAFFの活動報告に伴い、持続可能な「知の共同空間」の構築に欠かせない骨太ビジョンの策定等について、有識者と活発的な意見交換を行いたい。
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2018.09.13
下記の通りSGRAフォーラムを開催いたします。参加ご希望の方は、事前にお名前・ご所属・緊急連絡先をSGRA事務局宛ご連絡ください。
◆「日本の高等教育のグローバル化!?」
~グローバル人材育成とはなんだろうか~
日時:2018年10月13日(土)午後1時30分~4時30分 その後懇親会
会場:早稲田大学国際会議場第一会議室
参加費:フォーラム・懇親会ともに無料
お問い合わせ・参加申込み:SGRA事務局(sgra-office@aisf.or.jp, 03-3943-7612)
◇ポスター
◇フォーラムの趣旨
2012年に日本再生戦略の中で若者の海外留学の促進とグローバル人材育成が謳われ、5年が経過した。グローバル人材の育成には、多方面かつグローバルな観点での議論と政策が不可欠であるが、現在の諸政策は外国語能力の向上と異文化理解の体得を推進するに留まっている。例えば、TOEFL・TOEICを利用した英語習得及び評価や英語での授業展開を中心としたものや、海外留学の推奨など日本から海外に出る方向に集中していることが挙げられる。また、その対象が日本人に限られている点など、現時点におけるグローバル人材育成の方針は一方面かつローカルな視点から進められているようにとれる。
一方、教育の受け手であり、育成される対象である若者がこのような現状をどのように受け止め行動しているのかはあまり議論されず取り残されたままである。今後スーパーグローバル大学(SGU)から全国の大学にグローバル人材育成教育の政策がさらに促進・拡大されることを踏まえると、今一度現状を振り返る必要がある。
そこで本フォーラムでは、高等教育のグローバル化をめぐる大学と学生の実態を明らかにし、同様の施策をとる他国との比較を通して同政策の意義を再検討する。さらに日本に住み教鞭を執る外国人研究者が中心となって発表することで本テーマに新たな視点をもたらすことが期待される。
◇プログラム
総合司会:張建(東京電機大学特任教授)
【問題提起】
沈雨香(早稲田大学助手)
「スーパーグローバル大学(SGU)の現状と若者の受け止め方:早稲田大学を例として」
【講演1】
吉田文(早稲田大学教授)
「日本の高等教育のグローバル化、その現状と今後の方向について」
【講演2】
シン・ジョンチョル(ソウル大学) *逐次通訳付
「韓国人大学生の海外留学の現状とその原因の分析」
【事例報告】
・関沢和泉(東日本国際大学准教授)「内向き志向なのか――地方小規模私立大学における《留学》」
・ムラット・チャクル(関西外国語大学講師)「関西外国語大学におけるグローバル人材育成の現状」
・金範洙(東京学芸大学特命教授)「日本の高等教育のグローバル展開を支えるサブプログラム事例」
【フリーディスカッション】「日本の高等教育のグローバル化!?」
-討論者を交えたディスカッションとフロアとの質疑応答-
モデレーター:シム・チュンキャット(昭和女子大学准教授)
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2018.06.21
SGRAでは、良き地球市民の実現をめざす(首都圏在住の)みなさんに気軽にお集まりいただき、講師のお話を伺い、議論をする<場>として、SGRAカフェを開催しています。下記の通り第11回SGRAカフェを開催しますので、参加ご希望の方はSGRA事務局へお名前、ご所属と連絡先をご連絡ください。
◆林泉忠「日中台の微妙な三角関係」
日時:2018年7月28日(土)15時~16時半
会場:渥美財団ホール http://www.aisf.or.jp/jp/map.php
会費:無料
参加申し込み・問合せ:SGRA事務局 Email: sgra-office@aisf.or.jp Tel: 03-3943-7612
チラシ(PDF版)
講師略歴:
林泉忠(リン・センチュウ Lim Chuan-Tiong)
台湾中央研究院近代史研究所副研究員、国際政治学専攻。2002年東京大学より博士号(法学)を取得、琉球大学法文学部准教授、またハーバード大学フェアバンク・センター客員研究員などを歴任。2012年より現職。著作に『「辺境東アジア」のアイデンティティ・ポリティクス:沖縄・台湾・香港』(単著、明石書店、2005年)。
講師からのメッセージ:
李克強首相の訪日により日中関係が暫く良好な方向に向かう見通しなので、2年前の蔡英文政権の発足で「黄金期」を迎えたと期待される日台関係は難しい段階に入ると思われます。そもそも日中関係と日台関係はどのような関係にあるのでしょう?中国にとっていわゆる「台湾問題」は対日関係に影響する3大要因のひとつであり、日本にとっての中国は経済上の最大のパートナーで最も重要な対外関係のひとつです。他方、日本と台湾は国交がないにも関わらず、互いに親近感が最も高く民間関係は最良な状態が続いています。さらに、日本でも注目される中台関係はよくも悪くも日中関係にも影響を与えています。いったい、複雑で微妙な日中台三角関係をいかに捉えればよいのでしょうか。
皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
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2018.04.20
下記の通り第8回日台アジア未来フォーラム 並びに 東呉大学マンガ・アニメ文化国際シンポジウムを台北市で開催します。参加ご希望の方はSGRA事務局へご連絡ください。
テーマ:「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性:コミュニケーションツールとして共有・共感する映像文化論から学際的なメディアコンテンツ学の構築に向けて」
開催日:2018年5月25日(金)午後3時~26日(土)終日
会場:東呉大学外双渓キャンパス第一教学研究棟普仁堂(大講堂)
主催:東呉大学日本語学科、東呉大学図書館、(公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)
共催:東呉大学英文学科、東呉大学教養教育センター
後援助成者:中華民国教育部、(公財)国際交流基金、(公財)日本台湾交流協会、中鹿營造股份有限公司、中華民国三三企業交流會、台日商務交流協進會、台灣住友商事股份有限公司、全日本空輸股份有限公司台北支店、ケミカルグラウト株式会社、みずほ銀行 台北支店、Kajima Overseas Asia Pte. Ltd.
名義賛助者:台湾日本人会、台北市日本工商会
講演会ご案内HP
イベントご案内HP
●日本語申込み
●問い合わせ
※日本:SGRA事務局 sgra-office@aisf.or.jp
※台湾:東呉大学日文系 hua666@scu.edu.tw
●プログラム
2018年5月25日(金) 第一部 (15:00~受付開始)
【特別講演】 15:30~17:20
✽弘兼憲史先生(漫画家、『島耕作』シリーズ作者)
テーマ:「漫画から学んできたこと」
2018年5月26日(土) 第二部(8:00~受付開始)
◆招請講演 午前の部 8:40~10:55
【招請講演 1 】8:40~9:25
✽表智之 (日本北九州市漫画ミュージアム専門研究員)
テーマ:「研究者のネットワーク化とマンガ研究の進展-学会・地域・ミュージアム-」
【招請講演 2 】9:25~10:10
✽宣政佑 (韓国 Comicpop Entertainment President)
テーマ:「韓国ではアジア漫画をどう見てきたか 」
【招請講演 3 】10:10~10:55
✽秦 剛 (北京外国語大学北京日本学研究センター教授)
テーマ:「戦後日本最初の長編アニメーション『白蛇伝』における「中国」表象と「東洋」幻想」
【パネル ディスカッション】 11:10~12:10
テーマ:「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性」
司会者:今西淳子 (渥美国際交流財団常務理事)
パネリスト1:表智之 (北九州市漫画ミュージアム専門研究員)
パネリスト2:宣政佑 (Comicpop Entertainment President)
パネリスト3:秦 剛 (北京外国語大学北京日本学研究センター教授)
パネリスト4:梁世佑 (U-ACG/旭傳媒科技股份有限公司創立者)
パネリスト5:黃瀛洲 (台灣動漫畫評論團體傻呼嚕同盟召集人)
パネリスト6:住田哲郎 (京都精華大学専任講師)
◆招請講演 午後の部 13:20~14:05
【招請講演 4 】 A会場
✽梁世佑(台湾U-ACG/旭傳媒科技股份有限公司創辦人)
テーマ:「台湾のオタクにみる日本アニメの受容と変化:作品の鑑賞、収集と行動」
【招請講演 5 】 B会場
✽黄瀛洲(台灣動漫畫評論團體「傻呼嚕同盟」召集人)
テーマ:「未来を見据えた台湾アニメの発展」
◆論文発表 14:10~17:10 各会場にて3本ずつ計18本論文発表を予定
【第1セクション】14:10~15:30 A1/B1/C1 会場にて論文発表
【第2セクション】15:50~17:10 A2/B2/C2 会場にて論文発表
【第1セクション】14:10~15:30
A-1会場
1. 発表者:呂佳蓉(台灣大學語言學研究所専任助理教授)
テーマ:「ACG文化による言語の伝播と受容」(日本語発表)
2. 発表者:住田哲郎(京都精華大学専任講師)
テーマ:「文字の違いに見るマンガ翻訳の不可能性」(日本語発表)
3. 発表者:林蔚榕(東吳大学日本語文学科専任助理教授)
テーマ:「日本のマンガにみるプロフェッショナルの態度と行動特性-料理マンガを中心に-」(日本語発表)
B-1会場
1. 発表者:沈美雪(中國文化大學日本語文學系専任副教授)
テーマ:「日本のマンガ・アニメにおける「時間遡行」作品の構造分析―死亡、再生、ループを手掛かりにー」(中国語発表)
2. 発表者:周文鵬(月鳥齋圖文創意工作室責任者、淡江大學中文系兼任助理教授、中原大學通識中心兼任助理教授)
テーマ:「デバイス変奏曲:縦スクロール漫画の原理と趨勢」(中国語発表)
3. 発表者:田昊(東呉大学中国語科博士後期課程在学)
テーマ:「浦沢直樹漫画芸術におけるフィルムセンスの創造力について」(中国語発表)
C-1会場
1. 発表者:林曉淳(世新大学日本語文学科専任助理教授)
テーマ:「『高橋留美子劇場』から見る日本の家族像」(中国語発表)
2. 招待発表者:DALE, Sonja(一橋大学社会学部特任講師)
テーマ:「2Dのような3D―日本のアニメ業界におけるCG業界へのシフト―」(日本語発表)
3. 発表者:黄璽宇(識御者知識行銷創辦人)
テーマ:「個人の存在と集団の存在―トマス・アクイナス思想から『聲の形』における生きづらさを論じる―」(中国語発表)
【第2セクション】15:50~17:10
A-2会場
1. 発表者:小高裕次(文藻外国語大学日本語学科専任助理教授)
テーマ:「ライトノベルのアニメ化に際する諸要素の増減について-『涼宮ハルヒの憂鬱』を例に」(日本語発表)
2. 発表者:永井隆之(国立政治大学日本語文学科専任助理教授)
テーマ:「漫画『ONEPIECE』の組織論 海賊団「麦わらの一味」の性格」(日本語発表)
3. 招待発表者:李偉煌(靜宜大學日本語文學系副教授兼学科主任)
テーマ:「日本のアニメを取り入れたランゲージェクスチェンジ授業の試み」(日本語発表)
B-2会場
1.発表者:李岩楓(京都精華大学博士後期課程マンガ研究科理論 在学)
テーマ:「オノマトペ─日本マンガにおける図面表現及び中国マンガへの応用の可能性」(中国語発表)
2.発表者:陳 龑(東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学表象文化論コース博士課程)
テーマ:「国境を超える連携―中国初期アニメーション史からみたイマドキのアニメ—ション生産トレンド」(中国語発表)
3.発表者:徐錦成(国立高雄応用科技大学文化創意産業科准教授)
テーマ:「野球とマンガの親和性―中華職業棒球大聯盟の二度にわたる野球マンガへの干渉を中心に―」(中国語発表)
C-2会場
1. 発表者:周惠玲(華梵大學哲學系傳播學程兼任助理教授)
テーマ:「ストーリーマンガと児童文学の競合関係―『不思議の国のアリス』を元にしたマンガを例に―」(中国語発表)
2. 発表者:呉昀融(東京大學東洋文化研究所客座研究員/國立台灣大學政治學研究所博士生)
テーマ:「『NARUTO -ナルト-』から核武装論を再検討する」(中国語発表)
3. 発表者:詹宜穎(政治大學中國文學系博士生兼任講師)
テーマ:「混血の葛藤、その狂気と輝き―『東京喰種トーキョーグール』から見た混血種のアイデンティティにおける調和と超越―」(中国語発表)
●フォーラムの趣旨:
第8回日台アジア未来フォーラムでは、全世界規模に広がったマンガ・アニメ文化の魅力に着目し、「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性―コミュニケーションツールとして共有・共感する映像文化論から学際的なメディアコンテンツ学の構築に向けて―」について議論する。また、各セッションで取り上げるテーマとして、マンガの収集・保存と利用、マンガ・アニメの翻訳と異文化コミュニケーション、マンガ・リテラシー形成の理論と実践、マンガ・アニメと物語論、視覚芸術論、映像論、マンガ・アニメのメディアミックス化・マルチユース化、マンガ・アニメの文化的経済学、マンガ・アニメ文化と社会学などが予定されている。
今回のフォーラムでは、グローバル化したマンガ・アニメ研究のダイナミズムを、研究者・参加者たちの多様な立場と学際的なアプローチによって読み解いた上、新たな可能性を見いだすことを目指している。何より、将来有望な若い研究者たちに研究成果を発表する場を提供することにより、日台関係・日台交流、また東アジア地域内の相互交流のさらなる深まりへの理解促進に貢献するものと考えられる。学生や一般参加者たちにも東アジアにおけるサブカルチャー文化の受容現状を理解してもらい、また異文化を越えた視野を抱き、国際交流のネットワークを築きあげてもらいたいと考える。
●日台アジア未来フォーラムとは
日台アジア未来フォーラムは、台湾在住のSGRAメンバーが中心となって企画し、2011年より毎年1回台湾の大学と共同で実施している。過去のフォーラムは下記の通り。
第1回「国際日本学研究の最前線に向けて:流行・ことば・物語の力」
2011年5月27日 於:国立台湾大学文学部講堂
第2回「東アジア企業法制の現状とグローバル化の影響」
2012年5月19日 於:国立台湾大学法律学院霖澤館
第3回「近代日本政治思想の展開と東アジアのナショナリズム」
2013年5月31日 於:国立台湾大学法律学院霖澤館
第4回「東アジアにおけるトランスナショナルな文化の伝播・交流―文学・思想・言語」
2014年6月13日~14日 於:国立台湾大学文学部講堂および元智大学
第5回「日本研究から見た日台交流120 年」
2015年5月8日 於:国立台湾大学文学部講堂
第6回「東アジアにおける知の交流―越境、記憶、共生―」
2016年5月21日 於:文藻外語大学至善楼
第7回「台・日・韓における重要法制度の比較─憲法と民法を中心として」
2017年5月20日 於:国立台北大学台北キャンパス
第8回「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性」
2018年5月25日~26日 於:東呉大学外双渓キャンパス
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2018.04.02
関口グローバル研究会(SGRA)では昨年に引き続き、福島県飯舘(いいたて)村スタディツアーを下記の通り行います。 参加ご希望の方は、SGRA事務局へご連絡ください。
SGRAでは2012年から毎年、福島第一原発事故の被災地である福島県飯舘村でのスタディツアーを行ってきました。
そのスタディツアーでの体験や考察をもとにしてSGRAワークショップ、SGRAフォーラム、SGRAカフェなど、さまざまな催しを展開してきました。今年も第7回目の「SGRAふくしまスタディツアー」を行います。ぜひ、ご参加ください。
日 程: 2018年5月25日(金)、26日(土)、27日(日)
人 数: 10~15人程度
宿 泊: 「ふくしま再生の会-霊山(りょうぜん)センター」
参加費: 一般参加者は新幹線往復費用+12,000円
(ラクーン会会員には補助が出ます)
申込み締切: 5月10日(木)
申込み・問合せ: SGRA事務局 角田
E-mail: tsunodaaisf@gmail.com Tel: 03-3943-7612
プログラム・詳細
今までのふくしまスタディツアーの報告や感想文
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2018.02.15
下記の通り日韓アジア未来フォーラムをソウルにて開催いたします。参加ご希望の方は、事前にお名前・ご所属・緊急連絡先をSGRA事務局宛ご連絡ください。
テーマ: 「北朝鮮開発協力:各アクターから現状と今後を聞く」
日 時: 2018年3月16日(金)午後2時~5時
会 場: 韓国ソウルThe-K Hotel http://www.thek-hotel.co.kr/main_sh.asp
コンベンションセンター2Fオークルーム(Oak Room)
参加費: 無料
お問い合わせ・参加申込み: SGRA事務局(sgra-office@aisf.or.jp, 03-3943-7612)
主 催: (財)未来人力研究院(韓国)
共 催: (公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)
◇フォーラムの趣旨
北朝鮮問題がいかなる方式で解決されようとも、北朝鮮に対する開発支援は今後の交渉過程や問題の解決以降においても、韓国や日本を含め、国際社会が避けては通れない重要な課題である。
本フォーラムでは、北朝鮮開発協力に対する体系的な理解を深めるとともに、北朝鮮開発協力における主なアクターたちの対北朝鮮支援のアプローチとその現状について議論し、新たな開発協力モデルの可能性を探ってみたい。今回は、2016年2月に東京で開催した第15回日韓アジア未来フォーラム「これからの日韓の国際開発協力:共進化アーキテクチャの模索」、2016年10月1日に北九州で開催した第3回アジア未来会議の自主セッション「アジア型開発協力の在り方を探る」、2016年12月仁川松島で開催した第16回日韓アジアイ未来フォーラム「日中韓の国際開発協力:新たなアジア型モデルの模索」における議論を受け、北朝鮮開発援助のあり方について考える。
【日韓同時通訳付き】
◇プログラム
【報告1】 「北朝鮮開発協力の包括的理解と多様なアプローチ」
孫赫相(ソン・ヒョクサン:慶熙大学公共大学院院長)
【報告2】 「中国と北朝鮮の関係につむじ風――その変化を注目せよ」
朱建栄(しゅ・けんえい:東洋学園大学人文学部教授)
【報告3】 「韓国、国連の北朝鮮開発協力:現状と評価」
文炅鍊(ムン・キョンヨン:全北大学国際学部准教授)
【フリーディスカッション】
-報告者を交えたディスカッションとフロアとの質疑応答-
◇モデレーター
金雄煕(キム・ウンヒ:仁荷大学国際通商学科教授)
◇討論者
李恩民(リ・エンミン:桜美林大学教授)
李鋼哲(り・こうてつ:北陸大学教授)
李元徳(リ・ウォンドク:国民大学教授)
朴栄濬(パク・ヨンジュン:国防大学教授)
他
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2017.10.19
下記の通りSGRAチャイナ・フォーラムを開催いたします。参加ご希望の方は、事前にお名前・ご所属・緊急連絡先をSGRA事務局宛ご連絡ください。
※お問い合わせ・参加申込み:SGRA事務局(sgra-office@aisf.or.jp, 03-3943-7612)
テーマ: 「東アジアからみた中国美術史学」
日 時: 2017年11月25日(土)午後2時~5時
会 場: 北京師範大学後主楼914
主 催: 渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)
共 催: 北京師範大学外国語学院、清華東亜文化講座
助 成: 国際交流基金北京日本文化センター、鹿島美術財団
◇フォーラムの趣旨
作品の持つ芸術性を編述し、それを取り巻く社会や歴史そして作品の「場」やコンテキストを明らかにすることによって作品の価値づけを行う美術史学は、近代的社会制度の中で歴史学と美学、文化財保存・保護に裏打ちされた学問体系として確立した。とりわけ中国美術史学の成立過程においては、前時代までに形成された古物の造形世界を、日本や欧米にて先立って成立した近代的「美術」観とその歴史叙述を継承しながらいかに近代的学問として体系化するか、そして大学と博物館という近代的制度のなかにいかに再編するかというジレンマに直面した。この歴史的転換と密接に連動しながら形成されたのが、中国美術研究をめぐる中国・日本・アメリカの「美術史家」たちと、それぞれの地域に形成された中国美術コレクションである。このような中国美術あるいは中国美術史が内包する時代と地域を越えた文化的多様性を検証することによって、大局的な東アジア広域文化史を理解する一助としたい。
◇プログラム
総合司会:孫 建軍(北京大学日本言語文化学部)
【問題提起】林 少陽(東京大学大学院総合文化研究科)
【発表1】塚本麿充(東京大学東洋文化研究所)
「江戸時代の中国絵画コレクション ―近代・中国学への架け橋―」
【発表2】呉 孟晋(京都国立博物館)
「漢学と中国学のはざまで―長尾雨山と近代日本の中国書画コレクション―」
【円卓会議】
進 行: 王 志松(北京師範大学)
討 論:
趙 京華(北京第二外国語学院文学院)
王 中忱(清華大学中国文学科)
劉 暁峰(清華大学歴史学科)
総 括: 董 炳月(中国社会科学院文学研究所)
同時通訳(日本語⇔中国語):丁莉(北京大学)、宋剛(北京外国語大学)
※詳細は、下記をご参照ください。
プログラム(日本語)
プログラム(中国語)
◇開催経緯と過去3回のチャイナ・フォーラム
公益財団法人渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)は、清華東亜文化講座のご協力を得て、2014年から毎年1回、計3回のSGRAチャイナ・フォーラムを北京等で開催し、日中韓を中心とした東北アジア地域の歴史を「文化と越境」をキーワードとして検討してきた。
2014年の会議では、19世紀以降の華夷秩序の崩壊と東アジア世界の分裂という歴史的背景のもとでつくられた近代の東アジア美術史が、歴史的な美術の交流と実態を反映していない「一国美術史」として語られてきたという問題を提起し、この一国史観を脱却した真の「東アジア美術史」の構築こそ、同時に東アジアにおける近代の超克への一つの重要な試金石となることを指摘した。(佐藤道信:「近代の超克―東アジア美術史は可能か」)
一方、「工芸」は用語の誕生から制度としての「美術」の成立と深い関係にある。アジアにおいては、陶磁器や青銅器や漆器などを賞玩してきた歴史があり、工芸にはアジアの人々が共感しうる近代化以前の生活文化に根差した価値観が含まれているが、近代では「美術」の一部とみなされる。「美術」と「工芸」は、漢字圏文化と西洋文化との関係および葛藤を表していると同時に、日中両国のナショナリズム、国民国家の展開や葛藤とも深い関係にあることが確認された。(木田拓也「工芸家が夢みたアジア:<東洋>と<日本>のはざまで」)
2015年の会議では、古代の交流史と対比して「抗争史」の側面が強調される従来の近代東アジア史観に対して、実際の近代日中韓三国間において、「他者」である西洋文化受容と理解という目的のもと、互いの成果・経験・教訓を共有する多彩多様な文化的交流が展開し古代にも劣らぬ文化圏を形成していたことを踏まえ、改めて交流史を結節点とした見直しの重要性を確認した。(劉建輝:「日中二百年-文化史からの再検討」)
2016年の会議では、近代に成立した国民国家の文化的同一性のもとに収斂された「一国文化史」という言説の虚構性や恣意性を明らかにした。いわゆる中間領域に存在する作品が内包する文脈から、「モノ」の移動にともなって生まれた多様な価値観と重層的な歴史と社会の有様が認識でき、文物が国家に属するという従来の既成概念を取り去り改めて文物の交流を起点に大局的な文化(受容)史観を構築することの重要性を指摘した。(塚本麿充:「境界と国籍-“美術”作品をめぐる社会との対話―」)
次いで文学史からは、近代の日中外交文書における漢字語彙の使用状況とりわけ同形語の変遷をたどり、日本語から新漢字を輸入することによって古い漢字語彙から近代語へと変容していく現代中国語の形成過程から、ひとつの言語が存立するにあたり、実際の語彙の移動と交流に依拠する多層性と雑種性を持ちうることを明らかにした。(孫建軍:「日中外交文書にみられる漢字語彙の近代」)
それぞれの報告から、「国境」や「境界」というフレームに捉われない多様な歴史事象の存在を認識し、改めて「広域文化史」構築の可能性とその課題を浮き彫りにした。
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2017.10.07
下記の通りSGRAフォーラムを開催いたします。参加ご希望の方は、事前にお名前・ご所属・緊急連絡先をSGRA事務局宛ご連絡ください。
テーマ:「アジアを結ぶ?『一帯一路』の地政学」
日時:2017年11月18日(土)午後1時30分~4時30分 その後懇親会
会場:東京国際フォーラム ガラス棟 G610 号室
参加費:フォーラムは無料 懇親会は賛助会員・学生1000円、メール会員・一般2000円
お問い合わせ・参加申込み:SGRA事務局(sgra-office@aisf.or.jp, 03-3943-7612)
◇フォーラムの趣旨
中国政府は2013年9月から、シルクロード経済ベルトと 海上シルクロードをベースにしてヨーロッパとアジアを連結させる「一帯一路」政策を実行している。「一帯一路」政策の内容の中心には、中国から東南アジア、中央アジア、中東とアフリカを陸上と海上の双方で繋げて、アジアからヨーロッパまでの経済通路を活性化するという、習近平(シーチンピン)中国国家主席の意欲的な考えがある。しかし、国際政治の秩序の視点から観れば、「一帯一路」政策が単純な経済目的のみを追求するものではないという構造を垣間見ることができる。
「一帯一路」政策は、表面的にはアジアインフラ投資銀行(AIIB)を通じた新興国の支援、融資、そしてインフラ建設などの政策が含まれており、経済発展の共有を一番の目的にしているが、実際には、貿易ルートとエネルギー資源の確保、そして東南アジア、中央アジア、中東とアフリカにまで及ぶ広範な地域での中国の政治的な影響力を高めることによって、これまで西洋中心で動いて来た国際秩序に挑戦する中国の動きが浮かび上がってくる。
本フォーラムでは、中国の外交・経済戦略でもある「一帯一路」政策の発展を、国際政治の観点から地政学の論理で読み解く。「一帯一路」政策の背景と歴史的な意味を中国の視点から考える基調講演の後、日本、韓国、東南アジア、中東における「一帯一路」政策の意味を検討し、最後に、4つの報告に関する議論を通じて「一帯一路」政策に対する日本の政策と立ち位置を考える。
◇プログラム
詳細はこちらをご覧ください。
【基調講演】
「一帯一路構想は関係諸国がともに追いかけるロマン」
朱建栄(Prof. Jianrong ZHU)東洋学園大学教授
【研究発表1】
「戦後日本の対外経済戦略と『一帯一路』に対する示唆」
李彦銘(Dr. Yanming LI)東京大学教養学部特任講師
【研究発表2】
「米中の戦略的競争と一帯一路:韓国からの視座」
朴 栄濬 (Prof. Young June PARK) 韓国国防大学校安全保障大学院教授
【研究発表3】
「『一帯一路』の東南アジアにおける政治的影響:ASEAN中心性と一体性の持続可能性」
古賀慶 (Prof.Kei KOGA)シンガポール南洋理工大学助教
【研究発表4】
「『一帯一路』を元に中東で膨張する中国:パワーの空白の中で続く介入と競争」
朴 准儀(Dr.June PARK)アジアソサエティ
【フリーディスカッション】「アジアを結ぶ?『一帯一路』の地政学」
-討論者を交えたディスカッションとフロアとの質疑応答-
モデレーター:平川均(Hitoshi Hirakawa)国士舘大学21世紀アジア学部教授
討論者:西村豪太 (Gouta NISHIMURA) 『週刊東洋経済』編集長
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2017.09.26
東アジア日本研究者協議会は、東アジアの日本研究関連の学術と人的交流を目的として、2016年に発足、韓国・仁川で第1回国際学術会議が開催され、続いて本年10月末には第2回が中国・天津で開催されることとなりました。SGRAからは「日本の植民地支配下の東アジアにおけるメモリアル遺産」「おぞましき女性の行方-フェミニズム批評から読む日本昔話-」「戦争・架け橋・アイデンティティ~近代日本と東アジアの文化越境物語~」の3パネルが参加します。
歴史的な壁のため、さらに東アジアでは自国内に日本研究者集団が既に存在することもあり、国境・分野を越えた日本研究者の研究交流が妨げられてきた側面があります。東アジア日本研究者協議会は日本研究の質的な向上、自国中心の日本研究から多様な観点に基づく日本研究への志向、東アジアの安定と平和への寄与の3つを目的としています。SGRAも同協議会の理念に賛同して共同パネル参加をします。これを機会に皆様のご参加やご関心をお寄せいただければ幸いです。
第2回東アジア日本研究者協議会 国際学術大会
日 時: 2017 年 10 月 27 日(金)~ 29 日(日)
会 場: 中国天津賽象ホテル(天津賽象酒店、天津市南開区華苑産業区梅苑路8号)
主 催: 東アジア日本研究者協議会
共 催: 南開大学(中国・天津)
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SGRAより参加の3チーム
「日本の植民地支配下の東アジアにおけるメモリアル遺産」
「おぞましき女性の行方─フェミニズム批評から読む日本神話および昔話─」
「戦争・架け橋・アイデンティティ~近代日本と東アジアの文化越境物語~」
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◆「日本の植民地支配下の東アジアにおけるメモリアル遺産」
趣旨:
20世紀前半期において、東アジアのほとんどの地域は日本の植民地支配を受けた。これは関係する国と地域にとって不幸な歴史であったことはいうまでもないが、日本の支配が敷かれていたこれらの地域においては、人と物の流れが加速し、日本の近代化の経験による各種の社会整備、調査記録や記念物が形として残された。また戦後70年間において、これらのメモリアル遺産は東アジアを取り巻く複雑な関係性のなかでその存在が直視され、議論される場は多くなかったように思われる。本セッションでは、戦後の視点に立ってこれらのメモリアル遺産の歴史的広がりやそれがもつ現代的な意味を議論したい。
パネル詳細
発表者:
◇ユー・ヤン グロリア(コロンビア大学大学院/東京大学大学院)
「実像か幻像か:満洲の視覚資料の見方や眼差しの再考」 (発表要旨)
◇鈴木恵可(東京大学大学院)
「再展示される歴史と銅像―台湾社会と植民地期の日本人像」 (発表要旨)
◇ブレンサイン(滋賀県立大学教授) (発表要旨)
「満鉄と満洲国による農村社会調査について」
討論者:
マグダレナ・コウオジェイ(デューク大学大学院/早稲田大学大学院)
張 思(南開大学教授)
司 会:
李 恩民 (桜美林大学教授)
◆「おぞましき女性の行方─フェミニズム批評から読む日本神話および昔話─」
趣旨:
本パネルは、日本昔話と神話において棄却された女がどのように語られ、また、現代作家によってどのように語り直されているかについて、フェミニズムの観点から批判的に分析を試みる。
神話と昔話は、それらを語り継ぐ文化の世界観や信仰などを反映するし、人間存在の根本的な課題やモチーフを表す一方、ジェンダー差別のような社会問題をも明らかにする。なぜなら、神話や昔話は文化の価値観を継承させるためだけではなく、女性抑圧のような社会規範を正当化するためにも、永きに渡って伝承されてきたからである。そのため、聞き慣れた昔話と神話を批判的に読み直す必要があるだろう。本パネルは日本神話と昔話──その原文と現代作家によって語り直された作品を、フェミニズムの観点から再考し、家父長的な要素を脱構築する。
パネル詳細
発表者:
◇リンジー・モリソン(武蔵大学人文学部英語英米文化学科助教)
「暗い女の極み 日本昔話の「蛇女房」におけるおぞましき女性像をめぐって─」 (発表要旨)
◇フリアナ・ブリティカ・アルサテ(国際基督教大学ジェンダー研究センター研究所助手)
「神話の復習と女性の復讐──桐野夏生の『女神記』をフェミニズムから読む──」 (発表要旨)
討論者:
レティツィア・グアリーニ (お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科)
シュテファン・ヴューラー(東京大学大学院総合文化研究科)
司 会:
張 桂娥(東呉大学日本語文学系副教授)
◆「戦争・架け橋・アイデンティティ~近代日本と東アジアの文化越境物語~」
趣旨:
戦前の日本と東アジアとの関係は、戦争や植民地支配に集約される場合がしばしば見られる。そのため、戦前における日本と東アジアとの民間レベルの社会・文化交流の架け橋を担っていた人々とそのストーリーはよく軽視されてしまう。本セッションではあの激動の時代において戦争を超える日本と中国・東アジアの民間レベルの交流物語を取り上げ、国境や戦争を超える東アジアの文化交流の意味を検討する。
パネル詳細
発表者:
◇林 泉忠(台湾・中央研究院副研究員)
「知られざる『旅愁』の越境物語~戦前東アジア文化交流の一断章~」 (発表要旨)
◇李 嘉冬(上海・東華大學副教授)
「近代日本の左翼的科学者の中国における活動~上海自然科学研究所員小宮義孝を例に~」 (発表要旨)
討論者:
カールヨハン・ノルドストロム(日本・都留文科大学講師)
篠原 翔吾(北京・在中国日本国大使館専門調査員)
司 会:
孫 建軍(北京・北京大学副教授)
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2017.08.24
下記の通り第24回日比持続可能共有型成長セミナーをオーストラリアのシドニー市で開催します。参加ご希望の方は、SGRAフィリピンに事前に申し込んでください。
第24回日比持続可能な共有型成長セミナー
◆「人や自然界を貧しくさせない進歩:地価税や経済地代の役割」
“Progress Without Poverty of People and Nature: The Role of Land Value Taxation and Economic Rents"
日時:2017年9月23日(月)9:00~17:00
会場:Sydney Mechanics School of Arts(オーストラリア、シドニー市)
言語:英語
共催:Association for Good Government (良き政府協会)AGG
申込み・問合せ:SGRAフィリピン ( sgraphil@gmail.com )
(詳細はこちら)
〇セミナーの趣旨
SGRAフィリピンが開催する24回目の持続可能な共有型成長セミナー。
持続可能な共有型成長セミナーは目標が効率・公平・環境ということで、KKKセミナーとも呼ばれている。現在まで、年2回というペースで開催されているが、フィリピン大学ロスバニョス校と協力し、より頻繁に開催される予定である。今回の24回目のセミナーは初めてフィリピンの外で行われることになる。オーストラリアに本部を置く、良き政府協会研究員のジョッフレ・バルセ氏(Mr. Joffre Balce)との議論により、第20回持続可能な共有型成長セミナーで発表された「地価税」がKKKの発表候補者リストに入れられた。バルセ氏は良き政府協会の総書記であり、この協会は19世紀米国の政治経済学者のヘンリー・ジョージ(Henry George) の政治経済政策を提唱している。そのなかの重要な議論の一つが地価税である。今回のセミナーの開催地及び日時は、特別の意味がある。9月は1901年に設立された良き政府協会の設立月にあたり、開催地は地価税が課税される国である。
〇プログラム
08:00–09:00 登録
09:00–09:15 開会挨拶
09:15–10:00 発表1「ヘンリー・ジョージの社会哲学」リチャード・ガイルス(Richard Giles)AGG会長
10:00–10:30 発表2「地価税:理論・証拠・実施に関する調査」
マックス・マキト(Max Maquito)フィリピン大学ロスバニョス校・SGRA
10:30–11:00 休憩
11:00–11:30 発表3「地価税の便益:マニラ都内の複数市の事例」
グレイス・サプアイ(Grace Sapuay)SGRAフィリピン運営委員
11:30–12:00 発表4「反貧困が少数派であり続ける理由:フィリピンに対するヘンリー・ジョージ流の改革の関連性」
ジョッフレ・バルセ(Mr. Joffre Balce)良き政府協会総書記
12:00–13:00 昼食
13:00–13:30 発表5「土地への平等アクセスやグローバルな移住の問題」
フランクリン・オべング・オドーム(Franklin Obeng-Odoom)シドニー技術大学
13:30–14:00 発表6「先住民の土地所有権に対するジョージ主義の含意の検討」
ヨギスワラム・スブラマニアン(Yogeeswaram Subramanian)マレーシア大学
14:00–14:30 発表7「貧困や金の番人」
ロン・ジョンソン(Ron Johnson)「The Good Government」編集長
14:30–15:00 休憩
15:00–17:00 SGRAのビジョン、近況報告+円卓会議(モデレーター:マックス・マキト)
セミナー終了後 シドニー見学
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