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2004.10.25
SGRAレポート第24号
投稿レポート
「1945年のモンゴル人民共和国の中国に対する援助―その評価の歴史―」
フスレ(東京外国語大学大学院地域文化研究科博士後期課程・昭和女子大学非常勤講師)
日本語版
2004年10月25日発行
---はじめに-----------------
20世紀、モンゴル国は2回にわたって大規模に軍隊を派遣して内モンゴルに進出した。第1回目は1913年 、第2回目は1945年のことである。ソ連が日本に宣戦を布告した翌日の8月10日、モンゴル人民共和国も日本に宣戦布告したことを発表し、チョイバルサン元帥がモンゴル軍を率いてソ連軍と一緒に中国に進入した。その間、1920年代、30年代の初期にもモンゴル人民共和国は内モンゴル、ひいては中国の革命を援助したことがある。内モンゴル人民革命党はモンゴル人民革命党の援助のもとで設立され、しかも終始同党の援助を受けていた。内モンゴル人民革命党は数度にわたって学生や幹部をモンゴル人民革命党中央党校へ留学させた。同党の執行委員会は1927年からウランバートルに移転した。同時に、コミンテルンとソ連の了解のもとで、モンゴル人民共和国は政治・経済・軍事面から馮玉祥の国民軍を援助し、ウランバートルは中国共産党、内モンゴル人民革命党とコミンテルン、ソ連共産党の中継地の一つとなった。 1920年代のモンゴル人民共和国の内モンゴルに対する援助やその性格などについては、二木博史氏、郝維民氏、ザヤータイ氏、及び拙稿などがすでに論述したことがあるので、ここでは繰り返さない。本稿ではモンゴル国、中国共産党・国民党などの史料を利用し、1945年のモンゴル人民共和国の内モンゴルへの出兵に焦点をあて、モンゴル国、中国共産党・国民党、そして内モンゴルの学者がどのようにこの出兵をみてきたのか、その評価の歴史をさぐってみたい。この研究は1945年の東アジアの歴史の一側面の理解にとどまらず、世界で民主化が進む中、中国が国家統合を強調し、「中華民族多元一体論」をうたっている今日、どのように歴史をみるのか、どのように国と国の関係、民族問題を認識するのかを考える上でも有益であると思われる。
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2004.10.23
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第17回SGRAフォーラム
「日本は外国人をどう受け入れるべきか:地球市民の義務教育」
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■日時:2004年10月23日(土)午後1時半より5時半まで
■場所:東京国際フォーラム ガラス棟G610会議室
東京都千代田区丸の内三丁目5番1号
http://www.t-i-forum.co.jp
●JR線 東京駅より徒歩5分(地下1階コンコースにて連絡)
有楽町より徒歩1分
●地下鉄有楽町線有楽町駅より徒歩1分
■会費:無料
参加ご希望の方は、ファックス(03-3943-1512)またはemail(
[email protected]) で、10月20日(水)までに事務局宛てご返送下さい。
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■フォーラムの目的
SGRA「人的資源と技術移転」研究チームが担当するフォーラム。昨年11月に開催した同テーマのフォーラムでは、実質的に移民受入大国となっている日本の実態と、研修生制度について考えた。今回は、日本の小中学校における外国人児童生徒の不就学問題を紹介し、「全ての子どもたちが教育を受ける権利」について考え、日本の公立学校は彼等彼女等にどのような教育を提供すべきかを検討したい。
■プログラム
司会:徐 向東(SGRA「人的資源・技術移転」研究チームチーフ / 日経リサーチ研究員)
【ゲスト講演】 「学校に行けない子どもたち:外国人児童生徒の不就学問題(仮題)」
宮島 喬(立教大学社会学部教授)
【研 究 報 告1】
「在日ブラジル人青少年の労働者家族が置かれている状況と問題点:集住地域と分散地域の比較研究」
ヤマグチ・アナ・エリーザ(SGRA研究員/一橋大学社会学研究科博士課程)
【研 究 報 告2】
「在日朝鮮初級学校の『国語』教育に関する考察:国民作りの教育から民族的アイデンティティ自覚の教育へ」
朴 校煕(東京学芸大学連合大学院博士課程)
【研 究 報 告3】
「カリフォルニア州における二言語教育の現状と課題:ロサンゼルスの3つの小学校の事例から」
小林宏美 (慶應義塾大学大学院法学研究科、静岡文化芸術大学非常勤講師)
【パネルディスカッション】
進行:角田英一(アジア21世紀奨学財団常務理事)
詳細はプログラムをご覧ください。
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2004.10.23
日本は外国人をどう受け入れるべきか
―地球市民の義務教育―
2004年10月23日(土)午後1時半より、東京国際フォーラムG棟610号室にて、SGRA「人的資源と技術移転」研究チームが担当する第17回SGRAフォーラム「日本は外国人をどう受け入れるべきか―地球市民の義務教育」が開催された。昨年11月に開催した同テーマのフォーラムでは、実質的に移民受け入れ大国となっている日本の実態と、研修生制度について考えたが、今回は、日本の小中学校における外国人児童生徒の不就学問題を紹介し、「全ての子どもたちが教育を受ける権利」について考え、日本の公立学校は彼等彼女等にどのような教育を提供すべきかを議論した。今回も昨年11月と同様に、大勢の聴衆が集まり、子供の教育を受ける権利について、活発な議論がなされた。
SGRA研究会の今西代表による開会挨拶が行われた後に、日本や欧州社会における外国人問題に造詣の深い立教大学社会学部教授・宮島喬氏が、「学校に行けない子どもたち:外国人児童生徒の不就学問題」と題するゲスト講演を行った。氏は、今から十数年前、イラン人の12歳の少年ユセフ・ベン・ベグロ君が栃木県のある古紙問屋で働いていて、機械に巻き込まれて死亡した事件から話を切り出し、「なぜそんな出来事が起こるのか、学齢期の子どもが学校に通うのは、当然ではないか」という問題意識を踏まえて、近年における日本の義務教育における外国人児童生徒の教育問題を取り上げた。ドイツなど欧米の国々の多くは、保護者が学齢期の子どもを学校に通わせることを在留条件としている。しかし日本ではそうではない。このため、教育委員会や学校は、外国人の子どもを就学させるための真剣な努力を行っていない。一方、日本の公立小・中学校で行う義務教育は「日本国民のための教育」という性格を濃厚に帯び、外国人を排除しかねないものである。日本の学校に馴染めない子どもたちは、ブラジル人学校等の民族学校に通うことになるが、はたしてそれは結果的に永住することになる彼らに意味のある将来を保障してくれるだろうか。「国際人権規約」(日本は1978年に批准している)では、「初等教育は、義務的なものとし、すべての者に対して無償のものとする」と定めている。日本の学校教育をどう変えるべきだろうか。宮島氏は、具体的に、母語教育の公認、英語中心主義からの脱却、「日本語」という科目の設置、漢字・漢語・歴史文化語の見直し、社会科・歴史教育の国際化、スクール・ソーシャル・ワーカーの配置、学習支援のボランティア、外国人学校の改善と認可等々を提案した。
続いて、外国人児童の教育問題をめぐって3名の方による研究報告が行われた。
SGRA研究員で、一橋大学社会学研究科博士課程で研究をしているヤマグチ・アナ・エリーザ氏は、フィールドワークを通じて得た膨大な現場の情報を踏まえて、「在日ブラジル人青少年の労働者家族が置かれている状況と問題点:集住地域と分散地域の比較研究」と題する発表を行った。日系ブラジル人労働者が来日するようになって15年以上になるにも関わらず、多くの問題が発生したまま時間がただ経過していく現状が紹介された。家族呼び寄せが始まり、子どもたちが日本に暮らすようになった結果、さらに問題は複雑化している。その中、最も深刻なのは子どもの不就学問題と非行問題である。そのような「問題」になる前の段階及び環境の中で、彼らが属している家族が直面している問題、家族の置かれている状況が、実は、青少年に大きな影響を与えている。個別訪問による調査により、日本にいる外国人労働者の子供たちの教育問題の深刻さがいっそう浮き彫りになった。
東京学芸大学連合大学院博士課程の朴校煕氏は、「在日朝鮮初級学校の『国語』教育に関する考察:国民作りの教育から民族的アイデンティティ自覚の教育へ」と題する報告を行った。在日朝鮮学校の朝鮮語教育は、当初、民族語を知らない児童・生徒の識字率を上げる運動からスタートしたが、北朝鮮政府と総連の組織が成立すると、北朝鮮の海外公民として帰国を前提とした「国語」教育政策に変容した。しかし、このような「国語」教育政策には、日本社会を生活の舞台とする現実的な側面が看過されていたため、教育需要者である、多くの在日韓国・朝鮮人の支持基盤を失う原因となった。1970年代の後半から、総連は、このような実態を省み、在日外国人としての現実により着目し、生徒たちの母国語駆使能力と民族的情緒の両方面を育てることに、大路線転換を図った。現行の在日朝鮮学校における民族語教育のあり方と北朝鮮の「国語」教育について、テキストの内容の比較を通じて、興味深い分析が示された。在日朝鮮学校における民族的アイデンティティ自覚の教育への転換の試みは、今後の日本における外国人の子どもの教育問題に対して多くの示唆が含まれていると感じた。
慶應義塾大学大学院法学研究科に所属し、静岡文化芸術大学非常勤講師も勤めている小林宏美は、「カリフォルニア州における二言語教育の現状と課題:ロサンゼルスの3つの小学校の事例から」という報告を行った。1998年からアメリカのカリフォルニア州において二言語教育を原則として廃止する住民提案227が可決され、州内の各学区の教育プログラムは多大な影響を受けた。ヒスパニック系移民子弟が生徒の多数を占めるロサンゼルス統合学区でも、「英語能力が不十分な生徒」に対して、原則として英語で授業を行うイングリッシュ・イマージョンプログラムの比重が高まった。カリフォルニア州は二言語教育の長い歴史があり、提案227可決はしばしば米国社会における保守化の現れと捉えられているが、改変による教育効果も現れている。現場調査を踏まえ、教育の現場の写真などを示しながら、ロサンゼルス統合学区における3つの小学校の事例が紹介された。
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4人の講演と報告が終わった後、アジア21世紀奨学財団常務理事でSGRA顧問の角田英一氏が進行役を務め、パネルディスカッションが行われた。
まず、フロアからの質問に答える形で、ヤマグチ・アナ・エリーザ氏は、いままでの若年層の外国人が年をとっていくうちに、彼らの保障をどうすれば良いかという問題がまた生まれるという課題を示した。朴校煕氏は朝鮮学校を例に、組織化が母語維持の重要な場を形成するのに大きな役割を果たしているとの見解を示したが、ヤマグチ氏は在日ブラジル人学校の組織化はまだ難しいという現状認識を示した。小林宏美氏は、第2言語の習得は、第1言語がどの程度に発達しているかによって決められるという学界の定説を紹介しながら、母語教育の重要性をあらためて提示した。
宮島氏は、講演で話した「ソーシャルワーカー」という言葉は一種のメタファーで、要は、外国人生徒を適切に指導できる学校職員を配置すべきだと説明した。重要なのは外国人の子どもの就学であり、学校に行くように働きかけることからはじめるべきである。これは、単に教育の問題だけではなく、実は、外国人出稼ぎ労働者の移動の仕方、子どもの権利の見地から、日本のこれまでの政策の反省を促している。そして、外国人労働者とその子どもたちを受け入れない、あるいは、受け入れを困難にしている日本社会が問われている。それは、外国人やその子どもへのいじめや無理解という態度にも現れている。教育の国際化とは、従来日本でいわれている「国民のための教育」から「市民のための教育」に変えていくことであると強調した。
パネラーたちのディスカッションに触発されて、フロアからの質問やコメントは、今回の講演や報告で触れられなかったインドネシアなどのアジア諸国からきた外国人研修生の問題や、中国人など他の在日外国人の子ども教育問題まで広がった。宮島教授は、これらの話を踏まえて、再び、「日本はすでに実質的に移民国家になっており、移民国家であるという自覚が必要だ」と力を込めて日本社会の自覚を訴えた。
パネルディスカッションに誘われ、会場から次々とコメントや質問が出た。予定時間を大幅にオーバーして、フォーラムは熱気に包まれる中で終了した。今回のフォーラムは、外国人の子どもの教育問題を取り上げたが、実は、人権の普遍理念や国のあり方など、非常に大きなテーマについても深く考えさせられる内容であった。グローバル化が進むなかで、出稼ぎ労働者を含めて、人の移動が盛んになっている。アジアでは、日本を先頭に、新興工業国やアセアン、さらに中国と、次々と急ピッチで近代化社会に邁進している。しかし、人間は、物の豊かさだけを追求しても幸せを得られない。お互いに理解し、尊敬しあい、共生共存を図っていくことこそ、心の豊かさが生まれ、真の幸せを実現できるのだ。今回のフォーラムを聞いて、久々に有意義で充実した週末を過ごしたと思ったのは、私だけではないだろう。
(文責:SGRA「人的資源と技術移転」研究チームチーフ 徐 向東)
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2004.08.27
テーマ:共有された成長を目指せ(フィリピン経済特区日系企業を通して効率性と平等性の向上を探る)
セミナー案内書(2004年4月27日現在)
日時:2004年8月27日(金)午後1時半から5時まで
会場:アジア太平洋大学(UA&P)PLDT会議室 Pearl Drive, Ortigas Center, Pasig City
プログラム
午後1:00 to 1:30:受付
午後1:30 to 1:40: 開会挨拶 (フィリピンに関する日本の観点) 今西淳子関口グローバル研究会(SGRA)代表、渥美国際奨学金財団常務理事
午後1:40 to 2:10: 経済特区分析の報告、 Dr. Ferdinand C. Maquito (フェルディナンド・C・マキト博士)アジア太平洋大学研究助教授、SGRA「日本の独自性」研究チームチーフ
午後2:10 to 2:40: 産業分析の報告、 Dr. Peter Lee U(ピター・リー・ユウ博士)アジア太平洋大学 産業経済プログラム ディレクター
午後2:40 to 3:00: 休憩
午後3:00 to 3:30:マクロ経済分析の報告、Dr. Bernardo M. Villegas (ベルナルド・M・ヴィレガス博士)アジア太平洋大学、副総長
午後3:30 to 4:00:国際リスク分析の報告、Prof.Victor Abola (ヴィクター・アヴォラ教授)アジア太平洋大学 戦略ビジスネス経済プログラム ディレクター
午後4:00 to 5:00: オプーン・フォー ラム
参加費: 3,000 ペソ
英語と日本語のスライドや配布資料を用意いたします
問い合わせ
Peter Lee U(ピター・リー・ユウ):
[email protected] (英語)
Max Maquito (マックス・マキト):
[email protected] (英語・日本語)
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2004.08.25
SGRAレポート第23号(PDF)
第13回フォーラム講演録
「日本はどう外国人を受け入れるべきか」
宮島 喬、イコ・プラムディオノ
日本語版
2004年3月
---もくじ-----------------
開会挨拶 今西淳子(SGRA代表)
【ゲスト講演】「移民国日本へ?ヨーロッパとの比較の中で考える」
宮島 喬(立教大学社会学部教授)
【活動報告】「研修生制度の現状と問題点ーインドネシア研修生を事例として」
イコ・プラムディオノ(SGRA研究員・東京大学工学部博士課程)
【講演者と参加者による自由討論】
進行:角田英一(アジア21世紀奨学財団常務理事)
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2004.07.24
第16回SGRAフォーラム in 軽井沢
「東アジア軍事同盟の過去・現在・未来」
下記の通り開催いたしますので、ご案内申し上げます。参加ご希望の方は、7月16日(金)までにSGRA事務局(
[email protected])へお申込みください。会場の都合上、参加は原則としてSGRA会員に限らせていただきます。
■主 催: 関口グローバル研究会(SGRA)
■協 賛: 鹿島学術振興財団、韓国未来人力研究院、渥美国際交流奨学財団
■後 援: 朝日新聞アジアネットワーク(AAN)
■日 時: 2004年7月24日(土)午後2時~6時、7時半~9時
■場 所:鹿島建設軽井沢研修センター会議室
長野県北佐久郡軽井沢町大字軽井沢1323-310 ℡ 0267-42-4000
(ご希望の方には地図をお送りします)
(軽井沢駅からタクシーで10分、1100円程度です)
■会 費: 無料 (夕食を含む)
■フォーラムの意義
SGRA「東アジアの安全保障と世界平和」研究チームが担当するフォーラム。韓国・日本(沖縄)・フィリピン・台湾と米国との二国間同盟条約体制の形成の経緯を明らかにし、その問題点を現状の中で把握したあと、これを越える多国間(地域)安全保障システムの可能性について考えてみたい。その際には、東アジアに散らばる米軍基地の問題も併せて考えてみたい。したがって、「軍事基地と市民」、「市民の安全保障」、「市民連帯の運動」などもテーマとして含まれることになる。
■:プログラム
コーディネーター:南 基正(東北大学法学研究科教授、SGRA研究員)
【総 論】竹田いさみ(獨協大学外国語学部教授)
【日米同盟】
講演者:ロバート・エルドリッヂ(大阪大学国際公共政策研究科助教授)
質問者:林 泉忠(琉球大学法文学部助教授、SGRA研究員)
【韓米同盟】
講演者:朴 栄濬(韓国国防大学校安全保障大学院助教授、SGRA研究員)
質問者:(検討中)
【台米同盟】
講演者:林 成蔚(台湾総統府国家安全会議)予定
質問者:李 恩民(桜美林大学国際学部助教授、SGRA研究員)
【比米同盟】
講演者:伊藤裕子(亜細亜大学国際関係学科助教授)
質問者:(検討中)
【パネルディスカッション】 講演者全員
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2004.07.20
SGRAレポート第22号
渥美奨学生の集い講演録
「民族紛争:どうして起こるのか、どう解決するか」
明石 康(スリランカ問題担当日本政府代表・日本紛争予防センター会長)
---講演報告--------------
2003年11月11日(火)午後6時より、渥美財団評議員で日本紛争予防センター会長の明石康氏をお迎えして「渥美奨学生の集い」が開催されました。明石氏は、今後国際協調のために留学生の役割がますます大切になることを提起された後、元国連事務次長時代にカンボジアと旧ユーゴスラビアで地域紛争の平和調停を務め、現在は日本政府代表としてスリランカ調停にあたられているご自身の体験に基づき「民族紛争―どうして起こるか、どう解決するか」というお話をしてくださいました。「民族」とは主観的なものである。カンボジア、旧ユーゴスラビア、ソマリア、ルワンダなどの事例から原因はさまざまであるが、貧しいことだけでは紛争は起こらず、格差がある場合に問題が起こる。解決へ向ける方法もたくさんあり、スリランカでは経験豊富なノルウェイの専門家と一緒に、いろいろなことを試してみている。国連は当該国の協力がある場合に効果的な問題解決ができる。そして、現在は、紛争が起きる前に対処するためにODAが使えるようにしようとしていること等を教えていただきました。また、今後の懸念としてメディアをとりあげ「正しく報道されるのは2割くらい」と指摘されました。その後の質疑応答では、紛争の原因としては経済格差と同時にいじめや恨みも考えなければならないこと、国連の地位をあげるために安全保障理事会の改革が検討されていること、ODAを各国政府に与えるとますます格差が増すので現 在はNGOへの支援が進んでいることなど、丁寧にお答えいただきました。
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2004.06.30
SGRAレポート第21号(PDF)
*PDFファイルですが、かなり重いのでダウンロードに時間がかかります
第3回日韓アジア未来フォーラム講演録
「アジア共同体構築に向けての日本および韓国の役割について」
---目次-------------
基調講演:「アジア共同体構築に向けての日本と韓国」
平川 均(日本/名古屋大学)
報告1:「東北アジアという地域と韓国:韓国は地域主義をどうすべきか」
孫 洌(韓国/中央大学)
報告2:「日・中・韓IT協力の政治経済」
金雄熙(韓国/仁荷大学)
報告3:「アジア開発銀行の独自性研究:その概観」
F.マキト(日本/名古屋大学)
報告4:「韓国外交のダイナミズムと日韓関係:公共材としての日韓関係の構築に向けて」
木宮正史(日本/東京大学)
報告5:「北東アジア共同体の構築と北朝鮮問題」
李元徳(韓国/国民大学)
質疑応答
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2004.03.26
Aiming for Shared Growth
共有された成長を目指せ
Enhancing Efficiency and Equity through Japanese Companies in Special Economic Zones
フィリピン経済特区日系企業を通して効率性と平等性の向上を探る
■日時:2004年3月26日(金)午後1時半から5時まで
■会場:アジア太平洋大学(UA&P)PLDT会議室
Pearl Drive, Ortigas Center, Pasig City
■プログラムは別紙参照ください。このセミナーでは、経済特区の日系企業の評価だけでなく、UA&Pのエコノミストが、フィリピン経済の展望や中国ファクターの評価についても発表いたします
■参加費:3000ペソ(受付でお支払いください)
■参加申込み・お問い合わせ:
Ms. Arlene Idquival 637-0912 to 26 ext. 362(英語)
Dr. Peter Lee U
[email protected] (英語)
Dr. Ferdinand Maquito
[email protected] (英語・日本語)
■プログラム
1時 (受付開始)
1時30分 開会挨拶 今西淳子
関口グローバル研究会(SGRA)代表、渥美国際奨学金財団常務理事
1時40分 「2004年のフィリピン経済展望」
Dr. Bernardo M. Villegas (ベルナルド・M・ヴィレガス博士)
アジア太平洋大学、副総長
2時10分 「フィリピンにおける経済特区の評価」
Dr. Ferdinand C. Maquito (フェルディナンド・C・マキト博士)
アジア太平洋大学研究助教授・SGRA「日本の独自性」研究チームチーフ
2時40分 「2つの産業の物語:フィリピンにおける電子と自動車産業」
Dr. Peter Lee U(ピター・リー・ユウ博士)
アジア太平洋大学 産業経済プログラム ディレクター
3時10分 「中国に関する脅威と機会」
Dr. George Manzano (ジョージ・マンザノ博士)
アジア太平洋大学 応用ビジスネス経済プログラム ディレクター
Dr. Victor Abola (ヴィクター・アヴォラ博士)
アジア太平洋大学 戦略ビジスネス経済プログラム ディレクター
3時40分(休憩)
4時 研究内容と将来の研究課題についてのオープン・フォーラム
5時(閉会予定)
■SGRAの「グローバル化における日本の独自性」研究チームの活動の一環として、マキトによる下記の記事をご参照ください。
「日本の尊い非軍事技術」2002年12月6日の朝日新聞朝刊に掲載
(オンライン版は次のURLをご参照ください)
http://www.asahi.com/international/aan/column/021206.html
「『古い日本』の良さに学ぶ 」2002年8月2日の朝日新聞朝刊に掲載
(オンライン版はつぎのURLをご参照ください)
http://www.asahi.com/international/aan/column/020802.html
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2004.03.26
昨年のフィリピン・アジア太平洋大学(UA&P)とSGRAの共同研究(日比自由貿易協定の準備調査-フィリピン政府宛の内部報告)に続いて、最初の一般公開の共同事業となった経済セミナーが、2004年3月26日(金)午後1時半から5時まで、マニラ中心部にあるUA&PのPLDT会議室で開催された。テーマは「共有された成長を目指せ:フィリピン経済特区日系企業を通して効率性と平等性の向上を探る」。SGRA側は今西淳子代表とF.マキト研究員とSGRAフィリピンのボランティアスタッフが5名参加した。
開会挨拶で今西代表がSGRAやマキト研究員や渥美財団を紹介してから、在日フィリピン人についてのデータを紹介した。日本にはフィリピン人が大勢居るのに留学生は少ない。英語ができるしアメリカ文化にも親しみをもっているので留学先がほとんど英米になるであろう。セミナーの前、UA&Pのラウンジでのランチで「日本への留学したいフィリピンの若者はいるが、どうやっていけばいいかわからない」という指摘があったが、それが十分な理由かどうか、いまだに疑問に思う。
その後、4名のエコノミストが30分間ずつ発表した。最初に、SGRAとの調整役を果たしてくれた、UA&P産業研究科のディレクター、ピーター・ユー博士がフィリピンの電子産業と自動車産業について発表した。電子産業より自動車産業のほうが待遇的政策の対象になっているにもかかわらず、電子産業のほうが輸出によって外貨を多く稼いでいるという問題提起をした。
次に、マキト博士がセミナーのテーマ中心でもあるフィリピン経済特区について発表した。特区はフィリピンの二つのダイナミックスが収斂していると指摘してから22ヶ所の特区を比較した。予備調査によれば、トヨタに任せている特区は一番効率的であることが判明したという。最後に、富の配分の平等化がフィリピンの地方に広がっていることがわかるが、これは成長とともに自動的に発生したものではないことを指摘した。
その次に、UA&Pの副総長のベルナルド・ビリエガス博士はフィリピンの今後の5年間の展望について語った。今年の5月の大統領選挙で誰が大統領になっても、いつものようにフィリピンの政治は無視すれば良い、という楽観的な見方を明らかにした。企業がリスク管理をきちんと行えば、自分の強みと弱みを認識して置かれた環境の脅威と機会に巧みに対応できるはずだ。(フィリピンの難しい環境でも、トヨタは効率的なビジネスができることが比較分析でわかったように。)将来性のあるフィリピン産業を取り上げながら、
ASEANと中国の経済関係が今後さらに強くなることを予想した。
15分間の休憩の後、UA&Pのビック・アボラ教授が中国ファクターについて発表した。ビリエガス博士同様、中国はフィリピンにとって脅威よりは機会であることを強調した。対中国のフィリピンの輸出と対フィリピンの中国の輸出の品目を詳細に分析した結果、フィリピンと中国とが競争する品目があまりないことが判明した。この品目データの時系列的な変化をみても、同じ結果が得られるという。
最後に、オープン・フォーラムでセミナーの参加者との質疑応答があった。経済特区に入っている日系企業の日本人とフィリピン人から、それぞれの見方を分かち合ってもらって、今後の研究への貴重な示唆をいただいた。フィリピンの経済特区管理局からの参加者(政策企画部)には、引き続きご協力いただくよう呼びかけてもらった。
参加者からのアンケートによると、セミナーについての好意的な反応が多く、次回のセミナーにも招いてもらいたいという回答が圧倒的に多かった。セミナーでの発表は英語で行われたが、それと同時に日本語のスライドと配布資料を使った。これが自分か自分の組織の日本人にとって役に立つという回答が得られた。この方法とこのテーマでUA&P-SGRA共同セミナーをまた開催しようという励みになった。
(文責:F.マキト)