SGRAイベントの報告

第19回フォーラム「東アジア文化再考」報告

第19回SGRAフォーラム報告
「東アジア文化再考:自由と市民社会をキーワードに」

 

2005年5月17日(火)午後6時半から9時まで、東京国際フォーラムG棟にて、SGRA「地球市民」研究チームが担当する第19http://www.aisf.or.jp/mt-static/images/formatting-icons/bold.gif回SGRAフォーラム「東アジア文化再考:自由と市民社会をキーワードに」が開催された。SGRA「グローバル化と地球市民」研究チームが担当する5回目のフォーラムである。今回は63名もの参加者が集まり、大盛況なフォーラムとなった。参加者はSGRA会員と非会員がそれぞれ半分ずつという構成であった。

 

SGRA研究会の今西代表による開会挨拶が行われた後、講師の宮崎法子氏(実践女子大学文学部教授)が「中国山水画の住人達―「隠逸」と「自由」の形」という題でゲスト講演を行った。宮崎氏は中国絵画史に深い造詣のある方で、一つ一つの絵の事例で簡潔でありがなら感性的な形で山水画の歴史を紹介してくれた。いわば4世紀から19世紀まで1500年以上もの山水画の歴史をわずか45分間で紹介したわけで講演方法もかなり洗練された印象を受けた。普通の絵画史の紹介とは違い、氏の講演は、絵画のモチーフを社会的思想的な文脈において解釈したことが特徴である。なかでも「漁夫」、「旅人」などのイメージから「自由」な境遇、「自由」な境界を求める結晶としての山水画を例に、東アジアの「自由」というものを実例で以っていきいきと紹介してくれた。

 

続いて、東島誠氏(聖学院大学人文学部助教授)が「東アジアにおける市民社会の歴史的可能性」いう題でゲスト講演を行った。東島氏は歴史研究者の視点から、近代のliberty, freedom翻訳語としての「自由」、そして「公共性」という社会学のキー・ワードを念頭に、江戸時代にあった災害事件後のボランティア活動を例に、江戸時代の江戸の災害救済現場という前近代の公共的空間のあり方を紹介した。そして「自由」というキー・ワードとの関連で、中世日本のある禅僧の逡巡を例に、公的秩序にある「公方」との対照にある「江湖」という思想を説明した。二つの例を通して氏は、前近代の「公共性」なるものとそれと関連している「自由」、「江湖」なるものを紹介した。「市民社会」というキーワードをめぐって西洋中心/東アジア伝統中心という二項対立的な考えがあるが、そのような構造から脱出するために、アジアであれ、ヨーロッパであれ、それを特権化しない形でそれぞれを完成形として見ずに新しい社会を目指すこと自体が重要であるということを、氏は講演の冒頭部と結語の部分において繰り返し説明した。

 

2人のゲスト講演が終わった後、SGRA「グローバル化と地球市民」研究チームのチーフである高煕卓氏(韓国グローカル文化研究所首席研究員)が進行役を務め、パネルディスカッションが行われた。時間があまり残っていないため、4名しか質疑できなかったが、講演者が非常に上手く纏めるような形で答えてくれた。「意なお尽くさず」のためか、フォーラム終了後に沢山の参加者が地下一階の懇親会にも参加し、ディスカッションの場をレストランに移したような感じであった。

 

二つの講演が、「自由」「東アジア」「前近代」などのキーワードで、お互いに高い関連性があったことが印象的であった。この講演会が、現在一つのネーション内部にだけ「自由」、「民主」、「人権」が認められ、それ以外の範囲の人々に対しては普遍的であるはずの「自由」、「民主」、「人権」そのものが戦争まで許容するという世界的な背景で行われたことも改めて注意していただきたい。今はこのような重い課題を東アジアの歴史の深部から考える機会かもしれない。ここからも「地球市民」なる理念を考えることが、多少理想的な面があるとはいえ、如何に重要な意味を持つか垣間見られよう。今日はなにはともあれ、63名もの方々が参加してくれたことで司会者・進行役のわれわれが多大に励まされた。今後のフォーラムもこのような新しい「江湖」でありつければと願っているばかりである。
(文責:林少陽)

 

当日、SGRA運営委員のマキトさんと全振煥さんが撮った写真を集めたアルバムをご覧ください第19回SGRAフォーラム報告
「東アジア文化再考:自由と市民社会をキーワードに」

 

2005年5月17日(火)午後6時半から9時まで、東京国際フォーラムG棟にて、SGRA「地球市民」研究チームが担当する第19http://www.aisf.or.jp/mt-static/images/formatting-icons/bold.gif回SGRAフォーラム「東アジア文化再考:自由と市民社会をキーワードに」が開催された。SGRA「グローバル化と地球市民」研究チームが担当する5回目のフォーラムである。今回は63名もの参加者が集まり、大盛況なフォーラムとなった。参加者はSGRA会員と非会員がそれぞれ半分ずつという構成であった。

 

SGRA研究会の今西代表による開会挨拶が行われた後、講師の宮崎法子氏(実践女子大学文学部教授)が「中国山水画の住人達―「隠逸」と「自由」の形」という題でゲスト講演を行った。宮崎氏は中国絵画史に深い造詣のある方で、一つ一つの絵の事例で簡潔でありがなら感性的な形で山水画の歴史を紹介してくれた。いわば4世紀から19世紀まで1500年以上もの山水画の歴史をわずか45分間で紹介したわけで講演方法もかなり洗練された印象を受けた。普通の絵画史の紹介とは違い、氏の講演は、絵画のモチーフを社会的思想的な文脈において解釈したことが特徴である。なかでも「漁夫」、「旅人」などのイメージから「自由」な境遇、「自由」な境界を求める結晶としての山水画を例に、東アジアの「自由」というものを実例で以っていきいきと紹介してくれた。

 

続いて、東島誠氏(聖学院大学人文学部助教授)が「東アジアにおける市民社会の歴史的可能性」いう題でゲスト講演を行った。東島氏は歴史研究者の視点から、近代のliberty, freedom翻訳語としての「自由」、そして「公共性」という社会学のキー・ワードを念頭に、江戸時代にあった災害事件後のボランティア活動を例に、江戸時代の江戸の災害救済現場という前近代の公共的空間のあり方を紹介した。そして「自由」というキー・ワードとの関連で、中世日本のある禅僧の逡巡を例に、公的秩序にある「公方」との対照にある「江湖」という思想を説明した。二つの例を通して氏は、前近代の「公共性」なるものとそれと関連している「自由」、「江湖」なるものを紹介した。「市民社会」というキーワードをめぐって西洋中心/東アジア伝統中心という二項対立的な考えがあるが、そのような構造から脱出するために、アジアであれ、ヨーロッパであれ、それを特権化しない形でそれぞれを完成形として見ずに新しい社会を目指すこと自体が重要であるということを、氏は講演の冒頭部と結語の部分において繰り返し説明した。

 

2人のゲスト講演が終わった後、SGRA「グローバル化と地球市民」研究チームのチーフである高煕卓氏(韓国グローカル文化研究所首席研究員)が進行役を務め、パネルディスカッションが行われた。時間があまり残っていないため、4名しか質疑できなかったが、講演者が非常に上手く纏めるような形で答えてくれた。「意なお尽くさず」のためか、フォーラム終了後に沢山の参加者が地下一階の懇親会にも参加し、ディスカッションの場をレストランに移したような感じであった。

 

二つの講演が、「自由」「東アジア」「前近代」などのキーワードで、お互いに高い関連性があったことが印象的であった。この講演会が、現在一つのネーション内部にだけ「自由」、「民主」、「人権」が認められ、それ以外の範囲の人々に対しては普遍的であるはずの「自由」、「民主」、「人権」そのものが戦争まで許容するという世界的な背景で行われたことも改めて注意していただきたい。今はこのような重い課題を東アジアの歴史の深部から考える機会かもしれない。ここからも「地球市民」なる理念を考えることが、多少理想的な面があるとはいえ、如何に重要な意味を持つか垣間見られよう。今日はなにはともあれ、63名もの方々が参加してくれたことで司会者・進行役のわれわれが多大に励まされた。今後のフォーラムもこのような新しい「江湖」でありつければと願っているばかりである。
(文責:林少陽)

 

当日、SGRA運営委員のマキトさんと全振煥さんが撮った写真を集めたアルバムをご覧ください第19回SGRAフォーラム報告
「東アジア文化再考:自由と市民社会をキーワードに」

 

2005年5月17日(火)午後6時半から9時まで、東京国際フォーラムG棟にて、SGRA「地球市民」研究チームが担当する第19http://www.aisf.or.jp/mt-static/images/formatting-icons/bold.gif回SGRAフォーラム「東アジア文化再考:自由と市民社会をキーワードに」が開催された。SGRA「グローバル化と地球市民」研究チームが担当する5回目のフォーラムである。今回は63名もの参加者が集まり、大盛況なフォーラムとなった。参加者はSGRA会員と非会員がそれぞれ半分ずつという構成であった。

 

SGRA研究会の今西代表による開会挨拶が行われた後、講師の宮崎法子氏(実践女子大学文学部教授)が「中国山水画の住人達―「隠逸」と「自由」の形」という題でゲスト講演を行った。宮崎氏は中国絵画史に深い造詣のある方で、一つ一つの絵の事例で簡潔でありがなら感性的な形で山水画の歴史を紹介してくれた。いわば4世紀から19世紀まで1500年以上もの山水画の歴史をわずか45分間で紹介したわけで講演方法もかなり洗練された印象を受けた。普通の絵画史の紹介とは違い、氏の講演は、絵画のモチーフを社会的思想的な文脈において解釈したことが特徴である。なかでも「漁夫」、「旅人」などのイメージから「自由」な境遇、「自由」な境界を求める結晶としての山水画を例に、東アジアの「自由」というものを実例で以っていきいきと紹介してくれた。

 

続いて、東島誠氏(聖学院大学人文学部助教授)が「東アジアにおける市民社会の歴史的可能性」いう題でゲスト講演を行った。東島氏は歴史研究者の視点から、近代のliberty, freedom翻訳語としての「自由」、そして「公共性」という社会学のキー・ワードを念頭に、江戸時代にあった災害事件後のボランティア活動を例に、江戸時代の江戸の災害救済現場という前近代の公共的空間のあり方を紹介した。そして「自由」というキー・ワードとの関連で、中世日本のある禅僧の逡巡を例に、公的秩序にある「公方」との対照にある「江湖」という思想を説明した。二つの例を通して氏は、前近代の「公共性」なるものとそれと関連している「自由」、「江湖」なるものを紹介した。「市民社会」というキーワードをめぐって西洋中心/東アジア伝統中心という二項対立的な考えがあるが、そのような構造から脱出するために、アジアであれ、ヨーロッパであれ、それを特権化しない形でそれぞれを完成形として見ずに新しい社会を目指すこと自体が重要であるということを、氏は講演の冒頭部と結語の部分において繰り返し説明した。

 

2人のゲスト講演が終わった後、SGRA「グローバル化と地球市民」研究チームのチーフである高煕卓氏(韓国グローカル文化研究所首席研究員)が進行役を務め、パネルディスカッションが行われた。時間があまり残っていないため、4名しか質疑できなかったが、講演者が非常に上手く纏めるような形で答えてくれた。「意なお尽くさず」のためか、フォーラム終了後に沢山の参加者が地下一階の懇親会にも参加し、ディスカッションの場をレストランに移したような感じであった。

 

二つの講演が、「自由」「東アジア」「前近代」などのキーワードで、お互いに高い関連性があったことが印象的であった。この講演会が、現在一つのネーション内部にだけ「自由」、「民主」、「人権」が認められ、それ以外の範囲の人々に対しては普遍的であるはずの「自由」、「民主」、「人権」そのものが戦争まで許容するという世界的な背景で行われたことも改めて注意していただきたい。今はこのような重い課題を東アジアの歴史の深部から考える機会かもしれない。ここからも「地球市民」なる理念を考えることが、多少理想的な面があるとはいえ、如何に重要な意味を持つか垣間見られよう。今日はなにはともあれ、63名もの方々が参加してくれたことで司会者・進行役のわれわれが多大に励まされた。今後のフォーラムもこのような新しい「江湖」でありつければと願っているばかりである。
(文責:林少陽)

 

当日、SGRA運営委員のマキトさんと全振煥さんが撮った写真を集めたアルバムをご覧ください