SGRAイベントへのお誘い

第19回SGRAフォーラム「東アジア文化再考:自由と市民社会をキーワードに」

下記の通りSGRA第19回フォーラムを開催いたしますので、万障お繰り合わせの上ご出席いただきますようご案内申し上げます。参加ご希望の方は、ファックス(03-3943-1512)またはemail([email protected])で5月16日(月)までに事務局宛てご返送ください。よろしければ最後の申し込み欄をお使いください。また、SGRAフォーラムはどなたにも無料でご参加いただけますので、ご宣伝いただきますようお願い申し上げます。

 

■日 時:2005年5月17日(火)午後6時半より8時半まで、終了後懇親会

 

■場 所:東京国際フォーラム ガラス棟G602会議室
http://www.t-i-forum.co.jp/
(JR東京駅より徒歩5分、JRおよびメトロ有楽町駅より徒歩1分)

 

■会 費:フォーラムは無料。懇親会は会費1000円。

 

■フォーラムの趣旨:
SGRA「グローバル化と地球市民」研究チームが担当する5回めのフォーラム。
「自由と民主主義」が軍事介入まで許容する「正義」とされる世相の中で、東アジアにおいて千年以上追究されてきた自由や市民社会を考え、それが現代においてどのような社会的意味と意義をもつかを探りたい。現在、学問の分野では、特に日本の歴史研究において、東アジア文化圏全体を見渡し、かつてそれが存在したようにとらえようとする試みが始まっている。私たちが忘れてしまった、あるいは忘れさせられてしまった、高い精神性を有した当時の中華文明を求心力とした東アジア文化圏を、かつてあったように把握し、それによってよりよく自分自身を認識した上で、この地域のさらなる発展の可能性を検討することは、経済分野において加速する東アジア地域協力を進める上にも欠かせない作業であると考える。

 

■プログラム:
司会: 林 少陽 (SGRA「地球市民研究」サブチーフ、東京大学大学院総合文化研究科助手)
開会挨拶: 今西淳子 (SGRA代表)

 

◇ゲスト講演(1): 宮崎法子 (実践女子大学文学部教授)
『中国山水画の住人たち-「隠逸」と「自由」の形』
日本を含む東アジア文化圏は、かつて中国を中心に形成されてきた。宋代(10世紀)から、清時代(20世紀初頭まで)の長きにわたり、中国の社会や文化をリードした知識人(士大夫)層の価値観は、東アジア全体の精神世界や趣味世界に大きな影響を与えた。宋代に成立し、その後大きく発展した水墨山水画は、そのような東アジアの知識人たちの理想世界を表わしており、単に自然美だけを描くものではなかった。そこには、儒教的枠組みのなかに生きざるをえない人々が、一方で常に抱き続けた精神的自由への希求や隠逸への思いが反映している。山水画とはまさにそのような思いを反映した造形世界であり、そこに繰り返し描かれた漁父などの点景人物は、隠逸の思いを託された精神的自由の象徴であった。今回は、そのような山水世界の住人について、そこに映された中国の人々の価値観を具体的に作品に即して読み解き紹介したい。

 

◇ゲスト講演(2): 東島 誠 (聖学院大学人文学部助教授) 
『東アジアにおける市民社会の歴史的可能性』
第一の論者は、東アジアには西欧型の市民社会など育つ余地が無かったと言い、第二の論者は、東アジアのなかに西欧型市民社会を発見しようとした。これに対して第三の論者は、西欧世界の普遍性に破産宣告を下し、アジア固有の論理の中に市民社会の可能性を探求しようとした。しかし第四の論者は、その第三の論者をも、東アジアの固有性が西欧世界と対になる形で形象化されているとして、これをナショナリズムの言説と批判した。このように、「東アジアにおける市民社会の歴史的可能性」という所与の課題には、いくつかの危ういトラップが仕掛けられている。このトラップを潜り抜けながら、いったい何が論じられるだろうか?この問題を考える上での素材提供ができれば幸いである。

 

◇ フロアーとの質疑応答
進行: 高 熙卓 (SGRA「地球市民研究」チーフ、世界文化総合研究所副所長)
閉会挨拶: 嶋津忠廣 (SGRA運営委員長)

 

■講師略歴:
◇ 宮崎法子(みやざき・のりこ)
1979年東京大学大学院人文科学研究科、美術史学専攻修士課程修了。その後京都大学人文科学研究所助手、三重大学人文学部助教授を経て、1995年から実践女子大学文学部美学美術史学科教授、現在に至る。その間に、中央美術学院(北京)留学、ハーバード大学イエンチン研究所・台 北故宮博物院博物院などの客員研究員。
専門分野:美術史 中国絵画史
著書: 『故宮博物院5 清の絵画』(編書、日本放送協会、1999年)、『世界美術大全集 東洋編8 明』(責任編集・著、小学館、1999年)、『花鳥・山水画を読み解く―中国絵画の意味―』(角川叢書、2003年、サントリー学芸賞受賞)ほか
論文: 「中国花鳥画の意味」上・下(『美術研究』363-364号、國華賞受賞) ほか

 

◇ 東島 誠(ひがしじま・まこと)
1999年 東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了、博士(文学)。現在:聖学院大学人文学部助教授
著書:『公共圏の歴史的創造─江湖の思想へ』(東京大学出版会、2000年)
論文:「交通の自由、思想の運輸」(『東京大学日本史学研究室紀要』第5号、2001年)、「近代的読書公衆と女性-『君子』から『読者』へ」(三谷博編『東アジアの公論形成』東京大学出会、2004年)ほか