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レポート第82号「第2回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性─蒙古襲来と13 世紀モンゴル帝国のグローバル化」

 

SGRAレポート第82号

 

SGRAレポート第82号(表紙)

 

 

 

第57回SGRAフォーラム講演録

 

「第2回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性─蒙古襲来と13 世紀モンゴル帝国のグローバル化」

 

2018年5月10日発行

 

 

 

<フォーラムの趣旨>

 

東アジアにおいては「歴史和解」の問題は依然大きな課題として残されている。講和条約や共同声明によって国家間の和解が法的に成立しても、国民レベルの和解が進まないため、真の国家間の和解は覚束ない。歴史家は歴史和解にどのような貢献ができるのだろうか。

 

渥美国際交流財団は2015 年7月に第49 回SGRA(関口グローバル研究会)フォーラムを開催し、「東アジアの公共財」及び「東アジア市民社会」の可能性について議論した。そのなかで、先ず東アジアに「知の共有空間」あるいは「知のプラットフォーム」を構築し、そこから和解につながる智恵を東アジアに供給することの意義を確認した。このプラットフォームに「国史たちの対話」のコーナーを設置したのは2016 年9月のアジア未来会議の機会に開催された第1回「国史たちの対話」であった。いままで3カ国の研究者の間ではさまざまな対話が行われてきたが、各国の歴史認識を左右する「国史研究者」同士の対話はまだ深められていない、という意識から、先ず東アジアにおける歴史対話を可能にする条件を探った。具体的には、三谷博先生(東京大学名誉教授/跡見学園女子大学教授)、葛兆光先生(復旦大学教授)、趙珖先生(高麗大学名誉教授/韓国国史編纂委員長)の講演により、3カ国のそれぞれの「国史」の中でアジアの出来事がどのように扱われているかを検討した。

 

第2回対話は自国史と他国史との関係をより構造的に理解するために、「蒙古襲来と13 世紀モンゴル帝国のグローバル化」というテーマを設定した。13 世紀前半の「蒙古襲来」を各国の「国史」の中で議論する場合、日本では日本文化の独立の視点が強調され、中国では蒙古(元朝)を「自国史」と見なしながら、蒙古襲来は、蒙古と日本と高麗という中国の外部で起こった出来事として扱われる。しかし、東アジア全体の視野で見れば、蒙元の高麗・日本の侵略は、文化的には各国の自我意識を喚起し、政治的には中国中心の華夷秩序の変調を象徴する出来事であった。「国史」と東アジア国際関係史の接点に今まで意識されてこなかった新たな歴史像があるのではないかと期待される。

 

もちろん、本会議は立場によってさまざまな歴史があることを確認することが目的であり、「対話」によって何等かの合意を得ることが目的ではない。

 

なお、円滑な対話を進めるため、日本語⇔中国語、日本語⇔韓国語、中国語⇔韓国語の同時通訳をつけた。

 

 

 

<もくじ>

 

◆開会セッション [司会:李 恩民(桜美林大学)]

【基調講演】 「ポストモンゴル時代」?─14~15世紀の東アジア史を見直す

葛 兆光(復旦大学)

 

 

◆第1セッション [座長:村 和明(三井文庫)、彭 浩(大阪市立大学)]

【発表論文1】 モンゴル・インパクトの一環としての「モンゴル襲来」

四日市康博(昭和女子大学)

【発表論文2】 アミール・アルグンと彼がホラーサーンなどの地域において行った2回の

人口調査について

チョグト(内蒙古大学)

【発表論文3】 蒙古襲来絵詞を読みとく─二つの奥書の検討を中心に

橋本 雄(北海道大学)

 

 

◆第2セッション [座長:徐 静波(復旦大学)、ナヒヤ(内蒙古大学)]

【発表論文4】 モンゴル帝国時代のモンゴル人の命名習慣に関する一考察

エルデニバートル(内蒙古大学)

【発表論文5】 モンゴル帝国と火薬兵器─明治と現代の「元寇」イメージ

向 正樹(同志社大学)

【発表論文6】 朝鮮王朝が編纂した高麗史書にみえる元の日本侵攻に関する叙述

孫 衛国(南開大学)

 

 

◆第3セッション [座長:韓 承勲(高麗大学)、金キョンテ(高麗大学)]

【発表論文7】 日本遠征をめぐる高麗忠烈王の政治的意図

金 甫桄(嘉泉大学)

【発表論文8】 対蒙戦争・講和の過程と高麗の政権を取り巻く環境の変化

李 命美(ソウル大学)

【発表論文9】 北元と高麗との関係に関する考察─禑王時代の関係を中心に

ツェレンドルジ(モンゴル国科学院 歴史研究所)

 

 

◆第4セッション [座長:金 範洙(東京学芸大学)、李 恩民(桜美林大学)]

【発表論文10】 モンゴル帝国の飲食文化の高麗流入と変化

趙 阮(漢陽大学)

【発表論文11】 「深簷胡帽」考─蒙元時代における女真族の帽子の盛衰史

張 佳(復旦大学)

 

 

◆全体討議セッション

司会/まとめ:劉 傑(早稲田大学)、論点整理/趙 珖(韓国国史編纂委員会)、

総括/三谷 博(跡見学園女子大学)

 

 

◆あとがきにかえて

金キョンテ(高麗大学)、三谷 博、孫 軍悦(東京大学)、ナヒヤ(内蒙古大学)、彭 浩(大阪市立大学)