越境する文化芸術

  • 2025.10.22

    第19回SGRAチャイナフォーラム「『琳派』の創造」へのお誘い

    下記の通りSGRAチャイナフォーラムをハイブリッド形式で開催いたします。会場でもオンラインでも参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。   テ  ー  マ:「『琳派』の創造」 日   時:2025年11月22日(土)午後3時~5時20分(北京時間)/午後4時~6時20分(東京時間) 会   場:北京大学外国語学院新楼501(オンラインとのハイブリット開催) 言   語:日中同時通訳 共同主催:渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)            北京大学日本文化研究所            清華東亜文化講座 後   援:国際交流基金北京日本文化センター 協   賛:鹿島建設(中国)有限公司     ※参加申込(リンクをクリックして登録してください)   (参加方法に関わらず参加用URLが届きます。会場参加の方は当日会場にお越しください。) (会場参加を希望する方で北京大学関係者以外の方は、事前に北京大学への入校申請が必要となりますので、フォーラム参加登録時に必要事項の入力をお願いします。登録いただいた情報をもとに事務局でまとめて申請します。なお、事前入校申請受付は11月18日(火)で締め切ります。(締め切りを過ぎた場合はオンラインでご参加ください。)当日は、北京大学のキャンパスに入校する際に身分証明書(中国籍の方はID、外国籍の方はパスポート)の提示が必要です。忘れずにお持ちください。)   お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612)     ◆フォーラムの趣旨 公益財団法人渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)は、2007年から毎年、北京を中心とした中国各地の大学等で、日本の民間公益団体の主宰者を招いてSGRAチャイナ・フォーラムを開催してきた。2014年からは趣向を変え、清華東亜文化講座のご協力をいただき、中国在住の日本文学や文化の研究者を対象として、東北アジア地域の近現代史を「文化と越境」をキーワードに議論を重ねている。本年も、これまでの成果を踏まえながら、「東アジアにおける広域文化史」の可能性を探る。国立近代美術館の学芸員を長く務められた古田亮先生(東京芸術大学 大学美術館教授)をお迎えし、「琳派の創造」をテーマに、西洋の影響を受けて近代に創られた美術史の言説について考察する。日中同時通訳付き。   ◆プログラム 総合司会:孫 建軍(北京大学日本言語文化学部/SGRA) 開会挨拶:野田昭彦(国際交流基金北京日本研究センター所長) 講演:古田 亮(東京芸術大学 大学美術館)「『琳派』の創造」 指定討論 討論者:戦 暁梅(国際日本文化研究センター) 中村麗子(東京国立近代美術館) 董 麗慧(北京大学芸術学院) 自由討論 モデレーター:林 少陽(澳門大学歴史学科/SGRA/清華東亜文化講座) 閉会挨拶:王 中忱(清華東亜文化講座/清華大学中国文学科)(予定)   ◆講演内容 古田 亮(東京芸術大学 大学美術館)「『琳派』の創造」 「琳派」は、一般に日本美術史上に現れた流派の一つととらえられている。江戸時代初期に活躍した俵屋宗達や本阿弥光悦らによってつくられ、尾形光琳や酒井抱一によって受け継がれて近代に至ると説明されることが多い。しかし、実際には二つの点で間違っている。一つは、その間に「琳派」と名乗った画家は一人もいないこと。つまり、尾形光琳の「琳」に由来するこの用語は光琳以前に存在しなかっただけでなく、光琳自身も使わず、抱一の時代にもなかった。「琳派」という用語は近代に創造されたのである。もう一点は、江戸時代の宗達、光琳、抱一には直接の師弟関係も、狩野派のような流派としての家のつながりもない。光琳は時代を超えて宗達を発見し、抱一もまた時代を超えて光琳を発見した。その関係は私淑というべきものであった。   一方、「琳派」が近代に創造されたと言うとき、それは学術研究の結果ではなかった。歴史に沿って宗達、光琳、抱一という流れが初めから認識されていたのではない。まず、明治時代後半(19世紀末)、ジャポニスムに端を発してヨーロッパから〈日本らしい装飾芸術〉として光琳が注目された。ついで大正時代に、個性主義という20世紀初めの芸術観のもとに宗達の芸術が再評価された。本発表では美術史家よりもむしろ近代美術の同時代のムーブメントのなかで「琳派」という伝統がつくりあげられていったことを明らかにする。   ※プログラムの詳細は、下記リンクをご参照ください。 日本語版 中国語版   中国語版ウェブサイト
  • 2025.08.03

    陳藝婕「国際和解学会パネル『美術と美術史による和解』」報告

    2025年7月14日から18日にかけて、国際和解学会が韓国ソウル大学において開催された。私が企画したパネルセッション『美術と美術史による和解』には、渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)の派遣チームとして参加した。   本パネルの開催趣旨は、国際和解を促進し戦争の傷を癒す上で、美術と美術史が果たした独特の役割を探ることだった。発表はすべて英語で、研究テーマに関連する時代順に行われた。司会は元渥美奨学生の陳エン氏(京都精華大学准教授)。   最初の発表は私、陳藝婕(元渥美奨学生、上海大学講師)の論文「1958年に日本で開催された敦煌展:文化による和解の始まり」。戦後初期かつ最大規模の中国美術展の一つである「中国敦煌芸術展」を中心に、冷戦期における日中民間文化交流の歴史的意義を分析した。国交が未回復だった日中両国において、日本中国文化交流協会や毎日新聞社などの民間主導で実現したこの展覧会は、約10万人の来場者を集める大成功を収めた。特に敦煌美術が共有する仏教文化的基盤(飛鳥・奈良時代の日中芸術交流)が共感を呼び、井上靖の小説『敦煌』(1959年)やNHKドキュメンタリー「シルクロード」(1980年)など、戦後日本における「敦煌ブーム」を生み出した点が強調された。政治的に困難な時代にも、文化外交が相互理解を促進し、学術・文学・映像メディアにわたる持続的影響力を発揮した事例として評価されている。展示された敦煌美術の文化的価値が、政治的な対立を超えた共感を呼び起こしたと言えるだろう。   エフィ・イン氏(Effie Yin、Ringling College of Art and Design講師)の「写実か近代か?1950年代の雪舟展と日中芸術交流」は、1956年に日本と中国で開催された雪舟の作品展とその背景にある日中の文化的・政治的課題についての考察だった。雪舟は室町時代の禅僧画家で、1956年は没後450年にあたり、世界平和評議会によって「世界の十大文化人の一人」に推挙された。東京と北京で展覧会が開かれ、展示の文脈や意図が異なっていたにも関わらず、国交正常化前の文化交流における画期的な瞬間だったと指摘した。特に中国にとって、この展覧会は日中間の友好的な文化交流を促進し、関係正常化に貢献する一助となった。中国は当時、ソビエト連邦への過度な依存から脱却し、「百花斉放、百家争鳴」を提唱し始めていたが、雪舟の芸術は中国絵画伝統との関連から受け入れられ、中国発祥の芸術的リアリズムの推進にも寄与した。両国の展覧会は文化的・政治的課題を反映していたが、日中の文化交流の架け橋となり、外交関係の修復と正常化への重要な一歩となった。   張帆影氏(中国美術学院講師)の報告は、20世紀初頭にベルンソンやシーレン、矢代幸雄が初期ルネサンス研究で確立した形態や様式を重視する形式主義的分析手法を活用し、東洋美術の西洋における受容の過程を分析した。この結果、東洋美術の西洋認知が進む一方、作品の文化的・歴史的文脈が軽視され、普遍化される傾向が生じた。このアプローチは東洋美術の認知度向上にも寄与した半面、文化的・歴史的文脈を犠牲にし伝統を形式化・普遍化する傾向をもたらした。画期的な異文化研究手法でありながら、形式主義的視点はオリエンタリズム的傾向とも密接に結びついていた。張氏はグローバル美術史における形式主義的方法論の限界を考察し、これらの制約を乗り越えるために、より広範な文化的・歴史的次元の統合を提唱する。   3人の報告を終えた後、王怡然氏(浙江外国語学院講師)が討論者としてそれぞれコメントし、議論が行われた。会場の参加者からも複数の質問があり、美術や美術史の「和解」に対する作用を検討した。美術展や学術研究を通じて、紛争下にある国家間の文化的対話を提唱し、非合理な憎悪と誤解が徐々に解消されることを願った。   当日の写真   <陳藝婕 CHEN Yijie> 2022年度渥美国際財団奨学生。中国浙江省出身。2023年、総合研究大学院大学国際日本研究博士号取得。現在は中国上海大学講師を務めている。研究分野は、日中絵画の交流や受容。論文には「旭日江山:傅抱石の絵画における赤い太陽の図像と中日韓古代絵画の関係について」(『美術観察』2024年第4号)、「高島北海『写山要訣』の中国受容:傅抱石の翻訳・紹介を中心に」(『日本研究』64集,2022年3月)、「記美術史家鈴木敬」(『美術観察』2018年5月号)など、著作は『黄秋園 巨擘伝世・近現代中国画大家』(中国北京高等教育出版社、 2018 年)などがある。
  • 2025.01.09

    李趙雪「第18回SGRAチャイナ・フォーラム報告『アジア近代美術の〈西洋〉受容~色鮮やかな東南アジア美術の議論はこれからも続く~』」

    2024年11月23日(土)午後3時(日本時間4時)より第18回SGRAチャイナ・フォーラム「アジア近代美術の〈西洋〉受容」が北京外国語大学日本学研究センターで開催された。新型コロナウイルスのパンデミックが終息した後、フォーラムは5年ぶりに北京に戻り、対面とオンライン参加のハイブリッド形式で日中両国の視聴者に同時配信した。   11月の北京はすでに冬に入っているが、当日は暖かく穏やかな天気だった。孫建軍先生(北京大学日本言語文化学部)が司会を務め、主催者代表の周異夫院長(北京外国語大学日本語学院日本学研究センター)と後援の野田昭彦所長(北京日本文化センター)が挨拶した。前回の第17回SGRAチャイナ・フォーラム「東南アジアにおける近代〈美術〉の誕生」を引き継ぎ、今回は「アジア近代美術の〈西洋〉受容」をテーマとした。講師として日本における東南アジア美術史の第一人者である後小路雅弘先生(北九州市立美術館館長)、指定討論者として王嘉先生(北京外国語大学アジア学院教授)と二村淳子先生(関西学院大学教授)をお迎えした。   長い間注目されていなかった分野である東南アジア美術史は、近年の中国では重要な研究課題と見なされ、関心の高いテーマである。後小路先生の講演は、初期の東南アジアの美術家にとって重要な存在であったゴーギャンを取り上げ、東南アジア近代美術において「西洋」がどのように受容され、そこにどのような課題が反映していたのかを問題提起した。「ゴーギャンの受容」は画家自身を文明の側におき、対象を野蛮な他者とする図式が見られる。その背景には植民地体制を脱し新たな多民族多文化による国民国家の建設を目指す中で、ナショナル・アイデンティティーの形成、あるいは国民文化の創造という国家的な要請もあった。異国趣味的な女性像を乗り越えるため、ゴーギャンの造形性は参照すべき格好のモードであり、規範でもあった。国民国家の形成過程における「国民」の発見と重なり合い、いわば他者の発見と自己の探求が分かちがたく結びあっているところに、東南アジア近代美術に固有の問題と表現を見出すことができると指摘した。   自由討論は前回と同様にモデレーターの名手、澳門大学の林少陽先生によって進められた。ベトナム研究の専門家・王嘉先生は、20世紀初期のベトナム美術教育とベトナム近現代美術をテーマに補足・報告した。二村淳子先生は『ベトナム近代美術史――フランス支配下の半世紀』(原書房、2021年)の著書で東京大学而立賞(東京大学学術成果刊行助成)を受賞したフランス語圏美術史の研究者である。ゴーギャンとベトナム人画家との関係、特にレ・フー(黎譜)をはじめ、ベトナムの近代画家らも東南アジアの画家らと同様にゴーギャンの影響を受けたことを指摘した。ただし、ゴーギャンがベトナムから見出した「失われた楽園」は地理的な遠方であるのに対し、レ・フーらが見出したのは時間的な遠方、すなわちベトナムの歴史や過去だったと指摘した。   その後、会場から北京外国語大学の学生らや上海大学、九州大学、中国芸術研究院の美術史研究者から多くの質問を受けた。「なぜ野蛮を描いたゴーギャンが東南アジアの近代画家のモデルとなったか」、「陳進の作品から野蛮ではない印象を受けたが、それについてご説明をいただきたい」、「レ・フーの『幸福時代』にゴーギャン以外の要素もあるか」などの質問に対し、後小路先生、二村先生、王先生は丁寧に回答して今回の講演をまとめた。近代国家の成立やアイデンティティーを模索する過程で、ゴーギャンの作品をモデルにする東南アジアの画家たちや台湾の原住民を「高貴」の目線で表現する陳進、ゴーギャン以外のフランス画家からも影響を受けたレ・フォーの諸問題は自由討論で語り切れなかったが、色鮮やかな東南アジア美術についての議論はこれからも続くだろう。   最後に清華東亜文化講座を代表して、王中忱先生(清華大学中国文学科)より閉会の挨拶があった。王先生は後小路先生の講演が植民地主義研究における従来の方法を超え、「他者を認識することは自己を認識・構築することでもある」という示唆的な視点を評価し、国家主義の台頭、均質のグローバル化が進む今日では東南アジアなどの多視点的な討論はきわめて貴重であると述べた。王先生は長年にわたりチャイナ・フォーラムを企画・支援してきた渥美国際交流財団関口グローバル研究会に対して謝意を伝えた。   北京会場、そしてオンラインを含め110名を超える参加があった。講演主題の選択と質疑応答の構成に対してアンケートからも多くの好評を受けた。フォーラム終了後、北京外国語大学の近くにあるレストランで渥美国際交流財団30周年祝賀夕食会が開催された。SGRAを長らく支援してくださっている宋志勇・南開大学教授、北京日本文化センターや清華大学東亜文化講座の先生方、そして中国在住のラクーン(元渥美奨学生)たち、総勢50名の参加者が一堂に会し、大盛況だった。   当日の写真   アンケート集計   <李 趙雪(り・ちょうせつ)LI_Zhao-xue> 中央美術学院人文学院美術史専攻(中国・北京)学士、京都市立芸術大学美術研究科芸術学専攻修士、東京藝術大学美術研究科日本・東洋美術史研究室博士。現在南京大学芸術学院の副研究員。専門は日中近代美術史・中国美術史学史。       2025年1月9日配信    
  • 2024.11.07

    第18回SGRAチャイナフォーラム「アジア近代美術における〈西洋〉の受容」へのお誘い

    下記の通りSGRAチャイナフォーラムをハイブリッド形式で開催いたします。会場でもオンラインでも参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。   テ  ー  マ:「アジア近代美術における〈西洋〉の受容」 日   時:2024年11月23日(土)午後3時~5時(北京時間)/午後4時~6時(東京時間) 会   場:北京外国語大学北京日本学研究センター多目的室とオンライン(Zoom) ※北京外国語大学会場で参加する場合は、入校の際に身分証のスキャンが必要となります。 言   語:日中同時通訳 共同主催:渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)            北京外国語大学北京日本学研究センター            清華東亜文化講座 後   援:国際交流基金北京日本文化センター 協   賛:鹿島建設(中国)有限公司   ※参加申込(リンクをクリックして登録してください) (参加方法に関わらず参加用URLが届きます。会場参加の方は当日会場にお越しください。) お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612)     ■フォーラムの趣旨 昨年開催した「東南アジアにおける近代〈美術〉の誕生」では、日本における東南アジア美術史の第一人者である後小路雅弘先生(北九州市立美術館館長)を講師に迎え、いまだ東北アジア地域では紹介されることが少ない東南アジアにおける近代美術誕生の多様な様相について学んだ。その続編として今回は、初期の東南アジアの美術家にとって重要な存在であったゴーギャンを取り上げ、東南アジア近代美術おいて〈西洋〉がどのように受容され、そこにどのような課題が反映していたのかを考察する。   ■ プログラム 総合司会 孫 建軍(北京大学日本言語文化学部/SGRA) 【開会挨拶】 周 異夫(北京外国語大学日本語学院長兼日本学研究センター長) 野田昭彦(国際交流基金北京日本研究センター所長)   【講演】後小路雅弘(北九州市立美術館館長) 「アジア近代美術における〈西洋〉の受容─東南アジアのゴーギャニズム」   【指定討論】 討論者: 王 嘉(北京外国語大学) 二村淳子(関西学院大学) 【自由討論】 モデレーター:林 少陽(澳門大学歴史学科/SGRA/清華東亜文化講座) 【閉会挨拶】 王 中忱(清華東亜文化講座/清華大学中国文学科)   ■講演内容 【講演】後小路雅弘「東南アジア近代美術における〈西洋〉の受容─東南アジアのゴーギャニズム」 [講演要旨] 前回の本フォーラムでは、「東南アジアにおける近代〈美術〉の誕生」というテーマのもと、欧米列強による植民地統治下の1930年代に見られた近代美術誕生の萌芽的な動きを国ごとに紹介し、その共通性と固有性について考察した。その背景には、19世紀末から盛んになったナショナリズムや民族自決の高まりといった国際的な動向があったが、激動のアジア近代史の奔流の中で、近代美術運動のパイオニアたちは何を目指したのかを読み解いた。 今回は、東南アジアを中心に、他のアジア地域の作例も含め、アジア近代美術の、とりわけ初期の段階において、〈西洋〉の受容がどのようなかたちで行われたのか、またそこにはアジアの近代美術のどのような課題が反映していたのかについて考察する。 アジアの近代美術は、西欧の近代美術の大きな影響を受けながら誕生し、展開していったことは間違いない。しかし、ここでは、その影響を受け容れた側(アジアの近代美術)の主体性、主体的な創造性に注目する。アジアの近代美術のパイオニアたちは、〈西洋〉をどのように「主体的に」受け容れ、そこにどのような問題意識を持ち、どのように内発的な創造性を展開したのだろうか。 東南アジアの美術家たちにとって、とりわけ重要な存在はポスト印象派のポール・ゴーギャンであった。ゴーギャンは、成熟した西欧文明に倦んで、野生の荒々しい生命力を求めて南太平洋へ移住し、そこで新境地を開いた。東南アジアの美術家たちは、ゴーギャンの南太平洋での作品を参照し、自らの作品に取り込みながら、自身の課題に取り組んでいく。そこには、新たな国家建設の夢や、まだ見ぬ〈故郷〉の姿が反映していた。 アジアの初期近代美術家たちはゴーギャンに何を見ていたのか─東南アジアを中心にそれ以外の地域も含め、いくつかの作品を取り上げ、その分析を通して、アジアの近代美術が何を求め、何を生み出したのかについて具体的に考えたい。   ※プログラムの詳細は、下記リンクをご参照ください。 日本語版 中国語版   中国語版ウェブサイト
  • 2024.06.13

    レポート第107号「東南アジアにおける近代〈美術〉の誕生」

    SGRAレポート第107号(日中合冊)   第17回SGRAチャイナ・フォーラム 「東南アジアにおける近代〈美術〉の誕生」 2024年6月13日発行     <フォーラムの趣旨> 今回は視野を東南アジアに広げた。日本における東南アジア美術史の第一人者である後小路雅弘先生(北九州市立美術館館長)を講師に迎え、いまだ東北アジア地域では紹介されることが少ない東南アジアにおける近代美術誕生の多様な様相について学んだ。東南アジアの初期近代美術運動を通じて東北アジアとの関係や相互の影響について考えた。   <もくじ> 【挨拶】 野田昭彦(国際交流基金北京日本研究センター)   【講演】 東南アジアにおける近代〈美術〉の誕生 後小路雅弘(北九州市立美術館館長/九州大学名誉教授)   【指定討論1】 熊 燃(北京大学外国語学院) 【指定討論2】 堀川理沙(ナショナル・ギャラリー・シンガポール) 【 指定討論への回答】 後小路雅弘(北九州市立美術館館長/九州大学名誉教授)   【自由討論】 モデレーター:林 少陽(澳門大学歴史学科/ SGRA /清華東亜文化講座)   【閉会挨拶】 趙 京華(清華東亜文化講座/北京第二外国語学院)   講師略歴  あとがきにかえて ─孫 建軍(北京大学日本言語文化学部/ SGRA)    〇同時通訳(日本語⇔中国語):丁 莉(北京大学)、宋 剛(北京外国語大学/ SGRA)   ※所属・肩書は本フォーラム開催時のもの
  • 2024.04.26

    孫建軍「第17回SGRAチャイナフォーラム『東南アジアにおける近代〈美術〉の誕生』報告」

    2023年11月25日(土)北京時間午後3時(日本時間午後4時)より第17回SGRAチャイナフォーラム「東南アジアにおける近代〈美術〉の誕生」が開催された。コロナが収束して4年ぶりに対面形式で行う予定だったが、スケジュールを決める9月の時点で2012年秋の事態を思わせる空気が漂い始め、オンライン方式を続けることに決めた。   テーマの通り、今回は美術史の返り咲きとなった。しかもこれまで焦点が置かれていた「東アジア」から初めて「東南アジア」に視点を向けたため、事前の準備はこれまでと異なり、チャイナフォーラムの歴史の中でかつてない国際的な展開となっていた。講師は北九州市立美術館館長の後小路雅弘先生、指定討論者は北京大学東南アジア学科准教授の熊燃先生、ナショナル・ギャラリー・シンガポール学芸員でコレクション部門ディレクターの堀川理沙先生のお二方をお迎えした。東京、北九州、北京、シンガポール、マカオと事前準備の連絡は広範囲にわたった。日本語だけでなく、英語によるメールの連絡もこれまでにないレベルで、渥美財団のスタッフ一同の国際色の高さに脱帽した。   例年通り、開催にあたり、主催者側から今西淳子・渥美財団常務理事、後援の野田昭彦・北京日本文化センター所長より冒頭の挨拶があった。野田所長の挨拶は前年同様にテーマに沿った問題提起があり、フォーラムのウォーミングアップともなった。   日本における東南アジア美術史の第一人者である後小路雅弘先生の講演は、ご自身の東南アジアの実体験から始まった。東南アジアにおける近代美術の萌芽的な動きは1930年代に見られると指摘した。地域や国同士の相互の連動は見られなかったが、植民地において19世紀末から盛んになったナショナリズムや民族自決の高まりといった国際的な共通性から、ほぼ同じ時期に見られるようになったと、数多くの絵画の紹介を通じて語った。そして19世紀末から20世紀前半にわたって、東南アジアの近代美術運動を担うパイオニアたちが直面する課題、目指す目標、各国における共通性や相違を読み解いた。   自由討論はモデレーターの名手、澳門大学の林少陽先生によって進められた。美術作品を通して、その背後にあるより微妙で生き生きとした植民地支配に対する抵抗や民族解放を求める東南アジアの歴史の詳細を見ることができるという熊燃先生のご見解や、後小路先生のご研究の原点は東南アジアだけでなく、東アジア全体にあるのではないかという堀川理沙先生のご指摘が印象的だった。その後、会場およびオンライン参加者の質問に対し、後小路先生が丁寧に回答した。   最後に清華東亜文化講座を代表して、北京第二外国語大学趙京華先生より閉会の挨拶があった。趙先生は後小路先生のご講演により、美術史を専門としない人も美術界の新たな風潮を通じて、東南アジアの20世紀の複雑な歴史的プロセス、そして民族、言語、宗教、文化の多様性について初歩的な理解を得ることができたと指摘した上で、「どのような覇権も、世界を統一することも、差異を排除することもできない。私たちは各民族国家の多様性を尊重することでしか、文明の相互理解と平和共存の理想を実現することができない」と強く訴えた。   東京会場、北京会場、そしてオンライン参加を含め、合わせて150名の参加を得た。参加者からは「東南アジアにおける近代美術が生まれた背景や、その代表的な人物に関する基本知識を得ることができた。今後もこの研究領域に関するフォーラムを開催してほしい」などの感想が寄せられた。   フォーラム開催当日は趙先生の誕生日で、北京会場でささやかなお祝いをした。4年ぶりの会食も実現した。そして次回の第18回も引き続き後小路先生に依頼し、対面形式で北京で行うことが早々に決まった。 かつてのおなじみのチャイナフォーラムが確実に戻ってくる。   当日の写真 アンケート集計結果   <孫建軍(そん・けんぐん)SUN Jianjun> 1990年北京国際関係学院卒業、1993年北京日本学研究センター修士課程修了、2003年国際基督教大学にてPh.D.取得。北京語言大学講師、国際日本文化研究センター講師を経て、北京大学外国語学院日本言語文化系副教授。専攻は近代日中語彙交流史。著書『近代日本語の起源―幕末明治初期につくられた新漢語』(早稲田大学出版部)。
  • 2023.12.08

    せん亜訓「第7回東アジア日本研究者協議会パネル『帝国という言説空間の越境・連帯・抵抗―アナーキズムと現代詩、フリージャズ』報告」

    2023年11月の「東アジア日本研究者協議会 第7回国際学術大会」(会場は東京外国語大学)に向け、6月には私を含む台湾と韓国、日本出身の7名の若手研究者がパネル企画の検討を開始した。   同協議会が提示したテーマを基に私たちは「帝国という言説空間の越境・連帯・抵抗―アナーキズムと現代詩、フリージャズ」を提案した。パネリストの専門分野は多岐にわたっているが、東アジアの歴史認識と政治的イデオロギーの齟齬、トランスナショナルな連帯の問題について関心を共有している。共通課題は帝国と社会の周縁を生きてきた運動家、文学者、音楽家の立場から越境する連帯と抵抗のダイナミズムを描き出すことが挙げられる。東アジアの内部でありながら互いの外部にもなる台韓日の間に生まれてくる議論の底力を、パネルの形で発信することが本企画の特徴と考えた。   大会の3日間は、初日から晴れていて暖かかった。私達のパネルは最終日朝のセッションで、寺岡知紀氏(中京大学)のオープニングから始まり、「帝国に抗するアナーキズムを再考する―大杉栄の所有と連帯の論理を手がかりに」(せん亜訓:放送大学)、「戦中・戦後の台湾における石川啄木の受容―文学サークル銀鈴会メンバーを中心に」(劉怡臻:慶應SFC中高部)、「谷川雁の〈工作者〉における力学とフリージャズ」(羅皓名:台湾中央研究院)の3つの報告と、それに対する蔭木達也氏(慶應義塾大学)、閔東曄氏(東北学院大学)、趙沼振氏(淑明女子大学)のコメントを経て、フロアからの質問と総合討議が行われた。   私の報告は1920年に自由連合の主張にたどり着いた大杉栄思想を、第一次世界大戦後の社会問題熱にともなう帝国問題に対する省察と捉えた。そのなかで、自由連合の構想を支えた「労働者の自己獲得」と「蓋然的ソリダリテ」の論理は、脱植民地化への共鳴としての主体の創出と、ポスト大逆事件の社会状況の両方への応答として検討された。この二つの論理は、経済決定の克服を試みた草の根の民衆的創造であり、脱植民地化の広がりを意識してその内面化を試みた越境する連帯のきっかけともいえようと結論付けた。   劉氏は、戦前から戦後まで文芸活動を続けた銀鈴会の朱実と錦連の詩作における啄木文学の受容について発表した。そのなかで、第二次世界大戦中の台湾における伝統的な詩の形式から距離を置いた啄木調の再生産と、戦時中の心理の屈折を意識して正直に記録するという啄木の短歌観への共鳴が示唆された。戦後の2・28事件及び白色テロによる弾圧を受けつつも、啄木文学を自らの抵抗と結びつけた面は、戦後の権威主義体制へのポストコロニアルな応答として捉えた。そして、銀鈴会の「民衆の中へ」のスタンスは、左翼文学史の文脈にとどまらず、台湾の郷土文学との継承関係を示したと論じられた。   羅氏は1960年代の平岡正明と相倉久人の「ジャズ革命論」を取り上げた。谷川の「工作者」の論理が媒介した60年安保の革命思想と前衛芸術、下層労働者のあいだに生まれた「反定型」と相互破壊的な関係性、辺境的マイノリティといった概念をジャズ演奏の歴史映像を通じて説明された。具体的には、異質な他者の間の破壊的な弁証と、自己消滅により継起するノートを呼び起こすという永久革命の企てを持つジャズの結合を論じた。その上で「ジャズ革命論」の意義に関しては、美学と政治の批判的実践のみならず、第三世界論と新左翼運動のパラダイム転換、マイノリティへの眼差しから解釈した。   3つの報告について、3名の討論者が各自の専門から出発し、東アジアの歴史を振り返りつつコメントし、パネル全体との接点を作って質問した。(1)蔭木氏からは、煩悶青年の文脈および自己と国家、社会の関係性から生まれた大杉の「社会的所有」の意味合いと「蓋然的ソリダリテ」の発想に及ぼす根拠、(2)閔氏からは、戦時期植民地知識人の抵抗と戦争擁護の絡み合いから啄木文学の受容の再検討と、戦中から戦後への啄木調の植民地的展開の再認識、(3)趙氏からは、ジャズの即興演奏を他者との出会いとして捉える理解とその妥当性、マイノリティや下層民衆の枠に収まらない社会的矛盾と植民地支配の位置づけ、といった質問があった。   参加者からは文脈の補足や議論のさらなる展開を求められたが、90分の時間はあっという間に過ぎ去ってしまった。総合討議では抵抗の日常性と民衆性につながった「社会」と連帯の構想を接点に、帝国と植民地、支配と抵抗の間)の思想的連続と緊張関係が、同時に思想と文学、芸術に反映されたと語られた。同時に、異質なるものが構造的支配に回収され、暴力の装置に右旋回してしまうおそれへの問題関心は、東アジアの歴史認識と政治的イデオロギーのあつれきに関係し、看過できない課題だと、パネリスト同士で共感した。時間内に収まらない議論は、昼食後の雑談まで続いたが、帰らないといけない時間になった。台湾と韓国、日本の各地から集まってきた私たちは、今回のパネルの成果を養分として蓄え、次回の企画に力を注いで行きたい。   当日の写真   <詹亜訓(せん・あくん)CHAN Ya-hsun> 台湾国立交通大学社会と文化研究科修士。東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻修士、博士。現在日本学術振興会外国人特別研究員として早稲田大学政治学研究科に在籍している。専門は、東アジア政治・社会思想史。
  • 2023.11.07

    レポート第103号「木造建築文化財の修復・保存について考える」

    SGRAレポート第103号日本語版 中国語版 韓国語版   第70回SGRAフォーラム 「木造建築文化財の修復・保存について考える」 2023年11月10日発行   <フォーラムの趣旨> 東アジアの諸国は共通した木造建築文化圏に属しており、西洋と異なる文化遺産の形態を持っています。第70回SGRAフォーラムでは、国宝金峯山寺(きんぷせんじ)二王門の保存修理工事を取り上げ、日本の修理技術者から現在進行中の文化財修理現場をライブ中継で紹介していただきます。続いて韓国・中国・ヨーロッパの専門家と市民の代表からコメントを頂いた上で、視聴者からの質問も取り上げながら、専門家と市民の方々との間に文化財の修復と保存について議論の場を設けます。   今回のフォーラムを通じて、木造建築文化財の修復方法と保存実態をありのままお伝えし、専門家と市民の方々との相互理解を推進したいと考えております。   今回のフォーラムを実現することを可能にしてくださった、金峯山寺と奈良県文化財保存事務所に心からお礼を申し上げます。   <もくじ> はじめに  総合司会:李 暉(奈良文化財研究所 アソシエイトフェロー/ SGRA) 開会挨拶  五條良知(金峯山修験本宗 総本山金峯山寺 管長)   【話題提供】 ライブ中継 国宝 金峯山寺二王門修復現場から  竹口泰生(奈良県文化財保存事務所金峯山寺出張所 主任)   【討論1】 [韓国専門家によるコメント] 韓国における文化遺産修理と部材保存  姜 璿慧(伝統建築修理技術振興財団 企画行政チームリーダー) 【討論2】 [中国専門家によるコメント] 古建築金峯山寺二王門の保存修理について  永 昕群(中国文化遺産研究院 研究館員) 【討論3】 [ヨーロッパ専門家によるコメント] 日本における木造建築遺産保存の特徴 ─ヨーロッパとの比較から─ アレハンドロ・マルティネス(京都工芸繊維大学 助教) 【討論4】 [市民によるコメント] 文化財修復保存に市民として期待していること 塩原フローニ・フリデリケ(BMW GROUP Japan / SGRA)   質疑応答  モデレーター:金 玟淑(京都大学防災研究所 民間等共同研究員/ SGRA) 回答者: 竹口泰生(奈良県文化財保存事務所金峯山寺出張所 主任) 姜 璿慧(伝統建築修理技術振興財団 企画行政チームリーダー) 永 昕群(中国文化遺産研究院 研究館員) アレハンドロ・マルティネス(京都工芸繊維大学 助教) 塩原フローニ・フリデリケ(BMW GROUP Japan / SGRA)   講師略歴 あとがきにかえて
  • 2023.10.24

    第17回SGRAチャイナフォーラム「東南アジアにおける近代〈美術〉の誕生」へのお誘い

    下記の通りSGRAチャイナフォーラムをハイブリッド形式で開催いたします。会場でもオンラインでも参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。   テーマ:「東南アジアにおける近代〈美術〉の誕生」 日時:2023年11月25日(土)午後3時~5時(北京時間)/午後4時~6時(東京時間) 会場:渥美財団ホール、北京大学会場、オンライン(Zoom Webinar)のハイブリッド形式         ※渥美財団ホール https://www.aisf.or.jp/jp/map.php         ※北京大学会場は北京大学学生に限定 言語:日中同時通訳 共同主催:渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)         北京大学日本文化研究所         清華東亜文化講座 後援:国際交流基金北京日本文化センター 協 賛:鹿島建設(中国)有限公司   ※参加申込(リンクをクリックして登録してください) (参加方法に関わらず参加用URLが届きます。会場参加の方は当日会場にお越しください。) お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612)     ■フォーラムの趣旨 今回は視野を東南アジアに広げる。日本における東南アジア美術史の第一人者である後小路雅弘先生(北九州市立美術館館長)を講師に迎え、いまだ東北アジア地域では紹介されることが少ない東南アジアにおける近代美術誕生の多様な様相について学ぶ。東南アジアの初期近代美術運動を通じて東北アジアとの関係や相互の影響について考える。   ■プログラム 総合司会 孫 建軍(北京大学日本言語文化学部/SGRA) 【開会挨拶】今西淳子(渥美国際交流財団/SGRA) 【挨拶】野田昭彦(国際交流基金北京日本研究センター)   【講演】後小路雅弘(北九州市立美術館館長) 「東南アジアにおける近代〈美術〉の誕生」   【指定討論】 討論者:熊 燃(北京大学外国語学院)        堀川理沙(ナショナル・ギャラリー・シンガポール) 【自由討論】 モデレーター:林 少陽(澳門大学歴史学科/SGRA/清華東亜文化講座) 【閉会挨拶】趙 京華(清華東亜文化講座/北京第二外国語学院)     ■講演内容 【講演】後小路雅弘「東南アジアにおける近代〈美術〉の誕生」   [講演要旨] 東南アジアにおける近代美術の萌芽的な動きは、そのほとんどの地域が欧米列強の植民地であった1930年代に見られる。その運動は、相互に連動したものではなかったが、植民地において19世紀末から盛んになったナショナリズムや民族自決の高まりといった国際的な共通性を背景に、ほぼ同じ時期に見られるようになった。   フィリピンでは、アメリカ留学から帰国したエダデスを中心に結成された「13人の現代人たち」が、オランダ領東インドではスジョヨノとプルサギ(インドネシア画家組合)がその主な担い手であった。シンガポールではフランス留学からの帰国者たちが華人美術研究会を結成、華僑子弟の教育のために設立された南洋美術専科学校とともに、近代美術運動を推進した。独立国であったタイでは、「お雇い外国人」のイタリア人彫刻家フェローチが国立美術学校を設立し、仏領インドシナでは、フランス人画家タルデューが美術学校を設立して美術教育に取り組んだ。両校の初期の卒業生たちがそれぞれの近代美術の担い手となった。   こうした萌芽的な運動は、1940年代の旧日本軍の侵攻と占領によって頓挫し、本格的な開花は各国が独立を果たす1950年代以降を待つことになる。   この初期の近代美術運動の担い手であったパイオニアたちは何を目指し、何を課題としたのか。20世紀前半、激動のアジア近代史の奔流の中で、彼らは何と戦ったのか、そしてその思いは─各国における共通性と相違に目を向けながら読み解く。   ※プログラムの詳細は、下記リンクをご参照ください。 日本語版 中国語版
  • 2023.06.21

    レポート第102号「モダンの衝撃とアジアの百年―異中同あり、通底・反転するグローバリゼーション―」

    SGRAレポート第102号(日中合冊)   第16回SGRAチャイナフォーラム 「モダンの衝撃とアジアの百年 ―異中同あり、通底・反転するグローバリゼーション―」 2023年6月14日発行     <フォーラムの趣旨> 山室信一先生(京都大学名誉教授)の『アジアの思想史脈―空間思想学の試み』(人文書院、2017年。徐静波・訳『亚洲的思想史脉——空间思想学的尝试』上海交通大学出版社・近刊予定)と『モダン語の世界へ:流行語で探る近現代』(岩波新書、2021年)などを手がかりに行った2021年のフォーラム「アジアはいかに作られ、モダンはいかなる変化を生んだのか?」の続編として、前回に提起した空間論・時間論・ジェンダー論における論的転回の具体的現れについて考える。そして、それらが生活世界にどのような衝撃を与え、現在の私たちの時空感覚や身体的感性や倫理規範などにいかに通底しているのかを検討する。   <もくじ> 【挨拶】 野田昭彦(国際交流基金北京日本文化センター)   【講演】 モダンの衝撃とアジアの百年 ―異中同あり、通底・反転するグローバリゼーション― 山室信一(京都大学名誉教授)   【コメント1】 今日における山室信一理論の意義 陳 言(北京市社会科学院) 【コメント2】 山室教授講演へのコメント 高 華鑫(中国社会科学院外国文学研究所) 【応答】 コメントを受けて 山室信一(京都大学名誉教授)   【自由討論】 モデレーター 林 少陽(澳門大学歴史学科/ SGRA /清華東亜文化講座) 討論者 陳 言(北京市社会科学院) 高 華鑫(中国社会科学院外国文学研究所) 山室信一(京都大学名誉教授)   【閉会挨拶】 劉 暁峰(清華東亜文化講座/清華大学歴史系)   講師略歴 あとがきにかえて