SGRAの活動

  • 2007.08.08

    第29回SGRAフォーラム 「広告と社会の複雑な関係」

    日 時: 2007年11月18日(日) 午後2時30~5時30分 その後懇親会 会 場: 東京国際フォーラム ガラス棟会議室 G510号室 主 催: 関口グローバル研究会 (SGRA:セグラ) 協 賛: (財)渥美国際交流奨学財団   ■フォーラムの趣旨: SGRA「人的資源・技術移転」研究チームの担当する4回めのフォーラム。広告は社会を写す鏡なのか。どのように写しだすのか。大量消費文化を反映するものなのか、それとも何がしかのプロパガンダが含まれているのか。単に物を売るためだけでなく、新しい思想、新しいライフスタイルを啓蒙するものなのか。広告は国や文化によって違った特徴をもっているのか。中国やウクライナの事例を紹介しながら、広告と社会の複雑な関係を考えます。                                     ■プログラム: 詳細は下記URLをご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/schedule/forum29program.doc   【基調講演】関沢英彦 東京経済大学コミュニケーション学部教授   【報 告 1】徐 向東 (株)中国市場戦略研究所、SGRA研究チーフ   【報 告 2】オリガ・ホメンコ 早稲田大学国際教養学部訪問学者、学術振興会外国人特別研究員、SGRA研究員   (休憩10分)   【パネルディスカッション】 上記講演者
  • 2007.08.01

    第28回SGRAフォーラム in 軽井沢「いのちの尊厳と宗教の役割」報告

    2007年7月21日(土)、第28回SGRAフォーラム in軽井沢が、鹿島建設軽井沢研修センター会議室で開催された。今回は、SGRA「宗教と現代社会」研究チームが担当する第2回目のフォーラムで、テーマは「いのちの尊厳と宗教の役割」であった。   まず、東京大学文学部宗教学宗教史学科教授の島薗進先生が「いのちの尊厳と日本の宗教文化」というテーマの基調講演を行った。医療技術の発展によって安楽死、臓器売買、代理出産などが可能になり、人の生命が道具のように扱われている。一方、自殺者数は減らず、教育の現場では、子供たちが自分より弱いものをみつけていじめる、さらには「社会を掃除するために」ホームレスを虐待するという社会問題がおこる。これらの現象は根元で繋がっているのではないか。「生命の尊厳」の問題に対して欧米では様々な議論がなされており、カトリック教会などははっきりした立場を示している。しかし、日本の宗教やアジアの宗教文化の立場からの対応はまだ欠如している。アジアの宗教文化の観点から生命倫理を考える必要があるのではないかという問題提起がなされた。   島薗先生の発表に対して兵庫県立大学看護学部心理学系准教授・韓国出身の金外淑さんの質問は、いのちの尊厳をどのように教えることが出来るのかということであった。島薗先生は、いのちの大切さは様々な分野で教えられているが、いのちを尊重する文化を育むことが必要であり、そこで宗教の役割が重要になると回答した。   富山大学経営法学科教授の秋葉悦子先生は「カトリック<人格主義>生命倫理学の日本における受容可能性」について発表を行った。秋葉先生は、中絶問題や生命の誕生(初期胚)や臓器移植について、受精卵を新たな人の命としてみなすカトリック教会のいわゆる人格主義的生命倫理について、ヴァチカンの公式見解を説明した。そして、このような生命倫理的価値観は、生物学の科学的な研究と第二次世界大戦後の国際法の精神に基づく合理的な結論であり、日本での受容の可能性は高いと語った。   秋葉先生に対する東京医科大学大学院博士課程在学生・中国ウィグル出身のアブドジュクル・メジテさんの質問は、ES細胞から人工的に器官を作ることは可能で、それによって様々な病気を直すための実験を行うことができるが、受精卵を新たな人の生命としてみなすというカトリック教会の立場はこの分野の研究を妨げているのではないかということであった。秋葉先生の回答は次の通りであった。ナチス時代には人体が医学実験のために使われていた。カトリック教会が示す生命倫理は科学や技術的発展のために人間の命や人権が奪われないように守ろうとしている。カトリック教会は死後の臓器移植を認めている。   コーヒー休憩の後、高野山大学文学部スピリチュアルケア学科准教授の井上ウィマラ先生による「悲しむ力と育む力:本当の自分に出会える環境づくり」というテーマの発表で、人間は悲しいことをどのように育む力に変えることが出来るのかという内容のものであった。フロイトの対象喪失理論やボウルビィの愛着理論などを紹介し、悲しみを充分に体験しながら人は許しや思いやりなどを獲得し、いのちを育む力を培ってゆくと論じた。井上先生によれば母子関係には人間を育む力があり、それを証するように中島みゆきの「誕生」という曲を聞かせた。   日本社会事業大学大学院博士課程在学生・中国出身の権明愛さんからは、子供ころの精神障害やトラウマは大人になっても残る可能性があるが、それを解決するためにもどのように自分の体験に向かい合うことが出来るのかという問いだった。井上先生は子供への様々な方法でのスピリチュアルケアの必要性を強調した。   最後の発表者は立命館大学産業社会学部教授の大谷いづみ先生だった。「『尊厳ある死』という思想の生成と『いのちの教育』」という題名の発表で、まず尊厳死と安楽死の相違について説明した。そして、様々な事例を通じて欧米や日本社会における「尊厳死」と「安楽死」の受けとめ方について述べた。尊厳死は当事者の自己決定によるものであるとされている。しかし、その自己決定には様々な問題があり、それは「いのちの教育」において課題とされるものであると論じた。   大谷先生の発表に対して東京大学大学院博士課程在学生・韓国出身の李垠庚さんは、韓国では「消極的安楽死」という言葉が使われることを紹介し、尊厳死が安楽死と区別され肯定的に取られてしまう可能性があるのではないかと問いかけた。大谷先生の答えは、死に関する自己決定は「科学的ヒューマニズム」とされており、日本でも道徳的行為とみなされていることに問題を感じると再度強調した。   当フォーラムの前半はこのように4人の講演者による発表と約定質問者による質疑であった。後半(夕食休憩の後)には、フロアからの質問を踏まえながら、「いのちの尊厳と宗教の役割」というテーマのパネルディスカッションが行われた。4人の講演者がパネリストとなり、名古屋市立大学准教授のランジャナ・ムコパディヤーヤが進行を務めた。フロアから様々な質問があった。いのちに関する教育は可能か、そのような教育をどのように行うべきか、文化によって死生観や「いのち」に対する考え方が異なるのに共通な生命倫理は可能か、個人主義を重視するキリスト教的・西洋的な「いのち」観は「無我」を説く仏教的考え方やアジアの文脈において適用しうるのか、宗教的文化的特徴を尊重しながら「いのち」の尊厳を訴えることは出来るのかというような質問があった。パネリストらによる回答がパネルディスカッションをさらに盛り上げ、フォーラムは大盛況であった。   フォーラムの写真は以下のURLをご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/photos/   (文責:ランジャナ・ムコパディヤーヤ)  
  • 2007.07.21

    第28回SGRAフォーラム in 軽井沢 「命の尊厳と宗教の役割」へのお誘い

    第28回SGRAフォーラム in 軽井沢 「命の尊厳と宗教の役割」   日時:2007年7月21日(土)14時~18時、19時半~21時 会場:鹿島建設軽井沢研修センター会議室 主催:関口グローバル研究会(SGRA:セグラ) 協賛:(財)鹿島学術振興財団(財)渥美国際交流奨学財団   ■フォーラムの趣旨: 先端生命科学にともない命にかかわる様々な技術が出現しているが、それがこれからの人間の生活にどのような影響を与えるか未だ不明です。このような状況において、宗教はどのような役割を果たせるでしょうか。宗教は生命倫理的な規範を築くための理念を提供することができるでしょうか。このフォーラムでは、世界各国の様々な事例を通じてこの問題を考えてみたいと思います。   ■プログラム:   詳細は:プログラム をご覧ください。   【基調講演】島薗 進(東京大学文学部宗教学宗教史学科教授) 【講 演1】秋葉 悦子(富山大学経営法学科教授) 【講 演2】井上ウィマラ      (高野山大学文学部スピリチュアルケア学科助教授) 【講 演3】大谷いづみ      (立命館大学産業社会学部教授) 【パネルディスカッション】    進行:ランジャナ・ムコパディヤーヤ     (名古屋市立大学大学院人間文化研究科助教授、SGRA研究員)
  • 2007.07.07

    第2回SGRAチャイナ・フォーラム「黄土高原緑化協力の15年」

    第2回SGRAチャイナ・フォーラムへのお誘い   講演:高見邦雄(緑の地球ネットワーク事務局長) 「黄土高原緑化協力の15年:無理解と失敗から相互理解と信頼へ」   下記の通り第2回SGRAチャイナ・フォーラムを北京とウルムチにて開催いたします。 参加ご希望の方は、ファックス(03-3943-1512)または電子メール([email protected])でSGRA事務局宛ご連絡ください。当日参加も受付けます。SGRAフォーラムはどなたにも参加いただけます。日中同時通訳がつきますので、北京・ウルムチ在住の皆様にご宣伝いただきますようお願い申し上げます。   ■フォーラム案内   <北京大学フォーラム> 日 時: 2007年9月14日(金)午後2時~5時 会 場: 北京大学生命科学学院 現地申込み・問合せ:孫 建軍 [email protected]   <新彊大学フォーラム> 日 時: 2007年9月17日(月)午後2時~5時 会 場: 新彊大学大学院報告庁 現地問合せ:Abliz Yimit  [email protected] (事前申込み不要)   参加費:無 料 申込み・問合せ:SGRA事務局  Email: [email protected] TEL: 03-3943-7612 FAX: 03-3943-1512   ■フォーラムの趣旨   2006年10月に北京大学で開催したパネルディスカッション「若者の未来と日本語」に引き続き、中国で開催する2回めのSGRAフォーラム。今回は、既に15年間、中国山西省大同市の黄土高原で緑化運動を続けている日本の認定NPO法人「緑の地球ネットワーク」事務局長の高見邦雄様にご講演いただきます。日中同時通訳付き。SGRAでは、中国各地で活動を続ける民間人による公益活動を、北京大学をはじめとする中国各地の大学で紹介するフォーラムを開催していきたいと思っています。   ■講演要旨   緑の地球ネットワークは1992年以来、山西省大同市の農村で緑化協力を継続している。大同市は北京の西300kmほどのところにあり、北京の水源、風砂の吹き出し口でもある。そこで深刻な沙漠化と水危機が進行している。「ゼロからの出発」とよくいうが、歴史問題をかかえた大同ではマイナスからのスタートだった。初期は失敗つづきだったが、その後、日本側の専門家や中国のベテラン技術者の参加をえて、だんだんと軌道に乗ってきた。協力の双方も失敗と苦労を通じ、お互いを理解し、信頼しあうようになってきた。いまでは「国際協力の貴重な成功例」とまで評価されるようになっている。その経験と教訓を話したい。   ■講師略歴   1948年鳥取県の農家に生まれる。東京大学中退。日中民間交流に従事したあと、1992年緑の地球ネットワークの設立に参加し、大同プロジェクトを担当。1994年から事務局長。毎年100~120日、大同に滞在している。友誼奨(2001年、中国政府)、大同市栄誉市民(2006年、大同市政府)など受賞。中文の著書に『雁棲塞北~来自黄土高原的報告』(李建華・王黎傑訳、国際文化出版公司、2005年)がある。   緑の地球ネットワーク http://homepage3.nifty.com/gentree/
  • 2007.06.10

    レポート第37号 「若者の未来と日本語」

    SGRAレポート第37号   SGRAフォーラム in 北京 パネルディスカッション講演録 「若者の未来と日本語」 2007年6月10日発行     総合司会:孫 建 軍(北京大学日本言語文化学部助教授、SGRA研究員)   【パネルディスカッション】   進行:朴 貞 姫(北京語言大学 助教授、SGRA研究員)   ■「ビジネス日本語とは」           池崎美代子(JRP専務理事、SGRA会員)   ■「グローバル企業が求める人材」           武田春仁(富士通(中国)有限公司副董事長(兼)総経理)   ■「日本文化と通訳の仕事」           張 潤北(三井化学北京事務所所長代理)   ■「『日本語』の壁を超える」           徐 向東(キャストコンサルティング代表取締役、SGRA研究チーフ)  
  • 2007.05.27

    第27回SGRAフォーラム「アジアの外来種問題:ひとの生活との関わりを考える」報告

    2007年5月27日(日)、秋葉原UDX南6階カンファランスにて、第27回SGRAフォーラム「アジアの外来種問題―ひとの生活との関わりを考えるー」が開催された。同会場でのSGRAフォーラム開催は初めてであり、生物学の分野での開催も初めてと、初めてづくしの記念すべき開催であった。また、ブラックバス問題に代表されるように、現在、熱く議論されている問題をテーマとして、今をときめく電脳空間アキバでフォーラムを行うという、その画期的な試みに、気分は否が応にも盛り上がった。   開演時間の午後2時半が近くなるにつれ、用意されていた椅子も徐々に人で埋められていき、会場はほぼ満席となった。   フォーラムは、多紀保彦教授(自然環境研究センター理事長、東京水産大学[現東京海洋大学]名誉教授)の講演「外来生物とどう付き合うか:アジアの淡水魚を中心に」で始まった。多紀教授はご自身がなじみの深い東南アジアの自然環境、魚、養殖、人々のくらしについて、個人的な体験も盛りこみ、ユーモアをまじえながら話してくださった。60年代から今日にかけて、東南アジアをときにきびしく、ときに暖かい目で見続けてきた多紀教授の見解は多くの示唆に富んでおり、魚を専門とされていながら、常に“初めに人間ありき”の視点で世界を見てきた教授ならではのものである。   次に講演を行ったのは加納光樹氏(自然環境研究センター研究員)である。氏は、「外来生物問題への取り組み:いま日本の水辺で起きていること」と題して、外来種をとりまく日本の現状についていくつかの例を用いてわかりやすく説明してくださった。外来種はけっして生物学だけの問題ではなく、文化や経済や政治的な利害も含めた、正に “社会”問題であることが氏の講演からひしひしと伝わってきた。氏のわかりやすい洗練されたプレゼンテーションによって外来種問題の深刻さ、一筋縄ではいかない難しさをはじめて理解した人も多かったのではないだろうか。氏は、「アジアの外来種問題」をテーマとしたフォーラムは初めての試みであり、今後このような場を増やすことが必要と強調された。   最後の講演者はSGRA研究員でもある私、プラチヤー・ムシカシントーン(タイ国立カセサート大学水産学部講師)の「インドシナの外来種問題:魚類を中心として、フィールドからの報告」であった。私は恩師の多紀教授が見守るなかでの講演であったこともあり、緊張しつつ、主に私自らの観察によるインドシナ地域での外来魚問題の現状について話した。講演の後半は最近調査を行ったミャンマーのインレ湖に関してのもので、インドシナの貴重な数少ない古代湖の一つであるインレ湖に現在多くの外来魚が定着しているという現状の報告であった。   コーヒーブレイクをはさみ、フォーラムの後半は講演者全員がパネリストとなり、今西淳子氏(SGRA代表、渥美国際交流奨学財団常務理事)を司会にむかえ、パネルディスカッションを行った。今西氏がパネルディスカッションの進行役を勤めるのも初めての試みであったが、客席との活発なやり取りが行われた。経済を専門にする参加者からの意見もあれば、工学専門の研究者からの意見もあった。いろいろな分野の方々の間での意見交換が行われたことも今回のフォーラムのよかった点ではないだろうか。本フォーラムが、参加者全員にとって、アジアの外来種問題を考えるきっかけになったとしたら、本フォーラムの目的は達せられたのではないかと思う。 (文責:P.ムシカシントーン)   当日、運営委員の足立憲彦さんとF.マキトさんが写した写真は、アルバムよりご覧いただけます。  
  • 2007.04.25

    第5回日比共有型成長セミナー「マイクロクレジットと観光産業クラスター」報告

    2007年4月16日(月)午後2時から5時まで、フィリピンのアジア太平洋大学(UA&P)にてUA&P・SGRA日本研究ネットワークが主催する共有型成長セミナーが開催された。今年が5回めとなるこのセミナーの主な目的は、今回のテーマである「フィリピンにおけるマイクロクレジット(小額融資)と観光産業クラスター」に関する研究をスタートさせることであった。主催者は、このセミナーにおける議論を土台にして研究計画をまとめ、日本やその他の財団に研究助成を申請する予定である。   SGRAの今西代表が開会の挨拶をしてから、SGRA研究員のマキトは以上のようなセミナーの目的を説明して、UA&P・SGRAの共同研究として行った製造業経済特区の研究成果を、今度はマイクロクレジットと観光産業クラスターにどのように適応できるかという研究枠組みを提案した。この後、この特区研究のパートナーであるピーター・リー・ユ博士(UA&P経済学部長)はフィリピンの観光産業についてマクロレベルの概説をした。その次に、UA&Pの観光産業アナリストのスタン・パドヒノッグ教授が、観光産業をよりミクロのレベルで語った。フィリピンの海外からの観光者数は、タイなど他の東南アジア諸国に比べればまだ少ないが、出稼ぎフィリピン人が休暇に一時帰国するのを含めて、フィリピンの観光客は毎年増えている状況だと二人とも強調した。実はこの増加率が現地の開発業者では追いつけないほどであり、大手企業が海外のディベロッパーと手を組むケースも増えているようである。休憩を挟んでUA&Pのマイクロクレジットのアナリスト、ビエン・ニト教授が、フィリピンにおけるマイクロクレジットの現状について最近の研究報告を踏まえて説明した。地方の町づくりにも観光産業への繋がりが伺える。   このセミナーには、フィリピンの地方でマイクロクレジットを行うNPOの役員たちが参加しており、フリーディスカッションでは期待通りの活発な議論が行われた。早速、地方でも同様のセミナーを開催して、地方政府に働きかけをしたいという要望もあった。もう一つ印象的だったのは、研究者からもNPO役員からも、このマイクロクレジットと観光産業クラスターを結びつけた研究が、新しく、大変面白い発想だと評価されたことである。皆さんから、積極的にこの共同研究に参加協力する意思を表明していただいた。   セミナーの後、発表者は今西代表を囲んで、これからのこの共同研究を具体的にどのように行うか話合った。とりあえず、マキト研究員が、研究提案書のたたき台を作成して、UA&Pの研究者と共同で編集していくことで合意した。また、次回は同様のセミナーを観光地として開発が進む地方で開催するという暫定的な計画が立てられた。楽しみにしている。   マックス・マキト (SGRA「グローバル化と日本の独自性」研究チームチーフ)
  • 2007.04.20

    レポート第36号 「ITは教育を強化できるのか」

    SGRAレポート第36号   第25回SGRAフォーラム講演録 「ITが教育を強化できるのか」 2007年4月20日発行   -----------もくじ------------   【基調講演】 「途上国へのE-learning技術支援とオープンソースソフトウェア教育強化~南太平洋大学におけるJICAプロジェクト活動を中心に~」                      高橋 冨士信(横浜国立大学大学院工学研究院教授)   【研究発表1】 「伝え合うことで学ぶ『交流学習』と支援のあり方」                     藤谷 哲(目白大学経営学部経営学科専任講師)   【研究発表2】 「Mobile-Learningが教育を変える?!」                     楊 接期(台湾国立中央大学情報工学部助教授、SGRA研究員)   【パネルディスカッション】                     進行:江蘇蘇(東芝セミコンダクター社、SGRA研究員)                    パネリスト:上記講演者      
  • 2007.03.08

    第5回UA&P/SGRA共有型成長セミナー in マニラ 「マイクロ・クレジットと観光産業クラスター」ご案内

    UA&P・SGRA日本研究ネットワーク主催   第5回共有型成長セミナー 「マイクロ・クレジットと観光産業クラスター」   日時:2007年4月16日(月)午後2時~4:30   会場:フィリピン、マニラ市    アジア太平洋大学(UA&P)   ■セミナーの内容   このセミナーは「マイクロ・クレジットと観光産業クラスター」というテーマを紹介し、このテーマについての研究を開始させることを目的とする。当セミナーは、UA&PとSGRAが共催する、フィリピンの経済特区に関する5回めのセミナーである。この共同研究の基本的な目標は、フィリピンの経済特区開発戦略を通して、日本が達成した「共有型成長」を、いかにフィリピンでも実現できるかを探求することである。製造業の経済特区に関する研究はほぼ終了し、IT特区に関する共同研究は始まったばかりである。当セミナーでは、第3の課題として観光産業特区に関する研究の土台を築くことが期待されている。尚、当セミナーは英語で行われ、通訳はつかない。   ■プログラム   1. フィリピン経済特区と観光の概要 by Dr. Max Maquito (Visiting Researcher, Sekiguchi GlobalResearch Association) 2. 観光と地域経済の展望 by Dr. Peter Lee U (Dean, School of Economics, UA&P) 3. ローカル・コミュニティーに活気を与えるマイクロ・クレジットの役割 by Prof. Bien Nito (Micro Credit Industry Analyst, School of Economics, UA&P) 4. 観光産業クラスターの観点からみるマイクロ・ファイナンス by Prof. Stan Padojinog (Toursim Industry Analyst, School of Economics, UA&P) 5. 質疑応答  
  • 2007.02.28

    第26回SGRAフォーラム報告 「東アジアにおける日本思想史―私たちの出会いと将来―」報告

    2007年2月17日(土)午後2時半より、東京国際フォーラムG棟610号室にて、SGRA「グロバール化と地球市民」研究チームが担当する第26回SGRAフォーラム「東アジアにおける日本思想史―私たちの出会いと将来」が開催された。この日は、ちょうど旧正月の除夜、日本でいう大晦日に当たるので、参加者を集めるのが大変だったが、42名が参加した。「日本思想史」がテーマのSGRAフォーラムは初めて。   フォーラムは、SGRA「グロバール化と地球市民」研究チームのメンバーである藍弘岳さん(東京大学大学院)の総合司会で始まった。SGRA研究会の今西代表による開会挨拶の後、日本思想史研究者である黒住真氏(東京大学総合文化研究科教授)が「日本思想史の<空白>を越えて」と題するゲスト・スピーチを行った。   黒住真氏は、まず「日本思想史」の定義を、「思想」、特に「倫理」思想史の角度から簡明に説明し、そして自分自身が精神医学・生命学から日本思想史、とくに日本思想史にある思想性・宗教性に関心を持つようになったきっかけを話した。さらに、黒住氏は自分の「日本思想史」との出会いについての紹介から、近代以来の「日本思想史」のあり方、近年の変化・傾向を話した。そこから、近代以来の、欧米中心主義的傾向と屈折した形でその裏がえしとなっている自国・自文化中心主義的傾向を紹介しつつ、そのような思想史の自国=東洋が実際は「空白」であることを説きつつ、それへの「問い」を発した。さらに、思想史研究の現場で活躍している中堅研究者の一員 として黒住氏は、1970年代ごろから20世紀末までの大きな思想史的背景・状況・問題の変化について分かり易く紹介した。これらの変化自体はいわば日本思想史研究としての現代日本思想(史)の言説そのものでもあろう。黒住氏は「空白」を克服するための多元性・複数性回復として思想史研究分野の70年代以来の変化を高度に評価しつつ、解体されすぎることによって生じた新たな「空白」にも注意深く注目した。さらに、黒住氏は、日本思想史における「空白」として「近代」において重要視されなかった日本独特の重要概念として「人間」「世間」「空気」などの概念を取り上げ、複数思想・宗教の習合としての日本思想の特徴を紹介した。同時に、黒住氏は、明治以後の倫理・道徳の国民国家化を倫理道徳の限界化=「空白」化として捉えた。最後に現在にだけでなく将来にもつながる日本思想史の可能性として、日本倫理思想史・宗教思想史と女性問題や環境問題、平和問題などとの対話の可能性を提示した。即ちそれは「空白」を乗り越えるための日本思想史の可能性でもある。   続いて、3名の方による研究報告が行われた。   最初に中国の東北師範大学歴史文化学院院長の韓東育氏が「東アジアにおける絡み合う思想史とその発見」という題の研究発表をした。韓氏は東京大学で学位を取得後帰国し、日本思想史・中国思想史を跨りながら研究してきた。今回は旧正月の休みを利用してわざわざフォーラムに参加するために来日したのである。韓氏は、自分と日本思想史の「出会い」を語るより、近代以来の「中国」と「日本思想史」との出会いについて語った。彼の紹介によれば、東アジアの思想史は本来相互に絡み合っているものであるが、近代まで中国側からはそれは無視されてきた。近年になって初めて、遅ればせながら、「発見」されたのである。そのような遅い「発見」はかつて「華夷秩 序」「朝貢システム」等によって形成された中国側の盲点によるものだと韓氏は指摘した。近代以降、東アジアの問題を解決する鍵は、表面的には、西ヨーロッパの「万国公法」「国民国家」等の原則にあったかのようであるが、しかし実際は、「盲点」=「縦=歴史」の問題を十分に解決しているとは言えない。開放的な視点でこのような「縦=歴史」の問題に直面し、「横=現実」の問題を適切に解決するようにと韓氏は東アジアの思想史の視点から説いた。そしてこのことは単なる地政の問題だけでなく、さらに、東アジアにおける絡み合う思想史の課題でもあると強調した。   次に中部大学人文学部助教授の趙寛子氏は、「『もののあわれ』を通じてみた『朝鮮』」という題の発表をした。趙氏は、中国への旅行をやめてわざわざ名古屋からフォーラムに参加してくれた。彼女は、最初は韓国現代文学を専攻したが、日本へ留学に来た初期に、本居宣長の思想を勉強した。現在、日韓のナショナリズムの研究などで活躍しているが、彼女が日本思想史を研究したきっかけは宣長とナショナリズム問題との関連に対する注目であった。宣長は、儒学を批判し、漢意によって汚れる以前の、古道における和(みやび、もののあわれ)を日本的なものとして提示していた。このような思想は、18世紀後半の町人・宣長が、日常の美的趣味として毎日、和歌を楽しんでいるなかで生まれた。ところが、似たような事情は前近代の朝鮮の文 化、芸術、文学にも見られる。宣長のように漢文を中心とする規範的な文化に抗し、「実情」(もののあわれ)を表現するような歌人の存在を、趙氏は朝鮮の文化・文学にも見出そうとした。美術や文学などの実例を挙げながら、同時代の朝鮮の平民文学・美術の多様性を紹介した。趙氏の発表は「儒教国としての朝鮮」という平面的な像を相対化しようとした試みである。   最後にSGRA研究員である林少陽氏が「越境の意味:私と日本思想史との出会いを手がかりに」という題目の発表をした。林氏は日本近代文学を専攻したが、かたわら中国の近代文学も研究してきた。彼自身の留学後における日本思想史との出会いを紹介し、そのような出会いによって、自分の研究分野にもたらした新しい可能性について紹介した。林氏の発表は主に批判的に近代的な人文社会科学の学的制度を捉え、そのような制度が西洋中心的と自国中心主義的なものを一体化する形でいろいろな知的可能性を閉鎖した、と紹介した。「近代」、近代的な「文学」「哲学」の概念を疑問視した発表でもある。   4人の講演と報告が終わった後、「グロバール化と地球市民」研究チームのメンバーである孫軍悦さん(東京大学大学院)が進行役を務め、パネルディスカッションが行われた。フロアからの質問に基づき活発な質疑応答が行われ、予定時間を20分ほどオーバーして、フォーラムは終了した。懇親会でも議論・交流が盛んであったことは印象的だった。   今回は、SGRA「グロバール化と地球市民」研究チームのチーフである高煕卓氏が急用で来られなかったが、高氏ははるばる韓国から色々な形で応援してくれた。若干準備時間が不足していたかもしれないし、タイミング的にも旧お正月のような時期と重なってしまった。今後これを避けるべきであろうが、ゲスト・スピーチの黒住真先生をはじめとする発表者の努力とSGRA研究会の今西代表や運営委員長の嶋津氏の強いサポートでフォーラムは無事に成功した。   「日本思想史」という、一見やや堅苦しいテーマであるが、黒住氏のゲスト・スビーチが残した「空白」を今後のフォーラムがいかに埋めてゆくべきなのか、大きな重みと可能性を感じている。いろいろなテーマそのものをSGRA「グロバール化と地球市民」研究チームに残してくれたような気がする。   (文責:SGRA「グロバール化と地球市民」研究チーム・サブチーフ 林少陽)   当日SGRA運営委員の足立憲彦さんと全振煥さんが写した写真は、ギャラリーをご覧ください。