-
2012.07.11
残念ながら、今年のチャイナフォーラムは、中国当局から開催大学への勧告により中止になりました。
関連エッセイ
-----------------------------------------
下記の通りフフホト北京で開催いたしますのでご案内します。参加ご希望の方は、SGRA事務局までご連絡ください。
★講演: 宮崎幸雄 「ボランティア概論」
【フフホトフォーラム】
日 時:2012 年9月17 日(月)午後4時半~6時半
*時間が変更になりましたのでご注意ください。
会 場:内モンゴル大学南校区教学主楼XF0201
【北京フォーラム】
日 時:2012 年9月19 日(金)午後4時~6時
会 場:北京外国語大学日本学研究センター多目的室
◆主催: 渥美国際交流奨学財団関口グローバル研究会(SGRA)
協力: 内モンゴル大学モンゴル学研究センター
北京外国語大学日本語学科
後援: 国際交流基金北京日本文化センター
◆フォーラムの趣旨:
SGRAチャイナ・フォーラムは、日本の民間人による公益活動を紹介するフォーラムを、北京をはじめとする中国各地の大学等で毎年開催しています。7回目の今回は公益財団法人日本YMCA同盟の宮崎幸雄氏を迎え、長年の体験に基づいたボランティア活動の意義ついてご講演いただきます。日中通訳付き。
◆講演要旨:
1)私のボランティア原体験 <ベトナム戦争とボランティア>
①自分で手を挙げて(挫折からの逃走)②こちらのNeeds (体育) とあちらのInterests(養豚)
③信頼なくして“いのち”なし(地雷原の村) ④解放農民の学校(自立・自助)
⑥プロ・ボランティアとして国際社会へ
2)ボランティア元年と云われてー神戸・淡路大震災によって広まるボランティア(観)
3)ボランティア活動の社会的効果(地域への愛着・仲間・達成感・充実感、・希望)
4)大災害被災地のボランティア活動と援助漬け被災者
中国人が見た東日本大震災救援活動と日本人が見た四川大震災救援活動
5)3 ・11若者の自意識と価値観の変化
国際社会の支援と同情・共感・一体感と死生観・共生観と人と人との絆
◆講師略歴:
現職:(公財)日本YMCA同盟名誉主事、学校法人アジア学院評議員、学校法人恵泉学園委員(公財)公益法人協会評議員、(社)青少年海外協力隊を育てる会顧問、(社)CISV理事、在日本救世軍本営監事
略歴:1933年大阪に生まれる。関西大学英文科専攻后米国に留学、青少年教育を学び日本YMCAに就職。1969年、世界YMCA難民救済事業ベトナム担当ディレクターとしてサイゴンに7年間在住し、ベトナム難民の定住と難民青少年の教育に当たる。8年間、スイス・ジュネーブにある世界YMCA同盟本部の難民事業の統括責任者として国連難民弁務官事務所(UNHCR)との連絡担当、米国民間団体との交渉業務を担当する。1985年帰国後日本YMCA同盟常務理事・総主事1998年3月定年退職。1998年よりロータリー米山記念奨学会事務局長/専務理事、アジア青少年団体協議会会長、国際協力機構(JICA)青年海外協力隊・技術専門委員/青年海外協力隊を育てる会副会長・顧問として現在に至る。
プログラムは下記よりダウンロードしていただけます。
日本語
中国語
-
2012.07.01
下記の通りモンゴル国ウランバートル市にてシンポジウムを開催いたしますので、論文、参加者を募集いたします。
【開催趣旨】
13世紀はじめ、チンギス・ハーンはモンゴル諸部を統一し、ユーラシアをまたぐモンゴル帝国を築きました。この偉業はチンギス・ハーンの子・孫に引きつがれ、モンゴル帝国も世界史上で最大の、空前絶後の世界帝国となりました。
チンギス・ハーンとモンゴル帝国について、かつてはさまざまな偏見、誤解がくりかえされ、歪曲、誹謗されていました。幸いにも、近年、とりわけ1990年代以降、チンギス・ハーンとモンゴル帝国に対する認識は変わりつづけ、チンギス・ハーンとモンゴル帝国に関する研究、論著も大きな成果を得て画期的な展開をみせてきました。
チンギス・ハーンは新しい歴史をつくりだし、モンゴル帝国はあらたな世界秩序を構築しました。チンギス・ハーンとその騎馬運団の挑戦は世界を揺るがしたと同時に、アフロ・ユーラシアの交流の道を大きくひらきました。モンゴル帝国時代、政治、軍事、商業、経済、貿易、科学、文化、宗教などはめざましく発展し、繁栄しました。これがあってからこそ、のちのヨーロッパのルネサンス、海洋進出があったのです。これらの歴史事実は、現在、世界的に承認されています。
しかし、チンギス・ハーンとモンゴル帝国は未だ謎に満ちており、解明されていない課題がいまだおおく残されています。チンギス・ハーン生誕850周年をむかえるこの機をとらえて、わたしたちは国際シンポジウム「チンギス・ハーンとモンゴル帝国――歴史・文化・遺産」を開催することにいたしました。
本シンポジウムは、近年の学界の最新の研究成果を総括し、歴史・文化・遺産の三つの視点からチンギス・ハーンとモンゴル帝国をアプローチし、広い視野から、特色ある議論を展開することを目的としています。
【日程】 2012 年7月24(火)~26日(木)
参加登録:7月24日(火)12:30~13:00
開会式・基調報告:7月24日(火)13:00~15:40
シンポジウム:7月24日(火)16:00~18:00時、
シンポジウム:7月25日(水) 9:00~12:00時、14:00~18:10時
草原への旅行:7月26日(木)
【会場】
モンゴル・日本人材開発センター 多目的室、セミナー室
(モンゴル国ウランバートル市)
【プログラム】
詳細は下記案内状をご覧ください。
案内状(日本語)
Invitation in English
-
2012.06.15
レポート62号本文
レポート62号表紙
第6 回日SGRAチャイナフォーラム講演録
「Sound Economy ~私がミナマタから学んだこと~」
2012年6月15日発行
<もくじ・要旨>
【講演】Sound Economy (健全な経済と社会)~私がミナマタから学んだこと~
柳田耕一(財団法人水俣病センター相思社初代事務局長)
水俣病は20世紀半ばに発生した世界で知られる環境問題の一つです。それは日本の南部の漁村で発生しました。当初、被害者は劇症型の病像を呈していたため「奇病」として恐れられ、隔離されるなどの酷い仕打ちを受けました。折から日本は戦後の復興期の入り口にあり、僻遠の地に救済の手が差し伸べられるまでには長い時間がかかりました。 公式発見から半世紀経った現在でも、抜本的な治療法は無く、被害の全体像の解明は進まず、地域経済は疲弊したままです。一方で水銀による環境汚染は世界中に広がり、酷似した症状をもつ人々も出現し、Minamata Diseaseは世界共通語となっています。現在では微量水銀の長期摂取による健康影響に世界の関心は向かっています。 もう一つの側面として関心がもたれているのは、社会経済的分野です。開発重視、科学重視、利益重視、人権無視の経済運営は、生活の基盤である環境を歪め傷つけ最後には地域社会そのものを持続不可能にしてしまいますが、その象徴として水俣病事件を捉えることもできます。
【報告】内モンゴル草原の生態系 ~鉱山採掘がもたらしている生態系破壊と環境汚染問題について~
郭 偉(内モンゴル大学環境資源学院副教授)
-
2012.06.13
2012年5月19日、国立台湾大学法律学院の国際会議場で第2回日台フォーラム「東アジアにおける企業法制の継受およびグローバル化の影響」が開催された。今回のフォーラムの趣旨は法制史の観点から、19世紀末に東アジア各国の企業法制がどのように西洋法制を継受したか、そして20世紀を通して現在に至るまで、これらの企業法制がグローバル化の影響を受けながら、どのように変容してきたかということを明らかにするもので、当日の参加者は約150名であった。
開幕式では、国立台湾大学法律学院・蔡明誠院長、渥美国際交流財団・渥美伊都子理事長、台湾法学会・王泰升理事長が開幕のスピーチをしてくださった。次に、慶応義塾大学法学部・宮島司教授が「会社法はどこへ」という題名で基調講演を行った。宮島教授は日本会社法について、明治期の商法典から2006年実施した新会社法までを4つの時期に分けてそれぞれの変遷を丁寧に説明し、各時期の改正では大陸法系、あるいは英米法系の影響をどのように受けたかということをも紹介した。また、近時、日本会社法における株式会社の機関設計ないし企業統治の規範内容に対して鋭い見解を示した。その後、元台湾司法院院長・中原大学講座教授・頼英照教授が「社外取締役制度から見た外国法の移植」という題名で基調講演を行った。頼英照教授は最初に台湾会社法の沿革を詳細に紹介し、2006年、台湾証券取引法がアメリカ法を模倣して導入してきた社外取締役制度を例として、外国法制の移植の善し悪しに言及した。
第1セッションは、国立政治大学法学院・頼源河教授が座長を担当し、「西洋法の継受期のアジア各国における企業法制」というテーマで3名の学者が報告を行った。東洋大学法学部第一部・後藤武秀教授は「台湾における西洋近代法の受容と慣習法の調整:台湾の伝統的会社組織である合股を例として」という題名で報告を行った。後藤教授は日本統治時代の台湾においては、西洋法の継受国である日本が統治しているとしても、最も盛んだった企業形態は家族経営からなる合股であったことを紹介した。合股は現代法の観点から言うと、組合という概念に類似している。このような特殊の組織形態は台湾独自の慣習法として樹立している。韓国国立忠南大学法学専門大学院・李孝慶准教授は「韓国における企業法制の継受と改革」という題名で報告を行った。李准教授は日本統治時代の韓国において、1912年朝鮮民事令により日本商法が適用され、1948年韓国政府樹立以降、1962年までこの商法が引き続き適用されてきたことを紹介した。これに加えて、韓国の商法はその後も何度も改正されたにもかかわらず、内容的には日本法をモデルにしたものが依然として多く、日本法から強い影響を受けたと言えよう。国立台湾大学法律学院・蔡英欣助理教授は「法律移植と既存規範との衝突、調和:日本商法及び20世紀初期の中国会社法制を中心として」という題名で報告を行った。蔡助理教授は日本商法と中国会社法制が制定された際に、両者が同じ課題、すなわち慣習法を無視し専ら西洋法を継受したことに対して経済界が猛反発したという課題に直面したことに言及し、国が外国法を継受する場合には自らの慣習を重視する必要性を強調した。
第2セッションは、常在国際法律事務所・林秋琴パートナーが座長を担当し、「第二次世界大戦後のアジア各国における企業法制」というテーマで3名の学者が報告を行った。慶應義塾大学法務研究科・高田晴仁教授は「第二次大戦後の日本の企業法制:1950年商法改正を中心として」という題名で報告を行った。第二次大戦後、敗戦後の日本はGHQの指示を受けて、法制度を大幅に改革した。日本商法もその中の一つであった。1950年商法改正により、アメリカ法をモデルとして、授権資本制度や株式会社の機関権限の新たな配分といった改正が行われ、今日の日本会社法の基礎になったといえよう。ただ、このような改正内容は日本の風土に合わないものが少なくないと強調した。国立台湾大学法律学院・黄銘傑教授は「東アジア各国における競争法の継受」という題名で報告を行った。黄教授は日本、台湾、韓国と中国など東アジア各国が現代競争法をいつ、またどのように制定したかを紹介した。周知のように現代の競争法の原型は1890年アメリカのシャーマ法である。東アジア各国は競争文化を欠いたが故に、アメリカの競争法を継受した際に異なった規範モデルを制定したということを指摘した。香港大学法学院・呉世学教授は「第二次世界大戦後の香港会社法の展開」という題名で報告を行った。呉教授は香港の会社法について、従来イギリス法の影響を受けた一方、近時、自らのモデルを模索していると指摘した。また、香港の行政機関の統計データにより、近時、香港で会社設立の数は飛躍的に増加していることを紹介した。
第3セッションは、萬國法律事務所・顧立雄パートナーが座長を担当し、「グローバル化時代のアジア各国における企業法制」というテーマで3名の学者が報告を行った。まず、中国人民大学法学院・楊東准教授は「全球化時代中国会社法の改革と整備」という題名で、中国会社法の形成ないし変遷を紹介した。中国は、1993年に国有企業を改革するために初めて会社法を公布してから、近時、国有企業ではなく一般企業を視野に入れ、企業の株主保護を重視してさまざまな改革を行ったと説明した。明治学院大学法学院・来住野究教授は「日本における近時の会社法改正と企業統治のあり方」という題名で、近時、日本の会社法において企業統治のあり方を検討した。2002年日本商法改正により、アメリカ型の委員会設置会社が導入されたが、現在に至っても、かかる新制度を利用した企業の数はほんのわずかである。このような改正結果をいかに評価するか、と問題を投げかけた。国立台湾大学法律学院・邵慶平准教授は「根本的な会社民主観念:グローバリゼーションの下での台湾会社法の堅持と示唆」という題名で、台湾会社法は長年、何度も改正されてきたが、アメリカ法のように取締役会優位主義を採用するようになった。取締役会優位主義を採用しているといっても、いくつかの近時の判決から、今の時代でも株主権は依然として相当に重視されているという動向が見えると強調した。
オープンフォーラムは、国立台湾大学法律学院・王文宇教授が座長を担当し、第3セッションで報告した楊東准教授(中国)、来住野究教授(日本)、邵慶平准教授(台湾)及び呉世学教授(香港)がパネリストとして参加者からの質問を受け、活発な議論を行った。最後に、今西淳子常務理事および王文宇教授が閉幕スピーチを行い、フォーラムは成功裡に終了した。
(文責:蔡英欣)
フォーラムの写真(1)
フォーラムの写真(2)
アンケート集計
(基調講演)頼英照「社外取締役制度から見た外国法の移植」日本語訳
-
2012.06.10
SGRAレポート61号本文
SGRAレポート61号表紙
第41 回日SGRAフォーラムin蓼科
講演録 「東アジア共同体の現状と展望」
2012年6月18日発行
<もくじ> 【基調講演1】東アジア共同体形成における「非伝統的安全保障」
恒川惠市(政策研究大学院大学副学長)
【基調講演2】ASEANと東アジア共同体
黒柳米司(大東文化大学法学部教授)
【発表1】韓国と東アジア共同体
朴 栄濬(韓国国防大学校安全保障大学院副教授)
【発表2】中国の外交戦略と「東アジア共同体」
劉 傑(早稲田大学社会科学部教授)
【発表3】台湾・香港抜きの「東アジア共同体」は成立するのか?~脱「中心」主義で安定した共同体を~
林 泉忠(琉球大学法文学部准教授)
【発表4】モンゴルと東アジア共同体~資源開発とモンゴルの安全保障~
ブレンサイン(滋賀県立大学人間文化学部准教授)
【発表5】北朝鮮と東アジア共同体~北朝鮮とどのように付き合うのか~
李 成日(韓国東西大学校国際学部助教授)
【パネルディスカッション】東アジア共同体の現状と展望
進行:南 基正(ソウル大学日本研究所HK教授)
パネリスト:上記講演者
-
2012.06.06
下記の通り長野県蓼科にて第44回SGRAフォーラムを開催します。参加ご希望の方は、事前にお名前・ご所属・緊急連絡先をSGRA事務局宛ご連絡ください。SGRAフォーラムはどなたにも参加いただけますので、ご関心をお持ちの皆様にご宣伝いただきますようお願い申し上げます。また宿泊の手配が必要な方はご相談ください。
日時:2012年7月7日(土)10:00~17:00 その後懇親会
会場:東京商工会議所蓼科フォーラム研修室A
〒391-0213 長野県茅野市豊平チェルトの森
電話 0266-71-6600
申込み・問合せ:SGRA事務局
電話:03-3943-7612
ファックス:03-3943-1512
Email:
[email protected]
参加費: 無料
【フォーラムの趣旨】
SGRA「人材育成」研究チームが担当するフォーラム。
21世紀の幕開けとともに各国で急激に普及し始めたインターネットと携帯電話などの情報通信手段は、今では私達の生活の中で欠かせない存在となりつつある。しかもその変化のスピードがますます速まり、膨大な量の情報が氾濫している。こうした背景の中で、知識の暗記よりも情報通信技術の習得とともに世界につながるネットワークとその中に集まる知識と情報を活用できる能力が重要視され、次世代を担う人づくりを目指す学校教育のあり方にも大きな変化が迫られている。
新しい時代への対応を図るべく、アメリカ、イギリス、韓国、シンガポールなどでは90年代の後半から教育情報化政策が推進され始め、近年には国家目標に設定され、より本格的な導入に向けた動きが具体化している。日本でも1999年に全公立小中高校がインターネットに接続でき、全公立校教員がコンピュータの活用能力を身につけられるようにする「ミレニアム・プロジェクト」がスタートし、2010年からは総務省と文部科学省の推進のもと2020年までにフューチャースクールの全国展開を目指す事業も始動した。一方、新しい情報通信技術が次々開発されるにつれ、機械や機器には決して置き換えられないものがあることがますます鮮明になり、人間関係の大切さがより強調される中で生身の人間をもとにしたコミュニケーション能力が果たしてフューチャースクールで育成されうるかという懸念の声もある。
本フォーラムにおいては、世界最先端をいく韓国とシンガポールを中心にそれぞれの国の経験と現状について議論を交わす場を提供し、学びのイノベーションに関する理解と交流を深めつつ、フューチャースクールの今後の方向性について考えていきたい。
【プログラム】
詳細はここををご覧ください。
【基調講演1】次世代を担う人づくりとは
赤堀 侃司(白鴎大学教育学部長)
【基調講演2】日本のICT教育の現状と今後
影戸誠(日本福祉大学教授)
【発表1】韓国のフューチャースクール構想
曺圭福(韓国教育学術情報院研究員)
【発表2】シンガポールの教育におけるICT活用の動向と課題について
シム チュンキャット(日本大学非常勤講師)
【発表3】ICT機器を利活用した学習活動
石澤紀雄(山形県寒河江市立高松小学校)
【パネルディスカッション】
-
2012.03.07
金 雄煕 「第11回日韓アジア未来フォーラムを終えて」
2012年2月25日、高麗大学校経営館で「東アジアにおける原子力安全とエネルギー問題」というテーマで第11回日韓アジア未来フォーラムが開催された。昨年3月の福島原発事故後、ほぼ1年が過ぎようとする時点で、「本場」では真正面から取り上げにくいということと、東アジア(協力)という視点も必要という判断から、先ずはソウルで議論してみることになった。 今回のフォーラムの講師の顔ぶれは「大物」が多く、また全く違う立場から原発問題を考えているという特徴があった。
基調講演者の金栄枰(キム・ヨンピョン)先生は長年韓国で原子力問題を研究され、原子力政策フォーラム理事長を務める方である。役職からも予想されるように、明らかに原子力の必要性と安全性を強調する「教科書的」な議論を展開した。 これに対し、多彩な経験をお持ちの田尾陽一さんは、「福島再生」という観点から、除染作業など現場での再生努力の一部を紹介した。田尾さんとはフォーラムの一週間ほど前、東京でお会いする機会があったが、その時、孫正義さんを「孫くん」と呼んでいたことと、美味しい「福島産放射能マツタケ」の話に驚いた。田尾さんの議論がちょっと浮いてしまうかもしれないという心配もあったが、とても「新鮮な」議論であり、オーディエンスからの受けもよく、見事に当った結果となった。
全鎮浩(チョン・ジンホ)さんは福島原発事故以来、韓国で最も忙しくなった国際政治学者の一人で、中立的観点から東アジアにおける原子力安全協力の重要性を強調した。 最後のスピカーの薬師寺泰蔵先生は「科学技術と国家の勢い」という文明史的観点から「坂の上の雲」としての原発の必要性について力説した。田尾さんとは長いお付き合いのようで酒席などでは議論がよく噛み合うような感じだったが、原子力問題となると、目には見えないものの、相当隔たりがあるような気がした。
このフォーラムの創立メンバーの李元徳(イ・ウォンドク)さんの司会で行われたパネル討論では、ウクライナのオリガ・ホメンコさんによる貴重なチェルノブイリ体験談や経済学者の洪鍾豪(ホン・ジョンホ)さんのコンパクトな提案を聞くことができた。時間が限られていたせいか、案外激論もなく閉会した。
食事会では、奈良の今西酒造「春鹿」で「一気飲みラブショット乾杯」があったといわれている。しかし、残念なことにその場に遅れて到着したため直接確認することはできなかった。「春鹿」は2009年度の第9回慶州フォーラムで奈良から空輸してきた一升瓶が目の前で割れて消えてしまう大事件があって以来、日韓アジア未来フォーラムの公式乾杯酒となっている。未来人力研究院の李鎮奎(リ・ジンギュ)先生が法事で早く帰られた関係で飲みが足りなかったせいか、場所を変え宿泊先の有名なドイツビール屋でもう一杯をしたあと、第11回フォーラムは終了した。
韓国側主催の時にいつも感じることだが、私の予想からしては「満員御礼」に近いレベルの(李先生に動員されたかもしれない)聴衆の数に驚いた。終了まで席を外すことなく真摯に講演や議論を一生懸命聞いてくれた学生諸君にこの場を借りて感謝したい。当たり前のことだが、このフォーラムを形にしてくれた今西さん、石井さん、金キョンテさん、そして忙しいところ参加してくれた韓国SGRAの皆さんにも感謝しなければならない。とくに素敵な食堂に案内してくれた幹事の韓京子(ハン・ギョンジャ)さん、本当にお疲れ様でした。
最後にちょっとした心残りと次回フォーラムのご案内。異なる立場からの素晴らしい講演のわりには立ち入った議論に踏み込めなかった限界は残したものの、いつものように、本当に、形式、内容、そして番外の三拍子が揃った素晴らしいフォーラムであったと思う。次回フォーラムは今回のフォーラムのセカンド・ラウンドとして福島でという動きがあるということにご注目!ぜひふるって参加してください。
(仁荷大学国際通商学部教授)
当日の写真(金範洙撮影)
2012年3月7日配信
-
2011.11.30
2011年10月29日(土)午前9時半から午後5時半まで、SGRA、北九州市立大学、早稲田大学及び日本建築学会アジア地域における建築環境とエネルギー消費検討小委員会が共同で第42回SGRAフォーラムを開催した。本フォーラムでは、2名の先生方の基調講演に続いて、日本学術振興会若手研究者交流支援事業により北九州市立大学が招聘したアジアの若手研究者が、各国の都市・建築省エネルギーの現状及び政策について発表した。
SGRA代表今西淳子氏、北九州市立大学建築都市低炭素化技術開発センター長黒木荘一郎氏、日本建築学会アジア地域における建築環境とエネルギー消費検討小委員会主査張晴原氏がそれぞれ挨拶を行い、省エネルギー事業とアジア地域の習慣・文化を配慮した対応と、正確な情報提供の重要さを強調した。
最初に、(株)住環境計画研究所代表取締役所長中上英俊氏が「アジアにおける省エネルギー政策の重要性」と題した基調講演を行った。中上氏は東南アジア諸国(タイ、インド、ベトナム)におけるエネルギー消費の実態と見通し、また省エネルギー法を始めとする各国の省エネルギー政策の現状について報告し、それらの実態に基づいて、今後のアジアの省エネルギーのあるべき姿、日本の役割などを指摘した。
続いて、早稲田大学准教授高口洋人氏が「カンボジアの建築における成長とエネルギー消費に関する一考察」という基調講演を行った。高口氏は2009 年からカンボジアでエネルギー消費量やライフスタイルの調査を続けている。同氏は、東南アジアの新興国が、日本のような大量生産・大量消費社会を経ずに、いま何をすればサステイナブル社会に軟着陸できるのかという点について議論を広げ、カンボジアにおけるエネルギー消費実態を見ながら、どのような住宅やエネルギーシステムを提供すべきなのか、またそこで先進国はどのような役割を果たすべきか提案した。
午後の研究報告では、5ヶ国からの7名の若手研究者がそれぞれ国の省エネルギー事情及び取り組みについて報告した。インドネシアのBudi Faisal博士及びBeta Paramita氏は、バンドンの都市構造と環境エネルギーの関係について報告した。フィリピンからのStephanie N. Gille氏とJosefina S. De Asis氏はフィリピンのエネルギー消費現状及びマニラを中心とした省エネルギー及びグリーン建築の取り組みについて紹介した。インドのNicholas Iyadura氏はインドが世界で最も少なくエネルギーを消費し、最も少なくCO2を排出していることを説明し、先進国のような大量消費・大量排出の社会構造になると持続が不可能になるので、持続可能な発展はインドにとって重要な課題であることを力説した。タイのSuapphong Kritsanawonghon氏はタイのエネルギー実態及び省エネルギーの政策について報告した。オーストラリアのAndrew Irelan氏はオーストラリアにおける省エネルギー・環境分野の主な二つ制度であるNABERSとGREENSTARを紹介し、省エネルギー政策に関して、市場の力の重要性を強調した。
パネルディスカッションでは、Max Maquito博士が巧みに「エネルギーと環境」というフォーラムのテーマを、彼の専門である「市場と経済」に変えてしまった。そのおかげで、エネルギーと環境だけに留まらず、より広い話題を議論することができた。
参加してくださった皆さん、誠にありがとうございました。
フォーラムの写真
今西勇人撮影
ルィン撮影
(文責:高偉俊)
2011年11月30日撮影
-
2011.11.23
SGRAでは、新事業「アジア未来会議」を立ち上げました。アジア未来会議は、日本に留学し現在世界各地の大学等で教鞭をとっていらっしゃる皆さん、その指導を受けた若手研究者の皆さん、研究所や企業等で研究や活動を続けていらっしゃる皆さん、そして日本の大学院で研究を続けている留学生の皆さん、国際交流に関心のある日本の研究者の皆さんに、交流・発表の場を提供し、アジアの未来について議論していただくことを目的としています。
第一回は2013年3月に中国上海市で「地域協力の可能性」をテーマに開催し、その後隔年度ごとに日本を含むアジアの各都市で開催する予定で、第二回はインドネシア開催を検討しています。アジア未来会議では、自然科学、社会科学、人文科学を包括する広範なテーマを設定し、国際的かつ学際的に研究を続けている中堅・若手研究者の方々に参加していただきたいと思っております。勿論オブザーバー参加も大歓迎で、日本留学者の同窓会、あるいはネットワーク構築の場としてもご利用いただきたいと思います。
このたび、発表論文の募集を始めましたので、奮ってご応募くださいますようお願いいたします。また、お知り合いの方々へのご紹介、皆様が所属するメーリングリスト等でのご宣伝を、よろしくお願い申し上げます。
詳細はアジア未来会議ホームページ(日本語、英語、中国語対応)をご覧ください。
第1回アジア未来会議☆発表論文募集
【開催日】2013年3月8日(金)~10日(日)
【会 場】中国上海市(同済大学、上海財経大学、復旦大学)
◇自然科学シンポジウム「環境エネルギー技術の地域協力」 テーマ:環境、エネルギー 言 語:日本語、英語、中国語
◇社会科学シンポジウム「アジアにおける地域協力」 テーマ:政治と外交、経済発展と開発、企業経営管理、教育と人材育成、その他 言 語:日本語、英語、中国語
◇人文科学シンポジウム「アジアにおける地域交流」 テーマ:言語・言語教育、文学・文化・芸術、歴史、社会・生活、その他 言 語:日本語
発表論文を下記の要領で投稿してください。
1. アジア未来会議のホームページの「Registration」から登録してください。一度登録すればIDとパスワードにより何度でもアクセスし登録情報を改訂することができます。
2. 発表要旨を、下記の要領でアジア未来会議ウェブ上のご自分のページに投稿してください。
◇自然科学:英語(250語以内)締め切り:2012年3月31日(土) ◇社会科学:英語(250語以内)締め切り:2012年3月31日(土) ◇人文科学:日本語(600字以内)締め切り:2012年3月31日(土)
3. 学術委員会による審査の結果を、2012年4月30日(月)までにEメールでお知らせします。
4. 合格通知を受け取ったら、論文の原稿(フルペーパー:A4判で最大10ページ)を、下記の要領で、アジア未来会議ウェブ上のご自分のページに投稿してください。
◇自然科学:英語、日本語、または中国語 締め切り:2012年8月31日(金) ◇社会科学:英語、日本語、または中国語 締め切り:2012年12月31日(月) ◇人文科学:日本語 締め切り:2012年12月31日(月)
5. 学術委員会による最終審査の結果を、2013年1月31日(木)までにEメールでお知らせします。
その他
◇優秀論文執筆者は参加費を免除します。 ◇優秀論文は、後日SGRAから発行する論文集に掲載します。論文執筆者には謹呈します。
◇申請に基づく参加費補助があります。
☆☆☆皆様のご参加をお待ちしています☆☆☆
-
2011.10.26
孫建軍「第6回チャイナ・フォーラムin 北京」報告
2011年9月23日、第6回SGRAチャイナ・フォーラムin北京が、国際交流基金北京日本文化センター(以下、日本文化センター)で開催されました。
今回のテーマは「Sound Economy-私がミナマタから学んだこと-」です。今年はより多くの社会人の参加を得るため、日本文化センターのご好意を得て、初めて大学のキャンパス以外に会場を移し、当会場で行われました。SGRA、日本文化センターの関係者のほか、大学生はもちろん、会社員、NGO関係者、日本大使館、中国外交部の外交官など40名近くが参加しました。
本日の講師の(財)水俣病センター相思社初代事務局長の柳田耕一氏は、まず10分ほどの映画『水俣病 その20年』を流しました。水俣病に苦しむ患者の衝撃的な映像にみんなが息を呑みました。そして、柳田先生は歴史を軸に、水俣、加害企業による公害の拡大、水俣病の深刻化及び企業や政府との戦いなど、世界的に水俣病が有名になるまでのことを、写真や資料を交えながら語ってくださいました。最後に、あらゆるMinamata Diseaseを防げる社会作りの大切さを訴えました。
社会人が多かっただけに、質疑応答では、質問の角度や中味の深さが一味違っていました。食品会社の社員からは中国で問題となっている「地溝油」(下水や生ごみから回収した油)の危害、NGOの職員からは有機水銀を埋立地に封じ込める具体的な方法、外交官からは水俣からチェルノブイリ、そして福島といった人的災害における構造的な背景など、どれもSGRAチャイナ・フォーラムの新しいテーマとして取り上げることもできるような内容の濃いものでした。
講演の最後に、司会を担当していた私は、過去のSGRAチャイナ・フォーラムを振り返って、社会の深刻な問題を前に「自分は何をすればいいか」という参加者から講師への共通の質問について、感想を述べました。深刻な社会問題に積極的に関わるには3つの「き」、つまり「勇気」「根気」「知識」が必要です。水俣病のために働く柳田耕一先生にしても、植林の高見邦雄先生にしても、アジア学生文化協会の工藤正司先生にしても、TABLE FOR TWOの近藤正晃ジェームス先生にしても、チャイナ・フォーラムの講師の方々はいずれも、これらの3つの要素を備えた方です。そして、若者として社会的責任を全うするために3要素を備えてほしいと呼びかけました。
今年のチャイナ・フォーラムのもうひとつの新しい試みとして、同じ日の午前中に北京大学日本言語文化学部の2年生を対象に、ワークショップが行われました。1年しか日本語を習っていないのですが、柳田先生のお話を真剣に聞く学生の表情は今までの授業風景にないものがありました。学生が寄せた感想文では、写真や映像のインパクトが語られ、中国の現状と結びつけながら、命の重さ、政府の責任、集団主義などについて言及する内容が多かったことから、今年のテーマも、例年と同じように、中国人学生に深く考える材料を提供できたようです。
(北京大学日本言語文化学部副教授)
☆北京大学の学生さんの感想文
☆北京フォーラムの写真(劉健撮影)
☆北京とフフホトのフォーラムの写真(石井撮影)
ネメフジャルガル「第6回チャイナ・フォーラムin フフホト」報告
第6回SGRAチャイナ・フォーラムin フフホトは、9月26日(月)内モンゴル大学学術交流センターで開催されました。同フォーラムには、内モンゴル大学、内モンゴル農業大学、内モンゴル師範大学、内モンゴル工業大学、内モンゴル医学院からの教師や生徒および内モンゴル草原環境保護促進会などNGO関係者を含めて約130人が参加しました。私が司会を務め、内モンゴル大学副学長・モンゴル学研究センター主任のチメドドルジ教授が開会の挨拶をしました。チメドドルジ教授は、SGRAチャイナ・フォーラムが2年連続で内モンゴル大学で開催されていることに対しSGRAに謝意を表し、工業化が急速に進んでいる今日の中国、特に地下資源開発によって経済成長を支えている内モンゴルは、環境問題において日本を含む先進国の経験から学ぶべきことが多いと指摘しました。SGRA代表の今西淳子さんは挨拶をし、SGRAの設立経緯、活動の趣旨について紹介しました。
今回のフォーラムは、特定非営利活動法人地球緑化の会副会長兼事務局長、モンゴル国ダルハン農業大学名誉教授、元(財)水俣病センター相思社事務局長の柳田耕一氏を迎え、グローバルな視点から、水俣でおきた人類史的な事件の事実と意味についてご講演いただきました。
水俣病は20世紀中期に発生した世界中でよく知られている環境問題であり、化学工場の廃液が海に流されて発生した公害病です。柳田先生は、病気の発生から行政の対応、市民活動の広がり、現在残されている課題などを中心に水俣病に関して詳しく紹介しました。公式発見から半世紀経った現在でも、抜本的な治療法は無く、被害の全体像の解明は進まず、地域経済は疲弊したままです。一方、水銀による環境汚染は世界中に広がり、酷似した症状をもつ人々も出現し、現在では微量水銀の長期摂取による健康影響に世界の関心は向かっているようです。
内モンゴル大学環境と資源学院の郭偉副教授が、柳田先生の講演に対してコメントをしました。郭先生は環境学の視点から柳田先生たちの活動を高く評価し、環境問題は人類共通の問題であり、若い学生たちが自ら環境保護に取り組むよう呼びかけました。また、内モンゴルの草原地帯における地下資源開発に伴う環境汚染問題を紹介しました。講演後柳田先生は、会場からの質問に対し丁寧に答えました。SGRA研究員で内モンゴル大学OB、滋賀県立大学准教授のブレンサイン先生が閉会の挨拶をしました。フォーラムの通訳はSGRA研究員、北京大学日本言語文化学部副教授の孫建軍先生が担当してくださいました。
(内モンゴル大学モンゴル学研究センター研究員)
☆フフホト・フォーラムの報告(中文)