SGRAの活動

  • 2018.04.20

    第8回日台アジア未来フォーラム・東呉大学マンガ・アニメ文化国際シンポジウム「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性」へのお誘い

    下記の通り第8回日台アジア未来フォーラム 並びに 東呉大学マンガ・アニメ文化国際シンポジウムを台北市で開催します。参加ご希望の方はSGRA事務局へご連絡ください。 テーマ:「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性:コミュニケーションツールとして共有・共感する映像文化論から学際的なメディアコンテンツ学の構築に向けて」   開催日:2018年5月25日(金)午後3時~26日(土)終日 会場:東呉大学外双渓キャンパス第一教学研究棟普仁堂(大講堂)   主催:東呉大学日本語学科、東呉大学図書館、(公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA) 共催:東呉大学英文学科、東呉大学教養教育センター 後援助成者:中華民国教育部、(公財)国際交流基金、(公財)日本台湾交流協会、中鹿營造股份有限公司、中華民国三三企業交流會、台日商務交流協進會、台灣住友商事股份有限公司、全日本空輸股份有限公司台北支店、ケミカルグラウト株式会社、みずほ銀行 台北支店、Kajima Overseas Asia Pte. Ltd. 名義賛助者:台湾日本人会、台北市日本工商会   講演会ご案内HP イベントご案内HP   ●日本語申込み   ●問い合わせ ※日本:SGRA事務局 [email protected] ※台湾:東呉大学日文系 [email protected]     ●プログラム   2018年5月25日(金) 第一部 (15:00~受付開始) 【特別講演】 15:30~17:20 ✽弘兼憲史先生(漫画家、『島耕作』シリーズ作者) テーマ:「漫画から学んできたこと」   2018年5月26日(土) 第二部(8:00~受付開始) ◆招請講演 午前の部 8:40~10:55   【招請講演 1 】8:40~9:25 ✽表智之 (日本北九州市漫画ミュージアム専門研究員) テーマ:「研究者のネットワーク化とマンガ研究の進展-学会・地域・ミュージアム-」   【招請講演 2 】9:25~10:10 ✽宣政佑 (韓国 Comicpop Entertainment President) テーマ:「韓国ではアジア漫画をどう見てきたか 」   【招請講演 3 】10:10~10:55 ✽秦 剛 (北京外国語大学北京日本学研究センター教授) テーマ:「戦後日本最初の長編アニメーション『白蛇伝』における「中国」表象と「東洋」幻想」   【パネル ディスカッション】 11:10~12:10 テーマ:「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性」 司会者:今西淳子 (渥美国際交流財団常務理事) パネリスト1:表智之 (北九州市漫画ミュージアム専門研究員) パネリスト2:宣政佑 (Comicpop Entertainment President) パネリスト3:秦 剛 (北京外国語大学北京日本学研究センター教授) パネリスト4:梁世佑 (U-ACG/旭傳媒科技股份有限公司創立者) パネリスト5:黃瀛洲 (台灣動漫畫評論團體傻呼嚕同盟召集人) パネリスト6:住田哲郎 (京都精華大学専任講師)   ◆招請講演 午後の部 13:20~14:05   【招請講演 4 】 A会場 ✽梁世佑(台湾U-ACG/旭傳媒科技股份有限公司創辦人) テーマ:「台湾のオタクにみる日本アニメの受容と変化:作品の鑑賞、収集と行動」   【招請講演 5 】 B会場 ✽黄瀛洲(台灣動漫畫評論團體「傻呼嚕同盟」召集人) テーマ:「未来を見据えた台湾アニメの発展」   ◆論文発表 14:10~17:10 各会場にて3本ずつ計18本論文発表を予定 【第1セクション】14:10~15:30  A1/B1/C1 会場にて論文発表 【第2セクション】15:50~17:10  A2/B2/C2 会場にて論文発表   【第1セクション】14:10~15:30   A-1会場 1. 発表者:呂佳蓉(台灣大學語言學研究所専任助理教授) テーマ:「ACG文化による言語の伝播と受容」(日本語発表) 2. 発表者:住田哲郎(京都精華大学専任講師) テーマ:「文字の違いに見るマンガ翻訳の不可能性」(日本語発表) 3. 発表者:林蔚榕(東吳大学日本語文学科専任助理教授) テーマ:「日本のマンガにみるプロフェッショナルの態度と行動特性-料理マンガを中心に-」(日本語発表)   B-1会場 1. 発表者:沈美雪(中國文化大學日本語文學系専任副教授) テーマ:「日本のマンガ・アニメにおける「時間遡行」作品の構造分析―死亡、再生、ループを手掛かりにー」(中国語発表) 2. 発表者:周文鵬(月鳥齋圖文創意工作室責任者、淡江大學中文系兼任助理教授、中原大學通識中心兼任助理教授) テーマ:「デバイス変奏曲:縦スクロール漫画の原理と趨勢」(中国語発表) 3. 発表者:田昊(東呉大学中国語科博士後期課程在学) テーマ:「浦沢直樹漫画芸術におけるフィルムセンスの創造力について」(中国語発表)   C-1会場 1. 発表者:林曉淳(世新大学日本語文学科専任助理教授) テーマ:「『高橋留美子劇場』から見る日本の家族像」(中国語発表) 2. 招待発表者:DALE, Sonja(一橋大学社会学部特任講師) テーマ:「2Dのような3D―日本のアニメ業界におけるCG業界へのシフト―」(日本語発表) 3. 発表者:黄璽宇(識御者知識行銷創辦人) テーマ:「個人の存在と集団の存在―トマス・アクイナス思想から『聲の形』における生きづらさを論じる―」(中国語発表)   【第2セクション】15:50~17:10   A-2会場 1. 発表者:小高裕次(文藻外国語大学日本語学科専任助理教授) テーマ:「ライトノベルのアニメ化に際する諸要素の増減について-『涼宮ハルヒの憂鬱』を例に」(日本語発表) 2. 発表者:永井隆之(国立政治大学日本語文学科専任助理教授) テーマ:「漫画『ONEPIECE』の組織論 海賊団「麦わらの一味」の性格」(日本語発表) 3. 招待発表者:李偉煌(靜宜大學日本語文學系副教授兼学科主任) テーマ:「日本のアニメを取り入れたランゲージェクスチェンジ授業の試み」(日本語発表)   B-2会場 1.発表者:李岩楓(京都精華大学博士後期課程マンガ研究科理論 在学) テーマ:「オノマトペ─日本マンガにおける図面表現及び中国マンガへの応用の可能性」(中国語発表) 2.発表者:陳 龑(東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学表象文化論コース博士課程) テーマ:「国境を超える連携―中国初期アニメーション史からみたイマドキのアニメ—ション生産トレンド」(中国語発表) 3.発表者:徐錦成(国立高雄応用科技大学文化創意産業科准教授) テーマ:「野球とマンガの親和性―中華職業棒球大聯盟の二度にわたる野球マンガへの干渉を中心に―」(中国語発表)   C-2会場 1. 発表者:周惠玲(華梵大學哲學系傳播學程兼任助理教授) テーマ:「ストーリーマンガと児童文学の競合関係―『不思議の国のアリス』を元にしたマンガを例に―」(中国語発表) 2. 発表者:呉昀融(東京大學東洋文化研究所客座研究員/國立台灣大學政治學研究所博士生) テーマ:「『NARUTO -ナルト-』から核武装論を再検討する」(中国語発表) 3. 発表者:詹宜穎(政治大學中國文學系博士生兼任講師) テーマ:「混血の葛藤、その狂気と輝き―『東京喰種トーキョーグール』から見た混血種のアイデンティティにおける調和と超越―」(中国語発表)   ●フォーラムの趣旨:   第8回日台アジア未来フォーラムでは、全世界規模に広がったマンガ・アニメ文化の魅力に着目し、「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性―コミュニケーションツールとして共有・共感する映像文化論から学際的なメディアコンテンツ学の構築に向けて―」について議論する。また、各セッションで取り上げるテーマとして、マンガの収集・保存と利用、マンガ・アニメの翻訳と異文化コミュニケーション、マンガ・リテラシー形成の理論と実践、マンガ・アニメと物語論、視覚芸術論、映像論、マンガ・アニメのメディアミックス化・マルチユース化、マンガ・アニメの文化的経済学、マンガ・アニメ文化と社会学などが予定されている。   今回のフォーラムでは、グローバル化したマンガ・アニメ研究のダイナミズムを、研究者・参加者たちの多様な立場と学際的なアプローチによって読み解いた上、新たな可能性を見いだすことを目指している。何より、将来有望な若い研究者たちに研究成果を発表する場を提供することにより、日台関係・日台交流、また東アジア地域内の相互交流のさらなる深まりへの理解促進に貢献するものと考えられる。学生や一般参加者たちにも東アジアにおけるサブカルチャー文化の受容現状を理解してもらい、また異文化を越えた視野を抱き、国際交流のネットワークを築きあげてもらいたいと考える。   ●日台アジア未来フォーラムとは   日台アジア未来フォーラムは、台湾在住のSGRAメンバーが中心となって企画し、2011年より毎年1回台湾の大学と共同で実施している。過去のフォーラムは下記の通り。   第1回「国際日本学研究の最前線に向けて:流行・ことば・物語の力」 2011年5月27日 於:国立台湾大学文学部講堂   第2回「東アジア企業法制の現状とグローバル化の影響」 2012年5月19日 於:国立台湾大学法律学院霖澤館   第3回「近代日本政治思想の展開と東アジアのナショナリズム」 2013年5月31日 於:国立台湾大学法律学院霖澤館   第4回「東アジアにおけるトランスナショナルな文化の伝播・交流―文学・思想・言語」 2014年6月13日~14日 於:国立台湾大学文学部講堂および元智大学   第5回「日本研究から見た日台交流120 年」 2015年5月8日 於:国立台湾大学文学部講堂   第6回「東アジアにおける知の交流―越境、記憶、共生―」 2016年5月21日 於:文藻外語大学至善楼   第7回「台・日・韓における重要法制度の比較─憲法と民法を中心として」 2017年5月20日 於:国立台北大学台北キャンパス   第8回「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性」 2018年5月25日~26日 於:東呉大学外双渓キャンパス  
  • 2018.04.02

    第7回ふくしまスタディツアーへのお誘い

    関口グローバル研究会(SGRA)では昨年に引き続き、福島県飯舘(いいたて)村スタディツアーを下記の通り行います。 参加ご希望の方は、SGRA事務局へご連絡ください。   SGRAでは2012年から毎年、福島第一原発事故の被災地である福島県飯舘村でのスタディツアーを行ってきました。   そのスタディツアーでの体験や考察をもとにしてSGRAワークショップ、SGRAフォーラム、SGRAカフェなど、さまざまな催しを展開してきました。今年も第7回目の「SGRAふくしまスタディツアー」を行います。ぜひ、ご参加ください。   日 程:          2018年5月25日(金)、26日(土)、27日(日) 人 数:           10~15人程度 宿 泊:           「ふくしま再生の会-霊山(りょうぜん)センター」 参加費:           一般参加者は新幹線往復費用+12,000円 (ラクーン会会員には補助が出ます) 申込み締切:       5月10日(木) 申込み・問合せ: SGRA事務局 角田 E-mail:  [email protected]  Tel:  03-3943-7612   プログラム・詳細   今までのふくしまスタディツアーの報告や感想文    
  • 2018.03.16

    レポート第85号「北朝鮮開発協力:各アクターから現状と今後を聞く」

    SGRAレポート第85号   第17回日韓アジア未来フォーラム 「北朝鮮開発協力:各アクターから現状と今後を聞く」 2019年11月22日発行   <フォーラムの趣旨> 北朝鮮問題がいかなる方式で解決されようとも、北朝鮮に対する開発支援は今後の交渉過程や問題の解決以降においても、韓国や日本を含め、国際社会が避けては通れない重要な課題である。本フォーラムでは、北朝鮮開発協力に対する体系的な理解を深めるとともに、北朝鮮開発協力における主なアクターたちの対北朝鮮支援のアプローチとその現状について議論し、新たな開発協力モデルの可能性を探ってみたい。今回は、2016年2月に東京で開催された第15回日韓アジア未来フォーラム「これからの日韓の国際開発協力:共進化アーキテクチャの模索」、2016年10月1日に北九州で開催された第3回アジア未来会議の自主セッション「アジア型開発協力の在り方を探る」、2016年12月仁川松島で開催された第16回日韓アジア未来フォーラム「日中韓の国際開発協力-新たなアジア型モデルの模索」における議論を受け、北朝鮮開発援助のあり方について考える。     <もくじ>   【報告1】 「北朝鮮開発協力の包括的理解と多様なアプローチ」 孫 赫相(ソン ヒョクサン)慶熙大学公共大学院院長   北朝鮮開発協力について体系的に理解するために北朝鮮開発協力の歴史と現状、そして多様なアプローチを紹介する。     【報告2】 「中国と北朝鮮の関係につむじ風: 経済協力の紆余曲折と今後の展望」 朱 建栄(しゅ けんえい)東洋学園大学人文学部教授   中国は第2次大戦後の長きにわたって、北朝鮮を事実上、自国の安全保障の緩衝地帯と見なし、ピョンヤンに対して惜しまない経済支援を行ってきた。しかし北朝鮮の核開発に危機感を高めた2年前から、中国は「優先目標の非核化に経済関係を服従させる」政策を取り始め、去年12月、空前に厳しい国連安保理の制裁決議にも同調した。ピョンチャン冬季五輪後、習近平政権は北朝鮮、及びTHAAD問題を抱える韓国との関係をどのように進めるかを発表する。     【報告3】 「韓国と国際社会の北朝鮮開発協力:現状と評価」 文 炅鍊(ムン キョンヨン)全北大学国際人文社会学部助教授   韓国と国連機関による北朝鮮開発協力の現状と課題などについて議論する。     【討論】 ◇モデレーター: 金 雄熙(キム ウンヒ)仁荷大学国際通商学部教授 ◇討論者: 安 秉民(アン ビョンミン)韓国交通研究院所長 李 鋼哲(り こうてつ)北陸大学未来創造学部教授 李 恩民(り えんみん)桜美林大学グローバル・コミュニケーション学群教授 李 奇泰(イ ギテ)韓国統一研究院研究委員   講師略歴   あとがき
  • 2018.03.01

    第3回アジア未来会議、日本政府観光局の開催貢献賞を受賞!

    第3回アジア未来会議が、日本政府観光局(JNTO)の平成29年度国際会議開催貢献賞をいただきました。開催にあたり会議運営、地域貢献などにおいて、今後の模範となる実績を上げた国際会議6件が表彰されました。ご支援ご協力いただいた皆さんに、心からお礼を申し上げます。   授賞式の写真   国際会議開催貢献賞の詳細    
  • 2018.02.15

    第17回日韓アジア未来フォーラム「北朝鮮開発協力:各アクターから現状と今後を聞く」へのお誘い

    下記の通り日韓アジア未来フォーラムをソウルにて開催いたします。参加ご希望の方は、事前にお名前・ご所属・緊急連絡先をSGRA事務局宛ご連絡ください。   テーマ: 「北朝鮮開発協力:各アクターから現状と今後を聞く」 日 時: 2018年3月16日(金)午後2時~5時 会 場: 韓国ソウルThe-K Hotel http://www.thek-hotel.co.kr/main_sh.asp コンベンションセンター2Fオークルーム(Oak Room) 参加費: 無料 お問い合わせ・参加申込み: SGRA事務局([email protected], 03-3943-7612)   主 催:  (財)未来人力研究院(韓国) 共 催:  (公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)   ◇フォーラムの趣旨   北朝鮮問題がいかなる方式で解決されようとも、北朝鮮に対する開発支援は今後の交渉過程や問題の解決以降においても、韓国や日本を含め、国際社会が避けては通れない重要な課題である。 本フォーラムでは、北朝鮮開発協力に対する体系的な理解を深めるとともに、北朝鮮開発協力における主なアクターたちの対北朝鮮支援のアプローチとその現状について議論し、新たな開発協力モデルの可能性を探ってみたい。今回は、2016年2月に東京で開催した第15回日韓アジア未来フォーラム「これからの日韓の国際開発協力:共進化アーキテクチャの模索」、2016年10月1日に北九州で開催した第3回アジア未来会議の自主セッション「アジア型開発協力の在り方を探る」、2016年12月仁川松島で開催した第16回日韓アジアイ未来フォーラム「日中韓の国際開発協力:新たなアジア型モデルの模索」における議論を受け、北朝鮮開発援助のあり方について考える。 【日韓同時通訳付き】   ◇プログラム   【報告1】 「北朝鮮開発協力の包括的理解と多様なアプローチ」 孫赫相(ソン・ヒョクサン:慶熙大学公共大学院院長)   【報告2】 「中国と北朝鮮の関係につむじ風――その変化を注目せよ」 朱建栄(しゅ・けんえい:東洋学園大学人文学部教授)   【報告3】 「韓国、国連の北朝鮮開発協力:現状と評価」 文炅鍊(ムン・キョンヨン:全北大学国際学部准教授)   【フリーディスカッション】 -報告者を交えたディスカッションとフロアとの質疑応答-   ◇モデレーター 金雄煕(キム・ウンヒ:仁荷大学国際通商学科教授)   ◇討論者 李恩民(リ・エンミン:桜美林大学教授) 李鋼哲(り・こうてつ:北陸大学教授) 李元徳(リ・ウォンドク:国民大学教授) 朴栄濬(パク・ヨンジュン:国防大学教授) 他    
  • 2018.02.02

    林泉忠「戦争・架け橋・アイデンティティ~近代日本と東アジアの文化越境物語~:東アジア日本研究者会議パネル報告(3)」

      去る2017年10月28日から29日にかけて、風薫る爽やかな深秋の季節の中、「第2回東アジア日本研究者協議会国際学術大会」が、中国天津にある象賽ホテルにおいて開催された。今回は私が企画したセッションで渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)の派遣チームの1つとして参加した。   セッションのテーマは「戦争・架け橋・アイデンティティ~近代日本と東アジアの文化越境物語~」で、企画の背景に、戦前の日本と東アジアとの関係が、しばしば戦争や植民地支配に集約される単純さに違和感を持ったことが挙げられる。そのため、戦前における日本と東アジアとの民間レベルの社会・文化交流の架け橋を担っていた人々とそのストーリーは軽視されてしまう。本セッションは、あの激動の時代において戦争を超える日本と中国・東アジアの民間レベルの交流物語を取り上げ、国境や戦争を超える東アジアの文化交流の意味を検討した。   当セッションは、孫建軍教授(北京大学)を座長に、2つの報告を中心に行われた。   第1報告は、私(林泉忠・中央研究院)自身が行った「知られざる『旅愁』の越境物語~戦前東アジア文化交流の一断章~」で、百年前から日本でも中華圏でもよく歌われてきた名曲「旅愁」(中国語は「送別」)の伝播の軌跡を探って、戦争を超える近代日本と東アジアの文化交流の一側面を明らかにした。「旅愁」は19世紀の半ば頃にアメリカで生まれたDreaming_of_Home_and_Mother(「家と母を夢見て」、作曲ジョン・P・オードウェイ[John_P._Ordway])に由来し、1907年に日本の作詞家で音楽教育者の犬童球渓によって訳され、「旅愁」として音楽教科書「中等教育唱歌集」で取り上げられた。やがて日本の植民地になった台湾や朝鮮半島にも広がっていった。そして、当時東京留学中の中国若手音楽家・画家の李淑同の手で1915年に「送別」として中国に広く伝えられていったという。   当報告は、1.信じられている自国の文化は必ずしも自国で誕生したものではなく、2.文化は交流によってより高い価値を獲得し、3.人類が共有する宝として再認識する必要がある、と指摘した上、戦争・植民地時代の文化の広がりについて、戦争や植民地支配の正当性は肯定できないが、その時代の民間レベルの文化交流にかかわる人々とその結果や価値についてもう少し丁寧に検討する必要がある、と強調した。   第2報告は、李嘉冬教授(上海・東華大学)の「近代日本の左翼的科学者の中国における活動~上海自然科学研究所所員小宮義孝を例に~」で、小宮義孝という人物の物語を取り上げ、上海自然科学研究所所員時代にスポットライトを当て、氏の上海での生活及び中国人科学者・学者たちとの交流実態を明らかにしようとするものであった。小宮は近代日本の寄生虫学者で、東京帝国大学医学部在学時代から、社会医学を志していたという。のちに、マルクス主義に傾倒し共産主義のシンパとして活動していたため、特高にマークされ監獄に入れられる直前に、恩師の横手千代之助・東京帝大教授の助けで1931年上海に避難し、日本の文化事業の上海自然科学研究所に入所して終戦まで大陸の寄生虫病の研究に従事していた。戦後になって、小宮は中国政府の要請を受け寄生虫撲滅の建議案を提出し、その結果、長年中国の農村部で苦しめられた日本住血吸虫病がほとんど治まることになったという。   2つの報告の後、討論者としてJohan_Nordstrom氏(都留文科大学)と篠原翔吾氏(在中国日本国大使館専門調査員)が加わって2つの報告についてそれぞれ適切なコメントをしてくださった。さらにフロアーから興味深い質問やコメントをいただいて、活発な議論が行われた。   最後に、今回の会議についての感想を述べさせていただきたい。   まず、東アジアにおける国境や地域を越えた日本研究関連の学術・人的交流を目的として発足した東アジア日本研究者協議会が主催する国際学術会議は、今回の天津会議が2回目で、私は1年前の仁川会議に続き、連続参加となった。初回に比べると各国の日本研究者の姿がより多く見られ、同協議会の国際学術大会の知名度や地位はわずか1年で随分上昇し、各国の日本研究機関にかなり重視されていることが分かった。   次に、今回の国際会議は、各国から270名以上の日本研究者が集まったが、共催の天津・南開大学日本研究院によって、周到に準備され、会議は順調に進められた。この点について高く評価したい。一方、セッションのアレンジについてであるが、同じ時間帯にいくつかの同分野のセッションが集中したため、各セッションの参加者が薄く分散してしまう結果になった。来年以降の会議は、その点に関して是非改善していただきたい。   さらに、今回は渥美国際交流財団関口グローバル研究会が3つのチームを派遣し、かなり注目されていた。SGRAが日本研究に力を入れ精力的に支援していることが幅広く知られるようになった。SGRAの知名度アップに貢献するにとどまらず、渥美財団・SGRA=日本研究の重要な存在というイメージの確立に成功したといっていい。是非、次回以降の大会にも引き続きチームを派遣し続けていただきたい。   最後に、次年度の「第3回東アジア日本研究者協議会国際学術大会」の一層の成功と、渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)派遣チームのさらなる活躍を願って、今回のセッション報告を終わらせていただきたい。   <林 泉忠(リン・センチュウ)John_Chuan-Tiong_Lim> 国際政治専攻。2002年東京大学より博士号を取得(法学博士)。同年より琉球大学法文学部准教授。2008年より2年間ハーバード大学客員研究員、2010年夏台湾大学客員研究員。2012年より台湾中央研究院近代史研究所副研究員、2014年より国立台湾大学兼任副教授。       2018年2月2日配信
  • 2018.01.27

    ボルジギン・ブレンサイン「日本の植民地支配下の東アジアにおけるメモリアル遺産:東アジア日本研究者協議会パネル報告(2)」

    2017年10月28日(土)中国の天津において、「第2回東アジア日本研究者会議国際学術大会」が開催され、SGRAから参加した3つのパネルの1つとして「日本植民地支配下の東アジアにおけるメモリアル遺産」と題するパネルを発表した。当パネルは発表者3人、コメンテーター2人で構成され、南開大学日本研究院の方々を中心とする来場者を前に、戦前と戦後の日中関係について幅広い議論が交わされた。   本パネルの趣旨は、東アジアのほとんどの地域が日本の植民地支配を受けていた20世紀前半の特殊な歴史的環境において、人と物の交流がどのように一体化し、またそれが戦後にどのような遺産として残され、戦後の枠組みでどのように扱われてきているのかに関するものである。日本の植民地支配は関係する国と地域にとって不幸な歴史であったことはいうまでもないが、日本の支配が敷かれていたこれらの地域において、日本の近代化の経験による各種の社会整備、調査記録や記念物が形として残された。そして戦後の70年間、東アジアを取り巻く複雑な関係性のなかで、これらのメモリアル遺産の存在が直視され、議論される場は多くなかったように思われる。本パネルでは、戦後の視点に立ってこれらのメモリアル遺産の歴史的広がりやそれがもつ現代的な意味について議論した。   1つ目の発表は、グロリア・ヤン・ユー(コロンビア大学大学院博士後期課程)さんによる「実像か幻想か:満洲の視覚資料の見方や眼差しの再考」である。グロリアさんは長春を事例に、日本支配期以前の満洲におけるロシアの都市建設の遺産とそれに対する日本の姿勢を取り上げた。グロリアさんの発表は、20世紀前半期の中国東北地域(満洲)における政治的対立の枠組みが「日中」で固定化している状況に対して、満洲のメモリアル遺産におけるロシアの本来の役割を位置づけ、満洲の都市建設は「日中露」3者の舞台であったと提示したところが重要である。   2つ目の発表は、鈴木恵可(東京大学大学院博士後期課程)さんの「再展示される歴史と銅像―台湾社会と植民地期の日本人像」である。鈴木さんの発表では、日本統治期の台湾(1895~1945)の公園、広場、博物館といった公共空間に立てられていた多くの日本人高官の銅像とそれらの銅像の戦後の行方を丁寧に追った。これらの銅像は、日本統治期に入って初めて台湾に出現したモノであり、最も早期に人々の眼に触れやすい場所に展示された西洋式彫刻作品であったが、銅像の大きな特徴は、それが近代彫刻という美術のカテゴリーに入りつつも、それを設置する行為・モノ・空間のそれぞれが強い社会的、政治的な意味を帯びている点にある。1940年代以降の金属回収と日本の敗戦によって、こうした銅像は台湾社会から姿を消したが、2000年以降になって、わずかに残されていた植民地期の銅像が再発見され、展示され始めるという現象が起こっているという。鈴木さんの発表では、植民地期の銅像設置の過程とともに、この複雑な歴史遺産を現代の台湾社会がどう取り扱っているのかについて取り上げた。   3つ目の発表は、ブレンサイン(滋賀県立大学)の「満鉄と満洲国による農村社会調査について」である。ブレンサインの発表は、第二次世界大戦終戦までの満洲―中国東北三省や内モンゴル地域が日本によるアジア植民地の一部であった歴史的前提に立って、この時期における多民族空間に着目した。つまり、モンゴル系やツングス系のような牧畜、狩猟民族も多く居住するこれらの地域では、日本主導の近代的な手法による社会調査が多く行われ、これら多民族雑居地域における最初の本格的な社会調査の貴重な記録メモリとして残された点を取り上げた。これらの調査を主導したのは満鉄や満洲国政府の関連機関であったが、多民族雑居地域の基層社会の詳細なデータが記録されたのはほかのアジア植民地社会調査と異なる点であり、被調査社会のみならず、調査者にとっても貴重な近代的社会調査の経験であったと指摘している。ブレンサインの報告は、満鉄と満洲国関連機関が行った多民族農村社会の実態調査を系統的に紹介すると同時に、戦後の視点から日本と東アジア関係史上特殊なこの時期に残された記録遺産との向き合い方についても考え方を提示した。   1人目のコメンテーターである張思(南開大学歴史学院教授)先生は、日本植民地時代のメモリアル遺産を過去の政治やイデオロギーの束縛から脱出して、21世紀の視点から直視すべきと指摘した。張先生はさらに、これらの遺産をソ連時代のレーニン、スターリン像などと比較しながら、過去の時代のメモリアル遺産をどのように受け入れていくかは世界的な問題でもある。日本の植民地時代と向き合う姿勢については、植民地時代は全員「共犯」だというサイードの言葉を引用しながら、関係者全員による反省が大事であるとコメントした。   2人目のコメンテーターであるマグダレナ・コウオジェイ(デューク大学博士後期課程)さんは、本パネルで報告した上記3名の研究内容はそれぞれの分野で今まで見落とされてきたものの重要な部分であるという共通点があり、分野を超えて議論することの重要性を強調した。マグダレナさんは特に、地図や銅像といった視聴覚を直接刺激する歴史的素材をもって論じることの特異な効果を強調し、これらの研究は日本植民地支配期を「統治―被統治」の枠組みで単純化する傾向に対して多様な視点を提供するものであるとコメントした。   発表者はコメンテーターの意見に対してそれぞれ簡潔なコメントを述べたあと、会場からの質問にも答え、満洲国の在り方、日中関係など幅広い課題について議論が交わされた。   本パネルの司会は南開大学が母校である桜美林大学の李恩民先生がつとめた。本パネルの成果は天津や南開大学に土地勘の強い李恩民先生の司会進行に帰するところが大きいことを記しておきたい。報告者、コメンテーターや司会の先生方に改めて感謝を申し上げたい。   <ボルジギン・ブレンサイン Borjigin_Burensain> 渥美国際交流財団2001年度奨学生。1984年に内モンゴル大学を卒業後内モンゴル自治区ラジオ放送局に勤務。1992年に来日し、2001年に早稲田大学で博士学位取得。現在は滋賀県立大学人間文化学部准教授。     2018年1月25日配信
  • 2018.01.18

    モリソン&ブリティカ・アルサテ「おぞましき女性の行方:東アジア日本研究者協議会パネル報告(1)」

    2017年10月28日(土)中国天津において、第2回東アジア日本研究者協議会が開催され、私たちはSGRAから参加したパネルの1つ、「おぞましき女性の行方──フェミニズム批評から読む日本神話および昔話」というパネル発表をしました。当日は5人のパネルメンバーを含め、約20人の参加者を迎えてややこじんまりした会となりましたが、熱心な議論が交わされ、実り多い時間を過ごすことができました。   本パネルは日本神話と昔話の原文および現代作家によって語り直された作品をフェミニズムの観点から考察し、家父長的な要素を脱構築することを目的としました。パネルの流れとして、最初に司会者の張桂娥さん(台湾東呉大学副教授)がパネルの目的およびメンバーの紹介を行い、次に2つの発表をした後、討論者がコメントをし、最後に参加者の質疑応答の時間を設けました。以下、各発表の要旨と討論者によるコメントを簡単にまとめます。   一つ目の発表はリンジ―・モリソン(武蔵大学人文学部助教)による「暗い女の極み──日本昔話の『蛇女房』におけるおぞましき女性像をめぐって」でした。モリソンは「蛇女房」という日本の昔話をフェミニズム批評の観点から考察しました。人間と動物が結婚する、いわゆる異類婚姻譚は世界中に見られる昔話のモチーフのひとつです。日本にも異類婚姻譚が数多く伝承されていますが、「蛇女房」の場合、蛇女房は本性を夫に覗かれた後、自分の子供を人間の世界に置いて動物の世界に戻ります。先行研究では、このような異類女房が人間の世界から悲しく去ってしまう姿を日本昔話の「美しさ」と称賛され、そこに「日本らしさ」も見出されています。そのような見解に対し、本発表はジュリア・クリステヴァのアブジェクション(棄却、おぞましきもの)という概念を用いて、異類女房の「消滅」を男性による女性への「欲望」や「支配欲」として批判的に読み直しました。   二つ目の発表はフリアナ・ブリティカ・アルサテ(国際基督教大学ジェンダー研究センター研究所助手)による「神話の復習と女性の復讐──桐野夏生の『女神記』をフェミニズムから読む」でした。この発表では、桐野夏生の小説『女神記』においてイザナミとイザナキの神話がどのように語り直されているかを説明し、またフェミニストの観点から女性の復讐の描写に焦点を当てました。イザナミとイザナキの神話は、日本の男性中心主義的な文化の構築において重要な役割を果たしています。その文化では、男女は最初から不平等で、女性は穢れや黄泉国と関連付けられています。桐野の『女神記』は、女性の肉体と欲望、さらに妊娠や出産、母親になることなどと関連したものに直接的に結びついた女性の抑圧の心理的かつ文化的な側面を理解する試みだと言えます。桐野はこの小説を通して、女性を裏切られた犠牲者として描写するのではなく、彼女らに声を与えているのだというのが本発表の結論でした。   討論者のレティツィア・グアリーニ(お茶の水女子大学大学院博士後期課程)のコメントでは、神話、昔話、童話など、古くから語り継がれる物語において作り上げられた女性像・男性像が型となり、我々の意識に根付いてしまっていることについて触れました。家父長制による性の抑圧が反映されているそれらの物語が自明のプロットになり、永遠不変な原型となってしまうものの、その物語によって支えられている支配的言説は、歴史的ないし社会的な慣例にすぎない。この結論に至るためには、本パネルの発表のように、神話や昔話をジェンダーの視点から再考し、それらの物語を読み直す、そして書き直す必要があるのだともコメントしました。   2人目の討論者のシュテファン・ヴューラー(東京大学大学院博士後期課程)のコメントでは、ジュディス・バトラーのアブジェクション論の読み方を紹介し、主体と客体の境界線の脆さや瞬間性を指摘しました。つまり、主体と「おぞましきもの」とされる客体の境界線は静的、自然な、普遍的なものではなく、常に繰り返し引き直さなければならないと話しました。さらに、ヴューラーは『女神記』の問題点に触れ、結局この小説は登場する女性を「嫌な女」として描き、これまでの権力構造をただ逆転して男女の二分法的な関係および思考パターンを再生産してしまっているだけなのではないかと反論しました。   発表者がそれぞれの討論者のコメントおよび反論に回答した後、参加者からの質問を受けました。フェミニズムとナショナリズム、日本人と外国人の解釈の違い、日本の理想的な母子像、異類婿の話など、多岐に渡る質問で場が盛り上がりました。   今回は(公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)のパネルの発表者およびリーダーとして参加でき、とても嬉しく思っています。発表やさまざまな研究者との意見交換によって、自分たちの研究を発展させ、ネットワークを広げることができました。素晴らしい機会を与えていただき、誠にありがとうございました。 (文中敬称略)   第2回東アジア日本研究者協議会国際学術大会の写真   <フリアナ・ブリティカ・アルサテ Juliana Buriticá Alzate> 渥美国際交流財団2015年度奨学生。2010年4月に来日。国際基督教大学大学院アーツ・サイエンス研究科比較文化専攻で修士号を取得。2017年に同研究科博士後期課程を修了。現在は国際基督教大学のジェンダー研究センターの研究助手や神奈川大学の非常勤講師。専門は比較文学およびジェンダー研究。   <リンジ―・レイ・モリソン Lindsay Ray Morrison> 2016年度渥美奨学生。2017年に国際基督教大学大学院アーツ・サイエンス研究科博士後期課程を修了し、現在は武蔵大学人文学部助教。専門は日本文化研究。日本人の「ふるさと」意識の系譜について研究している。     2018年1月18日配信
  • 2018.01.11

    朴准儀「一帯一路フォーラム開催まで」

    シンガポール国立大学でポストドクター/博士後研究員2年目を過ごしていた2017年初めに、慶應大学の訪問研究員として派遣された私は、久しぶりに2011年度渥美奨学生(ラクーン)の同期であった李彦銘博士と東京で再開した。東アジアを中心とする国際政治経済を勉強し共通点が多い私たちは、話すことがたくさんあった。ある時、ランチをしながら話し続けるうちに、彼女が私に「もしも機会があれば、一緒にパネルを作ってみない?」と言い、私はもちろん「そうしましょう!」と答えた。   そして私はシンガポールに戻り、彼女は東京で研究活動を続けていたが、私が7月頃シンガポールから韓国に移る準備をするためソウルに一時帰国していた時に、偶然2018年8月にソウルで渥美財団が主催する予定のアジア未来会議(AFC)の準備会議に出席し、今西さん(渥美財団常務理事)から渥美財団が元奨学生を対象にパネル企画を募集していることを知らされた。それが切掛けとなり、ちょうどシンガポールでエネルギー市場の動きを研究し、中東での中国の戦略を見ていた私は、李さんに「一帯一路」政策の研究に興味があるかと聞いたところ、日本ではあまりに語られていないが、興味を持っているということだった。   渥美財団のパネル企画案募集は中国や日本で開催されるいくつかの日程が計画されていたので、私は、中国の関連の内容である一帯一路政策関連のパネルを日本で行うのはどうか、そしてそのプレフォーラムとしてSGRAフォーラムを考えるのはどうかと提案した。応募するためには渥美奨学生出身者が3人以上必要であったので、先輩の朴栄濬教授の参加の意思を確認してから、私と李さんが他に関心を持ってくれると思うパネリストに接触した。   このパネルは日中韓出身の学者に揃って欲しかったため、パネルの構成は、発表者数を、少なくとも国籍に限っては、均等にしたかった(日本2人、中国2人、韓国2人)。参加する学者たちは各自の個人研究で国際安全保障、国際経済、地政学、外交政策、エネルギーなどの場面で活発な活動をしている方々であり、北東アジアやアメリカ、そして東南アジアをめぐる両国関係や地域関係を専門にしている方が望ましい。その上、一帯一路のテーマの特性上、中国の国内政治と外交政策、米中競争とそれに反応する隣国の立場、そして中国の南シナ海(地政学的な拡張)や中東での進出(エネルギー貿易)等、北東アジア圏外の地域を含めることにし、北東アジアや太平洋での地政学に限らず、全世界がカバーできなくても主に一帯一路に現れた中国の世界戦略に近づいてそれを読み解く機会にしたかった。   最初はアメリカの先生を含めたほうがいいかと思ったが、そうするとアジアの国々からの立場がよく現れなくなるのではないかと思った。その結果、司会者をのぞいて日本を代表し古賀さんと西村さんが、韓国を代表し朴(栄)先生と私が、そして中国を代表し朱先生と李さんに決まった。司会者としては国士舘大学の平川先生にお世話になることになった。この構成であれば、アメリカの発表者がいなくても十分だと思った。   SGRAフォーラムでパネルを作る初めての経験であったが、私はこのテーマについてどうしても日本人の一般の方々にたくさん参加して欲しかった。一帯一路政策については中国では無論、韓国やアメリカ、特にワシントンでは頻繁に論争されているが、5月に中国でこのテーマで発表を行った時に、中国の学者たちから中国の拡張について否定的な反応を見かけ、日本の人々はどう考えているのかを一般の参加者に聞いてみたかったからだ。それで、観客を集めるため、ポスター作りを渥美財団に提案し、それをSNS(Eventbrite, Facebook)に乗せて幅広く広報した。SGRAフォーラムとしては初めての試みであったが、結果としては良い戦略だったと思う。そして次の機会には、画期的な案(例:マスコミの使用)でさらに一般の観客に近づきたい。それが政策の複雑さをもっと多くの人々に説明する学者やパブリックインテレクチュアルの義務だと思っている。   最後に、このフォーラムを実現するためにお世話になった渥美財団へもう一度感謝の気持ちを伝えたい。   <朴准儀(パク・ジュンイ)June_Park> 高麗大学政治学学士、高麗大学国際政治学大学院碩士、ボストン大学政治学大学院博士。 東京大学社会科学研究所訪問研究員、日本財務総合政策研究所訪問研究員、北京大学国際関係学大学院訪問研究生、シンガポール国立大学李光耀行政政策大学院博士後課程研究員等を経て、現在ソウル大学アジア研究所北東アジア選任研究員、Pacific_Forum_CSIS ジェームス・ケリーフェロー、アジアソサエティアジア21フェロー。専門分野は国際政治経済、貿易保護主義、エネルギー(アメリカ―東アジア、中東)。     2018年11月11日配信
  • 2018.01.11

    李彦銘「『一帯一路』―中国の戦略の含意を探る:第58回SGRAフォーラム報告」

    「アジアを結ぶ?『一帯一路』の地政学」と題する第58回SGRAフォーラムが2017年11月18日(土)午後、東京国際フォーラムガラス棟にて開催された。基調講演者(朱建栄/東洋学園大学)及び報告者(李彦銘/東京大学、朴栄濬/韓国国防大学校、朴准儀/ソウル大学アジア研究所、古賀慶/シンガポール南洋理工大学)、討論者(西村豪太/『週刊東洋経済』)の構成から見れば、日中韓の三カ国からそれぞれ2名と非常にバランスの取れるものになった。また、パネルにおけるパネリストは国際政治、国際政治経済を専門とする研究者が中心だが、全体司会/モデレーター(平川均/国士館大学)と討論者の設定により、経済学からの視点とジャーナリスト/実務レベルの視点も組み込まれたといえよう。   今回のフォーラム開催の直前にあった中国共産党の第19回党大会(10月18-24日)では、「一帯一路」は習近平総書記が繰り返し強調したキーワードの1つとなり、さらに共産党の党章(党の性格や目標、組織構成を規定する規約)の、党の求める対外政策の性質を説明する部分に書き込まれた。その結果、フォーラム開催は非常にタイムリーなものとなり、多くの方々の関心を得た。その後、年末に安倍首相が日本の対外政策を「一帯一路」と連携する意向があると明らかにし、2018年は日中の政治関係が漸く改善すると見込まれる。「一帯一路」をはじめとする日中の経済協力は今後、より一層注目されるだろう。   基調講演では、「一帯一路」構想の具体的内容、推進された背景、経緯とその主な手段、戦略的目的についての分析がまず紹介され、後半の報告は各国の反応を中心に展開された。発展途上国のインフラ整備需要にうまくマッチしていることから中央アジアを中心とするいくつかの地域では支持を得られやすい一方、米欧日、そしてロシアとインドにも地政学における警戒と懸念をもたらしている。それに対し中国政府も一定の対応策を示し、各国の開発戦略、構想との連携性を強調しつつ、「海」ではなく「陸」のほうを優先的に、そして経済を前面に推進して来ていると見られる。その点で日中協力の余地も大きいのではないかと論じられた。   個別報告セッションでは、まずはかつて日本が70年代から推進したプラント(インフラもプラントの一種)輸出戦略や、80年代後半からの対アジア直接投資、技術移転と対日貿易拡大が三位一体になった「ニューエイドプラン」が紹介され、中国の「一帯一路」との類似性及び、さらなる経済成長のための対外経済政策であることがその本質だと理解できると、李によって提起された。   朴(栄)報告は、国家の対外戦略と海軍力の立場からの検討であるが、「一帯一路」は地政学から見てもアメリカとの海での直接対決を避けるために中国が取った陸での戦略だととらえられると言う。   朴(准)報告は、中東地域を取り上げ、これらの地域における中国の政策、援助や港湾建設などが紹介された。しかし当地域では複雑な国内・国際政治(米ロの競争)が展開されているため、パワーの空白の中その経済利益を守るためにも、今後中国は自身の政治と軍事的プレゼンスを増大させざるを得ないだろうと言う。   最後は、ASEAN諸国のような大国ではないアクターの態度と立場、担いうる役割が古賀報告によって検討された。小国でありながらも、米中のような大国の間で、自らの利益を守るためにバランスをとる可能性があると論じられた。この点、韓国も似ているような戦略を取っていると朴(栄)からも主張された。   フリーディスカッションでは、フロアを含め様々な質問があったが、全体としてまとめると、やはり「一帯一路」に対する警戒や危惧というようなものはまだまだ強いと言える。これは今までの日本社会での論じ方と概ね一致するものだろう。パネルからは「一帯一路」は1990年代後半からすでに始まっていた中国企業による「走出去」の成果、その延長線上にあるという指摘や、今まで中国が2国間でやってきたものを束ねたものにすぎないという指摘があったものの、「一帯一路」というように世界地図で示されるようになると、地政学による心配が一層高くなるのは当然のことかもしれない。   一方、中国が2013年に「一帯一路」を正式に打ち出した後、その内実についてまだ内外に対し十分説明できていないことや、政策形成のプロセスがやはり不透明であると言わざるを得ない。ただし全貌が不透明の中でありながらも、「一帯一路」のサポート役であるAIIBの運営実態からは中国は開かれた姿勢を保っている現状も確認できると西村が指摘した。グローバルスタンダードが中国のリードで形成されることを危惧するのであれば、「一帯一路」を静観/敬遠するのではなく、日本がより積極的に参加し、自らのイニシアティブを発揮していくことも必要であろうという西村の論点はパネリストたちの共通する見方となった。またグローバル経済史や人類史の長いスパンから見る場合、世界の中心が移動することなど、多様な論点が提起され、地政学におけるパワーバランスのみではなく、「一帯一路」が持ちうる、より大きな意味にも気付く必要がある。   紙幅の関係で個々の論点について展開できないが、フォーラムを企画した当時の目的は概ね達成され、「一帯一路」に関する知識と考える場、多様な思考回路を少しばかり提供できたといえよう。フォーラム当日の具体的な報告は、2018年の秋までにSGRAレポートとして纏められる予定なので、関心がある方は是非ともご参照いただきたい。   今回のフォーラムを企画した当初は、確かに日本ではまだあまり「一帯一路」の話は表に出ていなかった。もちろん専門家や経済界等、特定のオーディエンスを対象とする勉強会や講演会などは開かれていたと思うが、今回のように一般向けで、そして政策当局に少し距離を置く学者の立場から議論したものは少なかった。   また、企画者としての感想となるが、「一帯一路」の政策形成プロセス、つまり具体的に誰がどのように案を練り上げ、そしてアクター間のどのような力関係を経て、このような政策結果ができてきたのかを明らかにしたい、というさらなる研究課題が与えられたような気がする。   最後は、今回の企画に賛同し、隅々までサポートしてくれたSGRA事務局と、報告を快諾してくださったパネリストの先生方にお礼を申し上げたい。当日足を運んで、たくさんの質問を熱心に寄せてくだったオーディエンスの皆様や、フォーラムの内容に個人的に関心を示してくれた方々にも深く感謝したい。 (文中は敬称を略した)   当日の写真   <李彦銘(り・えんみん)Yanming_Li> 北京大学国際関係学院学士、慶應義塾大学法学研究科修士・博士、現在:東京大学教養学部特任講師。専門分野は日中関係、政策形成過程、国際政治経済。主な著作に『日中関係と日本経済界――国交正常化から「政冷経熱」まで』(単著、勁草書房、2016年)、『中国対外行動の源泉』(共著、慶應義塾大学出版会、2017年)ほか。     2018年11月11日配信