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レポート第86号「第3回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性─17世紀東アジアの国際関係─戦乱から安定へ」

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第59回SGRAフォーラム講演録

「第3回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性

─17世紀東アジアの国際関係─戦乱から安定へ」

2019年9月20日発行

 

<フォーラムの趣旨>

 

東アジアにおいて「歴史和解」の問題は依然大きな課題として残されている。講和条約や共同声明によって国家間の和解が法的に成立しても、国民レベルの和解が進まないため、真の国家間の和解は覚束ない。歴史家は歴史和解にどのような貢献ができるのだろうか。
1600 年を挟む約 1 世紀は東アジアが 3 度目の大規模な戦乱に直面した時代であった。東アジアには中国市場が世界に求めていた銀を朝鮮から製錬技術を学んだ日本が大量に供給したことを一因として緊密な経済関係が生まれる一方、経済繁栄は域内の諸民族に政治的覇権への欲望も生み出した。日本の豊臣秀吉と満洲のホンタイジによる各 2度の朝鮮侵攻および満洲族による中国での清朝の創立である。経済の相互依存の深まりと各国の覇権争奪の同時進行が生んだ大規模な戦乱、およびその後の長期安定は、現代の東アジアに対して深い自省を促すことであろう。

 

本フォーラムは第4回アジア未来会議の円卓会議「第3回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性─17世紀東アジアの国際関係─戦乱から安定へ」として開催された。この会議の目的は何らかの合意を得ることにはない。立場によりさまざまな歴史があることを確認した上で、「対話」により相互の理解を深めてゆくのが目的である。

 

<もくじ>

第1セッション[座長:李恩民(桜美林大学)]

【基調講演】

17世紀東アジア史の展開と特性─韓国史の展開を17世紀の世界史の中でどのように眺めるか

趙 珖(韓国国史編纂委員会)

 

第2セッション [座長:楊 彪(華東師範大学)]

【発表論文1】 韓国から見た壬辰倭乱  / 崔 永昌(国立晋州博物館)
【発表論文2】 欺瞞か妥協か──壬辰倭乱期の外交交渉 / 鄭 潔西(寧波大学)
【発表論文3】 「壬辰戦争」の講和交渉 / 荒木和憲(国立歴史民俗博物館)

 

第3セッション [座長:李 命美(韓国外国語大学校)]

【発表論文4】 「礼」の視座から見直した丙子胡乱 / 許 泰玖(カトリック大学校)
【発表論文5】 「胡乱」研究の注意点 / 鈴木 開(東京大学)
【発表論文6】 ラマの位相──17世紀チベット仏教と東アジア政局 / 祁 美琴(人民大学)

 

第4セッション [座長:村 和明(東京大学)]

【発表論文7】 日本の近世化と土地・商業・軍事 / 牧原成征(東京大学)
【発表論文8】 壬辰倭乱──丙子胡乱期唐糧の性格に関する検証 / 崔 姫(国学振興院)
【発表論文9】 清の前期における中朝関係と「東アジア」秩序構造 / 趙 軼峰(東北師範大学)

 

第5セッション [座長:劉 傑(早稲田大学)]

【自由討論】 招待討論者:塩出浩之(京都大学)、金 甫桄(嘉泉大学)他 総括/三谷 博(跡見学園女子大学)

 

第6セッション [座長:劉 傑(早稲田大学)]
【パネルディスカッション】 和解に向けた歴史家共同研究ネットワークの検証

[日本] 三谷 博(跡見学園女子大学)、浅野豊美(早稲田大学)
[韓国] 趙 珖(韓国国史編纂委員会)、朴 薫(ソウル大学)
[中国・台湾] 楊 彪(華東師範大学)、王 文隆(台湾政治大学)、在日研究者:段 瑞聡(慶応大学)

 

あとがきにかえて

金キョンテ  / 村 和明 / 孫 軍悦 / 劉 傑

 

著者略歴

 

参加者リスト