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2021.06.28
ワイリー・オンライン図書館の『情報システム・ジャーナル』で、「私達は研究の社会的効果(ソーシャル・インパクト)を気にしているか」というタイトルの社説を見つけた。この社説は「H指数の独裁政治」、つまりジャーナル・インパクト・ファクターへの批判が高まっていることをはっきり指摘しただけではなく、V指数(Value-indices)、つまり僕がソーシャル・インパクト・ファクターと呼ぶものに明快に言及している。学術的研究と一般社会の関係者をどのように結びつければよいか――これはアカデミズム尊重の根強い伝統に対する正真正銘の反乱であり、僕は以前から考えていたポリシーブリーフの作成に努力しようという思いを改めて強く感じた。ポリシーブリーフとは、さまざまな政策案件に関して、政策研究のエビデンスに基づき、政策の選択肢について簡潔に解説を行うものである。自分自身はもちろんのこと、「戦略的計画の理論と方法」の授業を受けている僕の大学院生たちにも持続可能な共有型成長に関するポリシーブリーフを作成してもらうことにした。
この動きは、コロナのパンデミックのために1年間中止していた「持続可能な共有型成長セミナー」の復活となって実を結んだ。2021年5月31日、フィリピン大学ロスバニョス校公共政策開発大学院(CPAf)と渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)の共催で、第28回持続可能な共有型成長セミナー「持続可能な共有型成長へのポリシーブリーフ」が、初めての完全オンラインで開催された。
ロウェナ・バコンギス学院長と今西淳子SGRA代表の温かい開会挨拶の後、僕がセミナーの経緯と趣旨を説明し、最後に9人の大学院生が作成した5本のポリシーブリーフを発表した。9人は現役の教員や公務員で、ロックダウン中の最初の2学期間で僕が出したこの挑戦的な課題に真剣に応戦してくれた。
持続可能な共有型成長へのポリシーブリーフは次の通り。
1)ビバリー・デラクルスの「農場から食卓(F2F)までのロス削減:持続可能な食料システムのための3つの良い解決策」(“Farm to Fork FLaW (Food Loss and Waste) Reduction: A Triple Win Solution Towards Sustainable Food Systems” by Beverly Mae dela Cruz)。温室効果ガス排出の削減(SDG13)水(SDG14)と土(SDG15)の資源にかかる圧力の緩和、食料安全性と栄養による社会的状況の改善(SDG2)、責任ある消費と生産(SDG12)を通じた生産性と経済成長の向上(SDG8)をめざす。
2)マルク・イシップとダヤン・カベリョウの「強力な協同組合を通じるフィリピン国内の持続可能なハタ(魚類)の生産」(“Promoting a Sustainable Grouper (Lapu-Lapu) Production in the Philippines through a Strong Cooperative Sector” by Marc Immanuel G. Isip and Diana Rose P. Cabello )。海洋資源の保全、高価値のある海洋生産物の業者間の公平分配や、漁業部門の生産性の向上のために強い共同組合を提案。
3)ヨルダ・アバンティとジョセフィン・レバトの「イサログ山:共通の善か共通の対立か」(“Mount Isarog, A Common Good or A Common Conflict“ by Yolda T. Abante and Josephine R. Rebato)。 陸上の生物多様性の保全や中央・地方政府間の適切な権利分配やイサログ山コミュニティの活性化を促進する、適切な地方分権を提言。
4)フェ・アラザーとアイザ・スンパイの「公平な枠組みの構築:COVID-19時代に対応する採点方針(“Building a Framework of Equity: Responsive Grading Policy in the Time of COVID-19” by Fe B. Arazas and Aiza Sumpay )。学生達の多様な状況に配慮しながら、非正常でストレスが多いパンデミックの時代に合った採点システムを提言。
5)メルセル・クリマコサとカテリン・アルガの「栄養と教育:国の将来の決定要因」(“Nutrition and Education: Determinants of the Country’s Future” by Merssel F. Climacosa and Catherine N. Arga)。小学生とその親の世代間の関係に焦点を当て、子どもの栄養失調が国の未来に与える打撃を軽減するため、最近の栄養と教育の政策をサーベイ。
発表者たちのポリシーブリーフは、さまざまな完成段階にあったが、CPAfの教員であるメッリン・パウンラギ先生(Merlyne M. Paunlagui)、ジン・レイェス先生(Jaine C. Reyes)、マイラ・ダビッド先生(Myra E. David)とアジア太平洋大学のジョヴィ・ダカナイ先生からの適切なコメントを頂いた。ダカナイ先生と私は、アジア太平洋大学の前身である「研究とコミュニケーション・センター」時代の仲間である。当時はまだ大学院生であったが、今のポリシーブリーフに当たる「スタッフ・メモ」の定期的な執筆に動員され「火の洗礼」を受けた。あの時の熱気は、現在のアジア太平洋大学に立派に成長することになる魔法の種であった。あの時も今も、僕たちの関心は、誰かを置いてきぼりにするのではなく、全員を甲板に召集する事にある。これこそ、僕たちの社会が現在直面している深刻な問題を解決するために必要とされている。
当日の写真
本セミナーの報告書(英語)
<フェルディナンド・マキト Ferdinand_C._Maquito>
SGRAフィリピン代表。SGRA日比共有型成長セミナー担当研究員。フィリピン大学ロスバニョス校准教授。フィリピン大学機械工学部学士、Center_for_Research_and_Communication(CRC:現アジア
太平洋大学)産業経済学修士、東京大学経済学研究科博士、テンプル大学ジャパン講師、アジア太平洋大学CRC研究顧問を経て現職。
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2021.06.20
2021年5月29日(土)、第19回日韓アジア未来フォーラムが盛会裏に終了した。本来は2020年3月に東京で開かれる予定だったが新型コロナウイルスのパンデミックで中止となり、Zoomウェビナー方式で実施することになった。コロナ禍の中でも「オンタクト」(ON-TACT:韓国社会で広がった言葉。非対面を指す「アンタクト」にオンラインを通じた外部との「連結(On)」を加えた概念で、オンラインを通じて外部活動を続ける方式を指す)で、積極的にグローバルなコミュニケーションに取り組んできたSGRAの旗振りにより開催されることになった。
日韓関係は、日米における政権交代、韓国裁判所による前例とは異なった判決などで改善の兆しが生まれつつも、なかなか接点を導き出すことが難しい現状である。これからどうすればいいか。現状を打開するためには何をすべきなのか。政府は何をすべきで、日韓関係の研究者には何ができるか。本フォーラムでは日韓関係の専門家を日韓それぞれ4名ずつ招き、「岐路に立つ日韓関係:これからどうすればいいのか」について意見交換を試みた。
フォーラムでは、SGRAの今西淳子(いまにし・じゅんこ)代表による開会の挨拶に続き、日本と韓国から2名の専門家による基調報告が行われた。まず、小此木政夫(おこのぎ・まさお)慶應義塾大学名誉教授は、「日韓関係の現段階――いま、我々はどこにいるのか」という題で、今後の政治日程を考えれば日韓関係を短期的に改善することは容易ではないが、長期的に見れば新しいアイデンティティの誕生と日韓の世代交代が相互関係の不幸な歴史の清算を促進するとした。バイデン政権の出帆により、米国が中国を戦略的な競争者と定めて同盟国や友好国に団結を呼びかけており、米中対立の狭間にある日韓両国の戦略共有は日韓の相互イメージを改善し、広範な認識共有を先導するとした。そして、金大中・小渕共同宣言の再確認が当面の目標になると強調した。
李元徳(イ・ウォンドク)国民大学教授は、「岐路に立つ日韓関係:これからどうすればいいのかー韓国の立場から」について報告した。日韓関係は攻守転換し、加害者・被害者関係の逆転現象が目立つようになったと診断、米中戦略競争が激化する中日韓は多層的かつ多次元的な協力を推進する方向に進むことが望ましいと強調した。一般大衆の感情に流されず、冷徹な国益の計算と徹底した戦略的思考で対日外交を定立しなければならず、その基盤は日本のありのままのリアリティを正しく読むことから出発しなければならないとした。そして「徴用工問題」については、4つの選択可能なシナリオを提示した。シナリオ1は放置(現状維持)、シナリオ2は代位弁済(基金設立)による解決、シナリオ3は司法的な解決(国際司法裁判所)、シナリオ4は政治的決断(賠償放棄や金泳三フォーミュラ)で、そのうち、シナリオ4が適切な道ではないかとの意見を示した。
指定討論に入り、沈揆先(シム・ギュソン)元東亜日報編集局長は小此木教授の発表について、両国関係を外部的な要因や過去の事例を土台に改善するのではなく、両国内部の意思と未来ビジョンの共有で改善する方法はないか、それを可能にするためには、誰が、いつ、何をすべきかを考える必要があり、結局国民の自覚と説得、リーダーシップと政界の開かれた態度、国際的認識の共有などに帰着すると指摘した。李元徳教授の発表については、伊集院敦(いじゅういん・あつし)日本経済研究センター首席研究員が、西側先進国で全面的な「対中大連合」を構築するのも容易ではなく、安保、技術、サプライチェーン、人権など個別テーマごとにオーダーメイドや特定目的の連帯を組織する方が現実的であり、日韓もそうした取り組みを利用しながら戦略の共有を図ったらどうかとコメントした。
第2部の自由討論では、金志英(キム・ジヨン)漢陽大学副教授は、現実的に日韓の複合葛藤を解決するカギは当面の徴用工、慰安婦問題の収拾から求められるしかないとしたうえで、菅義偉政権においては韓国に対する謝罪や韓国への柔軟な態度と解釈される余地のある前向きな変化は難しいと展望した。
小針進(こはり・すすむ)静岡県立大学教授は、両国国民の相互認識においても「リアリズムとアイデアリズム」の均衡が必要であり、「コロナ禍と人的往来の全面中断」という状況において双方が直接体験ではない「頭に描かれた社会」による疑似環境に基づいて、相手国への認識が形成されないかが憂慮されるとし、オンライン対話の促進等で対処すべきだと強調した。
西野純也(にしの・じゅんや)慶応義塾大学教授は、日本も韓国も相手国のリーダーの言動のみで相手を理解しようとしているが、相手の社会は多様であるという当たり前の事実にもっと注意を向けるべきであり、さらに進んで相手がどのような国際秩序認識を持っており、それに基づいてどのような戦略や政策を展開しようとしているのかについて理解することも重要であるとした。また日韓両政府は関係を「管理」しながら、「復元」ではなく、「新たな関係」を作っていくことにより自覚的であるべきだと提言した。
朴栄濬(パク・ヨンジュン)国防大学教授は、日韓関係の改善の契機は韓国政府が「和解・癒し財団」解散の決定を見直し、これを日本政府との協議を通じて解決しようとする態度をとる必要があるとした。また、日韓協力は韓国が求める外交安全保障面での戦略的目標の達成に不可欠であるとした。
第3部では、金崇培(キム・スンベ)忠南大学招聘教授のアシストでウェビナー画面の「Q&A機能」を使って一般参加者との質疑応答が行われた。今回は100人を超える一般参加者からの参加申し込みがあり、慶応大学、静岡県立大学、国民大学の学生の参加も多かった。時間の制約もあり、十分な質疑応答の機会になったとは言えないかもしれないが、20年も続いてきた日韓アジア未来フォーラムの歴史では最も参加者が多く、しかも両国の若い世代が同時接続したという点は特筆すべきであろう。
最後は、徐載鎭(ソ・ゼジン)未来人力研究院院長により、小此木教授との長年の学問的な付き合いに触れるコメントと閉会の辞で締めくくられた。本来はこれで会が終わるはずだったが、会議の初めの思わぬ音響トラブルで20分ほど遅れ、また開会挨拶もよく伝わらなかったため、今西代表が再登場し、状況の説明とともに最後の仕上げをした。今回は惜しくもコロナ禍で日韓アジア未来フォーラムならではの「狂乱の夜」が再現されなかったが、きっと「狂乱」のハウリングは次回の懇親会を予告するものに違いない。
今回オンライン反省会も行ったが、主に本フォーラムの位置づけについての議論が多かったように思われる。今後研究者に限らず、多くの関係者との議論、そして日韓の若い人を中心とした一般の人々との対話ができるフォーマットについて工夫していこうと思う。最後に第19回目のフォーラムが成功裏に終わるようご支援を惜しまなかった今西代表と李鎮奎前理事長(咸鏡道知事)、そして素晴らしいウェビナーの準備に万全を期したスタッフの皆さんのご尽力に感謝の意を表したい。
当日の写真
アンケート集計
英語版はこちら
<金雄煕(キム・ウンヒ)KIM_Woonghee>
89年ソウル大学外交学科卒業。94年筑波大学大学院国際政治経済学研究科修士、98年博士。博士論文「同意調達の浸透性ネットワークとしての政府諮問機関に関する研究」。99年より韓国電子通信研究員専任研究員。00年より韓国仁荷大学国際通商学部専任講師、06年より副教授、11年より教授。SGRA研究員。代表著作に、『東アジアにおける政策の移転と拡散』共著、社会評論、2012年;『現代日本政治の理解』共著、韓国放送通信大学出版部、2013年;「新しい東アジア物流ルート開発のための日本の国家戦略」『日本研究論叢』第34号、2011年。最近は国際開発協力に興味をもっており、東アジアにおいて日韓が協力していかに国際公共財を提供するかについて研究を進めている。
2021年6月24日配信
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2021.06.14
SGRAレポート第93号(日中合冊)
第14回SGRAチャイナVフォーラム
「東西思想の接触圏としての日本近代美術史再考」
2021年6月18日発行
<フォーラムの趣旨>
江戸時代後期以降、日本には西洋の諸理論が流入し、絵画においても、それまで規範であった中国美術の受容とそれを展開していく過程に西洋理論が影響を及ぼすようになっていった。一方、絵画における東洋的な伝統や理念が西洋の画家たちに影響を与え、さらにそれが日本や中国で再評価されるという動きも起こった。本フォーラムでは、その複雑な影響関係を具体的に明らかにすることで、日本近代美術史を東洋と西洋の思想が交錯する場として捉え直し、東アジアの多様な文化的影響関係を議論したい。日中同時通訳付き。
<もくじ>
【開会挨拶】 はじめに―開会挨拶―
今西淳子(渥美国際交流財団)
高橋耕一郎(国際交流基金北京日本文化センター)
【講演】 中国古典と西欧絵画との理論的邂合
―東西思想の接触圏としての日本近代美術史再考―
稲賀繁美(国際日本文化研究センター・総合研究大学院大学)
※上記はともに2021年3月末退任、現在は名誉教授。現職は京都精華大学教授
【コメント】
劉 暁峰(清華大学歴史学科)
塚本麿充(東京大学東洋文化研究所)
王 中忱(清華大学中国文学科)/高華鑫(中国社会科学院文学研究所)代読
林 少陽(香港城市大学中文及歴史学科)
【自由討論】 討論者:参加者を交えた質疑応答
講師略歴
あとがきにかえて
孫 建軍(北京大学日本言語文化学部)
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2021.06.14
SGRAレポート第92号(日中合冊)
第13 回SGRA チャイナ・フォーラム
「国際日本学としてのアニメ研究
―メディアミックスとキャラクター共有の歴史的展開―」
2021年6月18日発行
<フォーラムの趣旨>
企業が主導して、複数の作家が同一のキャラクターや世界観(背景世界)を共有して創作物を同時多発的に生み出し、さらにそこにファンが二次創作やコスプレの形で創造的に参加する「メディアミックス」は、日本のアニメーションを中心とするコンテンツ産業の特徴的手法とされ、Marc Steinberg 『Anime’s media mix: Franchising toys and characters in Japan』(2012)以降、アニメの学術研究の新しい領域として注目を集めている。本フォーラムではSteinbergの議論では不十分であったメディアミックスの東アジアでの歴史的な起源について中・日双方から検証したい。
<もくじ>
【開会挨拶1】
董 炳月(中国社会科学院文学研究所研究員)
【開会挨拶2】
徐 滔(北京外国語大学日本語学院院長)
【講演1】 「翼賛一家」とメディアミックスの日本ファシズム起源
大塚 英志(国際日本文化研究センター教授)
【講演2】 日本アニメにおける『西遊記』のアダプテーション
―変異するキャラクター―
秦 剛(北京日本学研究センター教授)
【総合討論】 メディアミックスとキャラクター共有の歴史的展開
モデレーター 顔 淑蘭(中国社会科学院文学研究所助理研究員)
討論者 古市 雅子(北京大学マンガ図書館館長准教授)
陳 龑(東京大学総合文化研究科博士課程)
講師略歴
あとがきにかえて
陳 龑(東京大学総合文化研究科博士課程)
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2021.06.11
下記の通り第16回SGRAカフェを開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。
テーマ:「安全であること―環境と感覚、ジェンダー、人種、セクシュアリティから考える―」
日 時:2021年7月17 日(土)午後3時~4時30分
方 法: 会場(定員20名)とオンライン(Zoom)開催
会 場:Impact Hub Kyoto (〒602-8061京都市上京区油小路中立売西入ル甲斐守町97番地西陣産業創造會舘(旧西陣電話局)2階・3階)
言 語:日本語
主 催:渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)
申 込:こちらよりお申し込みください
お問い合わせ:SGRA事務局(
[email protected] +81-(0)3-3943-7612)
■ テーマ「安全であること―環境と感覚、ジェンダー、人種、セクシュアリティから考える―」
日本社会は「安全」だと言われているが、「安全」であるということは何を指しているのだろうか?本イベントでは、様々な立場や視点から「安全」の意味および基準を考え直し、社会的な構造・環境と、その構造が個人に及ぼす影響について対談する。コロナ時代となった現在は社会格差が広がり、弱い立場にいる人たちがより危険な状況に陥りやすくなっている。ジェンダーや人種、セクシュアリティなど、様々な視点と立場から安全および社会における差別・不平等について話し合う。できるだけ多くの人々にとってより安全な社会をつくるために、自分は何ができるのか?自分にとって安全な場所を見つけるために何をすればいいのか?身近な問題から社会的な構造まで、安全について考えてみよう。
性暴力被害者の支援をしている中島氏やBLM活動をしているジャクソン氏、シェルター運営者など、さまざまな視点から安全について話し合う。本イベントの目的は、日本にいる人々の経験を知り、「知る」ことから活動につなぐことである。「安全」という単純に思われている概念を考え直し、自分は本当に「安全」と感じているかということを、参加者に考えてもらいたい。自分のまわりを安全にするため、もっと安全な環境を見つけるためにはどうすればいいのか、という実践的な話にまでつなぎたい。
会場とオンライン方式の同時開催で、質問はトークの中で受け付ける。東京の渥美財団ホールともオンラインでつなぎ、渥美奨学生有志がディスカッションに参加する。
■プログラム
登 壇 者
スピーカー:
中島幸子(NPO法人レジリエンス)
キナ・ジャクソン(BLM関西、Black Women in Japan)
いくのがくえんスタッフ
司会/モデレーター:ソンヤ・デール(SGRA関西)
サポート:イザベル・ファスベンダー(同志社女子大学)
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2021.05.26
第19回日韓アジア未来フォーラム/제19회 한일아시아미래포럼
<Program (Japanese)>
<Program (Korean)>
<Lecture1>
「岐路に立つ日韓関係:これからどうすればいいか-日本の立場から」
「기로에 선 한일관계 : 이제 무엇을 해야 하는가 - 일본의 입장에서 」
小此木 政夫 / 오코노기 마사오
Presentation Note(Japanese)
Presentation Note(Korean)
<Lecture2>
「岐路に立つ日韓関係 : これからどうすればいいか-韓国の立場から」
「기로에 선 한일관계 : 이제 무엇을 해야 하는가 - 한국의 입장에서」
李 元徳 / 이원덕
Presentation Note (Japanese)
Presentation Note(Korean)
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2021.05.24
第19回日韓アジア未来フォーラム/제19회 한일아시아미래포럼 -Presentation Notes-
<Program (Japanese)>
<Program (Korean)>
<Lecture1>
「岐路に立つ日韓関係:これからどうすればいいか-日本の立場から 」
「기로에 선 한일관계 : 이제 무엇을 해야 하는가 - 일본의 입장에서 」
小此木 政夫 / 오코노기 마사오
Presentation Note(Japanese)
Presentation Note(Korean)
<Comment1>
沈揆先 / 심규선
Comment Note(Korean)
<Lecture2>
「岐路に立つ日韓関係:これからどうすればいいか-韓国の立場から」
「기로에 선 한일관계 : 이제 무엇을 해야 하는가 - 한국의 입장에서」
李 元徳 / 이원덕
Presentation Note (Japanese)
Presentation Note(Korean)
<Comment2>
伊集院敦 / 이쥬인 아쓰시
Comment Note(Japanese)
<Discussion1>
金志英 / 김지영
Discussion Note(Korean)
<Discussion2>
小針進 / 고하리 스스무
Discussion Note(Japanese)
<Discussion3>
西野純也 / 니시노 준야
Discussion Note(Japanese)
<Discussion4>
朴栄濬 / 박영준
Discussion Note(Korean)
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2021.05.06
3月20日(土)、第15回SGRA-Vカフェが開催された。コロナ禍のためオーディエンスは全員オンラインで参加する形式で行われたが、オンラインだからこそ日中韓「同時通訳・同時翻訳付き」の3言語開催が実現できたとも言える。今回の企画・準備・運営においては、新型コロナウィルス対策や新たなオンラインの可能性を探るさまざまな試みが行われ、視聴者の積極的な参加と財団スタッフの努力によって、世界中から集まった200人を超える参加者を満足させるウェビナーに「仕上げ」ることができた。
今回のテーマ設定の背景にささやかなストーリーがある。2年前に日中映画に関するSGRAチャイナフォーラムが北京で開催されたことをきっかけに、私は「いつか“アニメ”に関連するテーマも取り扱ってみたい」と思い始め、2019年度のチャイナフォーラムで大塚英志先生をお誘いして日本のマンガ・アニメ業界の特徴とされている「メディアミックス」について語っていただいた。その際の反響が良かったので、今度は東京で開催するSGRAカフェでもアニメに関連するテーマを取り上げたいという思いがあった。当初は「アニメの文化研究」をテーマに、と考えたが、具体的な話の「入口」がなかなか決まらなかった。その理由は、アニメ研究の歴史はあまり長くないにもかかわらず、メディアの発展に伴いアニメ自体の在り方も急速に変化し続けているということ、また、代表的な作品・作家・時代と現象の事例が意外と多いと言うことからであった。
悩んでいた時に、タイミングよく話題作が現れた…!――『鬼滅の刃』である。興行収入が『千と千尋の神隠し』を抜いて歴代ランキング第1位になり、原作のファンだけではなく、世界中のアニメファンやそれまでアニメに興味が無かった人々からも注目を集めていた。そこで早速、アニメーション研究家の津堅信之先生に「『鬼滅の刃』からみた日本アニメの文化力」というテーマをお伝えし、講演内容を考えていただいた。偶然にも津堅先生の著書は中国語と韓国語にも翻訳されていたので、今回の3言語開催のウェビナーにとっては最適なゲストだったと言えよう。
当日は、同時通訳はもちろん、投影されるスライドも3言語対応で用意された。また、ウェビナーのQ&Aに寄せられたコメントをリアルタイムで3言語に翻訳するべく、渥美奨学生のみなさんもオンラインで待機してくださった。定時に開会後、2016年度奨学生の全相律さん(韓国出身)が渥美財団とSGRAの紹介をし、筆者(中国出身)から講演ゲストの津堅先生を紹介した。この部分のアレンジも運営側の特別な手配がうかがえる。
第1部の津堅先生の講演は、『鬼滅の刃』がヒットした理由の分析とその実像の説明から始まった。そして、実は『鬼滅』の劇場版(或いは映画版)は原作のファンをターゲットにして制作されただけで、そのビジネスモデルははるか前から日本のアニメ業界で形成されていたもので、一般人にまで広まる空前の大ヒットとなることは誰も想像だにしなかった、と説明された。スタジオジブリのプロデューサー・鈴木敏夫は、「(興行収入)100億円までは作品の実力、それ以上は社会現象」と語っている。今回その「社会現象」が起きた理由については様々な専門家が分析しているが、津堅先生は無視できない事実として2点挙げられた。一つは、新型コロナウィルスの感染拡大によって、多くの映画の公開が延期になり、映画館に生じた空き時間に『鬼滅』が集中的に上映されたこと。実際、とある映画館の4つのスクリーンで、15分おきに上映が始まるという普段ではありえない状況が起きていた。
もう一つは、劇場版の『鬼滅』の映像美やストーリー性の高さが原作のファンを満足させる質の高いものだったため、初期の段階で見に行った原作ファン(10日間で100億円を超えた)の口コミがかなり良く、原作ファン以外の観客も「それほど評判なら一度は見に行こう」と考え、非常に大きな相乗効果が生まれ、その「相乗効果」が「興行収入歴代トップ」の結果をもたらした。余談として、『鬼滅』の中で、「全集中」という言葉が出てくるが、これが実社会でもあらゆる場面で使われ、津堅先生によると「総理大臣が国会でも使っていた」とのことだった。(注:2020年11月2日の衆院予算委員会で『全集中の呼吸』で答弁させていただく」と答弁。江田憲司立憲民主党代表代行の質問に)
では、この大ヒットとなった『鬼滅の刃』現象は日本アニメの歴史の中ではどのように位置づけられるだろうか。津堅先生は、1960年代から日本アニメがたどってきた道を整理しながら、その「魅力」がどこにあるのを分析された。
戦後の代表作で日本初の長編アニメ『白蛇伝』の公開後、1963年の『鉄腕アトム』テレビシリーズが日本アニメの「特徴」と「伝統」を作り上げた。毎週30分が1話のサイクルで放映するパターンの定着である。当時は世界でもテレビアニメの供給がまだ少なかった時期で、先行していたアメリカのテレビアニメは1話5~10分の長さでギャグネタを1つだけ紹介するのが主流だった。それに対して、日本アニメは1話が30分だったので、キャラクターの感情をより豊かに描くことができた。その後、時代の変化と共にテレビアニメが多く制作されるようになった現在でも、この1話30分パターンが続いている。
70年代に入るとテレビアニメ『宇宙戦艦ヤマト』(1974年)と『機動戦士ガンダム』(1979年)が子ども向けではない複雑なストーリー、キャラクターの心理描写を重視し、「ヤングアダルト」向けという世界的に見て稀なジャンルを確立した。この頃からテレビアニメの人気作において、オリジナルのストーリーから長編アニメが制作され、映画館で公開される「劇場版」という新ジャンルが生まれた。以上の2点から、人気マンガを原作としてテレビアニメ化し、その後劇場版をつくるという一連の制作スタイルが一つの定型となり、これが『鬼滅の刃』へとつながっている。
80年代のアニメ業界はマンガ雑誌「週刊少年ジャンプ」連載のテレビアニメ化の全盛期を迎え、代表作の数々(『ドラゴンボール』『SLAM DUNK』『幽☆遊☆白書』『るろうに剣心』『One Piece』など)が、それぞれ異なるブームを形成した。スタジオジブリの活動が本格化した時期も80年代。宮崎駿監督の『風の谷のナウシカ』(1984年)、『天空の城ラピュタ』(1986年)、『となりのトトロ』(1988年)など現代を鋭く批判し社会性を帯びた一連の作品が、それまでアニメに興味のなかった観客からも注目された。
90年代以後、人気マンガが原作の制作スタイルとジブリのオリジナルアニメ映画がそれぞれの発展を果たし、それに加えてアニメ制作におけるデジタル化が進み、日本独自のデジタル技術が発達した。
以上のように日本アニメの歴史を整理した後、津堅先生が日本アニメの「独自性」と「文化力」をまとめた。ジャンルが多様でヤングアダルト向け、また、3DCG(=3ディメンション・コンピュータグラフィックス)ではなく2D(=2ディメンション)デジタルを中心に発展してきた日本アニメが、国外に対する新たな日本文化として発信され、アニメの舞台になった国内スポットが注目されたり、登場する日本食が流行したりする現象をもたらした。
盛りだくさんだった講演後、第2部の対談では私自身がインタビュアーとなり、津堅先生と3つの話題を中心に語ってみた。まずは、講演の中では触れられていなかった『鬼滅』の内容について、主人公のキャラクター設定が従来の「ジャンプ系主人公」より「成長のスピードが遅い」「相対的に弱い」点についてお話を聞いた。津堅先生からみれば、これまでと大きな違いはなく、やはり日本アニメの伝統通り主人公が成長するプロセスを強調しながら表現している、と述べられた。また、「これから誰が日本アニメを見るのか」「観客の多様化や変化は日本アニメに影響するか」という話題に対しては、海外の観客が大幅に増えていることを前提として、日本アニメ自体を最初から世界向けに企画・制作すべきだというのが津堅先生のご意見だった。
最後に、津堅先生の研究の重要な論点の一つと繋がる「アニメ」と「アニメーション」の使い分けについて伺った。津堅先生は商業的アニメと芸術系のアニメーションの区別や、ファミリー向けと大人向けのジャンル分け、および制作スタイルの違いあるいは地域などによって言葉の定義が異なると説明された(例えば欧米では、ポケモンはファミリーの棚に、ジブリが「アニメ」に、ディズニーが「アニメーション」になど;中国でも「動画」「動漫」などがある)。また、こうした言葉の使い分けについては、地域の文化の中での変遷を分析することで理解が進むと強調された。
第3部のオーディエンスからのQ&Aでは、多くの質問の中から2012年度渥美奨学生のソンヤ・デールさんに代表的な内容をピックアップしてもらい、「日本アニメの海外展開」や「アニメ研究を始めたきっかけ」、「日本アニメの暴力表現」などについて津堅先生と筆者とがそれぞれの経験と理解からお答えした。
3言語「同時通訳・同時翻訳」を実現した初のオンライン版SGRAカフェが終わったが、SGRAでは今回の経験を生かして「次は英語の同時通訳もつけてさらにグローバルに発信する」を目指すらしい。今後のウェビナーがどのような「盛り上がり」を見せるのか、楽しみである。
当日の写真
フィードバックの集計
当日の録画
英語版はこちら
<陳龑(ちん・えん)CHEN Yan>
京都精華大学マンガ学部専任講師。2017 年度渥美奨学生。北京大学学士、東京大学大学院総合文化研究科修士・博士課程単位取得満期退学。研究領域はアニメーション史、日中アニメ・マンガ交流史、「動漫」「IP」の概念史など。研究以外、マルチクリエイター・プロデューサーとして日中コンテンツ業界にて活動中。
2021年5月6日配信
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2021.04.11
下記の通り日韓アジア未来フォーラムをオンラインにて開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。聴講者はカメラもマイクもオフのZoomウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。
テーマ:「岐路に立つ日韓関係:これからどうすればいいか」
日 時: 2021年5月29日(土)14:00~16:20
方 法: Zoomウェビナー による
言 語: 日本語・韓国語(同時通訳)
主 催: (公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会 [SGRA] (日本)
共 催: (財)未来人力研究院(韓国)
申 込: こちらよりお申し込みください
お問い合わせ:SGRA事務局(
[email protected] +81-(0)3-3943-7612)
■ 概要
歴史、経済、安保がリンケージされた複合方程式をうまく解かなければ、日韓関係は破局を免れないかもしれないといわれて久しい。日韓相互のファティーグ(疲れ)は限界に達し、日韓関係における復元力の低下、日米韓の三角関係の亀裂を憂慮する雰囲気は改善の兆しを見せていない。尖鋭な対立が続いている強制徴用(徴用工)及び慰安婦問題に関連し、韓国政府は日本とともに解決策を模索する方針であるが、日本政府は日本側に受け入れられる解決策をまず韓国が提示すべきであるという立場である。なかなか接点を見つけることが難しい現状である。これからどうすればいいか。果たして現状を打開するためには何をすべきなのか。日韓両国政府は何をすべきで、日韓関係の研究者には何ができるか。本フォーラムでは日韓関係の専門家を日韓それぞれ4名ずつ招き、これらの問題について胸襟を開いて議論してみたい。日韓の基調報告をベースに討論と質疑応答を行う。
■ プログラム
◇司会
金雄煕(キム・ウンヒ) … 仁荷大学教授
◇開会の辞
今西淳子(いまにし・じゅんこ) … 渥美国際交流財団常務理事・SGRA代表
第1部・講演とコメント(14:05~15:05)
<講演1> 小此木 政夫(おこのぎ・まさお) … 慶応義塾大学名誉教授
「岐路に立つ日韓関係:これからどうすればいいか-日本の立場から」
<コメント> 沈揆先(シム・キュソン) … ソウル大学日本研究所客員研究員
<講演2>李元徳(イ・ウォンドク) … 国民大学教授
「岐路に立つ日韓関係:これからどうすればいいか-韓国の立場から」
<コメント> 伊集院敦(いじゅういん・あつし) … 日本経済研究センター首席研究員
第2部・自由討論(15:05~15:45)
講演者と討論者の自由討論
◇討論者
金志英(キム・ジヨン) … 漢陽大学副教授
小針進(こはり・すすむ) … 静岡県立大学教授
西野純也(にしの・じゅんや) … 慶応義塾大学教授
朴栄濬(パク・ヨンジュン) … 国防大学教授
第3部・質疑応答(15:45~16:15)
Zoom ウェビナーのQ&A機能を使い質問やコメントを視聴者より受け付ける
◇閉会の辞
徐載鎭(ソ・ゼジン) … 未来人力研究院院長
韓国語版サイト
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2021.03.18
Program : プログラム 会议流程 會議流程 프로그램
Note : 補足資料 补充材料 補充材料 보조자료