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2016.05.31
下記の通りSGRAフォーラムを開催いたします。参加ご希望の方は、事前にお名前・ご所属・緊急連絡先をSGRA事務局宛ご連絡ください。
テーマ: 「『今、再び平和について』― 平和のための東アジア知識人連帯を考える」
日 時: 2016年7月16日(土)午後1時30分~5時30分
会 場: 東京国際フォーラム ガラス棟 G701 号室
参加費: フォーラムは無料 懇親会は正会員1000円、メール会員・一般 2000円
お問い合わせ・参加申込み: SGRA事務局(
[email protected], 03-3943-7612)
主 催:渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)
◇フォーラムの趣旨
今回のフォーラムは、混迷を深める東アジアの国際情勢に対して、国際政治や安全保障論の方向からの現状分析やシナリオの提示ではなく、平和研究または平和論という方向からの問題提起として位置付け、進めていきたい。
そのためには、東アジア各国における「平和論」の現状を確認し、各国で「何よりも平和を優先する考え方」が各個撃破されている現状を検証すると共に、こうした現状に風穴をあけるためにはいかなる方法があるのか、そのために学問をする者として、知識人として何ができるのかを議論する場としたい。
そして、この地域の研究者たちが知識エンジニアになりつつある現状、あるいは、安全保障の専門家たちに平和が呪縛されている現実に対して、平和を語る知識人としての研究者の役割、東アジアの知識人の連帯の意義を考えたい。
◇プログラム
詳細はプログラムをご覧ください。
<問題提起1>「平和問題談話会と東アジア:日本の経験は東アジアの公共財となり得るか」
南基正(ソウル大学日本研究所副教授)
<問題提起2>「東アジアにおけるパワーシフトと知識人の役割」
木宮正史(東京大学大学院総合文化研究科教授)
<報告1>「韓国平和論議の展開と課題:民族分断と東アジア対立を越えて」
朴栄濬(韓国国防大学校安全保障大学院教授)
<報告2>「中国知識人の平和認識」
宋均営(中国国際問題研究院アジア太平洋研究所副所長)
<報告3>「台湾社会における『平和論』の特徴と中台関係」
林泉忠(台湾中央研究院近代史研究所副研究員)
<報告4>「日本の知識人と平和の問題」
都築勉(信州大学経済学部教授)
【パネルディスカッション】
フォーラムのちらし
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◇SGRAとは
SGRAは、世界各国から渡日し長い留学生活を経て日本の大学院から博士号を取得した知日派外国人研究者が中心となって、個人や組織がグローバル化にたちむかうための方針や戦略をたてる時に役立つような研究、問題解決の提言を行い、その成果をフォーラム、レポート、ホームページ等の方法で、広く社会に発信しています。研究テーマごとに、多分野多国籍の研究者が研究チームを編成し、広汎な知恵とネットワークを結集して、多面的なデータから分析・考察して研究を行います。SGRAは、ある一定の専門家ではなく、広く社会全般を対象に、幅広い研究領域を包括した国際的かつ学際的な活動を狙いとしています。良き地球市民の実現に貢献することがSGRAの基本的な目標です。詳細はホームページ(www.aisf.or.jp/sgra/)をご覧ください。
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2016.05.19
SGRAでは会員を対象としたワークショップを下記の通り行います。
参加ご希望の方は、SGRA事務局へご連絡ください。
テーマ: 「地球市民って誰?」
日 時: 2016年7月2日(土)午前9時30分 ~ 3日(日)午後1時
現地集合( 東京商工会議所 蓼科フォーラム にて受付)
*1日(金)朝新宿発の貸切バスもありますので、お問い合わせください。
参加費: 5000円(食費、宿泊費(相部屋)を含む)
申し込み・問い合わせ:SGRA事務局
[email protected]
ワークショップの趣旨:
SGRAでは、2013年より蓼科でワークショップを開催しています。2013年は「原発を考える」、2014年は「人を幸せにする科学とは」、2015年は「知の空間を創る」というように、答えだすことを目的としないテーマについて、小グループのディスカッションや参加型のアクティビティーを通して、参加者全員で考えるプログラムです。
「良き地球市民の実現」はSGRAの目標であり、設立当初よりその概念について検討を重ねてきましたが、近年、SGRAの中でも議論をする機会が減り、また社会的にも以前より実現が困難になってきたのではないかという懸念が強くなっている今、あらためて考えてみたいと思います。
今回のワークショップでは、欧州移民研究の第一人者でいらっしゃる宮島喬先生(お茶の水女子大学名誉教授)のお話を伺い、その後、ディスカッションやアクティビティーを通じて、「地球市民とは誰か」を一緒に考えてみたいと思います。
プログラム
7月2 日(土)(於:東商蓼科フォーラム)
9:30~12:00 「知の空間を創る」+グループ分け
・宮島喬先生のご講演と質疑応答
12:00~13:30 昼食
13:30~15:00 ゲーム感覚のグループワーク
15:00~15:30 休憩
15:30~17:00 グループワーク、ディスカッション
7月3日(日)
9:30~12:00 発表・まとめとふりかえり
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2016.04.26
Conceptions of Environment & Coexistence according to the Spanish philosopher Leonardo Polo: Implications for Sustainability Education
[caption id="attachment_6666" align="aligncenter" width="289"] Click image to enlarge[/caption]
ABSTRACT
The functional integrity of the ecology requires balance between the demands of economic development and the preservation of the ecology and balance in satisfying the needs of current versus future generations: work, collaborative sharing and the care of the earth are at the heart of what it is to be human and are constitutive of the order of divine creation (Barrera, 2010).
Ethics of care and concern for specific aspects of the common good seem crucial in any environment, as do personal values, character, and leadership. The ethical influences of human institutions have quite immediate and individual impacts (Racelis, 2014b). We observe that the human person is a being of opportunities, of choices or alternatives, a family and social being, a being who invents, a being capable of unrestricted growth in time. Man’s social being belongs to his manifestative relationship with the world, also referred to as intersubjectivity. Given that the human essence has been created to grow, each person is responsible for rectifying all intersubjective relationships that can inhibit such growth, and nourish those which enable such development (Racelis, 2014a).
The Spanish philosopher Leonardo Polo had proposed four “anthropological transcendentals”, namely: (1) Personal Co-existence, (2) Personal Freedom, (3) Personal Intellection, and (4) Personal Love (Sellés, 2013). Co-existence is not mere living with, dwelling in or coinciding with, but rather it refers to the personal being’s being personally open in his intimacy. Polo (1997) says: “Loyalty and justice are conditions for the coexistence of free systems. But there is more: truthfulness, friendship, the most important of the virtues according to Aristotle. Polo (1991) likewise emphasizes that the human being, no matter what his journeys and difficulties, can always grow; he grows to the measure that his acts are good. Hence, the importance of the moral virtues.
Since vigorous and deliberate reforms are needed to sustain broad-based long-term prosperity and sustainability, this paper shall draw implications of Polo’s conceptions of co-existence, freedom, culture and environment for the research and study of paths to long-term prosperity and sustainability education.
Click here for Presentation Slides
Dr. Aliza Racelis (University of the Philippines)
[email protected]
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2016.04.25
Good morning, おはようございます。
I am very happy to be able to come back to Manila and participate in this Shared-Growth Seminar.
I am Junko Imanishi, Chief Representative of SGRA. SGRA, or Sekiguchi Global Research Association is based in the town called Sekiguchi in Tokyo. SGRA was born from the Atsumi International Foundation, which provides scholarships to Ph.D. candidates who are studying in graduate schools in Japan. It is a family foundation and is aiming to build a network of scholars who have studied in Japan. In fact, SGRA is the research network of the former scholars of Atsumi International Foundation. It was established 21 years ago and now the network has been grown to more than 200 scholars around the world. The instigator and also the coordinator of today’s Seminar, Dr. Max Maquito were in fact one of the 11 scholars in the first year of the establishment.
The first Japan-Philippines Shared-Growth Seminar was held at the University of Asia and the Pacific, in Manila, on March 26th, 2004. The title of the Seminar was “Aiming for Shared Growth” with the sub-title of “Enhancing Efficiency and Equity through Japanese Companies in Special Economic Zones.” I think that it is the passion of Dr. Maquito that led the achievement of this Seminar series for 20 times in 12 years.
In 2010 and 2011, there was the academic exchange program organized by Dr. Weijun Gao, Professor of the University of Kitakyushu, who was another Atsumi scholar of the first batch. And a group of scholars in architecture and engineering from the universities in Manila were invited. During this exchange program, we agreed to co-host forums in Tateshina in 2010, and in Tokyo in 2011.
I think that the Shared-Growth Seminar changed after these two forums in Japan. The planning committee was established and many people became involved in organizing the Seminar. As a result, the scale of the Seminar became bigger. I remember that I happily received the report of the 16th Shared-Growth Seminar that was held on August 23rd, 2013, at the University of the Philippines with 220 participants. The theme of this Seminar was “the Urban Rural Gap & Sustainable Shared Growth”. The reason for the big success must have been thanks to the teamwork of scholars involved, many of them must be attending this Seminar today.
Thus, I would like to thank all of you who have been helping the Shared-Growth Seminars, for as many as 20 times. I also would like to add my appreciation for participating in the Asia Future Conference, our by-annual symposium that we hosted in Bangkok in 2013 and in Bali in 2014. I would like to thank you because we always had the biggest delegation from the Philippines in those past two Conferences. The Third Asia Future Conference will be held in October this year, in Kitakyushu, Japan, so I look forward to welcoming many of you there again.
Congratulations Maquito San, for the 20th Shared Growth Seminar. We say in Japanese 継続は力なり or “To keep doing is powerful.” I wish you will be able to keep hosting this seminar series in the coming years.
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2016.04.22
渥美国際交流財団関口グローバル研究会では、2016年4月2日(土)14時半より17時過ぎまで第9回SGRAカフェを開催しました。今回のテーマは『難民を助ける―民と官を経験して』で、講師に柳瀬房子様をお迎えしました。
柳瀬様は、今回のテーマの通り、難民支援の「民」と「官」両方の立場を経験してこられました。1979年にインドシナ難民の支援を目的として発足した「難民を助ける会」に設立準備から携わり、現在に至るまでの長年の民間活動に加え、近年は法務省難民審査参与として日本における難民認定行政にも携わっておられます。活動歴は37年にも渡り、難民を助ける会では専務理事、事務局長、理事長を経験され、現在は、認定NPO法人格を得ている同会の会長を務めていらっしゃいます。1992年には、日本に住んでいる難民等の援助を行う国内の活動を担う社会福祉法人さぽうと21を立ち上げました。1990年代中頃に、対人地雷廃絶キャンペーンの一環として、募金を目的として執筆された絵本『地雷ではなく花を下さい』はベストセラーとなり、外務大臣表彰や日本絵本読者賞を受賞しました。今日でも、難民支援や地雷廃絶の分野において国内外で活動を続けておられます。
短い時間でしたが、ご講演では1979年に始まった活動が、現在に至るまでどのように展開されてきたかについて、設立当初と今の時代とを比較しながら紹介していただきました。例えば、インドシナ危機が発生した当時は、多くの日本の若者が直接支援のために現地に行きたいという風潮でしたが、30年以上たった現在は、シリア危機の解決に向けて日本から自ら出向こうという人は少なくなっています。また、国内活動においても、当時の民間セクターには、日本が国連難民条約を批准するように圧力をかけるほどの活気があったそうです。その反面、設立当初、IT化や口座振込がまだ進んでいない時代における市民活動の実態、とりわけ非常に手間暇のかかる電話や電報、手紙による通信方法、そして大量の現金書留による募金の描写がとても印象的でした。
最近の情報として、日本の難民受け入れの動向と、シリア内戦により大量に発生している難民及び避難民を助けるための取り組みについても教えていただきました。参加者は、日本で行われている難民認定の丁寧なプロセスにおいて使用されている、人をはじめとした様々な資源の多さと、本制度の限界・問題点についても説明を受けることができました。
また、シリア問題を受けて、「難民を助ける会」がトルコ国境で進めている取り組みについてもお話を聞けました。その中で、団体の英語名(Association_for_Aid_and_Relief,_Japan、略してAAR_Japan)に「refugee(難民)」という語が含まれていない理由を、支援対象地域の政府との政治的な問題を回避するための配慮と説明していただいた時は、「目から鱗」でした(「我が国には難民問題なんて発生していない」という政府のスタンスへの事前対策です)。
質疑応答の中で、海外活動については、例えば現地派遣スタッフの安全管理及びそれに欠かせない教育・研修、他の国際及び現地NGOとの連携のとり方に関する参加者の疑問に対して丁寧に答えていただきました。また、国内の難民受け入れについては、そもそも難民と移民の違い、実際に迫害を受けてきた難民と難民性の低い庇護希望者(日本でいう難民認定申請者)の見分け方、更に言語教育などを含む経済的な自立に向けた社会的な統合の問題についても話し合いました。
今回のカフェを通して、国内の文化的なマイノリティを対象としているソーシャルワークに関心をもつ報告者にとっては、特に次の3点が参考になり、考えさせられました。1)世論に膨大な影響を及ぼすマスコミとの付き合い方、つまり「難民」に対してどのような社会的なイメージを、どのように作り、またどうすれば啓発活動を通じて全体的な意識の向上を目指せるか。2)難民を「可哀そうな」弱者として見ない、即ち既にもっている学歴などの人的資本を最大限に活かすための自立支援とは何か。3)他の社会的な課題と同様に、難民の受け入れと社会的な統合において、なぜ「官」ではなく、「民」が主導権をとった方が望ましいのか、そしてどのようにすればそれができるか。
非常に有意義な2時間半でした。
当日の写真
<ヴィラーグ・ヴィクトル Virag_Viktor>
2003年文部科学省学部留学生として来日。東京外国語大学にて日本語学習を経て、2008年東京大学文学部行動文科学科社会学専修課程卒業(文学学士[社会学])。2010年日本社会事業大学大学院社会福祉学研究科前期課程卒業(社会福祉学修士)。同大学社会事業研究所研究員、東京外国語大学多言語・多文化教育研究センター・フェロー、日本学術振興会特別研究員を経験。2013年度渥美奨学生。2016年日本社会事業大学大学院社会福祉学研究科後期課程卒業(社会福祉学博士)。上智福祉専門学校、昭和女子大学、法政大学、上智大学、首都大学東京非常勤講師。日本社会福祉教育学校連盟事務局国際担当。国際ソーシャルワーカー連盟アジア太平洋地域会長補佐(社会福祉専門職団体[日本社会福祉士会]内)。主要な専門分野は現代日本社会における文化等の多様性に対応したソーシャルワーク実践のための理論及びその教育。
2016年4月21日配信
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2016.03.24
下記の通り第6回日台アジア未来フォーラムを開催します。参加ご希望の方は、事前にお名前・ご所属・緊急連絡先をSGRA事務局宛ご連絡ください。
テーマ: 東アジアにおける知の交流―越境・記憶・共生―
主 催:公益財団法人渥美国際交流財団、文藻外語大学日本語学科、台湾大学日本語文学学科、台湾大学日本研究センター
開催日: 2016年5月21日(土)午前9時00分~午後5時00分
会場: 文藻外語大学(台湾高雄市) 至善楼15階國璽會議廳/会議室
申込みURL: http://c025.wzu.edu.tw/front/bin/form.phtml?Nbr=60
申込み締切:2016/5/6(金)まで
※但し、定員【70名】に達し次第、受付を終了させていただきます。
講演者、パネリストや論文発表者に、同伴者がいらっしゃる場合も、上記一般参加申し込みHPへのご記入をお願いします。一般参加者の食事の費用は自己負担となります。
お問合せ:SGRA事務局 電話:03-3943-7612 Email:
[email protected]
プログラム
フォーラムの趣旨:
「日台アジア未来フォーラム」は関口グローバル研究会が毎年台湾で主催する国際会議である。本会議では主にアジアにおける文学、言語、教育、歴史、社会、文化などの議題を取り上げる。 第六回目の開催となる今年は「東アジアにおける知の交流―越境・記憶・共生―」について議論する。
帝国主義と植民地主義の下で進められた東アジアにおける近代化の流れは、それまでの中国を中心とした朝貢システムを崩壊させ、国民国家を中心とした国際関係を東アジアにおいて成立させてきた。西欧的国家モデルをいち早く志向して近代国家の成立に成功した日本は、二十世紀東アジアにおける知の交流を語る際に常に重要な役割を果たしてきた。しかし、近年のグローバル化の急速な進展によって、国民国家制度の恣意性が明らかになり、また様々な分野の活動にみられる多くの越境者たちの存在や異なる共同体における記憶の構築、多文化主義に見られる共生の実践など、多種多様な交流の形態はこれまでのような国家単位における知の交流の形を大きく変えてきている。今日においてこうした議論は大変有意義であると思われる。本シンポジウムでは、こうした東アジアにおける知の交流の変容を、参加者たちの多様な立場とアプローチによって読み解いていきたいと考えている。
本国際シンポジウムに関する情報は、随時文藻外語大学日本語学科のホームページにてお知らせいたします。
文藻外語大学日本語文系によるフォーラムURL
日台アジア未来フォーラムとは
第一回の「国際日本学研究の最前線に向けて:流行・ことば・物語の力」では「哈日族」現象をテーマに、日本の流行文化について議論した。第二回の「東アジア企業法制の現状とグローバル化の影響」では、法律的な視点から議論を行った。第三回の「近代日本政治思想の展開と東アジアのナショナリズム」では、近代日本政治思想が植民地において受容、 変容されていた情況を検討した。第四回は「東アジアにおけるトランスナショナルな文化の伝播・交流―文学・思想・言語」をテーマに、メディアが国境を越えていく現象について議論を深めた。第五回の「日本研究から見た日台交流120 年」では、日台交流について回顧及び今後の方向性を示すことが出来た。今回のシンポジウム「東アジアにおける知の交流―越境、記憶、共生―」の開催に至る。
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2016.03.18
2016年2月13日(土)、東京国際フォーラムで第15回日韓アジア未来フォーラムが開催された。2年連続の東京開催となった今回のフォーラムは「これからの日韓の国際開発協力:共進化アーキテクチャの模索」というテーマで行われた。政府開発援助(ODA: Official Developmental Assistance)分野におけるフロントランナーとしての日本の特色ある国際協力と韓国の開発経験が東アジアの持続可能な成長と域内協力にどのように貢献できるか、という問題意識に基づき、日韓の理念(idea)、制度(institution)、国益(interest)が織りなすODAの国際政治経済について考える場となった。
フォーラムでは、未来人力研究院理事長の李鎮奎(リ・ジンギュ)教授による開会の挨拶に続き、日韓、それぞれの基調講演が行われた。今回は深川教授のご提案により、日韓の研究者がクロスで報告を行うという新しい試みを採用した。まず孫赫相(ソン・ヒョクサン)慶熙大学公共大学院教授が、日本のODAについての韓国的な視点を紹介した。韓国の学者たちがこれまで発表した日本のODAについての研究論文での分析結果や主張を体系的にまとめ、紹介した。主な議論の対象には日本のODAの目的と動機、ODA実施機関の新JICAの発足背景、ODA事業規模の内訳と推移、市民社会の参加などが含まれた。このような検討を通して日韓のODAにみられる類似性と差別性について論じた。とりわけ、ODA分野において日本は韓国の教科書であり、決して「ジャパンモデル」が非難されるべきではないと強調した。
深川由起子(ふかがわ・ゆきこ)早稲田大学政治経済学術院教授は、日本が、今後スマート・ドナーとして、国際社会における経済開発・貧困削減をリードし、援助の潮流を作り出す上では、東アジア型産業発展の経験を最も濃密に共有する韓国との協調は重要な鍵であり、韓国にとっても同様であると強調した。このような問題意識に鑑み、韓国の政府開発援助(ODA)にその開発体験がどう反映されようとしているかについて紹介した。そして、体験反映の事例として、セマウル運動と知識共有プログラム(Knowledge Sharing Program: KSP)の2つを取り上げ、体験共有への志向が韓国のODA体制整備とどういう関係を持つのかを議論した。結論として、スマート・ドナーを目指す日本にとり、極めて似た工業化体験を有しつつ、他方では強味、弱味の補完性のある韓国のODAと協調することの便益は実は大いに期待できるはずであり、そのためには韓国の経済発展の経緯とODA供与国としての韓国の特徴を日本が十分に理解すると共に、他方で韓国が棲み分けと協調の便益を戦略的に捉えられるような対話が欠かせないと力説した。
コーヒー・ブレークを挟んで、円卓会議では、まず平川均(ひらかわ・ひとし)教授が「日本のODAを振り返る」という題で、討論のたたき台としてのミニ報告を行った。今世紀に入ってアジアの経済発展により「成功体験としてのジャパンODAモデル」の自己認識が強まっているが、伝統的に援助に携わった人々のミクロレベルでの実践の再評価を通じてバランスある援助論への移行が必要ではないかと振り返った。
また、被援助国(partner country)の視点を踏まえ、マキト・フェルディナンド(Maquito Ferdinand)テンプル大学ジャパン講師によりミニ報告も行われた。日本と欧米のODAは微妙に異なるが、その違いが生じる原因の一つは援助国自身が経て来た発展経験の相違であるとしたうえで、日本の発展経験を特徴づける「共有型成長」(Shared Growth)のDNAの一つの特徴として、日本国内で行われた開発資金提供(developmental Financing)の独自性を上げた。そのような特徴を持つ経済発展モデルのODA政策への適用には、どのような意義あるいは課題があるのかをフィリピンの事例を通して紹介した。
その後、園部哲史(そのべ・てつし)政策研究大学院教授、広田幸紀(ひろた・こうき)JICAチーフエコノミスト、張ヒョン植(チャン・ヒョンシク)ソウル大学行政大学院招聘教授(前KOICA企画戦略理事)らによる熱のこもったディスカッションが続いた。日韓の比較にとどまらず、今後、日韓が協力し合いながら、共に進化し、ODAの「東アジアモデル」とでもいえるようなアーキテクチャを創り上げる可能性について、それぞれの立場や専門領域を踏まえた、そして自分の夢が込められた素晴らしい討論であった。
前回のフォーラム報告でも言及したが、これから「ポスト成長時代における日韓の課題と東アジア協力」について、実りのある日韓アジア未来フォーラムを進めていくためには、総論的な検討にとどまらず、今回のように具体的な課題において掘り下げた検討を重ねていかなければならない。今回から3年かけてODA問題を取り上げることになるが、次回のフォーラムの開催に当たっても、国際開発協力における中国のプレゼンスにも注目しつつ、着実に進めていきたい。最後に第15回目のフォーラムが成功裏に終わるようご支援を惜しまなかった今西淳子SGRA代表と李先生、そしてスタッフの皆さんに感謝の意を表したい。
当日の写真
英訳版はこちら
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<金雄煕(キム・ウンヒ)Kim Woonghee>
89年ソウル大学外交学科卒業。94年筑波大学大学院国際政治経済学研究科修士、98年博士。博士論文「同意調達の浸透性ネットワークとしての政府諮問機関に関する研究」。99年より韓国電子通信研究員専任研究員。00年より韓国仁荷大学国際通商学部専任講師、06年より副教授、11年より教授。SGRA研究員。代表著作に、『東アジアにおける政策の移転と拡散』共著、社会評論、2012年;『現代日本政治の理解』共著、韓国放送通信大学出版部、2013年;「新しい東アジア物流ルート開発のための日本の国家戦略」『日本研究論叢』第34号、2011年。最近は国際開発協力に興味をもっており、東アジアにおいて日韓が協力していかに国際公共財を提供するかについて研究を進めている。
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2016年3月17日配信
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2016.03.08
「土は土に、灰は灰に、塵は塵に」(earth to earth; ashes to ashes, dust to dust)という言葉を信者に思い出させる、カトリック教会の祝日である「灰の水曜日(Ash Wednesday)」(2016年2月10日)に、SGRAの20回目の共有型成長セミナーが、マニラ市にあるカトリックの名門アテネオ・デ・マニラ大学で開催された。今回のセミナーは企画の段階から、実行委員たちの提案で、今まで以上に宗教色が増していた。それもそのはずである。昨年、カトリックの教皇様がフィリピンを訪問された後、回勅(encyclical)を出されたことが、委員たちの心を動かしたのである。灰の水曜日に開催されたのは偶然だったが、セミナーのテーマ「人間環境学と持続可能な共有型成長」(Human Ecology and Sustainable Shared Growth)に相応しいと思った。 グローバル市場経済が世界を席巻する今日、東南アジア諸国、特に中所得の罠(Middle Income Trap)に落ちてしまったフィリピンは、著しい経済発展をとげる一方で社会的格差が増大し、環境破壊も止めどなく進行し、人権侵害や地域・民族間の紛争も解決の糸口さえ見えない状態に陥っている。植民地支配のくびきから解放され、国民国家形成の過程で、多様な民族、宗教、文化の統合に苦慮してきた東南アジア各国では、グローバリゼーションものとでの社会環境の変化に対して、宗教的な価値観、倫理観に基づく批判や反発が生まれてきている。 教皇様が発したのは、貧富の格差の拡大や環境破壊を厳しく批判し、社会的公正と倫理の回復を求める強いメッセージであった。公正と倫理の回復を求めるメッセージには、人間環境学(Human Ecology)という概念が取り上げられているが、このセミナーを通してこの概念の意味や意義など理解し、さらにはフィリピンのSGRAプロジェクトで追究している持続可能な共有型成長との関連性を考えることが、本セミナーの目的であった。 セミナーはフィリピンの国歌斉唱、アテネオ・デ・マニラ大学の経済学部長のクリスティナ・バウティスタ氏と今西淳子SGRA代表の開会挨拶から始まった。午前中は、下記の通り、フィリピン各地から集まった講師による発表が行われた。 発表1「スペインの哲学者レオナルド・ポロによる環境の概念や共存:持続可能性教育への含意」 発表者:Dr. Aliza Racelis (University of the Philippines) 発表2「防災力(レジリエンス)と持続可能性のためのメトロ・マニラの都市計画」 発表者:Arch/EnP. Sylvia Clemente (University of Sto. Tomas) 発表3「パサイ市の旧干拓エリアにおける都市の衰退と貧困の指標との関係の評価」 発表者:Arch. Regina Billiones 発表4「ベンゲット州(フィリピン)の主要民族部族のペドペド喫煙」 発表者:Ms. Girlie Gayle Toribio (Benguet State University) 発表5「カガヤン・デ・オロ河川の流域の家庭における使用・日使用便益の仮想的市場評価手法による推定」 発表者:Dr. Rosalina Palanca-Tan (ADMU), Ms. Marichu Obedencio, and Ms. Caroline Serenas (Xavier University — Ateneo de Cagayan) 発表6「生物濃縮:プラスチックのゴミの悲劇」 発表者:EnP. Grace Sapuay (Solid Waste Management Association of the Philippines) 発表7「気候変動を理解する」、「高潮」 発表者:Mr. Erik Pinaroc (University of Sto. Tomas)、Mr. Gerardo Santiago III (University of Sto. Tomas) 発表8「スペインの植民地資本主義と福音伝道を超えて、フィリピンの教会遺産の評価へ」 発表者:Arch Mynn Alfonso (University of Sto Tomas) このセミナーには100人を超える参加者が集まった。共有型成長セミナーは、以前から専門分野や国籍の壁を超えて実施されてきたが、今回は、初めて世代の壁をも超え、実行委員の推薦の学部生の発表を3本も入れてみた。アジアで最も古く、カトリック最大の大学とも言えるサント・トマス大学の学部生とその先生たちが大勢来てくれた。灰の水曜日に合わせるかのように、午前中の発表は、宗教的な課題(カトリックの哲学者について)から始まり、宗教的な課題(スペイン植民時代の教会について)で終わった。その日は本来断食の日でもあるので、軽いランチを挟んで、午後は発表者の円卓会議が行われ、発表とテーマとの関係の理解を深めようとした。そのまとめ下記のリンクからご覧ください。 「人間環境学」と「持続可能共有型成長」の視点から見た各発表のまとめ(英語) 日比共有型セミナーは12年回に20回開催してきたが、今回も手伝ってくれた甥のアラン君は、セミナー後の懇親会で、感想を聞かせてくれた。「僕はマキト家の中で、このセミナーの出席率が一番いいと思う。何しろ最初は11歳だったのでちゃんと聞いていなかった。でも、今日は、僕と同世代の熱意ある発表を聞いて、やっとセミナーの意義がわかった」と。今後も「世代間の壁」を突破する試みをしようと励まされた。当日の写真--------------------------<マックス・マキト ☆ Max Maquito>SGRA日比共有型成長セミナー担当研究員。SGRAフィリピン代表。フィリピン大学機械工学部学士、Center for Research and Communication(CRC:現アジア太平洋大学)産業経済学修士、東京大学経済学研究科博士、アジア太平洋大学にあるCRCの研究顧問。テンプル大学ジャパン講師。--------------------------
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2016.03.07
関口グローバル研究会(SGRA)では昨年に引き続き、福島県飯舘(いいたて)村スタディツアーを下記の通り行います。 参加ご希望の方は、SGRA事務局へご連絡ください。 SGRAでは2012年から毎年、福島第一原発事故の被災地である福島県飯舘村でのスタディツアーを行ってきました。そのスタディツアーでの体験や考察をもとにしてSGRAワークショップ、SGRAフォーラム、SGRAカフェなど、さまざまな催しを展開してきました。今年も第5回目の「SGRAふくしまスタディツアー」を行います。ぜひ、ご参加ください。 日 程: 2016年5月13日(金)、14日(土)、15日(日)人 数: 10人程度宿 泊: 「ふくしま再生の会-霊山(りょうぜん)センター」参加費: 一般参加者は新幹線往復費用+1万2千円 (ラクーン会会員には補助が出ます)申込み締切: 4月30日(土)申込み・問合せ: SGRA事務局 角田E-mail:
[email protected] Tel: 03-3943-7612 プログラム・詳細
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2016.02.25
SGRAでは、良き地球市民の実現をめざす(首都圏在住の)みなさんに気軽にお集まりいただき、講師のお話を伺う<場>として、SGRAカフェを開催しています。2013年3月に開催した第3回SGRAカフェでは、SGRA会員のダルウィッシュ・ホサムさんに「『アラブの春』とシリアにおける人道危機」というお話をしていただき、大きな反響を呼びました。あれから3年、残念ながら情勢は悪化するばかりです。日本においても、難民・移民問題が注目されていますが、今回は民間の立場から難民を助け、また法務省難民審査参与員としても難民問題に携わり、双方の立場を経験されている「難民を助ける会」の柳瀬房子様に、これまでのご活動や日本と難民支援の歴史、そしてこれからの難民支援についてお話しいただきます。参加ご希望の方は、事前にSGRA事務局(
[email protected])へお名前、ご所属、連絡先をご連絡ください。 第9回SGRAカフェへのお誘い◆柳瀬房子氏講演「難民を助ける~民と官を経験して~」 〇日時:2016年 4月2日(土)14:30~17:00 〇会場:渥美国際交流財団/鹿島新館ホール http://www.aisf.or.jp/jp/map.php〇会費:無料〇申込み・問合せ:SGRA事務局 (
[email protected]) 〇プログラム:14:30~15:30 講演15:30~16:00 ティータイム(休憩)16:00~17:00 質疑応答 〇講師プロフィール:柳瀬房子(「難民を助ける会」会長)1948年、東京都出身。フェリス女学院短大卒。1979年からAARで活動を始め、専務理事・事務局長を経て2000年11月から2008年6月までAAR理事長。2009年7月より会長。1996年より対人地雷廃絶キャンペーン絵本『地雷ではなく花をください』を執筆し、同年、多年にわたる国際協力活動により、外務大臣表彰を受ける。1997年には、『地雷ではなく花をください』により日本絵本読者賞を受賞。法務省難民審査参与員。 難民支援活動や地雷廃絶キャンペーンのため、国内での講演はもとより、海外でも活躍中。 〇メッセージ:「インドシナ難民を助ける会」として発足(相馬雪香会長)したAARJapan難民を助ける会は、 37年目の活動に入りました。政治、宗教、思想に偏らず、活動を続けております。私自身、人生の一番の働き盛りの、30代、40代、50代そして今、67歳、日本の難民支援のための初めての市民団体を、けん引する役割ができたことは、本当にありがたいことと感謝の日々です。多くの方々が、この活動を支えてくださっております。音楽を楽しみながら、日本への難民支援だけでなく、国際協力活動や、東日本大震災後の支援活動などもご報告するチャリティーコンサートを100回以上開催したり、皆様からの募金がこのように生かされているということを、常に発信しながら、ご一緒に活動の輪に加わっていただければと、日々知恵を働かせています。37年間に経験した、官と民、公と私、日本人と世界の人々、難民とは、NGOとは、などを軸に、皆さんとお話ができましたら嬉しいと思います。