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2001.02.09
2001年2月9日(金)午後6時半~9時、東京国際フォーラムのガラス棟402会議室にて、SGRA第2回研究会が開催されました。約40名の参加者は、「グローバル化の中の日本の独自性」研究チームが担当で、ODAを中心に、アジア通貨危機以後の東アジアの経済協力はどうあるべきかということを考えました。最初の講演は、名古屋大学経済学部付属国際経済動態研究センターの平川均教授の「グローバル化とリージョナリズム:東アジアの地域協力は何故必要か」。平川先生は、アジア通貨・経済危機について、その責任はアジアの内的要因に問題がないわけではないが、責任はより大きく、市場の自由化を推奨した米国、IMF、世界銀行などの先進側にあると主張しました。そして、無秩序なグローバル化の制御に向けたひとつの対応策としての地域協力が不可欠であり、リージョナリズムがアジアにおいて急速に展開されていると指摘。今後の目標として、アジアを共生の地とする思想、互いの文化や伝統の尊重、時間の観念を加えた構造転換を提言しました。 次にアジア21世紀奨学財団の角田英一常務理事が、ASEAN中堅官僚研修プログラムを担当している経験に基づき、アジア通貨危機のIMF主導の解決策への反発から、日本型経済発展モデルの研究熱が高まったことを指摘しながらも、汚職・癒着・縁故主義(インドネシア語でKKN)がはびこる限り、経済は歪められ、阻害された国民の無力感、国家への不信感を生み出している。このアジア的風土をどう改革するかが大きな課題であると強調しました。マキトSGRA研究員は、最近の新聞記事のODA削減に関する議論等を引用しながら、「自助努力を支援する」という日本ODAの理念<要請主義・円借款・非干渉主義>について検討し、数の議論に偏らないで、日本ODAの理念がせっかく持っている強いところを生かし、「質」の改善をさらに図るべきだと提言しました。 最後に、李鋼哲SGRA研究員は、日中両国民の相手国に対する意識調査など、たくさんの資料を示しながら、ODA削減議論を中心とした日中経済協力について説明し、中国経済はテイクオフし既に自立発展が可能な段階にあるので、ODA削減は妥当であると結論。さらに日中経済協力の今後の課題として、歴史問題に区切りをつけること、草の根(NGO)・環境協力・貧困扶助を重視すること、経済協力は政府間から民間へシフトすること、日中が両輪となって東アジアの経済発展を進めていくこと等を提言しました。その後、短い時間でしたが、いくつかの質疑応答が為され、第2回研究会も無事、盛会のうちに終わりました。 (文責:今西)
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2000.07.26
2000年7月26日午後6時から8時20分まで、関口グローバル研究会(Sekiguchi Global Research Association, 略称SGRA)設立記念講演会が慶應義塾大学三田キャンパス北新館2階ホールにおいて行なわれた。李恩民実行委員が司会を務め、最初に今西淳子代表から開会の挨拶として研究会設立の経緯を説明した後、F・マキト運営委員と嶋津忠廣運営委員がそれぞれ当研究会の趣旨、2000年度研究プロジェクトの概要について解説した。続いて「グローバル化と地球市民意識の国際比較」研究プロジェクトのチーフである薬会研究員が、学習院女子大学・台湾輔仁大学・上海大学で実施した「地球市民」認識度アンケート調査を具体的事例研究として報告した。開会して30分後、朝日新聞コラムニスト(編集委員)船橋洋一氏がゲスト講師として演壇に立って「21世紀の日本とアジア」とのテーマのもとで次のような課題について辛口で講演した。(1)沖縄サミットの本意は中国・インド・インドネシア・韓国の首脳を招いた上でアジアの声を反映させることにあったが、実際はアジアの問題をあまり取り上げていないし、アジア諸国の声も反映できなかった。(2)同サミットにおいて基地問題についての解決の糸口さえも示していないから、日米間の不均衡な関係は引き続き維持されていく。この問題を解決しない限り、日本の「不沈空母」という役割は終わらないだろう。(3)日本は地理的にアジアにあり、上海などに近いが、21世紀には心も近づかなければならない。そのために「隣交」――近隣諸国との関係の飛躍的発展・強化――という外交を積極的進めるべきであると提言する。(4)以前の日本の大企業家は一国に依拠しながらも世界への発信を構想していたが、情報社会にもかかわらず、現代の日本の起業家は逆に国内ビジネスだけで手一杯で、世界への発信がなかなかできない。(5)アジア諸国は目覚しい経済変化と社会進歩を遂げつつある。経済面において日本がリードするアジアはすでに変わり、IT革命の領域においてシンガポール、台湾、香港、韓国等はめざましく発展しているし、インド・中国の技術者が世界中で活躍している。このような情勢の中で「隣交」外交がいっそう必要となる。上記のほかに船橋氏はまたハイテクの進展と戦争の解決問題、国際関係とテロ対策問題、朝鮮半島の情勢、北朝鮮のテポトン発射と日米安全保障、日韓間歴史問題の区切りなどについても熱く語った。設立記念講演会には渥美伊都子渥美国際交流奨学財団理事長、渥美直紀鹿島建設専務取締役、加藤秀樹構想日本代表をはじめ、SGRA会員、留学生、NGO団体代表及び一般参加者、慶應大学大学生・大学院生など約百名が出席した。明治維新以来、多くの日本人の心は欧米にあったが、地理的にはアジアにあり(In Asia)引っ越すことはできない。世界の人々にもっとアジアを知ってもらうには日本はアジア諸国と連携して、その一員として発信しなければならない(Of Asia)それを実現させるためには、「隣交」――目覚しい経済変化を遂げつつある近隣諸国との協力・発展を積極的に推進しなければならない。日本だけのことを考えていればよかった、いわば「一国平和主義」の時代はすでに終わった。今や21世紀はアジアの「全体的平和主義」を考えなければいけない時代に入ったと思う。こういう意味で言えば、グローバル化が進む現在において、船橋氏の問題提起や分析の視角は、若い研究者の私達にとっては、とても刺激的・啓発的であった。SGRA若手研究者は、この考え方に沿って研究と提言活動を展開していこう。(文責:李恩民)
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