SGRAの活動

  • 2026.03.25

    解放後における韓国人知識人層の脱植民地議論と歴史叙事構成の変化

    韓国が日本の植民地支配から解放された後の混乱と変動の時代、歴史教育はどのように展開したのでしょうか。特に歴史科目の構成がどう変化してきたのか、「韓国の歴史教育」について一緒に考えてみましょう!   この動画は、2023年8月に開催された「第8回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」フォーラムの金泰雄教授の発表「解放後における韓国人知識人層の脱植民地議論と歴史叙事構成の変化」をまとめたものです。このフォーラムのレポートは日本語、韓国語、中国語で発行されていますので、興味のある方は各言語のレポートをSGRAのウェブサイトからご覧ください。 レポート第106号「第8回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」 ◆ 台本・動画編集:ノ ジュウン ◆ ナレーション:楠田 悠貴、AI音声 ©️Copyright:関口グローバル研究会、2026。  
  • 2026.03.18

    戦後日本のメディア文化と「戦争の語り」の変容

    戦後日本のメディアにおいて「戦争」がどのように語られ、どのように変化していったかを、「メディア文化」との関係から考えてみます。   この動画は、2023年5月に開催された「第8回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性―20世紀の戦争・植民地支配と和解はどのように語られてきたのか─教育・メディア・研究」の福間良明先生の発表「戦後日本のメディア文化と『戦争の語り』の変容」を中心にまとめたものです。このフォーラムのレポートは日本語と韓国語、中国語で発行されていますので、興味のある方は各言語のレポートをSGRAのウェブサイトからご覧ください。 レポート第106号「第8回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」 ◆ 台本:尹 在彦 ◆ 動画構想:尹 在彦 ◆ 動画編集:ジ ソヨン ※本動画は、AI音声を使用して制作しています。 ©️Copyright:関口グローバル研究会、2026。  
  • 2026.02.25

    SGRA Sustainable Shared Growth Seminar 49 Report

    SGRA Sustainable Shared Growth Seminar 49 Report The Many Faces of Alitaptap: A Kaizen Approach to Community Currency at UPOU Seminar Report ( Lite Version ) (HD Version available on request from editor) February 20, 2026
  • 2026.02.12

    第1回日印アジア未来フォーラム「アジアにおける日本研究:学術的ネットワークの構築へ」へのお誘い

    下記の通り第1回日印アジア未来フォーラムを対面のみで開催いたします。参加ご希望の方は事前に参加登録をお願いします。今回はオンラインでの参加はできませんので予めご了承ください。   テ  ー  マ:「アジアにおける日本研究:学術的ネットワークの構築へ」 日  時: 2026年3月13日(金)午後1時~6時 会  場: Sir Shankar Lal Concert Hall、デリー大学 言  語:英語 共同主催:渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)・デリー大学東アジア研究科   参 加 申 込 :こちらよりお申込くださいください(リンクをクリックして登録してください) お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612)          デリー大学東アジア研究所([email protected])     ◆フォーラムの趣旨 これまでの東アジア研究は主に東アジア地域内あるいは西洋の理論的枠組みの視点から語られてきました。急速に変化する地政学のダイナミクスとアジア域内の連携の重要性の高まりを背景に、今、こうした視点を再構築することが不可欠となっています。本フォーラムでは、インドにおける日本研究の意義に焦点をあて、東アジア研究および東アジアにおけるインド研究の重要性を明らかにします。   南アジアにおける初の試みとなる本フォーラムでは、東アジアおよび南アジア研究に携わる研究者や研究機関の間で、強固な学術ネットワークの構築を促進することを目的とします。そのために地域研究の現代における意義、他のアジアの研究者によるアジア社会研究への多様な方法論、最新の学術動向、そして学生の研究関心について、批判的な議論を行う場を提供します。   学際的な対話と交流を通じて、アジア研究における共通の関心と各地で特色のある発展を遂げた軌跡の双方を明らかにし、重要な課題や将来の協力関係構築の可能性を浮き彫りにすることで、アジア全域における持続可能かつ相互に有益な学術的パートナーシップの基盤を築くことを目標とします。     ◆プログラム 9:30 AM 受付 10:00 – 11:30 AM   開会式 総合司会:デリー大学東アジア研究科 開会挨拶 Prof. Ranjana Mukhopadhyaya(デリー大学東アジア研究科) 開会挨拶 今西淳子(SGRA代表) 歓迎挨拶   11:30 – 12:00 PM   休憩・交流   12:00 – 1:00 PM 招待講師の発表(韓国・台湾・インドからの日本研究専門家)   発表1:Dr Nidhi Maini (デリー大学東アジア研究科) 「インドにおける日本研究:成長、機会、文化交流」   発表2:Prof. Nam Ki-jeong 南基正  (ソウル大学日本研究所) 「韓国における日本研究の開発と将来:ソウル大学の先駆けと「脱地域学」への転換」   発表3:Prof. Chen Tzu-ching 陳姿菁 (開南大学応用日本語学科) 「台湾における日本研究と教育の現状と傾向:日本・台湾・インドの学術的ネットワークの構築へ」   発表4:Mr. Hoshina Teruyuki 保科輝之  (国際交流基金ニューデリー日本文化センター) 「国際交流基金と南アジアにおける学術的なネットワーク構築」   1:00 – 2:00 PM   休憩   2:00 – 3:00 PM    パネルディスカッション モデレーター: Dr. Amlan Dutta(デリー大学東アジア研究科日本研究専攻) パネリスト:招待講演者と学内講師・日本研究の研究者   討論者: Dr. Sweety Gupta(デリー大学東アジア研究科) Arpan Banerjee(デリー大学東アジア研究科)   質疑応答   3:00 – 3:15 PM    休憩   3:15 – 4:30 PM  デリー大学東アジア研究科の若手研究者による発表 座長: Dr Alok Chandan   発表1:Dr Shashank Patel (Researcher) 「インド・日本のテクノロジーと戦略の融合:半導体産業の技術外交の事例」   発表2:Ahmad Shadaan(Ph.D. Scholar) 「インドにある日本アニメと漫画:その受容と最近の拡大」   発表3:Shreya Mamgain(Ph.D. Scholar) 「日本社会と文学にいる女性:「新しいオンナ」と「モダンギャル」の事例」   発表4:Rashi Chaudhury(Ph.D. Scholar) 「アーユルヴェーダと和食の出会い:インドの伝統的な健康知識と現代の日本食事生活 招待講演者と参加者との質疑応答       4:30 閉会式と文化プログラム 閉会挨拶  デリー大学の日本語学生による文化プログラム 謝辞     6:00 PM ハイティ(軽食)とネットワーキング     ※詳細は下記リンクをご参照ください。 英語版プログラム  
  • 2026.01.13

    第23回日韓アジア未来フォーラム 「朝鮮半島から読み解く新しい東北アジアの地政学」へのお誘い

      下記の通り第23回日韓アジア未来フォーラムをハイブリッド形式で開催いたします。会場でもオンラインでも参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。   テ  ー  マ:「朝鮮半島から読み解く新しい東北アジアの地政学」 日   時:2026年2月20日(金)午後2時~5時 会   場:石川県立図書館食文化体験スペース (オンラインとのハイブリット開催) 言   語:日韓同時通訳 主   催:渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA) 共   催:未来人力研究院 協   力:東北亞未来構想研究所 参 加 申 込 :こちらよりお申込くださいください(リンクをクリックして登録してください)   (参加方法に関わらず参加用URLが届きます。会場参加の方は当日会場にお越しください。)   お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612)         ◆フォーラムの趣旨 東北アジアは今、米中対立、ウクライナ戦争、北朝鮮の軍事化、経済安保競争など、複数の危機が交錯する新しい地政学的転換点に立っている。この地域は政治・経済・技術の分野が密接に連動し、従来の安全保障概念を越えた「複合的地政学空間」となりつつある。朝鮮半島は依然としてこの変動の中心に位置し、地域の緊張と協力の両面を象徴している。本フォーラムでは、北朝鮮情勢と東北アジア秩序の変化を再評価するとともに、経済安全保障、サイバー安保、技術同盟といった新しい協力領域を視野に入れ、日韓が共有できる戦略的課題を探る。   ◆プログラム 司会: 金 雄煕(仁荷大学) 開会挨拶:今西 淳子(渥美国際交流財団・SGRA) ----------------------------------------------- 基調講演: 「中国と南北朝鮮双方との関係の新しい変化」朱 建栄(東洋学園大学) 2025年9月3日の北京式典で中ロ朝の指導者が並んだが、三者合同会談はなかった。米国こそ「新冷戦」の構図を煽っているが、中国は自身の発展戦略と地域の平和への期待により、北東アジア地域の分断、陣営化を望んでいない。中韓関係は尹錫悦前政権時代に大幅に後退したが、習主席の11年ぶりの韓国公式訪問は関係の正常化の新しい起点になった。中国は北東アジアにおける韓国の独特で重要な役割に引き続き期待を寄せている。半島の「非核化」問題について中国は従来の立場は変わらないと表明し、国連安保理決議による義務を依然果たしている。内外情勢の激変を踏まえて、関係諸国とともに半島の恒久的平和体制を追求していく姿勢だ。 ----------------------------------------------- 報 告1: 「北朝鮮の情勢変化と東北アジアにおける「新冷戦」構図の形成」李 鋼哲(INAF) 北朝鮮は、金正恩氏が2012年に政権を引き継いで以来、大きな政策転換を見せている。経済的には、2021年の朝鮮労働党第8回大会で、新たな「国家経済発展五カ年計画」を策定し、対外経済に左右されない『自力更生、自給自足』を基本路線にしている。2024年1月には「地方発展20×10政策」を打ち出し、地方開発に力を入れるとしている。対外関係では、ロシアとウクライナ戦争をきっかけに、ロシアとの急接近を図り、朝露軍事同盟を結び、同時に中国との伝統関係を維持することで、結果的には朝中露3カ国の結束が強まり、日米韓3カ国の同盟と対抗する構図が形成され、東北アジア地域は「新冷戦」時代に突入しつつある。 ----------------------------------------------- 報 告2: 「北朝鮮のサイバー脅威とクーパン事態から見たサイバー安全保障の課題」李 成訓(国家安保戦略研究院) 北朝鮮のサイバー脅威は、外貨獲得(仮想資産窃取)・諜報活動・インフラ攪乱を組み合わせた「国家主導の犯罪・諜報複合体」へと進化している。韓国は2025年の通信会社ハッキングやクーパン個人情報流出事件を通じて、サイバー安全保障が国家安全保障の中核であることを確認した。2026年には生成AIがフィッシングやディープフェイクを高度化し、選挙や社会紛争の局面で偽情報の影響力が拡大する可能性が高い。対応策として、重要デジタルインフラの指定と復旧能力の強化、北朝鮮脅威に特化した追跡・制裁パッケージの構築、日韓間のCERT/CSIRT協力強化が必要である。特に仮想資産分野でのKYC/AML高度化とブロックチェーン分析の実効性向上が求められる。 ----------------------------------------------- 指定討論1: 「北東アジアの将来と米国——「新冷戦」論を中心として」 三村光弘(新潟県立大学) 基調講演で朱建栄は、「新冷戦」の構図を煽っているのは米国であり、中国は北東アジアの分断、陣営化を望んでいないとする。報告1で李鋼哲は、結果的には朝中露3カ国の結束が強まり、日米韓3カ国の同盟と対抗する構図が形成され、東北アジア地域は「新冷戦」時代に突入しつつあるとする。米国が朝鮮と非核化を前提としない対話を始めたとき、北東アジアには朝鮮戦争の終了と共に「米国のいない北東アジア」の姿が見え始める。 ----------------------------------------------- 指定討論2: 「日韓の地政学的関係性とその力学」金 崇培(釜慶大学) 19世紀に誕生した地政学は、今日においても事象分析の視点を提供しており、その領域は地経学や批判地政学へと発展している。報告者の議論を前提としつつ、ここでは古典的地政学の視点から日韓関係を省察し、あわせて地域秩序を再考する。具体的には、帝国的法規範による「1910年体制」、日韓国交正常化による「1965年体制」、リベラリズムが前景化した「1998年体制」、そしてリアリズムが顕在化している現状を再確認する。 ----------------------------------------------- 指定討論3: 「『敵対的二国家関係』は朝鮮半島の法秩序を変えるのか」権 南希(関西大学) 近年、北朝鮮は南北関係を「敵対的二国家関係」と位置づける言説転換を明確化している。こうした政治的宣言が朝鮮半島をめぐる国際法秩序において既存の法的枠組みを変更するものかを検討し、併せて、危機管理や交渉、抑止の前提を再構成する性格を有するのかに着目する。とりわけ、1953年停戦体制の法的連続性を踏まえつつ、法的安定性と実務的変容が交錯する局面を整理し、討論の出発点としたい。 ----------------------------------------------- 指定討論4: 「北朝鮮によるサイバー攻撃に対する見解と対応方向」 盧 明華(韓国国防組織学会長) 現代の北朝鮮によるサイバー攻撃は対韓国工作から外貨獲得へとその目的を深化させ、対象や技術、侵入経路においても多様化の様相を呈している 。これに対し、韓国は国内機関の連携から国際共助へと対応体制を拡張してきたが、依然として攻撃との時差や手段選択における制約が課題として残存している 。本発表では、サイバーセキュリティの実効性を確保するため、攻撃原点への打撃手段の確保、攻撃勢力間の共助体制の分断、および海外拠点の閉鎖に向けた緊密な国際協力の推進を提言する。 ----------------------------------------------- 指定討論5: 「国交正常化60年を迎える日韓が共有する困難な課題」木宮 正史(東京大学名誉教授) 国交正常化から60年を経て非対称・相互補完関係から対称・相互競争関係になった日韓は、現在、①同盟を共有するトランプ米政権の登場に伴う戦略的不透明さ、②米中対立の尖鋭化・構造化、③体制生存のため核ミサイル開発に邁進し韓国との関係を「敵対的な二国間関係」と規定する北朝鮮、こうした不透明で困難な戦略環境に直面する。共有する困難な課題への対応に関して日韓両政府、両社会がどのような選択をするのかを注視する必要がある。 ----------------------------------------------- 自由討論 モデレーター:平川 均( 名古屋大学名誉教授) 閉会挨拶:李 鎮奎(未来人力研究院)   ※プログラムの詳細は、下記リンクをご参照ください。 日本語版 韓国語版 韓国語版ウェブサイト
  • 2026.01.07

    「わたし」の歴史、「わたしたち」の歴史―色川大吉の「自分史」論をてがかりに

    歴史学者が書く「歴史」ではなく 専門家ではない個人が書く「歴史」について考えてみましょう!   この動画は、2023年8月に開催された「第8回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」フォーラムの安岡健一教授の発表「「わたし」の歴史、「わたしたち」の歴史―色川大吉の「自分史」論をてがかりに」をまとめたものです。このフォーラムのレポートは日本語、韓国語、中国語で発行されていますので、興味のある方は各言語のレポートをSGRAのウェブサイトからご覧ください。 レポート第106号「第8回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」 ◆ 台本:孫 軍悦 ◆ 動画構想:孫 軍悦 ◆ 動画編集:今西 勇人 ◆ ナレーション:佐藤 祐菜、楠田 悠貴 ©️Copyright:関口グローバル研究会, 2025.   [caption id="" align="alignnone" width="200"] ◇ 中国語版動画[/caption] [caption id="" align="alignnone" width="200"] ◇ 韓国語版動画[/caption]
  • 2025.12.25

    林泉忠「第9回東アジア日本研究者協議会パネル『戦後東アジア分断国家における祖国観』報告」

      2025年11月1日から2日にかけて韓国の翰林大学で開催された「第9回東アジア日本研究者協議会」のSGRAパネルに参加した。「戦後東アジア分断国家における『祖国観』」をテーマとし、冷戦が東アジアにもたらした地政学的な断裂と、そこから派生した多層的なアイデンティティの問題を掘り下げた。核心的な関心は、「分断国家」という特殊な状況下で、「祖国」の概念がいかに形成され、変遷し、現在まで流動し続けているのかという点にある。   東アジアにおいては台湾海峡を挟む中台、軍事境界線で隔てられた朝鮮半島、本土復帰前の米国統治下にあった沖縄と日本本土の関係など、多岐にわたる分断が存在した。国家の分断は民族の統合を求める強固なナショナリズムの運動を生み出した一方で、分断された地域が独自の歴史的・文化的文脈を形成し、ナショナルとは異なる地域的・ローカルなアイデンティティを確立する契機ともなった。本パネルでは沖縄、台湾、韓国の3つの事例を取り上げ、各々が「民族や国家の動向に翻弄され」、アイデンティティが絶えず流動化してきた共通の課題を抱えていることを確認しつつ、それぞれの特殊な状況を詳細に検討した。   最初に琉球大学の鳥山淳教授が「戦後沖縄社会の祖国像」と題し、米国の統治政策の変遷を軸に、戦後沖繩における祖国観のダイナミズムを時系列で分析した。鳥山教授は、近代日本国家へ強制的に編入され同化政策を受けながらも、太平洋戦争の末期に地上戦の最大の犠牲地となった沖縄の過酷な経験が、1940年代後半において、日本という「祖国」に対する根源的な懐疑を生み出したと指摘する。この時期には、「独立共和国」や「人民自治政府」の樹立といった、日本からの分離独立を求める主張すら生じ、国家意識が大きく動揺した。しかし、1950年代の米軍統治下に入ると、日本への帰属が歴史的な必然として捉え直され、「沖縄解放」の願望は「祖国意識」へ強力に接続されるに至る。すなわち、「祖国」は占領支配から解放されるための「希求される対象」として認識され、この強い願望は「復帰運動」として結実する。   しかしながら、1972年の本土復帰は分断時代に築かれた米軍基地の固定化という、看過し得ない「軋轢」を内包していた。基地の大幅削減や全面撤去を求めた復帰運動の敗北は、復帰の喜びの裏側で「祖国」という概念に対する複雑な感情を醸成させる。鳥山教授は1970年代以降、沖縄の課題は「祖国」たる日本本土に対し、戦争責任や基地問題という「過去の清算」を求める段階へと移行したと論じ、祖国観の多義的な性格を浮き彫りにした。   台湾中央警察大学の李明俊教授は、「戦後台湾社会の『祖国像』」に焦点を当て、台湾の祖国観が歴史的・地理的にいかに漂移性を伴ってきたかを論じた。報告ではオランダ・スペイン時代、清国統治時代、そして日本植民地支配といった多層的な支配構造を経る中で、台湾のアイデンティティは常に流動的であったことが強調された。特に日本統治時代、台湾人は日本国籍を持ちながらも「内地人」と差別され、自らを「アジアの孤児」と表現するなど、既存のナショナルな枠組みに収まらない独自の意識を形成していった。このアイデンティティの流動性は戦後初期に極点に達する。1945年、台湾人には「祖国(中華民国)回帰」への強い憧憬が存在したが、国民党政権による略奪的統治と1947年の「二二八大虐殺事件」により、この「中国祖国観」は幻滅へと転じた。さらに戒厳時期(1949-1987年)を通じて、政治的な力によって「中国祖国観」の強化が図られたが、この高圧的な統治は、かえって台湾住民と中国との文化的な疎外感を増幅させ、本省人・外省人の対立を深めた。   この反動は1980年代以降の民主化運動のなかで、国民党政権を「外来政権」と見なし、台湾人自身の政権へと転換を図る「台湾本土化(naturalization)」の原動力となる。報告では李登輝元総統の言葉を引用し、台湾における祖国観が政治的な独立性の確立と民主化のプロセスを経て、完全に再構築された様相が分析された。   国立釜慶大学の金崇培教授は、「戦後韓国社会の『祖国像』」について報告し、朝鮮半島における「戦後」概念が1945年の日本からの「解放」と、1953年の朝鮮戦争「休戦」という二つの重要な時点を内包する「複数の戦後」として捉えるべきだと強調した。教授は自身が在日韓国人3世という立場から、在日コリアンのアイデンティティ変遷(名称との関連)も視野に入れつつ、韓国社会における祖国像を考察した。近代韓国は1897年の大韓帝国成立とともに、朝鮮半島全体を一つの管轄権の下におく「朝鮮民族の国」としての祖国概念を確立したが、戦後はイデオロギーの衝突による分断体制へと突入する。韓国社会像は、「祖国の光復」と「祖国統一」という民族的な大義に強く規定されながらも、親日派や共産主義勢力を排斥・浄化しようとする複雑な過程をたどった。   特筆すべきは1991年の南北同時国連加盟が、逆説的に朝鮮半島に「二つのコリア」が存在することを国際的に承認し、統一への道のりにおける一つの大きなパラドックスとなった点である。しかし、統一への希求は止むことなく、2000年の「6.15南北共同宣言」では南側の連合制案と北側の緩やかな連邦制案が「相互に共通性がある」と認められ、漸進的な統一を志向していくことで合意が形成された。金教授は韓国の祖国像が民族の全体性という理念と、固定化された分断の現実との間で、絶え間ない緊張を強いられている現状を結論付けた。   パネルの総括と討論を担当した南基正教授(ソウル大学日本研究所)は「分断国家の祖国は何か、それは何を意味するか?」という根本的な問いを提示し、3地域が共有する構造的な課題を浮き彫りにした。沖縄、台湾、韓国が日本による植民地支配あるいは宗主国関係という「共通の歴史経験」を持ちながら、戦後においては米国との関係や政治的地位の差異から「異なる戦後経験」を辿った点を指摘した。その分析は現在の東アジアが抱える構造的な問題、すなわち、「時間軸と空間軸のズレ」へと集約される。韓国有事、台湾有事、沖縄の米軍基地問題といった安全保障上の危機が地政学的に分断状態を固定化しようとする一方で、各地域の内部では固定化に抵抗する「逆転の想像力」が生まれている。それは敵対的な「二国家」としての相互承認、あるいは台湾独立、琉球独立といった既存の国家フレームを乗り越える試みとして発現している。これらは単なる地方政治の現象にとどまらず、東アジア全体が抱える「国民国家体制の動揺と再構成」という、より大きな歴史的変動の一部であると結論付けた。   このフォーラムは、複雑化する東アジアの国際情勢と国内政治が密接に連動している現状を、マクロな視点からミクロなアイデンティティの問題まで重層的に捉え直す機会となり、過去を真摯に検証し、未来志向の平和な地域関係をいかに構築すべきか、学術的な基盤を提供する有意義な場となった。   <林泉忠(りん・せんちゅう) LIM John Chuan-Tiong> 東京大学博士(法学)。国際政治学専攻、主に東アジアの国際関係、日中台関係、台湾研究、沖縄研究。琉球大学法文学部准教授、台湾中央研究院近代史研究所副研究員、ハーバード大学フルブライト客員研究員、国立台湾大学歴史学科兼任副教授、中国武漢大学国際問題研究院教授、同日本研究センター執行主任、香港中文大学兼任教授、東京大学東洋文化研究所特任研究員、香港「明報」(筆陣)主筆などを歴任。著書に『「辺境東アジア」のアイデンティティ・ポリティクス:沖縄・台湾・香港』(明石書店、2005年)、『日中国力消長と東アジア秩序の再構築』(台湾五南図書、2020年)、『世界の岐路をよみとく基礎概念~比較政治学と国際政治学への誘い~』(共著、岩波書店、2024年)など。       2025年12月25日配信
  • 2025.12.25

    張桂娥「第9回東アジア日本研究者協議会パネル『現代児童文学に見る戦争の記憶と継承』報告」

      2025年10月31日から11月2日に韓国・翰林大学で開催された「第9回東アジア日本研究者協議会国際学術大会(EACJS9)」において、SGRA企画パネル「現代児童文学に見る戦争の記憶と継承」を行った。未来の子どもたちに過去の戦争体験をどのように伝承していくべきか、児童文学ができることを東アジアおよび国際的視点から再考することを目的として実施された。   第1部では、日本・中国・台湾における戦争児童文学の歴史的変遷と特徴が分析された。成實朋子氏は、前川康男『ヤン』と中国の薛濤『満山打鬼子』の日中比較を通じて日本の戦争児童文学が十五年戦争に限定されがちであること、戦地・中国を舞台にした作品が海外での受容に困難を伴う構造的な課題を指摘し、日中それぞれの受け止め方の違いを論じた。齋木喜美子氏は、沖縄戦を題材とした児童文学を取り上げ、沖縄という地で物語化が遅延した歴史的経緯を踏まえつつ、1960年代半ば以降の作品が「命(ヌチ)どぅ宝」の精神に基づき、愛国美談ではない真実の語りを追求する使命感を担ってきたことを強調し、戦後80年を迎える中での今後の語り継ぎの方向性を提示した。張桂娥氏は、陳玉金の『夢想中的陀螺』と楊雲萍の詩絵本『冷不防』の2作品を取り上げて、台湾における戦争児童文学の語りが、歴史的記録から個人的・情緒的な共感を重視する潮流へと変化していることを指摘し、子どもの想像力を通じて未来世代へ提供される価値を探求した。   第2部では、イタリア、コロンビア、ウクライナの児童文学を対象に、暴力や戦争、災害の記憶がどのように語られているかが検討された。マリアエレナ・ティシ氏は、朽木祥『パンに書かれた言葉』と、福島や広島の原爆をテーマとしたイタリア人作家の作品との比較を通じて、東日本大震災後の日本の児童文学が、第2次世界大戦の記憶を物語に組み込むことで共感を喚起する手法に着目した。フリアナ・ブリティカ・アルサテ氏は、コロンビアの武力衝突を背景とする絵本を通して、子どものトラウマの視点が「語られざる戦争」であると捉え平和教育の重要性を論じた。オリガ・ホメンコ氏は、ウクライナにおける児童文学において、ソビエト時代の英雄的な物語から、2014年および2022年の侵攻後に「身近な現実」としての戦争を描く文学が急増した経緯を説明。近年の作品は、戦争が「日常」として認識される中で、子どもの心理的な苦痛に寄り添い、現在を生き抜くための支えとなる機能を果たしている点を強調した。   戦争児童文学は過去の事実を伝えるだけでなく、感情への共鳴を通じてレジリエンス(回復力)を育む「生きたナラティブ」として機能していることを再認識できたことが今回の最大の成果である。また、児童文学研究が平和学、トラウマ理論、教育学といった学際領域と深く結びつく可能性を示せたことも今後の研究の広がりに寄与すると考える。登壇者からは、戦争を「現在進行形の問題」として子どもたちに語り継ぐ責任、被害者の視点に寄り添う平和教育の重要性、そして児童文学が持つ希望の力への確信が語られた。   登壇者およびコメンテーターの先生方から、セッションを終えての深い洞察と貴重なメッセージを頂戴したので一部ご紹介し、最後の総括とする。   成實先生:今回のパネルでは、普段聞くことのできないような話をたくさん聞くことが出来、いずれの話も大変興味深く、自分としても大変勉強になった。戦争が過去のものではなく、現在進行形で進んでいるという不幸な状況の下、児童文学の形で子どもたちに語り継がねばならないということを各地域の大人が痛感し活動していることが実感できた。   齋木先生:悲惨であればあるほど戦争の話は遠ざけてしまいがちだが、戦争を遠い過去にせず「私たちの問題」として次代の子どもたちに語り続けねばならないと痛感した。各国の作品事例から、戦争の物語が現在進行する戦争にも歴史的想像力を喚起させうることを学んだ。また抑圧や差別がいずれ大きな戦争につながることについても考えさせられた。沖縄は歴史的に「周縁」として取り扱われてきた地域だが、今後も周縁にこだわり、「どうして戦争が起きるのか」「私たちに何ができるのか」、児童文学を通して問い続けていきたい。   マリアエレナ先生:私はいっとき自分の仕事の意義、そして戦争と児童文学の関係を考察することの有用性に疑問を抱いた。しかし、私たちの研究を共有してくださった方々からのフィードバック、異なる文化圏の児童文学作品にも共通点があるのだという確信、そして何よりもオリガ先生の実体験を伺ったことによって、児童文学を研究する価値への信頼を取り戻し、今回の発表で紹介した小説の主人公たちのように、私の中にも希望が再生した。これからも、特に児童文学の価値をまだ知らない人たちに、その重要性を伝え続けていきたいと思っている。   張桂娥:今回のパネルを通じて、戦争における加害と被害の歴史を学ぶ上で、加害者側の国民が主体的に平和について学び続ける機会を確保することの重要性を改めて認識した。また同時に、被害を受けた人々が抱えてきた苦しみや経験を、児童文学という媒体を通じて国際社会へ継続的に伝えていくことの意義を強く実感した。   本パネルの実現のために世界各地からお集まりいただき、たくさんのお力添えをいただいた登壇者の先生方に、御礼申し上げます。ありがとうございました。   張桂娥報告完全版:   当日の写真:   <張 桂娥(ちょう・けいが)CHANG, Kuei-E> 台湾花蓮出身、台北在住。2008年に東京学芸大学連合学校教育学研究科より博士号(教育学)取得。専門分野は児童文学、日本語教育、翻訳論。現在、東呉大学日本語学科副教授。授業と研究の傍ら、日台児童文学作品の翻訳出版にも取り組んでいる。SGRA会員。       2025年12月25日配信    
  • 2025.12.18

    李趙雪「第19回SGRAチャイナ・フォーラム『琳派の創造』報告」

      2025年11月22日(土)午後3時(日本時間4時)より第19回SGRAチャイナ・フォーラム「琳派の創造」が北京大学外国語学院(日本文化研究所)で開催された。突然緊張が高まった日中関係のなか、参加者の温かい支えを受け、会場・オンラインのハイブリッド形式で日中両国の視聴者に同時配信した。   暖かく穏やかな天候に恵まれ、北京大学構内の未名湖や博雅塔周辺は観光客で賑わい、活気に満ちていた。キャンパスで記念写真を撮影した後、フォーラムは始まった。孫建軍先生(北京大学外国語学院)が司会を務め、主催者代表の李淑静書記(北京大学外国語学院)、今西淳子常務理事(渥美国際交流財団)、後援の野田昭彦所長(北京日本文化センター)が挨拶した。講師として日本近代美術史の研究者・古田亮先生(東京藝術大学大学美術館)、討論者には戦曉梅先生(国際日本文化研究センター)、中村麗子先生(東京国立近代美術館)、董麗慧先生(北京大学芸術学院)をお迎えした。   講演では、日本美術史において「琳派を一つの流派」と捉える言説が近代にどのように構築されたかが議論された。琳派は1615年に起源を持ち、400年の歴史があるとされている。しかし、流派の開祖である俵屋宗達や本阿弥光悦、さらには継承者とされる尾形光琳や酒井抱一は、自らを「琳派」画家と称することはなく、狩野派のような伝承関係も存在しない。明治時代の19世紀後半、海外におけるジャポニスムの中で尾形光琳が最初に注目された。その後、大正時代には個性を重視するモダンニズムの中で俵屋宗達が評価された。昭和時代の20世紀中期には、美術史学の展開や江戸絵画の再評価の中で酒井抱一の文学性が評価された。近代の異なる背景や文脈の積み重ねで「琳派」が成立した。今回の講演内容は美術史だけでなく、古田先生がこれまでに企画した琳派展の紹介も含まれており、近年では「琳派」が中国で初めて詳細に紹介されるイベントになった。   日中近代美術史・比較文学の研究者である戦曉梅先生は、日中がまだ国交を結んでいない1958年に中国で開催された尾形光琳展について紹介した。「琳派」に対する異なる視点が生み出すさまざまな評価の可能性を提起し、「琳派」がつくられた歴史の中で、「イメージの背後にある文学的想像力」が無視されている理由は、近代日本美術史の選択によるものであると指摘した。かつて古田先生の琳派展覧会を手伝った中村麗子先生は、近代の日本画家の光琳についての言説を分析し、明治中期の日本画の制作過程において、日本画家が自らの制作に正統性を求める中で、光琳が「日本」を象徴する存在となったことを指摘した。近年、若手研究者として大活躍する董麗慧先生は過去の「歴史記述」、時空を越える対話としての「芸術的伝承」、今日の「文化的生成」という3つの内容から古田先生の講演の意義について述べた。   自由討論は前回と同様にモデレーターの名手、澳門大学の林少陽先生によって進められた。林先生は E・ホブズボウムと T・レンジャー編集の英語論文集『The Invention of Tradition』(和訳:創られた伝統)を想起し、近代における一連の「創られた伝統」がナショナリズムの下で、想像上の共同体の結束力を高めるために行われたことを述べた。琳派も例外ではない。フォーラムの日本語の題名は「『琳派』の創造」であるが、それが「琳派的発明」と中国語に翻訳される理由は、The Invention of Traditionの中国語翻訳が「伝統的発明」とされるためである。その後、戦先生は「裝飾性」をはじめとする美術用語の使用、董先生は琳派の海外伝播の問題について問いかけた。中村先生は近代の美術学校が設立された後、流派が解体された状況において、画家たちが前近代の画家に私淑した問題について言及。古田先生はそれぞれの質問に丁寧に回答し、内容を深めた。   最後に清華東亜文化講座を代表して、王中忱先生より閉会の挨拶があった。王先生は自身の琳派に対する理解を述べ、グローバル化が進む今日において、芸術の流動性が実際に創造性に満ちていること、琳派の流転の中で中国に影響を与えた可能性について議論した。王先生は、毎年チャイナ・フォーラムが新しいテーマを提起することは非常に意義深いと考えており、企画・支援してきた渥美国際交流財団関口グローバル研究会に感謝の意を表し、次回への期待を寄せた。   本フォーラムは、「ラクーン(元渥美奨学生)」や陳言教授をはじめとする過去の参加者たちの熱心な呼びかけにより、参加申請者は200名を超えた。同じ日に多くのシンポジウムが開催される中、会場とオンラインで約150名の参加者が集まった。テーマの選定や質疑応答については、特に若い世代からのアンケートでも多くの好評を得た。フォーラム終了後、参加者たちは国際交流基金北京日本文化センターの野田昭彦所長や中国在住の「ラクーン」の方々と共に、大学近くのレストランで懇親会に集まった。穏やかな雰囲気の中で交流が進み、孫建軍先生の提案を受けて、皆が最近の活動や過去の興味深いエピソードを共有した。   当日の写真   <李 趙雪(り・ちょうせつ)LI_Zhao-xue> 中央美術学院人文学院美術史専攻(中国・北京)学士、京都市立芸術大学美術研究科芸術学専攻修士、東京藝術大学美術研究科日本・東洋美術史研究室博士。現在南京大学芸術学院の副研究員。専門は日中近代美術史・中国美術史学史。     2025 年12月18日配信  
  • 2025.12.11

    尹在彦「第9回東アジア日本研究者協議会パネル『宗教と漢字の視点から見る日本文化の深層』報告」

      2025年10月31日から3日間、韓国・翰林大学にて「東アジア日本研究者協議会第9回国際学術大会」が開催された。私たちのセッション「宗教と漢字の視点から見る日本文化の深層」は、大会2日目の午前9時より1時間半にわたり行われた。   セッションは日本文化の深層を形成する宗教、特に仏教の現状と、日中における漢字観の比較が主要なテーマで、私は企画および司会を担当、宗教については磯部美紀氏(親鸞仏教センター)が、漢字については陳希氏(中央大学)が研究報告を行った。各報告に対しては、松本悠和氏(京都府立大学)および賈海涛氏(神奈川大学)がコメントを担当した。なお、陳氏は大会直前に急遽参加が難しくなったものの、動画配信によって支障なく報告できた。   磯部氏は「現代日本における宗教者とナラティブ」というタイトルで現代日本の葬儀における浄土真宗の僧侶による「法話」に焦点を当て、そのナラティブ(語り)が「死者と生者」の関係にどのような影響をもたらすかを、千葉県A市の「R寺」での事例を通して分析した。   家族構造の変化や檀家制度の弱体化により僧侶の役割が見直される中、R寺の住職は、通夜の場などで遺族との相互行為(傾聴と法話)を通じて故人の生涯を多面的に再構成する。法話の内容は、死者を単に「失われた存在」としてではなく、「教えを届ける仏弟子」「これからの生を導く存在」として、新たな文脈に位置づけ直す機能を持つ。これにより、死別を「関係の断絶」ではなく「関係の変化」として捉え直し、死者をも含めたアクター間の関係性を更新すると指摘した。   このナラティブによる再構築は、死者と生者間のコミュニケーションを拡張するもので、日本文化における死生観の一端を示唆する。欧米の「自律性」重視の死生観とは異なり、死者は関係の網の目から排除されることなく、「継続する絆」として相互依存の関係を保持し続ける。 陳氏は「方法としての漢字―1950年代の日中漢字論―」で、中国の歴史学者・唐蘭と日本の言語学者・河野六郎を取り上げ、両国における漢字観の比較検討を行った。1950年代を中心に、近代的言語観への疑問からどのような認識変化が生じたのかを探ることが主眼だ。   報告によると、唐と河野は西洋言語学が前提とする音声中心主義に対して、文字を思考形式・文化表現として再評価し、「言語の下位概念としての文字」ではなく、文字そのものを独立した学問として位置づける「文字学」の確立を志向していた。ただ、焦点は異なり、唐が漢字における音と義の調和を強調したのに対し、河野は視覚的思考の媒体としての文字の役割を重視した。   また、唐が実践的改革者として活動したのに対し、河野は理論構築者としての側面が際立っていた。これらの相違は、両国の社会や時代背景の影響によるものと考えられる。このように、漢字文化圏に属する両国の学者たちは、日常的な文字体系としての漢字の可能性を改めて見出し、文化の深化に寄与しようと模索していたことが浮き彫りになった。   続いて討論が行われた。松岡氏は、磯部氏の研究における「法話」の機能の再定義、すなわち、死者と生者の関係を結びなおす共同的営みとしての意義を評価しつつ、研究アプローチの妥当性や「法話」のナラティブとしての射程(宗派固有性と日本文化に共通する要素)、さらに「法話」が本来的には教化(教導)である点から、相互行為として捉える際の限界や検討の余地があることを指摘した。賈氏は陳氏の報告に対し、1950年代の議論にとどまらず、現代における漢字観の変容やデジタル環境下での文字の役割といった観点を踏まえて再検討する必要性を提示した。   会場参加者は多くはなかったものの、最後まで熱心に耳を傾けていた。両研究報告を通じ、日本文化の主要要素としての宗教や漢字について改めて考える貴重な機会になった。テーマの専門性が高いながらも、報告者と討論者の的確な議論の展開により、参加者が理解を深めやすい構成となっていた点も本セッションの成果として挙げられる。最後までスムーズなパネル進行にご協力いただいた報告者および討論者の皆様に、心より御礼申し上げたい。   当日の写真   <尹在彦(ユン・ジェオン)YUN Jaeun> 東洋大学社会学部メディア・コミュニケーション学科准教授。延世大学(韓国)社会学科を卒業後、経済新聞社で記者として勤務。2021年、一橋大学大学院法学研究科にて博士号(法学)を取得。同大学特任講師、慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所非常勤講師などを経て2025年、現職。渥美国際交流財団2020年度奨学生。専門は国際関係論およびメディア・ジャーナリズム研究(政治社会学)。