SGRAイベントの報告
ソンヤ・デール「第1回日印アジア未来フォーラム『アジアにおける日本研究:学術的ネットワークの構築へ』報告」
2026年3月3日に、第1回日印アジア未来フォーラムをデリー大学で開催しました。SGRAとしては初めての南アジア開催のイベントとなり、「アジアにおける日本研究:学術的ネットワークの構築へ」というテーマで、アジアの国々の研究者および文化が交差する、とても有意義なフォーラムとなりました。
海外でのSGRAイベントは、基本的にその国の文化や進行の仕方に合わせて開催します。インドでは、学術イベントでも開会式を行うことが一般的だそうで、その開会式の伝統的な儀式として「点灯式」があります。インドでは明かりを灯すことは闇を払い、知識と智栄を迎える意味があるそうで、登壇者がステージにあがり、一人ずつ点灯しました。そのあと、デリー大学のSanjay Royさん(社会学学部Dean)と在インド日本大使館の政務公司の阿部則明さんが歓迎の挨拶をし、企画者のランジャナさん(デリー大学、2002年ラクーン)とSGRA代表の今西淳子さんからの開会挨拶がありました。そのあと、自分が渥美国際交流財団とSGRAの活動の紹介をしました。お土産に持参した日本の「タヌキ煎餅」を手に、「財団とタヌキの関係性」について話し、「タヌキが財団の文化」というPR活動に貢献することができました。
第1部は、招待講師による発表です。南基正さん(ソウル大学、1996年ラクーン)が韓国における日本研究について発表し、ソウル大学でみられる研究傾向などを紹介しました。地域学における「脱地域学」という視点がとても新鮮で、現在の「グローバル」といわれる社会や文化について考察し、理解するための新たな構想ではないかと考えています。
南基正さんの感想:
今回の学術会議において、私は韓国で日本研究に携わってきた経験に基づき、「ポスト地域研究」の必要性を提起した。日本という地域を固定的実体ではなく、再構成される関係の総体として捉え直す試みである。しかしインドにおける日本研究は、韓日が共有してきた歴史的文脈とは異なる位置づけにあり、その隔たり自体が重要な示唆を与えていた。地域研究とは他地域との出会いの中で再構成される営みであり、その差異と接点を結び直すことで、韓国の日本研究はより普遍的視座に近づきうる。
次に、陳姿菁さん(開南大学、2002年ラクーン)が台湾の日本研究と日本語教育の現状をインドと比較しながら紹介しました。日本語教育の将来に関しては、台湾、日本とインドの協力の可能性についても語り、可能性が広がる内容となりました。インドの日本研究については、Nidhi Mainiさん(デリー大学)がインドと日本の歴史的な関係性を述べ、デリー大学の日本研究・日本語教育や東アジア研究科の方針などを紹介しました。今回の共催者であるデリー大学東アジア研究科のことをより深く知る機会にもなり、研究科の特徴なども把握することができました。
陳姿菁さんの感想:
飛行機が大幅に遅れても、悠々と搭乗するインドの人々。機内でずっとおしゃべりする男性たち。焦りは全く感じられなかった。「コーヒーはあと1分で来ます」と言いながら何十分も待たされたり、フォーラムが大幅に遅れると思いきや、意外と最後には帳尻が合ったり。インド流の「何とかなる(Sab thik ho jayega)」精神に触れた。日本や台湾で厳密なスケジュールに慣れている私は、最初はそのアバウトさに戸惑ったが、次第に慣れていった。デリー大学の教職員や学生たちの温かい笑顔、すれ違う車から手を振ってくれた女子学生、レッドフォートで情熱的に握手してきた女子学生たち・・・一つ一つが目に焼き付いている。インドにはまだまだ探検したいことがたくさんある。
発表およびランチのあとに、モデレーターのAmlan Duttaさん(デリー大学)の進行でパネルディスカッションが行われました。討論者のSweety Guptaさん(デリー大学)とArpan Banerjeeさん(デリー大学)およびフロアーからの質問は多様であり、まさに「アジアにおける日本研究:学術的ネットワークの構築へ」について考えるためのとても刺激的な内容となりました。教材の入手方法・作成、「日本」というものを研究する意味、学問のアプローチなど、具体的な内容から象徴的なものまで、セッションの内容をより広げ、飛び立たせるような流れになり、通訳をしていた自分もかなり興奮しました。
第2部では、デリー大学東研究科の若手研究者が研究内容について発表しました。座長はAlok Chandanさん。インドと日本のテクノロジーと戦略の融合(Shashank Patelさん)、インドにおける日本のアニメと漫画文化(Ahmad Shadaanさん)、日本社会と文学における「新しい女」と「モダンギャル」の女性像(Shreya Mamgainさん)、アーユルヴェーダと和食の出会い(Rashi Chaudhuryさん)についての発表があり、幅広く、興味深いセッションとなりました。デリー大学の学生がどのように「日本」というものを研究しているのか、どのような議論が進んでいるか、とても参考になりました。
最後は、再びインドスタイルで文化プログラムおよび閉会式が行われました。文化プログラムでは、東アジア研究科の学生たちがインドの文化および日本の文化を取り扱い、踊りから俳句朗読、歌や演奏があり、それぞれのパフォーマンスを楽しみました。「世界に一つだけの花」の演奏で、前に座っていた陳さんと南さんが手をあげて揺り動かしているところを見て、歌の力を感じました。言語や文化の壁を超え、人をつなぐ力はあるのです。自分も先輩たちを真似して、手をあげゆらゆらしました。
閉会にあたって、デリー大学東アジア研究科のPrachi AggarwalさんとDean of Academic AffairsのKongbrailatpam Ratnabaliさんからの挨拶があり、盛り上がった雰囲気で一日のフォーラムが終わりました。
今回のフォーラムは、企画者のランジャナさんのおかげで実現できました。フォーラムだけではなく、入国手続き、フォーラム前日のキャンパスツアーおよび後日のデリースタディツアーなどなど。ランジャナさんの学生さんたちも、素早く静かに、日常用品の購入から送迎まで、不可欠なサポートをしてくださいました。心から深く感謝しています。
個人的にも、アジアから発生する知識、脱欧米中心の研究方向性・ネットワーク構築、ポストコロニアリズムや「アジア」というものの共通点や差異について考えることができ、これからの自分の宿題にします。
今回の日印未来フォーラムは、1回目の開催で、SGRAとしてはこれから年に1回の定期的な開催を目指しています。今回語り切れなかった部分や新たなに出てきたテーマは多様で、次回を考えたら、わくわくして眠れないほどでした。ぜひこれからの日印未来フォーラムを楽しみにしてください!
<Sonja DALE デール・ソンヤ>
上智大学でグローバルスタディーズの博士号を取得し、日本におけるLGBTQ問題とノンバイナリーのアイデンティティに焦点を当て、包摂と排除の社会構造やアイデンティティ構造について研究をしてきた。現在はマイノリティにとっての安全な空間つくりと多様性の可視化に力を入れ、社会活動をしている。渥美財団スタッフ、2012年度渥美国際交流財団奨学生。
2026年5月7日配信




