SGRAイベントへのお誘い

第22回SGRAフォーラム「戦後和解プロセスの研究」ご案内

下記の通り第22回SGRAフォーラムを開催いたします。参加ご希望の方は、ファックス(03-3943-1512)またはemail([email protected])でSGRA事務局宛ご連絡ください。よろしければ最後の申込欄をお使いください。SGRAフォーラムはどなたにも参加いただけますので、ご関心をお持ちの皆様にご宣伝いただきますようお願い申し上げます。

 

■ 日時: 2006年2月10日(金)
午後6時30分~8時30分まで、終了後懇親会

 

■ 会場: 東京国際フォーラム ガラス棟G602会議室
http://www.t-i-forum.co.jp/function/map/index.html

 

■ 会費:フォーラムは無料。懇親会は会員1000円、非会員3000円

 

■ フォーラムの趣旨

 

「和解」とは、一般に、争いや対立を止めるために当事者間で行われる歩み寄りや譲歩をさす。「和解」の対義語は「復讐」である。復讐は、人が愛するものや大切ものを失ったときに抱く、自然で強烈な衝動である。一方、和解は、復讐、怨恨、憎悪や怒りが、自らの社会にとっても、かつての敵との関係にとっても、有害で、究極的には混迷と無秩序につながることを学習してはじめてとり得る行動とされる。「戦後和解」を、講和後あるいは平和が回復された後も旧敵国間にわだかまる感情的な摩擦や対立の解決と定義する。「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」という一文がユネスコ憲章の前文にあるが、人の心にはじまった戦争を、人の心をもって終わらせるためには、政治はもとより市民社会や有志の個人が、戦争がもたらした偏見や憎悪について、政策上の課題として、あるいは市民交流に際しての懸案として、意図的かつ意欲的に取り組んでいく必要がある。こうした努力は、共有すべき未来の平和と共存とを担保に、双方向からなされることが望ましい。戦後和解は、平和を強化するためのプロセスのひとつである。その目的は、偏見の払拭と相互理解の促進を通した、さまざまなレベルにおける国際交流の調和と柔軟性の醸成にある。(小菅信子「戦後和解」より)

 

これまで日本では、第二次世界大戦中の問題行為について、戦後和解という観点から議論を試みること自体に或る種の躊躇があった。本フォーラムでは、その障壁を乗り越える2つの報告をお願いし、東北アジアにおける「戦後和解」にむけた「双方からのとり組み」の可能性について考えたい。

 

■ プログラム
http://www.aisf.or.jp/sgra/schedule/forum22program.doc

 

○講演1: 「戦後和解:英国との関係修復を中心に」
 小菅信子(山梨学院大学法学部助教授)

 

日本と英国の民間レベルで展開されてきた<戦後和解>活動について具体的に検証する。<戦後和解>活動のエッセンスは、旧敵同士の再会、忘却を拒否した許し、喪失を相互に認め悼むことによって得られる癒し、修正できない過去をふまえた未来の協働のための高潔な妥協であるといえる。報告者は1996年から約10年間にわたって日英和解活動に主体的に関わってきたが、本報告では、とくに、活動の前提となる戦後和解の発想、歴史的・政治的文化的脈絡、具体的な和解活動とそれを可能にした人的・物的条件と環境、活動によって引き起こされたさまざまな波紋や反発、活動によって得られた成果・挫折・摩擦について考察する。

 

○講演2:「花岡和解研究序説」
 李 恩民(桜美林大学国際学部助教授、SGRA研究員) 

 

5年前の2000年11月、東京高等裁判所において花岡事件訴訟の和解が成立した(略称「花岡和解」)。花岡事件訴訟は、第二次世界大戦中、鹿島組(現鹿島建設株式会社)の強制連行・強制労働により被害を受けた中国人が初めて損害賠償を求めて提訴した訴訟で、民間企業の戦争責任を追及する最初の訴訟でもある。花岡和解において「自主交渉」「裁判所勧告」「信託方式」「基金方式」「一括解決方式」といった戦後補償裁判の中であまり類のない大胆な試みが行われ、世界の注目の的となった。本報告は花岡事件の経緯を簡単に紹介した上で、受難者と鹿島建設との交渉から裁判を経て、和解に至るプロセスと、その後の中国赤十字会・「花岡平和友好基金」の活動を究明し、花岡和解が内包する戦後和解の意義と普遍性について分析したい。

 

■ 講 師 略 歴

 

○小菅信子 ☆ こすげ・のぶこ ☆ Kosuge Nobuko
1960年生まれ。上智大学文学部卒業、同大学院文学研究科史学専攻博士課程修了満期退学。ケンブリッジ大学国際研究センター客員研究員を経て、現在、山梨学院大学法学部政治行政学科助教授。著書に『戦争の記憶と捕虜問題』(共著、東京大学出版会)、『東京裁判ハンドブック』(共著、青木書店)、『戦争の傷と和解』(編、山梨学院大学生涯学習センター)、『Japanese Prisoners of War』(co-edition, Hambledon and London)、『戦後和解:日本は<過去>から解き放たれるのか』(中公新書1804)。訳書に『GHQ日本占領史5:BC級戦争犯罪裁判』(共訳・解説、日本図書センター)、『忘れられた人びと』(シャリー・フェントン・ヒューイ著、共訳、梨の木舎)他。

 

○李 恩民 ☆ り・えんみん ☆ LI Enmin
1961年生まれ。1983年中国山西師範大学歴史学系卒業、1996年南開大学にて歴史学博士号取得。1999年一橋大学にて博士(社会学)の学位取得。南開大学歴史学系専任講師・宇都宮大学国際学部外国人教師などを経て、現在桜美林大学国際学部助教授、SGRA研究員。著書に『中日民間経済外交』(北京:人民出版社1997年刊)、『転換期の中国・日本と台湾』(御茶の水書房、2001年刊、大平正芳記念賞受賞)、『「日中平和友好条約」交渉の政治過程』(御茶の水書房、2005年刊)など多数。現在、日本学術振興会科研費プロジェクト「戦後日台民間経済交渉」研究中。