SGRAフォーラム

レポート第116号「アジアにおけるジェンダーと暴力の関係性」

SGRAレポート第116号

 

第78回SGRAチャイナ・フォーラム

「アジアにおけるジェンダーと暴力の関係性」

2026年6月15日発行

 

 

<フォーラムの趣旨>

沖縄はアジア太平洋戦争時に住民の4人に1人が死亡したとされる激しい地上戦を経験している。さらに戦後も日本国内の70%を超える米軍の施設が集中する「基地の島」と化した。女性や子どもを含む非戦闘員が犠牲となった「戦場」の暴力は、現在進行形のグローバルな課題を再考察する上で欠かすことができない題材である。軍事的な対立の際に、私たちはどのように非戦闘員の命を守るための観点を保ちうるだろうか。ジェンダーからの問いが必要な理由がそこにある。

 

沖縄で開催されるAsian Cultural Dialogues(ACD;アジア文化対話)フォーラムでは、地上戦を経験し、今なお米軍基地に起因する性暴力事件が絶えない沖縄で、ジェンダーという弱者への配慮を前提とする視点から「過去・現在・未来」につなげる普遍的価値を探る。
強調したいのは、ACD は開催地の「学び、感じ、行動する」アクティブな議論の場でありながらも、その地域では見逃している国境を越えた視点や、洞察を開催地に提供する場でもある点である。「アジアにおけるジェンダーと暴力の関係性」は、軍事的な面に限らない。日常における構造的な暴力を紐解いてこそ、より普遍的な議論になりうる。

 

沖縄と同じく米軍とフィリピンゲリラとの間で激しい地上戦が行われたミンダナオ地域に注目しながらも、その中でより目に見えない「ジェンダー」の問題に焦点を当てたり、ACD が持つ多国籍ネットワークを用いた活動家や文化人の観点も提示する。

 

本フォーラムはいわゆる「沖縄の問題」を論じるものではない。多国籍の専門家により構成され、その議論の焦点は沖縄という空間で出会う「アジア的視点」と言える。2025 年度は戦後80 年という節目の年であり、いかにアジア太平洋戦争時の傷痕に向き合うかをアジア各地で議論する年でもある。議論の場である沖縄はもちろん、アジアの過去、現在、未来に一貫して忘れてはならない本質的な価値とは何かを国際的かつ学際的に、さらにはアカデミアを超えて皆で考える機会になることを望んでいる。

 

<もくじ>

【開会挨拶】 

今西淳子(SGRA)
山代 寛(沖縄大学学長)
【フォーラムの紹介】
洪 玧伸(沖縄大学)

 

第1セッション 基調講演
[司会:デール・ソンヤ(SGRA)]
【基調講演】 暴力に抗する「他者」の眼差し 
冨山一郎(同志社大学)
[コメント1-1] 宮城晴美(沖縄女性史研究家)
[コメント1-2] ロバート・リケット(和光大学元教授)
[コメント1-3] グオ・リフ(筑波大学)
質疑応答 
モデレーター:洪 玧伸(沖縄大学)
回答:冨山一郎(同志社大学)

 

第2セッション 交差性
[司会:イドジーエヴァ・ジアーナ(東京外国語大学)]
【発表2-1】 交差する差別とジェンダー 
高里鈴代(「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」共同代表)
【発表2-2】 継承と掘り起こし:インドネシアにおけるジェンダー化された暴力 
インタン・パラマディタ(マッコーリー大学)
[コメント2-1] ミヤ・ドゥイ・ロスティカ(大東文化大学)
[コメント2-2] 梁 絃娥(ソウル大学名誉教授)
質疑応答 
司会:イドジーエヴァ・ジアーナ(東京外国語大学)
オンラインQ&A担当:グオ・リフ(筑波大学)
発言者(発言順):
インタン・パラマディタ(マッコーリー大学)
高里鈴代(「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」共同代表)
洪 玧伸(沖縄大学)

 

第3セッション 戦争とジェンダー
[司会:ミキ・デザキ(ドキュメンタリー監督)]
【発表3-1】 沖縄戦・米軍統治下の福祉と女性 
山城紀子(沖縄タイムス元記者・フリージャーナリスト)
【発表3-2】 ジェンダーの最前線:世界最後の休戦における平和への最終段階 
ホセ・ジョエル・カヌディー(アテネオ大学)

[コメント3-1] 福永玄弥(東京大学)
[コメント3-2] 増渕あさ子(立命館大学)
質疑応答 
司会:ミキ・デザキ(ドキュメンタリー監督)
オンラインQ&A:ミヤ・ドゥイ・ロスティカ(大東文化大学)
発言者(発言順):
山城紀子(沖縄タイムス元記者・フリージャーナリスト)
ホセ・ジョエル・カヌディー(アテネオ大学)

 

第4セッション これからに向かって
[司会:洪 玧伸(沖縄大学)、デール・ソンヤ(SGRA)]
【発表4-1】 沖縄の基地暴力とジェンダー:CSW 国連女性の地位委員会に性暴力を訴える─沖縄県内の動きを中心に─ 
松田 明(沖縄キリスト教学院大学卒業生)、徳田 彩(沖縄キリスト教学院大学)

【発表4-2】 タイにおける若者フェミニスト運動の旅路 
ニチャカーン・ラクウォンリット/ミミ-(タイの学生活動家)
【発表4- 3】 沖縄戦の記憶を聴く:体験者との交流を通して 
中塚静樹(沖縄大学)
[コメント4-1] 親川裕子(沖縄大学、Be the Change Okinawa代表)
[コメント4-2] 上野さやか(沖縄大学、エンパワメント・ラボ・おきなわ共同代表)
[コメント4-3] ボニー・ランバタン(Rainbow Panda代表)
【自由討論】 司会:洪 玧伸(沖縄大学)、デール・ソンヤ(SGRA) 
発言者(発言順):
高里鈴代(「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」共同代表)
山城紀子(沖縄タイムス元記者・フリージャーナリスト)
宮城晴美(沖縄女性史研究家)
徳田 彩(沖縄キリスト教学院大学)
ニチャカーン・ラクウォンリット/ミミ-(タイの学生活動家)
中塚静樹(沖縄大学)

 

《附録1》 「『慰安婦』のための碑 17周年記念シンポジウム」
(於 宮古島市公民館・未来創造センター)
サバルタンの強烈な声:韓国における最近の社会変化と
「日本軍性奴隷(JMSS)」問題への私の関わり 115
梁 絃娥(ソウル大学名誉教授)
あとがきにかえて
洪 玧伸(沖縄大学)

 

 

登壇者略歴

 

《附録2》 沖縄スタディツアー報告
普天間から辺野古・大浦湾へ 
イドジーエヴァ・ジアーナ(東京外国語大学)

 

《附録3》 宮古島スタディツアー活動報告
戦後80 年に咲く花 
グオ・リフ(筑波大学)

 

 

※所属・肩書は本フォーラム開催時のもの。