SGRAレポートの紹介
レポート第109号「第9回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性 東アジアの「国史」と東南アジア」
SGRAレポート第109日本語版 中国語版 韓国語版
第74回SGRAフォーラム講演録
第9回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性
「東アジアの「国史」と東南アジア」
2025年6月20日発行
<フォーラムの趣旨>
「国史たちの対話」企画は、日中韓「国史」研究者の交流を深めることによって、知のプラットフォームを構築し、3カ国間に存在する歴史認識問題の克服に知恵を提供することを目的に対話を重ねてきた。第1回で日中韓各国の国史研究と歴史教育の状況を確認することからスタートし、その後13 世紀から時代を下りながらテーマを設け、対話を深めてきた。新型コロナ下でもオンラインでの対話を実施し、その特性を考慮して、歴史学を取り巻くタイムリーなテーマを取り上げてきた。
2023 年は対面型での再開が可能となったことを受け、「国史たちの対話」企画当時から構想されていた、20 世紀の戦争と植民地支配をめぐる国民の歴史認識をテーマに掲げた。多様な切り口から豊かな対話がなされ、「国史たちの対話」企画の目標の一つが達成された。今後はこれまでの対話で培った日中韓の国史研究者のネットワークをいかに発展させていくか、またそのためにどのような方針で対話を継続していくかが課題となるだろう。
こうした新たな段階を迎えて、第9回となる今回は、開催地にちなみ、「東南アジア」と各国の国史の関係をテーマとして掲げた。日本・中国・韓国における国史研究は、過去から現在に至るまで、なぜ、どのように、東南アジアに注目してきたのだろうか。過去の様々な段階で、様々な政治、経済、文化における交流や「進出」があった。それらは政府間の関係であったり、それにとどまらない人やモノの移動であったりもした。こうした諸関係や、それらへの関心のあり方は、各国ではかなり事情が異なってきた。こうした直接・間接の関係の解明に加え、比較的条件の近い事例として、自国の歩みとの比較も行われてきた。そもそも「東南アジア」という枠組み自体も、国民国家や「東アジア」といった枠組みと同様、世界の激動のなかで生み出されたものであり、歴史学の考察対象となってきた。
本シンポジウムでは、各国の気鋭の論者により、過去の研究動向と最先端の成果が紹介された。これらの研究は、どのような社会的・歴史的な背景のもとで進められてきたのか。こうした手法・視座を用いることで、自国史にいかなる影響があり、また今後はどのような展望が描かれるのか。議論と対話を通じて3カ国の国史の対話を、より多元的な文脈のうちに位置づけ、さらに開いたものとし、発展の方向性をも考える機会としたい。
<もくじ>
第1セッション [司会:劉 傑(早稲田大学)]
【はじめに】 劉 傑(早稲田大学)
【開会挨拶】 三谷 博(東京大学名誉教授)
【基調講演】 ポストコロニアル時代における「ナショナリズム」衝突の原因
—毛沢東時代とポスト毛沢東時代における中国の対日政策の変化を手掛かりに
楊 奎松(北京大学・華東師範大学)
質疑応答
発言(発言順):
平山 昇(神奈川大学)
楊 奎松(北京大学・華東師範大学)
タンシンマンコン・パッタジット(東京大学)
第2セッション [司会:南 基正(ソウル大学)]
【発表1(タイ)】 「竹の外交論」における大国関係と小国意識
タンシンマンコン・パッタジット(東京大学)
【発表2(日本)】 日本近代史と東南アジア ―1930 年代の評価をめぐって―
吉田ますみ(三井文庫)
【発表3(韓国)】 韓国における東南アジア史研究 ―回顧と展望―
尹 大栄(ソウル大学)
【発表4(中国)】 華僑問題と外交 —1959 年のインドネシア華人排斥に対する中国政府の対応—
高 艷傑(厦門大学)
第3セッション [司会:彭 浩(大阪公立大学)]
指定討論
指定討論者:
【中国】鄭 成(兵庫県立大学)、鄭 潔西(温州大学)
【韓国】鄭 栽賢(木浦大学)、韓 成敏(高麗大学)
【日本】佐藤雄基(立教大学)、平山 昇(神奈川大学)
第4セッション [司会:鄭 淳一(高麗大学)]
自由討論
討論者(発言順):
楊 奎松(北京大学・華東師範大学)、タンシンマンコン・パッタジット(東京大学)、
吉田ますみ(三井文庫)、尹 大栄(ソウル大学)、高 艷傑(厦門大学)、
三谷 博(東京大学名誉教授)、塩出浩之(京都大学)、平山 昇(神奈川大学)、
宋 志勇(南開大学)、鄭 栽賢(木浦大学)、韓 成敏(高麗大学)
討論まとめ: 劉 傑(早稲田大学)
【閉会挨拶】 宋 志勇(南開大学)
著者略歴
あとがきにかえて 金キョンテ(全南大学)
参加者リスト