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レポート第90号「第4回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性─『東アジア』の誕生-19世紀における国際秩序の転換-」

 

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第63回SGRAフォーラム講演録

第4回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性

「『東アジア』の誕生-19世紀における国際秩序の転換-」

2020年11月20日発行

 

 

<フォーラムの趣旨>

19 世紀以前の東アジアは、域内各国の関係は比較的に疎遠で、各国が個別に外国との関係を結んでいた。しかし、西洋の諸国がグローバル化の運動を北太平洋まで及したとき、日中韓の関係は政治・経済・通信のいずれの面でも緊密化し始め、その中で「東アジア」を一体のリージョンと見なす想像力が生れた。今回は、このような東アジアの国際秩序の変化、その中での各国の国内秩序の変化を主題に国際対話を試みる。
西洋が強い商業関心と新たな交通・通信・軍事技術をもって該地域に再登場したとき、中国・日本・朝鮮はどのように西洋を認識したか。伝統的な知の体系とそれはどう絡み合ったのか。いずれの国でも反発と同時に新たな知への憧憬が生れ、一方では伝統への挑戦、他方では伝統の再造が試みられた。例えば、日本では、洋学が学校教育の主軸に据えられる一方、秩序の核心に天皇を置き、家族では儒教的な男性優位観が一般化した。この西洋への反発と憧れは国ごとに組合わせ方が異なり、それは今に至る文化の相違を生み出すことになった。
西洋の進出は各国に自衛を促し、結果的に各国を「国民国家」に変えていった。遅速の差はあっても、国境を明確化し、内部の団結を促すナショナリズムを生み出すことになったのである。その一方、西洋の持込んだ海運網は、人々を国境の外に誘うことにもなった。中国からは東南アジアに加えてアメリカ大陸に大量の出稼ぎ労働者が向い、以前は皆無だった日本からも移民が海を越えるようになった。朝鮮では移民は少なかったが、外国留学生や政治亡命者が現れ、やがて国の将来に大きな影響を及すようになった。ナショナリズムの形成と国境を越える移民・留学・亡命との交錯は、従来の東アジアの秩序を国際関係と国内秩序の両面で大きく変化させ、20 世紀の大変動を準備することになる。

今回のフォーラムでは、およそ以上のような問題群を取上げ、3 つのセッションに分けて各国の事情を比較し、討論して、19 世紀東アジア世界に起きた大転換の全体像を把握したい。

 

 

<もくじ>

第1セッション 開会 [司会:劉 傑(早稲田大学)]

【開会挨拶】 第4回円卓会議開催にあたって
趙 珖(韓国国史編纂委員会)

 

【歓迎挨拶】 19世紀のフィリピン―マニラ・ガレオン貿易を中心に―
フェルディナンド,マキト(フィリピン大学ロスバニョス校)

 

【基調講演】 「アジア」の発明―19世紀におけるリージョンの生成―
三谷 博(跡見学園女子大学)

 

【コメント】 基調講演を受けて1
宋 志勇(南開大学)

 

【コメント】 基調講演を受けて2
朴 漢珉(東国大学)

 

第2セッション 西洋の認識 [司会:劉 傑(早稲田大学)]

【発表論文1】 19世紀東アジアの国際秩序と「万国公法」受容―日本の場合―
大久保健晴(慶應義塾大学)

 

【発表論文2】 19世紀後半における東アジア三国の不平等条約体制の克服の可能性と限界
―1880年代初、朝鮮の門戸開放政策を中心に―
韓 承勳(高麗大学)

 

【発表論文3】 魔灯鏡影―18世紀から20世紀にかけての中国のマジックランタンの上映と製作と伝播―
孫 青(復旦大学)

 

【質疑応答】 第2セッション発表論文へのコメントおよび討論

 

 

第3セッション 伝統への挑戦と創造 [司会:村 和明(東京大学)]

【発表論文4】 18・19世紀における女性天皇・女系天皇論
大川 真(中央大学)

 

【発表論文5】 日本民法の形成と植民地朝鮮での適用―制令第7号「朝鮮民事令」を中心に―
南 基玄(成均館大学)

 

【発表論文6】 伝統と制度の創造―19世紀後期の中国の洋務運動―
郭 衛東(北京大学)

 

【質疑応答】 第3セッション発表論文へのコメントおよび討論

 

 

第4セッション 国境を越えた人の移動 [司会:彭 浩(大阪市立大学)]

【発表論文7】 東アジア公共圏の誕生

―19世紀後半の東アジアにおける英語新聞・中国語新聞・日本語新聞―
塩出浩之(京都大学)

 

【発表論文8】 金玉均の亡命に対する日本社会の認識と対応
韓 成敏(大田大学)

 

【発表論文9】 近代中国女性のモビリティー経験と女性「解放」に関する再考
秦 方(首都師範大学)

 

【質疑応答】 第4セッション発表論文へのコメントおよび討論

 

 

第5セッション 全体討議 [司会:李 恩民(桜美林大学)]

招待討論者:青山治世(亜細亜大学)、平山 昇(九州産業大学)、
朴 漢珉(東国大学)、孫 衛国(南開大学)

 

第6セッション 自由討論 [司会:南 基正(ソウル大学)]

総括:三谷 博(跡見学園女子大学)

 

あとがきにかえて

明石 康、金キョンテ、大川 真、南 基玄、郭 衛東、朴 漢珉

 

著者略歴

 

参加者リスト