SGRAレポートの紹介

レポート第89号「再生可能エネルギーが 世界を変える時…? ――“An Inconvenient Truth” 不都合な真実を超えて」

SGRAレポート第89号

 

第62回SGRAフォーラム

「再生可能エネルギーが 世界を変える時…?

―“An Inconvenient Truth” 不都合な真実を超えて」

2019年11月11日発行

 

<フォーラムの趣旨>

 

流れは変わった⁈
19世紀以降の化石燃料によるエネルギー市場が大きく変わろ うとしている。
UAEでは砂漠に300万枚の世界最大の太陽光発電基地を設 置し、原発1基分の発電を行う計画が進行している。その発電 コストは日本の火力発電コストの1/5と言われる。
中国は2017年共産党大会で「エコ文明」のリーダー(環境大国) 宣言し、CO2 社会からの脱却を表明し、巨大な太陽光発電施設 を各地に建設している。
また、トランプ政権はパリ協定を批判し脱退したにもかかわ らず、アメリカではカリフォルニアを始めとする各州・都市、 大企業等2500がパリ協定支持を表明し、国際金融市場でも環 境ビジネスへの投資が急増している。

 

COP21/パリ協定締結以降、再生可能エネルギー社会への牽引 役として「ビジネス」が躍り出た
こうした国際的な経済、社会のエネルギーをとりまく潮流の 変化は「パリ協定以降、脱炭素社会(再生可能エネルギー社 会)に向ける流れの牽引役が、気候変動に影響される国、環境 NGOから国際ビジネスセクターに移行した」と言われるよう になった。その背景には、気候変動による地球規模の災害への 危機感だけでなく技術革新とコストダウンにより再生可能エネ ルギーへの投資が“Payする”ことが実証されつつある、とい う現実がある。

 

再生可能エネルギー社会実現に向けた模索、可能性そして課題
一方で「ほんとなのか?」という疑問も拭うことはできない。
地球温暖化の影響で顕在化する気候変動、資源の枯渇などを 考えれば再生可能エネルギー社会(脱炭素社会)への転換は、 地球社会が避けて通ることができない喫緊の課題である。しか しながら、グローバルな大資本が参入し、化石燃料エネルギー から自然エネルギーに転換したとしても、地球環境問題は改善 されるであろうが、大量消費文明を支える大規模エネルギーの 電源が変わるだけで、大量生産大量消費の文明の本質は変わら ないのではないだろうか。

 

福島県飯舘村の「再生と自立」に向けた試み
こうした中で、2011年の東日本大震災と福島第一原発事故の 教訓から、コミュニティー発電(Community Power)による、 エネルギーの地産地消の試みを、地域の自立と新しいコミュニ ティーの創造に繋げようとする流れも生まれている。日本のコ ミュニティー発電は、ヨーロッパ各国に較べて大きく立ち遅れ、 さまざまな規制や障害が多いが、それを乗り越えてコミュニ ティー発電をコミュニティーの自立と尊厳の回復のシンボルに したいという福島県飯舘村の活動にも注目したい。

 

 

<もくじ>

 

【基調講演1】 《Renewable Energyに関する世界の動向》
「低炭素エネルギーのグローバルな展開と日本の立ち位置」
ルウェリン・ヒューズ(オーストラリア国立大学准教授)

 

【基調講演2】 《Global experience of Energiewende》
「ドイツと世界のエネルギー転換政策とコミュニティー発電」
ハンス=ヨゼフ・フェル(エネルギー・ウォッチ・グループ代表。元ドイツ緑の党連邦議員)

 

【プレゼンテーション1】 《国際政治経済からの視点》
「通商紛争の中の再生可能エネルギー ――韓国のエネルギーミックスと保護主義のインパクト」
朴 准儀(ジョージ・メイソン大学(韓国)兼任教授)

 

【プレゼンテーション2】 《環境技術/中国からの視点》
「中国の再生エネルギー政策と環境改善の行方」
高 偉俊(北九州市立大学教授)

 

【プレゼンテーション3】 《科学技術/イノベーションからの視点》
「太陽電池発電コストはどこまで安くなるか?課題は何か?」
葉 文昌(島根大学准教授)

 

【プレゼンテーション4】 《コミュニティーの視点から》
「コミュニティーパワーと飯舘村再生のヴィジョン」
佐藤健太(飯舘村村会議員)

 

【プレゼンテーション5】 《コミュニティーの視点から》
「飯舘電力の挑戦」
近藤 恵(飯舘電力専務取締役)

 

–  ふりかえり対談 –
飯舘村から考える「再生可能エネルギー ―― 不都合な真実を超えて」
ロヴェ・シンドストラン、角田英一、ソンヤ・デール

 

〔総合司会 ソンヤ・デール(一橋大学専任講師)〕

 

あとがき

 

講師略歴