SGRAイベントの報告

第42 回SGRAフォーラム「アジア地域エネルギー供給セキュリティ及び建築分野の省エネルギー」報告

2011年10月29日(土)午前9時半から午後5時半まで、SGRA、北九州市立大学、早稲田大学及び日本建築学会アジア地域における建築環境とエネルギー消費検討小委員会が共同で第42回SGRAフォーラムを開催した。本フォーラムでは、2名の先生方の基調講演に続いて、日本学術振興会若手研究者交流支援事業により北九州市立大学が招聘したアジアの若手研究者が、各国の都市・建築省エネルギーの現状及び政策について発表した。

SGRA代表今西淳子氏、北九州市立大学建築都市低炭素化技術開発センター長黒木荘一郎氏、日本建築学会アジア地域における建築環境とエネルギー消費検討小委員会主査張晴原氏がそれぞれ挨拶を行い、省エネルギー事業とアジア地域の習慣・文化を配慮した対応と、正確な情報提供の重要さを強調した。

最初に、(株)住環境計画研究所代表取締役所長中上英俊氏が「アジアにおける省エネルギー政策の重要性」と題した基調講演を行った。中上氏は東南アジア諸国(タイ、インド、ベトナム)におけるエネルギー消費の実態と見通し、また省エネルギー法を始めとする各国の省エネルギー政策の現状について報告し、それらの実態に基づいて、今後のアジアの省エネルギーのあるべき姿、日本の役割などを指摘した。

続いて、早稲田大学准教授高口洋人氏が「カンボジアの建築における成長とエネルギー消費に関する一考察」という基調講演を行った。高口氏は2009 年からカンボジアでエネルギー消費量やライフスタイルの調査を続けている。同氏は、東南アジアの新興国が、日本のような大量生産・大量消費社会を経ずに、いま何をすればサステイナブル社会に軟着陸できるのかという点について議論を広げ、カンボジアにおけるエネルギー消費実態を見ながら、どのような住宅やエネルギーシステムを提供すべきなのか、またそこで先進国はどのような役割を果たすべきか提案した。

午後の研究報告では、5ヶ国からの7名の若手研究者がそれぞれ国の省エネルギー事情及び取り組みについて報告した。インドネシアのBudi Faisal博士及びBeta Paramita氏は、バンドンの都市構造と環境エネルギーの関係について報告した。フィリピンからのStephanie N. Gille氏とJosefina S. De Asis氏はフィリピンのエネルギー消費現状及びマニラを中心とした省エネルギー及びグリーン建築の取り組みについて紹介した。インドのNicholas Iyadura氏はインドが世界で最も少なくエネルギーを消費し、最も少なくCO2を排出していることを説明し、先進国のような大量消費・大量排出の社会構造になると持続が不可能になるので、持続可能な発展はインドにとって重要な課題であることを力説した。タイのSuapphong Kritsanawonghon氏はタイのエネルギー実態及び省エネルギーの政策について報告した。オーストラリアのAndrew Irelan氏はオーストラリアにおける省エネルギー・環境分野の主な二つ制度であるNABERSとGREENSTARを紹介し、省エネルギー政策に関して、市場の力の重要性を強調した。

パネルディスカッションでは、Max Maquito博士が巧みに「エネルギーと環境」というフォーラムのテーマを、彼の専門である「市場と経済」に変えてしまった。そのおかげで、エネルギーと環境だけに留まらず、より広い話題を議論することができた。

参加してくださった皆さん、誠にありがとうございました。

フォーラムの写真
今西勇人撮影
ルィン撮影

(文責:高偉俊)

2011年11月30日撮影