SGRAイベントの報告

第6回チャイナフォーラム「Sound Economy-私がミナマタから学んだこと-」報告

孫建軍「第6回チャイナ・フォーラムin 北京」報告

2011年9月23日、第6回SGRAチャイナ・フォーラムin北京が、国際交流基金北京日本文化センター(以下、日本文化センター)で開催されました。

今回のテーマは「Sound Economy-私がミナマタから学んだこと-」です。今年はより多くの社会人の参加を得るため、日本文化センターのご好意を得て、初めて大学のキャンパス以外に会場を移し、当会場で行われました。SGRA、日本文化センターの関係者のほか、大学生はもちろん、会社員、NGO関係者、日本大使館、中国外交部の外交官など40名近くが参加しました。

本日の講師の(財)水俣病センター相思社初代事務局長の柳田耕一氏は、まず10分ほどの映画『水俣病 その20年』を流しました。水俣病に苦しむ患者の衝撃的な映像にみんなが息を呑みました。そして、柳田先生は歴史を軸に、水俣、加害企業による公害の拡大、水俣病の深刻化及び企業や政府との戦いなど、世界的に水俣病が有名になるまでのことを、写真や資料を交えながら語ってくださいました。最後に、あらゆるMinamata Diseaseを防げる社会作りの大切さを訴えました。

社会人が多かっただけに、質疑応答では、質問の角度や中味の深さが一味違っていました。食品会社の社員からは中国で問題となっている「地溝油」(下水や生ごみから回収した油)の危害、NGOの職員からは有機水銀を埋立地に封じ込める具体的な方法、外交官からは水俣からチェルノブイリ、そして福島といった人的災害における構造的な背景など、どれもSGRAチャイナ・フォーラムの新しいテーマとして取り上げることもできるような内容の濃いものでした。

講演の最後に、司会を担当していた私は、過去のSGRAチャイナ・フォーラムを振り返って、社会の深刻な問題を前に「自分は何をすればいいか」という参加者から講師への共通の質問について、感想を述べました。深刻な社会問題に積極的に関わるには3つの「き」、つまり「勇気」「根気」「知識」が必要です。水俣病のために働く柳田耕一先生にしても、植林の高見邦雄先生にしても、アジア学生文化協会の工藤正司先生にしても、TABLE FOR TWOの近藤正晃ジェームス先生にしても、チャイナ・フォーラムの講師の方々はいずれも、これらの3つの要素を備えた方です。そして、若者として社会的責任を全うするために3要素を備えてほしいと呼びかけました。

今年のチャイナ・フォーラムのもうひとつの新しい試みとして、同じ日の午前中に北京大学日本言語文化学部の2年生を対象に、ワークショップが行われました。1年しか日本語を習っていないのですが、柳田先生のお話を真剣に聞く学生の表情は今までの授業風景にないものがありました。学生が寄せた感想文では、写真や映像のインパクトが語られ、中国の現状と結びつけながら、命の重さ、政府の責任、集団主義などについて言及する内容が多かったことから、今年のテーマも、例年と同じように、中国人学生に深く考える材料を提供できたようです。

(北京大学日本言語文化学部副教授)

北京大学の学生さんの感想文

北京フォーラムの写真(劉健撮影)

北京とフフホトのフォーラムの写真(石井撮影)

ネメフジャルガル「第6回チャイナ・フォーラムin フフホト」報告

第6回SGRAチャイナ・フォーラムin フフホトは、9月26日(月)内モンゴル大学学術交流センターで開催されました。同フォーラムには、内モンゴル大学、内モンゴル農業大学、内モンゴル師範大学、内モンゴル工業大学、内モンゴル医学院からの教師や生徒および内モンゴル草原環境保護促進会などNGO関係者を含めて約130人が参加しました。私が司会を務め、内モンゴル大学副学長・モンゴル学研究センター主任のチメドドルジ教授が開会の挨拶をしました。チメドドルジ教授は、SGRAチャイナ・フォーラムが2年連続で内モンゴル大学で開催されていることに対しSGRAに謝意を表し、工業化が急速に進んでいる今日の中国、特に地下資源開発によって経済成長を支えている内モンゴルは、環境問題において日本を含む先進国の経験から学ぶべきことが多いと指摘しました。SGRA代表の今西淳子さんは挨拶をし、SGRAの設立経緯、活動の趣旨について紹介しました。

今回のフォーラムは、特定非営利活動法人地球緑化の会副会長兼事務局長、モンゴル国ダルハン農業大学名誉教授、元(財)水俣病センター相思社事務局長の柳田耕一氏を迎え、グローバルな視点から、水俣でおきた人類史的な事件の事実と意味についてご講演いただきました。

水俣病は20世紀中期に発生した世界中でよく知られている環境問題であり、化学工場の廃液が海に流されて発生した公害病です。柳田先生は、病気の発生から行政の対応、市民活動の広がり、現在残されている課題などを中心に水俣病に関して詳しく紹介しました。公式発見から半世紀経った現在でも、抜本的な治療法は無く、被害の全体像の解明は進まず、地域経済は疲弊したままです。一方、水銀による環境汚染は世界中に広がり、酷似した症状をもつ人々も出現し、現在では微量水銀の長期摂取による健康影響に世界の関心は向かっているようです。

内モンゴル大学環境と資源学院の郭偉副教授が、柳田先生の講演に対してコメントをしました。郭先生は環境学の視点から柳田先生たちの活動を高く評価し、環境問題は人類共通の問題であり、若い学生たちが自ら環境保護に取り組むよう呼びかけました。また、内モンゴルの草原地帯における地下資源開発に伴う環境汚染問題を紹介しました。講演後柳田先生は、会場からの質問に対し丁寧に答えました。SGRA研究員で内モンゴル大学OB、滋賀県立大学准教授のブレンサイン先生が閉会の挨拶をしました。フォーラムの通訳はSGRA研究員、北京大学日本言語文化学部副教授の孫建軍先生が担当してくださいました。
(内モンゴル大学モンゴル学研究センター研究員)

フフホト・フォーラムの報告(中文)