SGRAイベントの報告

第38回SGRAフォーラム in 蓼科「Better City, Better Life:東アジアにおける都市・建築のエネルギー事情とライフスタイル」報告

2010年7月3日(土)、東京商工会議所蓼科フォーラムにて、第38回SGRAフォーラム「Better City, Better Life:東アジアにおける都市・建築のエネルギー事情とライフスタイル」が盛大に開催された。今回は北九州市立大学が主催、渥美国際交流奨学財団関口グローバル研究会(SGRA)が共催という形で、日本学術振興会若手研究者交流支援事業の一環として、また東京商工会議所のご協力を得て実現した。

午前10時、フォーラムは、今西淳子代表と北九州市立大学の黒木荘一郎教授の挨拶から始まった。その後、SGRA環境とエネルギー研究チームのチーフで、北九州市立大学教授の高偉俊氏と国際人間環境研究所の木村建一先生が次のような問題提起をした。

巨大な経済圏を形成しつつある東アジアでは、国民生活の質が向上しエネルギーの使用が増大している。この地域の国々の間の格差はいまだに大きいが、エネルギー・環境の危機意識は共通している。人口問題、水・エネルギー問題、気候変動問題、都市化問題など、今後解決していかなければならない極めて重要なグローバルな課題が目の前に山積みされている。これらを解決していくのに、欧米発の新技術に頼るだけでなく、アジアに伝わる民衆の知恵を使って新しい展開ができるのではないか。

その後、東アジアの7ヶ国・地域の研究者が、それぞれの国や地域の環境とエネルギー事情及び開発に関する研究成果を発表した。

【インドネシア】Mochamad Donny Koerniawan(バンドン大学)「熱帯地域における都市の持続性とエネルギー研究:持続性と省エネにおける低所得層の為の高層ビル開発の影響」

【フィリピン】Max Maquito(フィリピン・アジア太平洋大学)「メガ都市マニラにおける環境的に持続可能な交通への挑戦」

【ベトナム】Pham Van Quan(ハノイ建築大学)「ベトナムの都市における省エネ対策」

【台湾】葉 文昌(島根大学)「台湾の省エネ意識と交通事情」

【タイ】Supreedee Rittironk(タマサート大学)「タイにおける必須エネルギーの代替案」

【韓国】郭 栄珠(土木研究所)「エネルギー環境の視点からみた韓国の都市における1日の日常生活及びその変化」

【中国】王 剣宏(日本工営中央研究所)「エンジニアの視点から見る地球温暖化及び都市インフラ建設について」

各国・地域からの発表の後、北九州大学の福田展淳教授のあざやかな進行に従って、パネルディスカッションが行われ、参加した世界各国からの留学生を含めて熱い議論となった。

東アジア各国の経済発展と都市化による環境汚染・交通渋滞等の問題は解決できるのか?経済発展が進むと生活の便利さを求めてより多くのエネルギーを使うことになるが、果たしてそれは必要なことなのか。そもそも、個人差が非常に大きい幸福を測る指数とは何か?これらは、実際、結論を簡単には見つけることの難しい地球・人類の未来への課題である。

しかし、このフォーラム自体が、国境という枠組みを超える地球環境問題に対して、当該分野における若手研究者の交流を通して国際的な協力体制が要請されているという背景で行われたものである。エネルギー・環境の危機意識に関して、参加した8ヶ国の代表研究者の答えはほぼ同じであったことが印象的だった。省エネや資源対策に関して、政府だけではなく国民一人一人が責任を持って対応し、一歩一歩着実に進んでいけば、特にこのフォーラムのように東アジア各国の優秀な若手研究者のリーダーシップがあれば、地球環境を救うことができるだろう。

午後6時、嶋津忠廣運営委員長の閉会の辞をもって、本会は無事に終了した。フォーラムの後、渥美国際交流奨学財団主催の懇親会が開かれた。渥美伊都子理事長が、各国から来たフォーラム参加者へ歓迎の辞を述べ、一緒に乾杯した。皆さんは美味しい料理を食べながら、一日の長い討論の疲れをもう忘れたように、フォーラムの話題を続けて議論していた。

(文責:王 剣宏、郭 栄珠)

当日の写真は下記URLよりご覧いただけます。

郭栄珠、マティアス撮影 運営委員撮影

2010年7月14日配信