SGRAイベントの報告

第4回日韓アジア未来フォーラム・第18回SGRAフォーラム「韓流・日流:東アジア地域協力におけるソフトパワー」報告

第4回日韓アジア未来フォーラム・第18回SGRAフォーラム「韓流・日流:東アジア地域協力におけるソフトパワー」が東京国際フォーラムで2月20日(日)に開催された。これまでの日韓交流史に見られない画期的なできごとである韓流の意義について考えるフォーラムであった。日韓アジア未来フォーラムは、2001年より始めた韓国未来人力研究院と共同で進めている日韓研究者の交流プログラムで、毎年交互に訪問しフォーラムを開催している。

 

 SGRAを代表して今西淳子さんによる開会の挨拶に続き、韓国未来人力研究院の院長、韓国高麗大学の李鎮奎(イ・ジンギュ)教授(自称、ジン様)が「韓流の虚と実」という演題で基調講演を行った。日本における韓流ブームを時代別の事例と日本と韓国双方の分析を用いて検証し、日本での韓流ブームの原因をドラマ・中心層・日本人の意識的変化という観点から説明した。また、韓国ではなぜ日流ブームは起こらないのかという疑問点を歴史的認識と日本側の市場開拓戦略という面から説明した。さらに韓流ブームにおける危険性として韓流による韓国での文化経済主義的な視点、文化民族主義的視点への警戒を述べた。

 

 基調発表に引き続き日本富山大学の林夏生(はやし・なつお)氏は、日韓文化交流政策の政治経済について発表した。韓流・日流が一般にはまるで「最近になって唐突に」出現した現象のように受け止められているが、実は「そうではない」とし、政策的には規制されながらも、海賊版が大量に流通するなど非公式な側面も含む「文化交流現象」が存在したこと、そしてそれへの対応がせまられたこともまた、近年の急激な変化をもたらす重要な要因のひとつであったと指摘した。

 

 自由に生きていきたいと叫ぶ韓国の新世代文化評論家の金智龍(キム・ジリョン)氏は「 冬ソナで友だちになれるのか」とやや刺激的な演題で発表した。自分の言いたいことは前の講演で言われてしまったとし、アドリブで30分ほどの発表をこなした。多年間にわたる日本での文化体験に基づきながら、今の韓流ブームは一方的な文化流入に對する反感を和らげる役割を十分に果たしているし、韓國の若者たちが日本文化を楽しむことに対するいかなる批判も根據や理屈を失うことになるとした。日本文化であれ、韓國文化であれ、文化を共有することはお互いの理解を深めるになり、韓流ブームをきっかけとし、日韓両国の人がもっと親しみを感じて友だちになることにつながると言い切った。

 

 休憩を挟んで発表者を含めて5人のパネリストによるパネルディスカッションが行われた。内閣府参事官(元在韓国日本大使館参事官)の道上尚史(みちがみ・ひさし)氏は、政府の見解ではないという前提で、「文化、ソフトパワーと新日韓関係」について討論し、「こぐのをやめると自転車は倒れる」、「はやりすたれに任せるには、日韓関係は重要すぎる」という含みのあるメッセージを伝えた。

 

韓国国民大学(東京大学客員教授)の李元徳(イ・ウォンドク)氏は「韓流と日韓関係」について、韓流・日流は明るい将来の日韓関係を示すシンボルであるとしながら、早急な楽観論は警戒すべきと指摘した。

 

 最後に東京大学の木宮正史(きみや・ただし)氏は日韓関係の構造的変容のなかで韓流現象を捉え、韓流は単なるブームだけではなく、日韓関係の緊密化という構造変容によって支えられているものであると指摘した。

 

 その後、ディスカッションはフロアーに開放され、70名にも及ぶ参加者の中からコメントや感想が寄せられた。ジャーナリストの櫻井よしこ氏からは李元徳氏と木宮正史氏に対北朝鮮政策や歴史教科書問題について「攻撃的」質問もあり、一瞬「戦雲」が場内をおおう場面もあった。予定より25分遅れてフォーラムは終了し、フォーラムの最後に韓国未来人力研究院の宋復(ソン・ボク)理事長による閉会の挨拶が行われた。「ジュン様(姫?)」と「ジン様」のご協力で立派なフォーラムができたことについてのお祝いの言葉と拍手で締め括られた。

 

 尚、今西さんから、次回の日韓アジア未来フォーラムは今回のフォーラムの成果を踏まえ、日本における韓流、韓国における日流 、そしてアジアにける韓流と日流をアジアの視点から幅広く論じる形で2005年10月韓国で開催しようと呼びかけがあった。(文責:金雄煕)

 

当日、SGRA運営委員の許雷さんが撮った写真を集めたアルバムをご覧ください。