SGRAイベントの報告

第3回日韓アジア未来フォーラム「アジア共同体構築に向けての日本および韓国の役割について」

第3回日韓アジア未来フォーラム「アジア共同体構築に向けての日本および韓国の役割について」がソウル市から車で約2時間の陽平(ヤンピョン)で10月21日と22日に開催された。このフォーラムは、韓国未来人力研究院/21世紀日本研究グループと、渥美財団/SGRAの共同事業で、毎年相互に訪問し、フォーラムを開催している。陽平は、日本でいえば軽井沢のような町で、その山奥に今回のホストの未来人力研究院の研修館があり、雨あがりで霧に覆われた山を眺めながらフォーラムの前半が始まった。

 

今回のフォーラムのSGRA側の担当「グローバル化のなかの日本の独自性」研究チームの顧問、名古屋大学の平川均教授が東アジア全体の観点からフォーラムのテーマについて基調講演を行った。北東アジアの課題から東アジア(北東アジア+ASEAN)の課題の時代への移行は可能であるかどうか、東アジアのアイデンティティについて検討し、日本に対しては、大東亜共栄圏論を越える東アジア概念の構築とその実践という課題を、韓国に対してはASEANとの関係強化と東アジア共同体論の推進者という役割を指摘した。

 

韓国中央大学の孫洌氏は「東アジア・東北アジア経済共同体構想と韓国」について発表した。韓国が「東北アジア経済中心」を目指していくうえで、もっとも重要なのは、韓国が考えている空間的な枠組みに日本と中国をどうやって組み入れるかということだと指摘した。SGRA研究員で仁荷大学の金雄熙氏は「日・中・韓IT協力の政治経済」について発表した。東北アジアにおいてITの分野で韓国が推進的な役割を果たし、世界のITリーダーである米国に国際標準が取られないように、東北アジア3カ国間の協力体制の構築を訴えた。SGRA研究員で名古屋大学客員研究員のF.マキト氏は、フォーラムで初めての東南アジアからの参加者として「アジア開発銀行の独自性研究:その概観」について発表した。東アジアで多様性を維持する日本の役割・責任を、アジア開発銀行を事例として取り上げた。

 

ここで第1日目のフォーラムは終了したが、その後も、陽平の寒い夜にもかかわらず、韓国の焼肉バーベキューとSPIRITで体を温めながら、日本からの留学生を含む学生達も一緒に、遅くまで議論がはずんだ。

 

翌朝は、韓国風の朝食の後、今回のゲスト講師の東京大学の木宮正史氏が「韓国外交のダイナミスムと日韓関係:公共材としての日韓関係の構築に向けて」について発表した。東北アジアが共有する様々な分野において市場を超えるような問題に対応できる日韓協力の必要性と難点を指摘した。最後に、21世紀日本研究グループの代表で、韓国国民大学の李元徳氏が「北東アジア共同体の構築と北朝鮮問題」について発表した。この地域の安全保障において最重要課題である北朝鮮、それに対する6カ国協議を評価し、これからの展開について検証した。その後、参加者からコメントや感想が寄せられ、フォーラムは午前11時半に終了した。

 

来年の日韓アジア未来フォーラムは、「東アジアの安全保障と世界平和」研究チームが担当し、来年の7月に軽井沢で開催する予定である。

 

(文責:F.マキト)