SGRAイベントの報告

第12回フォーラム「環境問題と国際協力:COP3の目標は実現可能か」報告

2003年7月18日(金)及び19日(土)、鹿島建設軽井沢研修センター会議室で、第12回SGRAフォーラムが開催された。今回のフォーラムにおいては、18日午後8時から10時までの分科会で、ベトナム・タンロン大学のフィン・ムイ先生からベトナムの廃棄物問題を含めた様々なベトナムの事情についての報告がなされた。また、19日午後2時から6時までの本会議では、「環境問題と国際協力:COP3の目標は実現可能か」というテーマについて、基調講演と研究報告さらにアジア各国の状況調査報告があり、その後有益な議論とディスカッションが行われた。以下は、その概略である。

 

「ベトナムからの報告」 by フィン・ムイ

 

ベトナムの環境問題に長年携わってこられたムイ先生から、最近のベトナムの廃棄物問題について、先生の個人的な経験を中心に報告があった。ベトナムはまだ発展途上国であり、日本のような先進国が直面している廃棄物問題とは違う性質の廃棄物問題、一言で言えば、「衛生問題としての廃棄物問題」に直面している。この問題を解決するために、ムイ先生は、適切な廃棄物の処理施設を整備することが重要だと主張し、自ら地方政府を説得して、衛生的な処理施設を建設した経験を紹介してくださった。

 

一方、途上国の直面するもう一つの重大な問題は「貧困と環境破壊の悪循環」という問題である。ムイ先生は、ベトナムの少数民族の事例を取り上げて、貧困がもたらした環境破壊の実態、すなわち、従来の農法によって進行する砂漠化、砂漠化によって深刻化する生活の厳しさについて、詳しい報告がなされた。と同時に、このような悪循環を断ち切るための住民自らの試み、すなわち、我慢強い植林活動についての紹介もあった。また、このような悪循環を断ち切るためには教育が重要であると強調された。

 

「環境問題と国際協力:COP3の目標は実現可能か」 by SGRA環境・エネルギー研究チーム

 

地球温暖化を防止するための国際協力をテーマにした今回のフォーラムにおいては、埼玉大学の外岡豊教授をゲストに迎え、「地球温暖化防止のための国際協力」というタイトルで基調講演をしていただいた。地球温暖化は20世紀後半のビジネス社会が招いた人類最大の問題であることを強調しながら、この問題を解決するためには、それぞれの考え方や慣習を持つ国々が互いに理解を深め、協同作業を積み重ねるしか方法はないと熱く語られた。

 

ゲスト講演の後、SGRA環境・エネルギー研究チームの3人の研究員からの研究報告がなされた。まず、李海峰研究員は、東京におけるヒートアイランド現象の深刻さについて、具体的なデータや図を見せながら、地球温暖化とヒートアイランドによって大都市の住居性が著しく損なわれる可能性が高いと警告した。鄭成春研究員は、排出権取引制度の事例として「カリフォルニア州のRECLAIMプログラム」を取り上げ、排出権取引制度が成功するためにはきめ細かい制度設計が必要である点を強調した。高偉俊研究員は、中国抜きでは地球温暖化問題の解決はできないと主張しながら、中国における温室効果ガスの排出及び対策についての報告を行った。最後に、ベトナム、韓国、モンゴル、フィリピンにおける各国の地球温暖化対策の現状についての報告があった。

 

以上の基調講演、研究報告を踏まえながら、約1時間にわたるパネル・ディスカッションが行われた。そこでの結論は、今できることを一つ一つ実践しながら、その実績を積み重ねていくことが最も大事である、という点であった。今回のフォーラムは、この面から見ると、各国の研究者たちが集まり、地球温暖化問題についての議論を重ね、互いに理解を深める貴重な場としての意義を持つと思われる。

 

(文責:鄭成春)