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金雄熙「第17回日韓アジア未来フォーラム『北朝鮮開発協力:各アクターから現状と今後を聞く』報告」

2018年3月16日(金)、The-Kホテルソウルで第17回日韓アジア未来フォーラムが開催された。今回のフォーラムのテーマは、2016年2月に東京で開催された第15回日韓アジア未来フォーラム「これからの日韓の国際開発協力:共進化アーキテクチャの模索」、2016年10月1日に北九州で開催された第3回アジア未来会議の自主セッション「アジア型開発協力の在り方を探る」、そして2016年12月に仁川松島で開催された第16回日韓アジア未来フォーラム「日中韓の国際開発協力:新たなアジア型モデルの模索」における各議論を受け、「北朝鮮開発協力:各アクターから現状と今後を聞く」となった。今年の8月24日から同じ場所で開催する第4回アジア未来会議のプレ・カンファランスでもあった。

 

今後、北朝鮮の非核化問題がいかなる方式で解決されようとも、北朝鮮に対する開発支援はこれからの交渉プロセスや問題の解決以降において、韓国や日本を含め、国際社会が避けては通れない重要な課題である。今回のフォーラムでは、北朝鮮への開発協力に対する体系的な理解を深めるとともに、主なアクターたちの対北朝鮮支援のアプローチとその現状について議論し、新たな開発協力モデルの可能性を探った。

 

フォーラムでは、渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)の今西淳子(いまにし・じゅんこ)代表による開会の挨拶に続き、3名の専門家による報告が行われた。まず、孫赫相(ソン・ヒョクサン)慶熙大学公共大学院院長が「北朝鮮開発協力の包括的理解と多様なアプローチ」というタイトルで、北朝鮮開発協力をめぐる争点(食糧援助は必要か、援助の目的は何か、援助物資の引き渡し過程は透明か、援助活動におけるNGOの役割は何かなど)、北朝鮮開発協力の歴史と現状、そして市民社会(NGO)、国際機構、人道的支援、体制転換国の開発モデル、技術協力など多様なアプローチについて紹介した。

 

朱建栄(しゅ・けんえい)東洋学園大学人文学部教授は、「中国と北朝鮮の関係につむじ風――その変化に注目せよ」という題で、第二次大戦後の長きにわたって、北朝鮮を事実上、自国の安全保障の緩衝地帯と見做し、ピョンヤンに対して惜しまない経済支援を行ってきた中国が、北朝鮮の核開発に危機感を高めた2年前から「優先目標の非核化に経済関係を服従させる」政策を取り始め、2017年12月、空前に厳しい国連安保理の制裁決議にも同調したことに注目した。そしてピョンチャン冬五輪後、習近平政権は北朝鮮、及びTHAAD問題を抱える韓国との関係をどのように進めるかについて報告した。

 

文炅錬(ムン・キョンヨン)全北大学国際人文社会学部教授は、韓国と国際社会の北朝鮮開発協力について、その現状と評価について最新の状況を踏まえながら報告を行った。北朝鮮に対する支援は、他の開発途上国に対する支援とは異なり、支援の主体である韓国および国際社会にとってジレンマを抱える問題であるとした。また国際社会の対北朝鮮支援は人道的レベルの最小限の支援にとどまっており、対北朝鮮支援が始まって20年になる現在でも北朝鮮は依然として救護的性格の緊急支援が必要な状態であると強調した。さらに北朝鮮の非核化問題が進んだ場合、対北朝鮮支援の方向性として、人道的支援から開発協力への転換を模索する必要があると主張した。

 

コーヒーブレイクを挟んだ討論は、時間の制約でフロアーにオープンすることはできなかったが、それぞれの立場や専門領域を踏まえた内容の濃い議論が展開された。最後に、李鎮奎(リ・ジンギュ)未来人力研究院理事長により、タイムリーなテーマの選定に触れるコメントと閉会の辞で締めくくられた。今回のフォーラムは、最初「北朝鮮開発協力の理解-開発協力のフロンティア」というタイトルがついていたが、参加予定であった日本大使館の方が「開発協力のフロンティア」というサブ・タイトルでは参加しにくいということで変更した経緯がある。今西さんが開会の挨拶で述べられたように、日韓、そして日韓中のプロジェクトは、「なんだか面倒なこと」がとても多いが、それぞれの立場や利害を配慮しながら、目先の変化に惑わされず、地道に進めていくことが大事なのではないかと思う。

 

これからも、ポスト成長時代における日韓の課題と東アジアの協力について、実りのある日韓アジア未来フォーラムを進めていくためには、具体的な共通の課題について掘り下げた検討を重ねていかなければならない。目下北朝鮮の非核化局面でジャパンパッシング(日本排除)が言われたりするが、いうまでもなく、日本は朝鮮半島の非核化、平和体制の構築、北朝鮮開発協力において欠かせない存在である。今回のフォーラムでは、韓国や中国に比べ、日本の影が薄かったようにも思われる。次回のフォーラムでは、北朝鮮問題を含めて開発協力における日本のプレゼンスに注目しつつ、ここ3か年の成果をまとめあげるといいのではないかと思っている。

 

最後に17回目のフォーラムが成功裏に開催できるようご支援を惜しまなかった今西代表と李先生、そして8月24日からの第4回アジア未来会議の段取りと予行演習で韓国を訪ねた渥美財団スタッフの皆さんに感謝の意を表したい。

 

 

当日の写真

 

<金雄煕(キム・ウンヒ)Kim_Woonghee>
89年ソウル大学外交学科卒業。94年筑波大学大学院国際政治経済学研究科修士、98年博士。博士論文「同意調達の浸透性ネットワークとしての政府諮問機関に関する研究」。99年より韓国電子通信研究員専任研究員。00年より韓国仁荷大学国際通商学部専任講師、06年より副教授、11年より教授。SGRA研究員。代表著作に、『東アジアにおける政策の移転と拡散』共著、社会評論、2012年;『現代日本政治の理解』共著、韓国放送通信大学出版部、2013年;「新しい東アジア物流ルート開発のための日本の国家戦略」『日本研究論叢』第34号、2011年。最近は国際開発協力に興味をもっており、東アジアにおいて日韓が協力していかに国際公共財を提供するかについて研究を進めている。

 

 

2018年4月26日配信