SGRAイベントへのお誘い

第4回東アジア日本研究者協議会へのお誘い(SGRAパネル#2「ODAとアジア」)

東アジア日本研究者協議会は、東アジアの日本研究関連の学術と人的交流を目的として

2016年に発足されました。SGRAはその理念に賛同し今年も3チームが参加いたします。

各チームの発表内容を順次ご案内しますので、

これを機会に皆様のご参加やご関心をお寄せいただければ幸いです。

詳細はこちらでご覧いただけます。

 

———————————————————————————————

【東アジア日本研究者協議会の趣旨と歩み】

北米を中心としたAAS(アジア学会)、欧州を中心としたEAJS(欧州日本学会)が存在するのに対し、東アジア地域における日本研究者の集う場として2016年に発足された協議会。「東アジアにおける日本研究関連の学術と人的国際交流」を目的に毎年、東アジア各都市で国際学術大会が開催されている。

 

◇協議会趣旨

一、日本研究の質的な向上。

一、地域の境界に閉ざされた日本研究から脱し、より多様な観点と立場からの日本研究を志向。

一、東アジアの安定と平和への寄与。

 

◇国際学術大会の歩み

第1回は2016年韓国・仁川、第2回は2017年中国・天津、第3回は2018年日本・京都で開催。

第4回が本年11月に台湾・台北で開催される。

 

———————————————————————————————

第4回東アジア日本研究者協議会国際学術大会 in 台北

日 時: 2019年11月1日(金)~3日(日)

会 場: 福華国際文教会館台湾大学

主 催: 第4回東アジア日本研究者協議会、台湾大学日本研究センター

概 要 :  全体プログラム

その他: 協催、助成、後援についてはこちらご覧ください。

 

———————————————————————————————

SGRA参加パネル

「ODAとアジア:再評価の試み」

———————————————————————————————

分科会N3(一般パネル)11月2日(土)14:15-15:45 於 台湾大学 普通教学館404号室

———————————————————————————————

 

パネル趣旨:

1950~60年代に始まった日本のODAは、1989年には米国を抜きODA拠出額では世界第1位となった。しかし、その過程で様々な批判または評価の高まりを受け、日本政府は予算の縮小を決断した。2015年、ODA大綱は「開発協力大綱」と名称を変更し、より一層強く「国益」の確保への姿勢を打ち出した。一方、政治的な要因で対台湾のODAは中止、経済的な要因で対韓国のODAは終了、急速に経済発展を遂げた中国へのODAも2018年度をもって終了した。複雑な問題が世界的に様々な影響を拡大させているなかで、「ODAを主体とする開発協力は日本の重要な政策ツールのひとつ」と位置づけられているが、これに関して総合的にレビューする必要もある。今まで日本の政策決定のプロセスや戦略意図についての論考が多かったが、本パネルは日本の対アジア主要国ODAのレビューに重点を置きたい。

 

パネリスト:

討論者兼総括 黄 自進(中央研究院近代史研究所研究員)

報告者 1  深川 由起子(早稲田大学)

報告者 2  金 雄煕(仁荷大学)

報告者 3  李 恩民(桜美林大学)

報告者 4兼討論 フェルディナンド・シー・マキト(フィリピン大学)

 

発表要旨:

【報告1】 深川 由起子(早稲田大学)

「日本の開発援助政策改革~韓国との比較から」

 

日本の政府開発援助(ODA)をめぐっては1990年代にその規模がピークに達すると、欧米から自国利益を拡大するための「商業主義」であるという批判を受けた。しかしながらその後、多くの研究によって誤解が解かれると共に、結果としてアジア各国が優れた経済発展を遂げることで、むしろ「商業的」なODAが民間企業の誘致や技術の波及に役立ったとする肯定的な評価が台頭した。アジアではODAには自国の発展経験の移転といった側面が強い。中国の「一帯一路」がさらに商業性を強めた「経済協力」として展開されるようになって以来、日本のODAもより経済権益に直結するインフラ輸出など「経済協力」として再編されつつある。これに対し、韓国はセマウル運動の移植や人材育成などより古典的なODAを展開している。北東アジアでは政治的障壁からドナー間の協力や対話が進んでいないが、潜在的には様々な補完性もあり、アフリカ支援協力などで具体的な協力を模索する時期に来ている。

 

【報告2】 金 雄煕(仁荷大学)

「日本の対韓国ODAの諸問題」

 

日本の対韓経済協力に対する研究は、その重要性にもかかわらず、いくつかの理由から客観的な分析が困難な状況である。1965年の日韓国交正常化を皮切りに実施された多くの協力案件は半世紀以上の歳月が経過してしまい、韓国経済において日本による資金協力や技術協力の痕跡を見出すことが容易ではない。また、請求権資金がもつ特殊性、すなわち、戦後処理的・賠償的性格と経済協力としての性格を併せ持つことから生じる複雑性がある。さらに最悪の日韓関係のなかで、日本が韓国に対し資金協力や技術協力を行ったことを公に議論することはかなりセンシティブでリスキーなことになっていることが上げられる。韓国で請求権資金の性格や役割に対する評価は、一般的に日韓国交正常化に対する評価と密接につながっている。安保論理と経済論理が日韓の過去の歴史清算を圧倒する形で日韓国交正常化が進められ、肯定的な評価と否定的な評価が大きく分かれてしまった。請求権資金についても同じく評価が分かれているが、構造的な韓国の対日貿易不均衡などいくつかの問題はおこしたものの、請求権資金が韓国経済の初期発展過程で重要な役割を果たしたことは否定できないというのが一般論であるように思われる。本報告では、請求権資金を中心に日本の対韓経済協力についての相異なる評価や様々な論点を紹介する。日本の外務省が「日本の援助による繁栄」の象徴的事業としているソウル首都圏地下鉄事業と浦項製鉄所(現在のPOSCO)の建設事業についての異なる評価も取り上げつつ、より客観的に日本の対韓経済協力へのレビューを試みることにする。

 

【報告3】 李恩民(桜美林大学)

「日本の対中ODAの30年」

 

1979年、鄧小平が推進した改革開放政策は、経済発展を最優先にする新時代の幕明けであった。まさにこの年に、中国政府は日本の財界人の助言を受け、これまでの対外金融政策を改め、日本からODA(Official development Aid)を受け入れ、主要インフレと文化施設の建設に集中した。以来40年間、政府から民間まで日本側は円借款、無償資金提供、技術協力などを通して中国の経済発展・人材育成・格差の是正、環境保全等分野に大きく貢献してきた。中国側は日本のODAをどう活用し、どのような成果をもたらしたのか、一般の民衆はこれに対してどう認識・評価しているのか、本報告はフィールドワークお成果をもとにその詳細について考察してみたい。

 

【報告4】 フェルディナンド・シー・マキト(フィリピン大学)

「日本の共有型成長とそのODA:再考察」

 

日本のODAを次の観点から簡単に見直す。1)西洋のODAと比較し、その違いを強調しながら共有型成長に貢献しているかどうか、検討する。2)中国のODAと比較し、その類似性を強調しながら、ODA理念を検討する。