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ボルジギン・フスレ「第6回ウランバートル日モ国際シンポジウム『モンゴルにおける鉱山開発の歴史、現状と課題』報告」

―今西淳子氏にモンゴル科学アカデミー栄誉学位を授与―

 

2013年9月5、6日の2日間、渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)とモンゴル科学アカデミー歴史研究所の共催、在モンゴル日本大使館、モンゴル・日本人材開発センター、モンゴルの歴史と文化研究会の後援、双日株式会社、鹿島建設の協賛で、第6回ウランバートル日モ国際シンポジウム「モンゴルにおける鉱山開発の歴史、現状と課題」がウランバートルで開催された。

 

近年、モンゴルは新たな資源大国として世界から熱い視線を集め、大きな変動期をむかえている。しかし、資源開発にともなう負の側面も問題化し始めた。インフレの進行、貧富の格差や環境汚染は日々深刻さを増し、社会インフラの整備の遅れも目立っており、大規模資源開発はモンゴルの地域生態システムへの影響をももたらしている。モンゴル政府は、鉱山開発、資源利用における関係諸国との友好関係を強調しながら、多くの葛藤に遭遇しており、対外関係は近時、複雑化してきている。このような現状のなか、今西SGRA代表と私は、モンゴル国の関係者と話し合って、今回のシンポジウムを企画した。

 

本シンポジウムでは、モンゴルにおける資源開発の歴史を振り返りつつ、同国の鉱山開発の現状、問題点をより多元的かつ総合的に把握し、さらに経験や教訓、問題への解決方法について、広い視野から検討することによって、モンゴルの持続可能な資源開発の発展のために意味のある議論を展開することを目指した。

 

9月4日午前、私がウランバートル国際空港に着くと、モンゴル科学アカデミー歴史研究所の職員が出迎えに来てくれたが、交通渋滞で、空港から歴史研究所に着くまでに、2時間余りもかかった。S.チョローン所長と会談した後、同研究所の職員と一緒に、プログラム、要旨集、会議でつかうパワーポイントなどを確認し、日本大使館の青山大介書記官とも連絡をとった。その後、ケンピンスキーホテルにて、6日夜のSGRAの招待宴会のメニューなどを確認して予約した。そして、今西さんと高橋甫氏を出迎えるため、空港に行った。

 

5日の昼、チョローン所長はスフバートル広場の隣にあるレストランに今西さん、高橋さんと私を招待した。モンゴルの鉱山開発や、日本と北朝鮮政府のモンゴルでの交渉などが話題になり、大変興味深かった。午後、私は歴史研究所の職員と一緒に会議の準備をし、夕方、モンゴル・日本人材開発センターにて、同時通訳設備のセッティングなどをした。日本からの参加者のほとんどはこの日の夜、ウランバートルについた。

 

6日午前、モンゴル・日本人材開発センター多目的室で開会式がおこなわれ、在モンゴル日本大使館の林伸一郎参事官、今西代表、モンゴル科学アカデミーのB. エンフトゥブシン総裁(E. プレブジャブ事務局長が代読)が挨拶をした。

 

今西さんはSGRA代表として、長年にわたって国際交流活動に貢献し、顕著な業績をあげ、とりわけモンゴルで国際理解に重要な意義を持つ国際学術シンポジウムをおこなってきて、日モ交流の促進とモンゴル研究の発展へ寄与した功績で、モンゴル科学アカデミーより同アカデミー最高栄誉賞――栄誉学位を授与された。モンゴル科学アカデミーはモンゴルの最高の科学学術機関であり、栄誉学位は同科学アカデミーの最高栄誉賞である。

 

開会式の後、前モンゴル工業大臣Ts. ホルツ氏が「モンゴル鉱業開発史」、名古屋大学客員教授、前在モンゴル日本大使 城所卓雄氏が「モンゴルにおける鉱山開発の歴史と問題点」をテーマとする基調報告をおこなった。

 

午前中の後半の会議では、モンゴル科学アカデミー歴史研究所のN. Ganbat副所長と埼玉大学の外岡豊教授が座長をつとめ、6本の論文が発表された。午後の会議では、高橋甫氏とモンゴル国立大学のJ. Urangua教授が座長をつとめ、7本の論文が発表された。その後おこなったディスカッションでは、チョローン氏と私が座長をつとめ、モンゴルの鉱山開発における問題点やモンゴルは戦後日本の経済発展の経験と教訓から何を学ぶべきかなどをめぐって、活発な議論が展開された。

 

同日夜ケンピンスキーホテルでSGRA主催の招待宴会がおこなわれ、50人ほどが参加し、モンゴルの国家殊勲歌手や馬頭琴奏者、柔軟演技者が素晴らしいミニコンサートを披露した。

 

7日午前の会議では、東京外国語大学の上村明氏とモンゴル科学アカデミー歴史研究所のS. Tsolmon教授が座長をつとめ、鉱山開発と環境保護をテーマとする11本の論文が報告された。日本からは上村明氏、外岡豊氏、特定非営利活動法人「地球緑化の会」の栁田耕一氏、千葉大学准教授児玉香菜子氏、SGRA会員で昭和女子大学准教授マイリーサ氏、首都大学東京非常勤講師包聯群氏、同大学教授落合守和氏(共同発表)が参加し発表した。N. Ganbat氏と一橋大学名誉教授田中克彦氏はその後のディスカッションの座長をつとめた。

 

午後は、ウランバートルから130キロほど離れたところにあるバガノール炭鉱を見学した。日本からの参加者にとって、この見学は非常に重要であった。その日の夜、バガノールの観光リゾートで歴史研究所主催の招待宴会がおこなわれた。星空のもと、宴会は続き、みなそれぞれの思いを語り、歌った。翌日の朝、今西さんの携帯から、2020年オリンピック開催地は東京に決定という朗報が入ってきて、みんなで喜びを分かち合った。

 

二日間の会議には、90人あまりが参加した。日本からは上記の報告者のほかに、双日株式会社の代表や「モンゴルの花」社の代表、名古屋大学の教員、東京外国語大学の留学生なども同シンポジウムに参加した。モンゴル国営通信社など22社が同シンポジウムについて報道した。

 

シンポジウムの写真

フスレ撮影

今西撮影

 

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<ボルジギン・フスレ Borjigin Husel>

昭和女子大学人間文化学部准教授。北京大学哲学部卒。内モンゴル大学芸術学院助手、講師をへて、1998年来日。2006年東京外国語大学大学院地域文化研究科博士後期課程修了、博士(学術)。昭和女子大学非常勤講師、東京大学大学院総合文化研究科・日本学術振興会外国人特別研究員をへて、現職。主な著書に『中国共産党・国民党の対内モンゴル政策(1945~49年)――民族主義運動と国家建設との相克』(風響社、2011年)、共編『ノモンハン事件(ハルハ河会戦)70周年――2009年ウランバートル国際シンポジウム報告論文集』(風響社、2010年)、『内モンゴル西部地域民間土地・寺院関係資料集』(風響社、2011年)、『20世紀におけるモンゴル諸族の歴史と文化――2011年ウランバートル国際シンポジウム報告論文集』(風響社、2012年)、『ハルハ河・ノモンハン戦争と国際関係』(三元社、2013年)他。

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2013年10月9日配信