SGRAメールマガジン バックナンバー

  • [SGRA_Kawaraban] Liang Yun-hsien “Japan-Taiwan Future Forum #4 Report (Part 1)”

    ********************************************* SGRAかわらばん530号(2014年8月13日) ********************************************* 第4回日台アジア未来フォーラム報告 ■ 梁 蘊嫻「東アジアにおけるトランスナショナルな文化の伝播・交流—文学・思 想・言語—(その1)」 第4回日台アジア未来フォーラムが6月13日、14日の2日間にわたって、台湾大学及び 元智大学で開催された。グローバル化が急速に発展した今日、メディアの発展が進む ことで、文化の交流が盛んになり、文化の国境は消えつつある。この現象に着目しつ つ、フォーラムのテーマを「東アジアにおけるトランスナショナルな文化の伝播・交 流—文学・思想・言語—」とした。「メディア」は英語のmediaの訳語であり、新 聞・雑誌・テレビ・ラジオなどの近現代以降にできあがった媒体として捉えられるこ とが多い。ここではより広義的な意味を取っている。もとよりメディアは、時代に よって異なり、メディアの相違が文化のあり方に関わってくる。 今回のフォーラムは、台湾・日本を含めた東アジアにおける文化交流・伝播の様態に 迫り、異文化がどのようにメディアを通じて、どのように影響し合い、そしてどのよ うな新しい文化が形成されるかを考えるものである。 1日目は台湾大学にて「文学とメディア」「言語とメディア」「思想とメディア」の3 分野の基調講演、また19本の研究発表を行った。6月13日午前、台湾大学の文学院講 演ホールで開幕式が行われた。渥美財団今西淳子常務理事、交流協会文化室福増伸一 主任、台湾日本研究学会何瑞藤理事長、台湾大学日本語学科陳明姿主任のご挨拶に よって、フォーラムが始まった。 1本目の基調講演では、東京大学名誉教授延広真治先生に「「男はつらいよ」を江戸 から見れば—第五作「望郷篇」の創作技法—」というタイトルでお話をいただいた。 山田洋次監督「男はつらいよ」は48連作に及ぶ喜劇で、ギネスブックにも登録され た。48作中、監督自ら客がよく笑うと思われたのが第5作。延広先生は、この「望郷 篇」の創作技法を江戸時代の作品に求められると指摘した。具体的に、江戸時代とか かわりの深い作品、たとえば落語「甲府い」・「近日息子」(原話:手まハし)・ 「粗忽長屋」(袈裟切にあぶなひ事)・「湯屋番」・「半分垢」(原話:駿河の 客)、講談「田宮坊太郎」や曲亭馬琴『南総里見八犬伝』などを綿密に考察し、それ らの作品と「望郷篇」の関係について詳しく説明した。 延広先生の講演を通して、日本人にとっての国民的映画「男はつらいよ」のユーモア は、監督の古典作品に対する造詣によるものであるとのことがよく理解できた。笑い は日本文化の中においては、非常に特徴的で大切なものである。落語の笑いは馬鹿馬 鹿しくて、理屈がいらない。「男はつらいよ」が長く続けられたのは、落語的なユー モアセンスが染み付いているからではないかとつくづく思った。落語の笑いは外国人 に理解されにくい。なぜならば言語の壁があるからだ。しかし、日本の笑いはドラマ というメディアを通して伝えれば、外国人に受け入れられやすくなるであろう。 続いて、国立国語研究所横山詔一教授が「電子メディアの漢字と東アジアの文字生 活」という演題で講演した。横山先生は、(1)「漢字をイメージする」、(2)「漢 字を打つ」、(3)「文字の生態系モデル:文字と社会と人間」、という3つの要点を 話した。横山先生はまず東アジアで共通して観察される「空書(くうしょ)行動」を 紹介した。(空書行動とは、文字の形をイメージするとき、指先で空中に文字を書く ような動作を言う)。この現象から、漢字文化圏の人は、漢字や英単語の形を思い浮 かべるときに、視覚イメージだけではなく、体・肉体の動作(action)という運動感覚 成分もあわせて活用しているということを指摘し、漢字は東アジアの人々の肉体感覚 とつながっているメディアだという見解を提出した。 また、ネットツールの普及により、文字をキーボードで打つことが当たり前の時代に なり、漢字は手書きよりも、パソコンの変化候補から「見て選択すれば書ける」時代 になったとともに、字体の使用にも変化がみられたということを指摘した。この現象 を(1)異体字の好み、(2)台湾の日本語学習者が日本人にメールを書く場面、との 両方面から考察した。これらの研究課題については、伝統的な語学研究法ではなく、 「文字の生態系モデル」に基づいて分析した。横山先生はいくつか興味深い研究成果 を提示したが、その中の一つを次に挙げておこう。台湾の日本語学習者がメールを書 く時には、読み手の日本人が読みやすい表記、あるいは違和感を持たない表記を意識 的・無意識的に選択するという傾向があるという。「文字と社会と人間は一体であ り、切っても切れない関係にある」ということだが、インターネットが発達すればす るほど、この傾向はますます強くなるといえよう。 横山先生の講演は、電子メディア(ネットメディア)の発達によって、東アジアにおけ る文字文化の国境が消えつつある実態に着目し、東アジアの文字生活が「漢字」とい う記号・媒体を通じて今後どのように変化していくのかを考える手がかりとなった。 3本目の講演は、京都大学佐藤卓己准教授の「輿論と世論の複眼的思考—東アジアの 理性的対話にむけて」というテーマであった。佐藤先生は、マスメディアの普及にも たらされた「輿論」と「世論」の混同という現象には、知識人がどのような姿勢でい るべきかについて、次のような見解を述べた。 「輿論」と「世論」は、戦前の日本ではそれぞれ「ヨロン」と「セイロン・セロン」 と読まれていた。意味上においても、「輿論」は「public opinion」、「世論」は 「popular sentiments」と区別されていた。しかし今日に至って、「輿論」という言 葉が使われなくなった一方、「世論」を「ヨロン」と読む習慣が定着し、「輿論」の 意味と混同する例が見られるようになった。これは歴史の経緯から見れば、戦後1946 年に「輿」という字が制限漢字に指定された政策と関係しているが、1920年代の「政 治の大衆化」とともに生じた「輿論の世論化」という現象によるものでもあった。 「輿論の世論化」はさらに1943年5月情報局の「輿論動向並びに宣伝媒体利用状況」 調査結果が示すように、戦時下の国民精神総動員で加速化した。「輿論の世論化」は 理性が感性に、知識人の輿論が大衆の世論に飲み込まれていく過程であった。日本で はこうした同調圧力への対応を「空気を読む」と表現するが、この「空気」、すなわ ち誰も責任をもたない雰囲気である「世論」の暴走は現在ますます警戒する必要があ る。インターネットが普及した情報社会では、空気(世論)の中で、個人が担う意見 (輿論)はますます見えなくなっている。 こうした状況に対しては、「輿論」と「世論」の区別を回復し、さらに「世論の輿論 化」を目指すことの必要があると佐藤先生は指摘した。また、「世論の輿論化」と は、知識人が大衆の感情にどのような言葉を与え、対話可能な枠組を創っていくかと いうことだと述べている。世論は即時的な感情的反応の産物であり、討議という時間 を経て熟成されるのが輿論である。インターネットのように欲望を即時的に満たすメ ディアによって、現在ではますます「輿論の世論化」が加速化している。こうした現 状に対しては、佐藤先生は、インターネット中心の今日だからこそ、伝統的な活字メ ディアによる人文知の重要性はますます高まると強く主張した。また、「世論の輿論 化」の実践は、「トランスナショナルな文化の伝播・交流」として始まるべきだとい うことが講演の結びとなった。 以上の3本の講演は、それぞれ文学研究、言語学研究、思想研究に大きな示唆を与え ているものであった。午後は、分科研究発表が行なわれたが、その詳細は引き続き報 告する。(つづく) フォーラムの写真は下記リンクよりご覧ください。 www.aisf.or.jp/sgra/photos/index.php?spgmGal=The_4th_SGRA_Taiwan_Forum ……………………………… <梁蘊嫻(リョウ・ウンカン)Liang Yun-hsien> 2010年10月東京大学大学院総合文化研究科博士号取得。博士論文のテーマは「江戸文 学における『三国志演義の受容』−義概念及び挿絵の世界を中心に—」である。現 在、元智大学応用外国語学科の助理教授を務めている。 ************************************************** ● SGRAカレンダー 【1】第2回アジア未来会議 「多様性と調和」(2014年8月22日インドネシアバリ島) http://www.aisf.or.jp/AFC/2014/ 【2】第8回SGRAチャイナフォーラム 「近代日本美術史と近代中国」<ご予定ください> (2014年11月22日北京) 【3】第14回日韓アジア未来フォーラム・第48回SGRAフォーラム 「ダイナミックなアジア経済(仮題)」<ご予定ください> (2015年2月7日東京) ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: sgra-office@aisf.or.jp Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] Xie Zhihai “Japanese People and English Language: What is Global Jinzai?”

    ********************************************* SGRAかわらばん529号(2014年7月30日) ********************************************* SGRAエッセイ#418 ■ 謝 志海「日本人と英語:グローバル人材とは?」 近年、日本人学生の海外留学の激減により、文部科学省は留学生を倍増させようとさ まざまな取り組みを行っている。同時に英語教育にも力を入れようと、小学5年生か ら英語を正式教科として取り入れ、早期英語教育を始めることとなった。だが、日本 人の英語との接し方を見ていると、留学生の数を増やし、早く英語を学び始めるだけ で、グローバル人になれるのだろうかと不思議に感じることがある。日本でよく耳に する「グローバル人材」とは何を意味し、何を目指しているのだろう? 日本人留学生が減っている理由の一つは、日本での就職活動のスケジュール調整の難 しさで、あきらめてしまう人が多いのではないかと思う。何しろ大学4年間のうち少 なくとも最後の1年間は就職活動に没頭することが当たり前なのだから。日本では、 就職活動時は皆同じようなスーツを着用して挑むので、大学生の就活シーズンだなと いうのが電車に乗っていても容易に解る。企業は同じ時期に入社試験を行う。その流 れに乗り、卒業前に内定をもらうことが、大学生としてのゴールであるという風潮な ので、のんびり留学なんてしていられないよ、バイトしながらTOEICでも受けようと いう気にさせられるのではないだろうか。 日本の企業の人事部や人材派遣会社は、留学という経験よりも結局はTOEICのスコア で人を判断するのだから(もちろん表向きはそうなっていない)、日本で就職したい日 本人にとっては、留学やグローバル人材になるメリットというものに魅力を感じない だろう。そこそこのTOEICのスコアがあればいいのだから。今でも派遣会社へ登録に 行くと、登録者がたとえ英語圏の大学で学位やMBAを取っていても、また海外で働い た経験を持っていても、派遣会社の人はTOEICのスコアを知りたがるそうだ。これは 今までに出会った何人もの日本人から聞く。まずは派遣会社や、企業の人事部が「グ ローバル人材=英語=TOEIC」という図式を取り払わない限り、世界の人々と渡り合 える人材は日本では育ちにくいのではないかとの懸念を抱く。もしくは人材を評価す る立場の人事系の仕事についている人こそ留学して、外国語で勉強し生活してみる と、留学生の勇気と苦労が机上の勉強で済むTOEICとは比べものにならないと気付く かもしれない。 何故ここまで厳しく学生を採用する立場の意識改革を願うかというと、せっかく留学 して、語学だけでなく異文化を学んできても、日本で就職し実務として活かすチャン スがないと、いい人材が海外に逃避してしまうからだ。誰だって自分を正当に評価し てもらえる、やりがいのある場所で輝きたいはずだ。若いうちは特にそういうことが 大事だったりする。日本と違って、中国では留学生は増える一方で、その数は60万人 を超える。その中国での問題は、留学生が学業を終えても帰ってこないことだ。国内 に優秀で複眼的な思考を持った若者が残らなくなるのは国として大きな損失となる。 中国と比べると便利で安全で暮らしやすく、街も空気もきれいな日本で優秀な人材の 逃避など起こるべきではない、それをくい止めるのは日本の企業であろう。 変わらなければならないのは、大学も同じだ。英語を学ぶ人は、グローバル人という 概念も考え直した方がいい、英語だけが外国語ではないのだから。例えば、学校の授 業を通じ、どうしても英語が好きになれなかった生徒がいたとしよう、でもその生徒 が国語は得意だったら、中国に留学するという手もある。中国語なら漢字からすんな り頭に入るかもしれない。それだけでなく、そこで出会った他国からの留学生と英語 で話すチャンスも大いにあるだろう。結果、その生徒は中国語と英語を操るトライリ ンガルになって帰国するかもしれない。自分で英語の重要性と、グローバル人になり たいと感じる事が大事だ。その取っ掛かりは必ずしも英語である必要は無い。イギリ ス以外のヨーロッパ人などは、英語圏への留学経験などなくとも英語を話せる人が非 常に多い。そういう人々と異国の地で実際に出会えば、英語はグローバルな言語なの だと気付くだろう。最近では一部の大学で英語以外の外国語のクラスを増やす動きが 広がってきている。「多言語を学びたい」という学生たちのリクエストに応えた大学 もあるそうだ。生徒の意見を吸い上げて、大学も変化していくことは素晴らしいし、 こういった「見える変化」があれば学生もさらに学びたいという意欲につながるはず だ。 文部科学省は2020年をめどに日本から海外へ行く留学生を現在の6万人弱から、12万 人に倍増する計画を掲げている。数を増やすだけでなく、留学経験者が海外で学んで きた事を活かせる土壌作りと、受け入れ企業の理解を深めることまで早急にケアして いかなければならない。日本が留学生をたくさん増やしている間に世界、特に新興国 ではグローバル人材がどんどん排出され、世界中で活躍しているのだから。 ---------------------------? ? 共愛学園前橋国際大学専任講師。北京大学と早稲田大学のダブル・ディグリープログ ラムで2007年10月来日。2010年9月に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期 課程単位取得退学、2011年7月に北京大学の博士号(国際関係論)取得。日本国際交 流基金研究フェロー、アジア開発銀行研究所リサーチ・アソシエイトを経て、2013年 4月より現職。ジャパンタイムズ、朝日新聞AJWフォーラムにも論説が掲載されてい る。 ************************************************** ● SGRAカレンダー 【1】第7回ウランバートル国際シンポジウム 「総合研究——ハルハ河・ノモンハン戦争」<参加者募集中> (2014年8月9日ウランバートル) http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/mongol/7_1.php 【2】第2回アジア未来会議<オブザーバー参加者募集中> 「多様性と調和」(2014年8月22日インドネシアバリ島) http://www.aisf.or.jp/AFC/2014/ 【3】第8回SGRAチャイナフォーラム 「近代日本美術史と近代中国」<ご予定ください> (2014年11月22日北京) 【4】第14回日韓アジア未来フォーラム・第48回SGRAフォーラム 「ダイナミックなアジア経済(仮題)」<ご予定ください> (2015年2月7日東京) ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: sgra-office@aisf.or.jp Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] Max Maquito “Manila Report @ SGRA Forum #47”

    ****************************************************** SGRAかわらばん528号(2014年7月23日) 【1】エッセイ:マキト「マニラレポート@SGRAフォーラム」 【2】新刊紹介:岡田昭人「オックスフォードの教え方」 ****************************************************** 【1】SGRAエッセイ#417 ■ M.マキト「マニラレポート@第47回SGRAフォーラム『科学技術とリスク社会』」 2014年5月31日に東京国際フォーラムで開催された第47回SGRAフォーラム「科学技術 とリスク社会:福島第一原発事故から考える科学技術と倫理」に参加した。宗教学か ら理系まで包括する幅広い分野の、多くの国の人々からの話が聞けて、とても興味深 いフォーラムだった。僕の専門でもある経済学や出身地の東南アジア(とくに、フィ リピン)の観点からこのテーマについての感想を述べたい。 消費者や企業の活動により、経済的な便益が発生するが、あらゆる経済活動に損は付 き物である。そのような社会のリスクに対応するための一つの重要な制度に保険があ る。僕らは病気になるリスクを少しでも回避するために、健康保険に入る。会社も個 人と同様に、回避したいリスクに対して保険をかける。 しかしながら、原子力発電という産業の保険に関しては奇妙なことがある。しかもあ まり知られていないことかもしれない。先日のSGRAフォーラムでは、リスコミ(Risk Communicationの略)がとりあげられたが、一般市民にリスクについて丁寧な説明を することは、原発のリスクを考えるときにも当然必要である。ところが、原発産業の 保険はリスクを低下させるどころか、高める傾向がある。 原子力発電所は最悪の事故が起きた場合を見込んで、それによる損害を完全に賠償す ることを想定し、保険に入るとしよう。通常、それに必要な資金は売り上げから賄う ことになるので、電気料金に跳ね返る。ドイツでは、完全な補償をするためには、保 険料で電気料金は倍にあがるという試算もある。そうなると、原発は経済的な電気の 供給源としてなりたたなくなる。 そのため、どうしても原発を稼働したい場合は、部分的な保険に入るしかない。当 然、最悪の事故による損害は完全に賠償しきれない。では、その場合、どのように損 害賠償するのか。その時には、保険の社会化(socialization)が起きる。つまり、 社会がその損害賠償を負担することになる。 既存の原発事故の保険が原発産業自身の予備資金や民間の保険制度で十分にカバーさ れていると主張する人もいるが、3.11の原発事故の場合をみても、保険は事実上社会 化している。福島第一原発はドイツの保険に入っていたが、大震災ということで、賠 償の対象外になってしまった。そのため、東京電力が倒産しないように、部分的に国 有化され、資金が投入された。たとえ、倒産させても損害賠償は不可能である。結 局、国民(日本政府に税金をおさめている日本国民と日本に住んでいる外国人)が原 発事故の損害賠償を負担している。 このような保険の社会化は、リスクを余計に高めてしまいかねない。そのメカニズム のひとつは、いわゆるモラルハザード問題である。健康保険に入ることにより、健康 管理が甘くなり美味しいものを食べすぎてしまうことはないだろうか。もうひとつの メカニズムは、原発企業にとって保険料として備えなければならない支出が下がり、 その分、発電コストが下がるので、発電所の数が社会的に最適な数(たとえゼロでな いとしても)を上回ることになる。つまり、原発が過剰に建設され過ぎていく。 以上のふたつのメカニズムは、原発事故のリスクを高めていく。モラルハザードによ り、原発企業が無茶をしがちになり、事故が起きる確率が高くなる。SGRAフォーラム で、リスク管理の専門家が、3.11の原発事故の最大の理由は東京電力の怠慢だと強調 したことを思い出す。それに、原発の過剰な建設が加われば、事故が起きる確率はさ らに高くなるであろう。NIMBY(Not In My Back Yard)「僕の庭じゃなければ」という 方針のもとで、日本の原発は過疎地に立地されているが、東京近辺で建設される原発 ほどリスク管理は厳しくないのだろう。 原発保険の社会化については、リスコミが急務である。先日のSGRAフォーラムでも議 論されたように、社会を巻き込む多様で勇敢な(「出世しないことを恐れない」)専 門家の議論が必要であり、そして多くの指摘があったように、その議論を上手くまと める社会のプロセスを早く日本に作り上げなければならない。要するに、保険の社会 化が行われている限り、社会を巻き込む多様な議論が当然必要なのである。 今年2月のSGRAマニラ・セミナーの一環として、フィリピンにある唯一の原子力発電 所をSGRAの仲間たちと見学した。30年前に建設されたもので、核燃料は門まで届いた が、フィリピン国民の反対で、稼働は中止になった。僕たちが見学した時には、その 原発で働くはずだったエンジニアが案内してくれた。福島第一原発に比べたら二重三 重の安全なシステムが建設されたと誇りを持って説明してくれた。以前、僕もフィリ ピンでエンジニアとして、国家の大型で先端のものづくりと関わり現場で働いたこと があるので、案内してくれたエンジニアの誇りに、一瞬ではあるが、同情した。しか しながら、事故だけでなく、核廃棄物の処理という点においても、原発のリスクはや はり高すぎる(上記の経済学の理由も含めて)と、僕は考えている。 今年の5月にフィリピンで、数時間の大停電が起きた。需給が逼迫しているらしい。 そこで、フィリピンで原発を稼働させようという動きがでてきそうだ。フィリピンは 現在までは原発ゼロであるが、今後もそれが維持できるという保証はない。 日本では、3.11の直後にできるだけ早く原発をゼロにするという方針があったが、今 年、原発がない長期的なエネルギー計画は無責任だという方針に転じた。唯一、僕に 希望を持たせてくれるのは、日本の国民(特に原発周辺の住民)が再稼働に反対して いることであり、事実上は日本も今のところ原発ゼロという状況にあることである。 リスコミがちゃんと効いているかもしれない。 しかしながら今では、ASEANの仲間たちが原発の建設に積極的であり、その背景に日 本の売り込みがあることも否定することができない。いわゆるGreen Paradoxであ る。 これからも国境を超えるリスコミが必要であろう。それでもどうしても原発を作りた いというのであれば、そういう人々またはその家族は原発・核廃棄物処理場の30キロ 以内に住んでほしい。それならば僕も納得できるかもしれない。 【おまけ】マニラ・レポート@蓼科 2014年7月にSGRAの蓼科セミナー「人を幸せにする科学とは」に参加した。昨年と同 様に面白いワークショップが行われた。そこで考えた原発に関することをスライドに まとめたので、下記のリンクをご参照ください。 https://www.youtube.com/watch?v=iVapmTEjI3Q -------------------------- <マックス・マキト ☆ Max Maquito> SGRA日比共有型成長セミナー担当研究員。SGRAフィリピン代表、フィリピン大学機械 工学部学士、Center for Research and Communication(CRC:現アジア太平洋大学) 産業経済学修士、東京大学経済学研究科博士、アジア太平洋大学にあるCRCの研究顧 問。テンプル大学ジャパン講師。 -------------------------- 【2】新刊紹介 SGRAメール会員で東京外国語大学教授の岡田昭人様より新刊のお知らせをいただきま したのでご紹介します。 --------- 本書は、現在の日本人に必要な「6つの力」を、どのようにすれば「教える」ことが できるのかについて、私のオックスフォード大学留学時代の様々な経験やエピソード を交えながら紹介するものです。誰にでも楽しんでお読み頂けるような内容となって おります。ご関心のある項目を選んでお読みいただけましたのなら幸いです。 ■ 岡田昭人「世界を変える思考力を養う オックスフォードの教え方」 http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=16109 朝日新聞出版 ISBN:9784023313101 定価:1620円(税込) 発売日:2014年7月8日 四六判並製 272ページ 組織・業界に革命を起こす人材教育は、英国エリートの六つの力に学べ! オックス フォード大学教育学部大学院で日本人として初めて教育学の博士号を取得した人気教 授が明かす、常識破りの人材を生む、世界トップ校の教え方と学び方のコツ ************************************************** ● SGRAカレンダー 【1】第7回ウランバートル国際シンポジウム 「総合研究——ハルハ河・ノモンハン戦争」<参加者募集中> (2014年8月9日ウランバートル) http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/mongol/7_1.php 【2】第2回アジア未来会議<オブザーバー参加者募集中> 「多様性と調和」(2014年8月22日インドネシアバリ島) http://www.aisf.or.jp/AFC/2014/ 【3】第8回SGRAチャイナフォーラム 「近代日本美術史と近代中国」<ご予定ください> (2014年11月22日北京) 【4】第14回日韓アジア未来フォーラム・第48回SGRAフォーラム 「ダイナミックなアジア経済(仮題)」<ご予定ください> (2015年2月7日東京) ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: sgra-office@aisf.or.jp Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] Erik Schicketanz “SGRA Forum #47 Report”

    ********************************************* SGRAかわらばん527号(2014年7月16日) ********************************************* エリック・シッケタンツ「第47回SGRAフォーラム報告」 ■『科学技術とリスク社会〜福島第一原発事故から考える科学技術と倫理〜』 近年、科学技術の進歩が人間社会に恩恵をもたらす一方で、巨大科学技術、先端科学 技術がもたらす危険(リスク)も大きな議論となりつつある。 2011年3月の福島第一原子力発電所事故をきっかけとして、科学技術の限界および専 門家への信頼の危機が問われ、今後一般社会は科学とどう付き合っていくべきか、リ スクの管理がどのような形によって行われていくべきかという諸問題が、日本社会に おいて多くの市民の関心を引いている。 2014年5月31日(土)午後1時30分〜4時30分、第47回SGRAフォーラム「科学技術とリ スク社会〜福島第一原発事故から考える科学技術と倫理〜」が東京国際フォーラムで 開催された。 本フォーラムでは、3・11と福島第一原発事故という具体的な問題設定を通じて、科 学と社会の関係について多方面からの問いかけが行われた。 フォーラムは、上智大学神学部の島薗進教授と大阪大学コミュニケーションデザイン センターの平川秀幸教授が発表と対談を行った後に、参加者と一体となったオープン ディスカッションを行った。50人を超えるオーディエンスの数も社会における関心と 反響を反映していた。 はじめに、理化学研究所の崔勝媛研究員(生物学専攻)が、個人としての立場から科 学者の役割についての考察を行った。崔氏は、科学が社会にどう役に立つかが良く問 われるが、研究者にとって研究の第一動機は「好奇心」だと述べた。そこで浮かび上 がる大きな問題は、科学が皆が望むように役立つためには、科学だけではなく、人間 社会におけるさまざまな問題を乗り越える必要があるということだ。原子力のこと も、問題の原点は原子力研究そのものではなく、それを扱う人の問題なのだと述べ た。 つづいて、島薗教授と平川教授は、それぞれいくつかの具合的な問題点や出来事を取 り上げながら問題提起を行った。 島薗氏は放射線用の安定ヨウ素剤配布・服用や低線量被爆の健康影響情報などの問題 をめぐって、専門家や政府の判断基準の欠陥および民間との間のコミュニケーション における問題について触れた。また、マスメディアにおける、<安全・安心>概念の 言説を批判的に検討し、その公共的問題を締め出すための道具となっていると指摘 し、市民間での不安を避けるという理由で結果として真実を隠してしまうことを正当 化させていると、マスメディアの反応における問題点を紹介した。島薗氏の発表にお いて、政治・経済的利害関心と科学技術の絡み合いが大きな問題として紹介された。 平川教授はより抽象的な観点から問題を扱い、今までの主なリスク定義を批判的に考 察した。平川氏によると、従来、リスクの定義は科学的な次元に限定され、それ以外 の側面が無視されてきている。ゆえに、リスクの解決も科学に基づいた政策決定に よって片付けられてしまっているが、その結果は一方的に政府から市民に伝えられ、 市民に理解を押し付ける形となっている。これに対して、平川氏はリスクを科学や政 治などの各領域間の交差を中心とするトランスサイエンス概念から考察するという オールタネイティブを提供し、今までのリスクコミュニケーションとリスク認知にお ける複雑性を指摘しながら、民主的な意思決定を尊重するリスク管理の必要性を主張 した。 その後、筆者がモデレーターとなり、二人の発題者の対談が行われた。まず、今年の 3月に原子放射線の影響に関する国連科学委員会の報告書が公開されたことをきっか けとして、現在の福島がもたらす健康に対する影響について両発題者に尋ねた。国連 の報告書は、原発事故による健康に対する影響に対してやや懐疑的な態度を取り、一 部のメディアでは、報告書は健康に対する影響がないと言っているように解釈されて いる。両発題者は国連の報告書の背景にある政治および報告書の結論に疑問を唱えた 国連科学委員会委員などを取り上げ、健康に対する影響という問題に関してはまだ油 断できないと主張し、報告書を通じて科学と政治の絡み方に言及した。 休憩後、デール・ソンヤ氏(社会学専攻)の司会進行によりオープンディスカション が行われた。 オーディエンスから質問、発言を受けて、両発題者は今までの議論をさらに深めた。 ディスカションにおいて、中心的なキーワードとして、「信頼」という概念が取り上 げられ、市民の信頼を得るために、専門家との関係をいかに改善すべきかという問題 が議論された。 島薗氏は、問題解決に参与している専門家の範囲を拡大して、よりオープンにして も、権威の問題は常に残ってしまうと指摘したが、「正しい権威」を創造する制度の 成立に解決の可能性を見出したいと述べた。平川氏は政治的な絡みがなくても、常に 問題の具体的な設定や使用されている解決枠組みなど、何らかのバイアスがかかって いると指摘し、「歪んでいない科学者はいない」と述べた。ただ、そこでできること は、議論に参加する専門家やステークホルダーの多様性を可能な限り増やすことだと 主張した。 このように、両者は今後のリスク管理においてより充実した抑制と均衡のシステムが 必要だと主張し、科学技術におけるデュープロセスの導入を唱えた。そのため、今後 避けるべきなのは政治と経済との繋がりを持つ少人数の専門家の閉鎖的な措置による リスク管理である。そして、健康に対する影響より、今回の原発事故がもたらした最 大のダメージは社会における信頼に対する危害であったのではないか、と述べた平川 氏が印象的であった。平川氏が説明するように、原子力産業は「安全」と「安心」の ためという名目で、社会の視野の外に置かれていたことが今回の危機の大きな背景の 一つである。その意味では今回の事故が科学、政治と社会の関係を再考して再構築す るきっかけともなればと筆者は期待する。 最後に、福島県飯舘村からの参加者は放射能のリスクについて調べた上で、飯舘村に 帰ると決心したが、まわりからはこの決心に対してなかなか理解を得られないという 状況についての紹介があった。また、飯舘村に帰還するか否かの判断を強いられてい る避難生活者の視点から科学技術の問題を考えると「人間にとって幸せとはなにか」 を考えざるを得ない、最後に行き着くのは哲学や宗教の領域の問題ではないかと思え てくる、との発言があり強く印象に残った。 オーディエンスからの質問が途切れなく続き、オープンディスカションの90分はあっ という間に経ってしまい、4時30分の閉会の時間が来た。 今回のSGRAフォーラムは、今後日本社会が直面し続ける重要な課題についてさまざま な観点から考えさせるきっかけとなった。 *当日の写真は下記リンクよりご覧いただけます。 www.aisf.or.jp/sgra/photos/index.php?spgmGal=SGRA_Forum_47_by_Hayato ---------------------------------------------- <エリック・シッケタンツ ☆ Erik Schicketanz> 2001年イギリスロンドン大学アフリカ・東洋研究学院修士号取得(日本近代史)、 2005年東京大学大学院人文社会系研究科修士号取得(宗教史学)。2012年、同大学大 学院人文社会系研究科宗教学専攻博士号取得。現在、同大学死生学・応用倫理セン ター特任研究員。研究関心は近代仏教、近代中国の宗教、近代日本の宗教、近代国家 と宗教の関係。 ************************************************** ● SGRAカレンダー 【1】第7回ウランバートル国際シンポジウム 「総合研究——ハルハ河・ノモンハン戦争」<参加者募集中> (2014年8月9日ウランバートル) http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/mongol/7_1.php 【2】第2回アジア未来会議<オブザーバー参加者募集中> 「多様性と調和」(2014年8月22日インドネシアバリ島) http://www.aisf.or.jp/AFC/2014/ 【3】第8回SGRAチャイナフォーラム 「近代日本美術史と近代中国」<ご予定ください> (2014年11月22日北京) 【4】第14回日韓アジア未来フォーラム・第48回SGRAフォーラム 「ダイナミックなアジア経済(仮題)」<ご予定ください> (2015年2月7日東京) ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: sgra-office@aisf.or.jp Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] Xie Pu “Conveying an Image Not Shared”

    *********************************************************** SGRAかわらばん526号(2014年7月9日) 【1】エッセイ: 解 璞「共有しないイメージを伝えるということ」 【2】第7回ウランバートル国際シンポジウムへのお誘い     「総合研究——ハルハ河・ノモンハン戦争」 *********************************************************** 【1】SGRAエッセイ#416 ■ 解 璞「共有しないイメージを伝えるということ」 食べ物の話から始めたいと思う。 5 年余り前、ある日本の友人と食事した時に、こんなことを聞かれた。「中国の饅頭 は、本当に餡がないのか」、と。中国語を勉強したことがある方なので、おそらく 「饅頭(マントウ)」という単語を勉強していた時に、日本の饅頭と中国の饅頭と は、餡や具があるか否かという点で異なっていると教えられたのではないかと想像し た。 そのような「分かりやすい」説明に、薄々抵抗を感じながらも、その時の私は、確か に中国の饅頭には餡がないし、味付けもされないから、小麦粉そのものの味で、 ちょっとだけ甘いとしか答えられなかった。友人も、なるほどと納得したようで、ネ イティブの人に確かめてよかったというような笑顔になってくれた。 ところで、数年後のある日、その友人が中国の饅頭は餡がないから、生地がきっと日 本の饅頭の皮の部分より甘いよねと言ったのを聞いて、はじめて以前の答えのいい加 減さに気づいた。 確かに日本語の「饅頭」という言葉と、中国語の「饅頭」という言葉は、餡や具の有 無という点で異なっているが、似たような食べ物を指している。つまり、言語の面だ けを考えると、同じ表記の「饅頭」であるが、日本と中国とでは、少し異なるイメー ジを持っている。これは、間違いない事実だ。しかし、これだけでは、不完全な理 解、あるいは勘違いさえされてしまうと考えた。 なぜならば、例えば日本で小豆などの餡が入った饅頭は、中国では「豆包」と言い、 日本で肉などの具が入った肉まんは、中国では「包子」と言い、また、餡や具はない が、甘く味付けされた日本の饅頭とほぼ同じ大きさの小さい饅頭は、中国では「金銀 饅頭」と言い、饅頭と同じように味付けされない蒸しパンのような食べ物は「花巻」 と言うのが普通だし、逆に、ご飯や蒸しパンのかわりに食べる饅頭というものは、管 見によれば、日本にはないからだ。 つまり、日本と中国の饅頭は、餡や具の有無という点で異なっているのではない。そ うではなく、日本でいう饅頭は、中国語で「豆包」「包子」あるいは「点心」などの 別の言葉で表され、一方、中国でいう饅頭は、日本にはめったに見られないと言うべ きなのであろう。 このように、同じ漢字という言語の表記を共有したからといって、日本と中国は、同 じイメージで世界を見ているのではなく、相互理解がよりスムーズになるわけでは決 してない。むしろ、日本と中国では、「言語の表記が似ているから、互いに理解しや すいはずなのに」というような安易な先入観があるからこそ、かえって誤解やすれ違 いを招きやすいのではないだろうか。 実際、外国人同士ではなくても、このような勘違いやすれ違いがよく起きている。た とえ同じ国の人の間でも、あるいは何十年も一緒に暮らしている家族の間でさえも、 こちらの口から発した言葉のイメージと、相手の耳で受け取った言葉のイメージと は、つねに一致しているわけではない。否、つねに一致し、完璧に理解し合えるとい うことは、ほとんど奇跡に近い不可能なことではないだろうか。 さらに、自分自身の中でさえ、一致しているとは限らないのである。私は、時々、口 頭発表の前に、発表ノートを音読して録音してみる。すると、自分の口から発した言 葉のイメージと、自分の耳で受け取った言葉のイメージの間にも、時々ギャップが生 じていることがわかる。こんな意味を伝えるつもりは毛頭なかったのに、こう発言し たら誤解されてもしようがないな、というように、自分の口で音読して自分の耳でも う一度確かめなければ分らないものがある。自分自身の中でさえ、「口」と「耳」の 間には理解のギャップがあるのだと、はじめて気づかされる。 普通にコミュニケーションを行えば、このような勘違いや誤解が、常に付きまとって いる。だからこそ、自分が伝えたいイメージと、相手が受け取ったイメージの間のズ レを意識し、両方が伝えたいことを我慢強く、確認し続ける包容力が、どうしても必 要であろう。でなければ、「饅頭」一つさえうまく説得や理解ができないのである。 ---------------------------------------- <解璞(かい・はく)☆Xie Pu> 日本近代文学専攻。2014年早稲田大学大学院文学研究科日本語日本文学コースにて博 士号取得。現在、夏目漱石の作品および文学論の中国語訳について研究調査してい る。2013年度渥美奨学生。 ---------------------------------------- 【2】第7回ウランバートル国際シンポジウムへのお誘い(再送) 下記の通りモンゴル国ウランバートル市にてシンポジウム「総合研究——ハルハ河・ ノモンハン戦争」を開催いたしますので、参加者を募集いたします。 【開催趣旨】 謎に満ちたハルハ河・ノモンハン戦争は歴史上あまり知られない局地戦であったにも かかわらず、20世紀における歴史的意義を帯びており、太平洋戦争の序曲であったと 評価されています。この戦争の真の国際的シンポジウムは、1989年、ウランバートル でモンゴル、ソ連に加えて日本から研究者をむかえた3者による協同研究から始まり ました。そして、1991年、東京におけるシンポジウムによって研究は飛躍的に進み、 2009年にSGRAが開催したウランバートル国際シンポジウムではさらに画期的な展開を みせました。しかし、国際的なコンテキストの視点からみると、これまでの研究は、 伝統的な公式見解のくりかえしになることが多く、解明されていない問題が未だ多く 残されています。 立場や視点が異なるとしても、お互いの間を隔てている壁を乗りこえて、共有しうる 史料に基づいて歴史の真相を検証・討論することは、われわれに課せられた使命で す。 ハルハ河・ノモンハン戦争後75年を迎え、新しい局面を拓くべく、われわれは、関係 諸国の最新の研究成果と動向、および発掘された史料を総括し、国際学術会議ならで はのシンポジウム「総合研究——ハルハ河・ノモンハン事件戦争」を開催することに いたしました。 本シンポジウムは、北東アジア地域史という枠組みのなかで、同地域をめぐる諸国の 力関係、軍事秩序、地政学的特徴、ハルハ河・ノモンハン戦争の遠因、開戦および停 戦にいたるまでのプロセス、その後の関係諸国の戦略などに焦点をあて、ミクロ的に 慎重な検討をおこないながら、総合的な透視と把握をすることを目的としています。 このシンポジウムを通して、お互いに学ぶことができ、ハルハ河・ノモンハン戦争の 一層の究明をすすめたいと願っています。 【日程・会場】 2014 年8月9(土)〜10日(日)         モンゴル国ウランバートル市 参加登録:8月9日(土)9:00〜9:30 モンゴル・日本人材開発センター 開会式・基調報告:8月9日(土)9:30〜12:00 モンゴル・日本人材開発セン ター 会議:8月9日(土)13:30〜18:00 モンゴル・日本人材開発センター 会議:8月10日(日)9:00〜12:00 モンゴル防衛大学会議室 視察:8月10日(木)13:00〜10:00 日本人抑留死亡者(ノモンハン戦死者含む) 慰霊碑、ジューコフ記念館見学、草原への旅行 【プログラム】       詳細は下記案内状をご覧ください。 案内状(日本語) www.aisf.or.jp/sgra/schedule/MongoliaSymposium7InvitationJapanese.pdf Invitation in English www.aisf.or.jp/sgra/schedule/MongoliaSymposium7InvitationEnglish.pdf ************************************************** ● SGRAカレンダー 【1】第7回ウランバートル国際シンポジウム 「総合研究——ハルハ河・ノモンハン戦争」<参加者募集中> http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/mongol/7_1.php 【2】第2回アジア未来会議<オブザーバー参加者募集中> 「多様性と調和」(2014年8月22日インドネシアバリ島) http://www.aisf.or.jp/AFC/2014/ 【3】第8回SGRAチャイナフォーラム 「近代日本美術史と近代中国」<ご予定ください> (2014年11月22日北京) ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: sgra-office@aisf.or.jp Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] Xie Zhihai “Womanomics #3: Sexually-Harassing Heckling in Public”

    ************************************************************* SGRAかわらばん525号(2014年7月2日) 【1】エッセイ: 謝志海「ウーマノミクス(3):公の場でセクハラヤジ」 【2】新刊紹介:王敏、他「『日本意識』の根底を探る」 ************************************************************* 【1】SGRAエッセイ#415 ■ 謝 志海「ウーマノミクス(3):公の場でセクハラヤジ」 安倍晋三政権が新しい成長戦略と、経済財政運営と改革の基本方針を着々と実行段階 に進めるなか、先日の東京都議会本会議では女性議員の一般質問中に「早く結婚し ろ」などのヤジが飛んだことが、日本全国だけでなく、世界のメディアでも報道され てしまった。成長戦略のなかでも、女性の活躍を重視している安倍晋三政権にとっ て、この事態は「ばつが悪い」ことになるだろう。 概して、アジア各国は欧米に比べると女性の立場が弱く、守られていないという差別 が根強く残っているが、アジアの中でも経済的、知名度的に欧米先進国と肩を並べる 日本までもが、未だに男性優位体質であることが、今回の件で露見してしまい残念 だ。 前述の通り、この件は世界に広く報道されてしまった。都議会本会議の直後から英米 のメディアが、相次いで「セクハラ暴言」などと報道した。米CNNテレビのウェブサ イトではヤジ問題の記事を、日本の労働市場では男女間の格差が給与 (平均して女性 の給料は男性に比べて3割安い)や人事(女性管理職の数) でも現れていると締めく くっている。民間企業に女性取締役を増やすようアドバイスしたり、指導的立場の女 性を2020年までに30%増やすことは、安倍晋三政権が豪語していることだ。今回のヤ ジ問題は、その目標は実現可能なのか?という気にさせられてしまうではないか。こ の一連の出来事は引き続き世界が注目しているようで、ヤジを飛ばされた塩村文夏都 議は6月24日、東京の日本外国特派員協会で記者会見した。朝日新聞が運営する英語 版ウェブサイトAsia & Japan Watch (AJW)によると、この記者会見に出席していた記 者の反応はいささか冷静であったようで、日本在住歴14年のシンガポール人記者は 「(ヤジ問題を)特に驚かなかった。このような日本の性差別の記事はいつも書いてる から。」とコメントしている。日本に住んでいる外国人の目にも、男女の扱いの差が 明白とは、悲しい事実である。 そしてこの記者会見に出席していた外国人記者たちは、日本の未来を思いやるよう な、非常に的確なアドバイスとも言えるコメントをしている。前出のシンガポール人 記者は「この出来事は日本が変わるために必要であると信じたい。」と言った。同じ く日本在住歴20年以上のフランス人特派員も「この出来事が日本を劇的に変える役割 を果たすことを望む。」と語った。これぞまさに、日本を客観的に観察している人々 の思いであろう。ウーマノミクスのエッセイを通して言っているが、日本は女性の活 用にあたり数値目標を掲げるだけでなく、女性がどういうスタンスで社会に貢献した いのか今一度耳を傾けることだ。そして具体的にかつ実現可能なレベルから直ちにア クションを起こさなければいけない。 私が今回のセクハラヤジ問題で気づいたことは男性優位体質だけでない。いかに日本 が世界から注目されているかだ。安倍晋三政権が次々と経済政策を進めているさなか なので、当たり前と言えばそれまでかもしれないが、やはりアジアを代表する経済国 として、日本の存在感は大きいのだ。そこへ突然、大都市東京では時代錯誤のような 都議会本会議が行われていたとは、世界が驚くのも無理ない。問題はここからだ。こ の出来事をどう成功カードに切り返すかだ。皮肉にもと言うべきか、英エコノミスト 誌の最新号(6月28日〜7月4日)の表紙を飾るのは、サムライの格好をし、矢を射ろう とする安倍晋三首相だ。安倍晋三政権が放つ矢を世界は固唾を呑んで見守っている。 -------------------------------------- <謝 志海(しゃ しかい)Xie Zhihai> 共愛学園前橋国際大学専任講師。北京大学と早稲田大学のダブル・ディグリープログ ラムで2007年10月来日。2010年9月に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期 課程単位取得退学、2011年7月に北京大学の博士号(国際関係論)取得。日本国際交 流基金研究フェロー、アジア開発銀行研究所リサーチ・アソシエイトを経て、2013年 4月より現職。ジャパンタイムズ、朝日新聞AJWフォーラムにも論説が掲載されてい る。 -------------------------------------- 【2】新刊紹介 SGRA特別会員の王敏様から新刊書をご寄贈いただきましたのでご紹介します。 国際日本学研究叢書19 ■「『日本意識』の根底を探る:日本留学と東アジア的『知』の大循環」 編集・発行 法政大学国際日本学研究所 ISSN1883-8618 2014年3月28日発行 http://hijas.hosei.ac.jp/tabid/1275/Default.aspx 「国際日本学」は途上の研究分野であることはいうまでもない。その方法論における 試みとして、法政大学国際日本学研究所の中国・東アジアにおける日本研究チームは 「異文化としての日本研究」の成果活用・開拓的研究の進展を志向した。研究のあり 方を探るため「外部」の視点を可能な限り制限を設けず取り入れてきた。総合的日本 研究の追及を第一義とする基本スタンスに沿うからである。(中略)研究対象として 日本意識に重点を置いていることに変わりないが、異なる文化背景を念頭に東アジア 諸国などの日本研究の動向およびその成果の有用性に注目してきた。東アジアには国 レベル、国民レベルで共有する価値基準がそれぞれ独自に存在するだけに、日本研究 を深めるためには日本国内外の角度からの地域研究にもっと留意すべきと気づいたか らである。日本意識の見直しへ参考となる思考枠の抽出のために、地域性を反映した 各国の研究の成果に謙虚に触れるように努めた。(王敏「東アジアの相互認識を映し 出す参照枠」より) ************************************************** ● SGRAカレンダー 【1】第3回SGRAワークショップ(2014年7月5日蓼科) 「人を幸せにする科学とは」<会員対象:参加者募集中> http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/3sgra.php 【2】第7回ウランバートル国際シンポジウム 「総合研究——ハルハ河・ノモンハン戦争」<論文・参加者募集中> http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/mongol/7_1.php 【3】第2回アジア未来会議<オブザーバー参加者募集中> 「多様性と調和」(2014年8月22日インドネシアバリ島) http://www.aisf.or.jp/AFC/2014/ 【4】第8回SGRAチャイナフォーラム 「近代日本美術史と近代中国」<ご予定ください> (2014年11月22日北京) ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: sgra-office@aisf.or.jp Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] GaYoung Choi “Twenty Years since A

    ******************************************************** SGRAかわらばん524号(2014年6月25日) 【1】エッセイ: 崔 佳英「『小さな留学生』から20年」 【2】新刊紹介:和井田清司、張建、他「東アジアの学校教育」 ******************************************************** 【1】SGRAエッセイ#414 ■崔 佳英「『小さな留学生』から20年」 「小さな留学生」を覚えているだろうか。2000年に放映された、中国から父親の転勤 で、日本の学校に通うことになった9歳の少女の2年間を追ったドキュメンタリーであ る。今年、2007年から7年目を迎える私の日本での留学生活は、3度目の長期日本滞在 である。1回目は、小学校の時に父の仕事のために家族4人で初来日。2回目は、その 約10年後、2003年の1年間の交換留学、それから5年後、現在の大学院留学のための来 日である。 初来日時は、もう20年以上も遡る1992年の春だった。まったく日本語がわからない状 態で日本に行くことが決まり、渡日1週間前に韓国の学校に届けを出し、ひらがなの 勉強を始めた。自己紹介の言葉を日本語の発音をそのままハングルで書いてもらい、 一生懸命練習した記憶がある。こんにちは、はじめまして、以外には日本語が全くわ からず、まさに、ドキュメンタリーの「小さな留学生」と同じだった。 偶然にも、私の小学校の時の経験は、「日本の学校のニューカマー受け入れ」の展開 と軌を一にする。1990年の入管法の改正とともに、ニューカマーの外国人が急増し、 これに連動して外国人の子どもの教育問題が注目され始めたのである。1991年には、 文部省が初めて「日本語指導が必要な外国人児童生徒」の数の調査に着手し、1993年 の『我が国の文教政策』で「外国人児童生徒に対する日本語教育等」に初めて言及し た。日本でニューカマーの子どもの教育問題が浮上し、その取り組みが始まってから 20年も経つ。韓国では、2000年代から「多文化」問題が社会問題の重要なトピックと なり、アジアの国で先に移民問題に対面した日本の取り組みについての研究に、注目 が集まっていた。私が日本に留学してから参加したボランティア団体では、外国につ ながりを持つ子ども(ニューカマーの子ども)への学習支援の活動をしており、その はじまりは「在日韓国・朝鮮人」の子どもの高校進学支援からで、長い蓄積をもつ。 しかし、おもしろいことに、私が最近出会う外国人子女教育問題の研究者や支援者か らよく耳にすることは、「韓国は進んでいますね、韓国の話が聞きたいです」という 言葉である。確かに、この10年間に韓国では、外国人統合政策である「在韓外国人処 遇基本法」、「多文化家族支援法」を制定、二重国籍の許容、外国人参政権の付与な ど法制度における様々な動きがあり、学校教育においては2007年から政府主導で「多 文化教育」を実施している。社会化の課程に「切断」を経験する移民の子どもにとっ ては、社会参加や階層移動の機会などの意味から、制度化された学校教育がもつイン パクトは強い。 さて、ここで、20年も前の話をしてみようと思う。 私が初めて来日した当時の札幌には、「外国人の子ども」の存在は珍しいもので、区 役所から地図をもらい、家族4人だけでいくつかの学校を実際に回り、編入する学校 を決めた。私が通うことになった学校にとっても、外国人はもちろん初めてのことで あった。正規のクラスに入るのか、どの学年に編入するかも教育委員会の方針が定 まっていなかった時期で、その分、一つ一つのことを学校と保護者、そして私の意志 を反映し相談していったことを覚えている。 担任の先生と私の父は、交換日記的な一冊のノートに私の1日について書いて連絡を 取り合っていた。日本の学校で1年程が経った頃に、私の日本語の先生がやってき た。まだ20代の若い先生で、先生になる前の「先生」と聞いた。国語の時間には、職 員室で「みんなのにほんご」という本で、はじめから日本語を勉強した。日本語の先 生との勉強が1年を過ぎた頃には「アンクルトム」を全部読み切ったことを今でも覚 えている。のちに、数学以外の授業も少しずつ耳に入るようになり、テストも受けら れるようになった。それでも、社会や理科などのテスト問題を解くには困難があっ た。担任の先生は、私の答案用紙の全ての項目に×をつけることはなかった。100点 が満点ではなく私の日本語力に合わせた採点をしてくださった。40点/44点と。 そこに込められた教員の教育理念とは、「日本人の子ども」のみを対象とする教育、 日本語を基準とした評価ではなく、日本語の問題と生徒の学習力の問題を切り離し、 一斉共同主義に基づかない、学生個々の「学びの権利」を保障するコア的なものであ ると思える。これは、多くの「大人の」留学生が抱く問題の一つでもある。議論を中 心とする大学院での授業で日本語力の不足のために委縮してしまったり、または、そ の発言に耳を傾けてもらえなかったり、教員や同僚とのスムーズな意見交換の困難、 正確にはコミュニケーションの文化的差異から生じうる誤解などをどのように捉える かは、大学の「国際化」を謳うアジアの多くの大学の課題となりえるだろう。 ---------------------------------- <崔 佳英(ちぇ・かよん)Choi, GaYoung> 東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻にて修士号2010年取得。現在、同研 究科で博士後期課程在学中。2013年度渥美奨学生。専門分野は、日本と韓国における 外国人子女教育。 ---------------------------------- 【2】新刊紹介 SGRA会員の張建さんから新刊書をご寄贈いただきましたのでご紹介します。 ■「東アジアの学校教育: 共通理解と相互交流のために」 本書は、東アジアの日本・中国・韓国・台湾という各国地域の学校教育について、第 二次大戦後の経過をふまえた現状を紹介するものである。同時に、当面する諸課題の 中から、いくつかの論点をとりあげて、その分野の専門家による論究をも収めてい る。教育学研究や学校と教師の実践において、相互の交流と参照のため、共通理解の 基盤となるような基礎資料を提供したい。 編著者:和井田清司、張 建、牛志奎、申智媛、林明煌 A5判 400頁  価格 3,780 円 (本体3,500円・税280円) 2014年05月18日発行   ISBN9784864872430 http://www.sankeisha.com/shop/index.php ************************************************** ● SGRAカレンダー 【1】第3回SGRAワークショップ(2014年7月5日蓼科) 「人を幸せにする科学とは」<会員対象:参加者募集中> http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/3sgra.php 【2】第7回ウランバートル国際シンポジウム 「総合研究——ハルハ河・ノモンハン戦争」<論文・参加者募集中> http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/mongol/7_1.php 【3】第2回アジア未来会議<オブザーバー参加者募集中> 「多様性と調和」(2014年8月22日インドネシアバリ島) http://www.aisf.or.jp/AFC/2014/ 【4】第8回SGRAチャイナフォーラム 「近代日本美術史と近代中国」<ご予定ください> (2014年11月22日北京) ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: sgra-office@aisf.or.jp Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] Virag Viktor “From a Decreasing-Population Japan to a Multi-Ethnic Japan?”

    ********************************************* SGRAかわらばん523号(2014年6月18日) ********************************************* SGRAエッセイ#413 ■ ヴィラーグ ヴィクトル「人口減少ニッポンから多民族ニッポンへ?」 〜大規模移民受け入れ前に不可欠な統合政策:労働力移入ではなく、人間移住である ことを忘れないために〜 日本の新聞を読むと、移民受け入れの可能性について徐々に取り上げられるように なっています。もちろん、移民受け入れの可否を巡る議論は新しいものではありませ ん。バブル期の労働力需要に対する人材不足が問題になり、また人類の歴史上まれに みる少子高齢化に日本が直面することが予想されるようになって以来、しばしば持ち 出される課題です。日本社会は実際に人口が減少しており、アベノミクス、東日本大 震災後の復興、東京五輪の準備などが相まって、建設業をはじめとした労働力不足が 顕著になっている現在、少子化対策の専門家や経済界が改めて移民受け入れについて 本格的な議論を進めようとしているのは当然でしょう。一方、一般国民、政治家や官 僚はもちろん安易には踏み出せず、政策自体が進んでいないのが実状です。何せ、来 日するのはロボットでも、単なる「労働力」でもなく、24時間日本で生活することに なる移民及びその家族、即ち様々な社会サービスまで必要とする「生身の人間」なの です。 私は日本の参政権を持たない身であり、また人口学及び労働経済学は専門領域ではな いので、移民受け入れの可否について構築的な意見を述べるのは相応しくないかもし れません。しかしながら、私の出身地である欧州を始め、他国の歴史的な経験を基に 考えれば、人口減少国として安定した経済をいかに維持していくのかという議論どこ ろか、経済縮小をどう避けるのかすら想像しようとしない日本の状況に無関心ではい られません。勿論、移民を受け入れず、人口問題と向き合うことが選択肢の一つとし てないわけではありません。全国民的な議論の結果、それが民意の結論であれば、経 済小国化の覚悟を決めることも充分にあり得ます。しかし、経済成長を諦めることを 選択しないのであれば、グローバルな時代における経済的な競争力の低下を防ぐため には、移民受け入れ以外の方法は考えにくいのではないでしょうか。 ここでは、日本が最終的に後者の移民受け入れの選択をした場合に、注意してほしい 幾つかの点をまとめることにします。その中で、私が、既に日本に住んでいる文化的 なマイノリティを対象としたソーシャルワークの研究者であると同時に、実際に一人 の当事者であるという立場も重視したいと思います。日本に定住している文化的なマ イノリティが抱える様々な問題に関する経験を基に論点を整理してみます。 結論からいえば、最も大きな課題は中央行政レベルの総合的な統合政策の不在です。 実際には国際結婚や家族統合のための来日といった、いわゆる管理できない移住も増 えているにも関わらず、入口をコントロールする入国管理政策は国際的にみても非常 に厳格な形で整備されています。その半面、本来なら日本に定住する移民の適応に向 けた支援、すなわち言語に代表される日本人と異なる特別な文化的ニーズ等に対応す る教育、医療、福祉などの各種社会サービスなどの移民統合政策は、ほぼ皆無の状態 です。そのため、既に日本にいる移民を取り巻く多くの社会問題が起きているので、 このまま更に大規模な受け入れ拡大を進めることは極めて危険と言えるでしょう。 もちろん例外もたくさんありますが、一般的にみれば、日本では文化的なマイノリ ティの周縁化が深刻な問題です。例えば、生活保護受給率、低所得者の割合などが全 国平均を上回っていることから、移民の貧困を読み取ることができます。これは、新 しく移住してきた第一世代なら、よく見られる現象ですが、日本に特徴的な驚くべき 実態は、場合によって全国平均の半分にも満たない高校及び大学進学率の低さです。 つまり、第二世代以降も著しい貧困の再生産などの負の世代間連鎖が懸念されていま す。実は、これは、世界の移民研究において、きわめて珍しい現象です。また、この ような状態はもちろん社会的な摩擦と不安に繋がりやすく、そのため更なる社会的な 排除と結びつく悪循環を生むリスクも高いのです。 移民などの文化的なマイノリティの存在によって生じる、上記のような社会的な負担 を軽減するための統合政策が欠如する理由の一つは、単一民族の神話です。具体的に は、「日本人」と「外国人」という二分法で日本社会を捉えようとする建前です。こ のような考え方は琉球民族やアイヌの人々、そして在日コリアンに代表される旧植民 地出身者及びその子孫のようなマイノリティの歴史を無視しています。また、現代の 法治国家の枠組みでみた場合、「文化」や「民族」による分類ではなく、「日本国籍 者」と「外国籍者」という法的な二分法に繋がり、日本社会の中に実際に潜んでいる 多様性への適切な対応、真の取り組みを妨げています。第一に、国家レベルの統計で は、帰化者や国際結婚において生まれた人々のように日本国籍をもつ文化的なマイノ リティが不可視化されているため、多様性の本当の規模が見えていません。第二に、 本来は文化的多様性による問題を、国籍による問題、つまり「外国人」の問題、更に いえば「(日本に関係のない)外の国(の人)」の問題として再構成する傾向も強く なります。このような捉え方は、一時的なデカセギによる臨時滞在を超えた定住化に よるニーズに応えることができません。また、予算編成の上でも、いくら納税者とは いえ、非国籍者のための統合政策を公的財源で実施することも難しくなります。 最後に、好ましい統合政策の内容についても述べたいところですが、本稿の性質上、 基本理念ともいえる対等性と、当事者参加の原理の説明に止めます。先述の「国籍」 による二分法の問題にも関連しますが、様々な社会的な場面における対等な扱い方が 保障されないと、移民などの文化的なマイノリティは不利益を被りやすく、社会的に 弱い立場から抜け出せないのです。このような社会的な不利益は、底辺化・周縁化、 更なる社会的な排除、即ち上述の悪循環現象の引き金となる可能性が高くなります。 対等な扱い方は、社会サービス等に関する法の下での平等も含みますが、それよりも 日本人と全く同じ扱いは必ずしも公平ではなく、真の平等(機会あるいは結果の平 等)にならないということを意識しなければなりません。なぜなら、置かれている状 況とニーズが異なるからです。要するに、一見平等に見える「みんな同じ」扱い方 は、むしろ不平等を生みだし、あるいは既存の不平等を再生産、固定化してしまうだ けだからです。例えば、馴染めない人に対して窓口における日本語や日本的な価値観 などの文化規範の強要は、車椅子を利用している人に階段を上ることを求めるのと大 して変わらないことで、真のバリアフリーにはなりません。結果的に、必要なサービ スへのアクセスを妨げ、社会的な排除に繋がり、不平等を改善できません。 底辺化を防ぐために、公共の場を超えた社会全体、とりわけ重要な領域は、労働市場 における不当な扱い方からの保護も欠かせません。このために、行政が区別化を強 調・助長・強化しないと共に、民間部門における差別を明白に防止することが求めら れます。具体的には、国際条約の批准にも関わらず、日本において未だに欠如してい る差別禁止法、あるいは移民人権法の制定が望まれます。これは、国際的な批判を浴 びながらも無理やり維持されてきた、そして現在拡大が検討されている、いわゆる 「外国人研修・技能実習制度」と正反対の流れにあります。 このような法的な手段による、対等な扱い方の原理の最終的な徹底は、当事者参加の 原理を前提としています。つまり、この場合は移民に関する統合政策、即ち、当事者 である彼ら・彼女らの人生を大きく左右する、ありとあらゆる施策を策定する際に、 計画から実施まで、なるべく全ての段階において当事者の声を反映させるということ です。なぜならば、当事者のニーズを最もよくわかるのは、当事者自身であるからで す。これは、米国における障がい者の権利運動から生まれた「私達を参加させないま ま、私達のことを決めないで」という理念と同じです。この考え方はもちろん倫理的 な意義も大きいのですが、企画段階からの参画は当事者の意欲向上と動機づけにもな ります。この場合は、先述したホスト社会の移民への対応と並行して、統合政策のも う一本の大黒柱ともいえる、移民によるホスト社会への適応に向けた努力について想 像すると良いでしょう。もちろん、対等性と当事者参加の原理について考える上で、 政治的な平等の獲得と、自分たちを巡る政策に対する意見表明の機会の確保という意 味で、参政権に関する議論も避けて通れない課題ですが、詳しい説明は本稿の範囲を 超えているため、割愛します。 本稿では、日本に既に住んでいる文化的なマイノリティとしての経験を基に、今後進 むかもしれないより本格的な移民受け入れに向けた主要な課題について整理しまし た。民主主義国である日本では、移民受け入れ自体も、またそれに伴う統合政策も民 意を基に実施されることが理想の形です。民意を形成するために、国民的な議論を展 開する必要があります。このような議論の中では、現状と可能性について国民に対す る適切な情報提供が求められ、国家行政の担当者の他に、政治家も、また専門職や研 究者などの専門家も事実に基づいた啓発活動に専念する責任をもっています。本稿が このような議論と啓発に役立つ一材料となれば幸いです。 -------------------------- ハンガリー出身。2003年文部科学省学部留学生として来日。東京外国語大学にて日本 語学習を経て、2008年東京大学(文科三類)卒業、文学学士(社会学)。2010年日本 社会事業大学大学院社会福祉学研究科博士前期課程卒業(社会福祉学修士)、博士後 期課程進学。在学中に、日本社会事業大学社会事業研究所研究員、東京外国語大学多 言語・多文化教育研究センター・フェローを経験。2011/12年度日本学術振興会特別 研究員。2013年度渥美奨学生。専門分野は現代日本社会における文化等の多様性に対 応したソーシャルワーク実践のための理論及びその教育。 ************************************************** ● SGRAカレンダー 【1】第4回日台アジア未来フォーラム(2014年6月13日台北) 「トランスナショナルな文化の伝播・交流:思想・文学・言語」<参加者募集中> http://www.sgra2014jtaff.com/#!home-jp/c1ncc ★無事終了!たくさんのご参加・ご支援をありがとうございました★ 【2】第3回SGRAワークショップ(2014年7月5日蓼科) 「人を幸せにする科学とは」<会員対象:参加者募集中> http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/3sgra.php 【3】第7回ウランバートル国際シンポジウム 「総合研究——ハルハ河・ノモンハン戦争」<論文・参加者募集中> http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/mongol/7_1.php 【4】第2回アジア未来会議 「多様性と調和」(2014年8月22日インドネシアバリ島) http://www.aisf.or.jp/AFC/2014/ ★オブザーバー参加者募集中★ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: sgra-office@aisf.or.jp Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] Xie Zhihai “Womanomics: Japanese Women Will Usher in the Future of Japan (Part 2)”

    ************************************************************* SGRAかわらばん522号(2014年6月11日) 【1】エッセイ:謝 志海「ウーマノミクス(その2)」 【2】SGRAレポート第67号紹介   「アジア太平洋時代における東アジア新秩序の模索」 【3】SGRAレポート第68号紹介   「ボランティア・志願者論」(日中英合冊版) 【4】ワークショップ「人を幸せにする科学とは」へのお誘い(再送) ************************************************************* 【1】SGRAエッセイ#412 ■ 謝 志海「ウーマノミクス:日本の女性が日本の未来を導く(その2)」 前回のエッセイでは日本の女性が継続して働き続け、就労人口の底上げを期待されて いることについて書いたが、同時に少子化問題も日本の切実な悩みであり、こちらに も女性への期待がかかっている。 5月19日、今後の少子化対策について話し合った内閣府の有識者会議「少子化危機突 破タスクフォース」が提言をまとめた。そこには目標出生率の具体的数値は無かっ た。「国が女性に出産を押し付けると誤解されかねない」との意見が多かったそう だ。一人っ子政策をしている中国から来た私が言うのもなんであるが、具体的な目標 出生率を(今は)定めない、という慎重な提言を出したことは画期的であり、女性にプ レッシャーを与えたくないという気づかいのあらわれと前向きに捉えたい。というの も、働き手が減るから、年金が足りなくなるから、もっと子供を産もうというので は、日本の女性にとって子供を産むことが魅力的に感じられるのだろうかと、以前か ら感じていたからだ。 一方で、将来を予測して具体的な数値を出し対策をとることはとても大事だ。日本の 女性が生涯に産む子供の数が、2.07人に増えて、かつ働き続けたとしても、50年後に は働く人が1000万人以上減ってしまうと予測されている( 内閣府の将来予測)。2人以 上子供を産んでも将来の就労人口は足りないと試算されているのだ。このとどまると ころを知らない少子化を食い止めようと、森雅子少子化対策担当大臣は、少子化対策 の3本の矢という、子育て支援、働き方改革、結婚妊娠出産支援を打ち立てている。 子育て支援というと、保育所の新設、政府がよく言う「待機児童ゼロ」。働き方改革 は前回取り上げた、時短勤務など取り入れ、育児と仕事の両立支援。この二つは官民 が策を練り改善が進んでいるように見える。最後の矢、結婚妊娠出産支援、中でも結 婚に関しては具体的に政府がどうからんでいくのか、前出の二つと比べると見えにく い。まず結婚して、妊娠して、出産してやっと子育て支援と働き方改革の恩恵を受け られる立場になるのに、結婚する人が増えない。初婚年齢が高くなるだけでなく、生 涯未婚率は増加している。日本の若者にとって、結婚して家族を持つことが素晴らし いと写らないのだろうか?婚姻率の上昇が出生率上昇の要ではないか? 先日、自民党が配偶者控除の見直しの提言案をまとめた。これも女性の社会進出を促 すのを狙っている。夫婦単位の控除にすることで、共働きと、夫婦どちらかが働く世 帯との間で所得税額の差を出にくくし、専業主婦に与えられる優遇措置と長く言われ てきた制度の見直しだ。不思議なのが、ここに少子化の事は全く懸念されていない事 である。もちろん、女性の社会進出を促すと言っている手前、子育て世代の女性を支 援するため、ベビーシッターを雇った費用などを所得税額から差し引ける「家事支援 税制」の導入も盛り込んだ(朝日新聞より)とあるが、では例えば、配偶者控除を廃止 したとして、出生率が上がる、もしくは出生率には何も影響は出ないであろうという 未来予測はできているのだろうか?結婚し子育てするメリットが減ってしまわない か?子供を2人以上持てる家庭は増えるか?そしてベビーシッターを雇った費用は所 得税額から差し引けるというが、安心して子供を預けられるベビーシッターの数は、 それを求める人々の数と合っているのだろうか? 日本のメディアでは日々、働くお母さんが保育園やベビーシッター探しに奔走してい る様子や、仕事と育児をいかに両立させるかが取り上げられている。仕事をしなが ら、子供を手元に置き自分で育てていることの大変さは私の想像を越えるだろう。中 国では、保育園や託児所等の施設が充実していないので、子供が小さいうちは実家に 預けっぱなしの親も多い。日々の生活で少しでも子供と過ごす時間を捻出しようとい う姿勢は、日本の家庭と比べるとはるかに低い。 日本には少子化問題に特化した対策担当大臣もいて、子育て、女性の活用、待機児童 ゼロ、様々な問題を議題に挙げているのだから、個別に対処していくのではなく、総 合的に解決していくことが、女性の社会での活躍と子どもの未来、そして将来の日本 の活性化につながるのではないかと思う。 ● 前回のエッセイは下記リンクよりお読みいただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/post_496.php --------------------------- <謝 志海(しゃ しかい)Xie Zhihai> 共愛学園前橋国際大学専任講師。北京大学と早稲田大学のダブル・ディグリープログ ラムで2007年10月来日。2010年9月に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期 課程単位取得退学、2011年7月に北京大学の博士号(国際関係論)取得。日本国際交 流基金研究フェロー、アジア開発銀行研究所リサーチ・アソシエイトを経て、2013年 4月より現職。ジャパンタイムズ、朝日新聞AJWフォーラムにも論説が掲載されてい る。 --------------------------- 【2】SGRAレポート紹介(1) SGRAレポートを発行いたしましたのでご紹介します。PDF版は下記リンクよりご覧い ただけます。SGRA賛助会員と特別会員のみなさまには冊子をお届けします。冊子の送 付をご希望の方は事務局へご連絡ください。 ■ SGRAレポート第67号「アジア太平洋時代における東アジア新秩序の模索」 http://www.aisf.or.jp/sgra/member/KoreaForum/SGRAreport67.pdf 第12回日韓アジア未来フォーラムin キャンベラ 「アジア太平洋時代における東アジア新秩序の模索」講演録 2014年2月25日発行 <もくじ> 【発表1】構造転換の世界経済と東アジア地域統合の課題 平川 均(名古屋大学大学院経済学部教授) 【発表2】中国の海洋戦略と日中関係:新指導部の対外政策の決定構造 加茂具樹(慶応義塾大学総合政策学部准教授) 【発表3】アジア貿易ネットワークの結束と競合:ネットワーク分析技法を用いて 金 雄熙(仁荷大学国際通商学部教授) 【発表4】日韓関係の構造変容、その過渡期としての現状、そして解法の模索 木宮正史(東京大学大学院情報学環(流動)教授) 【発表5】米中両強構図における韓日関係の将来 李 元徳(国民大学国際学部教授) 【発表6】東アジア新秩序と市民社会:脱北者の脱南化現象を中心に 金 敬黙(中京大学国際教養学部教授) --------------------------------------------------------------- 【3】SGRAレポート紹介(2) SGRAレポートを発行いたしましたのでご紹介します。PDF版は下記リンクよりご覧い ただけます。SGRA賛助会員と特別会員のみなさまには冊子をお届けします。冊子の送 付をご希望の方は事務局へご連絡ください。 ■ SGRAレポート第68号「ボランティア・志願者論」 http://www.aisf.or.jp/sgra/member/ChinaForum/SGRAreport68.pdf 宮崎幸雄(日本YMCA同盟名誉主事) 「ボランティア・志願者論」講演録 2014年5月15 日発行 ○日本語の講演録、中国語訳、英語訳を一冊に纏めてあります。 <講演要旨> 1)私のボランティア原体験 <ベトナム戦争とボランティア> ・自分で手を挙げて(挫折からの逃走)  ・こちらのNeeds (体育) とあちらのInterests(養豚)  ・信頼なくして “いのち” なし(地雷原の村)  ・解放農民の学校(自立・自助)  ・プロ・ボランティアとして国際社会へ  2)ボランティア元年といわれて    --神戸・淡路大震災によって広まるボランティア(観) 3)ボランティア活動の社会的効果(地域への愛着・仲間・達成感・充実感・希望) 4)大災害被災地のボランティア活動と援助漬け被災者   中国人が見た東日本大震災救援活動と日本人が見た四川大震災救援活動 5)3 ・11若者の自意識と価値観の変化   国際社会の支援と同情・共感・一体感と死生観・共生観と人と人との絆 --------------------------------------------------------------- 【4】第3回SGRAワークショップ「人を幸せにする科学とは」へのお誘い(再送) SGRAでは会員を対象としたワークショップを下記の通り行います。 参加ご希望の方は、SGRA事務局へご連絡ください。 テーマ: 「人を幸せにする科学とは」 日 時: 2014年7月5日(土)午前9時 〜 6日(日)午後1時 集 合: 現地集合(東京商工会議所 蓼科フォーラムにて受付)      http://www.tokyo-cci.or.jp/tateshina/access/ 参加費: 5000円(食費、宿泊費(相部屋)を含む) 募集人数: 先着20名(渥美奨学生を含む全参加者数は約40名になります) 募集締め切り:2014年6月20日(ただし定員になり次第募集を締め切ります) 申し込み・問い合わせ:SGRA事務局(sgra-office@aisf.or.jp) ○ワークショップの趣旨: SGRAでは、福島原発事故を契機にして飯舘村スタディーツアーやSGRAワークショッ プ、そして5月31日にはSGRAフォーラム「科学技術とリスク社会」を開催してきまし た。そこから浮かび上がってきたのが「現代の科学技術は、ひとを幸せにしているの か?」という問いかけでした。今回のSGRAワークショップin蓼科では「ひとを幸せに する科学技術」をテーマとして、科学技術の発展と人の幸せについて、ひとりひとり が自分のこととして考える機会をもちたいと思います。プログラムではモンテ・カセ ム先生の講演に続き、グループゲームなどを行いながら「楽しく、しかし深く」語り 合いたいと思います。 ○プログラム 7月5 日(土)(於:東商蓼科フォーラム) 9:30〜12:00 講演+グループ分け ・講演 「次世代のダ・ヴィンチを目指せ」  −地球規模の諸問題を克服するための科学技術イノベーションに向けてー  モンテ・カセム先生(立命館大学名誉教授/立命館国際平和ミュージアム館長) 12:00〜13:30 昼食 13:30〜15:00 ビデオ+小グループディスカッション 15:00〜15:30 休憩 15:30〜17:00 小グループディスカッション 7月6日(日) 9:30〜12:00 発表・まとめとふりかえり 《講師紹介》 モンテ・カセム先生(環境科学、イノベーション論) スリランカ出身、東京大学工学研究科博士課程修了(建築学/都市計画)、国連地域 開発センター等を経て、立命館大学教授、立命館アジア太平洋大学学長、立命館副総 長(国際担当)等を歴任 皆様のご参加をお待ちしています。 ************************************************** ● SGRAカレンダー 【1】第4回日台アジア未来フォーラム(2014年6月13日台北) 「トランスナショナルな文化の伝播・交流:思想・文学・言語」<参加者募集中> http://www.sgra2014jtaff.com/#!home-jp/c1ncc 【2】第3回SGRAワークショップ(2014年7月5日蓼科) 「人を幸せにする科学とは」<会員対象:参加者募集中> http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/3sgra.php 【3】第7回ウランバートル国際シンポジウム 「総合研究——ハルハ河・ノモンハン戦争」<論文・参加者募集中> http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/mongol/7_1.php 【4】第2回アジア未来会議 「多様性と調和」(2014年8月22日インドネシアバリ島) http://www.aisf.or.jp/AFC/2014/ ★オブザーバー参加者募集中★ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: sgra-office@aisf.or.jp Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] Xie Zhihai “Womanomics: Japanese Women Will Usher in the Future of Japan (Part 1)”

    ********************************************************* SGRAかわらばん521号(2014年6月4日) 【1】エッセイ:謝 志海「ウーマノミクス(その1)」 【2】ワークショップ「人を幸せにする科学とは」へのお誘い   (7月5日〜6日、蓼科) ********************************************************* 【1】SGRAエッセイ#411 ■ 謝 志海「ウーマノミクス:日本の女性が日本の未来を導く(その1)」 安倍政権になってから、日本の女性はこれまでにないほど、沢山の期待を背負わされ ているのではないだろうか?今回は特に安倍首相が掲げる成長戦略のうちの一つ、女 性の活用 「ウーマノミクス」を取り上げたいと思う。 ウーマノミクスとは、女性が社会で活躍することにより、経済活性化を目指すという ものだ。日本は人口減少の一途をたどっており、それによる将来の働き手不足を懸念 している。内閣府による予測では、およそ50年後には労働力人口が今より2割ほど 減ってしまうとされている。人口の減少、すなわち少子化問題も早期解決の目処は今 のところなさそうだ。外国人労働者の受け入れは、他国と比べて日本は非常に弱腰で ある。ではどうやって働き手を確保するかというと、女性だ。 最近のウーマノミクス関連のニュース記事でよく目にする言葉に「M字カーブ」があ る。日本人女性の働く人の割合を示す就業率年齢分布はM字カーブを描く。左右の高 い部分は20代と40代後半、くぼみの一番深い年齢が30〜40代で、出産を機に仕事から 離れるからだ。このくぼんでいる部分の人に、労働市場に戻ってもらえば、GDPも上 がるであろうと思われている。30〜40代の女性に働き続けてもらうには、出産後も働 きやすい環境を整える事が大事であり、産休の充実、復帰後の時短(短時間勤務)の適 用、保育園、幼稚園を増やす等は、すでに様々な制定がなされており、大手企業に とってそれらの制度は最近導入したことではない。なのになぜ未だに日本女性の就業 率はM字を描いているのか? 経済協力開発機構(OECD)が2013年に発表した「雇用アウトルック2013」によると、日 本の25-54歳の女性の就業率は69%で加盟国中、24位だった。(上位はノルウェーなど の北欧諸国で80%を超えている。) 約6割の女性が第一子出産を機に退職するからだと OECDは指摘する。これらの6割の女性は喜んで退職しているのか?日本政府が増税と インフレ2%に執心のさなか、そうは思えない。勤務先は時短制度が無い、復帰後に働 きやすい環境が待っていないなどで、やむを得なく去っていくケースも多いのではな かろうか?日経新聞によると、女性の活用に関しては、企業の対応はまだ手探りの段 階。そこで、横浜市が中小企業女性活用推進事業を始める。女性の就労継続を支援す るために中小企業にコンサルティングをしたり、かかる費用の一部を助成する計画を 打ち出した。市町村が、働き続けたい女性が求めること、また女性社員に残ってもら いたいが、そのシステム作りに悩む企業の声に耳を傾け、手助けすることは素晴らし い事だと思う。 同じ日経新聞の記事内に「出産女性の就業継続は夫が子育てを分担することも不可 欠」とあった。私は「これだ!これが答えだ!」と思った。中国では、夫は当たり前 に家事をする。子供がいてもいなくてもだ。家事は女性がするという概念が無い。ど うしてかと聞かれると、うまい答が見つからない。自分の家も、周りも親は共働き で、家事を普通にこなす父親を見て育っているので、そういうものだと思っていると しか言い様がない。一方、日本の男性にとって、掃除、育児は女性がするものという 固定観念が根強くある、年齢が高ければ高い人ほどそういう傾向だ。これでは女性に ばかりしわ寄せが多く、育児と仕事のバランスがうまく取れず、就労継続することが 困難な状態になる、それがM字カーブを描いてしまうのであろう。 家庭と仕事の両立支援制度の話に戻ると、男性にも育児休業を設けている会社が多 い。育児をする男性=イクメンという言葉まで定着しているのに、問題はそれを活用 する人が少ないこと。厚生労働省の「雇用均等基本調査」によると、2012年度の男性 の育児休業取得率は1.89%である。日本の男性は残業もいとわず日々真剣に働いてい るので、育児休業=一線から外れてしまう、また取得後の人事評価などを懸念して、 育児休業を取ることに臆病になっているのであろう。彼らの上司(40代後半から50代) の育児休業についての理解が低いことも、取得率を下げる大きな一因だと思う。上司 の時代にはイクメンが存在しなかったのだから。中国には男性の育児休業なんてもの は存在しないので、私にとっては制度があって、使う権利があるのに行使しないこと をもったいないと感じる。 日本の企業は時代に合わせて社員が働きやすい環境を整えていて素晴らしいと思う。 しかし、それらを社員が活用できているかまで、会社はしっかりとモニタリングして いるのだろうか?社員に活用するよう推奨しているのか?上司や同僚の目が気になっ て、育児休業の取得を切り出せないようでは、制度を作った意味がなくなる。男性達 も、一度思い切って育児休業を取ってしまえば、自分の子と過ごせる時間を与えてく れた会社に感謝し、勤務時間中はより業務に集中し、貢献度が上がるかもしれない。 こうして小さな子を持つ父親たちが、当たり前のように育児休業を利用したり、積極 的に家事へ参加し、周りもそれを当然の事として受け止めることが、女性の就労継続 につながり、実は一番のウーマノミクス成功への近道なのではないか。ウーマノミク ス、と女性をあおる前に男性の家事と育児に対しての意識改革が必要だ。女性の労働 人口が上がり、経済的に元気な日本になることを期待する。 ----------------------------- <謝 志海(しゃ しかい)Xie Zhihai> 共愛学園前橋国際大学専任講師。北京大学と早稲田大学のダブル・ディグリープログ ラムで2007年10月来日。2010年9月に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期 課程単位取得退学、2011年7月に北京大学の博士号(国際関係論)取得。日本国際交 流基金研究フェロー、アジア開発銀行研究所リサーチ・アソシエイトを経て、2013年 4月より現職。ジャパンタイムズ、朝日新聞AJWフォーラムにも論説が掲載されてい る。 ----------------------------- 【2】第3回SGRAワークショップ「人を幸せにする科学とは」へのお誘い SGRAでは会員を対象としたワークショップを下記の通り行います。 参加ご希望の方は、SGRA事務局へご連絡ください。 テーマ: 「人を幸せにする科学とは」 日 時: 2014年7月5日(土)午前9時 〜 6日(日)午後1時 集 合: 現地集合(東京商工会議所 蓼科フォーラムにて受付)      http://www.tokyo-cci.or.jp/tateshina/access/ 参加費: 5000円(食費、宿泊費(相部屋)を含む) 募集人数: 先着20名(渥美奨学生を含む全参加者数は約40名になります) 募集締め切り:2014年6月20日(ただし定員になり次第募集を締め切ります) 申し込み・問い合わせ:SGRA事務局(sgra-office@aisf.or.jp) ○ワークショップの趣旨: SGRAでは、福島原発事故を契機にして飯舘村スタディーツアーやSGRAワークショッ プ、そして5月31日にはSGRAフォーラム「科学技術とリスク社会」を開催してきまし た。そこから浮かび上がってきたのが「現代の科学技術は、ひとを幸せにしているの か?」という問いかけでした。今回のSGRAワークショップin蓼科では「ひとを幸せに する科学技術」をテーマとして、科学技術の発展と人の幸せについて、ひとりひとり が自分のこととして考える機会をもちたいと思います。プログラムではモンテ・カセ ム先生の講演に続き、グループゲームなどを行いながら「楽しく、しかし深く」語り 合いたいと思います。 ○プログラム: 7月5 日(土)(於:東商蓼科フォーラム) 9:30〜12:00 講演+グループ分け ・講演 「次世代のダ・ヴィンチを目指せ」  −地球規模の諸問題を克服するための科学技術イノベーションに向けてー  モンテ・カセム先生(立命館大学名誉教授/立命館国際平和ミュージアム館長) 12:00〜13:30 昼食 13:30〜15:00 ビデオ+小グループディスカッション 15:00〜15:30 休憩 15:30〜17:00 小グループディスカッション 7月6日(日) 9:30〜12:00 発表・まとめとふりかえり 《講師紹介》 モンテ・カセム先生(環境科学、イノベーション論) スリランカ出身、東京大学工学研究科博士課程修了(建築学/都市計画)、国連地域 開発センター等を経て、立命館大学教授、立命館アジア太平洋大学学長、立命館副総 長(国際担当)等を歴任 皆様のご参加をお待ちしています。 ************************************************** ● SGRAカレンダー 【1】第4回日台アジア未来フォーラム(2014年6月13日台北) 「トランスナショナルな文化の伝播・交流:思想・文学・言語」<参加者募集中> http://www.sgra2014jtaff.com/#!home-jp/c1ncc 【2】第3回SGRAワークショップ(2014年7月5日蓼科) 「人を幸せにする科学とは」<会員対象:参加者募集中> http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/3sgra.php 【3】第7回ウランバートル国際シンポジウム 「総合研究——ハルハ河・ノモンハン戦争」<論文・参加者募集中> http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/mongol/7_1.php 【4】第2回アジア未来会議 「多様性と調和」(2014年8月22日インドネシアバリ島) http://www.aisf.or.jp/AFC/2014/ ★オブザーバー参加者募集中★ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: 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