SGRAメールマガジン バックナンバー

  • [SGRA_Kawaraban] Maquito “Manila Report @ Chicago”; Husel “Ulaanbaatar Symposium #7 Report”

    *************************************************************** SGRAかわらばん538号(2014年10月8日) 【1】エッセイ:マキト「マニラレポート@シカゴ:資本主義の多様性」 【2】活動報告:フスレ「第7回ウランバートル国際会議報告」        『総合研究——ハルハ河・ノモンハン戦争』 *************************************************************** 【1】SGRAエッセイ#425 ■マックス マキト「マニラレポート@シカゴ:資本主義の多様性」 SGRAの共有型成長セミナーとテンプル大学ジャパンから支援を受け、2014年7月10日 から12日までシカゴ大学とノースウェスタン大学で開催された国際学会に参加した。 この会議は、フランスに本拠を置く「社会経済学の推進協会(SASE)」という学際的 な学会により「資本主義の基礎」というテーマで主催され、僕の研究やSGRAの学際的 な方針と合いそうなので、大変忙しい日程にもかかわらず参加を決めた。大変という のは、テンプル大学ジャパンはまだ夏学期中だったので、その合間をぬって東京とシ カゴを4日間で往復するというハードな日程のことだ。久しぶりのアメリカだし、長 い空路では放射能を多めに浴びるし、移民した家族や、幼いころの友人たちに再会で きるので、行くとしたらもう少しのんびりしたかったのだが、今回は無理だった。 僕の発表は、国士舘大学の平川均教授(名古屋大学名誉教授)と共同で2年前に実施し たフィリピン企業の調査報告に基づいて、「共有型成長のDNAの追求:フィリピンの 優れた製造企業の調査」というタイトルの論文だった。共有型成長というのは、経済 が成長しながら格差が縮む発展パターンであり、1993年に世界銀行が発表した「東ア ジアの奇跡」という報告によれば、日本を含む8か国/地域の東アジア経済が戦後の数 十年間に実現したものとされている。 SASEのシカゴ会議は、25を超える研究ネットワークに属する800人ぐらいの参加者で 構成されていた。僕は「アジア資本主義」という研究ネットワークに参加することに した。発表の前半では、この研究のきっかけともなった「東アジアの奇跡」報告から 僕が得た2つのビジョンを説明した。後半には、数年間をかけて共有型成長のDNAとい うべきものを追い求めた最新の研究結果を発表したが、長すぎるのでこのエッセイで は省略する。 第1のビジョンは、「共有型成長経済学」である。経済学では、2つのことを主な目標 としている。効率性(EFFICIENCY)と公平性(EQUITY)である。その他にも目標とすべき ものもあるが、今回は、共有型成長の話なので、この2つを取り上げる。共有型成長 経済学は、今の主流とされている新古典派経済学(市場万能主義)と同様に、市場の大 事な役割を否定してはいないが、新古典派より政府の戦略的な産業政策を重要として いる。効率性を重視しがちの新古典派より、効率性と公平性を同等に重視していると いえるだろう。近代経済学でよく言われるように、効率性と公平性の間にはトレード オフがあり、一方を重視すると、もう一方が犠牲になる。(1回目の)冷戦中の国際 対立国を事例とすれば、公平性を重んじた旧ソ連と中国の経済成長の方が最初はよ かったが、結局低迷してしまい、市場経済への移行を決めた。一方、米国は効率性を 重んじて、国として最大のGDPを生み出したが、格差が大きな課題になっている。 *1回目の冷戦が終結したのは1980年代だったが、現在2回目の冷戦が発生しようとす るところだと僕は思う。間違っていたら嬉しい。 第2のビジョンは、「共有型成長資本主義」である。こちらはもう少し政治的な色が 濃い。(1回目の)冷戦終結後、国際的な対立は、市場経済VS中央計画経済から、資本 主義VS資本主義という次元に焦点が転換した。そのバトルの1つは、アングロ・アメ リカが強調するA型資本主義であり、もう1つは日本が強調したJ型資本主義であっ た。冷戦の勝利は資本主義にあるという宣言から、A型資本主義が津波のように世界 中に襲来したが、防波堤で防ごうとした国の1つが日本だった。「東アジア奇跡」報 告は、日本が自ら行った、資本主義の中に多様性を保全しようとする活動だったと見 なしても過言ではない。 残念ながら、この「東アジアの奇跡」やその2つのビジョンは、この数年間忘れられ ている。経済成長または効率性が過剰に強調され、日本でさえも格差が広がって、 OECD諸国のなかでも貧困率が高い国になってしまった。 これでは、日本経済への関心が更に薄れて行く。日本経済を研究する人がいなくな る。シカゴの学会の「アジア資本主義」研究ネットワークでも、名前を「中国資本主 義」に変えてもいいぐらい中国の研究が支配的だった。日本の共有型成長の経験と違 い、中国では、目覚ましい成長を遂げているが、格差が拡大している。それを幾ら僕 が指摘しても、日本の研究者を含めて「西側」の研究者は中国の資本主義に魅了され ており、日本の資本主義に比較的無関心だという印象を受けた。日本企業を含めて欧 米の企業が、中国の市場に魅了されて、他の国に全く関心を向けなかったのと同様の 光景だった。どちらかというと、中国の研究者のほうが、日本の資本主義に興味を見 せていた。いずれにせよ、僕は、これからも、この学会で、日本の独自性を出来る限 り発揮させていきたい。幸い、来年のSASE学会のテーマはまさに「公平性」であるの で、今から作戦を練って準備しておきたい。 SGRA設立当初、「日本の独自性」という研究チームのリーダーを務めたことがある。 狙いはもちろん「多様性の中の調和」である。A型資本主義にせよ、J型資本主義にせ よ、C型資本主義にせよ、それぞれに欠点があり、完璧なものではない。というか、 完璧な資本主義はこの世の中にどこにもなく、これからも出てこない。ただ、多様性 を無くすのは、自然界ではもちろん、社会システムでも危険な行為だと、僕たちは認 識しなければならない。 第2回アジア未来会議のテーマ「多様性と調和」を達成するには、少なくとも2つの原 理が不可欠であると思う。1つは、GDPや一人当たりGDPや人口などと関係なく、どん な小さな国でも、尊重すべきだという原理である。もう1つは、過剰な競争より国と 国の間の協力を促す原理である。一見当たり前な原理だが、政府や企業や研究者など が意外と見落としているところである。僕は、SGRAのような民間の非営利・非政府団 体に期待している。みなさん、しっかりと多様性の中の調和を実現させましょう。 -------------------------- <マックス・マキト ☆ Max Maquito> SGRA日比共有型成長セミナー担当研究員。SGRAフィリピン代表。フィリピン大学機械 工学部学士、Center for Research and Communication(CRC:現アジア太平洋大学) 産業経済学修士、東京大学経済学研究科博士、アジア太平洋大学CRCの研究顧問。テ ンプル大学ジャパン講師。 -------------------------- 【2】活動報告 ■ボルジギン・フスレ「第7回ウランバートル国際シンポジウム『総合研究——ハル ハ河・ノモンハン戦争』報告」 2014年は、ハルハ河・ノモンハン戦争後75年にあたる。これを記念して、モンゴルと ロシアで、さまざまな記念行事やシンポジウムがおこなわれた。そのなか、モンゴル 国立大学モンゴル研究所とモンゴルの歴史と文化研究会主催、渥美国際交流財団助 成、在モンゴル日本大使館、モンゴル・日本人材開発センター、ハル・スルド モン ゴル軍事史研究者連合会、モンゴル国立大学プレス・パブリッシング社後援の第7回 ウランバートル国際シンポジウム「総合研究——ハルハ河・ノモンハン戦争」が8月 9、10日にウランバートルで開催された。 謎に満ちたハルハ河・ノモンハン戦争は歴史上あまり知られていない局地戦であった にもかかわらず、20世紀における歴史的意義を帯びており、太平洋戦争の序曲であっ たと評価されている。1991年、東京におけるシンポジウムによって研究は飛躍的に進 み、2009年のウランバートル・シンポジウム(SGRAとモンゴル国家文書管理総局、モ ンゴル科学アカデミー歴史研究所共催)ではさらに画期的な展開をみせた。しかし、 国際的なコンテキストの視点からみると、これまでの研究は、伝統的な公式見解のく りかえしになることが多く、解明されていない問題が未だ多く残されている。立場や 視点が異なるとしても、お互いの間を隔てている壁を乗りこえて、共有しうる史料に 基づいて歴史の真相を検証・討論することは、歴史研究者に課せられた使命である。 そのため、私たちは今回のシンポジウムを企画した。 本シンポジウムは、北東アジア地域史という枠組みのなかで、同地域をめぐる諸国の 力関係、軍事秩序、地政学的特徴、ハルハ河・ノモンハン戦争の遠因、開戦および停 戦にいたるまでのプロセス、その後の関係諸国の戦略などに焦点をあて、慎重な検討 をおこないながら、総合的透視と把握をすることを目的とした。 私は8月3日にウランバートルに着いた。6月末に予約したのだが、希望日の便が取れ なかった。今は、モンゴルの鉱山開発やモンゴルへの旅行などはたいへん人気があっ て、夏の便は3ヶ月以上前にとるべきだと言われているが、その通りだった。 日本と対照的に、モンゴルでは、新聞を読んでも、テレビのニュースを見ても、ハル ハ河戦争勝利75周年と関係する報道が多く、街に出ても、「ハルハ河戦争勝利75周年 記念」の幕が飾られており、国全体がお祝いムードになっていた。 8月8日の午前中に、モンゴル国立大学モンゴル研究所長J. バトイレードゥイ氏と打 ち合わせをした際、急にTV2テレビ局から連絡があって、急遽車で同社に向かい、取 材を受けた。同社はその日の夜と翌日の朝、2回も報道した。 9日午前、モンゴル・日本人材開発センター多目的室で第7回ウランバートル国際シン ポジウムの開会式がおこなわれ、在モンゴル日本大使清水尊則氏、モンゴル国立大学 長A. ガルトバヤル氏、国際モンゴル学会事務総長・モンゴル科学アカデミー会員D. トゥムルトゴー氏、モンゴル国立大学歴史学術院長P. デルゲルジャルガル氏が挨拶 をした。 開会式の後、研究報告をおこなった。午前の会議では、P. デルゲルジャルガル氏が 座長をつとめ、6本の論文が発表された。午後の会議では、モンゴル防衛研究所教授 G. ミャグマルサンボー氏とモンゴル科学アカデミー歴史研究所教授O. バトサインハ ン氏が座長をつとめ、12本の論文が発表された。その後おこなったディスカッション では、ウランバートル大学教授ダシダワー氏と私が座長をつとめた。 会議には、モンゴル、日本、中国、ロシア、ハンガリー、チェコ等の国からの研究者 70人あまりが参加し、活発な議論が展開された。「最近、モンゴルの研究者は、あま りにも外国の研究者の主張に従い過ぎる」「モンゴル人研究者は独自の主張を持つべ きだ」と、若手研究者の研究を批判する者がいれば、「未だ30年前の古い立場に立っ ている」と反論する研究者もいる。また、「モンゴル人の立場から見れば、ハルハ河 戦争とはハルハとバルガの統一運動の一つの過程であった」「この統 一の運動を分断するため、ソ連と日本が同戦争をおこなった」という日本人の研究者 のかんがえ方に対して、「モンゴルでは、だれもそう考えていない」と批判する声も あった。さらに、世界ハルハ河・ノモンハン戦争研究会を組織するという提案があ り、全員の賛成を得た。ハルハ河・ノモンハン戦争の原因や結末、戦争の名称等をめ ぐって、各国の研究者のかんがえ方が大きく対立していることがしめされ、さまざま な課題はまだ残されている。 同日の夜、在モンゴル日本大使館で、同大使館と渥美国際交流財団共催の招待宴会が おこなわれ、清水大使と私が挨拶をし、一橋大学名誉教授田中克彦氏が乾杯の音頭を とった。参加者は歓談しながら、日本食を賞味した。 10日午前、参加者はジューコフ記念館を見学した。その後に行ったモンゴル軍事史博 物館でも、各国の研究者の間では議論がつづき、また今後の学術交流などについても 意見を交換した。午後からは、ウランバートル郊外のチンギスーン・フレーで、モン ゴル国立大学モンゴル研究所主催の招待宴会がおこなわれた。 同シンポジウムについて、モンゴル国営通信社などモンゴルとロシアのテレビ局十数 社が報道した。 当日の写真は下記リンクからご覧ください。 www.aisf.or.jp/sgra/photos/index.php?spgmGal=The_7th_Mongol_2014_by_Husel ---------------------------- <ボルジギン・フスレ Borjigin Husel> 昭和女子大学人間文化学部国際学科准教授。北京大学哲学部卒。1998年来日。2006年 東京外国語大学大学院地域文化研究科博士後期課程修了、博士(学術)。昭和女子大学 非常勤講師、東京大学大学院総合文化研究科・日本学術振興会外国人特別研究員をへ て、現職。主な著書に『中国共産党・国民党の対内モンゴル政策(1945〜49年)——民 族主義運動と国家建設との相克』(風響社、2011年)、共編『ノモンハン事件(ハルハ 河会戦)70周年——2009年ウランバートル国際シンポジウム報告論文集』(風響社、 2010年)、『内モンゴル西部地域民間土地・寺院関係資料集』(風響社、2011年)、 『20世紀におけるモンゴル諸族の歴史と文化——2011年ウランバートル国際シンポジ ウム報告論文集』(風響社、2012年)、『ハルハ河・ノモンハン戦争と国際関係』(三 元社、2013年)他。 ************************************************** ● SGRAカレンダー 【1】第3回SGRAふくしまスタディツアー 『飯舘村、あれから3年』(2014年10月17日〜19日) http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/33.php 【2】第8回SGRAチャイナフォーラム<ご予定ください> 『近代日本美術史と近代中国』 (2014年11月22日北京) 【3】第6回SGRAカフェ⇒調整中 【4】第14回日韓アジア未来フォーラム・第48回SGRAフォーラム 『ダイナミックなアジア経済—物流を中心に』 (2015年2月7日東京)<ご予定ください> ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: sgra-office@aisf.or.jp Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] Virag Viktor ”What do young generations make of

    ***************************************************** SGRAかわらばん537号(2014年10月1日) 【1】エッセイ:ヴィラーグ・ヴィクトル  「福島の人災からの教訓を若い世代はどう活かしていくか」   −第2回アジア未来会議:ふくしまセッションから− 【2】第3回ふくしまスタディツアー参加者募集 「飯舘村、あれから3年」10月17日(金)〜19日(日) ***************************************************** 【1】SGRAエッセイ#424 ■ ヴィラーグ・ヴィクトル「福島の人災からの教訓を若い世代はどのように活かし ていくのか」 −第2回アジア未来会議:ふくしまセッションから− 第2回アジア未来会議の2日目に、福島原発事故に関する展示とトーク・セッション開 催されました。このセッションでは「Fukushima and its Aftermath: Lessons from a Man-made Disaster」 (フクシマとその後:人災からの教訓)というテーマを設けて、一方的な発表よりも 参加型のディスカッションを重視しました。 開催のきっかけは、放射能汚染の影響を強く受け避難区域に指定されている福島県飯 舘村への2回の訪問です。SGRAが2012年と2013年に主催したスタディツアーで「知っ た・感じた・考えた」ことを基にした様々な思いについて、インドネシアをはじめと した海外の皆さんとシェアしたくて、本企画の実施に至りました。 会場は一日中オープンの展示場のように設置しました。具体的な内容は、スタディツ アーを題材にしたショート・ドキュメンタリー映像や、参加者が撮った写真をプロ ジェクターで映す、もしくは展示するというものでした。本展示を観た参加者も巻き 込んで、午後からトーク・セッションを設けました。 飯舘村、とりわけ村民が直面しているあらゆる困難、また村へのSGRAの訪問活動につ いて簡単に報告してから、SGRAメンバーの震災時の個人的な経験や日常生活の中で とっている放射能対策を紹介しました。この中から「人災」、「原発事故」、「放射 能被害」、「強制避難」、「除染」などのキーワードが挙がり、これらを軸にフリー トークが進みました。 フロアからの多数の質問に答えながら、各参加者の国では原発事故を契機に日本のイ メージがどのように変わったか、放射能問題及び日本政府の対応をどのように考えて いるのか、等々について発言してもらいました。日本人参加者の中には、被災地の親 戚や知り合いの体験や苦労を話してくださった方もいました。本来は、電力不足問 題、原子力の今後の可能性とそのリスクを巡る議論と意見の共有まで発展する予定で したが、今回のセッションでは時間の制約があり、議論が及ばなかったことが残念で した。  主催側として最も嬉しかったのは今回の会議の会場である、インドネシアバリ島のウ ダヤナ大学の学生の積極的な参加です。トークに参加した学生が非常に高い関心を もって、是非まわりの人にも展示をみせたいという気持ちから、休憩中に友人を連れ てきました。筆者はこの2人と長く話を交わす機会がありましたが、なぜ原発問題を 重要な課題として捉えているかという問いに対する答えを聞いて、なるほどと思いま した。 この2人は、大学院で電子工学と都市計画を学んでいるそうです。まさしく放射能の リスクと防災及び災害復興をこれから真剣に考えなければならない立場です。しか も、インドネシアは日本と違って、人口構成的にも経済的な活力の面からみてもまだ 若い社会で、若者は「自分たちが国の将来を担っていくんだ。自分たちが今後のイン ドネシアを作っていくんだ」という意識が日本の若者と比べて顕著です。できるだけ 「良い国」を作りたいという思いが強いのです。 2人の大学院生によれば、今後グローバル経済の中で急速な発展が期待される新興国 インドネシアは、産業や生産量の拡大と生活水準の向上によって徐々に電力不足に直 面し始めており、原子力発電所の建設も実際に検討されています。関連する政策に今 後直接的に関わっていく可能性が充分ある若い知識層は、日本で発生した原発事故を どのように考え、そこから何を学べるのでしょうか。 地球規模の極めて重要な問いですから、無論、答えが簡単に出るはずがありません。 しかし、本セッションの題名が示すように「人災からの教訓」という観点から日本の 経験を紹介し、それについて考える機会を提供したことで、今後の議論の継続に多少 の貢献はできたと考えています。「映像」という媒体には言葉をはるかに越えた迫力 があり、参加した若者に強い印象を与えたと思います。近年のインドネシアにおいて 話題性、そして緊急の課題性のある原子力問題について、彼らが真剣に考え続け、意 見を形成していくプロセスを歩んでいくことは間違いありません。それによってイン ドネシア国内の議論が少しでも活発になるとを望みます。 日本国内でも原子力発電所の再稼働がずっと話題として残されたままです。一方、脱 原発を主張する動きも続いています。しかし、建設的な議論を進められるような形で 両サイドの間に対話が成り立ちにくい印象もしばしば受けます。非常に重要な問題で あるが故に、感情的になりやすい面もあります。例えば、最近は脱原発の意見を表明 しただけで、一部の利害関係者から「反日」のレッテルを貼られてしまうことすら起 きています。同じく、原発反対を訴える多くの人々が、数字で示せる現実的な代替案 を提示することに失敗しています。筆者はこのようなレッテル貼りや感情論に偏った 議論の流れに危機感を覚えざるを得ません。現在の対立が今後は事実と客観的なデー タに基づいた冷静な議論に発展していくことを期待します。また、その議論に若い世 代にもどんどん関わって欲しいと思います。 ほぼ一年前のSGRAかわらばんで配信した第2回SGRAふくしまスタディツアーの報告の 際にも触れたので、最後に今回も母国ハンガリーにおける原子炉増設計画の進行状況 について追記したいと思います。現在、全国電力需要のおよそ4割を供給している4基 の原発に加え、2基の新設が決まりました。福島の事故の数カ月後に不謹慎という評 価も受けながら、安倍首相自身もハンガリー訪問の際にセールスをしましたが、見積 り案と現行技術との整合性が検討され、結局はロシアとの契約が成立しました。そも そも交渉相手として「フクシマの日本」と「チェルノブイリのロシア」しか考慮され なかったことに疑問を抱かざるを得ません。 第2回アジア未来会議のふくしまセッションの企画に関わったSGRAメンバーは、映像 と展示を担当した朴ヒョンジョン、司会進行のデール・ソンヤ、そしてスピーカーの シッケタンツ・エリックと私でした。また、実現に向けて、角田英一理事には、当日 の説得力のある豊富なご発言も含めて、様々な形で大変お世話になりました。 なお、今年もSGRAでは飯舘村へのスタディツアーが開催されますので、この問題に興 味のある方には是非お薦めします! 当日の写真は下記リンクよりご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/info/Essay424Photos.pdf 第2回SGRAふくしまスタディツアーの報告は下記リンクよりお読みいただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/news/2sgra_1.php -------------------------- 2003年文部科学省学部留学生として来日。東京外国語大学にて日本語学習を経て、 2008年東京大学(文科三類)卒業、文学学士(社会学)。2010年日本社会事業大学大 学院社会福祉学研究科博士前期課程卒業(社会福祉学修士)、博士後期課程進学。在 学中に、日本社会事業大学社会事業研究所研究員、東京外国語大学多言語・多文化教 育研究センター・フェローを経験。2011/12年度日本学術振興会特別研究員。2013年 度渥美奨学生。専門分野は現代日本社会における文化等の多様性に対応したソーシャ ルワーク実践のための理論及びその教育。昭和女子大学・上智福祉専門学校非常勤講 師。日本社会福祉教育学校連盟事務局国際担当。 -------------------------- 【2】第3回ふくしまスタディツアー「飯舘村、あれから3年」参加者募集 渥美国際交流財団/SGRAでは2012年から毎年、福島第一原発事故の被災地である福島 県飯舘(いいたて)村でのスタディツアーを行ってきました。そのスタディツアーで の体験や考察をもとにしてSGRAワークショップ、SGRAフォーラム、SGRAカフェ、そし てバリ島で開催された「アジア未来会議」でのExhibition & Talk Session 「Fukushima and its aftermath-Lesson from Man-made Disaster」などを開催して きました。今年も10月に3回目の「SGRAふくしまスタディツアー」を行います。お友 達を誘って、ご参加ください。 日程:2014年10月17日(金)、18日(土)、19日(日)2泊3日 参加メンバー:SGRA/ラクーンメンバー、その他 人数: 10〜15人程度 宿泊: ふくしま再生の会-霊山(りょうぜん)センター 参加費: 15,000円(ラクーンメンバーには補助金が出ます) 申込み締切:10月10日(金) 申込み・問合せ: 渥美国際交流財団 角田(つのだ)          Email:tsunoda@aisf.or.jp Tel: 03-3943-7612 ◇参加募集チラシ http://www.aisf.or.jp/sgra/info/fukushima2014.pdf ************************************************** ● SGRAカレンダー 【1】第3回SGRAふくしまスタディツアー<参加者募集中> 「飯舘村、あれから3年」(2014年10月17日〜19日) http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/33.php 【2】第8回SGRAチャイナフォーラム<ご予定ください> 「近代日本美術史と近代中国」 (2014年11月22日北京) 【3】第6回SGRAカフェ<ご予定ください> 「シリアとイスラーム国について」(仮題) (2014年12月13日東京) 【4】第14回日韓アジア未来フォーラム・第48回SGRAフォーラム 「ダイナミックなアジア経済—物流を中心に」 (2015年2月7日東京)<ご予定ください> ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: sgra-office@aisf.or.jp Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] Dong Bingyue “Thinking about the Future of Asia From the Double Layered PLACE”

    ********************************************************* SGRAかわらばん536号(2014年9月24日) 【1】エッセイ:董 炳月「二重の『場』から、アジアの未来を」 【2】活動報告:金 兌希「第3回SGRAワークショップ報告」    「ひとを幸せにする科学技術とは」 【3】GVJ『Column & Photo Contest 2014』募集開始! 「留学生・日本留学経験者が見る日本」 【4】第3回ふくしまスタディツアー参加者募集 「飯舘村、あれから3年」10月17日(金)〜19日(日) ********************************************************* 【1】SGRAエッセイ#423 ■ 董 炳月「二重の『場』から、アジアの未来を」 第2回アジア未来会議がインドネシアのバリ島で開催されました。「この会議は、 日本で学んだ人、日本に関心のある人が集い、アジアの未来について語る『場』を 提供することを目的としています」と主催者は宣言しています。ここで言われてい る「場」とは一体何でしょうか。もしこの「場」を「会場」として理解するだけ だったら、勿体ないと思います。会議が開かれる処、つまり「会場」の所在地も 「場」です。今回の会議に即して言えば、バリ島も重要な、更に大きい「場」で す。つまり、主催者は参加者に二重の「場」を提供しました。二重の「場」によっ て、「アジア」は研究対象として討論されるだけではなく、参加者が身を持って体 験する対象にもなりました。本当にありがたいことです。 私は北京からの参加者として、会場で日本やフィリピン及びシンガーポールの参加 者の「中国台頭」に関する発表を聞いて、様々な問題を考えるようになりました。 彼らはこのように中国を見るのだ、やはり外部から見る中国と内部から見る中国と は違うのだ、と。「台頭」とは何だろうか、中国は本当に「台頭」したか、と。経 済から見れば、中国は確かに台頭しつつあると言えます。但し、それは問題の一面 に過ぎません。その反面、経済躍進によって生じた社会問題は山ほどあります。環 境汚染、官僚腐敗、貧富の差、道徳の堕落、などなど。全体から見れば中国はまだ まだ「台頭」していません。中国にとっては、日本だけでなく、バリ島にも学ぶべ きところは多い、と私は言いたかったのです。これからの中国はアジアに貢献する 「台頭」を追求すべきだとも考えました。 「バリ島」という二つ目の「場」からの収穫は更に多かったのです。8月21日の夜 ホテルに着き、チェックインの手続きをして部屋に入る前から、すでに廊下に流れ る音楽に魅了されてしまいました。なんと寂しくて、ロマンチックな音楽だろう、 と。後で知りましたが、それは小さな笛と竹の琴で演奏する地元の音楽です。CDが 入手できたので、北京に戻った今も楽しめます。私は日本の演歌も沖縄民謡もモン ゴルのホーミィー(特殊発声で歌う歌)も好きなので、バリ島の音楽を加えると 「アジア音楽」ができそう、という感じがします。 バリ島の生活様式の観察から得たものは、人文社会科学の研究者として非常に大き な収穫でした。会議は23日をもって終わり、24日は会場から出て見学ツアーに参加 しました。驚いたことは到る所に神廟(ヒンドゥー教の寺)が建てられていること です。神廟の面積は町の建築総面積の四分の一ぐらいを占めるのではないかと思い ます。ガイドの話によると、住民は毎日少なくとも2回神廟を参拝します。つま り、バリ島(拡大して言えばインドネシア)は自分なりの宗教、信仰、生活様式を 持っています。普通の中国人及び中国知識人はどれほどバリ島(及び東南アジア) に関心を寄せているでしょうか。明らかに、アメリカやヨーロッパに対する関心ほ ど高くはありません。中国ではイギリスを「大英帝国」と言うこともありますが、 もし国土面積や人口規模がずっとイギリスを上回るインドネシアを「大インドネシ ア」と言ったら笑われるでしょう。 経済発展に専念する中国においては、バリ島の人々の生活様式を「価値」として認 めることも難しいです。東洋の近代史は西洋の東洋に対する浸入、及び東洋の西洋 に対する抵抗の歴史と言われますが、その一方で、東洋は抵抗の過程において西洋 の論理と価値観をも受入れました。この両面性を直視しなければなりません。中国 語には「勢利」という言葉があります。「shi-li」という発音で、意味は「金力や 権力に靡く態度」です。実に、日本の近代も中国の現代も「勢利」の時代です。 「西洋志向」という病気に罹ったのは日本だけではなく、中国も同じです。「発 展」や「富強」(富国強兵)ばかりを追求しています。バリ島が教えてくれたのは 「発展」も「富強」も絶対価値ではなく、相対価値にすぎない、ということです。 アジア未来会議はバリ島南東部のビーチで開かれましたが、そのホテルの10階建て の建物以外にビルはありません。ホテル建設後、住民の反対運動によって、バリ島 では椰子の木よりも高い建物は禁止になったからだそうです。私は緑に囲まれた低 い建物を見て、北京や東京の高層ビルがますます嫌になりました。観光バスの中で 地元のガイドが「私たちはできる限り稲と木を植え、セメントを植えません」と言 いました。哲学者のようなガイドだ、と思いました。彼は見事に地元の価値観を表 現しました。中国沿海地方と比べて、バリ島の経済発展は遅れているかもしれませ んが、バリ島の人々は必ずしも不幸ではありません。むしろ、彼らの生活様式は大 都会に住む私たちより「合理的」なのです。 会議主催者がバリ島を開催地として選んだのは偶然かもしれないが、「多様性と調 和」という総合テーマはバリ島で開催することによって見事に完成したと思いま す。インドネシアのバリ島、ヒンドゥー教のバリ島、そしてインドや中国の文化の 影響を受けたバリ島で、十数カ国からの数百人の参加者が、日本の獅子舞とバリ島 のバロンダンスの共演を観賞する、これは素晴らしい「多様性と調和」だと思いま した。もっと大事なのは参加者の観念の中で発生した「多様性と調和」です。それ は目に見えないものです。 二重(二重以上かもしれない)の「場」を、各国からの参加者に提供した主催者の 意図は達成されたと思います。アジア未来会議は価値観の共同体を作っているので す。参加者は国籍や専門などが違っていても、「共同価値観」を持ち、或いは持て るようになります。共同価値観というのは、アジアに対する関心と共感、他者に対 する尊重などが含まれます。この価値観を共有する共同体が大きくなって行けば、 アジアの未来はきっと明るいと信じます。現在の中国に金持ちは多いですが、彼ら が渥美国際交流財団を模範にして、国境を越えた文化交流に貢献することを望んで います。  ------------------------------- <董炳月(とうへいげつ)Dong Bingyue> 中日近代文化専攻。1987年北京大学大学院中国語中国文学学科修士号取得、中国現 代文学館に勤める。1994年に日本留学、東京大学人文社会系研究科に在学。1998年 に論文『新しき村から「大東亜戦争」へ—武者小路実篤と周作人との比較研究』で 文学博士号取得。1999年から中国社会科学院に勤め、現在は同文学研究所研究員、 同大学院文学学科教授。2006年度日本国際交流基金フェローシップ。著書は『「国 民作家」の立場—近代日中文学関係研究』、『「同文」の近代転換—日本語借用語 彙の中の思想と文学』など。評論集は『茫然草』、『東張東望』など。翻訳書は多 数。 ------------------------------- 【2】活動報告 ■ 金 兌希「第3回SGRAワークショップin蓼科『ひとを幸せにする科学技術とは』 報告」 渥美国際交流財団2014年度蓼科旅行・第3回SGRAワークショップin蓼科は、2014年7 月4日(金)から6日(日)の週末に行われました。ワークショップでは、「『ひと を幸せにする科学技術』とは」をテーマに、講演やグループディスカッションなど が行われました。 7月4日の早朝、現役・元渥美奨学生らを中心とした約40人の参加者は新宿センター ビルに集合し、貸切バスで蓼科高原チェルトの森へ向かいました。旅路の途中、 SUWAガラスの里ではガラス工芸品の鑑賞を、諏訪大社上社本宮ではお参りをしまし た。渋滞に巻き込まれることもなく、予定通り16時過ぎにはチェルトの森にある蓼 科フォーラムに到着しました。チェルトの森の自然は素晴らしく、空気がとても澄 んでいて、自然に心と体が休まっていくのを感じました。 夕食後、オリエンテーションとアイスブレーキングが行われました。アイスブレー キングでは、それぞれの趣味や家族構成などの簡単な紹介から、自分のこれまでの 人生のモチベーショングラフを作成し説明し合うなど、短いながらも密度の濃い交 流時間を持ちました。普段の会話では話すことがあまりないような、それぞれの人 生や価値観などについても垣間見ることができるような時間でした。 7月5日、朝から本格的なワークショップが開催されました。ワークショップは、大 きく分けて、講演とグループディスカッションで構成されました。 最初に、立命館大学名誉教授のモンテ・カセム先生による講演、「次世代のダ・ ヴィンチを目指せ—地球規模の諸問題を克服するための科学技術イノベーションに 向けて—」が行われました。カセム先生は、専門も多岐に亘るだけでなく、大学や 国連など、様々な領域で活躍されてきた経歴をお持ちで、講演内容にも多くのメッ セージが含まれていました。その中でも、先生が強調されたのは、学際的なコミュ ニティーで行われる「共同」作業が生み出すイノベーションが持ち得る大きな可能 性でした。先生は、そのような共同作業が生み出す、新たなものを創造していくエ ネルギーを、ルネサンスを築いたダ・ヴィンチに見たて、現代の諸問題を克服して いくために有用に活用すべきだと力説されました。講演の中では、その実例とし て、カセム先生自身の京都とスリランカのお茶プロジェクトの取り組みについての 紹介などがありました。さらに、そのようなイノベーションを達成するには、個々 人の専門をしっかりと持つこと、そしてネットワーク、コミュニケーション等が重 要であると説明されました。講義の後には、活発な質疑応答も行われ、講演に対す る高い関心が窺われました。 午後のワークショップは、参加者を6つのグループに分けて進められました。最初 に、いくつかの代表的な科学技術を象徴する製品の落札ゲームが行われました。各 グループには、仮想のお金が与えられ、その中で自分たちが欲しいと思う製品に呼 び値を付け、落札するというものです。その過程で、なぜその製品(科学技術)が 重要であるのか、各グループで議論し考える時間が持てました。 次に行ったのは、グループディスカッションでした。全てのグループに、人が幸せ になるためのイノベイティブな科学製品を考案するという課題が出されました。グ ループごとに人の幸せとは何なのか、その幸せを促進できる科学技術はどのような ものなのか、議論が行われ、模造紙に科学製品を描いてまとめる作業をしました。 7月6日の最終日には、各グループが考案した製品を発表する時間を持ちました。そ れぞれのチームから、とてもユニークなアイディア製品が紹介されました。具体的 には、瞬時に言語に関係なくコミュニケーションを可能にするノートパッド、イン ターネットを利用した全世界医療ネットワークシステム、人型お助けロボット(オ トモ)、健康管理から睡眠時間を効率的に調節できるなどの機能を持った多機能カ プセルベッド(ダビンチベッド)、地域コミュニティー再生のための技術などが提 案されました。各チームが考案した製品は、医療格差、介護、社会の分断化など、 現代社会が直面している諸問題を反映し、それに対するユニークな解決策を提示し ていました。 各グル—プが発表を行った後は、エコ、利潤性、夢がある、の3つの基準をもと に、参加者全員による評価が行われました。その中で、総合的に最も高い評価を得 たものが、コミュニティー再生のための科学技術を提案したグループでした。この グループは、希薄化されている地域コミュニティーの再生こそが人の幸せに繋がる と考え、個人の利便性ばかり追求するのではなく、コミュニティーの再生に目を向 けるべきだという主張を行いました。科学技術そのものよりも、地域コミュニ ティーの再生を謳ったグループが最も多くの支持を得たことは、とても興味深い結 果でした。参加者の多くが、コミュニティーの喪失を現代における大きな問題点だ と認識しているということがわかりました。 最後に、全員が一人ずつ感想を述べる時間を持ちました。参加者からは、多様な専 門分野や背景を持った人々との議論が面白く、勉強になったという意見が多く挙が りました。個人が各々の専門をしっかりと持ちながら、学際的なコミュニティーの 中で問題の解決に取り組むときこそイノベイティブなことができるという、カセム 先生の講演を今一度考えさせられました。 ワークショップを終えた後は、ブッフェ形式の昼食をとり、帰路につきました。帰 路の途中に、蓼科自由農園で買い物をし、予定通り19:00頃には新宿駅に着きまし た。 今回のワークショップは、全ての参加者が積極的に参加できるような細かなプログ ラムが用意されていたため、短時間で参加者同士の密接なコミュニケーションを図 ることができました。また、蓼科チェルトの森の素晴らしい自然も参加者の心をよ り開放する一助となりました。今回のワークショップでできたコミュニティーやそ の経験は、今後の学際的な、そしてイノベイティブな活動を行うエネルギーへと繋 がっていくことと思います。 当日の写真は下記リンクよりご覧いただけます。 www.aisf.or.jp/sgra/photos/ ------------------------------------ <金兌希(きむ・てひ)Taehee Kim> 政治過程論、政治意識論専攻。延世大学外交政治学科卒業、慶應義塾大学にて修士 号を取得し、同大学後期博士課程在学中。2014年度渥美財団奨学生。政治システム や政治環境などの要因が市民の民主主義に対する意識、政治参加に与える影響につ いて博士論文を執筆中 ------------------------------------ 【3】GVJ『Column & Photo Contest 2014』募集開始! Global Voices from Japan(GVJ)実行委員会/SGRA渥美国際交流財団は、留学生・日 本留学経験者を対象に現代日本の諸問題について日本人とは異なる視点で考えたこ と、感じたことに関する懸賞コラムと写真を以下の要項で募集します。優秀な作品 はGVJのWebサイトに掲載するとともに共同通信のWebメディアを通じて世界に発信 されます。 ◇募集期間は2014年9月15日から12月15日まで。                        ◆Columnの部 募集のテーマ:「留学生・日本留学経験者が見る日本」 募集のカテゴリー: Ⅰ「日本の大学の“国際化”に関する提言」 日本の大学が現在、積極的に取り組んでいる“国際化”に対して、留学経験を踏ま えての意見・提言 Ⅱ「アジアとはなにか?」 グローバリズムとナショナリズムのはざまで揺れ動くアジア。アジアはどこへ向か うのか。文明のるつぼといわれるアジアに共通項があるとしたら、それはなにか? Ⅲ「あれから3年。−いま、福島を思う」 福島第一原発事故から3年半。経済成長や科学技術の発展と社会的リスクの相関性 について、改めて考えてみませんか? 使用言語・文字数:日本語・中国語(簡体・繁体)・ハングル1500字。英語1200単 語 賞・賞金:最優秀賞=各カテゴリー1名計3名・賞金各5万円、優秀賞=各カテゴ リー2名計6名・賞金各3万円 ◆Photoの部 募集のテーマ:「Japanese Culture, Cool or Not Cool?」 伝統文化から現代のサブカルチャーまで、見たまま、感じたままを3〜4コマの写真 とコメント(日本語100字、英語80単語)で表現 賞・賞金:ユニークで機知に富んだ作品に対して。GVJ賞・3点、各1万円 ———————————————— 応募資格:日本国内の留学生、日本留学経験者(国籍・在住地・年齢不問) 応募受付:GVJWebサイト( http://www.glovoices.com ) 入選発表:2015年2月中旬(予定)、GVJWebサイトほか 【4】第3回ふくしまスタディツアー「飯舘村、あれから3年」参加者募集 渥美国際交流財団/SGRAでは2012年から毎年、福島第一原発事故の被災地である福 島県飯舘(いいたて)村でのスタディツアーを行ってきました。そのスタディツ アーでの体験や考察をもとにしてSGRAワークショップ、SGRAフォーラム、SGRAカ フェ、そしてバリ島で開催された「アジア未来会議」でのExhibition & Talk Session「Fukushima and its aftermath-Lesson from Man-made Disaster」などを 開催してきました。今年も10月に3回目の「SGRAふくしまスタディツアー」を行い ます。お友達を誘って、ご参加ください。 日程:2014年10月17日(金)、18日(土)、19日(日)2泊3日 参加メンバー:SGRA/ラクーンメンバー、その他 人数: 10〜15人程度 宿泊: ふくしま再生の会-霊山(りょうぜん)センター 参加費: 15,000円(ラクーンメンバーには補助金が出ます) 申込み締切: 9月30日(火) 申込み・問合せ: 渥美国際交流財団 角田(つのだ)          Email:tsunoda@aisf.or.jp Tel: 03-3943-7612 ◇参加募集チラシ http://www.aisf.or.jp/sgra/info/fukushima2014.pdf ************************************************** ● SGRAカレンダー 【1】第3回SGRAふくしまスタディツアー<参加者募集中> 「飯舘村、あれから3年」(2014年10月17日〜19日) http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/33.php 【2】第8回SGRAチャイナフォーラム 「近代日本美術史と近代中国」<ご予定ください> (2014年11月22日北京) 【3】第14回日韓アジア未来フォーラム・第48回SGRAフォーラム 「ダイナミックなアジア経済—物流を中心に」<ご予定ください> (2015年2月7日東京) ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会 員のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご 購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録し ていただくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡 ください。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事 務局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いた だけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: sgra-office@aisf.or.jp Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] S. Numata “What can we learn from the past for the future?”

    *************************************************************** SGRAかわらばん535号(2014年9月17日) 【1】エッセイ:沼田貞昭「未来に向けて過去から何を学びとれるか」 【2】日台アジア未来フォーラム報告(その3)   「東アジアにおけるトランスナショナルな文化の伝播・交流」 【3】SGRAふくしまスタディツアー参加者募集(10月17日〜19日) *************************************************************** 【1】SGRAエッセイ#422 ■ 沼田貞昭「未来に向けて過去から何を学びとれるか」 筆者は、公益財団法人渥美国際交流財団主催でインドネシアのバリ島で8月22日?24日 に開催された第2回アジア未来会議に参加した。昨年3月にバンコックで開かれた第1 回会議にも参加し、「戦後和解」のセッションの座長を務めたが、今回、日本で博士 号を修得した人々を中心とするアジアおよび他の地域の研究者等380名が参加し、真 摯に、忌憚なく、かつ和気あいあいと議論する姿に再び接して、感銘を新たにした。 筆者が担当した「平和」のセッション(日本語)では、戦前の「日ソ中立条約」と内 モンゴル問題、日清修交条規にかかわる副島種臣外務卿の北京訪問時の外交儀礼問 題、インドネシアの国家理念パンチャシラと憲法、日韓漁業協定前史としてのGHQの 政策が取り上げられた。正直の所、この中から何か共通の要素を見出せるか否か、 セッションが始まるまでは自信が無かったが、振り返ってみると、過去を調べて未来 について何かを学ぶとの観点から、幾つか示唆に富む点があったので、筆者の主観を 交えて以下に記す。 第1に、我々が今日および将来の近隣諸国との関係を考えるに当たって、明治から昭 和にかけて、後発国として列強に仲間入りをした日本が帝国主義的拡張を試み、結局 失敗に終わったことの意味合いを忘れてはならないと言うことである。 1873年に副島種臣外務卿が特命全権大使に任命されて北京に赴き、同治帝への謁見形 式をめぐり日本側の主張を通したことは、「国権外交」を実現したものとして日本国 内で高く評価された。他方、本ペーパーを発表した白春岩早稲田大学助教(中国) は、清国側において、重臣李鴻章が日本との「相互利益」を重視して、現実的解決を 求めて努力したことを指摘している。当時、列強との対比においては平等な存在で あった日清間の駆け引きの中で、「国権」と「相互利益」のバランスを如何に取るか が問題であったことを想起すると、今日、それぞれ「大国」を自負している中国と日 本が、各々の「国権」にこだわって「相互利益」を軽んじる場合、どのような結果を 招くかと言うことも考えておく必要があると感じた。 ガンガバナ国際教養大学助教(内モンゴル)は、内モンゴルに焦点を当てつつ、松岡 洋右外務大臣の日独伊ソ四国同盟構想が実現に至らなかった経緯を考察した。筆者の 感想は、領土の取り合いないし分割と言ったパワー・ポリテイックスの権謀術数の一 環として構成される同盟は脆弱なものだったと言うことと、後発帝国主義国として列 強間の駆け引きに加わろうとした松岡大臣は多分にナイーブだったのではないかと言 うことである。将来においても、国際政治においてパワー・ポリテイックスは重要な 要素ではあり続けるだろうが、わが国としては、普遍的理念とか価値に根ざす外交と か同盟関係を重視して行くべきものと思う。 第2に、日韓関係について、柔軟性と大局的思考が必要であるとの感を強くした。竹 島問題もあり、日韓間での摩擦要因である日韓漁業協定について、連合軍による日本 占領下のマッカーサー・ライン、1952年のいわゆる「李承晩ライン」に遡って論じる 朴昶建国民大学教授(韓国)は、「解決しないもので解決したものとみなす」という 1965年の日韓漁業協定の合意方式はいつでも再点火可能な時限爆弾のようなものだっ たとしている。外交の実務に携わって来た筆者としては、双方が完全に合意すると言 うことは現実にあり得ず、ある程度の立場の相違を残しつつも、それはそれとして実 際の関係を処理して行くという柔軟性が特に今日の日韓関係に求められていると思 う。また、同教授は、当時、日韓両国には反共体制に属するとの共通の枠が存在して いたと指摘しているが、今日必要なのは、日韓2国間の問題を越えて、より大局的な 共通利益を見つけて行くことではないかと思う。 なお、筆者がもう一つ共同座長を務めた「公平(Equity)」のセッション(英語)に おいて、日本統治下の朝鮮には、「国家の宗祀」として900を越える神社が建立され たことの背景として、「日鮮同祖論」等、日本人と朝鮮民族の同質性を強調しつつも 日本が兄貴分であり、朝鮮が弟分であるとの意識があったとする菅浩二国学院大学教 授の発表が行われた。「公平(Equity)」との観点から言えば、民族のアイデンティ ティという根本的な問題について、「日本人と朝鮮人はそもそも同じなのだ」と言っ て、同質性を先方に押し付けつつ、日本人の方が上に立つとのアプローチには、そも そも無理があったと思わざるを得ない。この観点からも、今日では、日韓双方が対等 な立場に立ちつつ追求すべき大局的な共通利益を考える必要があるとの感を強くし た。 第三に、1976年から1978年にジャカルタで勤務して以来、インドネシアを離れて久し い筆者にとって、トマス・ヌグロホ・アリ氏(国士舘大学博士課程、インドネシア) のインドネシアの建国理念および憲法についての解説は懐かしいものだった。と同時 に、筆者の在勤時代の国軍の「二重機能」からスハルト体制の崩壊を経て、今般の ジャカルタ特別州知事ジョコ・ウィドド氏の大統領当選へと民主化プロセスが一層進 行していることは、西欧型民主主義の定着と言うよりも、インドネシア型民主主義が 育って来たことを意味するのだろうと感じた。 以上のように、わが国が近隣諸国などとの関係で今日直面する問題とは一見迂遠なよ うに感じられるテーマの考察を通じて、種々学ぶべき点があることを実感でき、アジ ア未来会議の意義を改めて認識することができた。 --------------------------------- <沼田 貞昭(ぬまた さだあき)NUMATA Sadaaki> 東京大学法学部卒業。オックスフォード大学修士(哲学・政治・経済)。 1966年外務省入省。1978-82年在米大使館。1984-85年北米局安全保障課長。 1994?1998年、在英国日本大使館特命全権公使。1998?2000年外務報道官。2000?2002 年パキスタン大使。2005?2007年カナダ大使。2007?2009年国際交流基金日米センター 所長。鹿島建設株式会社顧問。日本英語交流連盟会長。 --------------------------------- 【2】第4回日台アジア未来フォーラム報告(その3) ■ 梁 蘊嫻「東アジアにおけるトランスナショナルな文化の伝播・交流—文学・思 想・言語—(その3)」 2014年6月14日の会議は元智大学で開催された。開会式では、元智大学通識中心・劉 阿栄主任が本学を代表して、ご来場の皆様を歓迎した。大衆教育基金会の簡明仁董事 長もわざわざ駆けつけてくださった。簡董事長のご尊父は1920年代の農民運動家・簡 吉氏である。簡董事長は、ご父君の事蹟の整理をきっかけに、台日の歴史研究に携 わった。台湾と日本との思想の交流は早くから始まり、具体例として1920年から1930 年までの間、台湾の社会運動の思潮は日本の学界からの影響によるものだとの、大変 印象深いご挨拶だった。続いて、今西淳子渥美国際交流財団常務理事が、元智大学と ご縁を結ぶことができて嬉しいこと、簡董事長の詳しい解説に感心したこと、そし て、フォーラムの今後のテーマの一つとして、日台思想交流史を取り上げたいと述べ られた。 フォーラムでは、川瀬健一先生が「戦後、台湾で上映された映画—民國34(1945)年〜 民國38(1949)年」という題目で講演された。1945年、第二次世界大戦が終わり、世界 情勢が大きく変動したが、日本敗戦直後には台湾では多くの日本映画が上映されてい た。1946年4月からは上映できなくなったが、その後も日本語の映画が1947年2月頃ま で上映されていた。特に、1947年に起きた二・二八事件前後の映画上映状況、及びソ 連映画(1946年4月〜1948年7月まで)、中国共産党の映画(1948年7月〜1949年末ま で)の台湾での上映状況が詳しく紹介された。当時上映されたアメリカ映画は字幕が 日本語だったという興味深い現象も紹介された。このことから、世界情勢や政策が急 激に変わっても、文化はすぐに変えられるものではない事実が窺えるが、その一方、 政策が文化に大きな影響を与えていることもよくわかる。 閉幕式では、元智大学の王佳煌副教務長が、「今回だけではなく、元智大学は今後と もフォーラムの開催に尽力したい」と挨拶され、元智大学応用外国語学科楊薇雲主任 は、「人間は歴史から学んで未来を創る。そのため、未来フォーラムで歴史を語る川 瀬先生の講演は、非常に考えさせられるものがあった」と、会議を締めくくった。 午後は、大渓保健植物厨房で食事をした。名前の通り、この厨房の料理は健康によい 薬膳料理である。漢方薬の鶏スープ、枸杞そうめん、紅麹のご飯、磯巾着、木耳のエ キスなど、珍しい料理が次々に出された。食事の後、陶磁器の産地・鶯歌へ向かい、 台華窯という陶磁器の工房を参観した。美しい芸術品がたくさん展示されていた。続 いて、鶯歌の古い商店街を散策。ここは時間をかけて探せば、掘出物がたくさん見つ かる楽しい町である。皆、鶯歌を満喫した。 今回のフォーラムのプログラムはバラエティに富んでおり、充実した会議であった。 多国籍(日本、台湾、韓国、スウェーデンなど)、かつ多領域の学者や専門家162名 の参加を得て、大盛況であった。各領域の研究の交流、国際交流を促進し、また、学 術研究を深め、広めることができ、大成功であった。 フォーラムを無事に開催することができたのは、数多くの団体が協力してくださった おかげである。特筆すべきは、台湾の政府機関・科技部からの助成をいただいたこと で、これは台日の交流においては非常に有意義なことである。公益財団法人交流協会 からも助成をいただき光栄であった。中鹿営造(股)からは今回も多大なるご支援を いただいた。そして、例年どおり、台湾日本人会にご協力いただき、多くの日系企業 (ケミカルグラウト、全日本空輸(ANA)、台湾住友商事、みずほ銀行台北支店な ど)からの協賛をいただいた。学術団体では、台湾大学、台湾日本研究学会などから 経験や資源を提供していただいた。また、財団法人大衆教育基金会、財団法人中日文 教基金会から支援していただき、台湾の公益法人との交流が一歩前進したといえよ う。ご支援、ご協力いただいた台日の各団体に心からの感謝を申し上げたい。 <関連リンク> 梁 蘊嫻「東アジアにおけるトランスナショナルな文化の伝播・交流—文学・思想・ 言語—(その1)」 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/taiwan/_4.php 梁 蘊嫻「東アジアにおけるトランスナショナルな文化の伝播・交流—文学・思想・ 言語—(その2)」 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/news/_4_1.php ----------------------------------- <梁蘊嫻(リョウ・ウンカン)Liang Yun-hsien> 2010年10月東京大学大学院総合文化研究科博士号取得。博士論文のテーマは「江戸文 学における『三国志演義の受容』−義概念及び挿絵の世界を中心に—」である。現 在、元智大学応用外国語学科の助理教授を務めている。 ----------------------------------- 【3】第3回ふくしまスタディツアー「飯舘村、あれから3年」参加者募集 渥美国際交流財団/SGRAでは2012年から毎年、福島第一原発事故の被災地である福島 県飯舘(いいたて)村でのスタディツアーを行ってきました。そのスタディツアーで の体験や考察をもとにしてSGRAワークショップ、SGRAフォーラム、SGRAカフェ、そし てバリ島で開催された「アジア未来会議」でのExhibition & Talk Session 「Fukushima and its aftermath-Lesson from Man-made Disaster」などを開催して きました。今年も10月に3回目の「SGRAふくしまスタディツアー」を行います。お友 達を誘って、ご参加ください。 日程:2014年10月17日(金)、18日(土)、19日(日)2泊3日 参加メンバー:SGRA/ラクーンメンバー、その他 人数: 10〜15人程度 宿泊: ふくしま再生の会-霊山(りょうぜん)センター 参加費: 15,000円(ラクーンメンバーには補助金が出ます) 申込み締切: 9月30日(火) 申込み・問合せ: 渥美国際交流財団 角田(つのだ)          Email:tsunoda@aisf.or.jp Tel: 03-3943-7612 参加募集チラシ http://www.aisf.or.jp/sgra/info/fukushima2014.pdf ************************************************** ● SGRAカレンダー 【1】第3回SGRAふくしまスタディツアー<参加者募集中> 「飯舘村、あれから3年」(2014年10月17日〜19日) http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/33.php 【2】第8回SGRAチャイナフォーラム 「近代日本美術史と近代中国」<ご予定ください> (2014年11月22日北京) 【3】第14回日韓アジア未来フォーラム・第48回SGRAフォーラム 「ダイナミックなアジア経済(仮題)」<ご予定ください> (2015年2月7日東京) ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: sgra-office@aisf.or.jp Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] H. Takahashi “Rethinking about Diversity”

    *************************************************** SGRAかわらばん534号(2014年9月10日) 【1】エッセイ:高橋 甫「多様性についての再考察」 【2】SGRAふくしまスタディツアー参加者募集 【3】TV番組紹介:明石康「私の履歴書」(9月11日放送)   (第2回アジア未来会議が含まれています) *************************************************** 【1】SGRAエッセイ#421 ■ 高橋 甫「多様性についての再考察」 公益財団法人渥美国際交流財団主催の第2回アジア未来会議が8月22日から24日までイ ンドネシアのバリで開催され、日本で学んだ経験を持つ研究者を中心に17か国から 380名が参加し、アジアの未来についての討議がなされた。今回のテーマは「多様性 と調和」で、学際的なアプローチを基本とした会議であることから、グローバル化、 平和、公平、持続可能性、環境、コミュニケーション等に関する多くのセッションに 分かれての幅広い討議となった。私は、本会議の基本テーマを取り扱った「多様性と 調和」に関する3セッションに参加し、また締めくくりのセッションの共同座長を務 めた立場から、会議での研究発表や討議を参考に「多様性」についての再考察を試み ることとした。 多様性の意味を日常的な文脈で考えると、「幅広く性質の異なるものが存在するこ と」ということができよう。この言葉は本来、生物学の分野で使われていたようだ が、今では社会学、政治学、さらには国際関係においても頻繁に使用されている。事 実、多民族国家において「多様性の中の統合」は民族の統合の標語として使われてき ている。今回の会議の舞台となったインドネシアは、約17,000以上の島々から成り 立っており、このうちのおよそ9,000の島々に約2億2千8百万人もの人々が暮らし、約 490の民族集団がそれぞれの多様な民族文化を継承している(インドネシア共和国観 光クリエイティブエコノミー省公式ウエブサイトによる)。 この国が独立国家として誕生した時に各民族の衣装であるバティックが統合の象徴と して重要な役割を果たしたとして、今回の会議ではこのテーマを扱った発表が2つ行 われた。すなわち、インドネシアは、共和国としての独立に当たって、異なる民族文 化に基づき異なるバティックをもつ異なる民族をまとめる一手段として、何れの民族 の文様にも偏らないインドネシアとしての独自の文様のバティックをつくりだし、小 中高校生や公務員の制服に採用したという。このインドネシア・バティックは今やユ ネスコの世界無形文化遺産に認定され、国際社会におけるインドネシアのアイデン ティティの確立に貢献するに至っている。インドネシアの多様性がバティックという 最大公約数により、またどの民族にも偏らない文様の採用という工夫により、とかく 融合が難しいといわれる諸民族がその違いを乗り越えた事例といえよう。「服は民族 のアイデンティティ」という戸津正勝国士舘大学名誉教授による「多民族国家インド ネシアにおける国民文化形成の試み」と題した発表の際の指摘が印象に残った。勿 論、同国の建国の背景には、植民地宗主国の存在という対外的な要因がインドネシア 諸民族の団結を促し、多様性の中の合意形成のむずかしさを克服したという側面も あったことはいうまでもない。 グルーバル化の進展と共に、多様性という言葉も地域的な国家間協力や統合という文 脈でも使われ始めている。事実、今回の会議もアジアの未来を考える上での多様性と 調和が各方面から議論され、今や「多様性の中の統合」(unity in diversity)は、 地域協力や地域統合にとって避けて通れないテーマとなっている。この「多様性の中 の統合」は前例を見ない地域統合の深化を達成してきたEUのモットーであり、その 意味するところは、「ヨーロッパ人は、EUという形態で平和と繁栄のために共生・ 協働し、同時に、自ら持つ多くの異なった文化、伝統、言語によって豊かにされる」 こととEU公式ウェサイトで説明されている。 私が1980年代にブリュッセルを訪問した際に購入したお土産で今なお大事にしている ものに「完璧なヨーロッパ人」と名づけられた一枚の絵葉書がある。この絵葉書は、 ヨーロッパの持つ多様性を当時の15のEU加盟国の国民の性格を揶揄して逆説的に ユーモラスに紹介したものだ。この絵葉書曰く、完璧なヨーロッパ人とは、「フラン ス人の様に車を運転し、ポルトガル人の様に技術に長け、イタリア人の様に自分を律 し、デンマーク人の様に慎重で、ドイツ人の様にユーモアを言い、オーストリア人の 様にオーガナイズされ、フィンランド人の様におしゃべりで、ルクセンブルグ人の様 に有名で、オランダ人の様に気前がよく、英国人の様に料理上手で、ベルギー人に様 に欠勤が少なく、スウェーデン人の様に柔軟で、アイルランド人の様にしらふで、ス ペイン人の様に謙虚な人」のこととある。今や加盟国が28に達し、関税同盟、共通通 商政策、市場統合、共通通貨の導入、共通外交政策を実践しているEUは、政策分野 別ではあるが主権の移譲による形での国家間の連携が可能であることを国際社会に証 明している。 アジアにおいてもASEANという枠組みで市場統合が来年実現されようとしている。 ジャカルタ空港では、EU域内同様、入国審査手続ではASEAN加盟国国民とASEAN域外の 国民との間で異なった取扱がされている事実は、多様性の調和がアジアでも現実化し ていることを如実に示しているといえよう。今回の会議で私が共同座長を担当した セッションでは、アジアの文脈における多様性の中の統合の具体的な意味に関する質 問が投げかけられた。それに対して、質問を受けた発表者からは「それぞれの国の持 つ違いを認め合い、それぞれの国が独自で持つもの以上の価値を生み出すこと」との 説明がなされた。これは、まさしく欧州統合のモットーと相通じるものだ。 第2回アジア未来会議に出席して私自身が遭遇したのが、「異なるから協働できない のか」それとも「異なるからこそ協働するのか」という命題だった。事実、世界の潮 流とは異なり、地域レベルでの協力や連携が最も遅れている北東アジアや東アジアの 場合、「制度的な連携の枠組み作りは無理」との意見が頻繁に聞かれる。そこで、今 回の会議でイタリアと日本の児童書の比較により違いから調和を生み出す試みを紹介 したイタリア・ボローニア大学のマリア・エレナ・ティシ氏のいう「違いという言葉 には文化、言語、宗教といった大きな違いに限らない、小さな違いも大きな原因と成 り得る……違いの克服だけでなく、これらの違いを最大限に活用することも重要だ」 との言葉は多様性を考える上で示唆に富むものだ。 また会議では、「同じ色でも単色より複数の色で合成された色の方がより深みのある 色調を醸し出す」といった指摘もなされた。日本への帰国後、私の友人である音楽家 にアジア未来会議の議論内容を紹介したところ、「音楽の世界では多様性の調和は基 本中の基本です」と一蹴された。 この音楽家曰く、「オーケストラは異なった楽器 の調和の集大性」とのこと。 ただし、この音楽家は「それには素晴らしいリーダー としての指揮者の存在が絶対要件」との指摘も忘れなかった。 多様性を国際的文脈 で再考する上でこれまた気になる指摘である。多様性の持つ多用性あるいは他用性と いったところであろうか。 そして、多様性をアジアという地域的文脈で論じる場合、私は地理的近隣性という側 面への配慮も重要であることを敢えて強調したい。隣国あるいは近隣国であるがゆえ に避けて通れない関係がそこには否定し得ない事実として存在している。多様性を論 じるに際には、隣国との関係を積極的に捉えるのかそれとも消極的に捉えるかという 姿勢の視点も重要な意味を持つように思えてならない。 第2回アジア未来会議は、多様性とは何かを再考察させるとともに、北東アジアの文 脈では関係国の国内政治要因が、また東アジアの文脈では一部の国家間の主導権争い が、地域的な連携の制度的枠組作りの障害となっていると再度認識した機会ともなっ た。 ---------------------- <高橋甫(たかはし・はじめ)Hajime Takahashi>  SGRA参与、公益財団法人日本テニス協会常務理事 1947年生れ、東京出身。1970年:慶応義塾大学法学部法律学科卒業。1975年:オース トラリア・シドニー大学法学部修士。1975年〜2009年:駐日EU代表部勤務、調査役と して経済、通商、政治等を担当。2007年〜2012年:慶應義塾大学法学部非常勤講師 (国際法)。2013年1月よりEUに関するコンサルタント会社であるEUTOP社(本社ミュ ンヘン)の東京上席顧問。これまでにEU労働法、EU共通外交安全保障政策、EU地域統 合の変遷と手法に関して著述。 ---------------------- 【2】第3回ふくしまスタディツアー「飯舘村、あれから3年」参加者募集 渥美国際交流財団/SGRAでは2012年から毎年、福島第一原発事故の被災地である福島 県飯舘(いいたて)村でのスタディツアーを行ってきました。そのスタディツアーで の体験や考察をもとにしてSGRAワークショップ、SGRAフォーラム、SGRAカフェ、そし てバリ島で開催された「アジア未来会議」でのExhibition & Talk Session “Fukushima and its aftermath-Lesson from Man-made Disaster”などを開催して きました。今年も10月に3回目の「SGRAふくしまスタディツアー」を行います。お友 達を誘って、ご参加ください。 日程:2014年10月17日(金)、18日(土)、19日(日)2泊3日 参加メンバー:SGRA/ラクーンメンバー、その他 人数: 10〜15人程度 宿泊: ふくしま再生の会-霊山(りょうぜん)トレーニングセンター 参加費: 15,000円(ラクーンメンバーには補助金が出ます) 申込み締切: 9月30日(火) 申込み・問合せ: 渥美国際交流財団 角田(つのだ)          Email:tsunoda@aisf.or.jp Tel: 03-3943-7612 ---------------------- 【3】TV番組紹介:明石康「私の履歴書」(9月11日10:54pm放送) アジア未来会議の会長を務めていただいている元国連事務次官の明石康様の「私の履 歴書」TV版で、バリ島で開催したアジア未来会議の様子が、BSジャパン(BSデジタル7 チャンネル)で9月11日(木)10:54pm〜11:24pmに放映されます。明石さんから見た アジア未来会議という紹介になっているとのことです。 バリ島で開催したアジア未来会議の様子と大会会長の明石様のご活躍を是非ご覧くだ さい。 明石康様の「私の履歴書」第4回のホームページ: http://www.bs-j.co.jp/rirekisyo/19.html 第4話(9月11日(木)10:54pm放送) BSジャパン(BSデジタル7チャンネル) ■「日本の新たな役割とは?」 1997年、66歳で国連を退官した明石は翌年の4月から、広島平和研究所の所長に就 任。核軍縮・核の不拡散を訴える。 2002年には長い内戦の末、停戦合意が成立した スリランカ政府から依頼を受け、日本政府代表として国連時代の経験を活かし、 和平交渉のアドバイスを行う。 さらに、貧困に苦しむスリランカ国民のため、スリ ランカ復興開発会議を開催。 世界51か国と22の国際機関が参加し、およそ4500億円 もの巨額の援助が集まる。 また明石の発案で2010年から始まった日本・中国・韓国 の国連協会が連携して、三か国の学生が国籍を超え、どのように協力し合う事ができ るか議論する日中韓ユースフォーラムでの取り組み、そして日本で学んだアジア各国 の研究者が集まり、アジアの未来について話し合うアジア未来会議の会長を務めるな ど、国際社会の中での日本の役割を考え続ける。 ************************************************** ● SGRAカレンダー 【1】第3回SGRAふくしまスタディツアー<参加者募集中> 「飯舘村、あれから3年」(2014年10月17日〜19日) http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/33.php 【2】第8回SGRAチャイナフォーラム 「近代日本美術史と近代中国」<ご予定ください> (2014年11月22日北京) 【3】第14回日韓アジア未来フォーラム・第48回SGRAフォーラム 「ダイナミックなアジア経済(仮題)」<ご予定ください> (2015年2月7日東京) ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: sgra-office@aisf.or.jp Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] The Second Asia Future Conference Report

    ********************************************* SGRAかわらばん533号(2014年9月3日) ********************************************* ■ 第2回アジア未来会議「多様性と調和」報告 2014年8月22日(金)〜8月24日(日)、インドネシアのバリ島にて、第2回アジア未 来会議が、17か国から380名の登録参加者を得て開催されました。総合テーマは「多 様性と調和」。このテーマのもと、自然科学、社会科学、人文科学各分野のフォーラ ムが開催され、また、多くの研究論文の発表が行われ、国際的かつ学際的な議論が繰 り広げられました。 アジア未来会議は、日本留学経験者や日本に関心のある若手・中堅の研究者が一堂に 集まり、アジアの未来について語り合う場を提供することを目的としています。 8月22日(金)、バリ島サヌールのイナ・グランド・バリ・ビーチホテルの大会議場 の前室には、午後のフォーラムで講演する戸津正勝先生(国士舘大学名誉教授)のコ レクションから70点のバティック(インドネシアの伝統的なろうけつ染)、島田文雄 先生(東京藝術大学)他による20点の染付陶器、そしてバロン(バリ島獅子舞の獅 子)が展示され、会場が彩られました。 午前10時、開会式は4人の女性ダンサーによる華やかなバリの歓迎の踊りで始まり、 明石康大会会長の開会宣言の後、バリ州副知事から歓迎の挨拶、鹿取克章在インドネ シア日本大使から祝辞をいただきました。 引き続き、午前11時から、シンガポールのビラハリ・コーシカン無任所大使(元シン ガポール外務次官)による「多様性と調和:グローバル構造変革期のASEANと東アジ ア」という基調講演がありました。「世界は大きな転換期を経験している。近代の国 際システムは西欧によって形作られたが、この時代は終わろうとしている。誰にも未 来は分らないし、何が西欧が支配したシステムに取って代わるのか分からない。」と 始まった講演は、ほとんどがアジアの国からの参加者にとって大変示唆に富むもので した。 基調講演の後、奈良県宇陀郡曽爾村から招待した獅子舞の小演目が披露されました。 その後、参加者はビーチを見渡すテラスで昼食をとり、午後2時から、招待講師によ る3つのフォーラムが開催されました。 ○ 社会科学フォーラム「中国台頭時代の東アジアの新秩序」では、中国、日本、台 湾、韓国、フィリピン、ベトナム、タイ、インドネシアの研究者が、中国の台頭がそ れぞれの国にどのように影響を及ぼしているか発表し、活発な議論を呼び起こしまし た。 ○ 人文科学フォーラム「アジアを繋ぐアート」では、日本の獅子舞とバリ島のバロ ンダンス、日本と中国を中心とした東アジアの陶磁器の技術、そしてインドネシアの 服飾(バティック)を題材に、アジアに共通する基層文化とその現代的意義を考察し ました。 ○ 自然科学フォーラム「環境リモートセンシング」は、第2回リモートセンシング用 マイクロ衛星学会(SOMIRES 20)と同時開催で、アメリカ、インドネシア、マレーシ ア、台湾、韓国、日本からの研究者による報告が行われました。 フォーラムの講演一覧は下記リンクよりご覧いただけます。 www.aisf.or.jp/AFC/wp-content/uploads/2014/08/speeches.pdf 午後6時からビーチに続くホテルの庭で開催された歓迎パーティーでは、夕食の後、 今回の目玉イベントである日本の獅子舞とバリ島のバロンダンスの画期的な競演が実 現し、400名の参加者を魅了しました。 8月23日(土)、参加者は全員、ウダヤナ大学に移動し、41の分科会セッションに分 かれて178本の論文が発表されました。アジア未来会議は国際的かつ学際的なアプ ローチを目指しているので、各セッションは、発表者が投稿時に選んだサブテーマに 基づいて調整され、必ずしも専門分野の集まりではありません。学術学会とは違っ た、多角的かつ活発な議論が展開されました。 各セッションでは、2名の座長の推薦により優秀発表賞が選ばれました。優秀発表賞 の受賞者リストは下記リンクよりご覧いただけます。 www.aisf.or.jp/AFC/2014/files/2014/08/AFC2014Bali_BestPresentation.pdf また、11本のポスターが掲示され、AFC学術委員会により3本の優秀ポスター賞が決定 しました。優秀ポスター賞の受賞者リストは下記リンクよりご覧いただけます。 www.aisf.or.jp/AFC/2014/files/2014/08/AFC2014Bali_BestPoster.pdf さらに、アジア未来会議では投稿された各分野の学術論文の中から優秀論文を選考し て表彰します。優秀論文の審査・選考は会議開催に先立って行われ、2014年2月28日 までに投稿された71本のフルペーパーが、延べ42名の審査員によって審査されまし た。査読者は、(1)論文のテーマが会議のテーマ「多様性と調和」と合っているか、 (2)論旨に説得力があるか、(3) 従来の説の受け売りではなく、独自の新しいものが あるか、(4) 学際的かつ国際的なアプローチがあるか、という基準に基づき、9〜10 本の査読論文から2本を推薦しました。集計の結果、2人以上の審査員から推薦を受け た18本を優秀論文と決定しました。優秀論文リストは下記リンクからご覧いただけま す。 http://www.aisf.or.jp/AFC/2014/files/2014/09/AFC2014Bali_BestPapers.pdf 41分科会セッションと並行して、3つの特別セッションが開催されました。 ○ 円卓会議「これからの日本研究:東アジア学術共同体の夢に向かって」は、東京 倶楽部の助成を受けて中国を中心に台湾や韓国の日本研究者を招待し、各国における 日本研究の現状を確認した後、これから日本研究をどのように進めるべきかを検討し ました。 ○ CFHRSセミナー「ダイナミックな東アジアの未来のための韓国の先導的役割」は、 韓国未来人力研究院が主催し、講義と学部生による研究発表が行われました。 ○ SGRAカフェ「フクシマとその後:人災からの教訓」では、SGRAスタディツアーの 参加者が撮影した写真展示及びドキュメンタリフィルムの上映と、談話セッションを 行いました。 午後5時半にセッションが終了すると、参加者は全員バスでレストラン「香港ガーデ ン」に移動し、フェアウェルパーティーが開催されました。今西淳子AFC実行委員長 の会議報告のあと、ケトゥ・スアスティカ ウダヤナ大学長による乾杯、2名の日本人 舞踏家によるジャワのダンス、優秀賞の授賞式が行われました。授賞式では、優秀論 文の著者18名が壇上に上がり、明石康大会委員長から賞状が授与されました。優秀発 表賞41名と、優秀ポスター賞3名には、渥美伊都子渥美財団理事長が賞状を授与しま した。最後に、北九州市立大学の漆原朗子副学長より、第3回アジア未来会議の発表 がありました。 8月24日(日)参加者は、それぞれ、世界文化遺産ジャティルイの棚田観光、ウブド での観光と買い物、ウルワツ寺院でのケチャックダンスとシーフードディナー、など を楽しみました。 第2 回アジア未来会議「多様性と調和」は、渥美国際交流財団(関口グローバル研究 会(SGRA))主催、ウダヤナ大学(Post Graduate Program)共催で、文部科学省、 在インドネシア日本大使館、東アジアASEAN経済研究センター(ERIA)の後援、韓国 未来人力研究院、世界平和研究所、JAFSA、Global Voices from Japanの協力、国際 交流基金アジアセンター、東芝国際交流財団、東京倶楽部からの助成、ガルーダ・イ ンドネシア航空、東京海上インドネシア、インドネシア三菱商事、Airmas Asri、 Hermitage、Taiyo Sinar、ISS、Securindo Packatama、大和証券、中外製薬、コク ヨ、伊藤園、鹿島建設からの協賛をいただきました。とりわけ、鹿島現地法人のみな さんからは全面的なサポートをいただき、華やかな会議にすることができました。 運営にあたっては、元渥美奨学生を中心に実行委員会、学術委員会が組織され、SGRA 運営委員も加わって、フォーラムの企画から、ホームページの維持管理、優秀賞の選 考、当日の受付まであらゆる業務をお手伝いいただきました。また、招待講師を含む 延べ82名の方に多様性に富んだセッションの座長をご快諾いただきました。 400名を超える参加者のみなさん、開催のためにご支援くださったみなさん、さまざ まな面でボランティアでご協力くださったみなさんのおかげで、第2回アジア未来会 議を成功裡に実施することができましたことを、心より感謝申し上げます。 アジア未来会議は2013年から始めた新しいプロジェクトで、10年間で5回の開催をめ ざしています。第3回アジア未来会議は、2016年9月29日から10月3日まで、北九州市 で開催します。 皆様のご支援、ご協力、そして何よりもご参加をお待ちしています。 <関連資料> 第2回アジア未来会議写真 www.aisf.or.jp/sgra/photos/index.php?spgmGal=The_2nd_Asia_Future_Conference 第2回アジア未来会議新聞記事(ジャカルタ新聞) www.aisf.or.jp/AFC/wp-content/uploads/2014/08/JakartaShinbun.pdf 第2回アジア未来会議和文報告書(写真付き) www.aisf.or.jp/AFC/wp-content/uploads/2014/08/houkoku.pdf Asia Future Conference #2 Report (in English) with photos(英文報告書) www.aisf.or.jp/AFC/wp-content/uploads/2014/08/Report.pdf 第3回アジア未来会議チラシ www.aisf.or.jp/AFC/wp-content/uploads/2014/08/AFC2016Kitakyushu_flyer.pdf (文責:SGRA代表 今西淳子) ************************************************** ● SGRAカレンダー 【1】第3回SGRAふくしまスタディツアー<参加者募集中> 「飯舘村、あれから3年」(2014年10月17日〜19日) http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/33.php 【2】第8回SGRAチャイナフォーラム 「近代日本美術史と近代中国」<ご予定ください> (2014年11月22日北京) 【3】第14回日韓アジア未来フォーラム・第48回SGRAフォーラム 「ダイナミックなアジア経済(仮題)」<ご予定ください> (2015年2月7日東京) ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: sgra-office@aisf.or.jp Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] Xie Zhihai “University Reform in Japan — Do it Now!”

    **************************************************** SGRAかわらばん531号(2014年8月27日) 【1】エッセイ:謝 志海「日本の大学改革、今でしょ!」 【2】インタビュー記事紹介(毎日新聞オピニオン):     今西淳子「平和国家の歩み、誇りに」 **************************************************** 【1】SGRAエッセイ#420 ■ 謝 志海「日本の大学改革、今でしょ!」 今年に入ってからずっと、理化学研究所の女性研究員の新細胞発表に関連するニュー スが世間を騒がせている。その女性が2011年に早稲田大学に提出した博士論文につい て、早稲田大学が設置した調査委員会は先日、博士号の取り消しには当たらないと結 論を出した。この結論の非常に興味深い所は「著作権侵害行為であり、かつ創作者誤 認惹起行為といえる箇所」が11カ所もあるとした上で、博士号を認めたことである。 これは早稲田大学の最終の結論ではないし、このエッセイではこれ以上女性研究員の ことを議論しないが、日本の大学の存在意義とは何だろう?日本の大学の目指すのは どこなのだろう?と考えずにはいられない。 現在、日本の大学が力を入れているのは、世界の大学ランキングのランクを上げるこ とと、グローバル人材を育成することであろう。この2つは実は同じゴールを目指し ている:大学がグローバル化すれば、大学のランクも上がると。このような大学の改 革を日本政府が一生懸命後押ししている。文部科学省は大学をグローバル人材の育成 機関にしようと「スーパーグローバル大学創設支援」を今年度からスタートし、すで に国公立私立大学から104校の応募があり、現在選考中である。こういった大学のグ ローバル化の波が押し寄せているからか、日本の雑誌はこぞって世界の大学ランキン グとその中での日本の大学の位置を特集する。去年あたりから、本屋に行けば毎月ど こかしらの雑誌が取り上げているのではないか。 世界の大学を格付けするランキングセンターはいくつかあり、評価する基準も微妙に 違うので、ランクインする大学、順位もまちまちだが、それでも共通するのは、トッ プテンは米国と英国の大学が独占している。アメリカのアイビーリーグ、英国のオッ クスフォードとケンブリッジ大学がほぼ常にトップ10にいて、だいぶ間が空いてアジ アのトップとして、東京大学、近年はそこにシンガポール国立大学、香港大学が追い 上げ、その少し後に韓国のトップスクールや中国の北京大学、日本の京都大学と有名 私立大学がひしめき合っているという様相だ。英語圏の大学は長年お決まりのよう に、トップにランクインし、アジア勢が毎年のランキングを意識し、必死で追い上げ ている。この構図は当分の間変わらないのではないかと、上述の早稲田大学の博士論 文についての調査結果で、考えさせられてしまう。 大学の評価の一つに、英語の論文数がある。大学の総合ランキングの主流とされる英 教育専門誌「THE (Times Higher Education) 世界大学ランキング」、英大学評価機 関の「QS世界大学ランキング」、上海交通大学の「世界大学学術ランキング(ARWU)」 などは判断基準に入れている。同様に論文の引用された数もカウントされている。と いうことは、論文の質も問われるのであろう(この見解には賛否両論あるとも言われ ている)。日本の大学はこの論文に対しての認識が少々甘いのではないだろうか?す でに他人が書いた本やジャーナルの文章の一部を自分の論文で自分の意見のように語 る事は許されない、それは盗用である。しかし自分の論文に他人の文章を載せて、誰 がどこで(本やジャーナル等のメディア)掲載していたかという出所をはっきり明示す れば、それを引用と言う。このような当たり前の事を日本の大学生はいつ学んでいる のだろう? 例えばアメリカの大学では、どんなに小さな論文の宿題でも盗用(plagiarism)は認め られない。それだけではない、書き方のフォーマットもきちんと決まっていて、引用 した場合は出典を必ず論文の最後に記載する、その明示の仕方(引用文の作者、本や 雑誌のタイトル、出版(掲載)された日付等の記載の順番)までもきちんとルールがあ る。大半の先生はこの論文のフォーマットが綺麗に仕上がっていないと、論文を読ん でもくれない。つまりグレードをつけてもらえないのだ。こういった細かいルール を、アメリカの学生は大学に入学して最初に履修する一般教養から厳しく指導され る。どのクラスを履修しても一度や二度は必ず、論文のフォーマットについてだけの 授業の日を設けてくれる。シラバス(授業計画書)にも、必ず「盗用」のセクションが あり、盗用を見つけた時点で単位は認めないなどの厳しい注意書きがある。なので、 生徒の方も論文を書くにあたっての一般的なルールだけでなく、先生が決めたルール にも敏感なのだ。博士論文で引用文の出所の明示を忘れましたというのが通用するわ けがない。というか、博士課程の頃には、論文のフォーマットに関してはプロになっ ていると言っても過言ではない。そもそも学部・大学院を問わず、宿題やテストは何 かにつけて書かせる課題が多いからだ。これがアメリカの大学は、入学は簡単だが卒 業するのは難しいと言われる所以かもしれない。 一方、日本の大学は、入学試験は難しいが卒業するのは簡単と言われている。論文の 書き方について明確なガイドラインが無いのであれば、気楽なものであろう。コピペ (コピー&ペースト)も罪悪感無くやってしまうのかもしれない。大学側がきちんと生 徒を指導しなければ、生徒に責任を問うことも出来ない。しかも独創性の無い論文が 手元に残ってしまったら、生徒にとっても学生時代の時間が無駄になる。特に博士論 文は一生ついて回るのだ。大学としても、いい論文の数が減ってしまう。すなわちラ ンキングに影響が出るのではないか? 日本の大学は今が改革の一番のチャンスかもしれないと、今回の早稲田大学の博士論 文をめぐる調査委員会は教えてくれる。今後始まる「スーパーグローバル大学創設支 援」を上手に利用すれば、英語圏や英語環境で経験を積んだ教授を招き、海外のスタ ンダードで授業を進めてもらうことが可能だ。世界の大学ランキングには「外国人教 員の比率」もある。そこでのポイントを単に外国人教員の数を増やして稼ぐだけでな く、真にグローバルな人材を育成出来る教授を雇うべきだ。そうすれば、質の高い論 文を出すことも出来るだろう。日本そしてアジアの大学が世界のトップ大学と肩を並 べて戦えるようになるには、ランキングの基準を意識してポイントを稼ぐだけではい けない。大学を卒業する頃には学生ひとりひとりが規律性を持ち、異文化を理解し て、多様性のある環境に溶け込める、そのような強い人材を育ててほしい。 -------------------------------------------- <謝 志海(しゃ しかい)Xie Zhihai> 共愛学園前橋国際大学専任講師。北京大学と早稲田大学のダブル・ディグリープログ ラムで2007年10月来日。2010年9月に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期 課程単位取得退学、2011年7月に北京大学の博士号(国際関係論)取得。日本国際交 流基金研究フェロー、アジア開発銀行研究所リサーチ・アソシエイトを経て、2013年 4月より現職。ジャパンタイムズ、朝日新聞AJWフォーラムにも論説が掲載されてい る。 -------------------------------------------- 【2】インタビュー記事紹介 8月22日(金)の毎日新聞オピニオン「論点」に掲載された、今西淳子SGRA代表の記 事をご紹介します。 ■ 今西淳子「平和国家の歩み、誇りに」 渥美国際交流財団は鹿島建設の名誉会長だった父の遺志を継いだ家族が1994年に 設立し、知日派外国人研究者のネットワークの構築を目標に、日本の大学院で博士論 文を書いている外国人留学生を対象に奨学支援をしている。今では研究ネットワーク となり、元奨学生たちが中心となって東京、北京、ソウル、マニラ、台北でフォーラ ムやシンポジウムを開催している。20年間の留学生との交流を振り返ると、かつて 戦争した国同士でも、冷静に歴史を話し合うことはそれほど困難なことではない。一 方、アジアでは旧日本軍の記憶が家族で語り継がれていることも忘れてはならない。 それぞれの国にはそれぞれの歴史があり、どの国の教科書を見ても自国中心志向が強 い。であるからこそ、歴史認識を巡る議論では、(1)白黒をつけずに複雑な状況を そのまま受け止め、譲りあえるところを粘り強く探す(2)自国の名誉や責任を負う ことなく、一人の人間として相手の立場でも考え、複眼的に物事をとらえる(3)急 がなくてもよいが問題を避けない??の三つのポイントが重要だ。 続きは下記URLからご覧ください。 http://mainichi.jp/opinion/experts/ ⇒論点:戦後70年を前に/下 戦争責任に向き合う (無料購読の登録が必要です) 切り抜きは下記よりご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/info/mainichi_opinion.pdf ************************************************** ● SGRAカレンダー 【1】第2回アジア未来会議 だいせ 「多様性と調和」(2014年8月22日インドネシアバリ島) http://www.aisf.or.jp/AFC/2014/ ★☆★無事終了。ご参加、ご協力、ご支援、ありがとうございました。 【2】第8回SGRAチャイナフォーラム 「近代日本美術史と近代中国」<ご予定ください> (2014年11月22日北京) 【3】第14回日韓アジア未来フォーラム・第48回SGRAフォーラム 「ダイナミックなアジア経済(仮題)」<ご予定ください> (2015年2月7日東京) ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: sgra-office@aisf.or.jp Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] Sim Choon Kiat “Amazing Japan Part 14: So

    ********************************************************** SGRAかわらばん530号(2014年8月20日) 【1】エッセイ:シム「だからやはり女子大はまだ必要?」 【2】第4回日台アジア未来フォーラム報告(その2) 「東アジアにおけるトランスナショナルな文化の伝播・交流」 ********************************************************** 【1】SGRAエッセイ# 419 ■シム チュン・キャット「日本に「へえ〜」その14:だからやはり女子大はまだ必 要?」 女子大勤めの僕が言うのもなんですが、いま日本では女子大が人気です。高い就職率 に加え、きめの細かい指導を可能にする少人数制の授業展開が学生に付加価値を与 え、高度な人材育成につながると考えられているからなのでしょう。しかし目を海外 に転じてみると、ほとんどの国・地域では女子大は斜陽状態になっているか、もう (あるいは最初から)存在しないか、のどちらかです。例えば、女子大学連合 Woman’s College Coalitionのデータによれば、北米では60年代には約230校もあっ た女子大が2014年現在になると47校まで激減してしまい、かの有名なセブンシスター ズも2校の共学化に伴いファイブシスターズになってしまいました。イギリスでも現 存する女子大はケンブリッジ大学内の3校の女子カレッジのみとなり、巨大な中国で さえ女子大は伝統を受け継ぐ形で3校しかなく、教育の面で日本の影響を強く受けて きた台湾ですら最後まで生き残ったラスト女子大が2008年に男女共学の道を選びまし た。一方、日本ではいまでも大学総数の約1割を女子大が占めているのです。 僕の国シンガポールもそうですが、性別による発達の違いと特性に応じた男女別学が 小・中・高校段階においてこそ認められるものの、「男女平等」という大原則の下で 大学レベルでは男女共学が基本という国がほとんどです。日本以外に、女子大が未だ に健在ぶりを力強く見せている国と地域は、おそらく世界最大規模の女子大である梨 花女子大学校を有する韓国とイスラム圏の数ヶ国ぐらいだけでしょう。さてと、日 本、韓国とイスラム圏の国々の共通点といえば? 「早く結婚した方がいい」「自分が産んでから」「がんばれよ」「動揺しちゃった じゃねえか」などのヤジ(接頭語の「お」をつけて「オヤジ」と言ったほうがいいか もしれません)が、あろうことか6年後に世界最大のスポーツ祭典の開催都市の都議 会で飛ばされたことはまだ記憶に新しいですね。しかも、結局名乗り出た都議のホー ムページには「世界に誇れる国際都市東京を目指して」とあるそうですから、笑えた ものではありません、はい。かつても「女性が生殖能力を失っても生きているっての は無駄で罪です」「(ある集団レイプ事件について)元気があるからいい」「女性は 産む機械」「43歳で結婚してちゃんと子供は2人産みましたから、一応最低限の義務 は果たしたかもしれませんよ」など、政治家によるもっとひどい女性蔑視発言があっ たこの日本のことですから、どんな「オヤジ」でも今さら驚くことでもないかもしれ ません。何かの雑誌で読んだのですが、「美しい国」は逆さまに読むと「憎いし苦 痛」になりますからね。 それにしても、今回の「オヤジ」騒動で注目され、海外でもちょっとした有名人に なった都議の「若さ」には驚きました。日本の政界においてはまだ若いともいえる50 代前半のこのオヤジがあんな女性蔑視意識を持っていたとはびっくりです。やはり差 別意識は伝染し、世代から世代へと再生産されていくものです。まるで風呂場にこび りつくカビのように、何回苦労して落としても根っこが残り、直にまたどこかからポ ンと生えてきてしまうのですね。根本的な解決方法としては、まず風呂場の中の湿気 を取り除くしかありません。つまり、しつこいカビを二度と生やさないためには、ま ず環境改造を徹底的に行うことが必要不可欠なのです。 男女平等や女性の社会進出度に関するあらゆる国際比較ランキングでは、日本(そし て韓国も)が先進国とは思えないぐらい非常に低い順位にランクされ続けてきたこと は周知の通りです。それを改善するには、男性の意識だけでなく、女性の意識に対し ても改革を進めなければ何も変わっていきません。特に後者に関しては、男子のいな い環境で女子がリーダー役を担うしかなく、さらに共学大学よりロールモデルになる 女性学長・学部長・学科長・教授がはるかに多数いる、という女子大の存在がとりわ け重要だと思いませんか。女子大イコール良妻賢母を養成する大学というのは、もう 博物館級の古い認識です。イギリス初の女性首相マーガレット・サッチャー氏、イン ド初の女性首相インディラ・ガンディー氏、イスラム圏初の女性リーダーであるパキ スタン元首相ベナジル・ブット氏、2年後にはアメリカ初の女性大統領になるかもし れない(?)ヒラリー・クリトン氏、女性として世界で初めてエベレストと七大陸最 高峰を制覇した田部井淳子氏、そして本渥美国際交流財団の渥美伊都子理事長、が全 員女子大の卒業生であることは偶然ではあるまい。 もちろん、女性リーダーを育てるということは、何も女性が社会に出たときに男性の ようにバリバリ働くのではなく、「ゲームのルール」と土俵を変えることによって意 識改革、環境改造を進め、社会、ひいては世界をより良い方向に導いてほしいという 願いが込められているのです。このミッションが僕にあるからこそ、いま燃えるよう な大学教員生活を送っているわけです。その燃え方についての詳細は明日からバリ島 で行われる第2回アジア未来会議で発表するので、ご興味のある方はぜひ来場して僕 と意見・議論を交わしてください。さあ、いざ、バリ島へ! ------------------------------- <シム チュン キャット☆ Sim Choon Kiat☆ 沈 俊傑> シンガポール教育省・技術教育局の政策企画官などを経て、2008年東京大学教育学研 究科博士課程修了、博士号(教育学)を取得。昭和女子大学人間社会学部・現代教養 学科准教授。SGRA研究員。著作に、「リーディングス・日本の教育と社会−−第2 巻・学歴社会と受験競争」(本田由紀・平沢和司編)『高校教育における日本とシン ガポールのメリトクラシー』第18章(日本図書センター)2007年、「選抜度の低い学 校が果たす教育的・社会的機能と役割」(東洋館出版社)2009年。 -------------------------------- 【2】第4回日台アジア未来フォーラム報告(その2) ■ 梁 蘊嫻「東アジアにおけるトランスナショナルな文化の伝播・交流—文学・思 想・言語—(その2)」 午後の研究発表は、「古典書籍としてのメディア」「メディアによる女性の表象」 「メディアと言語学習」「メディアとイメージの形成」「文学作品としてのメディ ア」「メディアによる文化の伝播」という6つのセッションで行われた。 フォーラムに先立ち、世界中の研究者や専門家を対象に論文を公募した。応募数は予 想より多く、大変な盛況であった。国籍から見ても、台湾、日本、韓国、スウェーデ ンなどがあって、まさにグローバルな会合であった。発表題目も古典研究から近現代 研究まで、そしてオーソドックスな研究から実験的な研究までさまざまである。紙幅 の都合上、すべての発表は紹介することができないが、いくつか例を挙げておこう。 (1)「日本古典籍のトランスナショナル—国立台湾大学図書館特蔵組の試み—」(亀 井森・鹿児島大学准教授)は、地道な書誌調査で、デジタルでの越境ではなく古典籍 のトランスナショナルという観点から文化の交流を考える。(2)「草双紙を通って 大衆化する異文化のエキゾチシズム」(康志賢・韓国全南大学校教授)は、草双紙を 通して、江戸時代の異文化交流の実態を究明する。(3)「なぜ傷ついた日本人は北 へ向かうのか?−メディアが形成した東北日本のイメージと東日本大震災−」(山本 陽史・山形大学教授)は、日本文化における東北地方のイメージの形成と変容を和 歌・俳諧・小説・流行歌・映画・演劇・テレビなどの文学・芸術作品を題材にしつ つ、東日本大震災を経験した現在、メディアが越境することによっていかに変化して いくのかを研究する。(4)「発信する崔承喜の「舞踊写真」、越境する日本帝国文 化—戦前における崔承喜の「舞踊写真」を手がかりに—」(李賢晙・小樽商科大学准 教授)は、崔承喜の舞踊写真が帝国文化を宣伝するものであると提示し、またこれら の写真の持つ意味合いを追究する。(5)「The Documentary film in Imperial Japan, before the 1937 China Incident」(ノルドストロム・ヨハン・早稲田大学 博士課程)は、日中戦争期、ドキュメンタリー映画がいかにプロパガンダの材料とし て使われていたかを論じる。(7)「Ex-formation Seoul Tokyoにおける日韓の都市 表現分析」(朴炫貞・映像作家)は、情報を伝えるinformationに対して、 Ex-formationという概念を提出したデザイン教育論である。ソウルの学生はソウル を、東京の学生は東京をエクスフォメーションすることで、見慣れている自分が住む 都市を改めてみることを試みた。(8)「溝口健二『雨月物語』と上田秋成『雨月物 語』の比較研究」(梁蘊嫻・元智大学助理教授)は、映画と文学のはざまを論じる。 (9)「漢字字形の知識と選択-台湾日本語学習者の場合—」(高田智和氏・日本国立 国語研究所准教授)及び「漢字メディアと日本語学習」(林立萍氏・台湾大学准教 授)は、東アジアに共通した漢字学習の問題を取り上げる。(10)「日本映画の台湾 輸出の実態と双方の交流活動について」(蔡宜靜・康寧大学准教授)は、日本と台湾 の交流に着目する。 発表題目は以上のとおり、実にバラエティに富んでいた。それだけでなく、コメン テーターもさまざまな分野の専門家、たとえば、日本語文学文化専攻、建築学、政治 思想学などの研究者が勢揃いした。各領域の専門家が活発に意見を交換し、実に学際 的な会議であった。今回、従来の日本語文学会研究分野の枠組みを破って、メディア という共通テーマによって各分野の研究を繋げることができたのは、画期的な成果で あるといえよう。 研究発表会の後、フォーラムの締めくくりとして座談会が行われた。今西淳子常務理 事が座長を務め、講演者の3名の先生方(延広真治先生、横山詔一先生、佐藤卓己先 生)と台湾大学の3名の先生方(陳明姿先生、徐興慶先生、辻本雅史先生)がパネリ ストとして出席した。 まず、今西理事が、フォーラムの全体について総括的なコメントをし、そして基調講 演について感想を述べた。延広先生の講演については、寅さんが大好きな韓国人奨学 生のエピソードを例に挙げながら、「男はつらいよ」にトランスナショナルな魅力が あるのは、歴史のバックグランドや深さがあるからだと感想を述べた。また、横山詔 一先生の講演については、今後、日本人や台湾人における異体字の好みをデーター処 理していけば、面白い問題を発見できるかもしれないとコメントした。そして、佐藤 卓己先生の講演については、ラジオの普及がきっかけで、「輿論」と「世論」の意味 は変わっていったが、インターネットがますます発達した今日における「輿論」と 「世論」の行方を観察していきたいと話した。 質疑応答の時間に、フロアから、中央研究員の副研究員・林泉忠氏から、「東アジア におけるトランスナショナルな文化の伝播・交流」というフォーラムを台湾で開催す るに当たって、台湾の役割とは何か、という鋭い質問があった。この質問はより議論 を活発にした。 台湾大学の辻本雅史先生は準備委員会の立場から、フォーラムの趣旨について語っ た。「メディア」を主題にすれば、いろいろな研究をフォローできるからこのテーマ を薦めたという企画当初の状況を話した。しかしその一方、果たして発表者が全体の テーマをどれだけ意識してくれるのかと心配していたことも打明けた。結果的には、 発表者が皆「メディア」を取り入れていることから、既存の学問領域、すなわち大学 の学科に分類されるような枠を超えて、横断的に議論する場が徐々に作られていった ことを実感したと述べた。最後に、林泉忠氏の質問に対しては、台湾はあらゆる近代 史の問題にかかわっているため、「トランスナショナルな文化の伝播・交流」を考え るのに、絶好の位置にあると説明し、知を伝達する一つの拠点として、「メディアと しての台湾」というテーマは成り立つのではないかと先見の目も持って提案した。 陳明姿先生は、いかに異なった分野の研究者を集め、有効的に交流させるか、という のがこのフォーラムの目的であり、また、それによって、台湾の研究者と大学院生た ちに新たな刺激を与えることが、台湾でシンポジウムを開催する意義になると指摘し た。 「台湾ならでは」について、今西理事も、台湾の特徴といえば、まず日本語能力に感 心する。これだけの規模のシンポジウムを日本語でできるというのは、台湾以外はな い。日本はもっと台湾を大事にしなければならない。また、SGRAは学際的な研究を目 指しているが、それを実現するのは非常に難しい。しかし、台湾大学の先生方はいつ も一緒に真剣に考えてくださる。こうして応えてくださるというダイナミズムがまた 台湾らしい、との感想を述べた。 最後に、徐興慶先生がこれまでの議論を次のように総括した。①若手研究者の育成立 場から、19本の発表の中に院生の発表が4本あったというのは嬉しい。②20年間で241 名の奨学生を育てた渥美財団は非常に先見の明がある。育成した奨学生たちの力添え があったからこそ、去年タイのバンコクで開かれたアジア未来会議のような大規模の 海外会合を開催することができた。また、若い研究者の課題を未来という大きなテー マで結び付けた渥美財団のネットワークができつつあることに感銘を受けている。③ 学際的な研究を推進する渥美財団の方針に同感であり、台湾大学でも人文科学と社会 科学との対話を進めている。④この十数年間、台湾の特色ある日本研究を模索しなが ら考えてきたが、その成果として、これまで計14冊の『日本学叢書』を出版すること ができた。台湾でしか取り上げられない課題があるが、台湾はそういう議論の場を提 供する役割がある。徐先生は、台湾の日本学研究への強い使命感を示して、座談会を 締めくくった。 同日夜、台湾大学の近くにあるレストラン水源会館で懇親会が開催された。参加者60 名を超える大盛況で、皆、美食と美禄を堪能しながら、歓談した。司会を務めた張桂 娥さん(東呉大学助理教授)は、抜群のユーモアのセンスで、会場の雰囲気を一段と 盛り上げた。その調子に乗って、山本陽史先生は「津軽海峡冬景色」を熱唱し、引き 続き川瀬健一先生も台湾民謡「雨夜花」をハーモニカで演奏した。最後に、フォーラ ムの企画者である私が皆様に感謝の言葉を申し上げ、一日目のプログラムは円満に終 了した。 第4回日台アジア未来フォーラム報告(その1)は、下記リンクからお読みいただけま す。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/taiwan/_4.php ----------------------------------- <梁蘊嫻(リョウ・ウンカン)Liang Yun-hsien> 2010年10月東京大学大学院総合文化研究科博士号取得。博士論文のテーマは「江戸文 学における『三国志演義の受容』−義概念及び挿絵の世界を中心に—」である。現 在、元智大学応用外国語学科の助理教授を務めている。 ************************************************** ● SGRAカレンダー 【1】第2回アジア未来会議 「多様性と調和」(2014年8月22日インドネシアバリ島) http://www.aisf.or.jp/AFC/2014/ 【2】第8回SGRAチャイナフォーラム 「近代日本美術史と近代中国」<ご予定ください> (2014年11月22日北京) 【3】第14回日韓アジア未来フォーラム・第48回SGRAフォーラム 「ダイナミックなアジア経済(仮題)」<ご予定ください> (2015年2月7日東京) ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: sgra-office@aisf.or.jp Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] Liang Yun-hsien “Japan-Taiwan Future Forum #4 Report (Part 1)”

    ********************************************* SGRAかわらばん530号(2014年8月13日) ********************************************* 第4回日台アジア未来フォーラム報告 ■ 梁 蘊嫻「東アジアにおけるトランスナショナルな文化の伝播・交流—文学・思 想・言語—(その1)」 第4回日台アジア未来フォーラムが6月13日、14日の2日間にわたって、台湾大学及び 元智大学で開催された。グローバル化が急速に発展した今日、メディアの発展が進む ことで、文化の交流が盛んになり、文化の国境は消えつつある。この現象に着目しつ つ、フォーラムのテーマを「東アジアにおけるトランスナショナルな文化の伝播・交 流—文学・思想・言語—」とした。「メディア」は英語のmediaの訳語であり、新 聞・雑誌・テレビ・ラジオなどの近現代以降にできあがった媒体として捉えられるこ とが多い。ここではより広義的な意味を取っている。もとよりメディアは、時代に よって異なり、メディアの相違が文化のあり方に関わってくる。 今回のフォーラムは、台湾・日本を含めた東アジアにおける文化交流・伝播の様態に 迫り、異文化がどのようにメディアを通じて、どのように影響し合い、そしてどのよ うな新しい文化が形成されるかを考えるものである。 1日目は台湾大学にて「文学とメディア」「言語とメディア」「思想とメディア」の3 分野の基調講演、また19本の研究発表を行った。6月13日午前、台湾大学の文学院講 演ホールで開幕式が行われた。渥美財団今西淳子常務理事、交流協会文化室福増伸一 主任、台湾日本研究学会何瑞藤理事長、台湾大学日本語学科陳明姿主任のご挨拶に よって、フォーラムが始まった。 1本目の基調講演では、東京大学名誉教授延広真治先生に「「男はつらいよ」を江戸 から見れば—第五作「望郷篇」の創作技法—」というタイトルでお話をいただいた。 山田洋次監督「男はつらいよ」は48連作に及ぶ喜劇で、ギネスブックにも登録され た。48作中、監督自ら客がよく笑うと思われたのが第5作。延広先生は、この「望郷 篇」の創作技法を江戸時代の作品に求められると指摘した。具体的に、江戸時代とか かわりの深い作品、たとえば落語「甲府い」・「近日息子」(原話:手まハし)・ 「粗忽長屋」(袈裟切にあぶなひ事)・「湯屋番」・「半分垢」(原話:駿河の 客)、講談「田宮坊太郎」や曲亭馬琴『南総里見八犬伝』などを綿密に考察し、それ らの作品と「望郷篇」の関係について詳しく説明した。 延広先生の講演を通して、日本人にとっての国民的映画「男はつらいよ」のユーモア は、監督の古典作品に対する造詣によるものであるとのことがよく理解できた。笑い は日本文化の中においては、非常に特徴的で大切なものである。落語の笑いは馬鹿馬 鹿しくて、理屈がいらない。「男はつらいよ」が長く続けられたのは、落語的なユー モアセンスが染み付いているからではないかとつくづく思った。落語の笑いは外国人 に理解されにくい。なぜならば言語の壁があるからだ。しかし、日本の笑いはドラマ というメディアを通して伝えれば、外国人に受け入れられやすくなるであろう。 続いて、国立国語研究所横山詔一教授が「電子メディアの漢字と東アジアの文字生 活」という演題で講演した。横山先生は、(1)「漢字をイメージする」、(2)「漢 字を打つ」、(3)「文字の生態系モデル:文字と社会と人間」、という3つの要点を 話した。横山先生はまず東アジアで共通して観察される「空書(くうしょ)行動」を 紹介した。(空書行動とは、文字の形をイメージするとき、指先で空中に文字を書く ような動作を言う)。この現象から、漢字文化圏の人は、漢字や英単語の形を思い浮 かべるときに、視覚イメージだけではなく、体・肉体の動作(action)という運動感覚 成分もあわせて活用しているということを指摘し、漢字は東アジアの人々の肉体感覚 とつながっているメディアだという見解を提出した。 また、ネットツールの普及により、文字をキーボードで打つことが当たり前の時代に なり、漢字は手書きよりも、パソコンの変化候補から「見て選択すれば書ける」時代 になったとともに、字体の使用にも変化がみられたということを指摘した。この現象 を(1)異体字の好み、(2)台湾の日本語学習者が日本人にメールを書く場面、との 両方面から考察した。これらの研究課題については、伝統的な語学研究法ではなく、 「文字の生態系モデル」に基づいて分析した。横山先生はいくつか興味深い研究成果 を提示したが、その中の一つを次に挙げておこう。台湾の日本語学習者がメールを書 く時には、読み手の日本人が読みやすい表記、あるいは違和感を持たない表記を意識 的・無意識的に選択するという傾向があるという。「文字と社会と人間は一体であ り、切っても切れない関係にある」ということだが、インターネットが発達すればす るほど、この傾向はますます強くなるといえよう。 横山先生の講演は、電子メディア(ネットメディア)の発達によって、東アジアにおけ る文字文化の国境が消えつつある実態に着目し、東アジアの文字生活が「漢字」とい う記号・媒体を通じて今後どのように変化していくのかを考える手がかりとなった。 3本目の講演は、京都大学佐藤卓己准教授の「輿論と世論の複眼的思考—東アジアの 理性的対話にむけて」というテーマであった。佐藤先生は、マスメディアの普及にも たらされた「輿論」と「世論」の混同という現象には、知識人がどのような姿勢でい るべきかについて、次のような見解を述べた。 「輿論」と「世論」は、戦前の日本ではそれぞれ「ヨロン」と「セイロン・セロン」 と読まれていた。意味上においても、「輿論」は「public opinion」、「世論」は 「popular sentiments」と区別されていた。しかし今日に至って、「輿論」という言 葉が使われなくなった一方、「世論」を「ヨロン」と読む習慣が定着し、「輿論」の 意味と混同する例が見られるようになった。これは歴史の経緯から見れば、戦後1946 年に「輿」という字が制限漢字に指定された政策と関係しているが、1920年代の「政 治の大衆化」とともに生じた「輿論の世論化」という現象によるものでもあった。 「輿論の世論化」はさらに1943年5月情報局の「輿論動向並びに宣伝媒体利用状況」 調査結果が示すように、戦時下の国民精神総動員で加速化した。「輿論の世論化」は 理性が感性に、知識人の輿論が大衆の世論に飲み込まれていく過程であった。日本で はこうした同調圧力への対応を「空気を読む」と表現するが、この「空気」、すなわ ち誰も責任をもたない雰囲気である「世論」の暴走は現在ますます警戒する必要があ る。インターネットが普及した情報社会では、空気(世論)の中で、個人が担う意見 (輿論)はますます見えなくなっている。 こうした状況に対しては、「輿論」と「世論」の区別を回復し、さらに「世論の輿論 化」を目指すことの必要があると佐藤先生は指摘した。また、「世論の輿論化」と は、知識人が大衆の感情にどのような言葉を与え、対話可能な枠組を創っていくかと いうことだと述べている。世論は即時的な感情的反応の産物であり、討議という時間 を経て熟成されるのが輿論である。インターネットのように欲望を即時的に満たすメ ディアによって、現在ではますます「輿論の世論化」が加速化している。こうした現 状に対しては、佐藤先生は、インターネット中心の今日だからこそ、伝統的な活字メ ディアによる人文知の重要性はますます高まると強く主張した。また、「世論の輿論 化」の実践は、「トランスナショナルな文化の伝播・交流」として始まるべきだとい うことが講演の結びとなった。 以上の3本の講演は、それぞれ文学研究、言語学研究、思想研究に大きな示唆を与え ているものであった。午後は、分科研究発表が行なわれたが、その詳細は引き続き報 告する。(つづく) フォーラムの写真は下記リンクよりご覧ください。 www.aisf.or.jp/sgra/photos/index.php?spgmGal=The_4th_SGRA_Taiwan_Forum ……………………………… <梁蘊嫻(リョウ・ウンカン)Liang Yun-hsien> 2010年10月東京大学大学院総合文化研究科博士号取得。博士論文のテーマは「江戸文 学における『三国志演義の受容』−義概念及び挿絵の世界を中心に—」である。現 在、元智大学応用外国語学科の助理教授を務めている。 ************************************************** ● SGRAカレンダー 【1】第2回アジア未来会議 「多様性と調和」(2014年8月22日インドネシアバリ島) http://www.aisf.or.jp/AFC/2014/ 【2】第8回SGRAチャイナフォーラム 「近代日本美術史と近代中国」<ご予定ください> (2014年11月22日北京) 【3】第14回日韓アジア未来フォーラム・第48回SGRAフォーラム 「ダイナミックなアジア経済(仮題)」<ご予定ください> (2015年2月7日東京) ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: sgra-office@aisf.or.jp Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] Xie Zhihai “Japanese People and English Language: What is Global Jinzai?”

    ********************************************* SGRAかわらばん529号(2014年7月30日) ********************************************* SGRAエッセイ#418 ■ 謝 志海「日本人と英語:グローバル人材とは?」 近年、日本人学生の海外留学の激減により、文部科学省は留学生を倍増させようとさ まざまな取り組みを行っている。同時に英語教育にも力を入れようと、小学5年生か ら英語を正式教科として取り入れ、早期英語教育を始めることとなった。だが、日本 人の英語との接し方を見ていると、留学生の数を増やし、早く英語を学び始めるだけ で、グローバル人になれるのだろうかと不思議に感じることがある。日本でよく耳に する「グローバル人材」とは何を意味し、何を目指しているのだろう? 日本人留学生が減っている理由の一つは、日本での就職活動のスケジュール調整の難 しさで、あきらめてしまう人が多いのではないかと思う。何しろ大学4年間のうち少 なくとも最後の1年間は就職活動に没頭することが当たり前なのだから。日本では、 就職活動時は皆同じようなスーツを着用して挑むので、大学生の就活シーズンだなと いうのが電車に乗っていても容易に解る。企業は同じ時期に入社試験を行う。その流 れに乗り、卒業前に内定をもらうことが、大学生としてのゴールであるという風潮な ので、のんびり留学なんてしていられないよ、バイトしながらTOEICでも受けようと いう気にさせられるのではないだろうか。 日本の企業の人事部や人材派遣会社は、留学という経験よりも結局はTOEICのスコア で人を判断するのだから(もちろん表向きはそうなっていない)、日本で就職したい日 本人にとっては、留学やグローバル人材になるメリットというものに魅力を感じない だろう。そこそこのTOEICのスコアがあればいいのだから。今でも派遣会社へ登録に 行くと、登録者がたとえ英語圏の大学で学位やMBAを取っていても、また海外で働い た経験を持っていても、派遣会社の人はTOEICのスコアを知りたがるそうだ。これは 今までに出会った何人もの日本人から聞く。まずは派遣会社や、企業の人事部が「グ ローバル人材=英語=TOEIC」という図式を取り払わない限り、世界の人々と渡り合 える人材は日本では育ちにくいのではないかとの懸念を抱く。もしくは人材を評価す る立場の人事系の仕事についている人こそ留学して、外国語で勉強し生活してみる と、留学生の勇気と苦労が机上の勉強で済むTOEICとは比べものにならないと気付く かもしれない。 何故ここまで厳しく学生を採用する立場の意識改革を願うかというと、せっかく留学 して、語学だけでなく異文化を学んできても、日本で就職し実務として活かすチャン スがないと、いい人材が海外に逃避してしまうからだ。誰だって自分を正当に評価し てもらえる、やりがいのある場所で輝きたいはずだ。若いうちは特にそういうことが 大事だったりする。日本と違って、中国では留学生は増える一方で、その数は60万人 を超える。その中国での問題は、留学生が学業を終えても帰ってこないことだ。国内 に優秀で複眼的な思考を持った若者が残らなくなるのは国として大きな損失となる。 中国と比べると便利で安全で暮らしやすく、街も空気もきれいな日本で優秀な人材の 逃避など起こるべきではない、それをくい止めるのは日本の企業であろう。 変わらなければならないのは、大学も同じだ。英語を学ぶ人は、グローバル人という 概念も考え直した方がいい、英語だけが外国語ではないのだから。例えば、学校の授 業を通じ、どうしても英語が好きになれなかった生徒がいたとしよう、でもその生徒 が国語は得意だったら、中国に留学するという手もある。中国語なら漢字からすんな り頭に入るかもしれない。それだけでなく、そこで出会った他国からの留学生と英語 で話すチャンスも大いにあるだろう。結果、その生徒は中国語と英語を操るトライリ ンガルになって帰国するかもしれない。自分で英語の重要性と、グローバル人になり たいと感じる事が大事だ。その取っ掛かりは必ずしも英語である必要は無い。イギリ ス以外のヨーロッパ人などは、英語圏への留学経験などなくとも英語を話せる人が非 常に多い。そういう人々と異国の地で実際に出会えば、英語はグローバルな言語なの だと気付くだろう。最近では一部の大学で英語以外の外国語のクラスを増やす動きが 広がってきている。「多言語を学びたい」という学生たちのリクエストに応えた大学 もあるそうだ。生徒の意見を吸い上げて、大学も変化していくことは素晴らしいし、 こういった「見える変化」があれば学生もさらに学びたいという意欲につながるはず だ。 文部科学省は2020年をめどに日本から海外へ行く留学生を現在の6万人弱から、12万 人に倍増する計画を掲げている。数を増やすだけでなく、留学経験者が海外で学んで きた事を活かせる土壌作りと、受け入れ企業の理解を深めることまで早急にケアして いかなければならない。日本が留学生をたくさん増やしている間に世界、特に新興国 ではグローバル人材がどんどん排出され、世界中で活躍しているのだから。 ---------------------------? ? 共愛学園前橋国際大学専任講師。北京大学と早稲田大学のダブル・ディグリープログ ラムで2007年10月来日。2010年9月に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期 課程単位取得退学、2011年7月に北京大学の博士号(国際関係論)取得。日本国際交 流基金研究フェロー、アジア開発銀行研究所リサーチ・アソシエイトを経て、2013年 4月より現職。ジャパンタイムズ、朝日新聞AJWフォーラムにも論説が掲載されてい る。 ************************************************** ● SGRAカレンダー 【1】第7回ウランバートル国際シンポジウム 「総合研究——ハルハ河・ノモンハン戦争」<参加者募集中> (2014年8月9日ウランバートル) http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/mongol/7_1.php 【2】第2回アジア未来会議<オブザーバー参加者募集中> 「多様性と調和」(2014年8月22日インドネシアバリ島) http://www.aisf.or.jp/AFC/2014/ 【3】第8回SGRAチャイナフォーラム 「近代日本美術史と近代中国」<ご予定ください> (2014年11月22日北京) 【4】第14回日韓アジア未来フォーラム・第48回SGRAフォーラム 「ダイナミックなアジア経済(仮題)」<ご予定ください> (2015年2月7日東京) ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: sgra-office@aisf.or.jp Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************