SGRAメールマガジン バックナンバー

CHEN Lu “Influence of COVID-19 on Educators”

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SGRAかわらばん826号(2020年7月2日)

【1】エッセイ:陳ロ「コロナは教育者にどのような影響を与えるか」

【2】SGRA-Vカフェ「ポストコロナ時代の東アジア」へのお誘い(再送)

【3】コラム紹介:フランク・フェルナンデス「ホワイトキューブの日常」
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【1】SGRAエッセイ#637

◆陳ロ「コロナは教育者にどのような影響を与えるか」

2020年は特別な年である。コロナウイルスの蔓延が空前の被害と混乱を引き起こし、世界中を恐怖に陥れている。感染力が強く、容赦なく人命を奪うこの恐るべき悪疫に対し、全世界の国々は相次いで緊急事態宣言を発表し、国民たちは自宅に閉じ籠ったままの生活を強いられた。この突発的な状況は、人々の身体的・精神的な健康を脅かしているだけではない。従来対面授業を基本として行なわれてきた教育システムはもはや遂行不可能であり、教育者や研究者たちの多くが、新たな試練の場に立たされている。私もその中の一人である。

一時的ではあれ、コロナウイルスが教育や研究のあらゆる分野に及ぼした影響は大きい。コロナが猛威を振るう現在をどう乗り越えるかだけではなく、ウイルスが抑えられた近い将来、教育者や研究者が、自らの職掌をどう捉え、どのような能力を養うべきかを再考し、現状を如何に調整すべきか、改めて見つめ直すことも求められている。

経営戦略策定ではよくSWOT分析法が使われている。それは外部環境や内部環境を強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)の4つのカテゴリーで分析するものである。この分析法は、従来にないオンライン授業に直面している私たち教育者にとってもかなり有効ではないかと思う。自分自身の強みと弱み、またこの事態がもたらした脅威と、それが引き起こすであろう、ある種の機運を自覚することが、今後の行くべき方向を決定する力を持っているとさえ感じさせる。以下ではあくまで個人的な立場だが、教育環境において私自身が感じたことを少しお話ししたい。

オンライン授業の実施が決定されて以降、アメリカをはじめ各国の大学の多くでは、新たな教員の雇用を減らし、高年齢の教員がオンライン授業に対応できないと言って自ら担当授業から外れるといったこともしばしば起きたと聞く。長年の経験によって培われた成熟した技能と知識の価値がこの措置において充分に発揮できず、不安を感じた教員がたくさんいる。しかしその一方で、知識や経験の点では及ばないものの、情報処理等の先進技術への対応力で勝る若手研究者は、むしろこうした強みを進んで発揮し、新たな研究分野の開拓に挑戦すべきではなかろうか。私は今年度、科学技術英語という講義を担当し、従来触れる機会のなかった自然科学に関する知見を系統的に学ぶことができた。これもまた、オンライン授業がもたらした、新たな学術的「知」の獲得と言えよう。

オンライン授業は、現地不在の教員の授業実施を可能にする。既に理系の授業では実施に移されているように、例えば日本にいながら、海外の大学にレクチャーを開くような機会は、今後ますます増えるに違いない。こうした知の流動化は、教育者自身の国際性を養うだけでなく、教育分野における他国との連携をより一層緊密にするというメリットを持っていよう。もちろん、デメリットもいろいろとあろうが、それをまず自覚し、どう克服するかを考えることが大事である。

オンライン授業は、大多数の大学教員にとって初めての経験なので、戸惑うことが少なくない。私自身は、そもそも必要不可欠な道具類すらそろわない状態からのスタートだったので、授業用のマイクや照明機器、編集ソフトなどの購入から取りかかった。また、従来の対面授業の教え方を考え直し、リアルタイムビデオや動画作成など学生たちが臨場感と楽しさを感じ、やる気が出るようにいろいろ方法を考えた。初めのうちは普段の何倍も時間がかかってしまい、対面式よりむしろ負担が大きいが、慣れるに従って効率も上がるであろう。こうしたスキルは、やがては新たな強みに変わり、自らの成長につながることを信じて努力を続けている。

現在、教育分野のジョブマーケットは縮小傾向にあり、今後、教育職にふさわしい人材として、学術的能力のほかにこうした実務上のノウハウがますます必要になってくると思う。日本にいながら海外での講義を持つことができるということは、海外の優れた教育者や研究者にも同じチャンスを与えることである。つまり、今後の教育現場は、国境を越えた流動性と競争性がますます激しくなるのである。こうした機運と自覚を私たちはまず認識しなければならない。自分自身に新たな「強み」を持たせること、それによって、今後予想される様々な試練を乗り越えていきたい。

<陳ロ(ちん・ろ)CHEN_Lu>
2019年度渥美国際交流財団奨学生。東京外国語大学特別研究員。日本学術新振興会特別研究員(2016-2018)、ハワイ大学客員研究員(2017-2018)。現在早稲田大学、上智大学、明星大学・兼任講師。専門は日本近世・近代文学・詩学・思想史研究。研究論文が多数あるほか、翻訳(「子安宣邦:日本の近代化とは何か」、『東方歴史評論』2019.9,『日中200年―文化史からの再検討』SGRA、2020.6)、書評(『「鏡」としての透谷 表象の体系/浪漫的思考の系譜』、『明星大学人文学部日本文化学科紀要』第28号、2020.3)、詩作(“Withered_Cherry_Branches”『An_Anthology_of_Emerging_Poets_2019』Z_Publishing_House、2019.12、「風」『カリヨン通り(16)』2017.03)などある。

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【2】第13回SGRA-Vカフェ「ポストコロナ時代の東アジア」へのお誘い(再送)

SGRAでは、良き地球市民の実現をめざす皆さまに気軽にお集まりいただき、講師のお話を伺い議論をする<場>として、SGRAカフェを開催しています。今年は初めての試みとして、オンラインZoomによるSGRA-Vカフェを開催します。オンライン参加ご希望の方は、SGRA事務局宛てお申し込みください。
皆さまのご参加をお待ちしています。

◆第13回SGRA-Vカフェ:林泉忠「ポストコロナ時代の東アジア」

日時:2020年7月18日(土)15時~16時30分(日本時間)
参加方法:オンライン(Zoom)による
言語:日本語のみ
会費:無料
定員:100名(人数に達した時点で申込を締め切らせていただきます)

参加申込・問合せ:SGRA事務局 <sgra-office@aisf.or.jp>
申込内容:お名前・居住国/都市・ご所属・Zoom接続用メールアドレスをお送りください。

※事前参加登録していただいた方に、カフェ前日に招待メールをお送りします。
※事前にZoom接続テストをご希望の方は、参加申込メールでお知らせください。担当者よりテスト日について折り返しご連絡差し上げます。接続方法、ミュート機能のON/OFFの切り替え、チャットの見方などについてご不安な方はどうぞお気軽にご連絡ください。

◇プログラム
詳細は下記リンクをご覧ください。
http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2020/06/13thSGRA-V-Cafe_Program.pdf

14:45 Zoom接続開始
司会:李彦銘
15:00 開会挨拶・講師コメンテーター紹介
15:10 講演:林泉忠
15:50 コメント:下荒地修二、南基正
16:05 質疑応答
16:25 まとめ・閉会挨拶
16:30 終了

講演要旨:

世界を震撼させた2020年の新型コロナウイルスが世界システムをかく乱し、「ポストコロナ時代」の国際関係の再構築が求められる中、東アジアはコロナの終息を待たずに、すでに激しく動き始めている。コロナが発生するまで、中国のアメリカと日・韓の分断戦略はある程度効いていた。しかし、コロナ問題と香港問題によって「米中新冷戦」が一気に進み、今まで米中のバランスの維持に腐心してきた日韓の選択が迫られる。とりわけ日中の曖昧な「友好」関係の継続はいよいよ限界に達し、日本の主体性ある「新アジア外交戦略」が模索され始めている。中国による「国家安全法」の強制導入で、香港は一気に「中国システム」の外延をめぐる攻防の激戦地になり、米中新冷戦の最前線になる。香港という戦略上の緩衝地帯を喪失する台湾は、「台湾問題を解決する」中国からの圧力が一段と高まり、アメリカとの安全保障上の関係強化を一層求めることなり、台湾海峡は再び緊迫した時代に入る。「ポストコロナ時代」における「米中新冷戦」が深まっていくことはもはや回避できない。

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【3】コラム紹介

『美術手帳』に掲載されたSGRA会員のフランク・フェルナンデスさんのコラムをご紹介します。

◆自宅隔離中の日本美術キュレーターが綴る「ホワイトキューブの日常」

世界でもっとも新型コロナウイルスの影響が深刻なアメリカ。同国の国立アジア美術館(フリーア美術館とアーサー・M・サックラー・ギャラリー)に勤務する日本美術のキュレーター、フランク・フェルテンズが、コロナ禍の自宅での日々を綴った。

※下記リンクよりお読みください。
https://bijutsutecho.com/magazine/insight/22151

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★☆★お知らせ
◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応)
SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方は下記より登録してください。
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