SGRAメールマガジン バックナンバー

XIE Zhihai “Let’s Think about Global Environment Now ー Plastic Shopping Bags”

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SGRAかわらばん827号(2020年7月9日)

【1】エッセイ:謝志海「今こそ考える地球環境(レジ袋編)」

【2】「国史対話」メルマガを配信:朴漢珉「19世紀以降の感染症流行と東アジア」

【3】SGRA-Vカフェ「ポストコロナ時代の東アジア」へのお誘い(7月18日、オンライン)(再送)
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【1】SGRAエッセイ#637

◆謝志海「今こそ考える地球環境(レジ袋編)」

2020年7月1日より、日本ではプラスチック製レジ袋の有料化が始まった。正直、遅きに失した感があると思うのは私だけだろうか。その理由は二つあり、一つ目として、この法令は先進国はおろか、諸外国よりかなり遅れをとった。二つ目の理由は、現在の世界中の関心事、コロナウイルスの蔓延とかぶってしまったことにより、なぜレジ袋が有料になるのかというコンセプトが伝わりにくくなってしまったこと。本来は地球環境を守るという観点からプラスチックゴミを減らすという目的だったはずだ。今では何を語るにおいても「コロナと共に」語られるので、主題がずれてきているように感じる。時にはコロナは頭の片隅にそっと置き、環境について考える時間もあっていいと思うのだ。

プラスチック製レジ袋に対し、税を課したのはデンマークが初めてで、1993年には法律として導入された。それにより、レジ袋の使用は60%も下がった。同様によく知られているのが、アイルランドのレジ袋税で2002年に施行された。今では主流となっているが、レジ袋一ついくらという形で消費者が(税を)払う仕組みは、これが最初だった。専門誌「流通ニュース」(2020年5月4日号、WEB版)で経産省の資源循環経済課の課長が次のように語っている。2015年のEU指令では、各国に軽量のプラスチック製袋の使用量を2025年末までに一人当たり40枚以下に削減することなどが定められた。このルールに則りEU各国では、スーパーでレジ袋は渡さない、もしくは有料化するなど独自の決まりを作っている。アメリカは郡や市によってそれぞれ法令が違うが、大抵のよく知られた州や都市ではレジ袋(紙袋を含む)を有料と定めているところが多い。カナダは日本と同様小売店などが自主的にレジ袋を有料にしているところも多いそうだ。

そう、日本の良い点は、法令が導入されるよりずっと前から自主的にレジ袋を減らす動きがあったこと。食料品スーパーやドラッグストアはレジ袋を断るお客さんにポイント加算してあげたり、2円引いたりするなど工夫していた。しかしコンビニあたりが最後の最後まで、レジ袋を提供し続けた。それすらとうとう有料となるのが、7月1日ということになる。

しかし日本の目下の関心ごとといえば、家から持参し、何度も使えるエコバッグにコロナやその他のウイルス菌が付着することへの嫌悪、付着した菌はエコバッグの表面でどのくらい生き延びることができるかなどに注目が集まってしまっている。アメリカの新聞社のウェブサイトニュースで読んだが、カリフォルニア州のロサンゼルスのスーパーではこのステイ・ホームの間は「エコバックを持参しないで欲しい、スーパーがレジ袋(プラスチック製)か紙袋を無料で提供します。」というルールに変えた。こちらもお客さんが持参するエコバックにコロナ菌が付着していたら?との懸念からであった。実際にロサンゼルスとそれより南のカウンティでスーパーの店員がコロナに感染した事例がいくつかあったからなのだろう。カリフォルニア州ではすでに数年前からレジ袋は有料化されていて、エコバック持参で買物に行く文化はすでに浸透しているので、コロナが落ち着けば、またエコバックの使用は自然と戻るだろう。

日本のテレビの情報番組ではレジ袋の有料化の特集において、ナイロン製などの拭き取れる光沢がある表面のエコバッグには、菌が付着したら4日間その表面で生き延びることができる、布製であれば1日と報道していた。プラスチック製のレジ袋が環境にどう影響するのかは語られないまま、エコバックをスーパー店員が触ることに対し、どう思っているのかとスーパーの店長や店員に取材した映像が流れていた。同じくスーパー店内のエコバッグ持参のお客さんに、(その)お持ちのエコバッグ洗っていますか?とも聞いていて、洗ったことのない方も多かった。

分解されず、自然に戻ることのないプラスチック。海へ流れ出たものはエサと一緒に魚が飲み込み、体内に蓄積されてしまう。そんな悲惨な現状を知ると、コロナだろうが、なかろうが、待ったなしの対策だと思う。エコバッグへの菌の付着が気になるのであれば、毎日同じエコバッグをつかわなければいいだけのことで、エコバッグが一個しかないというのであれば、家にある紙袋と交互に使うなど、ローテーションさせ、衛生面に留意しながら家にレジ袋を持ち込まない方法はあると思うのだ。

そしてレジ袋だけがプラスチックゴミではない。上述の流通ニュースのインタビュー内で、レジ袋が有料となる対象となった理由として、国民生活に直結しエコバッグで代替できるものであり、そして諸外国でもレジ袋から取組む先行事例が多いことも挙げられるとのこと。そう、代替できるものとしてのエコバックであって、エコバックはプラスチックごみを減らすための最初の小さな一歩に過ぎない。コロナが世界中に蔓延する前に、この法令が施行されていれば、世の中のプラスチックごみへの関心はもっと高かっただろう。

<謝志海(しゃ・しかい)Xie Zhihai>
共愛学園前橋国際大学准教授。北京大学と早稲田大学のダブル・ディグリープログラムで2007年10月来日。2010年9月に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期課程単位取得退学、2011年7月に北京大学の博士号(国際関係論)取得。日本国際交流基金研究フェロー、アジア開発銀行研究所リサーチ・アソシエイト、共愛学園前橋国際大学専任講師を経て、2017年4月より現職。ジャパンタイムズ、朝日新聞AJWフォーラムにも論説が掲載されている。

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【2】「国史対話」メールマガジン第18号を配信しました。

◆朴漢珉「19世紀以降の感染症流行と東アジア」

2020年1月にフィリピンで開催された第4回「国史たちの対話」円卓会議に参加する機会があり、19世紀東アジアの日中韓三か国を中心としたいくつかのテーマについて、各国を代表する研究者と議論した。その席で、私は三か国共同でアプローチできるテーマとして感染症の流行を扱いたいと発言した。この時は、19世紀に入り各国で周期的に流行し、致死率が高いために多くの人命被害が出たコレラを念頭に置いていた。帰国の際に現地でタール火山(TAAL_Mountain)が噴火し、マニラでの滞在日程が少し長引いたりもしたが、もっと大きな出来事が起こるとは予想していなかった。その後、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が急激に拡がりはじめ、全世界のあらゆる問題がコロナに飲み込まれた。

続きは下記リンクからお読みください。
http://www.aisf.or.jp/sgra/kokushi/J_Kokushi2020ParkHanminEssay.pdf

※SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。国史メルマガは20日ごとに配信しています。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方は下記より登録してください。また、3言語対応ですので、中国語話者、韓国語話者の方々にもご宣伝いただきますようお願いいたします。

◇国史メルマガのバックナンバーおよび購読登録は下記リンクをご覧ください。
https://kokushinewsletter.tumblr.com/

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【3】第13回SGRA-Vカフェへのお誘い(再送)

SGRAでは、良き地球市民の実現をめざす皆さまに気軽にお集まりいただき、講師のお話を伺い議論をする<場>として、SGRAカフェを開催しています。今年は初めての試みとして、オンラインZoomによるSGRA-Vカフェを開催します。オンライン参加ご希望の方は、SGRA事務局宛てお申し込みください。
皆さまのご参加をお待ちしています。

◆第13回SGRA-Vカフェ:林泉忠「ポストコロナ時代の東アジア」

日時:2020年7月18日(土)15時~16時30分(日本時間)
参加方法:オンライン(Zoom)による
言語:日本語のみ
会費:無料
定員:100名(人数に達した時点で申込を締め切らせていただきます)

参加申込・問合せ:SGRA事務局 <[email protected]
申込内容:お名前・居住国/都市・ご所属・Zoom接続用メールアドレスをお送りください。

※事前参加登録していただいた方に、カフェ前日に招待メールをお送りします。
※事前にZoom接続テストをご希望の方は、参加申込メールでお知らせください。担当者よりテスト日について折り返しご連絡差し上げます。接続方法、ミュート機能のON/OFFの切り替え、チャットの見方などについてご不安な方はどうぞお気軽にご連絡ください。

◇プログラム
詳細は下記リンクをご覧ください。
http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2020/06/13thSGRA-V-Cafe_Program.pdf

14:45 Zoom接続開始
司会:李彦銘
15:00 開会挨拶・講師コメンテーター紹介
15:10 講演:林泉忠
15:50 コメント:下荒地修二、南基正
16:05 質疑応答
16:25 まとめ・閉会挨拶
16:30 終了

講演要旨:

世界を震撼させた2020年の新型コロナウイルスが世界システムをかく乱し、「ポストコロナ時代」の国際関係の再構築が求められる中、東アジアはコロナの終息を待たずに、すでに激しく動き始めている。コロナが発生するまで、中国のアメリカと日・韓の分断戦略はある程度効いていた。しかし、コロナ問題と香港問題によって「米中新冷戦」が一気に進み、今まで米中のバランスの維持に腐心してきた日韓の選択が迫られる。とりわけ日中の曖昧な「友好」関係の継続はいよいよ限界に達し、日本の主体性ある「新アジア外交戦略」が模索され始めている。中国による「国家安全法」の強制導入で、香港は一気に「中国システム」の外延をめぐる攻防の激戦地になり、米中新冷戦の最前線になる。香港という戦略上の緩衝地帯を喪失する台湾は、「台湾問題を解決する」中国からの圧力が一段と高まり、アメリカとの安全保障上の関係強化を一層求めることなり、台湾海峡は再び緊迫した時代に入る。「ポストコロナ時代」における「米中新冷戦」が深まっていくことはもはや回避できない。

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★☆★お知らせ
◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応)
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