SGRAメールマガジン バックナンバー

  • Invitation to the Nittai Asia Future Conference #9

    ********************************************* SGRAかわらばん768(2019年4月25日) ********************************************* 第9回日台アジア未来フォーラム「帝国日本の知識とその植民地」へのお誘い 下記の通り第9回日台アジア未来フォーラムを台北市で開催します。参加ご希望の方は、下記よりご登録ください。 テーマ:「帝国日本の知識とその植民地:台湾と朝鮮」 日時:2019年5月31日(金)8:50~17:10 会場:国立台湾大学凝態センター国際会議ホール http://www.ntu-ccms.ntu.edu.tw/zh/contact_us 参加申し込み:会議ホームページより直接登録してください。 http://iics.ust.edu.tw/2019JAPAN/#p7 ※SGRA会員で参加される方は、SGRA事務局にもご連絡いただけますと幸いです。 [email protected] 詳細は会議ホームページをご覧ください。 http://iics.ust.edu.tw/2019JAPAN/ 〇フォーラムの趣旨 台湾と朝鮮はともに漢文圏に属し、日本帝国の植民地を経験した。こうした過去の歴史は現在の台湾と朝鮮半島の政治と文学に重要な影響を与えている。周知のように、近代日本は漢文など東アジア諸国共有の伝統知識を踏まえながら、西洋文明を吸収して、日清・日露戦争を経て、台湾と朝鮮などの植民地を保有する帝国主義国家を築いた。帝国日本はどのように近代西洋の知識を吸収したのか。帝国日本の政治と知識の欲望において、台湾と朝鮮はいかに認識されていたのか。帝国日本における知識の在り方はどのように植民地における知識の形成と連結していたのか。そして、日本帝国と諸植民地の間にはどのような人間的な交流があったのか。本フォーラムでは、こうした問題意識に基づき、グローバルな視野で、台湾と朝鮮をめぐって、思想史と文学史の視点から、近代日本帝国における知識の在り方と台湾、朝鮮との関連、また日本帝国の諸植民地における人間の移動と交流を探究する。 次のようなテーマを検討する。(1)帝国日本の知識と台湾A:思想史。(2)帝国日本の知識と台湾B:歴史と文学。(3)帝国日本の知識と朝鮮。 〇プログラム 【基調講演】 山室信一(京都大学名誉教授) 「日本の帝国形成における学知と心性」 【第1セッション】 藍弘岳(国立交通大学教授) 「明治日本の自由主義と台湾統治論:福沢諭吉から竹越与三郎まで」 河野有理(首都大学東京教授) 「田口卯吉と植民地」 陳偉智(国立台湾大学博士課程) 「観察、風俗の測量と比較の政治:坪井正五郎、田代安定と伊能嘉矩の風俗測量学」 【第2セッション】 塩出浩之(京都大学准教授) 「近代初期の東アジアにおける新聞ネットワークと国際紛争」 田世民(国立台湾大学准教授) 「近代日本における葬式儀礼の変化と植民地台湾との交渉」 柳書琴(国立清華大学教授) 「祖国に留学する:左翼文化廊下における台湾の文学青年(1920-1937)」 【第3セッション】 月脚達彦(東京大学教授) 「朝鮮の民族主義の形成と日本」 趙寛子(ソウル大学准教授) 「東アジア体制変革において日清・日露戦争をどう見るか:「思想課題」としての歴史認識」 許怡齡(文化大学准教授) 「近代知識人朴殷植の儒教改革論と日本陽明学」 【総括】 林立萍(台湾大学日本研究センター主任) 山室信一(京都大学名誉教授) 〇日台アジア未来フォーラムとは 日台アジア未来フォーラムは、台湾在住のSGRAメンバーが中心となって企画し、2011年より毎年1回台湾の大学と共同で実施している。過去のフォーラムは下記の通り。 第1回「国際日本学研究の最前線に向けて:流行・ことば・物語の力」 2011年5月27日 於:国立台湾大学文学部講堂 第2回「東アジア企業法制の現状とグローバル化の影響」 2012年5月19日 於:国立台湾大学法律学院霖澤館 第3回「近代日本政治思想の展開と東アジアのナショナリズム」 2013年5月31日 於:国立台湾大学法律学院霖澤館 第4回「東アジアにおけるトランスナショナルな文化の伝播・交流―文学・思想・言語」 2014年6月13日~14日 於:国立台湾大学文学部講堂および元智大学 第5回「日本研究から見た日台交流120 年」 2015年5月8日 於:国立台湾大学文学部講堂 第6回「東アジアにおける知の交流―越境、記憶、共生―」 2016年5月21日 於:文藻外語大学至善楼 第7回「台・日・韓における重要法制度の比較─憲法と民法を中心として」 2017年5月20日 於:国立台北大学台北キャンパス 第8回「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性」 2018年5月26日~27日 於:東呉大学外双渓キャンパス 第9回「帝国日本の知識とその植民地―台湾と朝鮮」 2019年5月31日 於:国立台湾大学凝態センター国際会議ホール ********************************************* ★☆★SGRAカレンダー ◇第5回アジア未来会議「持続的な共有型成長:みんなの故郷みんなの幸福」 (2020年1月9日~13日、マニラ近郊)<論文(発表要旨)募集中> ※奨学金・優秀賞の対象となる論文の募集は締め切りました。一般論文の投稿(発表要旨)は6月30日まで受け付けます。 http://www.aisf.or.jp/AFC/2020/call-for-papers/ アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語る<場>を提供します。 ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応)を開始! SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方は下記より登録してください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/research/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRA の事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • Li Kotetsu “Realizing Poverty Reduction and Utopia”

    ********************************************* SGRAかわらばん767(2019年4月18日) 【1】エッセイ:李鋼哲「『脱貧困』と『ユートピア』の実践」 【2】SGRAレポート紹介:『日本の高等教育のグローバル化!?』 ********************************************* 【1】SGRAエッセイ#593 ◆李鋼哲「『脱貧困』と『ユートピア』の実践-山東省南山集団訪問記-」 2019年3月12日、中国山東省煙台市にある魯東大学における招待講演の翌日に、南山集団という中国有数の企業を訪問した。この企業に対して私は予備知識がなかったが、講演に同行した東京大学社会科学研究所のM教授から、「20数年前に訪れたことがあったが、改めて見学したい」との要望があったので、私も一緒に参加した。 南山集団は煙台市中心から60キロほど離れており、車で1時間半弱で着いた。煙台市傘下の海浜都市龍口市に拠点を構え、アルミ金属素材を主軸とし、紡績繊維、ワイン等の製造をしているが、その他にも教育や不動産、金融、旅行、健康など多岐にわたる産業を抱える複合企業グループに成長した。従来、貧しい村落であった広大な敷地を開発し、無数の生産工場や観光施設、従業員用の住宅施設などが建てられている。大半の村民をこの南山集団内で雇用しており、「村企合一」(村と企業が一体化)の民間企業として飛躍的に成長し、中国巨大企業ランキング500社のなかで170番目、中国製造業ランキング500社の中の71番目(いずれも2018年)とされ、傘下には100社ほどの子会社をもつ。南山集団が作ったアルミ製品は米国のボーイング社にも納品しているという。 ここではある企業を紹介するのが目的ではない。この企業を訪問してびっくりしたことを紹介したい。それはこの企業はユートピア(理想郷)的な生活環境を村民たちに提供していることである。企業理念は「故郷に造福し、社会に還元する」(「造福郷梓,回報社会」)こと。中国の改革開放政策の唱道者であった鄧小平氏が、かつて唱えた「先富論」(一部の人が先に豊かになり、豊かになった人が皆さんを引っ張って一緒に豊かになる)の実践者と言えるのではないか、と思った。 世界でも中国でも成功した大企業はいくらでもある。しかし、企業で作り上げた富を使って、周りの貧しい人々に豊かさをもたらす「共同富裕」を自ずと実践し、ユートピア的な楽園のような村を造った起業家はそんなに多くはない。もちろん、中国には他にも類似な事例があり、世界でもビル・ゲーツのように一代で富を築き上げ、その富で慈善基金団体を発足し、世界中の貧困撲滅のために頑張る方も大勢いる。 南山集団のユニークなのは、改革開放政策を実施して40年間、世界が注目する経済大国になった中国で、成長の歪として貧富格差の拡大が指摘される中で、村民全体を豊かにする実践者、宋作文・南山集団総裁の成功物語である。宋氏は、改革開放政策を実施する1978年に山村の生産隊長(村長)(私もその頃には生産隊の一農民であった)の身分で、村民数人と手を組んで村で起業し、ある程度成功した後は58世帯の村民全員を企業の一員とし、さらに規模を拡大して、周辺42村を吸収合併し、従業員が4万人、村民は14万人規模の巨大企業、そして企業を中心に一つの都市圏を作り挙げた。それだけではない。創業当時の村民全員には別荘のような高級住宅(面積178平米の一戸建て)を提供し、後に合併した村民たちには全員に138平米の住宅を支給したという。企業の敷地とその周辺の綺麗な環境、そして60万人規模の龍口市全体が、ガーデン・シティとして整備されている。 ガイドは我々を老人ホームに案内したが、そこはリゾート・ホテルを彷彿させる立派なもので、老人たちは安心してゆったりした生活を送っている様子が見えてきた。この村では60歳以上で希望さえすれば誰でも安い寮費または無料で入所できるという。したがって、この村14万人の中では1990年代末にすでに脱貧困が実現されたという。 南山集団には幼稚園から小、中学校、そして大学まで完璧な教育施設がそろっており、幼稚園からハイレベルの教育を行い、英語教師は米国から招いたという。煙台南山学院大学は私立大学であるが、在学生2万人以上、工学院、商学院、人文学院、航空学院など4つの学院があり、22学部と78学科を設けている。全国から学生を募集し、卒業生は希望さえすれば優先的に南山集団の社員になれるという。社員の約8割はこの大学の卒業生で大半は村の外部から来ているという。 旅行産業として、南山旅游景区は国家5A級(中国では最高級)観光地に評価され、敷地の丘の上には荘厳な大仏を建設し、仏教、道教、儒教の文化を取り入れた周遊観光施設を整備している。また、279ホールという巨大な規模のゴルフ場もある。その他リゾート・ホテル、住宅地、商業施設などが整備され、そこには外部の人でも住みたい場合には誰でも住宅を購入するか、賃貸して住むことができるという。筆者も老後生活地候補の一つにしたいと考えるようになった。 山村から企業を起こし、企業の成長だけではなく、村民たちが共同で富裕を実現し、40年の歳月で、貧困村からユートピア的理想郷を作り挙げた南山集団を見学しながら、筆者は感動せずにはいられなかった。 貧困撲滅のために、中国政府は今も必死に取り組んでおり、奇跡的な成果を上げていることは、かつて中国の貧困農村で生まれ育ち、必死の努力で農村の貧困から脱出した筆者にとっては、大いに称賛に値することである。現在の体制について、そして貧富格差などについては批判的な目を向けている筆者であっても、成果は成果として評価せざるを得ない。世界銀行のジム・ヨン・キム総裁も、中国が1990年以降に8億人を貧困から脱却させた功績は「人類史における素晴らしいストーリーの1つだ」と語った。 世界銀行は、世界における貧困率は1990年の36%(18億9,600万人)から2015年の10%(7億3,550万人)に減少し、2030年までに極度の貧困を世界全体で3%まで減らす、また、全ての途上国で所得下位40%の人々の所得拡大を促進する、という2つの目標を掲げている。世界の貧困撲滅に対する中国の貢献度は最も大きい。 中国政府は2020年に貧困人口をゼロにするという目標を掲げて一所懸命に取り組んでいる。政府の貧困ラインは年間所得2300元(約4万円、世界銀行の貧困ライン基準1日1.9ドルに比べると約半分程度と低いが、購買力平価計算では約3分の2程度))だが、2016年末時点でなお4335万人がそれを下回っている。毎年約1000万人を貧困から脱却させるのが政府目標であり、そのペースで行けば少なくとも公式に2020年までに深刻な貧困は解消されるはずであるという。財政部によると、2019年は貧困緩和策に昨年比30%増の860億元(約1兆3千億円)を充て、資金はインフラ整備のほか、教育や医療、地方農村部への補助金に充てられる。財政的な支援のみならず、人的支援・知的支援も上から下まで各級政府の優先課題の一つとし、貧困脱出難関攻略戦を実施して以来、各級政府や共産党組織の第1書記が、貧困村に駐在しながら農民と一緒に脱貧困作戦に取り組んでいるという。 今度の煙台市出張に先立って、筆者は海南島(中国の最南端にある中国のハワイと言われるリゾート)三亜学院大学でも講演を行った。少数民族が多い海南島の中には貧困県がいくつかあり、保亭県(貧困県)党幹部をしている大学時代クラス・メイトと再会の約束をしていたのだが、県内の脱貧困鑑定の仕事が突如入って夜遅くまで取り掛かるため、そちらを優先せざるを得ないということで、当初の予定を週末に変更した。脱貧困最前線での戦いの厳しさ、そして中国政府の本気度を実感した。 最後に個人的な体験話になるが、筆者は2回の脱貧困を体験した。1回目は、生まれ育った貧困山村での貧困農民で農業をしながら、必死の思いで独学し大学受験を4年間も続けた末、1981年に首都北京で大学生になり脱貧困を達成した。といっても、大学生の時は必ずしも食事が十分できたわけではなく、半貧困、栄養不良であったが。2回目は、北京で大学教員を辞職し、一文無しで渡航費などを借金して1991年に日本留学を決行した後、東京でアルバイトをして生計を立て、子育てをしながら10年間勉強した末に、何とか職を得たことで脱貧困した。 今度の中国訪問で強く感じたのは、自分は個人的には脱貧困できたのだが、故郷中国の脱貧困、さらには世界の脱貧困に何の貢献もできず、関心が欠如していたことに対して自分の心に葛藤が起きたことで、これまでの人生を見直すきっかけにもなった。「良き地球市民」と言いながら、現実の世界貧困から目をそらしてきたことで空しさを感じ、今後はそのような貧困問題を含めた社会問題にもっと目を向けて活動しなければならないと、自分なりに決意した。先進国の日本でさえ近年貧困問題が取りざたされ、特に子供の貧困率が上昇していると報道されているが、我々は決してこのような問題から目をそらすべきではない、と改めて考えるようになった。 南山集団の写真を下記リンクからご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2019/04/Essay593Photo.pdf <李鋼哲(り・こうてつ)Li_Kotetsu> 1985年中央民族学院(中国)哲学科卒業。91年北京で大学講師を辞職し来日、立教大学大学院経済学研究科博士課程単位取得中退。東北アジア地域協力を専門に政策研究に従事し、2001年より東京財団研究員、名古屋大学研究員、総合研究開発機構(NIRA)主任研究員を経て、06年現在、北陸大学教授。日中韓朝4カ国を中心に国際舞台で精力的に研究・交流活動に尽力している。SGRA研究員および「構想アジア」チーム代表。近著に『アジア共同体の創成プロセス』(編著、2015年4月、日本僑報社)、その他論文やコラム多数。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】SGRAレポート第87号「日本の高等教育のグローバル化!?」のご紹介 SGRAレポート第87号のデジタル版をSGRAホームページに掲載しましたのでご紹介します。下記リンクよりどなたでも無料でダウンロードしていただけます。冊子本は6月中旬にSGRA賛助会員と特別会員の皆様にお送りする予定です。それ以前に送付ご希望の方、会員以外でご希望の方はSGRA事務局へご連絡ください。 第61回SGRAフォーラム講演録 ◆「日本の高等教育のグローバル化!?」 2019年3月26日発行 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/report/2019/12617/ <フォーラムの趣旨> 2012年に日本再生戦略の中で若者の海外留学の促進とグローバル人材育成が謳われ、5年が経過した。現在の諸政策は外国語能力の向上と異文化理解の体得を推進するに留まっている。例えば、TOEFL・TOEICを利用した英語習得及び評価や英語での授業展開を中心としたものや、海外留学の推奨など日本から海外に出る方向に集中していることが挙げられる。また、その対象が日本人に限られている点など、現時点におけるグローバル人材育成の方針は一方面かつローカルな視点から進められているようにとれる。 一方、教育の受け手であり、育成される対象である若者がこのような現状をどのように受け止め行動しているのかはあまり議論されず取り残されたままである。そこで本フォーラムでは、高等教育のグローバル化をめぐる大学と学生の実態を明らかにし、同様の施策をとる他国との比較を通して同政策の意義を再検討する。 <もくじ> 【問題提起】 「スーパーグローバル大学(SGU)の現状と若者の受け止め方:早稲田大学を例として」 沈雨香(Sim_Woohyang)早稲田大学助手 【講演1】 「日本の高等教育のグローバル化、その現状と今後の方向について」 吉田文(Aya_Yoshida)早稲田大学教授 【講演2】 「韓国人大学生の海外留学の現状とその原因の分析」 シン・ジョンチョル(SHIN_Jung_Cheol)ソウル大学教授 【事例報告1】 「内向き志向なのか――地方小規模私立大学における《留学》」 関沢和泉(Izumi_Sekizawa)東日本国際大学准教授 【事例報告2】 「関西外国語大学におけるグローバル人材育成の現状」 ムラット・チャクル(Murat_Cakir)関西外国語大学講師 【事例報告3】 「関西外国語大学におけるグローバル人材育成の現状」 金範洙(Kim_Bumsu)東京学芸大学特命教授 【フリーディスカッション】 -討論者を交えたディスカッションとフロアとの質疑応答- 総合司会:張建(Zhang_Jian)東京電機大学特別専任教授 モデレーター:シム・チュンキャット(Sim_Choon_Kiat)昭和女子大学准教授 ********************************************* ★☆★SGRAカレンダー ◇第5回アジア未来会議「持続的な共有型成長:みんなの故郷みんなの幸福」 (2020年1月9日~13日、マニラ近郊)<論文(発表要旨)募集中> ※奨学金・優秀賞の対象となる論文の募集は締め切りました。一般論文の投稿(発表要旨)は6月30日まで受け付けます。 http://www.aisf.or.jp/AFC/2020/call-for-papers/ アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語る<場>を提供します。 ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応)を開始! SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方は下記より登録してください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/research/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRA の事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • Borjigin Husel “Ulaanbaatar International Symposium #11 Report”

    ********************************************* SGRAかわらばん766(2019年4月12日) ********************************************* ◆ボルジギン・フスレ「第11回ウランバートル国際シンポジウム『キャフタとフレー:ユーラシアからの眼差し』報告」 昨今、安倍首相とプーチン大統領による日露会談や北方領土をめぐる交渉が日本のマスコミに限らず、関係諸国のマスコミにもよく報道され注目を浴びている。実は、2018年は「ロシアにおける日本年」、「日本におけるロシア年」であり、また「シベリア出兵」百周年でもあった。この記念すべき年を迎えるにあたって、私どもは第11回ウランバートル国際シンポジウムのテーマを「キャフタとフレー:ユーラシアからの眼差し」に決めた。 歴史上、キャフタは単なる交易地ではなく、政治的あるいは軍事的な都市でもあり、北東アジアの秩序の形成に影響をあたえた重要な国際会議が何度も行われ、条約が結ばれた地である。また、19世紀半ば以降、多くのユダヤ人やタタール人などがキャフタを避難所とした。他方、明治以降、朝鮮半島、清朝を越えて、キャフタをはじめ、シベリアは、日本が深い関心をもった地域であった。19世紀後半から20世紀初期にかけて、榎本武揚や黒田清隆、福島安正など日本の多くの政治家や外交官、諜報将校、商人、唐行さんなどがキャフタを訪れ、日本商店や病院なども設けられていた。戦後の日本の経済成長が神話のように言われるが、その基礎は20世紀前半ではなく、19世紀にすでに築かれていたのである。あらたに地域研究、国際関係研究の視点からキャフタ、フレー(ウランバートルの前身)における歴史的空間を、ロシアと清だけではなく、日本とのかかわりをもふくめて検討することは、重要な意義がある。 シンポジウムの前日、すなわち2018年8月30日の夜、在モンゴル日本大使高岡正人閣下は、昭和女子大学学長金子朝子先生や東京外国語大学名誉教授二木博史先生、同大学講師上村明先生、高知大学湊邦生先生と私を大使館公邸に招いた。皆で食事をしながら、政治、鉱山開発、国際記憶オリンピック大会(この数年の大会でモンゴル国がトップに立ち注目されている)、大相撲、そして日モ関係などについて歓談した。 第11回ウランバートル国際シンポジウム「キャフタとフレー:ユーラシアからの眼差し」は公益財団法人渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)と昭和女子大学国際文化研究所、モンゴル国立大学アジア研究学科の共同主催、在モンゴル日本大使館、昭和女子大学、モンゴル科学アカデミー国際研究所、公益財団法人三菱財団、モンゴルの歴史と文化研究会の後援で、同年8月31日にモンゴル国立大学2号館学術会議室で実施され、モンゴル、日本、ロシア、中国、ドイツなどの国からの80名余りの研究者や大学院生、学生が参加した。 当日午前中の開会式では、在モンゴル日本大使高岡正人閣下、昭和女子大学学長金子朝子教授、モンゴル科学アカデミー副総裁G.チョローンバータル氏が挨拶と祝辞を述べた。その後、研究報告がおこなわれた。会議の公用語はモンゴル語・日本語であるが、モンゴル語の報告が主流を占め、日本語の報告にはモンゴル語通訳がつけられた。シンポジウムの質を高めるために、実行委員会は、招待研究者と応募者計22名の内、15本の報告を選んだが、ポーランドの若手研究者1名が旅費を得られなかったためか欠席し、実際には14本の論文が報告された。 本シンポジウムは、近年の研究の歩みをふりかえり、新たに発見された歴史記録に基づいて、ユーラシアの眼差しからキャフタとフレーにおける多様な歴史・政治・経済・文化的空間を考察し、その遺産を再評価しながら、今後、いかにその栄光を再興していくかなどをめぐって、創造的な議論を展開することを目的とした。 シンポジウム当日の夜の招待宴会では、馬頭琴やオルティンドー(長い歌)、ダンスなどが披露された。 本シンポジウムの成果を、以下の3項目にまとめたい。 第1に、従来、研究者が利用し得なかった、キャフタ、外モンゴルとかかわる地図を中心に検討する報告が多かったことは注目すべきである。 第2に、キャフタとかかわる国際条約についての研究が進展を見せた。 第3に、新資料を用いて、キャフタとフレーの近現代について検討した新説が提示された。 その詳細は2019年3月に刊行予定の『モンゴルと東北アジア研究』第4号と『日本モンゴル学会紀要』第49号にまとめたのでご参照ください。 また、同シンポジウムについては、モンゴル国の新聞『ソヨンボ』や『オラーン・オドホン』、モンゴルテレビなどにより報道された。 当日の写真は下記リンクよりご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2019/04/ulaanbaatar11reportlight.pdf <ボルジギン・フスレ Borjigin_Husel> 昭和女子大学国際学部教授。北京大学哲学部卒。1998年来日。2006年東京外国語大学大学院地域文化研究科博士後期課程修了、博士(学術)。東京大学大学院総合文化研究科・日本学術振興会外国人特別研究員、ケンブリッジ大学モンゴル・内陸アジア研究所招聘研究者、昭和女子大学人間文化学部准教授などをへて、現職。主な著書に『中国共産党・国民党の対内モンゴル政策(1945~49年)――民族主義運動と国家建設との相克』(風響社、2011年)、共編著『国際的視野のなかのハルハ河・ノモンハン戦争』(三元社、2016年)、『日本人のモンゴル抑留とその背景』(三元社、2017年)他。 ********************************************* ★☆★SGRAカレンダー ◇第5回アジア未来会議「持続的な共有型成長:みんなの故郷みんなの幸福」 (2020年1月9日~13日、マニラ近郊)<論文(発表要旨)募集中> ※奨学金・優秀賞の対象となる論文の募集は締め切りました。一般論文の投稿(発表要旨)は6月30日まで受け付けます。 http://www.aisf.or.jp/AFC/2020/call-for-papers/ アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語る<場>を提供します。 ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応)を開始! SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方は下記より登録してください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/research/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRA の事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • SIM ChoonKiat “The Hard Journey of an Active Singaporean in Pushing Active Learning at Japanese Universities”

    ********************************************* SGRAかわらばん765(2019年4月4日) ********************************************* SGRAエッセイ#592 ◆シム・チュンキャット「アクティブなシンガポール人が日本の大学でアクティブラーニングを進める奮闘記」 「僕はアクティブな人間です」と宣言したら、恐らく異を唱える人はいないでしょう。小学校ではマーチングバンド兼室内吹奏楽部のコルネット担当で、中高時代になると炎天下のシンガポールではマーチングバンドを続けるのがさすがに辛いということもあって、また劇場なら冷房が必ず効いているという理由で、今度は一変して演劇部の俳優・脚本担当・演出担当などを、日本の大学へ留学するまでずっとやっていました。留学後も国家公務員の仕事の傍ら演劇界に復帰し、再び日本の大学院に再留学するまでセミプロとして年2回ぐらいシンガポールの国立劇場などで長年舞台に立っていました。そのような隠れた(?)過去があることから、今でもステージや人前に立つと、自ずと姿勢を正したうえで声を張り上げたり注目を集めたり主役や主賓を立てたりする僕がいます。そして、演劇をやめて久しい今となっては、大学の教壇が僕のステージなのです。 さて、僕の新しいステージとしての日本の大学の教壇なのですが、それはそれはシンガポールで経験したものと雲泥の差がありました。何と言ってもオーディエンスの学生の反応が薄い、というか、能面をかぶっているかと思えるぐらいウンともスンとも言わない場合もあるのです。もちろん、学士・修士・博士の教育課程を、全部加算したら10年以上も日本の大学で授業を受けてきた僕ですから、日本人学生の「インアクティブさ」はとっくの昔に承知済みです。日本国内の最高学府と言われる東大大学院でさえ授業中に活発な議論が飛び合うことはほとんどありません。 日本人の奥ゆかしさを身をもって表現したいのか、もしくは自分の発言でバカだと思われたくないのか、はたまた実は何も考えていないのかは定かではありませんが、とにかく沈黙は金なりということで日本の大学の教室はとかくギンギラギンにさりげなく静かなのです。日本の文科省が学校や大学に対してアクティブラーニング、つまり「グループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワークなどによる課題解決型の能動的学修」を展開しなさい、と声高に唱え続けている所以がここにあります。 文科省に促されるまでもなく、そもそもアクティブな僕が能面の学生をそのまま放っておくはずはありません。というより、長年舞台の上で活躍してきた自分のプライドが許さないのかもしれません。ただ、相手も長年指定席の硬い椅子に座ったまま一方通行の学校教育を受けてきた学生であるゆえに、並大抵なことではその固い口を開かせることはできません。そこで、多くの大学教員がやるように、最初は授業後にリアクションペーパーにコメントを書かせることにしました。ただし、日本人学生が書きがちな「○○を初めて知ってびっくりした」「驚いた」「勉強になった」「面白かった」「楽しかった」など小学生並みの感想は禁止、減点の対象にし、質問、疑問、反論を書くように求めました。 そのうえ、次の授業で良いコメントを幾つかパワポで発表し、更なる議論の材料にしました。そうしたら、多くの学生は自分のコメントが次の授業で取り上げられることを目指して一生懸命書くようになったため、この方法は意外と功を奏したわけです。なんだ、皆言いたいことがちゃんといっぱいあるではないか、だったらこの場で言い合おうよと思った僕は、今度はマイクを直接に学生の口の前に持っていくことにしました。なぜなら、リアクションペーパーを書かせることはリアクティブラーニング、即ち反動的学修であって、能動的学修を目標とするアクティブラーニングではないと僕は考えたからです。 当然のことながら、マイクを向けられて顔を背ける学生、緊張してしまって何も喋れない学生や的外れな発言をする学生が続出しました。そこはもう即興演劇のように、どのような回答や反応が返ってきてもうまく受け止めて、どんな発言や応答でも大丈夫だよ~という雰囲気を作り上げながら、議論の本題につなげていくしかありません。だからこそ、教員がひたすら話すような一方通行の授業よりアクティブラーニングのほうが数段も難しいのです。しかしここで強調しておきたいのは、ディスカッションを行えばいい、学生が何か喋ればいいということでもありません。専門的な理論や知識に基づいて実のある議論が展開されないと、ただお互いに自分の考えを述べて終わりという意見交換的なパターンになりかねません。それではどうすればいいのか、このことについて紙面上で説明するのは簡単ではありません。演劇を通じて培われてきたノウハウが今大学の教壇というステージで活かされているとだけ言っておきましょう。 一方、数年前から、実のある議論があったとしても、話題を提供するのが教員の僕だけでいいのか、ググったらたくさんの情報が簡単に入手できるこの時代において教材を教員が一々用意するのは果たして必要なのか、などの疑問が僕の中で芽生えました。そこで幾つかの授業では、シラバスにおいてだいたいの流れは教員の僕が定めるとして、例えば「社会問題概観」の授業でどの課題を取り上げて問題提起するのか、あるいは「現代社会論」の講義でどの国のどの課題について発表するのかなど、具体的なテーマはすべて学生に決めてもらうことにしました。それから、発表するときは、間違えることを恐れているのか政治家や公務員までを含む多くの日本人が好む原稿読み上げスタイルはもちろん禁止、減点の対象になります。学生の主体性に任せると言って、これで僕の仕事が楽になったと思うことなかれ。どのようなテーマが選ばれようと対応できるようにしなければならないために、より広く深く準備することが重要となり、むしろ教員の僕がまず超アクティブになることが前提なのです。 さらにコンピュータ室で行われる授業では、もともと教科書を指定したことがない僕は、今度は講義資料を配ることもやめました。というよりは、講義自体をやめました。主な課題だけを出して、あとは学生がネットから信頼できる情報を集めて、新たな課題を発見しながら自分に一番適した教科書を作ればいいと判断したからです。一人で取り組んでもいいし、グループでわいわい話しながら資料をまとめていってもいいということにしました。僕はというと、教室内を歩き回りながら、良い資料を自分の言葉で整理した学生のことを皆の前で褒めたり、逆に理解もせずにネットからウソを含む情報をただコピペした学生には質問を投げかけたりします。簡単に想像できると思いますが、このような授業では教員がより忙しくなることは言うまでもありません。 紙幅の関係で僕の「奮闘記」をここで全部記すことはできませんが、嬉しいことに以上述べてきた授業スタイルに対する学生の評価が高かったりするのです。そのような授業を受けることによって学生も確実に変化していきます。多くの日本人学生が「インアクティブ」になってしまっているのは、長年の学校教育で慣らされてきたせいであって、国民性とか民族気質とかとは何ら関係ないと僕は考えます。一方通行の講義より、協働型・双方向型の授業が学生の興味関心をより引き起こすに決まっています。なぜなら、授業というのは教員と学生とが一緒に作り上げていくものになるべきだからです。 今年の9月から、米国ペンシルベニア州立テンプル大学の日本校が僕の勤務校のキャンパスに移転してきます。日米のキャンパスが同一敷地内に置かれるのは日本では初めてのことで、外国人大学生の増加だけでなく何より授業への男子学生の参加が見込まれる中で、僕の「奮闘」もさらにヒートアップしていきそうで、今からワクワクしている次第であります! <Sim_ChoonKiat シム・チュンキャット> シンガポール教育省・技術教育局の政策企画官などを経て、2008年東京大学教育学研究科博士課程修了、博士号(教育学)を取得。昭和女子大学人間社会学部・現代教養学科准教授。SGRA研究員。主な著作に、「選抜度の低い学校が果たす教育的・社会的機能と役割」(東洋館出版社)2009年、「論集:日本の学力問題・上巻『学力論の変遷』」第23章『高校教育における日本とシンガポールのメリトクラシー』(日本図書センター)2010年、「現代高校生の学習と進路:高校の『常識』はどう変わってきたか?」第7章『日本とシンガポールにおける高校教師の仕事の違い』(学事出版)2014年、「東アジアにおける中等教育の大衆化:歩みを比較して(英文)」(New_York:Routledge)2019など。 ********************************************* ★☆★SGRAカレンダー ◇第5回アジア未来会議「持続的な共有型成長:みんなの故郷みんなの幸福」 (2020年1月9日~13日、マニラ近郊)<論文(発表要旨)募集中> ※奨学金・優秀賞の対象となる論文の募集は締め切りました。一般論文の投稿(発表要旨)は6月30日まで受け付けます。 http://www.aisf.or.jp/AFC/2020/call-for-papers/ アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語る<場>を提供します。 ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応)を開始! SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方は下記より登録してください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/research/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRA の事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • Song Han “Some Impressions about the Era Name”

    ********************************************* SGRAかわらばん764号(2019年3月28日) ********************************************* SGRAエッセイ#591 ◆宋晗「元号雑感」 このエッセイを執筆している2019年3月の時点で、巷では元号選定がトピックの一つである。改元の社会に及ぼす影響は色々とあるようだが、漢文学を専門としている筆者からすれば、日本の古典からの出典を検討、とのニュースが興味深い。中国の古典を出典とするのが元号選定の慣例だが、今回は『古事記』や『日本書紀』からの引用も俎上にのぼっているとのこと。ネットを見る限りではなかなかに活発な議論を引き起こしている。やれ、『古事記』や『日本書紀』は漢籍をベースにして漢文で編纂された史書なので、この二つの古典から引用しても結局は漢籍由来になってしまうので不毛。やれ、そんな細かいことはどうでもいいから日本の古典から引用しろ。――日本文化の独自性が争点のようである。元号選定は日本の問題であり、外国人の筆者がしゃしゃり出る幕はない。出る幕はないのだが、元号は中国由来の文化制度なので、雑感を述べたいと思う。 そもそも元号は、今の私達が当たり前のように使っている西暦と同じように、年数を計算するための紀年法の一種である。清代の歴史家・趙翼の考証によれば、漢の武帝が紀元前140年に制定した「建元」が中国最古の元号であり(『二十二史札記』)、ということは東アジア最古の元号ということにもなる。漢の武帝といえば、中国史上屈指の専制君主であり、武帝の治世下で統一帝国としての漢王朝の支配体制が確固たるものになったとされている。元号を話題にしているのに本筋からずれた話をしているように思われるかもしれないが、実は大いに関わりがある。ちょうど紀元前45年にユリウス暦がカエサルによって制定されたように、古代国家は領土(=空間)だけではなく、時間をも支配する。それも当然のことで、当時の農民にとって農事を計画的に行うための暦が必要不可欠であり、古代の世界では国家だけが毎年の暦を計算し布告する技術力を持っていた。つまり、元号は統一帝国の時間に対する支配権を象徴する制度だった。 古代中国社会における元号の政治的意味は、三国時代を例とするとわかりやすい。英雄・曹操の後継者である曹丕は後漢最後の皇帝の献帝から帝位を譲り受け(禅譲という)、魏王朝を創始した。曹丕は帝位に即くにあたって元号を「黄初」としたのだが、魏に対抗する呉の孫権は後漢王朝を正統と仰ぎ、献帝の元号である「建安」を使用し続けたのが、出土文献によって明らかとなっている。つまり、孫権は魏王朝の支配権を認めなかったのである。このケースを応用するとすれば、古代東アジアにおいて独自の元号をもつことが独立国家としての表明に等しかった。例えば東アジアにかつて存在していた高句麗・高昌・新羅といった古代国家は独自の年号をもっていた。 だいぶ遠回りしてしまったが、日本の元号に話を戻す。日本最古の元号は、大化の改新で知られる孝徳天皇の「大化」である。当時の首脳陣は元号の意味を精確に理解していたであろうから、この時に日本は独立国家としての立場を内外に表明したと考えられる。以降、短期間の断絶を挟みながら、元号は現代まで日本に生き続けている。このような歴史的経緯をふまえた上で、今の元号選定問題を考えると、やはり興味深い。古代においては漢籍から引用された元号を持つのが独立国家としての意思表示だったが、今や漢籍を出典とすること自体が日本文化の独自性の観点上、一部の有識者から不都合だと思われている。してみると、時を経ても不変と認識されがちな文化の独自性というものも、結局は時々の価値観次第でいかようにも変わるのである。それは元号だけに、日本だけに限った話ではない。どの国の文化にも言えることだろう。 もっとも自分自身が、そして自分の所属する共同体、社会、国家が、本質的に独創的であることを望まない人間はいない。口先ではどうとでもこの主張に反論できるが、ふとしたきっかけでナショナリスティックな態度を人は見せるもの(筆者もまたしかり)。ただ、文化の独創性をつきつめると、文明の揺籃であるイラク・シリア・エジプトあたりが最もオリジナリティがある、ということになりはしないか。いや、人類が誕生したアフリカではないのか。こう考えてみると、なんとも味気ない議論である。味気ないついでに、芥川龍之介がぼやいたようにぼやいてみよう。文化は一箱のマッチに似ている。重大に扱うのはばかばかしい。しかし重大に扱わなければ危険である。 <宋晗(そう・かん)Song_Han> 2017年度渥美奨学生。2018年東京大学大学院人文社会系研究科博士号取得(文学)。現在、フェリス女学院大学文学部日本語日本文学科助教。専門は平安朝漢文学を中心とする日中比較文学研究。 ********************************************* ★☆★SGRAカレンダー ◇第5回アジア未来会議「持続的な共有型成長:みんなの故郷みんなの幸福」 (2020年1月9日~13日、マニラ近郊)<論文(発表要旨)募集中> ※奨学金・優秀賞の対象となる論文の募集は締め切りました。一般論文の投稿(発表要旨)は6月30日まで受け付けます。 http://www.aisf.or.jp/AFC/2020/call-for-papers/ アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語る<場>を提供します。 ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応)を開始! SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方は下記より登録してください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/research/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRA の事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • Khin Maung Htwe “From Physicist to Hotel Owner”

    ********************************************* SGRAかわらばん763号(2019年3月21日) 【1】エッセイ:キン・マウン・トウエ「物理学者からホテル経営者へ」 【2】「国史たちの対話の可能性」メールマガジン第2号 村和明「国史間の対話を続ける、深めるために」 ********************************************* 【1】SGRAエッセイ#590 ◆キン・マウン・トウエ「物理学者からホテル経営者へ」 人にはそれぞれの夢があり、その夢が実現できた方もいれば、異なった人生を歩んでいる方もたくさんいます。医者になりたい、エンジニアになりたい、芸術家、学者、ビジネスマン、様々な分野に興味を持ち、その分野に関する技能を磨いて、その世界で有名になろうという夢を持った子供が世界中にたくさんいます。私自身も子供の頃は飛行機のパイロットになりたいと思っていました。ところが今、私は、ミャンマーのピン・ウー・ルウィンという、日本の軽井沢のような高原観光地にあるホテル秋籾(あきもみ)の経営者になっています。 1988年10月にミャンマーから日本へ留学しました。父親はじめ兄弟たちが眼科医の家庭でしたが、私は、医学には興味がありませんでした。パイロットになりたかったけれど両親が反対でした。その結果、マンダレー大学で物理学を専攻し、卒業後に日本へ留学することになりました。留学中、旅行や学会発表、ゼミ合宿などの様々な機会で日本各地を訪れることができ、日本国内でもそれぞれの土地で異なった景色や文化を体験し、様々な日本食文化を楽しみました。 1970年代、私が子供の頃にミャンマー国内を旅行をした時には、ホテルや民宿ではなく、親戚の家や別荘、あるいは父親の仕事の関係で国営の招待所などで泊まることが多かったのです。当時、ホテルは外国人旅行者たちが使用することが殆んどでした。高校卒業後にカローと言う高原観光地へ行った時に、イギリス時代に創られたカローホテルに泊まったのが、私とホテルの出会いです。カローの町は、イギリス植民地時代に夏の別荘地があったところで、パインヒル(松山)とも呼ばれています。今でも外国人、特に欧米からの観光客が多く、トリップアドバイザーではトレッキング等で有名な町です。恋人との初めての出会いのように、ホテルで泊まった時の気持ち、部屋の準備や朝食の味、良い空気やイギリス植民地スタイルの環境などは、私の人生で忘れられない思い出になりました。しかしながら、その後カローに何回も行き、このホテルに泊まりたいと思いましたが、まさかホテルの経営者になるとは夢にも思いませんでした。 1997年に早稲田大学理工学研究科から博士号を取得し、応用物理学科で助手を1年間勤めた後ミャンマーへ帰国しました。帰国後は「物理学者」と言う立場はなくなり、「経営者」として日本で経験した様々な分野から応用できることをミャンマーのために実現してきました。「研究者」であった留学時代と同様に、ミャンマー帰国後は「工学博士の海老漁師」、「科学的な農家」、そして「異文化と環境保全を考慮したホテル経営者」として頑張っています。 私には現在の日本より、昔の日本のイメージが心に残っています。建造物にしても、伝統的な木造技術を駆使した建物に最も興味を惹かれます。ホテル秋籾を建てた時、日本のイメージを表したいので日本の伝統的な木造建築に造詣が深い70歳代の日本人建築家にお願いして、約2年間かけて私の夢の日本イメージを表現しました。日本食レストランは勿論、大浴場、屋台などの日本のイメージをミャンマーにある物を利用しながら再現しました。さらに、日本で経験した最高のサービス、最高の技術の移転を目指しました。その結果、今では宿泊した多くのお客様から「小さな日本人村」と評価されています。 国際的な評価として、トリップアドバイザーでは4~4.5/5、Booking.comでは8.3~8.7/10、Agodaでは8.0/10をいただいています。また、2018年1月には、ASEAN_Green_Hotel_Standard_Awardを受賞しました。この賞にはミャンマーの全ホテルの中から5つのホテルが選ばれ、ホテル秋籾はその中でトップでした。 新しいことに何でも挑戦できる自信、成功するまで続ける努力、お客様の反応を大切にする心、自分の仕事に関連することは常に調査することなどが「物理学者からホテル秋籾の経営者」になった人生の大きな自負です。 ホテルに関する情報は下記リンクをご覧ください。 https://akimomi-mm.book.direct/ https://www.youtube.com/watch?v=PY17CmpGFYs&feature=youtu.be https://www.facebook.com/Hotel-AKIMOMI-1568086390113627/ <キン・マウン・トウエ ☆ Khin Maung Htwe> ホテル秋籾創設者、オーナー。ミャンマーのマンダレー大学理学部応用物理学科を卒業後、1988年に日本へ留学、千葉大学工学部画像工学科研究生終了、東京工芸大学大学院工学研究科画像工学専攻修士、早稲田大学大学院理工学研究科物理学および応用物理学専攻博士、順天堂大学医学部眼科学科研究生終了、早稲田大学理工学部物理学および応用物理学科助手、Ocean_Resources_Production社長を経て、ホテル秋籾を創設。SGRA会員。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】「国史たちの対話の可能性」メールマガジン第2号を配信しました。 ◆村和明「国史間の対話を続ける、深めるために」 https://us20.campaign-archive.com/?u=8a804637298104d9c09f6d173&id=23ae8c16c3 SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。これから毎月1回配信する予定です。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方は下記より登録してください。 ◇国史メルマガ購読希望の方は下記リンクから登録してください。 https://aisf.us20.list-manage.com/subscribe?u=8a804637298104d9c09f6d173&id=3d099d9147 ◇国史メルマガ第1号:金キョンテ「第3回国史たちの対話の可能性円卓会議報告」 https://mailchi.mp/051d2debf452/sgra-kokushi-email-newsletter-1?e=d44a2344b3 ********************************************* ★☆★SGRAカレンダー ◇第5回アジア未来会議「持続的な共有型成長:みんなの故郷みんなの幸福」 (2020年1月9日~13日、マニラ近郊)<論文(発表要旨)募集中> ※奨学金・優秀賞の対象となる論文の募集は締め切りました。一般論文の投稿(発表要旨)は6月30日まで受け付けます。 http://www.aisf.or.jp/AFC/2020/call-for-papers/ アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語る<場>を提供します。 ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応)を開始! SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方は下記より登録してください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/research/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRA の事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • Tsunoda Eiichi “SGRA Forum 62 Report”

    ********************************************* SGRAかわらばん762号(2019年3月14日) 【1】SGRAフォーラム「再生可能エネルギーが世界を変える時?」報告 【2】新刊紹介:尹ジンヒ「現代韓国を生きる若者の自立と親子の戦略」 ********************************************* 【1】角田英一「第62回SGRAフォーラム・APYLP+SGRAジョイントセッション」報告 ◆「再生可能エネルギーが世界を変える時…?-不都合な真実を超えて」 2019年2月2日、東京・六本木の国際文化会館で、第62回SGRAフォーラム・APYLP+SGRAジョイントセッション「再生可能エネルギーが世界を変える時…?-不都合な真実を超えて」が開催された。このフォーラムは、国際文化会館がアジア太平洋地域の若手リーダー達を繋ぐことを目的として組織し、SGRAも参加する、「アジア太平洋ヤングリーダーズ・プログラム(APYLP)」とのジョイントセッションとして開催された。 今回のフォーラムは、2015年のCOP21・パリ協定以降、急速に発展しつつある「再生可能エネルギー」をテーマとして、その急速な拡大の要因や将来の予測を踏まえて「再生可能エネルギー社会実現の可能性」を国際政治・経済、環境・技術(イノベーション)、エネルギーとコミュニティの視点から、多元的に考察することを目的とした。 フォーラムで行われた、研究発表と基調講演を概観してみよう。 午前中のセッションは、120名の会場が満杯となる盛況の中、デール・ソンヤ氏(一橋大学講師)の司会、今西淳子氏(渥美国際交流財団常務理事・SGRA代表)の挨拶で始まった。 第1セッションでは、3名のラクーン(元渥美奨学生)の研究発表が行われた。トップバッターの韓国の朴准儀さん(ジョージ・メイソン大学兼任教授)は、「再生可能エネルギーの貿易戦争:韓国のエネルギーミックスと保護主義」の発表を行い、専門の国際通商政策の視点から文在寅政権の野心的すぎる環境政策、中国の国策の大量生産による市場独占、アメリカの保護主義政策などを分析しながら、韓国の太陽電池生産の衰退を取り上げ、再生可能エネルギービジネスが大きく歪められている現状に警鐘を鳴らし、政策転換の必要性を力説した。 第2の発表は、高偉俊氏(北九州市立大学教授)による「中国の再生可能エネルギー政策と環境」。中国の環境問題を概観した上で、深刻な環境汚染を克服するために「再生可能エネルギーへの転換が必要だ」と訴え、政府主導で中国国内や外国で展開される中国製大規模プロジェクトを紹介したが、一方で、中国は大規模プロジェクトに傾斜せず、きめ細かな環境政策が必要であると強調した。第3の発表は、葉文昌氏(島根大学准教授)の「太陽電池発電コストはどこまで安くなるか?課題は何か?」で、PVの独自のコスト計算を披露しながら、太陽光発電コストを削減するための様々なイノベーションの可能性を示した。その上で、発電と同時に蓄電のイノベーションの必要性を訴えた。 春を思わせる陽光の下、庭園で行われたコーヒーブレイク後の第2セッションでは、原発被害からの復興と地域の自立のために「再生可能エネルギー発電」を新しい地域産業に育てようと試みる福島県飯舘村の事業が紹介された。まず、飯舘村の村会議員佐藤健太氏が、2011年3月11日の福島第一原発事故による被害と昨年まで7年間の避難生活を振り返りながら、飯舘村の再生、新しい地域づくりの核に「再生可能エネルギー発電」を取り上げる意義と将来のヴィジョンを語った。次に登壇した飯舘電力の近藤恵氏は、既に飯舘村内で実施中のコミュニティレベルの小規模太陽光発電プロジェクトなどの取組を紹介すると共に、現在の日本国内の規制、制度の下での地域レベルの発電システム拡大の難しさを語った。 午後のセッションは、2本の基調講演と分科会でのディスカッションが行われた。 1本目の基調講演はルウェリン・ヒューズ氏 (オーストラリア国立大学准教授)の「低炭素エネルギー世界への転換と日本の立ち位置」。この講演の中でヒューズ氏は、低炭素エネルギーへの転換の世界的な流れを概観し、気候変動対策等を重要な政策とかかげ、低炭素エネルギーの振興を語りながらも、明確な指針が定まらない日本のエネルギー政策を多様なデータを用いながら解説した。 これに対して2本目の基調講演者ハンス=ジョセフ・フェル氏(グローバルウォッチグループ代表、元ドイツ緑の党連邦議員)は「ドイツと世界のエネルギー転換とコミュニティ発電」の中で、1994年に世界初の太陽光発電事業者コミュニティを設立し、ドイツ連邦議会の一員として再生可能エネルギー法(EEG)の法案作成に参画、その後世界の再生可能エネルギーの振興に取り組んできた経験を紹介しながら、「Renewable_Energy_100」のスローガンの下に、再生可能エネルギー社会の実現を訴えた。 午前中の5本の発表、午後の2本の基調講演の後、講演者、参加者が「国際政治経済の視点から」、「環境・イノベーションの視点から」、「コミュニティの視点から」の3分科会に別れて、熱い議論が展開された。 今回のフォーラムは、一日で「再生可能エネルギー社会実現のための課題と可能性」を探ろうという試みであり、さまざまな分野の多くのトピックスが取り上げられ、また様々な疑問、問題点も提起された。これらの議論を消化することは、容易ではないことを改めて感じさせられた。 フォーラム全体を通じて私が感じたのは、まず、「世界の脱炭素化、再生可能エネルギー社会に向かう傾向は後戻りできない現実、あるいは必然であろう」という認識が講演者だけでなく会場全体で共有されていたことである。 しかし、すべてが楽観的に進行して行くとは思えないことも、発表の中で明らかになった。また、分科会でも、各国、各分野がさまざまな課題を抱えていることが指摘されたし、このフォーラムで必ずしも疑問点が解消されたと言うこともできない。 例えば、地球温暖化の影響で顕在化する気候変動、資源の枯渇などを考えれば再生可能エネルギー社会(脱炭素エネルギー社会)への転換は、地球社会が避けて通ることができない喫緊の課題である。しかしながら、グローバルなレベルで大資本が参入し、化石燃料エネルギーから自然エネルギーに転換したとしても、地球環境問題は改善されるであろうが、大量消費文明を支える大規模エネルギーの電源が変わるだけで、大量生産大量消費の文明の本質は変わらないのではなかろうか、という疑問に対しての答えは得られなかった。 また、分科会では、巨大化するメガソーラが景観や環境を破壊するとして、日本でもヨーロッパでも反対運動が生まれていること、太陽光パネルの製造過程で排出される環境汚染物質などの問題も提起された。 FIT((売電の)固定価格買い取り制度)がもたらす、買い取り価格の低下による後発参入が不可能となる問題、財政が圧迫する(ドイツの事例による)などの問題点。蓄電システムなど技術的なイノベーションの必要性なども議論された。 当然のことながら、こうした地球社会の未来にもかかわる大きなテーマに簡単な解や道が容易に導き出されるとは思えないし、安易な解答、急いで解答を求める姿勢こそ「要注意」だと思える。 様々な課題や困難があろうが、再生可能エネルギー社会が世界に普及、拡大して行く傾向は、ますます大きな流れとなることは、間違いのない現実だろう。 ここで思い起こされるのが、このフォーラムのサブタイトルである「『不都合な真実』を超えて」というフレーズである。これは、アメリカ元副大統領アル・ゴアが地球環境問題への警鐘として書いた本のタイトルである。 大きな力強い流れがおこっている中では、流れに逆らう「不都合な真実」はともすれば語られず、秘匿される。 「再生可能エネルギー」の議論の中でも、福島第一原発事故においても、さまざまな「不都合な真実」が語られず、秘匿されてきたことが明らかになっている。 再生可能エネルギーの普及に向けた市民のコンセンサスのために、そして科学技術信仰のあやまちを繰り返さないためにも、さまざまな「不都合な真実」を隠すことなく、軽視することなく、オープンにして市民レベルでの議論を繰り返して行くことが求められる。 フォーラムの写真は下記リンクよりご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/photo-gallery/2019/12572/ 《角田英一(つのだ・えいいち)TSUNODA Eiichi》 公益財団法人渥美国際交流財団理事・事務局長。INODEP-パリ研修員、国連食料農業機関(バンコク)アクション・フォー・デヴェロプメント、アジア21世紀奨学財団を経て現職。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【1】 新刊紹介 SGRA会員で同志社大学准教授の尹ジンヒさんより新刊著書をご寄贈いただきましたのでご紹介します。 ◆尹ジンヒ「現代韓国を生きる若者の自立と親子の戦略―文化と経済の中の親子関係―」 急速な社会変動を経験した韓国社会における若者の自立の困難とその背景にある親子関係を描き出し、新たな家族社会学理論により分析検討。家族政策に関する現実的な支援の方途や政策的な提言を可能にするための基礎的研究。 著者:尹ジンヒ著 発行所:風間書房 発行年月日:2019年02月20日 頁数:272頁 判型:A5 ISBNコード:978-4-7599-2267-7 詳細は下記リンクをご覧ください。 https://www.kazamashobo.co.jp/products/detail.php?product_id=2285 ********************************************* ★☆★SGRAカレンダー ◇第5回アジア未来会議「持続的な共有型成長:みんなの故郷みんなの幸福」 (2020年1月9日~13日、マニラ近郊)<論文(発表要旨)募集中> ※奨学金・優秀賞の対象となる論文の募集は締め切りました。一般論文の投稿(発表要旨)は6月30日まで受け付けます。 http://www.aisf.or.jp/AFC/2020/call-for-papers/ アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語る<場>を提供します。 ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応)を開始! SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方は下記より登録してください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/research/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRA の事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • KABA Melek “Suriyeliler – New Turkish Word and its Implication”

    ********************************************* SGRAかわらばん761号(2019年3月7日) ********************************************* SGRAエッセイ#589 ◆カバ・メレキ「トルコ語の新しい単語『シリア人達』の意味合い」 私の国はトルコ。トルコの日常生活の中で「今日はいい天気ですね」のような会話は少ない。その代わりに政治・経済と宗教という3つの大問題についての議論こそ、人々が飽きることなく話題にし続ける最も重要なもの。この頃「Suriyeliler(シリア人達)」がその議論に仲間入りをした。「シリア人達」という新しい言葉は「シリア難民」「シリア人」「シリアの人」と言った民族的または出身国に関する属性を指す「無邪気な」言葉ではない。その言葉は、道を歩いている時、バスに乗っている時、あるいは大学の授業の時など、様々な場面で耳にする。毎回その言葉が気になって仕方がない。 少し具体的にみると、2011年3月15日からトルコにシリアからの難民が入ってくるようになった。トルコ政府内務省入国管理局によると、現在(2019年2月)は357万人のシリア人が我々トルコ人と一緒に暮らしている。トルコ以外にもヨルダン、レバノン、イラクやヨーロッパ諸国にもシリア難民はいるが、トルコは地理的に近いし、国境を歩いて越えられるという容易さがある。 ただし、数字は人々の日常生活の現実をどの程度語りうるのだろうか。戦争から逃れた人々が、宗教的に親近性があっても文化も言語も異なるトルコ社会に溶け込むのはそう簡単ではない。トルコはオスマントルコ時代から異民族が共に生きる国だと教わった。しかし、今の自分は「私の国の人々は自分とは異なる国の人に対してそれほど寛容なのだろうか」と言う疑問を抱く。 トルコ政府としては様々な形でシリアからの難民を支えようとしている。特に数の多い子供と若者に対して特別学校が設けられたり、学校の先生に対して難民の子供の教育についての講習があったり、大人向けのトルコ語講座や就職サポートが行われたりしている。しかし日常生活の中でシリア人に対するトルコの人々の眼差しには少し疑問を抱かされる。 教室で「『シリア人達』はトルコの大学に試験なしに無条件で入れるみたいですよ。不平等!こっちはずっと受験勉強してるのに」とある大学生が言った。調べてみたらシリア難民は他の留学生と同じ手続きやトルコ語能力試験の点数で入学できることになっていた。大学入学試験を受けずにシリア難民を受け入れる大学もいくつかあったが、その数はとても少なかった。 ある日、近所の年金生活者のおばさんが「『シリア人達』は毎月我々より高いお給料をもらっているみたい。なんか嫌よね」と文句。調べてみたら、無職のシリア難民に普通のレストランで5回外食できる程度の給料の支援が毎月あった。ある大きい新聞の見出しに「シリア難民に1300トルコリラの給料」とあった記事を読むと、これは仕事をするシリア難民に毎月払われる最低賃金の定めのことであり、見出しと記事のニュアンスは違っていた。 シリア難民の女性と子供の問題を書くのは心がつらくなる。女性に対する様々な暴力がある。シリアから来た未亡人を第二婦人として迎える事例、売春の問題。一部には登校もしないで働く子供たちもいる。 一方、引越しの手続きをしに水道局へ行ったら、カッパドキアの典型的な民族衣装を着た中年の女性が一生懸命、トルコ語がわからない難民の借りた家の水道の手続きを手伝っていた。近所の人が皆で家具を揃えてその難民一家が住める部屋を作ったそうだ。心が温まる。 経済的に恵まれているシリア難民はトルコでも豊かな生活をしていることは見てすぐにわかる。ただし貧困者の問題はこの先もまだ続くだろう。 最近になって学術論文でも新たなテーマとしてシリアからの難民を取り上げるようになった。ある論文でシリア難民に関して使われている言葉をメディアの中から調べていた。その中で「人身売買」「違法」「犯罪」「伝染病持ち」「売国奴」「物乞い」「子だくさん」が最も頻繁に使われている。こうしたメディアの言説を見ると、ヨーロッパで非ヨーロッパ圏から来た移民や労働者が受けた差別と偏見を思い起こす。例えばトルコは1950年代から多くの出稼ぎ労働者をドイツへ送った。韓国人も同じ目的でドイツに移住した。時代が変わりトルコの人々は「シリア人達」と言う自らの「他者」を作り上げた。「他者」は「いじめることができる、自分が優越感を感じられる」対象である。インド人がイギリス人にとって、そしてアフリカの人々がフランス人にとってそうであったことと同様に「シリア人達」はトルコ人にとって「他者」として機能している。自分は「善」である、なぜなら「悪」は眼前にいる「シリア人達」だから。 トルコ語の新しい単語「シリア人達」にはなぜか慣れることができない。その意味合いはなぜか気になる。隣の国の人々で文化も近いし同じイスラム教徒でもある。万物を愛するイスラムの教えはこの中東ではもうすでに忘却されていることだけは確かである。 <カバ・メレキ KABA_Melek> 渥美国際交流財団2009年度奨学生。トルコ共和国ネヴシェル・ハジュ・ベクタシュ・ヴェリ大学東洋言語東洋文学部助教授。2011年11月筑波大学人文社会研究科文芸言語専攻の博士号(文学)取得。白百合女子大学、獨協大学、文京学院大学、早稲田大学非常勤講師、トルコ大使館文化部/ユヌス・エムレ・インスティトゥート講師を経て2016年10月より現職。 ********************************************* ★☆★SGRAカレンダー ◇第5回アジア未来会議「持続的な共有型成長:みんなの故郷みんなの幸福」 (2020年1月9日~13日、マニラ近郊)<論文(発表要旨)募集中> ※奨学金・優秀賞の対象となる論文の募集は締め切りました。一般論文の投稿(発表要旨)は6月30日まで受け付けます。 http://www.aisf.or.jp/AFC/2020/call-for-papers/ アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語る<場>を提供します。 ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応)を開始! SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方は下記より登録してください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/research/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRA の事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • Park Jonghyuk “Sports Fool”

    ********************************************* SGRAかわらばん760号(2019年2月28日) ********************************************* SGRAエッセイ#587(私の日本留学シリーズ#28) ◆朴ジョンヒョク「スポーツバカ」 韓国の「受験戦争の事情」は日本のメディアでも度々取り上げられている。韓国の大学受験、いわゆる日本でセンター試験に当たるものは「大学修学能力試験」といわれ11月に行われる。毎年警察が出動するという騒ぎも起きる。そのため、韓国が日本以上の学歴重視社会であると認識されている方が多いだろう。これは韓国の失業率に起因すると言われており、いわゆる「よい大学」に合格することが、少なくとも就職するための最初のハードルである。良い大学に合格するために、受験生は早朝から夜遅くまでひたすら勉強のみで毎日を暮らしている。そしてまだ受験生ではない子供でも、複数の塾に通いながら1日中机に向かって生活しているのが大半である。 韓国では、勉学面だけでなく、エリート体育(アスリート)の場面においても事情は変わらない。子供の時からある種目を決め、そのスポーツを本格的に始めたら、プロスポーツ選手になることを目標に人生をそれだけに邁進して生きていく。勉学よりスポーツが優先になる。すなわち、スポーツか学業かどちらかを選ばざるを得ない。 実は、私は後者であった。率直にいえば、前者のような受験の大変さは経験していない。アスリートとして、学生時代にやるべき勉強はさておき、サッカーだけで学生時代を過ごしてきた。私は、プロサッカー選手を目指し、小学生の時から大学1年までサッカーだけをやってきた。当時は、ヨーロッパや日本の部活のようにスポーツと勉学が両立できる環境ではなく、小学校の時から寮で合宿しながらプロサッカー選手を目指して、ひたすらサッカーの練習をしなければならない厳しい環境であった。いわゆる「スポーツバカ」であった。夏休みだけではなく、新学期が始まっても、全国あちこちで大会があったため、大会に出るのが当たり前のことであった。学校の先生には「すみません、サッカー部ですけど…」と一言告げればすべてが許された。授業を受けなくても、宿題なんてしなくても運動部は大会で成績さえ出せればすべてのことが許される環境であった。学生時代に他の学生たちにいつも「サッカー部はいいな。勉強しなくても進学できちゃうんだから…」と言われた。当時は、自分もラッキーだと思っていた。 中学校まではせめてもと午前中の授業は受けさせられた。高校のときは、練習、練習、練習…授業すらも受けず、朝、昼、夜をひたすら練習で費やした。サッカー部は学校の制服も持っていなかった。恥ずかしい話だが、高校3年間このような感じで、真面目に授業を受けたことが1日もない。サッカー部の中には自分のクラスが何組か知らない子もいて、そしてほとんどが自分のクラス担任の先生のお名前も知らなかった。高校1年の秋、全国大会で予選落ちしてしまい、翌日監督は怒りながら「お前ら、授業を受けてこい!」と叫んだ。サッカー部の罰というのは授業を受けさせることであった。制服も持っていない私たちが、背中に「○○高校サッカー部」と書いてあるジャージ姿で、しかもめったに入ったことのない教室に入るなんて…とにかく、みんなが勇気を出してそれぞれの教室に入った。すると驚いたことに、私のクラスに私の机と椅子はなかった。いつも空席なのでその机と椅子は倉庫にしまわれてしまったのである。しかも教室で勉強していた学生たちは、「あの人、誰?誰?」とこそこそ話していた。 ショックだった。同じクラスメートなのに1人も知り合いがいない。恥ずかしくて、どうすればいいのか戸惑った。この時のショックから、私は大学に入ったら授業も受けて、レポートも書いてみたい、勉強のストレスを味わいたい、と熱望するようになった。しかし、大学生になっても授業を受けずにひたすら練習をする環境は全く変わらなかった。ガッカリした。ある日、午後の練習のためにグラウンドに向かっている時だった。キャンパスを横切ってグラウンドまで歩いていくのだが、そこには、授業に遅れたのか腕時計をみながら走る学生、授業が終わったのかノンビリしている学生たち、かっこよく片手には分厚くて難しそうなテキストをもっている学生が目に入った。これが大学のごく普通の風景かもしれないが、私にはまるで別の世界のように見えた。 その時、決心した。スポーツ選手であってもみんなと同じく勉強がしたい。しかし、どちらかの道を選ばなければならなかった。サッカーを続けるか、退部して一般の学生と授業を受けるか。今までできなかった分、より広い世界でたくさんのことを学びたいと強く思うようになった。散々考えたあげく、監督と相談し、10年以上やってきたサッカー部をやめ、新たな出発点に立つことにした。最初は、サッカーをやめても本当にうまくやっていけるのか、全く異なる世界に入って大丈夫なのか、不安でいっぱいだった。しかし、10年以上の時間をサッカーに注いできたことに関して、決して無駄だったと思ったことはない。むしろ、スポーツ選手生活をやってきたからこそ今の自分がいると思う。ただ、あの時、強制的ではなく、そして勉学とスポーツが両立できる環境だったら自分の人生はどう変わっていたのだろう、とずっと思っていた。 結果的に私はプロサッカー選手にはなれなかった。しかし、その時に味わった挫折感は逆に私に勇気を芽生えさせてくれた。その時に新しい道を歩もうとした決断は決して間違っていなかったと思う。そして2010年、大学卒業後に日本へ留学した。その時の決断のおかげで、日本に来て研究することができ、最先端の実験技術を習得することもできた。そして渥美財団の奨学生になる機会にも恵まれた。2018年には医学博士号も取ることができた。 今の時代は、私の時と比べて大分変わったらしい。小学校のサッカー大会は夏休み中や週末に行うことが義務化され、大学生の選手も学業の成績が何点以上とれないと大会に出場できないなどスポーツ先進国システムを真似しつつある。とはいうものの、まだ試合結果重視の昔の方式で行われている所も残存している。 私は現在、運動と脳機能に関する研究を行い、研究成果を学会、論文に随時公表し、総合的に研究者として実績を積んでいくことを希望している。そして将来的には、私のようなスポーツバカの学生たちに、この道の楽しさを教えてあげたい。また、日本での修士・博士課程及びポスドク時に習得した経験や知識を活かして、母国のスポーツ生理学やスポーツ医学分野の発展に貢献したいと強く願っている。 <朴ジョンヒョク(パク・ジョンヒョク)Park Jonghyuk> 渥美国際交流財団2017年度奨学生。韓国出身。韓国の世宗大学体育学科を卒業後、2010年来日。 2013年日本体育大学体育科学研究科にて修士課程を修了し、2018年東京慈恵会医科大学医学研究科にて博士号を取得。現在、日本医科大学スポーツ科学のポスト・ドクター研究員。実験動物を用いて、高強度の走運動が脳、とりわけ認知機能や記憶を司る海馬機能向上に及ぼす影響について研究を行っている。 ********************************************* ★☆★SGRAカレンダー ◇第5回アジア未来会議「持続的な共有型成長:みんなの故郷みんなの幸福」 (2020年1月9日~13日、マニラ近郊)<論文(発表要旨)募集中> ※奨学金・優秀賞の対象となる論文の募集は締め切りました。一般論文の投稿(発表要旨)は6月30日まで受け付けます。 http://www.aisf.or.jp/AFC/2020/call-for-papers/ アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語る<場>を提供します。 ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応)を開始! SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。これから毎月1回配信する予定です。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方は下記より登録してください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/research/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRA の事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • Dinu Bajracharya “Culture of Hakama and My Dream”

    ********************************************* SGRAかわらばん759号(2019年2月21日) 【1】エッセイ:ディヌ・バズラチャルヤ「袴の文化と私の夢」 【2】「国史たちの対話の可能性」メールマガジンを開始しました!是非ご購読ください。 日中韓3言語に対応!日本語だけでなく、中国語・韓国語の読者にもご宣伝ください。 ********************************************* 【1】SGRAエッセイ#587(私の日本留学シリーズ#27) ◆ディヌ・バズラチャルヤ「袴の文化と私の夢」 2006年3月18日に初めて留学生として来日してから12年、博士号を取得することができました。長期間の留学生生活から社会に出て、今後は母国で研究と仕事を頑張って行きたいと思います。そこで、この場をお借りして、日本で過ごしたこの12年間を振り返りながら、日本の大切な「袴」の文化と、高校生の頃からの私の夢とその実現についての感想を皆さんと共有したいと思います。渥美財団の研究報告会の「誰にでもわかるようにすることが重要である」ということに留意し、簡単明瞭な文章を心がけました。 私は子どもの頃から学校へ行くのが好きで、就学する年齢ではなくても、姉の代わり、また姉と一緒に学校へ行っていました。当時の公立学校では、1人の教員に対して50~65人の児童が1つのクラスで一緒に学習するのが普通であったため、バレることは無かったのです。勉強に対する私の興味に気付いてくれた父は私を基本就学年齢より1年早く就学させ、無事SLC(10年間の後期中学校)を卒業することができました。 私は子どもの頃、「いつか私も留学して、卒業式には黒い帽子とガウンを着て写真を撮る」と言う夢を持っていました。しかし、高校を卒業後、突然父が亡くなったために経済的な問題に直面し、留学する夢は叶いそうにありませんでした。働きながら経営学部で興味のないマネジメントを学んで卒業しましたが、2006年に偶然日本へ留学する機会がありました。日本は平和で治安の良い国なので、女性一人で留学することに母からも許可を得ることができました。 日本での生活では様々なハードルに直面しました。一番大変だったのは、日本語、ひとり暮らし、食文化の違いでした。日本語について12年経った今振り返ってみると、修士と博士論文を日本語で書いたことは自分でも信じ難いです。また、初めて日本へ来たネパール人に「日本でひとり暮らしをすることは一番安全で楽ですよ」とアドバイスができるようになりました。ところが、12年経っても日本の名物であるお寿司は食べられません。それから、ゴミの分別も未だに苦手です。 以上は、日本で経験した忘れられない思い出です。それとは別に日本へ留学して最高によかったことは、子どもの頃にずっと気になっていた友人の不登校・中退に関する問題の答えを得ることができ、それをテーマにした研究で社会学の博士号を取得できたことです。そして、博士専用のガウンと帽子を着用し、写真を撮る夢も叶えられました。 ここで、読者の皆さんはきっと「なぜ、ネパールの大学の卒業式や日本の修士課程の卒業式でガウンを着なかったのか」という疑問が浮かぶでしょう。ネパールの場合、卒業式はそれぞれのキャンパス別には実施しません。合格の成績を得てから約半年後、国立大学全体の卒業式を一度に実施します。私は卒業式の時にはもう日本へ留学していたため、ネパールの大学の卒業式に参加することができませんでした。日本の学部と修士を卒業したときも、亜細亜大学では、袴かスーツが普通でした。実は袴を着たかったのですが、そのレンタル代が高すぎて最終的にスーツで卒業式に参加しました。 2018年3月に博士課程を卒業することができ、今度こそ博士専用のガウンを着る夢を実現できると思っていましたが、残念ながら、お茶の水女子大学(以下お茶大)の卒業式でも主に袴かスーツを着用するのが一般的であることを知りがっかりしました。ガウンを着る夢はもう叶えられないと思いながら、最後の卒業式の良い思い出を作るため、たとえいくら高くても袴を着ることにしました。しかし、博士課程の卒業生は袴を穿かないという情報を事務の方から聞き、さらにがっかりしました。参考のためにお茶大の担当者から送ってくれた前年度の卒業式の写真を見たところ、確かに博士課程の卒業生は全員スーツ姿でした。 ところが、その写真であることに気付きました。それは、ある70歳代の卒業生がガウンの姿で写っていました。それを担当者に確認したところ、個人で用意できれば、ガウンでも大丈夫と言うことを聞き、本当に嬉しくてしかたなくなりました。早速卒業式の前日までにガウンの予約をし、自分の夢である博士課程専用の黒い帽子とガウンを着用し、卒業式に参加して、たくさん写真を撮りました。 また、ある留学生の友人の貴重な情報のおかげで、国立(くにたち)国際交流会の担当者と出会い非常に安く袴をレンタルすることができました。70代の先輩の写真一枚のおかげで、ガウンと袴を両方着用して卒業式を楽しく迎えました。ここでコミュニケーション及び情報の伝達は研究だけでなく、毎日の生活にも非常に重要であることを実感しました。お茶大及び他大学の友人や国立国際交流会の担当者とコミュニケーションを取り、相談をした結果、私の夢が実現しました。私の様に日本へ留学する多くの留学生は、日本の袴の文化も経験したがっていると思いますが、なかなか手が届きません。国立国際交流会のような情報をもっと広げることができれば、様々な国から来た留学生が日本の大切な袴の文化の経験もできると強く思い、このエッセイのテーマも袴を中心にしました。 以上のように、日本へ留学できたことと、留学中に支援してくださったたくさんの方々のおかげで、興味のある分野の研究ができ、中退・中退リスクまた不登校に関する知識を深めることができました。さらに、自分の夢も実現することができました。本当にありがとうございました。 (2018年3月記) <ディヌ・バズラチャルヤ Dinu_Bajracharya> 2018年、お茶の水女子大学より博士号を取得。博士研究テーマは「ネパールの初等教育における中退リスクの規定要因」。修士論文のテーマはネパールの初等教育と社会経済開発。学部から日本留学をして博士号を取得するまでの期間(2008~2017年)、JASSO、小林国際奨学財団、とうきゅう奨学機関、本庄国際奨学財団、渥美奨学財団から奨学金を受給。現在、ネパールのR&D_Bridge_Nepalでプロジェクトマネージャーとして働いている。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】「国史たちの対話の可能性」メールマガジンを開始しました!是非ご購読ください。 日中韓3言語に対応!日本語だけでなく、中国語・韓国語の読者にもご宣伝ください。 SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。これから毎月1回配信する予定です。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方は下記より登録してください。 また、このプロジェクトに関心のありそうな方にご宣伝ください。日本語だけでなく、たくさんの中国語と韓国語の読者にも購読していただきたいと思いますので、ご紹介をよろしくお願いします。 ◇国史メルマガ第1号は下記よりご覧ください。 https://mailchi.mp/051d2debf452/sgra-kokushi-email-newsletter-1?e=d44a2344b3 ◇国史メルマガ購読希望の方は下記リンクから登録してください。 https://aisf.us20.list-manage.com/subscribe?u=8a804637298104d9c09f6d173&id=3d099d9147 ■国史対話プロジェクトの経緯: 2015年7月の第49回SGRAフォーラムにおいて、「東アジアの公共財」及び「東アジア市民社会」の可能性について議論が交わされました。そのなかで、劉傑先生(早稲田大学教授)のイニシアティブにより、先ず東アジアに「知の共有空間」あるいは「知のプラットフォーム」を構築し、そこから和解につながる智恵を東アジアに供給することの意義を確認しました。 このプラットフォームに「国史たちの対話」のコーナーを設置したのは2016年9月の第3回アジア未来会議の機会に開催された第1回「国史たちの対話」でした。いままで3カ国の研究者の間ではさまざまな対話が行われてきましたが、各国の歴史認識を左右する「国史研究者」同士の対話はまだ深められていない、という意識から、先ず東アジアにおける歴史対話を可能にする条件を探りました。具体的には、三谷博先生(東京大学名誉教授)、葛兆光先生(復旦大学教授)、趙珖先生(高麗大学名誉教授)の講演により、3カ国のそれぞれの「国史」の中でアジアの出来事がどのように扱われているかを検討しました。 第2回国史対話は、自国史と国際関係をより構造的に理解するために、「蒙古襲来と13世紀モンゴル帝国のグローバル化」というテーマを設定しました。2017年8月北九州にて、日本・中国・韓国・モンゴルから11名の国史研究者が集まり、各国の国史の視点からの研究発表の後、東アジアの歴史という視点から、朝貢冊封の問題、モンゴル史と中国史の問題、資料の扱い方等について活発な議論が行われました。この会議の諸発表は、東アジア全体の動きに注目すると、国際関係だけでなく、個別の国と社会をより深く理解する手掛りも示すことを明らかにしました。 第3回国史対話のテーマはさらに時代を下げて「17世紀東アジアの国際関係」と設定しました。2018年8月ソウルに日本・中国・韓国から9名の国史研究者が集まり、日本の豊臣秀吉と満洲のホンタイジによる各2度の朝鮮侵攻と、その背景にある銀貿易を主軸とする緊密な経済関係、戦乱の後の安定について検討しました。また、3回の国史対話を振り返って次に繋げるため、早稲田大学主催による「和解に向けた歴史家共同研究ネットワークの検証」のパネルディスカッションが開催されました。 国史対話円卓会議は2016年度から毎年1回、全部で5回開催する計画です。残りの2回は近現代をテーマとして取り上げます。3言語に対応したレポートの配布とリレーエッセイのメールマガジン等により、円卓会議参加者のネットワーク化を図ります。 ■円卓会議のレポートは下記よりご覧いただけます。 SGRA_Report_no.79 「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性(1)」 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/report/2017/8730/ SGRA_Report_no.82 「第2回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性 ―蒙古襲来と13世紀モンゴル帝国のグローバル化」 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/report/2018/10611/ ※第3回国史対話のレポートは2019年秋に発行予定です。 ********************************************* ★☆★SGRAカレンダー ◇第5回アジア未来会議「持続的な共有型成長:みんなの故郷みんなの幸福」 (2020年1月9日~13日、マニラ近郊)<論文(発表要旨)募集中> ※奨学金・優秀賞の対象となる論文の募集は締め切りました。一般論文の投稿(発表要旨)は6月30日まで受け付けます。 http://www.aisf.or.jp/AFC/2020/call-for-papers/ ☆アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語る<場>を提供します。 ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRA の事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************